説明

複数条植えの苗植機

【課題】 苗を複数条に植付けるべく左右幅の大きい畝においては、畝面が左右方向外側が低くなるかまぼこ状に形成される傾向があるが、従来の鎮圧具のように左右方向にわたって同じ高さの接地面で土壌を鎮圧すると、畝の左右方向端部での鎮圧が不十分になったり畝の左右中央部での鎮圧が過度になったりして、土壌の鎮圧が不適正となり、ひいては苗の植付精度が低下するおそれがある。
【解決手段】 走行車体1と、左右に複数個配列される苗植付け体と、該苗植付け体による苗植付け個所の前方位置で該苗植付け体が苗を植付ける前の土壌に接地して鎮圧する複数個の鎮圧ローラ81とを備えた複数条植えの苗植機において、前記鎮圧ローラ81の接地面を機体の左右両外側にいくにつれて低位となるよう左右に傾斜させた。また、前記複数個の鎮圧ローラ81のうちの一部の鎮圧ローラ81の接地面の左右傾斜角度を変更する角度変更機構202を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の苗植付け体を左右に配列した複数条植えの苗植機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
畝をまたぐ左右一対の前輪及び後輪からなる走行車輪を備える走行車体を設け、該走行車体に対して上下動機構により所定の植付軌跡に沿って上下動する苗植付け体を左右に複数個配列し、該苗植付け体による苗植付け個所の前方位置で苗植付け体が苗を植付ける前の土壌に接地して鎮圧する前鎮圧ローラで構成される鎮圧具を設けた複数条植えの苗植機が知られている。前記鎮圧具は、スプリング等の弾撥部材により接地側に向けて付勢された構成となっている(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−21060号公報([0058]、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
苗を複数条に植付けるべく左右幅の大きい畝においては、畝面が左右方向外側が低くなるかまぼこ状に形成される傾向があるが、従来の鎮圧具のように左右方向にわたって同じ高さの接地面で土壌を鎮圧すると、畝の左右方向端部での鎮圧が不十分になったり畝の左右中央部での鎮圧が過度になったりして、土壌の鎮圧が不適正となり、ひいては苗の植付精度が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、走行車体(1)と、左右に複数個配列される苗植付け体(25)と、該苗植付け体(25)による苗植付け個所の前方位置で該苗植付け体(25)が苗を植付ける前の土壌に接地して鎮圧する鎮圧具(81)とを備えた複数条植えの苗植機において、前記鎮圧具(81)の接地面を機体の左右両外側にいくにつれて低位となるよう左右に傾斜させた構成とした複数条植えの苗植機とした。
【0005】
従って、請求項1に係る苗植機は、走行車体(1)で機体を走行させることにより、鎮圧具(81)が苗植付け体(25)による苗植付け個所の前方位置で接地して苗植付け体(25)が苗を植付ける前の土壌を鎮圧し、その鎮圧した土壌面に左右に複数個配列した苗植付け体(25)により複数条に苗を植え付ける。そして、鎮圧具(81)の接地面を機体の左右両外側にいくにつれて低位となるよう左右に傾斜させた構成としたので、鎮圧具(81)を左右方向外側が低くなる畝面に追従させて該鎮圧具(81)の左右幅内にわたって適正に土壌を鎮圧することができる。
【0006】
また、請求項2に係る発明は、複数個の鎮圧具(81)を左右に配列して設け、前記複数個の鎮圧具(81)のうちの一部の鎮圧具(81)の接地面の左右傾斜角度を変更する角度変更機構(202)を設けた請求項1に記載の複数条植えの苗植機とした。
【0007】
従って、請求項2に係る苗植機は、請求項1に係る苗植機の作用に加えて、角度変更機構(202)により、畝面の形状が変化しても、該畝面の形状に適応させて複数個の鎮圧具(81)のうちの一部の鎮圧具(81)の接地面の左右傾斜角度を変更することができ、畝面に追従させてより適正に土壌を鎮圧することができる。
【発明の効果】
【0008】
よって、請求項1に係る苗植機によると、左右方向外側が低くなる畝面に追従させて鎮圧具(81)の左右幅内にわたって適正に土壌を鎮圧することができ、苗の植付精度を向上させることができる。
【0009】
また、請求項2に係る苗植機によると、請求項1に係る苗植機の効果に加えて、畝面の形状に適応させて複数個の鎮圧具(81)のうちの一部の鎮圧具(81)の接地面の左右傾斜角度を変更することができ、畝面に追従させてより適正に土壌を鎮圧することができ、更なる苗の植付精度の向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の実施の一形態の苗植機を以下に説明する。尚、以下の説明では、操縦ハンドル2を配置した側を後とし、その反対側、即ちエンジン5を配置した側を前とする。そして、機体後部において機体前部側に向って立つ作業者の右手側を右とし、左手側を左とする。
【0011】
本例の苗植機は、機体を前進走行可能とする走行車体1と、該走行車体1の後部に設けた歩行操縦用の操縦ハンドル2と、圃場に苗を植付ける苗植付装置3と、該苗植付装置3に苗を供給する苗供給装置4を備えた構成としている。
【0012】
走行車体1は、図示例では、エンジン5と、該エンジン5の動力が伝達されて駆動回転する左右一対の駆動車輪である後輪6,6と、該後輪6,6の前方に転動自在に支持した左右一対の前輪7,7とを備えたものとしている。
【0013】
エンジン5の後部には、ミッションケース8を配置し、そのミッションケース8は、その左側部からエンジン5の左側方に延びるケース部分を有し、これがエンジン5の左側部と連結している。このケース部分にエンジン5の出力軸が入り込んでミッションケース8内の伝動機構に動力が伝達する構成となっている。ミッションケース8の左右両側部には、前後に長い走行用の伝動ケース9,9の前部を回動自在に取り付けている。具体的には、走行用の伝動ケース9,9の前部の機体内側部に、該伝動ケース9,9と一体回転可能に設けたアクスルケース9a,9aを設け、このアクスルケース9a,9aをミッションケース8の左右両側部に回動自在に取付けて、走行用の伝動ケース9,9をミッションケース8の左右両側部に対して回動自在に取付けている。そして、この走行用の伝動ケース9,9の後部側方に突出させた車軸10、10に後輪6,6を装着している。伝動ケース9,9の前部の回動軸心X位置には、ミッションケース8から左右両外側方に延出させた車輪駆動軸の先端が入り込んで、ミッションケース8内の走行部系変速伝動部を経た走行用の動力が伝動ケース9,9内の伝動機構に伝達している。そして、走行用の動力は伝動ケース9,9内の伝動機構を介して、伝動ケース9,9の後端側の車軸10,10に伝動し、後輪6,6が駆動回転するようになっている。なお、アクスルケース9a,9aは、畝幅に対応して左右に伸縮調節可能に設けている。また、アクスルケース9a,9aを支持するために、アクスルケース9a,9aと略平行する状態で支持フレーム9b、9bをミッションケース8に固着していて、その支持フレーム9b、9bの外端部に固着した支持プレート9c、9cでアクスルケース9a,9aの外側部を回動自在に支持している。
【0014】
前記ミッションケース8内の伝動構成としては、種々の構成が考えられる。先ず、ミッションケース8内の伝動構成の第一形態について図15に基づいて説明すると、エンジン5の出力軸と一体回転する入力ギヤ135から、該入力ギヤ135と噛み合うカウンタギヤ136へ伝達され、更に該カウンタギヤ136と噛み合う主伝動ギヤ137へ伝達される。該主伝動ギヤ137は、左右に延びる主伝動軸138に遊転自在に設けられ、側面に主クラッチ用の駆動クラッチ爪139を備えている。この駆動クラッチ爪139と噛み合う従動クラッチ爪140は、スプライン141により前記主伝動軸138と一体回転する従動クラッチ体142に設けられている。前記従動クラッチ体142は圧縮スプリング143により主伝動ギヤ137側へ付勢されており、主クラッチシフタ144により前記圧縮スプリング143に抗して従動クラッチ体142を主伝動ギヤ137と反対側へ移動させ、駆動クラッチ爪139と従動クラッチ爪140との係合を外して主クラッチを断つ構成となっている。従動クラッチ体142を介して主伝動軸138へ伝達された動力は、前記主伝動軸138と一体回転する移動速用駆動ギヤ145、植付速用駆動ギヤ146、植付部低速用駆動ギヤ147、植付部中速用駆動ギヤ148及び植付部高速用駆動ギヤ149を駆動回転させる。一方、主伝動軸138と平行に植付部用伝動軸150及び走行用伝動軸151を設けている。前記植付部用伝動軸150には、該軸150に対して遊転する後進用カウンタギヤ152並びに植付部低速用従動ギヤ153と、該軸150に対してスプライン154により一体回転する植付部高中速用従動ギヤ155とを設けている。尚、前記後進用カウンタギヤ152並びに植付部低速用従動ギヤ153は一体で構成され、前記植付部低速用従動ギヤ153は主伝動軸138上の植付部低速用駆動ギヤ147と常時噛み合っている。また、前記植付部高中速用従動ギヤ155は、図示しない株間切替シフタにより植付部用伝動軸150上のスプライン154に沿って移動可能に設けられている。前記走行用伝動軸151には、該軸151に対してスプライン156により一体回転する移動速用従動ギヤ157並びに植付速用従動ギヤ158と、該軸151に一体構成された走行出力ギヤ159とを設けている。尚、前記移動速用従動ギヤ157並びに植付速用従動ギヤ158は、一体で構成され、図示しない走行変速シフタにより走行用伝動軸151上のスプライン156に沿って移動可能に設けられている。
【0015】
そして、主伝動軸138上の移動速用駆動ギヤ145と噛み合うように移動速用従動ギヤ157を走行変速シフタによりスライドさせると、移動速用駆動ギヤ145から移動速用従動ギヤ157を介して走行用伝動軸151が高速で駆動回転する。また、主伝動軸138上の植付速用駆動ギヤ146と噛み合うように植付速用従動ギヤ158を走行変速シフタによりスライドさせると、植付速用駆動ギヤ146から植付速用従動ギヤ158を介して走行用伝動軸151が低速で駆動回転する。また、植付部用伝動軸150上の後進用カウンタギヤ152と噛み合うように植付速用従動ギヤ158を走行変速シフタによりスライドさせると、主伝動軸138上の植付部低速用駆動ギヤ147から植付部低速用従動ギヤ153、後進用カウンタギヤ152及び植付速用従動ギヤ158を介して走行用伝動軸151が逆転駆動する。
【0016】
一方、植付部低速用従動ギヤ153の側面に設けた駆動クラッチ爪160と植付部高中速用従動ギヤ155の側面に設けた従動クラッチ爪161とが噛み合うように植付部高中速用従動ギヤ155を株間切替シフタによりスライドさせると、主伝動軸138上の植付部低速用駆動ギヤ147から植付部低速用従動ギヤ153、駆動クラッチ爪160、従動クラッチ爪161及び植付部高中速用従動ギヤ155を介して植付部用伝動軸150が低速で駆動回転する。また、主伝動軸138上の植付部高速用駆動ギヤ149と噛み合うように植付部高中速用従動ギヤ155を株間切替シフタによりスライドさせると、植付部高速用駆動ギヤ149から植付部高中速用従動ギヤ155を介して植付部用伝動軸150が高速で駆動回転する。また、主伝動軸138上の植付部中速用駆動ギヤ148と噛み合うように植付部高中速用従動ギヤ155を株間切替シフタによりスライドさせると、植付部中速用駆動ギヤ148から植付部高中速用従動ギヤ155を介して植付部用伝動軸150が中速で駆動回転する。このように適宜駆動速度が調整された植付部用伝動軸150の動力は、該軸150の端部で該軸150と一体回転する駆動ベベルギヤ162と噛み合う従動ベベルギヤ163へ伝達され、該従動ベベルギヤ163から前後方向の植付伝動軸28a及び入力軸96を介して後述する植付部の伝動ケース28内へ入力される。
【0017】
尚、走行用伝動軸151の動力は、該軸151と一体回転する走行出力ギヤ159と噛み合うサイドクラッチ駆動ギヤ164に伝達され、該サイドクラッチ駆動ギヤ164の左右に設けた左右各々のサイドクラッチ165及び後輪伝動軸166を介して後輪6,6に伝達される。従って、機体を旋回させるときには、前記サイドクラッチ165により旋回内側となる左右一方の後輪6を非駆動状態にしてスム−ズに旋回できるようになっている。
【0018】
図16は、ミッションケース8内の伝動構成の第二形態について示したものである。この第二形態は、他の部分については前述の第一形態と同様であるが、一部が第一形態とは相違する。その相違点について説明すると、主伝動軸138上に植付速用第二入力ギヤ167を設け、該植付速用第二入力ギヤ167及び植付速用駆動ギヤ146を主伝動軸138に遊転するように設けると共に一体で構成し、植付部用伝動軸150上で遊転する植付速用第一入力ギヤ168を設けて該植付速用第一入力ギヤ168と植付速用第二入力ギヤ167とが常時噛み合っている。尚、前記植付速用第一入力ギヤ168は、植付部用伝動軸150上で遊転する第一のハブ169の外周のスプライン170により、前記第一のハブ169と一体回転する構成となっている。そして、主伝動軸138と一体回転する減速用駆動ギヤ171を設けると共に、前記スプライン170により前記第一のハブ169と一体回転する減速用従動ギヤ172を前記減速用駆動ギヤ171と常時噛み合うように設けている。尚、植付部用伝動軸150上の後進用カウンタギヤ152は、第一のハブ170ひいては減速用従動ギヤ172と一体回転する。従って、主伝動軸138上の植付速用駆動ギヤ146と噛み合うように植付速用従動ギヤ158を走行変速シフタによりスライドさせると、主伝動軸138から減速用駆動ギヤ171、減速用従動ギヤ172、第一のハブ170、植付速用第一入力ギヤ168、植付速用第二入力ギヤ167、植付速用駆動ギヤ146、植付速用従動ギヤ158の順に伝動する植付速伝動経路を介して伝動され、走行用伝動軸151が低速で駆動回転する。尚、前記植付速伝動経路には合計3箇所でのギヤ伝動があり、植付速用第一入力ギヤ168から植付速用第二入力ギヤ167へのギヤ伝動はミッションケース8の形状による制限で駆動側ギヤより従動側ギヤの歯数が若干少ない増速伝動となるが、減速用駆動ギヤ171から減速用従動ギヤ172及び植付速用駆動ギヤ146から植付速用従動ギヤ158の2箇所のギヤ伝動は駆動側ギヤより従動側ギヤの歯数が多い減速伝動となっている。よって、植付速伝動経路において、複数の前記減速伝動を直列に設けているため、走行用伝動軸151を所望の低速回転に設定できて機体の走行速度を遅い所望の速度に設定できる。尚、植付部用伝動軸150上の後進用カウンタギヤ152と噛み合うように植付速用従動ギヤ158を走行変速シフタによりスライドさせると、主伝動軸138から減速用駆動ギヤ171、減速用従動ギヤ172、第一のハブ169、後進用カウンタギヤ152、植付速用従動ギヤ158の順に伝動する後進伝動経路を介して伝動され、走行用伝動軸151が逆転駆動する構成である。
【0019】
そして、この第二形態では、第一形態における主伝動軸138上の植付部低速用駆動ギヤ147、植付部中速用駆動ギヤ148並びに植付部高速用駆動ギヤ149及び植付部用伝動軸150上の植付部低速用従動ギヤ153並びに植付部高中速用従動ギヤ155を廃止し、代わりに主伝動軸138上に第二伝動ギヤ173、第三伝動ギヤ174、第六伝動ギヤ175並びに第七伝動ギヤ176及び植付部用伝動軸150上に第一伝動ギヤ177、第四伝動ギヤ178、第五伝動ギヤ179並びに第八伝動ギヤ180を設けた構成となっている。前記第二伝動ギヤ173及び第三伝動ギヤ174は、主伝動軸138上で遊転する第二のハブ181と一体回転する。前記第六伝動ギヤ175及び第七伝動ギヤ176は、主伝動軸138上で遊転する第四のハブ182と一体回転する。前記第一伝動ギヤ177は、第一のハブ169と一体回転する。前記第四伝動ギヤ178及び第五伝動ギヤ179は、植付部用伝動軸150上で遊転する第三のハブ183と一体回転する。前記第八伝動ギヤ180は、植付部用伝動軸150と一体回転する。従って、主伝動軸138から減速用駆動ギヤ171、減速用従動ギヤ172、第一のハブ169、第一伝動ギヤ177、第二伝動ギヤ173、第二のハブ181、第三伝動ギヤ174、第四伝動ギヤ178、第三のハブ183、第五伝動ギヤ179、第六伝動ギヤ175、第四のハブ182、第七伝動ギヤ176、第八伝動ギヤ180の順に伝動する植付部用伝動経路を介して伝動され、植付部用伝動軸150が駆動回転する。そして、前記植付部用伝動経路には合計5箇所でのギヤ伝動があるが、これらのギヤ伝動のうち、植付部用伝動軸150側から主伝動軸138側への計2箇所のギヤ伝動は何れもミッションケース8の形状による制限で駆動側ギヤより従動側ギヤの歯数が少ない増速伝動となるが、主伝動軸138側から植付部用伝動軸150側への計3箇所のギヤ伝動は何れも駆動側ギヤより従動側ギヤの歯数が多い減速伝動となっている。そして、この植付部用伝動経路は、多数(5箇所)のギヤ伝動を直列に設けているため、全体としては減速伝動となり、植付部用伝動軸150を所望の低速回転に設定できて苗植付装置3及び苗供給装置4からなる植付部を遅い所望の速度で駆動できる。尚、この第二形態では、植付部用伝動軸150の駆動速度を変速する変速装置を設けていない。
【0020】
図17は、ミッションケース8内の伝動構成の第三形態について示したものである。この第三形態は、他の部分については前述の第一形態と同様であるが、一部が第一形態とは相違する。その相違点について説明すると、主伝動軸138上に植付速用第二入力ギヤ167を設け、該植付速用第二入力ギヤ167及び植付速用駆動ギヤ146を主伝動軸138に遊転するように設けると共に一体で構成し、植付部用伝動軸150上で遊転するハブ169と一体回転するように植付速用第一入力ギヤ168を設けて該植付速用第一入力ギヤ168と前記植付速用第二入力ギヤ167とが常時噛み合う構成としている。また、植付部用伝動軸150上の植付部低速用従動ギヤ153は、前記ハブ169と一体回転する。そして、主伝動軸138上の移動速用駆動ギヤ145と噛み合う後進用入力ギヤ184を植付部用伝動軸150上に設け、該後進用入力ギヤ184及び後進用カウンタギヤ152を植付部用伝動軸150に遊転するように設けると共に一体で構成している。また、移動速用駆動ギヤ145は、後進用入力ギヤ184と常時噛み合う状態で更に走行用伝動軸151上の移動速用従動ギヤ157と噛み合うことができるように、歯幅が広く設定されている。従って、移動速用駆動ギヤ145と噛み合うように移動速用従動ギヤ157を走行変速シフタによりスライドさせると、移動速用駆動ギヤ145から移動速用従動ギヤ157を介して走行用伝動軸151が高速で駆動回転する。また、主伝動軸138上の植付速用駆動ギヤ146と噛み合うように植付速用従動ギヤ158を走行変速シフタによりスライドさせると、主伝動軸138から植付部低速用駆動ギヤ147、植付部低速用従動ギヤ153、ハブ169、植付速用第一入力ギヤ168、植付速用第二入力ギヤ167、植付速用駆動ギヤ146、植付速用従動ギヤ157の順に伝動する植付速伝動経路を介して伝動され、走行用伝動軸151が低速で駆動回転する。尚、前記植付速伝動経路には合計3箇所でのギヤ伝動があり、植付速用第一入力ギヤ168から植付速用第二入力ギヤ167へのギヤ伝動はミッションケース8の形状による制限で駆動側ギヤより従動側ギヤの歯数が若干少ない増速伝動となるが、植付部低速用駆動ギヤ147から植付部低速用従動ギヤ153及び植付速用駆動ギヤ146から植付速用従動ギヤ158の2箇所のギヤ伝動は駆動側ギヤより従動側ギヤの歯数が多い減速伝動となっている。よって、植付速伝動経路において、複数の前記減速伝動を直列に設けているため、走行用伝動軸138を所望の低速回転に設定できて機体の走行速度を遅い所望の速度に設定できる。また、植付部用伝動軸150上の後進用カウンタギヤ152と噛み合うように植付速用従動ギヤ158を走行変速シフタによりスライドさせると、主伝動軸138から移動速用駆動ギヤ145、後進用入力ギヤ184、後進用カウンタギヤ152、植付速用従動ギヤ158の順に伝動する後進伝動経路を介して伝動され、走行用伝動軸151が逆転駆動する。この後進伝動経路は、移動速用駆動ギヤ145から伝動を分岐する経路であるので、移動速に近い比較的速い速度で走行用伝動軸151を逆転駆動でき、ひいては機体の後進速度を速く設定できる。また、主伝動軸138上に後進用の駆動ギヤを格別に設けずにすむので、ギヤの枚数を削減できてコストダウンが図れる。
【0021】
走行用の伝動ケース9,9には、該伝動ケース9,9の前部側を回動支点として後輪6,6を上下させるよう上下回動する駆動手段が連結している。具体的には、伝動ケース9,9のミッションケース8への取付部には、上方に延びるアーム11,11を一体的に取り付けていて、これがミッションケース8に固定された昇降用油圧シリンダ12のピストンロッド先端に取り付けた連結体13の左右両側部と連結している。左右一方側(右側)は、ロッド14で連結し、他方側(左側)は、機体の傾斜に応じて伸縮作動可能な左右水平制御用油圧シリンダ15で連結している。
【0022】
昇降用油圧シリンダ12が作動してそのピストンロッドが機体後方に突出すると、左右の前記アーム11,11は後方に回動し、これに伴い伝動ケース9,9が下方に回動して、機体が上昇する。反対に、昇降用油圧シリンダ12のピストンロッドが機体前方に移動してシリンダ内に引っ込むと、左右の前記アーム11,11は前方に回動し、これに伴い伝動ケース9,9が上方に回動して、機体が下降する。この昇降用油圧シリンダ12は、畝面に接地して機体と畝面との上下間隔の変動にともなって動作するセンサーSによって作動する。センサーSの動作は機体に対する畝上面高さを検出する動作となり、そのセンサーSの検出動作に基いて機体を畝上面高さに対して設定高さになるよう昇降用油圧シリンダ12が作動するよう構成している。また、操縦ハンドル2近傍に配置した植付・昇降操作具Lの人為操作によって機体を上昇或は下降させるよう昇降用油圧シリンダ12が作動する構成ともしている。尚、この植付・昇降操作具Lは、苗植付装置3及び苗供給装置4の駆動の入切も行える構成となっている。
【0023】
また、前記左右水平制御用油圧シリンダ15が伸縮作動すると、その左右水平制御用油圧シリンダ15と連結する左側のアーム11が回動して、左側の後輪6と右側の後輪6を互いに異なる高さにし、機体を左右に傾斜させる。この左右水平制御用油圧シリンダ15は、左右水平に対する機体の左右傾斜を検出するセンサの検出結果に基づいて機体を左右水平になるように作動するよう構成している。
【0024】
前記左右前輪7,7は、エンジン5下方の左右中央位置で前後方向の軸心周りに回動自在に取り付けた横フレーム16の左右両側部に、上下に長い縦フレーム16a,16aを取付け、その下端部側方に固着した車軸17,17に回転自在に取り付けている。従って、左右前輪7,7は、機体の左右中央の前後方向の軸心Y周りにローリング動自在となっている。横フレーム16の左右両側部に対して縦フレーム16a,16aを上下調節可能に設けていて、前輪7,7の高さ調節をすることができるようになっている。
【0025】
前記操縦ハンドル2は、機体後部に設けていて、後輪6,6の車軸10,10より機体後方に位置している。具体的には、ミッションケース8に前端部を固定した機体フレーム2bの後端部に取り付けている。機体フレーム2bは、機体の左右中央から右側に偏った位置に配置されて後方に延び、また、前後中間部から斜め後上方に延びている。操縦ハンドル2は、機体フレーム2bの後端部から左右に後方に延びてその各後端部を操縦ハンドル2のグリップ部2a,2aとしている。操縦ハンドル2の左右のグリップ部2a,2aは、作業者がそのグリップ部2a,2aを楽に手で握れるように適宜高さに設定する。なお、図例ではグリップ部2a,2aを左右に分かれた構成としているが、操縦ハンドル2の左右の後端部を互いに左右に連結してその連結部分をグリップ部としても良い。
【0026】
尚、上記走行車体1は、接地して駆動回転する走行駆動部を、前後車輪を備えた四輪式の走行駆動部の構成としたものであるが、クローラー式の走行駆動部の構成とすることもできる。
【0027】
苗植付装置3は、先端が下方に向かうくちばし状の苗植付け体25と、該苗植付け体25の下端部が圃場面より上方となる位置と圃場面より下方となる位置とに苗植付け体25を上下動させる上下動機構26と、くちばし状の苗植付け体25の下端部が閉じて上方から苗を受け入れて内側に苗を収容可能する閉状態と苗植付け体25の下端部が前後に開いて内側に収容した苗を下方に放出可能する開状態とに苗植付け体25を開閉する開閉機構27とを備え、苗供給装置4は、苗を上方から受け入れて内側に苗を収容する複数の苗収容体29と、該苗収容体29を苗植付け体25の上方を通過するように周回移動させる移動機構30と、苗植付け体25の上方位置で苗収容体29の底部を開放して内側に収容した苗を落下させて苗植付け体25に苗を供給する開放機構31を備えた苗供給装置4を備える。
【0028】
苗植付装置3は、後輪6の車軸10より後側に位置する苗植付け体25を左右に設定間隔で複数体並べて配備した複数条植の構成としている。本例では、苗植付け体25を左右に設定間隔で四体並べて配備した四条植えの構成としている。
【0029】
四体の苗植付け体25…は、機体フレーム2bに下部を固定した取付部材32の上部に装着した伝動ケース28の左右両側部に設けた上下動機構26,26に二体づつ装着している。先端が下方に向いたくちばし状の苗植付け体25…の前側苗植付け体25F…の上部で後側にのびる左右のアーム部25Fa,25Fa…の後端部を後側の苗植付け体支持軸34に回動自在に取付け、後側苗植付け体25R…の上部で前側にのびる左右のアーム部25Ra,25Ra…の前端部を前側の苗植付け体支持軸33に回動自在に取付け、前側苗植付け体25F…のアーム部25Fa,25Fa…と後側苗植付け体25R…のアーム部25Ra,25Ra…のそれぞれ前後中間部では、一方側のアーム部に設けた横方向のピン25a、25a…を他方側のアーム部に設けた左右方向の長孔25b,25b…に係合させている。前後の苗植付け体支持軸33,34の左右両端部は、連結部材35,35で連結している。そして、前後の苗植付け体支持軸33,34の左右中間部はそれぞれ苗ガイド連結部材36,36を介して、苗を苗植付け体25内に案内する筒状の苗ガイド37に連結している。更に、左右の苗ガイド37,37には、左右方向に延びる連結軸38を着脱自在に且つ一体的に装着していて、その連結軸38、38を介して、左右の苗ガイド37,37の左右間に配置した連結部材39,39と連結している。その連結部材39、39は、上下動機構26の上下の昇降リンク40a,40bの各先端部を上下に連結している。後側苗植付け体25R…のアーム部25Ra,25Raが前側の苗植付け体支持軸33回りに上方に回動すると、前記ピン25a、25aによる連結によって前側苗植付け体25F…のアーム部25Fa,25Faも連動して上方に回動し、よって、前側苗植付け体25F…は、後側の苗植付け体支持軸34回りの回動によって前方に移動し、後側苗植付け体25R…は、前側の苗植付け体支持軸33回りの回動によって後方に移動し、よって、苗植付け体25…の下部側が前後に開いて下方に開放状態となる。また、逆の動作によって、前後に開いた苗植付け体25…の下部側は閉じる。
【0030】
また、四体の苗植付け体25のうち、左右内側の二体の苗植付け体25の前側苗植付け体25F及び後側苗植付け体25Rは、後側に屈曲して偏位している。逆に、左右外側の二体の苗植付け体25の前側苗植付け体25F及び後側苗植付け体25Rは、前側に屈曲して偏位している。従って、左右内側の苗植付け体25の下端部に対して左右外側の苗植付け体25の下端部が、前後方向で後輪6の車軸10側となる前側寄りの位置に配置されている。よって、左右各々の二体の苗植付け体25により、2条の苗を千鳥状に植え付ける構成となっている。
【0031】
尚、上述では左右の上下動機構26が同期して作動して苗を4条で同じ株間で植付ける構成としているが、左右の上下動機構26の作動周期を異ならせて左側2条分と右側2条分とで異なる株間で苗が植付けられる構成としてもよい。これにより、同じ畝に異なる株間で苗を植付けることができ、例えば右側2条がレタス苗の植付、左側2条が玉葱苗の植付といったように異なる種類の苗を同じ畝に同時に移植することができる。また、上述では四体の苗植付け体25の左右方向の間隔を同一にして苗を同じ植付条間で4条に植付ける構成としているが、苗植付け体25の左右方向の間隔を右側2条と左側2条とで異ならせてもよい。これにより、同じ畝に異なる植付条間で同時に苗を植付けることができ、例えば右側2条がレタス苗の植付、左側2条が玉葱苗の植付といったように異なる種類の苗を同じ畝に同時に移植することができる。
【0032】
前記苗ガイド37は、苗供給装置4から供給された苗を苗植付け体25内に案内する筒状体であり、上部には、苗供給装置4の苗落下部下方に向かってのびる上部ガイド37aを設けている。これにより、苗植付け体が苗供給装置4の苗落下部下方からずれて位置していても、苗供給装置4から落下供給される苗を適確に苗植付け体25内に供給することができる。
【0033】
機体の左右両外側の苗ガイド37に装着される前記連結軸38は、各々高さ変更機構115を介して前記連結部材39に支持されている。前記高さ変更機構115は、前記連結軸38に固着された機体背面視コの字型のプレートで構成される上下移動部材116と、該上下移動部材116を囲むように機体背面視コの字型のプレートで構成される基部材117と、前記上下移動部材116及び基部材117に上下に貫通する螺子軸118と、該螺子軸118の上端に該螺子軸118と一体で回転する高さ変更ハンドル119とを備えて構成される。尚、前記基部材117の上下方向に延びる縦プレート部分117aは、上下動機構26の上下の昇降リンク40a,40bの各先端部を上下に連結する連結部材を構成している。尚、前記基部材117の上下各々の横プレート部分117bの上下間に前記上下移動部材116の上下各々の横プレート部分116aが位置し、上下移動部材116及び基部材117の前記横プレート部分116a,117bが機体平面視で重複している。そして、前記螺子軸118は、軸方向に移動しないように基部材117の上下各々の横プレート部分117bに回転自在に支持されると共に、上下移動部材116の上下各々の横プレート部分116aに固着したウエルドナット120に螺合している。従って、基部材117の上下各々の横プレート部分117bが螺子軸118を支持する軸支持部となり、上下移動部材116の上下各々の横プレート部分116aに固着したウエルドナット120が螺子軸118に螺合する螺合部となる。よって、作業者が高さ変更ハンドル119を回動して螺子軸118を回転させることにより、基部材117に対して上下移動部材116が螺子軸118に沿って上下に移動し、連結軸38を上下に移動させて左右方向外側の苗ガイド37及び苗植付け体25の高さを変更する構成となっている。尚、上下移動部材116は、該部材116の上下の横プレート部分116aが基部材117の上下各々の横プレート部分117bに当接することにより上下移動が規制され、所定範囲内でのみ上下移動可能に構成されている。この上下移動部材116の上下移動可能範囲は、左右方向外側の苗植付け体25が左右方向内側の苗植付け体25と略同じ高さから左右方向内側の苗植付け体25より低位となる高さまで上下移動できるように設定されている。
【0034】
苗植付け体25…の上下動機構26は、伝動ケース28の左右両側部に設けている。具体的には、前記昇降リンク装置2の後端部の連結軸21に回動自在に装着した植付部フレーム12a上部に固着した伝動ケース28の左右側方に突出させた軸に前部を上下回動自在に装着し後部を苗植付け体25…に連結した上側と下側の昇降リンク40a,40bと、伝動ケース28の側部から突出させた駆動回転する駆動軸41と、該駆動軸41の先端部に一端側を一体回転するように取付けた駆動アーム42と、該駆動アーム42の回転外周側端部と前記上側の昇降リンク40aとに回動自在に連結する連動アーム42aとで構成している。そして、上側と下側の昇降リンク40a,40bの各後端部を前記苗植付け体支持軸33,34の左右中間部付近に取付けた連結部材39に回動自在に取付け、上側と下側の昇降リンク40a,40bと伝動ケース28と連結部材39とでリンク機構を形成するように設けている。従って、駆動軸41の回転により駆動アーム42が駆動回転すると、前記昇降リンク40a,40bが伝動ケース28の左右側部に設けた二つの軸40aS,40bSを回動中心に上下動して、左右の苗植付け体25…が上下動する。この上下動の上昇位置では苗植付け体25の下端部が圃場面より上方に位置し、下降位置では苗植付け体25の下端部が圃場面より下方に位置する。
【0035】
また、この苗植機では、苗植付け体25…を昇降する上下動機構26を、第一軸40aS回りに昇降駆動される第一昇降リンク40aと、該第一昇降リンク40aの下側で第二軸40bS回りに昇降自在に設けた第二昇降リンク40bと、該第一昇降リンク40a及び第二昇降リンク40bの各先端部を連結する連結部材39とで構成し、該連結部材39と苗植付け体25…を連結して苗植付け体25…を昇降する構成とし、前記第一軸40aSを、伝動ケース28内の伝動機構を介して伝達された動力により回転駆動される回転軸40aRの先端部に偏芯状態で形成し、該回転軸40aRの回転によって回転軸40aRの軸芯を中心として偏芯量を半径として回転駆動される構成とし、前記第一昇降リンク40aの昇降駆動中に前記回転軸40aRが回転駆動することにより苗植付け体25をその昇降動中に前後に傾けるように構成している。そして、苗植付け体25…の昇降軌跡上部側での上昇時の姿勢を、直立姿勢に対して下部が上部より後側になる前倒姿勢となるように設定している。また、苗植付け体25…の下降時の姿勢を直立姿勢に対して下部が上部より前側になった後倒姿勢となるように設定し、下降下端位置で後倒姿勢から前倒姿勢に姿勢変更するように設け、前記苗植付け体25…の上昇時の姿勢を直立姿勢に対して下部が上部より後側になった前倒姿勢となるように設定している。
【0036】
連結軸38には、大径の第一スプリング185と小径の第二スプリング186との2種の引張スプリングが掛けられている。これらのスプリング185、186の他端は、苗植付け体25及び苗ガイド37より上側の機体部分に係止されている。従って、これらのスプリング185、186により苗植付け体25が上側へ付勢されるので、上下動機構26による苗植付け体25の下動行程では、伝動ケース28内の伝動ギヤのガタ(バックラッシ)による駆動軸41のガタ分、苗植付け体25、苗ガイド37及び上下動機構26の自重で苗植付け体25が先行して作動するのを防止できる。一方、上下動機構26による苗植付け体25の上動行程では、伝動ケース28内の伝動ギヤのガタ(バックラッシ)による駆動軸41のガタ分、苗植付け体25、苗ガイド37及び上下動機構26の自重で苗植付け体25が遅れて作動するのを防止できる。よって、苗植付け体25が作動軌跡の下死点ですばやく作動して土中へ突入する時間を短縮でき、機体の走行による苗植付け体25の土中でのひきずりが抑えられるので、苗植付け体25が作る苗植付穴が不必要に大きくなって苗の植付姿勢が不安定になるようなことを防止できる。尚、第二スプリング186は、第一スプリング185の内径部に設けられている。尚、伝動ケース28内の伝動ギヤのガタ(バックラッシ)を意図的に大きく設定すれば、スプリング185、186により苗植付け体25の土中へ突入する時間を更に短縮することができる。
【0037】
尚、上記の四体の苗植付け体25は同期して上下動する構成であるが、伝動ケース28内の伝動ギヤから分岐して伝動される複数の苗植付け体25が互いに作動周期の半周期ずれて交互に作動して千鳥植えを行う構成とした場合、各々の苗植付け体25に作用するスプリング185、186の付勢力が相殺され、結果的にスプリング185、186による苗植付け体25の持ち上げ力が大きくならない。そこで、前記スプリング185、186を苗植付け体25の作動軌跡の上死点で自然長となって付勢力が零となるように設定すれば、不要に大型で付勢力の大きいスプリングを設けずに済み、コストダウンが図れる。そのために、例えば小径のスプリング186のみを使用することが考えられる。
【0038】
苗植付け体25…の開閉機構27について説明すると、後側苗植付け体25R…の上部で後側にのびる後側開閉用アーム部25Rb…の先端部に開閉用ケーブル121のインナーワイヤ121aの端部を連結し、前側苗植付け体25F…の上部で前側にのびる前側開閉用アーム部25Fb…の先端部に開閉用ケーブル121のアウターケーブル121bの端部を連結し、下側の昇降リンク40bの基部を枢着している軸40bSに回動自在に取付けた作動アーム44を設け、この作動アーム44の先端部に前記開閉用ケーブル121のインナーワイヤ121aの他端を連結し、伝動ケース28に開閉用ケーブル121のアウターケーブル121bの他端を固定して取り付けている。そして、作動アーム44が、上側の昇降リンク40aの基部を枢着している軸40aSを回転駆動する回転軸40aRと兼用のカム駆動軸に一体回転するよう取付けたカム46の作用を受けて、設定したタイミングで前側に回動する構成としている。これにより、駆動軸41の駆動回転により苗植付け体25…が上下動して下降下端位置に達すると、カム46の作用位置の変化により作動アーム44が前側に回動し、開閉用ケーブル121のアウターケーブル121bに対してインナーワイヤ121aが前側に引かれて前側開閉用アーム部25Fbと後側開閉用アーム部25Rbとが互いに近づくように回動し、後側苗植付け体25R…が後側の苗植付け体支持軸34回りに回動して後方に移動し、これに連動して前側苗植付け体25F…が前側の苗植付け体支持軸33回りに回動して前方に移動して、苗植付け体25…の下部側が前後に開いて下方に開放状態となる。そして、苗植付け体25…が上昇してカム46の作用位置の変化により作動アーム44が苗植付け体25…に対して元の位置(後側)に回動して開閉用ケーブル121のインナーワイヤ121aが弛められ、前後に開いた苗植付け体25…の下部が閉じる。これにより、苗植付け体25の開閉を開閉用ケーブル121で行う構成としたので、従来のロッドあるいはリンクによる開閉機構と比較して、開閉用ケーブル121の連結の自由度が高いため、作動アーム44の少量の作動量で苗植付け体25の所望の開閉量を得る構成とすることができる。尚、前側苗植付け体25F…と後側苗植付け体25R…とは、図示しないスプリングにより苗植付け体25…の下部が閉じる側へ回動付勢されている。また、開閉用ケーブル121は共通の作動アーム44に複数本(2本)連結され、共通の上下動機構26により同期して上下動する複数(2個)の苗植付け体25の開閉を共通の作動アーム44で行う構成となっている。
【0039】
図11に示すように、前記カム46は、一体構成されるボス部46aに設けたセットボルト122より前記回転軸40aRに固定される。カム46に対して前記ボス部46aとは反対側には、回転軸40aRに対して所定の偏芯量eで偏芯する第一軸40aSをカム46と一体構成して設けている。そして、前記第一軸40aSは、回転軸40aRに対してカム46の大径側に偏位して設けられている。これにより、カム46により第一軸40aSを確実に支持することができると共に、前記偏芯量eを大きくとることができるため、苗植付け体25の前後傾斜姿勢ひいては昇降軌跡を所望に設定することができる。また、セットボルト122を弛めてカム46を交換することで偏芯量eの異なる第一軸40aSに交換することができ、植付株間に対応させて苗植付け体25を所望の昇降軌跡で作動させることができると共に、カム46と第一軸40aSとが一体で交換されるために、苗植付け体25の昇降軌跡の変更に伴って苗植付け体25の開閉タイミングを変更することができ、これらの変更をカム46の着脱で一度に行えて容易となり、更には苗植付け体25の昇降軌跡及び開閉タイミングの一方のみを変更して他方の変更を忘れることにより植付が不適正になるようなことを防止できる。
【0040】
また、上記構成に代えて、図12に示すように、カム46にフランジ123を介して取付ボルト124により第一軸40aSを着脱可能に構成してもよい。尚、前記フランジ123は、その外形がカム46の外形より内側に構成されている。これにより、苗植付け体25の昇降軌跡のみを変更したい場合、第一軸40aSのみを交換することにより容易に行える。尚、前記取付ボルト124が通るフランジ123の孔を長孔に構成し、カム46に対してフランジ123の位置を変更して該フランジ123を取付固定できる構成とし、第一軸40aSの偏芯量eを容易に変更できる構成としてもよい。また、前記フランジ123の取付位置の変更で第一軸40aSの位相を変える構成とすれば、苗植付け体25の昇降軌跡における下死点での苗植付け体25の前後姿勢変化を変更することができ、短い植付株間に対応して苗植付け体25が所望の大きさの植付穴で適正に植付することができる。尚、フランジ123の取付位置の変更で第一軸40aSの位相を180度変える構成とすれば、機体を後進させながら苗を植え付ける場合、苗植付け体25の昇降軌跡を前後逆方向に作動させて適正な昇降軌跡で植付することができる。このとき、駆動軸41は逆転駆動させることになる。
【0041】
伝動ケース28を機体フレーム2bに取付ける取付部材32と、ミッションケース8と走行用の伝動ケース9,9の間に設けたアクスルケース9a,9aを支持する支持フレーム9b、9bとの間とを、支持フレーム32a,32aで連結し、伝動ケース28と苗植付装置3と苗供給装置4との支持強度を向上させている。
【0042】
苗植付け体25…の内側に供給する灌水用の水を供給するプランジャポンプ91,91のピストンロッド91a,91aを装着している。前後方向視で門型状になった伝動ケース28の内側に、苗植付け体25…の内側に供給する灌水用の水を供給するプランジャポンプ91,91を装着し、伝動ケース28の左右内側に突出させた前記回転軸40aR,40aRにプランジャポンプ91,91のピストンロッド91a,91aを装着し、プランジャポンプ91,91のケーシング部分91b,91bは、前記伝動ケース28を上部に装着した取付部材32に設けたプランジャポンプ取付け部に取付けている。Tは灌水用の水を蓄えるタンクである。更に、このタンクTから苗植付け体25…への水の供給経路(灌水ホース100)の途中に手動式のポンプ101を設けており、この手動式のポンプ101を作業者が操作することにより任意に苗植付け体25へ水を供給することができる。これにより、植付作業を中断して苗植付け体25の内側の泥を落として該苗植付け体25を洗浄するときや、プランジャポンプ91が作動不良であるとき等、適宜に苗植付け体25へ水を供給することができ便利である。なお、手動式のポンプ101は、タンクT近くの上方位置に配置されているので、後述する作業者用座席70L,70Rに座る作業者あるいは後輪6、6の後側で操縦ハンドル2の左右方向外側で歩行する作業者の何れからも近い位置に配置されて操作しやすい。
【0043】
苗供給装置4は、上下に開口する筒状体47…と該筒状体47…の下側の開口部47a…を開閉する底蓋48…とを有し互いにループ状に連結する複数の苗収容体29…と、該苗収容体29…を前記苗植付け体25…の上方近傍を通過する状態で機体平面視前後に長い長円形状のループ状の軌跡で周回動させる移動機構30と、前記苗収容体29…の底蓋48…を苗植付け体25…の上方位置で開放する開放機構31を設けた構成である。
【0044】
苗供給装置4は、前記苗収容体29…の外周に円筒外周部を形成し、該円筒外周部に外側から回動自在に係合する係合部(丸孔)を有して二つの苗収容体29,29を連結する連結体49を複数設け、該連結体49…の係合部を苗収容体29…の円筒外周部に回動自在に係合し該円筒外周部を回動軸として隣の苗収容体29…が回動自在に連結する状態として複数の苗収容体29…を互いに連結した構成としている。即ち、苗収容体29…と連結体49…とで無端チェーンのように連結した構成である。これにより、この苗移植機は、苗収容体29…は、直線的に移動する部分でも円弧状に移動する部分でも隣接する苗収容体29…との間隔が変わらないので、苗収容体29から苗植付け体25に苗を供給する個所で苗収容体29が苗植付け体25に対して位置ズレが生じにくくなり苗供給が適正に行われて適確な苗の移植ができる。苗収容体29…の個数と周回動する範囲を設定したうえで、苗収容体の上側開口部43b…を可能な限り広く形成できて、機体のコンパクト化を図りつつ苗収容体29…への苗供給作業をできるだけ容易に行えるものとなる。
【0045】
苗供給装置4の移動機構30は、右側及び左側の苗供給装置4R,4Lともに、それぞれ無端チェーンのように互いに連結する苗収容体29…;29…を左右に設けたスプロケット50,50;50,50の外周の円弧状切欠部に係合させて巻き掛け、この左右のスプロケット50,50;50,50を伝動ケース28内から取り出した動力で駆動回転することにより、右側及び左側の苗供給装置4R,4Lの各苗収容体29…;29…を周回動させる構成としている。スプロケット50,50;50,50を駆動回転可能に取付ける回動軸51,51;51,51は、伝動ケース28の上部で支持した支持フレーム52に回動可能に取付け、伝動ケース28の上部から上方に突出させた左右の回転軸53a,53bからスプロケットとチェンを介して各回動軸51,51;51,51に伝動する構成としている。
【0046】
苗収容体29…が周回する前後の軸51,51;51,51は、左右の後輪6,6より機体内側で、且つ、苗収容体29…が周回する前側の軸51,51を後輪6,6の車軸10,10位置より前側で、苗収容体29…が周回する後側の軸51,51を後輪6,6の車軸10,10位置より後側に配置している。また、苗植付け体25は、後輪6,6の車軸10,10位置より後側に配置している。
【0047】
伝動ケース28内の伝動機構は、ミッションケース8から動力が取出されて伝動回転する伝動軸28aの後端と連結する入力軸96に取付けた第一ベベルギヤ54から左右方向にのびる伝動軸55に回転自在に取付けた第二ベベルギヤ56に伝動し、そして、第二ベベルギヤの一端に設けたクラッチ爪と係脱可能なクラッチ爪を有する定位置停止クラッチである植付クラッチCを介して伝動軸55に伝動する。この植付クラッチCは、苗供給装置4の下方に設けたレバーを作業者用座席70L,70Rに座る作業者が操作することで操作され、このクラッチCの入り切りで苗植装置3の駆動が入り切りされる。伝動軸55の左右両端部には、第一スプロケット57・57が一体回転するように取り付けられ、この第一スプロケット57・57から、伝動ケース28の左右両端部から下方にのびるケース内下方に設けた第二スプロケット58・58にチェン59・59を介して伝動する。また、伝動軸55の左右両端部は、第一スプロケット57・57から更にのびて伝動ケース28の左右両外側に突出する。その突出部が駆動軸41・41となっている。第二スプロケット58・58と一体回転する回転軸40aRも伝動ケース28の左右両外側に突出し、更にその先端に偏芯状態で第一昇降リンク40aの枢支軸となる第一軸40aSが形成されて回転軸40aRと一体的に回転する。また、伝動軸55の中途部に第三ベベルギヤ60を一体回転するように取付け、それに噛み合う第四ベベルギヤ61を介して、伝動ケース28の上部から上方に突出させた一方側の回転軸53aを駆動回転する。他方側の回転軸53bは、この回転軸53bに設けたギヤ62が一方側の回転軸53aに設けたギヤ63と噛合って逆回転伝動される。この左右の回転軸53a,53bから、伝動ケース28に取り付けた支持部材54aによって支持した横方向にのびる支持フレーム54bの左右両側部に回転自在に支持した左右の後側回動軸51,51に、それぞれスプロケット65a,65a;65b,65bとチェン65c,65cを介して伝動し、更に、ここから左右の前側回動軸51,51に、それぞれスプロケット66a,66a;66b,66bとチェン66c,66cを介して伝動する構成としている。
【0048】
苗供給装置4の開放機構31は、苗収容体29…の周回軌跡下方で底蓋48…が下方に回動しないように底蓋48…を下方から支持する支持体67を設け、この支持体67を苗植付け体25…の上方位置には設けないようにすることで、苗植付け体25…の上方位置を苗収容体29が通過するとき、底蓋48が支持体67による支持状態が解かれて下方回動し苗収容体29を苗を下方に落下可能に開放する構成としている。苗収容体29の底蓋48が開くタイミングは、苗植付け体25…が苗収容体29の直下まで上昇したときとなるように調整しておく。また、上記構成に代えて、苗植付け体が苗収容体の直下まで上昇したときに、苗植付け体に設けた開放作動部材が、苗植付け体の上方に位置する苗収容体の底蓋が開くのを規制する規制手段を規制解除動作させる構成も採用できる。
【0049】
苗供給装置4は、機体右側の二つの苗植付け体25,25に対して苗を供給する右側苗供給装置4Rと、機体左側の二つの苗植付け体25,25に対して苗を供給する左側苗供給装置4Lは、共に、二つの苗植付け体25,25に対して苗収容体29…が一回りで周回移動して苗を供給する構成としている。このように二つの苗植付け体25,25に対して苗収容体29…が一回りで周回移動して苗を供給する構成とした場合は、一方側の苗植付け体25に落下供給する苗収容体29…と他方側の苗植付け体29…に落下供給する苗収容体29…とが交互になるように連結し、且つ、一方側の苗植付け体25に落下供給する苗収容体29…が一方側の苗植付け体25の上方を通過するとき、他方側の苗植付け体25に落下供給する苗収容体29…が他方側の苗植付け体25の上方を通過するように設定し、また、少なくとも、苗収容体29…の周回移動方向下手側の苗植付け体25に落下供給する苗収容体29…が、苗収容体29…の周回移動方向上手側の苗植付け体25の上方を通過するときは、その苗収容体29…については開放動作されないようにする開放規制手段を設ける。このように設けた上で、更に、苗植付け体25,25の上下動が一周期動作する間に苗収容体29…が2個分周回移動するように構成すると、苗収容体29…が二つの苗植付け体25,25の上方を直列的に通過しながら二つの苗植付け体25,25に対して苗供給漏れが生じることなく同時に苗を供給でき、且つ、二つの苗植付け体25,25の上方を通過した後に苗が供給されなかった苗収容体29…が生じないよう余すことなく二つの苗植付け体25,25に対して苗を供給できるものとなり、苗供給作業が余裕をもって行え、且つ、二つの苗植付け体25,25に対して確実に苗を供給できる。なお、前記開放規制手段は、例えば、苗収容体の周回移動方向下手側の苗植付け体に落下供給する苗収容体の蓋に突起を設け、この突起が、苗収容体の周回移動方向上手側の苗植付け体の上方を通過するときに、下方から支持する構成とすることで可能となる。
【0050】
この苗植機は、苗植付け体25…が植付けた苗に対して覆土鎮圧するための覆土鎮圧輪80…を各苗植付け体26…の苗植付け個所の各後方左右両側近傍位置に設けている。この覆土鎮圧輪80は、転動輪であって、機体に固定された取付部材32に左右方向の回動支点軸82回りに各植付条ごとに上下回動自在に取り付けられた覆土鎮圧輪支持フレ−ム102の回動先端側(後側)に取り付けられている。尚、左右両外側の植付条の覆土鎮圧輪80は、苗の植付位置に合わせて左右内側の植付条の覆土鎮圧輪80より前側位置に配置されている。これにより、各植付条で前後に異なる苗植付位置に拘らず、各々の覆土鎮圧輪80が苗植付け体25が苗を植え付けた直後に苗に対して覆土し周辺の土壌を鎮圧することができ、苗の植付精度が向上する。前記覆土鎮圧輪支持フレ−ム102は、平面視で前側(回動支点軸82側)が開放するようなU字型であり、パイプフレ−ムを適宜折り曲げて構成され、後端部が若干上側に立ち上がった形状になっている。この覆土鎮圧輪支持フレ−ム102の後端部には各植付条ごとに上下方向に延びるロッド103の下端を連結し、各植付条のロッド103(計4本)の上端を左右に延びるパイプ状の左右フレ−ム104の適宜位置で貫通させ、前後方向のピン105で前記左右フレ−ム104に対してロッド103が摺動しないように固定している。なお、前記ピン105をロッド103の上端部に備える孔(図示せず)に挿通して固定する構成であるが、前記孔はロッド103の上下方向の所定間隔おきに複数設けられている。従って、ピン105を挿通するロッド103の孔の位置を各植付条のロッド103で異ならせることにより、覆土鎮圧輪80…の鎮圧荷重を各植付条で個別に変更して調節でき、圃場の畝面の形状や土壌の特性(畝が崩れやすい土壌の特性等)に応じて各植付条で適正に苗の周辺に覆土及び鎮圧でき、各植付条の苗植付の適正化が図れる。
【0051】
そして、前記左右フレ−ム104は、機体フレーム2bに固着された左右方向の回動軸106回りに前後乃至上下に回動する回動ア−ム107に固着されている。尚、前記回動軸106は機体フレーム2bから左右に延設され、該回動軸106の両端部に回動ア−ム107を左右それぞれ設け、左右それぞれの回動ア−ム107が左右フレ−ム104の適宜位置を支持した構成となっている。また、回動軸106の両端部にはプレ−ト108を固着しており、該プレ−ト108を折り曲げて構成される規制部分108aに回動ア−ム107が当接することにより、回動ア−ム107がそれ以上上側(後斜め上側)へ回動しないように規制する。従って、前記規制部分108aが回動ア−ム107のストッパとなる。また、前記プレ−ト108を別途折り曲げて構成される部分108bと回動ア−ム107との間に引張スプリング109を設けており、該引張スプリング109により回動ア−ム107が下側(前斜め下側)へ回動するように付勢されている。従って、回動ア−ム108の下側への回動付勢で左右フレ−ム104ひいては覆土鎮圧輪80が下向きに付勢され、該覆土鎮圧輪80がある程度の荷重で地面に押し付けられて土壌への鎮圧作用を得るようになっている。左右の回動ア−ム107を繋ぐようにU字状の回動レバー110を固着して設けており、該回動レバー110が左右の回動ア−ム107,107と一体で回動するようになっている。従って、該回動レバー110を回動操作することにより、左右の回動ア−ム107を回動させて全ての植付条(計4条分)の覆土鎮圧輪80を同時に上下動させることもできる。よって、前記覆土鎮圧輪支持フレ−ム102、ロッド103、s左右フレ−ム104、回動ア−ム107、引張スプリング109及び回動レバー110等により、覆土鎮圧輪支持機構を構成している。
【0052】
操縦ハンドル2近傍には機体を走行させずに苗植付装置3及び苗供給装置4のみを駆動させるための空苗植えレバ−111を設けており、該空苗植えレバ−111により苗植付装置3及び苗供給装置4のみを駆動させてこれらの装置3,4の作動の確認や点検が行える構成となっている。図1の実線で示すように前記空苗植えレバ−111を下向きになるよう操作すると、空苗植え機能がオフとなって植付・昇降操作具Lの操作で機体を走行させながら苗植付装置3及び苗供給装置4を作動させる通常の植付が行える状態となる。一方、図1の仮想線で示すように前記空苗植えレバ−111を後向きになるよう操作すると、空苗植え機能がオンとなって走行停止状態で苗植付装置3及び苗供給装置4のみが作動する。なお、空苗植えレバ−111は、該レバ−111を付勢するレバースプリング(図示せず)の死点越えによりオン、オフの切替がなされる。そして、空苗植えレバ−111の中途部の前側(下側)部分には係合フック112を設けており、該係合フック112は前記回動レバー110の左右に延びる部分に係合し得る形状となっている。従って、空苗植えレバ−111が下向きになる通常の植付作業状態(空苗植え機能のオフ状態)で、覆土鎮圧輪80の上昇により回動レバー110が前記係合フック112の位置に到達するまで上側に回動して回動レバー107が係合フック112に当接すると、空苗植えレバ−111がレバースプリングによる前側への回動付勢に抗して後側に逃げ、回動レバー110が係合フック112の突出部を乗り越えた後にレバースプリングによる前側への付勢で係合フック112に確実に係合して固定される。よって、覆土鎮圧輪80が所定の高さまで上昇すると、係合フック112により回動レバー110ひいては左右の回動ア−ム107が回動しないように固定され、全ての植付条(計4条分)の覆土鎮圧輪80は上下動しないように固定されることになる。なお、空苗植えレバ−111が後向きになる空苗植え機能のオン状態では、回動レバー110の回動域から係合フック112が離れ、回動レバー110がいかなる位置に上下動しても係合フック112が係合しない構成となっている。よって、前記係合フック112により、覆土鎮圧輪支持機構を固定して覆土鎮圧輪80の上下動を規制する上下動規制手段を構成している。なお、回動レバー110を人為操作により係合フック112に係合させ、覆土鎮圧輪80を固定することもできる。なお、左右の回動ア−ム110を下側へ回動付勢する引張スプリング109も回動レバー110を係合フック112に係合させる側(下側)に作用するので、回動レバー110と係合フック112との係合の確実化が図れる。
【0053】
なお、上述では空苗植えレバ−111の操作で、係合フック112が覆土鎮圧輪80の上下動を規制する規制状態と覆土鎮圧輪80の上下動を規制しない規制解除状態とに切り替えられる構成としたが、係合フック112を空苗植えレバ−111とは別に設けて、係合フック112を移動させる専用の切替操作具を設けて任意に前記規制状態と前記規制解除状態とに切り替えできる構成としてもよい。また、植付・昇降操作具Lを植付部を駆動させる植付状態となる位置に操作すると、植付・昇降操作具Lからカム等の連繋機構を介して前記係合フック112が解除され、上昇保持されていた覆土鎮圧輪80が下降する構成としてもよい。これにより、機体旋回後の覆土鎮圧輪80の下降操作の簡略化が図れ、旋回時の操作性が向上する。尚、前記連繋機構は、カムを使用する以外にピンやワイヤ等を使用してもよい。また、前記連繋機構により、植付・昇降操作具Lを機体が上昇する上昇位置に操作すると、上昇保持されていた覆土鎮圧輪80が下降する構成としてもよい。これにより、機体旋回時に覆土鎮圧輪80の保持が必ず解除されるので、作業条件が異なる別の畝に移って植付作業をする際に覆土鎮圧輪80を保持していることを忘れてそのまま植付作業をすることで植付精度が悪くなるようなことを防止できる。
【0054】
また、苗植付け体25…が苗を植付ける前の圃場面を鎮圧して整地する鎮圧具となる鎮圧ローラ81を各苗植付け体26…の苗植付け個所の前方となる位置に設けている。尚、前記鎮圧ローラ81は、円筒形状であり、複数(4条分)の各苗植付け位置に対応して左右に複数個(4個)に分割して設けられている。エンジン5の下側で機体に固着された支持フレーム187には左右方向の支点軸188を軸心に上下に回動自在な鎮圧ローラ支持アーム189を左右に設けており、この左右の鎮圧ローラ支持アーム189が鉛直面上で上下に回動することになる。左右の鎮圧ローラ支持アーム189は、前記左右方向の支点軸188を介して連結され、一体で上下回動する構成となっている。そして、左右各々の鎮圧ローラ支持アーム189の回動先端部には機体の左右方向外側が低位となるように左右方向に傾斜する鎮圧ローラ軸190を回転自在に設けており、鎮圧ローラ支持アーム189の左右に鎮圧ローラ軸190を軸心として該軸190と一体回転する各々の鎮圧ローラ81を設けている。従って、左右に配列される4個の鎮圧ローラ81のうちの左右2個づつの鎮圧ローラ81が個別の鎮圧ローラ軸190で同じ左右傾斜角度となるよう支持され、各鎮圧ローラ81の接地面となる下面は機体の左右方向外側が低位となるように傾斜すると共に、機体の左右方向内側の鎮圧ローラ81に対して左右方向内側の鎮圧ローラ81が低位となる。尚、左右の鎮圧ローラ軸190は機体の左右中心に対して互いに左右対称に同じ角度で左右傾斜し、4個の鎮圧ローラ81が左右対称に左右方向に傾斜する。また、前記鎮圧ローラ軸190は、鎮圧ローラ支持アーム189が斜め後下がり姿勢の標準位置で機体平面視において左右方向に真直に向く状態となり、鎮圧ローラ支持アーム189が標準位置より上側に回動するにつれて機体平面視において機体左右方向外側が後位となるよう傾斜し且つ機体正面視において左右傾斜角度が小さくなり、逆に鎮圧ローラ支持アーム189が標準位置より下側に回動するにつれて機体平面視において機体左右方向外側が前位となるよう傾斜し且つ機体正面視において左右傾斜角度が大きくなる。従って、鎮圧ローラ支持アーム189が上側に回動するほど、鎮圧ローラ81の下面の左右傾斜角度が小さくなると共に、左右方向内側の鎮圧ローラ81と左右方向外側の鎮圧ローラ81との高低差が小さくなる。逆に、鎮圧ローラ支持アーム189が下側に回動するほど、鎮圧ローラ81の下面の左右傾斜角度が大きくなると共に、左右方向内側の鎮圧ローラ81と左右方向外側の鎮圧ローラ81との高低差が大きくなる。また、左右の鎮圧ローラ支持アーム189は支点軸188部分に設けたトルクスプリングで構成される鎮圧用スプリング113により下側へ回動付勢され、この鎮圧用スプリング113により4個の鎮圧ローラ81の鎮圧力が得られる構成となっている。支点軸188には該軸188と一体の鎮圧ローラ上昇レバー191を設けており、該鎮圧ローラ上昇レバー191の操作により左右の鎮圧ローラ支持アーム189を前記鎮圧用スプリング113に抗して上側へ回動させ、鎮圧ローラ81を使用しない植付作業時や路上走行時等に鎮圧ローラ81を対地浮上させる構成となっている。
【0055】
左右の鎮圧ローラ軸190は、機体の左右中央部で屈曲自在の継ぎ手(ユニバーサルジョイント)192により連結されている。これにより、複数個(4個)に分割した鎮圧ローラ81が同じ速度で回転するようになり、機体の走行により接地する鎮圧ローラ81が畝面に追従して回転するが、畝面の形状により一部の鎮圧ローラ81の接地が不十分であっても他の鎮圧ローラ81からの回転力が伝達されて鎮圧ローラ81を回転させることができ、畝面の鎮圧性能及び整地性能の向上が図れる。
【0056】
図1に示すように、この鎮圧ローラ81は、前後方向で後述する作業者用座席70L,70Rと重複する機体の前部位置に配置されている。従って、作業者用座席70L,70Rに座る作業者の体重が前記鎮圧ローラ81に良好に作用し、該鎮圧ローラ81による十分な圃場面の鎮圧効果を得ることができる。なお、鎮圧ローラ81は鎮圧用スプリング113により下向きに付勢されて土壌に押し付けられるが、前記鎮圧用スプリング113の反力で機体前部が浮き上がろうとするのを作業者用座席70L,70Rに座る作業者の体重で阻止することができ、機体の姿勢を適正に維持して苗の植付姿勢を適正に安定させることができる。逆にいえば、所望の鎮圧力を得るべく鎮圧用スプリング113のスプリング力(鎮圧荷重)を大きく設定することができる。
【0057】
機体前端の左右中央には、上方へ立ち上がるガードフレーム114を設けている。このガードフレーム114は、機体前端部に下向きに取り付けると前輪7を対地浮上させるスタンドとなる。
【0058】
この苗植機は、苗供給装置4に苗を補給する作業者が乗車して苗補給作業が行えるよう、作業者が座る作業者用座席70L,70Rを設けている。具体的には、左側苗供給装置4Lの前側部の左外側近傍に左側の作業者用座席70Lを配置し、右側苗供給装置4Rの前側部の右外側近傍に右側の作業者用座席70Rを配置している。これらの座席70L,70Rの背凭れは、それぞれ機体の左右方向外側に位置するよう設けていて、その座席70L,70Rに座る作業者は、苗供給装置4L,4Rの前側部に向って機体内側向き姿勢で着座して、苗供給装置4L,4Rの前側部に対して苗補給作業を行う。また、本例の苗植機は、畝溝を走行する後輪6,6の後側で機体後部に設けた操縦ハンドル2の左右方向外側に、作業者が立って前に歩きながら苗供給装置4の後側部に苗を補給する作業を可能とする作業空間Wを形成しており、この作業空間Wに立つ作業者から苗供給装置4L,4Rの後側部に対して苗補給作業を行うことができる。
【0059】
また、左右の作業者用座席70L,70Rは、前輪7,7の車軸17,17位置より後側で且つ後輪6,6の車軸10,10位置より前側に位置させて配置している。更に、作業者用座席70L,70Rは、機体側面視で後輪6,6の上方に座席の一部がオーバーラップするように配置している。また、作業者用座席70L,70Rは、機体側面視で走行用の伝動ケース9,9の回動軸心Xの上方に配置しており、前輪7,7は、走行用の伝動ケース9,9の回動軸心Xより前側に配置した構成としている。
【0060】
作業者用座席70L,70Rの支持構成は、後輪6,6の車軸10,10を支持する支持部材である伝動ケース9,9の内側に突出させた後輪6,6の車軸10,10に取付けた座席支持部材72,72;73,73で支持し、該座席支持部材72,72;73,73に、後輪6,6の車軸10,10が上下しても作業者用座席70L,70Rが前後に傾かないようにする姿勢維持機構を設けている。
【0061】
この姿勢維持機構は、本例では、以下のように構成している。まず、上部に作業者用座席70L,70Rを取付けた座席支持フレーム72,72を設け、また、前輪7,7の車軸17,17を支持する支持部材である前記縦フレーム16a,16aと、後輪6,6の車軸10,10とを連結する前後に長い連結フレーム73,73を設ける。この連結フレーム73,73の前端部側は、前輪7,7の車軸17,17を支持する前記縦フレーム16a,16aの内側に固着、突出させたピンに回動自在の支持筒74,74に前後方向摺動自在に挿入させている。また、連結フレーム73,73の後端部側は、後輪6,6の車軸10,10に回動自在に取付けた筒部75,75に一体的に固着している。従って、走行用の伝動ケース9,9が下移動して後輪6,6の車軸10,10が上下しても、連結フレーム73,73は、前後の傾き変動が生じない。この連結フレーム73,73の前後途中個所に、前記座席支持フレーム72,72の下部を取付けている。よって、走行用の伝動ケース9,9が回動して後輪6,6の車軸10,10が上下しても、作業者用座席70L,70Rは前後に傾いたりすることがない。また、この連結フレーム73,73に対して、座席支持フレーム72,72は上下軸心まわりに回動させて、作業者用座席70L,70Rを機体内側に移動可能に設けていて、これにより、移動時や格納時に作業者用座席70L,70Rを機体内側に収納させることができる。
【0062】
なお、連結フレーム73,73の前端部側を装着している前記支持筒74,74を前輪7,7の車軸17,17に取付けることもできる。また、連結フレーム73,73の後端部を後輪6,6の車軸10,10を支持する支持部材である走行用の伝動ケース9,9の内側に突出させた軸に回動自在に前記筒部75,75を回動自在に取付けこともできる。更に、連結フレーム73,73の前輪7,7側の連結部は、連結フレーム73,73を、前輪の車軸17,17又は縦フレーム16a,16aに対して摺動不能且つ回動自在に連結し、連結フレーム73,73の後輪6,6側の連結部は、連結フレーム73,73を、後輪の車軸10,10又は伝動ケース9,9に対して摺動自在且つ回動自在に連結する構成することもできる。このように構成すると、走行用の伝動ケース9,9が下方回動して後輪6,6の車軸10,10が下降すると、後輪6,6が機体に対して相対的に前方移動するが、作業者用座席70L,70Rは機体に対して相対的に前後方向には移動しない。従って、機体を旋回させるために、後輪6,6をまず下降して機体を上昇させ、そして、操縦ハンドル2を押し下げて二輪接地状態にして機体を旋回させるとき、前後方向において作業者用座席70L,70Rが後輪6,6の車軸10,10に向って接近することになるので、作業者用座席70L,70Rの重量による操縦ハンドル2の押し下げ負荷が軽減される。また、連結フレーム73,73の前輪7,7側の連結部と、連結フレーム73,73の後輪6,6側の連結部の両方ともに、連結フレーム73,73を摺動自在且つ回動自在に連結する構成とすることもできる。
【0063】
更に、この苗植機は、左右の作業者用座席70L,70Rの各機体左右方向内側下方にステップ71L,71Rを設けている。このステップ71L,71Rは、機体側面視で作業者用座席70L,70Rの下方位置から前輪7,7の上方位置すなわち機体前端近傍にわたって延設している。従って、作業者は、機体前方を介して該ステップ71L,71Rに乗降することができる。後輪6,6は大径車輪で、前輪7,7は小径車輪であり、機体側面視で、この小径車輪の前輪7,7の上方にステップ71L,71Rの前側部分が位置するように設けている。ステップ71L,71Rは、後側をアクスルケース9a,9aの上部に取付け、前側を、バンパーフレーム95に内端部を固着したステップ支持フレーム92,92と、該ステップ支持フレーム92,92の外端部と固着し前記支持プレート9c,9cと一体のステップ支持プレート93,93との上に固定して取付けている。従って、走行用の伝動ケース9、9を下方回動させて後輪6、6を下降させると、機体が前下がりに傾斜して前記ステップ71L,71Rも前側に傾斜するため、作業者が機体前方と該ステップ71L,71Rとの間で容易に乗降することができる。また、後輪6、6を下降させても、機体前方の地面と該ステップ71L,71Rとの間の段差があまり大きくならないので、容易に乗降することができる。
【0064】
作業者用座席70L,70Rの後側近傍で機体側面視で後輪6,6の車軸10,10の上方位置に、苗供給装置4に補給する苗を収容可能なコンテナC、Cを設置可能に設けている。本例では、プラスチック等で成形された箱状のコンテナCの両側部に形成された取っ手孔C1,C1の一方側に係合してコンテナCを支持するコンテナ係合部材94,94を設けて、これにより、コンテナC、Cを設置可能に設けていて、コンテナ支持部の構造が簡単なものとなり、且つ、コンテナを設置していないときにコンテナ支持部が大きな空間を占めず、機体のコンパクト化と軽量化、低コスト化が図れる。図示例の具体構成は、コンテナ係合部材94,94の上端部がクランク状に屈曲していて、その上端部をコンテナCの取っ手孔C1に外側から挿入してクランク状の屈曲部で取っ手孔C1が引っかるようにすることで、コンテナCをコンテナ係合部材94に支持させることができる。また、コンテナ係合部材94は、座席支持フレーム72,72の上部に固着していて、作業者用座席70L,70Rの後側に起立するように設けている。路上走行時に作業者が作業者用座席70L,70Rに着座したときに手摺を兼ねる。
【0065】
また、機体平面視において左右の作業者用座席70L,70Rの間で且つ左右の苗供給装置4の前方位置には、苗トレイを載置するための苗載枠193を設けている。この苗載枠193は、機体平面視でU字型の棒材で構成され、前端部をガードフレーム114に載せて支持される構成となっている。また、前記苗載枠193は、機体側のフレーム194に前後にスライド可能に支持され、後方へスライドすれば苗供給装置4の下方へ収納でき、機体前方からステップ71L,71Rを介して乗降する作業者の邪魔にならないようにできる。この苗載枠193により、左右の作業者用座席70L,70Rに座る各々の作業者が苗供給装置4への苗補給作業を容易に行える。また、機体平面視で左右各々の苗供給装置4における苗収容体29の周回移動軌跡の内側には、載置棚部195、196を複数段備えて苗トレイを複数段に載置できる第二の苗載枠197を設けている。この第二の苗載枠197は、上方に立ち上がる門型の基部198と、該基部198に適宜高さで片持ち支持され機体平面視でU字型の棒材で構成される載置棚部195、196とで構成され、下段の載置棚部196ほど載置面積が広く多くの苗トレイを載置できる構成となっている。これにより、苗トレイが載置された苗載枠197ひいては機体の低重心化が図れて安定性が増すと共に、苗供給装置4への苗補給作業の容易化が図れる。
【0066】
また、座席支持フレーム72に支持されて作業者用座席70Lの近傍に位置する第三の苗載枠199を設けている。この第三の苗載枠199は、座席支持フレーム72の中途部から後方へ延び上方に屈曲して立ち上がる基部200と、該基部200に適宜高さで片持ち支持され機体平面視で方形状の棒材で構成される複数段の載置棚部201とで構成され、各々の載置棚部201が基部200回りに横方向に回動可能に構成されている。この苗載枠199は、作業者用座席70Lの後方のスペースを有効利用して配置され、作業者用座席70L,70Rに座る作業者が苗供給装置4への苗補給作業を容易に行える。尚、この苗載枠199は、座席支持フレーム72から支持される構成としたが、支持フレーム32aあるいは連結フレーム73や、後述するタンク支持台76等の灌水用のタンクTを支持する部材から支持される構成としてもよい。
【0067】
この苗植機は、苗植付け体25に灌水用の水を供給可能に構成して、苗の植付と同時に灌水が行なえるようになっている。そして、灌水用の水を蓄えるタンクT、T;T,Tは、後輪6,6の機体左右方向内側で機体側面視において後輪6,6の車軸10,10付近に設けた左右のタンク支持台76,76上に左右に振り分けて載置可能に設けている。このタンク支持台76,76は、前記連結フレーム73,73に固着した支持部材上に固定されている。更に、タンクT、T;T,Tは、走行用の伝動ケース9、9の機体左右方向内側で、且つ機体平面視で前記伝動ケース9、9と機体フレーム2bとの間の空間部に配置され、機体のスペースを有効利用できるような位置に配置されている。従って、機体のコンパクト化が図れる。また、水を貯留するタンクTの重量が左右の後輪6,6の近くで作用するので、タンクTの重量が確実に後輪6,6に作用し、後輪6,6の走行推進力を安定させることができると共に、機体旋回時に機体の旋回中心となる走行車輪(後輪)6の近くの左右一方に配置したタンクTの重量が旋回駆動負荷を与えにくいため、機体旋回におけるモ−メントを低くできてスム−ズに旋回できる。なお、機体旋回時に後輪6,6を下降させて機体を上昇させると機体平面視で左右の作業者用座席70L,70Rが左右各々の後輪6,6に接近することになるので、旋回中心となる走行車輪(後輪)6の上方近くに左右一方の作業者用座席70L,70Rが接近して該左右一方の作業者用座席70L,70Rの重量が旋回駆動負荷を与えにくくなり、機体旋回におけるモ−メントを低くできてスム−ズに旋回できる。また、タンクTの重量で機体旋回時における操縦ハンドル2の押し下げ負荷にあまり影響を与えず、タンクTの重量すなわちタンクT内の水の容量に拘らず操縦ハンドル2の押し下げ負荷を適切な負荷に維持でき、旋回操作性を向上させることができる。従来、タンクや作業者用座席等は機体の左右中央位置に配置されていたので、左右何れの方向に旋回する場合でもタンクや作業者用座席が旋回におけるモ−メントを大きくする要因となり、旋回性能を悪化させるおそれがある。ところが、本実施形態のようにタンクT及び作業者用座席70L,70Rを左右に振り分けて左右各々が旋回時に機体平面視で重複あるいは接近するように配置構成することにより、旋回の円滑化が図れて旋回性能を向上させることができる。
【0068】
尚、上記の4個のタンクTは同じ高さで配置される構成としたが、複数のタンクTの互いの高さを相違させると共に互いのタンクTを連結パイプで連通させ、低位のタンクTからプランジャポンプ91へ水が供給される構成としてもよい。これにより、プランジャポンプ91へ確実に水を供給できると共に、連結パイプにより複数のタンクTのうちの何れのタンクTへ水を供給しても、各タンクTへ適宜水が供給され、タンクTへ水を供給する作業が容易になる。特に、機体の左右に配置されるタンクTを連結パイプにより互いに連通させた構成とすると、左右のタンクTに貯留する水量を常に同じにすることができ、機体の左右重量バランスが向上する。また、タンクT自体を斜めに保持し、タンクT内で低位となるタンクTの角部に連結パイプあるいはプランジャポンプ91へ水を供給するためのパイプ等の先端を臨ませた構成とすれば、タンクT内の水をパイプへ確実に供給することができる。尚、上述ではタンクT内に水を貯留する場合について説明したが、タンクT内に薬液や液肥等の液体を貯留する構成であってもよい。
【0069】
なお、作業者が作業者用座席70L,70Rに座らず後輪6,6の後側で操縦ハンドル2の左右方向外側の作業空間Wで歩行しながら作業をするとき、作業者用座席70L,70Rひいてはステップ71L,71Rが不要であるので、該ステップ71L,71R上にタンクT、T;T,Tを載置してもよい。特に、畦が高くて機体に対して後輪6,6が下降する側となるときは、伝動ケ−ス9,9が前側下方に回動することになるから、機体に対して後輪6,6が前寄りに位置することになり、機体が後輪6,6位置を支点に後側へ傾きやすくなって機体の前後方向の姿勢が不安定になりがちであるが、タンクT、T;T,Tをタンク支持台76,76の前側に位置するステップ71L,71R上に載置することにより機体全体の重心位置を前寄りにでき、機体の姿勢を安定させることができて、苗の植付姿勢を良好に維持でき、あるいは機体が後側へ転倒するのを防止できる。
【0070】
また、作業者用座席70L,70Rの後側で機体側面視で後輪6,6の車軸10,10の上方位置で且つ機体側面視でタンク支持台76,76上に載置したタンクT,T;T,Tの上方位置に苗供給装置4に補給する苗を収容可能なコンテナCを設置可能に設けている。
【0071】
以上のとおり、上記の苗植機は、左右一対の前輪と左右一対の後輪が畝を跨いだ状態で前進走行しながら、苗植付け体25,25,25,25が圃場に複数条(4条)に苗を植付ける。苗供給装置4L,4Rは苗植付け体25,25,25,25に苗を供給する。作業者は、作業者用座席70L,70Rに着座して苗供給装置4L,4Rに苗を補給する作業を行うことができる。
【0072】
よって、この苗植機は、左右一対の前輪7,7と左右一対の後輪6,6を備えた走行車体2と、圃場に苗を植付ける苗植付け体25…と、該苗植付け体25…に苗を供給する苗供給装置4L,4Rと、該苗供給装置4L,4Rに苗を補給する作業を行う作業者が座る作業者用座席70L,70Rとを備えた苗植機において、前記作業者用座席70L,70Rを、前記前輪7,7の車軸17,17位置より後側で且つ前記後輪6,6の車軸10,10位置より前側で前記苗供給装置4L,4Rの左右方向外側近傍に前記苗供給装置4L,4Rに向って機体内側向き姿勢で着座可能に設けている。従って、作業者が、左右横向き姿勢で作業者用座席70L,70Rに着座して苗供給装置4L,4Rに容易に能率よく苗を補給でき、そして、機体の進行方向前方及び後方の両方向を容易に確認できて、機体の操縦を適確に行なえ、作業者が安心して乗車でき、且つ、圃場に植付けられた苗の植付け状態を容易に確認でき、不適正な植付け状態になったときの対応を迅速に行うことができて良好な植付け作業が行える。更に、作業者用座席70L,70Rの重量とその座席に座った作業者の体重は、前後車輪6,6,7,7の各車軸10,10,17,17の前後間で作用するので、前輪6,6と後輪7,7の両方の車輪の接地圧が高まり、よって、前輪7,7の浮き上がりが抑制されて、苗の植付が良好に行なえ、また、直進性も向上し、苗の植付位置の左右のずれも生じ難くなる。
【0073】
また、この苗植機は、走行車体2の前部側にエンジン5及びミッションケース8を設け、該ミッションケース8の左右両側部に前後に長い走行用の伝動ケース9,9の前部を回動自在に取付け、該走行用の伝動ケース9,9の後部側面から突出させた車軸10,10に前記後輪6,6を装着し、該後輪6,6を上下動するよう前記走行用の伝動ケース9,9を回動させる駆動手段12を前記走行用の伝動ケース9,9に連結し、前記ミッションケース8内の動力を前記走行用の伝動ケース9,9内の伝動機構を介して前記後輪6,6の車軸10,10に伝動して前記後輪6,6を駆動回転する構成とし、前記走行車体2に連結したハンドルフレーム2bの後部に歩行操縦用の操縦ハンドル2を前記後輪6,6の車軸10,10より後方に位置する状態で取付け、前記作業者用座席70L,70Rを機体側面視で前記後輪6,6の上方に座席の一部がオーバーラップするように配置している。従って、歩行型の機体構成として機体のコンパクト化と簡略化が図れる。また、圃場端などで機体を旋回させるときに、機体後部の操縦ハンドル2を操縦者が押し下げて後輪6,6の車軸10,10を支点に機体を後側に傾かせて前輪7,7を浮上させ四輪接地状態から二輪接地状態にして機体を旋回させるが、この構成とした苗植機では後輪6,6の車軸10,10より前側に作業者用座席70L,70Rが位置しているので、操縦ハンドル2の押し下げ時に作業者用座席70L,70Rに作業者が着座していると作業者の体重により操縦ハンドル2の押し下げが容易に行なえない。しかし、機体の旋回時には作業者用座席70L,70Rに着座した作業者は機体外に降りているので、作業者用座席70L,70Rに着座した作業者の体重が操縦ハンドル2の押し下げ時の大きな負荷となることがなく、また、走行用の伝動ケース9,9がその前部側を支点に回動して機体旋回前に後輪6,6を下降すると後輪6,6が機体前側に移動することになり、そして、作業者用座席70L,70Rが機体側面視で後輪6,6の上方に座席の一部がオーバーラップしているので、操縦ハンドル2を押し下げて後輪6,6の車軸10,10を支点に機体を後側に傾かせると、作業者用座席70L,70Rが比較的大きく後方に移動することになり、操縦ハンドル2の押し下げ時に、作業者用座席70L,70Rが機体側面視で後輪6,6の車軸10,10上方位置近傍に移動して、作業者用座席70L,70Rの重量による操縦ハンドル2の押し下げ時の負荷が小さくなって、機体の旋回操作が容易に行える。
【0074】
また、この苗植機は、歩行操縦用の操縦ハンドル2を前記後輪6,6の車軸10,10より後方位置に設け、前記苗植付け体25…を、先端が下方に向いたくちばし状の苗植付け体として、該苗植付け体25…が苗を上方から受け入れて下降し圃場に突入したとき下部を開いて苗を圃場に放出しその後上昇するよう動作して苗を圃場に植付ける構成とし、苗供給装置4を、苗を上方から受け入れて内側に苗を収容する複数の苗収容体29…をループ状に互いに連結して前後に配置した軸51,51の回りを機体平面視で前後方向に長い長円状軌跡で周回移動させて該軌跡の後側で前記苗植付け体25…に上方から苗を落下供給する構成とし、前記苗植付け体25…を前記後輪6,6の車軸10,10位置より後側に配置し、前記苗収容体29…が周回する前後の軸51,51を前記左右の後輪6,6より機体内側で、且つ、前記苗収容体29…が周回する前側の軸51を前記後輪6,6の車軸10,10位置より前側で、前記苗収容体29…が周回する後側の軸51を前記後輪6,6の車軸10,10位置より後側に配置し、前記作業者用座席70L,70Rを、前記苗供給装置4の前側部の左右方向外側近傍で前記苗供給装置4に向かって機体内側向き姿勢で着座可能に設け、前記後輪6,6の後側で機体後部に設けた操縦ハンドル2の左右方向外側に、作業者が立って前に歩きながら前記苗供給装置4の後側に苗を補給する作業を可能とする作業空間Wを形成している。従って、作業者用座席70L,70Rを苗供給装置4の左右外側方に配置しながらも、苗供給装置4を左右に幅狭く形成できて機体をコンパクトに構成でき、また、作業者は、作業者用座席70L,70Rに着座して苗供給装置4の前側へ容易に且つ楽に苗の補給が行え、軟弱な圃場などで作業者が作業者用座席70L,70Rに座らずに、後輪6,6の後側に立って機体の進行とともに歩きながら苗供給装置4の後側へ容易に苗の補給が行うことができる。更には、苗供給装置4の前側に対しては、作業者用座席70L,70Rに着座した作業者が苗の補給を行い、苗供給装置4の後側に対しては、後輪6,6の後側に立って機体の進行とともに歩く作業者が苗の補給を行い、一層容易に能率良く作業を行うこともできる。
【0075】
また、この苗植機は、前輪7,7を前記走行用の伝動ケース9,9の回動軸心より前側に配置し、前記作業者用座席70L,70Rは、機体側面視で前記走行用の伝動ケース9,9の回動軸心Xの上方に配置している。従って、後輪6,6が上下しても作業者用座席70L,70Rと接触しにくいため、作業者用座席70L,70Rをできるだけ低く配置できて、機体をコンパクトに構成でき、且つ機体の重心を低くできて、機体の操縦性が良好になり、また走行安定性が向上して苗の植付が良好に行なえる。
【0076】
また、この苗植機は、後輪6,6を大径車輪とし前輪7,7を小径車輪とし、作業者用座席70L,70Rの機体左右方向内側下方にステップ71L,71Rを設け、該ステップ71L,71Rを機体側面視で前記作業者用座席70L,70Rの下方位置から前記前輪7,7の上側位置ひいては前輪7,7より前側位置まで延設している。従って、機体前部側から作業者が容易にステップ71L,71R上に乗降りでき、圃場端に至ったときに機体から容易に且つ迅速に降りれて機体の旋回操作を容易に且つ迅速に行える。
【0077】
また、この苗植機は、苗植付け体25…は複数体左右に並べて設け、前記苗供給装置4L,4Rは、機体の左右二箇所で前記苗収容体29…が機体平面視で前後方向に長い長円状軌跡で周回移動するように左右に二つ並べて設け、該左右の苗供給装置4L,4Rによって前記複数の苗植付け体25…のそれぞれに苗を供給するように構成し、作業者用座席70L,70Rは、左右の苗供給装置4L,4Rのそれぞれ左右方向外側方近傍に位置するようにして左右に二つ設けている。従って、左右の苗供給装置4L,4Rによって左右に複数設けた苗植付け体25…のそれぞれに苗が供給されて該複数の苗植付け体25…で複数条同時に植付けが行え、更に左右の苗供給装置4L,4Rのそれぞれ左右方向外側方近傍に設けた作業者用座席70L,70Rに作業者が座って左右の苗供給装置4L,4Rに苗を補給できるので、能率よく苗植作業が行え、また、作業者用座席70L,70Rを左右に設けているので、作業者の体重による機体の左右重量バランスの悪化も小さくできる。
【0078】
また、この苗植機は、後輪6,6の車軸10,10が上下するよう該車軸10,10を支持する支持部材9,9を動作可能に設け、前記作業者用座席70L,70Rを、少なくとも前記後輪6,6の車軸10,10又は該車軸10,10を支持する支持部材9,9に取付けた座席支持部材73,72で支持し、該座席支持部材73,72に、前記後輪6,6の車軸10,10が上下しても前記作業者用座席70L,70Rが前後に傾かないようにする姿勢維持機構を設けている。従って、作業者用座席70L,70Rを、少なくとも前記後輪6,6の車軸10,10又は該車軸10,10を支持する支持部材9,9に取付けた座席支持部材73,72で支持するので、作業者用座席70L,70Rに着座した作業者の体重は、後輪6,6の車軸10,10又は該車軸10,10を支持する支持部材9,9に直接作用し、エンジン5やミッションケース8に対してや苗植付け体25…や苗供給装置4を支持する部材などに対して直接作用することがないので、機体の軽量化が図れる。また、後輪6,6を上下動する駆動手段12にかかる負荷を小さく抑えることができ、後輪6,6の上下動を軽快に且つスムーズに動作させることができる。更に、座席支持部材73,72に、前記後輪6,6の車軸10,10が上下しても前記作業者用座席70L,70Rが前後に傾かないようにする姿勢維持機構を設けたので、作業者用座席70L,70Rを後輪6,6の車軸10,10又は該車軸10,10を支持する支持部材9,9に取付けた座席支持部材73,72で支持するものとしながらも、後輪6,6が上下動しても作業者用座席70L,70Rが前後に傾いたりせず、乗車時の作業者の安定性が一層向上し、苗供給装置4への苗の補給作業を能率良く安全に行える。
【0079】
また、この苗植機は、前輪7,7の車軸17,17又は該車軸17,17を支持する支持部材16a,16aと、後輪6,6の車軸10,10又は該車軸10,10を支持する支持部材9,9とに、それぞれ左右方向の軸心まわりに回動自在に連結し且つ前輪側或は後輪側のいずれか一方或は両方で前後方向に摺動自在に連結して、前記後輪6,6の車軸10,10が上下しても前後の傾き変動が生じない前後に長い連結フレーム73,73を設け、該連結フレーム73,73に、上部に作業者用座席70L,70Rを取付けた座席支持フレーム72,72の下部を取付けて前記姿勢維持機構を構成している。従って、作業者用座席70L,70Rの支持機構と前記姿勢維持機構を簡略な構造に構成でき、一層、機体の軽量化を図ることができる。
【0080】
また、この苗植機は、作業者用座席70L,70Rの後側近傍で機体側面視で前記後輪6,6の車軸10,10の上方位置に苗供給装置4に補給する苗を収容可能なコンテナCを設置可能に設けている。従って、苗供給装置4に補給する苗を収容可能なコンテナCを作業者用座席70L,70Rの後側近傍で機体側面視で後輪6,6の車軸10,10の上方位置に設置できるので、作業者は、作業者用座席70L,70Rに着座して苗補給作業をする場合も、後輪6,6の後側に立って苗補給作業をする場合も、コンテナCから苗を容易に取出して苗供給装置4に苗を補給することができ、容易に且つ能率良く作業が行なえる。また、二輪接地状態として旋回すべく機体を後輪6,6の車軸10,10まわりに傾けたとき、コンテナCが後輪6,6の車軸10,10の上方位置に設置されているので、コンテナC内に収容された苗が飛び出してしまうことが生じ難くなる。
【0081】
また、この苗植機は、苗植付け体25…に灌水用の水を供給可能に構成し、灌水用の水を蓄えるタンクT…を後輪6,6の機体左右方向内側で機体側面視において後輪6,6の車軸10,10付近に設けたタンク支持台76,76上に載置可能に設けている。従って、灌水用の水を蓄えるタンクT…を機体側面視で前記後輪6,6の車軸10,10付近に設けたタンク支持台76,76上に載置するので、タンクT内の水の重量による操縦ハンドル2の押し下げ時の負荷を小さくでき、また機体旋回におけるモ−メントを低くできて、機体の旋回操作が容易に行える。
【0082】
また、この苗植機は、苗植付け体25…に灌水用の水を供給可能に構成し、灌水用の水を蓄えるタンクT…を機体側面視で前記後輪6,6の車軸10,10付近に設けたタンク支持台76,76上に載置可能に設け、作業者用座席70L,70Rの後側で機体側面視で後輪6,6の車軸10,10の上方位置で且つ機体側面視で前記タンク支持台76,76上に載置した前記タンクT…の上方位置に前記苗供給装置4に補給する苗を収容可能なコンテナCを設置可能に設けている。従って、タンク支持台76,76上に載置した灌水用のタンクT…の上方位置に苗供給装置4に補給する苗を収容可能なコンテナCを設置可能に設けたので、機体をコンパクト構成でき、且つ旋回操縦時にコンテナC内の苗が飛び出したりしにくく、また操縦ハンドル2を押し下げて旋回操縦する時の負荷を小さくできて、機体の旋回操作が容易に行える。
【0083】
そして、この苗植機は、苗植付装置3で植え付けた苗の周辺に覆土しながら鎮圧する覆土鎮圧輪80を後輪6、6より後側に配置し、前記覆土鎮圧輪80を上下動自在に支持する覆土鎮圧輪支持機構を設け、前記覆土鎮圧輪80が所定の高さまで上動したとき、前記覆土鎮圧輪支持機構を固定して覆土鎮圧輪80の上下動を規制する係合具(係合フック112)を設けている。従って、覆土鎮圧輪支持機構により覆土鎮圧輪80が圃場面に良好に追従し、圃場に植え付けた苗の周辺に覆土しながら該苗の周辺の土壌を鎮圧する。そして、機体が後輪6、6を支点に後側へ傾いて覆土鎮圧輪80が所定の高さまで上動すると、係合具(係合フック112)により自動的に覆土鎮圧輪80が固定され、覆土鎮圧輪80及び覆土鎮圧輪支持機構で機体の自重を受けて、後輪6、6を支点に機体の後側へ転倒するようなことを防止できる。よって、通常の作動域で覆土鎮圧輪80が上下動しているときは、該覆土鎮圧輪80が圃場面に良好に追従し、苗の周辺への覆土作用や苗の周辺の土壌の鎮圧作用を適正に得ることができ、植え付けた苗の姿勢を適正に維持することができる。そして、機体が後輪6、6を支点に後側へ傾いて通常の作動域を超えて覆土鎮圧輪80が所定の高さまで上動すると、自動的に覆土鎮圧輪80の上下動が規制され、該覆土鎮圧輪80により機体の自重を受けて機体の後側への転倒を防止でき、植付作業の安全性が向上する。
【0084】
また、機体の旋回開始時に、操縦ハンドル2を把持する作業者が該ハンドル2を押し下げて機体を後側へ傾けることにより、覆土鎮圧輪80を意図的に上動させて回動レバー110を係合具(係合フック112)に固定させ、覆土鎮圧輪支持機構を固定して覆土鎮圧輪80を所定の上動位置で固定させることができる。これにより、機体旋回時に、覆土鎮圧輪80が邪魔にならず、該覆土鎮圧輪80を畝に干渉させないようにして容易に旋回操作でき、旋回操縦性が向上する。
【0085】
また、係合具(係合フック112)を回動レバー110の回動域に位置させて係合具(係合フック112)により覆土鎮圧輪80の上下動を規制する規制状態と、係合具(係合フック112)を回動レバー110の回動域から離して係合具(係合フック112)により覆土鎮圧輪80の上下動を規制しない規制解除状態とに切替可能な切替手段を設けている。従って、切替手段を覆土鎮圧輪80の上下動を規制しない規制解除状態に切り替えると、覆土鎮圧輪支持機構により覆土鎮圧輪80が圃場面に良好に追従し、圃場に植え付けた苗の周辺に覆土しながら該苗の周辺の土壌を鎮圧する。一方、切替手段を覆土鎮圧輪80の上下動を規制する規制状態に切り替えると、上下動規制手段により覆土鎮圧輪80の上下動が規制され、機体が後側へ傾いても覆土鎮圧輪80で機体の自重を受けて機体の後側への転倒を防止できる。よって、比較的平坦で傾斜度の小さい圃場又は圃場面の凹凸が大きい圃場では、切替手段を前記規制解除状態に切り替えることにより、覆土鎮圧輪80を大きく上下動させて圃場面に良好に追従させることができ、苗の周辺への覆土性能や苗の周辺の土壌の鎮圧性能を向上させることができて、植え付けた苗の姿勢を適正化を図ることができる。一方、傾斜地等の傾斜度の大きい圃場では、切替手段を前記規制状態に切り替えることにより、覆土鎮圧輪80の上動が規制されるため、機体が後側へ傾いても該覆土鎮圧輪80により機体の自重を受けて機体の後側への転倒を防止でき、植付作業の安全性が向上する。
【0086】
そして、この苗植機は、左右に複数の苗植付け体25を配列し、共通の上下動機構26により同期して上下動することにより苗を植え付ける複数の苗植付け体25において、機体の左右方向内側の苗植付け体25に対する左右方向外側の苗植付け体25の上下高さを変更する高さ変更機構115を設けている。従って、高さ変更機構115により、左右に略水平の畝面であっても左右端部が低くなるかまぼこ状の畝面であってもあるいはその畝面の左右中央部と左右端部との高低差が相違しても、畝の成形過程や土質等によって異なる畝面の各種形状に対応して、各植付条の苗の植付深さが適正になるよう、機体の左右方向内側の苗植付け体25に対する左右方向外側の苗植付け体25の上下高さを変更することができ、各植付条の苗の植付深さの適正化が図れる。また、高さ変更ハンドル119により、作業者が機体の後側から容易に左右方向外側の苗植付け体25の上下高さを変更することができる。
【0087】
また、共通の上下動機構26により同期して上下動することにより苗を植え付ける複数の苗植付け体25において、機体の左右方向内側の苗植付け体25に対して左右方向外側の苗植付け体25を前後方向で前記前輪7及び後輪6の車軸10、17寄りとなる前側位置に配置している。従って、苗を千鳥状に植え付けることができると共に、畝溝部分の土面の凹凸等により前輪7又は後輪6の車軸10、17回りに上下動して機体の姿勢が変化しても、左右方向外側の苗植付け体25の上下高さの変化量は左右方向内側の苗植付け体25の上下高さの変化量より小さく抑えられ、左右端部が低くなるかまぼこ状の畝面においてその左右端部は傾斜角度が大きくてその高さがばらつきやすいが、機体の左右方向外側の苗植付け体25による苗の植付深さの安定化が図れるため、畝の左右端部で浮き苗が発生するようなことを防止でき、各植付条の苗の植付深さの適正化が図れる。
【0088】
尚、図13及び図14に示すように、高さ変更機構115をパンタグラフ式に構成することができる。この高さ変更機構115は、略同じ長さの4本のリンクを四角形状に連結する四辺リンク機構125と、該四辺リンク機構125の対角位置にある前後の連結軸126,127に貫通する前後方向の螺子軸128と、該螺子軸128の後端に該螺子軸128と一体で回転する高さ変更ハンドル129とを備えている。尚、前記前後の連結軸126,127のうちの一方(前側)の連結軸126は螺子軸128と螺合し、他方(後側)の連結軸127は螺子軸128を回転自在に支持している。また、四辺リンク機構125の対角位置にある上下の連結軸130,38のうちの一方(上側)の連結軸130は上下動機構26の上下の昇降リンク40a,40bの各先端部を上下に連結する連結部材39に固着され、他方(下側)の連結軸38は左右方向外側の苗ガイド37に装着され該苗ガイド37を支持する連結軸となっている。尚、前記他方(下側)の連結軸38は、図示しないスライドガイドにより、上下鉛直方向にのみ移動できるように移動方向が規制されている。従って、作業者が高さ変更ハンドル129を回動させることにより、前記他方(下側)の連結軸38を上下方向に移動させて左右方向外側の苗ガイド37及び苗植付け体25の高さを変更する構成となっている。これにより、高さ変更ハンドル129が苗ガイド37及び苗植付け体25より後側に位置し且つ後方に向いているので、機体の後側にいる作業者が高さ変更ハンドル129を容易に操作できる。
【0089】
そして、この苗植機は、走行車体1と、左右に複数個配列される苗植付け体25と、該苗植付け体25による苗植付け個所の前方位置で該苗植付け体25が苗を植付ける前の土壌に接地して鎮圧する鎮圧ローラ81とを備え、鎮圧ローラ軸190を左右に傾斜させて前記鎮圧ローラ81の接地面を機体の左右両外側にいくにつれて低位となるよう左右に傾斜させた構成となっている。
【0090】
よって、走行車体1で機体を走行させることにより、複数個の鎮圧ローラ81が苗植付け体25による苗植付け個所の前方位置で接地して苗植付け体25が苗を植付ける前の土壌を鎮圧し、その鎮圧した土壌面に左右に複数個配列した苗植付け体25により複数条に苗を植え付ける。そして、鎮圧ローラ81の接地面を機体の左右両外側にいくにつれて低位となるよう左右に傾斜させた構成としたので、鎮圧ローラ81を左右方向外側が低くなる畝面に追従させて植付条数分(4条分)となる鎮圧ローラ81の左右幅内にわたって該鎮圧ローラ81を適確に接地させて適正に土壌を鎮圧することができ、苗植付け体25が作る苗植付穴が崩れるのを防止できると共に苗植付け体25による苗の植付深さが安定し、苗の植付精度を向上させることができる。
【0091】
また、鎮圧ローラ支持アームが上側に回動するほど鎮圧ローラ81の下面の左右傾斜角度が小さくなると共に左右方向内側の鎮圧ローラ81と左右方向外側の鎮圧ローラ81との高低差が小さくなるので、鎮圧ローラ81が上動して鎮圧用スプリング113の撓み量が大きくなり、鎮圧ローラ81の圃場面への押圧力(鎮圧力)が大きくなっても、その押圧力により畝の左右端部が過剰に押圧されて崩れるようなことを防止できる。
【0092】
図21に示すように、前述の継ぎ手(ユニバーサルジョイント)192を設けず、左右の鎮圧ローラ軸190が個別に回転する構成とすると共に、鎮圧ローラ支持アーム189に対する鎮圧ローラ軸190の左右傾斜角度を変更調節できるハンドルノブからなる角度変更機構202を左右各々設けることができる。尚、このときの鎮圧ローラ軸190は、必ずしも鎮圧ローラ81と一体回転する必要はない。従って、前記角度変更機構202により、複数個(4個)の鎮圧ローラ81のうちの一部(左右2個づつ)の鎮圧ローラ81の接地面の左右傾斜角度を変更することができ、畝全体の左右傾斜角度の相違、傾斜地等での畝の左側部分と右側部分との形状の相違又は傾斜地での畝に対する苗植機の姿勢あるいは位置の相違があっても、これらの相違に適応させて複数個の鎮圧ローラ81のうちの一部の鎮圧ローラ81の接地面の左右傾斜角度を変更することができ、畝面に追従させてより適正に土壌を鎮圧することができる。尚、上述では機体の左右で鎮圧ローラ81の左右傾斜角度を変更できる構成としたが、機体の左右方向内側と左右方向外側とで鎮圧ローラ81の左右傾斜角度を変更できる構成としたり、複数個の鎮圧ローラ81の左右傾斜角度を個別に変更できる構成としてもよい。
【0093】
以上は乗用型の苗移植機について詳述したが、歩行型の苗移植機であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】苗植機の側面図
【図2】苗植機の平面図
【図3】苗供給部、作業者用座席及び覆土鎮圧輪支持機構の一部を省略した苗植機の平面図
【図4】一部省略した苗植機の背面図
【図5】苗植付装置と苗供給装置の一部とを示す側面図
【図6】伝動ケースを一部展開し断面開示した苗植付装置の背面図
【図7】高さ変更機構を示す背面図
【図8】苗収容体の連結構成を示す斜視図
【図9】コンテナ係止部材にコンテナを設置した状態を示す斜視図
【図10】覆土鎮圧輪支持機構を示す斜視図
【図11】カム及び第一軸を示す図
【図12】他の形態のカム及び第一軸を示す図
【図13】パンタグラフ式の高さ変更機構を示す平面図
【図14】パンタグラフ式の高さ変更機構を示す側面図
【図15】ミッションケース内の伝動構成の第一形態を示す断面展開平面図
【図16】ミッションケース内の伝動構成の第二形態を示す断面展開平面図
【図17】ミッションケース内の伝動構成の第三形態を示す断面展開平面図
【図18】苗載枠を示す斜視図
【図19】苗載枠を示す斜視図
【図20】鎮圧ローラを示す苗植機の要部の正面図
【図21】他の形態の鎮圧ローラを示す苗植機の要部の正面図
【符号の説明】
【0095】
1:走行車体、25:苗植付け体、81:鎮圧ローラ、190:鎮圧ローラ軸、202:角度変更機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(1)と、左右に複数個配列される苗植付け体(25)と、該苗植付け体(25)による苗植付け個所の前方位置で該苗植付け体(25)が苗を植付ける前の土壌に接地して鎮圧する鎮圧具(81)とを備えた複数条植えの苗植機において、前記鎮圧具(81)の接地面を機体の左右両外側にいくにつれて低位となるよう左右に傾斜させた構成とした複数条植えの苗植機。
【請求項2】
複数個の鎮圧具(81)を左右に配列して設け、前記複数個の鎮圧具(81)のうちの一部の鎮圧具(81)の接地面の左右傾斜角度を変更する角度変更機構(202)を設けた請求項1に記載の複数条植えの苗植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−143521(P2007−143521A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−345440(P2005−345440)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】