説明

角度検出装置及び歩数計

【課題】 加速度センサを用いて構成が簡単で信頼性高く、小型化可能な角度検出装置を提供すること。
【解決手段】 各加速度センサ101a、101bは感度軸が相互に直交するように配置されると共に少なくとも動的加速度を検出して対応する検出信号を出力し、CPU108は加速度センサ101a、101bからの検出信号に基づいて、歩数計の筐体の傾きを算出する。CPU108は、前記傾きに応じて歩数計数に利用する増幅手段106a又は106bを決定して該増幅手段からの検出信号に基づいて歩数計数を行い、前記傾きに応じて歩数計数に利用する増幅手段106a又は106bのゲインを最適化し、利用しない増幅手段106a又は106bのゲインを小さくしてSN比及び歩数演算の精度向上を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体等の傾きを検出する角度検出装置及びこれを利用した歩数計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、筐体等の傾きを検出するために角度検出装置が開発されている。
例えば、感度軸が直交するように配置された複数の加速度センサを用いて歩数を測定する歩数計において、加速度センサの選択制御等のために、歩数計筐体の傾きを検出する角度検出装置を利用した発明が開発されている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1記載の発明のように角度検出装置を用いて筐体の傾きを検出し、当該傾きに適した加速度センサを歩数測定用のセンサとして選択することにより、歩数測定精度を向上させることが可能である。
しかしながら、特許文献1における角度検出装置は、複数の導電性ピンと前記ピンを囲む導電性リングとから構成されており、機械的に動く部分があるため構造的に複雑で信頼性に乏しい、小型化困難等の問題がある。
また、前記角度検出装置を歩数計に利用した場合、専用の角度検出装置として用いられるため、前述した角度検出装置の構造的な問題や、歩数計が高価になる等の問題がある。
【0003】
【特許文献1】特許第3624572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、傾きを検出する角度測定装置において、加速度センサを用いて、構成が簡単で信頼性が高く小型化可能にすることを課題としている。
また本発明は、歩数計において、専用の角度検出装置を用いることなく歩行検出用の加速度センサを用いて、傾きを検出して正確な歩数測定を可能にすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、感度軸が相互に交差するように配置されると共に少なくとも動的加速度を検出して対応する検出信号を出力する複数の加速度センサと、前記複数の加速度センサを収容する筐体と、前記複数の加速度センサからの検出信号に基づいて、前記筐体の傾きを算出する算出手段とを備えて成ることを特徴とする角度検出装置が提供される。
感度軸が相互に交差するように配置された複数の加速度センサは、少なくとも動的加速度を検出して対応する検出信号を出力する。算出手段は、前記複数の加速度センサからの検出信号に基づいて、前記複数の加速度センサを収容する筐体の傾きを算出する。
【0006】
ここで、前記複数の加速度センサは、感度軸が相互に直交配置されると共に少なくとも動的加速度を検出して対応する第1、第2検出信号を出力する第1、第2加速度センサであり、前記算出手段は、前記第1、第2検出信号に基づいて前記傾きを算出するように構成してもよい。
また、前記算出手段は、前記第1検出信号又は第2検出信号の周期、及び、前記第1検出信号と第2検出信号の検出時間差に基づいて前記傾きを算出するように構成してもよい。
また、前記第1、第2加速度センサは動的加速度センサであってもよい。
【0007】
また、本発明によれば、感度軸が相互に交差するように配置されると共に歩行に対応する動的加速度を検出して対応する第1、第2検出信号を出力する第1、第2加速度センサと、前記第1、第2加速度センサを収容する筐体と、前記第1、第2検出信号を増幅する第1、第2の増幅手段と、前記増幅手段の出力信号に基づいて歩数を計数する計数手段とを有する歩数計において、前記いずれか一に記載の角度検出装置と、前記角度検出装置が算出した前記筐体の傾きに応じて前記第1、第2増幅手段のうち、片方又は両方のゲインを小さくする制御手段とを備えて成ることを特徴とする歩数計が提供される。
制御手段は、第1、第2増幅手段のうち、角度検出装置が算出した筐体の傾きに応じて片方または両方の増幅手段のゲインを小さくする。
【0008】
ここで、前記制御手段は、所定時間毎に、前記第1、第2増幅手段のゲインを最大にした後、前記筐体の傾きを算出するように前記角度検出装置を制御すると共に、前記角度検出装置が算出した前記筐体の傾きに応じて前記第1、第2増幅手段の片方または両方ゲインを小さくするように構成してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の角度検出装置によれば、構成が簡単で信頼性高く、小型化が可能である。
また、本発明の歩数計によれば、専用の角度検出装置を用いることなく傾き検出が可能で、正確な歩数測定が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の実施の形態に係る角度検出装置及びこれを用いた歩数計のブロック図である。
図1において、歩数計は、被測定者の歩行動作を検出して前記歩行動作毎に対応する検出信号を出力する複数の検出手段(図1では第1検出手段100a、第2検出手段100bの2つ)を備えている。
【0011】
第1検出手段100aは、被測定者の歩行動作毎生じる動加速度(振動)を検出して対応する電荷の検出信号を出力する第1加速度センサ101a、第1加速度センサ101aからの検出信号を対応する電圧の検出信号に変換して出力する第1電荷−電圧変換手段102a、第1電荷−電圧変換手段102aからの信号の所定周波数以上の信号(即ちノイズ成分)を遮断する第1フィルタ手段105a、第1フィルタ手段105aからの検出信号を増幅して出力する第1増幅手段106a、第1増幅手段106aからのアナログ信号形式の検出信号を所定の閾値に基づいてデジタル信号形式(矩形波)の検出信号に変換して出力する第1二値化手段107aを備えている。
【0012】
第2検出手段100bは、第1検出手段100aと同様に構成されており、被測定者の歩行動作毎生じる動加速度を検出して対応する電荷の検出信号を出力する第2加速度センサ101b、第2加速度センサ101bからの検出信号を対応する電圧の検出信号に変換して出力する第2電荷−電圧変換手段102b、第2電荷−電圧変換手段102bからの信号の所定周波数以上の信号(即ちノイズ成分)を遮断する第2フィルタ手段105b、第2フィルタ手段105bからの検出信号を増幅して出力する第2増幅手段106b、第2増幅手段106bからのアナログ信号形式の検出信号をデジタル信号形式の検出信号に変換して出力する第2二値化手段107bを備えている。
【0013】
第1、第2加速度センサ101a、101bは、感度軸が相互に直交配置されると共に少なくとも動的加速度を検出して対応する検出信号を出力するように構成されている。第1、第2加速度センサ101a、101bは動的な加速度を検出して対応する検出信号を出力する動的加速度センサが使用できる。
【0014】
また、第1、第2加速度センサとして、静加速度(重力加速度)及び動加速度の双方を検出して、前記静加速度及び動加速度に対応する信号を出力する静加速度センサも使用可能である。この場合、傾き検出には前記動加速度に対応する信号(検出信号)を用いるため、コンデンサで直流分を遮断する必要があり、その一方、動加速度センサはそのまま使用できるため動加速度センサの方が構成は簡単になる。
【0015】
また、本実施の形態では、加速度センサとして感度軸が相互に直交するように配置された2つの加速度センサ101a、101bを使用した例で説明するが、3軸方向に感度軸が相互に直交する3つの加速度センサを用いる等、感度軸が交差するように配置された複数の加速度センサを用いることができる。
【0016】
第1、第2フィルタ手段105a、105bはバンドパスフィルタによって構成することができるが、ローパスフィルタ及びハイパスフィルタの組み合わせによって構成しても良い。第1、第2二値化手段107a、107bはコンパレータによって構成され、信号レベルが所定の閾値以上の信号をデジタル信号形式の検出信号として出力するように構成されている。
【0017】
歩数計は、第1、第2検出手段100a、100bの一方又は双方の検出信号に基づいて歩数の計数処理等を行う中央処理装置(CPU)108、操作スイッチ等によって構成され歩数測定開始操作等の各種操作を行う入力手段109、測定した歩数や筐体の傾き角度等を表示する表示手段110、警報等を音で行う報音手段111、CPU108用の規準クロック信号や計時動作を行う際の時間信号の元になる信号を発生する発振手段112、および記憶手段113を備えている。記憶手段113は、CPU108が実行するプログラムを記憶したROMおよびCPU108がプログラムを実行する際に作業領域として使用されるRAMから構成され、RAMには測定した歩数等のデータが記憶される。
【0018】
歩数計は、前記各構成要素100a、100b、108〜113を収容する筐体(図示せず)を備えている。前記筐体には、少なくとも第1、第2加速度センサ101a、101bを収容するように構成することができる。
尚、第1、第2検出手段100a、100b、CPU108は、歩数計の構成要素であると共に、角度検出装置を構成している。
【0019】
ここで、CPU108は算出手段、計数手段、制御手段、計時手段を構成している。
算出手段は、感度軸が相互に交差するように配置されると共に少なくとも動的加速度を検出して対応する検出信号を出力する複数の加速度センサからの検出信号に基づいて、前記複数の加速度センサを収容する筐体の傾きを算出することができる。
また、複数の加速度センサは、感度軸が相互に直交配置されると共に少なくとも動的加速度を検出して対応する第1、第2検出信号を出力する第1、第2加速度センサの場合、算出手段は、前記第1、第2検出信号に基づいて前記傾きを算出することができる。
【0020】
また、算出手段は、第1検出信号又は第2検出信号の周期、及び、前記第1検出信号と第2信号の検出時間差に基づいて筐体の傾きを算出することができる。
また、感度軸が相互に交差するように配置されると共に歩行に対応する動的加速度を検出して対応する第1、第2検出信号を出力する第1、第2加速度センサと、前記第1、第2加速度センサを収容する筐体と、前記第1、第2検出信号を増幅する第1、第2の増幅手段と、前記増幅手段の出力信号に基づいて歩数を計数する計数手段とを有する歩数計において、制御手段は、前記第1、第2増幅手段のうち、本実施の形態に係る角度検出装置が算出した筐体の傾きに応じて片方又は両方の増幅手段のゲインが小さくなるように制御することができる。
【0021】
また、制御手段は、所定時間毎に、第1、第2増幅手段のゲインを最大にした後、筐体の傾きを算出するように角度検出装置を制御すると共に前記角度検出装置が算出した前記筐体の傾きに応じて片方又は両方の増幅手段のゲインを小さく制御することができる。
計時手段は、発振手段112からの信号に基づいて計時動作を行うことができる。
【0022】
図2は、本実施の形態に係る歩数計の全体的な処理を示すフローチャートであり、主としてCPU108が記憶手段113のROMに記憶したプログラムを記憶手段113のRAMにロードして実行することによって行う処理を示している。以下では本実施の形態に係る歩数計を歩行時に使用するものとして説明するが、走行時またはエクササイズ歩行時に使用することもできる。
【0023】
本実施形態の歩数計による処理がされる前に、使用者が本歩数計を自己の腕等に装着し入力手段109を操作して本歩数計に歩幅を初期設定して歩行することで、記憶手段113のRAMに使用者の歩行に関連したデータが記憶される。
使用者の歩行に応じ歩行時間および歩数が計測および計数され、設定歩幅、時、分、秒、1/100秒および歩数が記憶される。平均ピッチは歩行時間と歩数から算出されて記憶され、歩行距離は歩数と歩幅から算出されて記憶手段113に記憶され又表示手段110に表示される。
【0024】
以下、図1及び図2に沿って、本実施の形態に係る歩数計の全体的な処理概要を説明する。
本歩数計を自己の腕等に装着した使用者が入力手段109によって開始操作を行うことで、歩数の測定が開始され、同時に、CPU108が入力手段109の開始操作に応答して図2の処理を開始する。
図2において、CPU108は、先ず計時手段のタイマをリセットし(ステップS201)、歩数計筐体の傾きを算出するための角度検出処理(処理の詳細は後述する。)を行う(ステップS202)。
【0025】
次に、CPU108は、処理ステップS202において検出した筐体の傾きに基づいて、どの加速度センサ101a、101bからの検出信号に基づいて歩数測定を行うのかを選択し、選択した加速度センサ101a又は101bに対応する増幅手段106a又は106bのゲインを最適化し、選択しなかった加速度センサ101a又は101bに対応する増幅手段106a又は106bのゲインを最小にすることによって、SN比及び歩数演算の精度を向上させることが出来る(ステップS203)。選択した加速度センサ101a又は101bに対応する増幅手段106a又は106bのゲインの最適化に関しては、例えば、選択した加速度センサが約45度傾いている場合は、十分な信号を得るために、ゲインを最大に設定することが望ましい。また、振動方向と感度軸がほぼ一致している場合には、不要なノイズ信号の検出を防止しSN比を向上させるために、ゲインを最大の1/√2倍することが望ましい。
この状態でCPU108は、歩数検出処理を行う(ステップS204)。CPU108は、処理ステップS204の歩数検出処理では、選択した加速度センサ101a又は101bを含む検出手段100a又は100bからの検出信号に基づいて歩数計数処理を行い、選択した加速度センサ101a又は10bが歩行検出する毎に累積歩数を計数処理する。
【0026】
次に、CPU108は、入力手段109から停止命令があった場合は累積歩数や計時時間等のデータを記憶手段113に保存して処理を終了する(ステップS205)。CPU108は、停止命令がない場合、処理ステップS201開始から所定時間経過していなければ処理ステップS204に戻り、所定時間経過していれば、各増幅手段106a、106bのゲインを最大にした後に処理ステップS201に戻る(ステップS206、S207)。これにより、所定時間毎に筐体の傾き検出やゲイン調整を行うため、筐体の傾きが変化した場合でも、所定時間毎に傾き変化を検出して、増幅手段106a、106bを適正なゲインに調整することができ、正確な歩数測定が可能になる。
【0027】
次に、処理ステップS202に示した角度検出装置の角度検出処理について詳細に説明する。
図3は、本実施の形態に係る角度検出装置の角度検出処理を示すフローチャートで、主としてCPU108が行う処理を示している。
図4は、歩数計の筐体401に収容された加速度センサ101a、101bの感度軸と歩数計に与えられる振動方向を示す説明図である。
図4において、x方向、y方向は、各々、加速度センサ101a、101bの感度軸であり、相互に直交するように配置される。歩行によって歩数計に与えられる振動の方向(腕歩数計であれば振り方向)を、振動方向1〜9として22.5度間隔で示している。
【0028】
図5は、図4に示した振動方向1〜9に加速度センサ101a、101bに振動が加えられた場合に、加速度センサ101a、101bから出力されるアナログの検出信号及び前記アナログの検出信号を二値化手段107a、107bによってにデジタル化した検出信号を表す波形図である。xは加速度センサ101a及び二値化手段107aから出力される検出信号、yは加速度センサ101b及び二値化手段107bから出力される検出信号を示している。
【0029】
図5において、符号1〜9は、図4の振動方向1〜9に対応している。例えば図5左上欄の波形図は振動方向が1−9方向の場合の波形図であり、振動方向が加速度センサ101aの感度軸(x方向)に直交する方向であるため加速度センサ101aからは検出信号が出力されないが、振動方向が加速度センサ101bの感度軸方向(y方向)であるため加速度センサ101bからは最大の検出信号が得られている。
【0030】
また、同図左下欄の波形図は振動方向が4方向の場合の波形図であり、加速度センサ101a、101bの双方から検出信号が出力されるが、振動方向は加速度センサ101bの感度軸よりも加速度センサ101aの感度軸に近い方向であるため、加速度センサ101bよりも加速度センサ101aから大きい検出信号が得られている。したがって、二値化手段107aは二値化手段107bよりも時間差t4だけ早く検出信号を出力している。二値化手段107a、107bから出力される検出信号の周期と前記検出時間差に基づいて筐体401の傾き(感度軸と振動方向の角度)が算出できる。
【0031】
図6は、二値化手段107a、107bから出力される検出信号の周期と時間差に基づいて筐体401の傾きを算出する場合の説明図であり、筐体401を図4の状態から22.5度傾けたとき(図4の4方向)の説明図である。
図6において、横軸と縦軸は、各々、任意単位で表した時間、振幅であり、破線xは加速度センサ101aから出力される検出信号、実線yは加速度センサ101bから出力される検出信号を表している。
【0032】
振動の周期をT、時間をtとしたとき、筐体401の傾きが90度のときに値が1の振幅を発生する加速度センサが、角度Θ傾いたときの振幅は、
振幅=1×sin(t×2π/T)×sin(Θ×π/180)
で表すことができる。
これにより、仮に二値化手段107a及び107bが二値化する際の閾値を同一のVthと設定した場合、検出信号x、yが閾値Vthと交差する時点間の時間差t4は、
t4=〔T/(2π)〕×asin〔Vth/sin(22.5×π/180)〕
−〔T/(2π)〕×asin〔Vth/sin(67.5×π/180)〕
となる。更にt2は、
t2=T−t4
で表すことができる。この関係を用い、t6、t7、t8は各々、
t6=T/2+t4
t7=T/2
t8=T/2−t4
で表すことができる。
このようにして、筐体401の傾きを、振動周期T及び検出時間差tに基づいて求めることができる。
【0033】
図7は、以上のようにして得られた振動方向と時間差との関係を示す図である。図7では、3方向を基準として、振動方向が2、4、6〜8の場合の検出時間差を示している。
以下、図1〜図7を参照して本実施の形態に係る角度検出装置の角度検出処理を説明する。
【0034】
CPU108は、図2の処理ステップS201においてタイマリセットした後、角度検出処理S202に入ると、先ず、振動周期Tを計測する(図3のステップS301)。振動周期Tの計測は、加速度センサ101a、101bのどちらか一方の加速度センサ101a、101bから出力される検出信号の周期を測定することによって行う。加速度センサ101a、101bの両方から検出信号が得られる状態の場合には、先に検出した加速度センサからの検出信号を2回検出することによって、前記2つの検出信号間の時間差を振動周期Tとすることができる。
【0035】
次に、CPU108は、二値化手段107aから出力される検出信号、即ち、検出手段100aから出力される検出信号のエッジ(第1軸エッジ)を検出する(ステップS302)。CPU108は、処理ステップS302においてエッジを検出できなかったと判断した場合は処理ステップS302に戻るが、エッジを検出できたと判断した場合は計時手段の計時動作(タイマカウント)を開始する(ステップS303、S304)。
【0036】
次に、CPU108は、二値化手段107bから出力される検出信号、即ち、検出手段100bから出力される検出信号のエッジ(第2軸エッジ)を検出する(ステップS305)。
CPU108は、処理ステップS305においてエッジを検出できなかったと判断した場合(ステップS306)、所定のタイムアウト時間経過前であれば処理ステップS305に戻る(ステップS309)。CPU108は、処理ステップS309において、所定のタイムアウト時間が経過したと判断した場合は、検出手段100bからは検出信号が出力されず検出手段100aのみから検出信号が出力される状態(振動方向が5方向)であり、加速度センサ101aの感度軸(第1軸)の方向xが振動方向であると判断する(ステップS310)。
【0037】
CPU108は、処理ステップS306において、エッジを検出したと判断した場合、計時手段による計時動作を終了し、処理ステップS302と処理ステップS305のエッジ検出の時間差tを算出する(ステップS307)。
次に、CPU108は、算出した検出時間差tがt1〜t4、t6〜t9のどれに最も近いをかを判断し、例えば、t4に最も近かった場合には、筐体401の傾きは、図4の方向4(67.5度)に略等しいと判断する(ステップS308)。
このようにして、CPU108は、振動周期Tとエッジ間の検出時間差tとに基づいて、筐体401の傾きを算出する。
【0038】
CPU108は、以上のようにして筐体401の傾きを判断すると、図2の処理ステップS203に移行する。即ち、CPU108は、前記傾きに基づいて、加速度センサ101a、101bのいずれか(例えば加速度センサ101a)を歩行検出に使用する加速度センサとして選択し、対応する増幅手段(例えば増幅手段106a)のゲインを最適化(例えば最大の1/√2倍)する。更に選択しなかった加速度センサ(例えば加速度センサ101b)に対応する増幅手段(例えば増幅手段106b)のゲインを小さく(例えば最低)に設定してSN比及び歩数演算の精度向上を図る。
筐体401の傾き角度は、入力手段109による表示切り換え操作に応答して、表示手段110に表示される。
【0039】
尚、筐体401の傾きと増幅手段106a、106bのゲインとの関係格納したテーブルを記憶手段113に記憶しておき、前記テーブルを参照して、求めた筐体401の傾きに基づいて増幅手段106a、106bのゲインを設定するようにしてもよい。また、このとき、CPU108は、ゲインを小さくする増幅手段への駆動電力供給を遮断することによって省電力化を図ってもよい。
その後CPU108は、前述した図2の処理ステップS204以下の処理を行うことにより、歩数測定等の処理を行う。
【0040】
以上述べたように、加速度センサ101a、101bは感度軸が相互に交差するように配置されると共に少なくとも動的加速度を検出して対応する検出信号を出力し、CPU108は加速度センサ101a、101bからの検出信号に基づいて、歩数計の筐体の傾きを算出し、又、CPU108は、前記傾きに応じて歩数計数に利用する増幅手段106a又は106bを決定して該増幅手段からの検出信号に基づいて歩数計数を行い、前記傾きに応じて歩数計数に利用する増幅手段106a又は106bのゲインを最適化し、利用しない増幅手段106a又は106bのゲインを小さくしてSN比及び歩数演算の精度向上を図るようにしている。
【0041】
したがって、本実施の形態に係る角度検出装置によれば、機械的な構成要素等を使用しないため、構成が簡単で信頼性高く、小型化が可能であり又、高精度である。
また、本実施の形態に係る歩数計によれば、角度検出装置の構成要素としても機能する加速度センサ101a、101b等の構成要素は歩数計の構成要素であるため、傾き検出等の専用の角度検出装置を使用する必要はなく、したがって、部品点数が少なくて済み、簡単な構成で傾き検出が可能で又、正確な歩数測定が可能になる。
【0042】
尚、上記実施形態では、被測定者の腕に装着して使用する腕時計型の歩数計の例で説明したが、腰に装着して使用する方式の歩数計、バッグ等に収納して保持した状態で使用する方式の歩数計、時計機能を内蔵する歩数計等、各種の歩数計に適用可能である。
また、歩数計は、第1、第2検出手段100a、100bからの一方の検出信号に基づいて歩数を計数するように構成したが、第1、第2検出手段100a、100bの双方の検出信号に基づいて歩数を計数するように構成してもよい。この場合、筐体401の傾きに応じて、増幅手段106a、106bのゲインを、同一値であり且つ適切な値に変更制御するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
感度軸が相互に交差すると共に少なくとも動加速度信号を検出する複数の加速度センサを有し、歩数計をはじめとして種々の機器の傾き検出を行う角度検出装置に利用可能である。
また、腕に装着して使用する方式の歩数計、腰に装着して使用する方式の歩数計、バッグ等に収納して保持した状態で使用する方式の歩数計、時計機能を内蔵する歩数計等、各種の歩数計に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態に係る歩数計のブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る歩数計の処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態における角度検出処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態における感度軸と振動方向を示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態における検出信号の波形図である。
【図6】本発明の実施の形態における傾き検出処理の説明図である。
【図7】本発明の実施の形態における振動方向と時間差との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
100a、100b・・・検出手段
101a、101b・・・加速度センサ
102a、102b・・・電荷−電圧変換手段
105a、105b・・・フィルタ手段
106a、106b・・・増幅手段
107a、107b・・・二値化手段
108・・・CPU
109・・・入力手段
110・・・表示手段
111・・・報音手段
112・・・発振手段
113・・・記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感度軸が相互に交差するように配置されると共に少なくとも動的加速度を検出して対応する検出信号を出力する複数の加速度センサと、前記複数の加速度センサを収容する筐体と、前記複数の加速度センサからの検出信号に基づいて、前記筐体の傾きを算出する算出手段とを備えて成ることを特徴とする角度検出装置。
【請求項2】
前記複数の加速度センサは、感度軸が相互に直交配置されると共に少なくとも動的加速度を検出して対応する第1、第2検出信号を出力する第1、第2加速度センサであり、
前記算出手段は、前記第1、第2検出信号に基づいて前記傾きを算出することを特徴とする請求項1記載の角度検出装置。
【請求項3】
前記算出手段は、前記第1検出信号又は第2検出信号の周期、及び、前記第1検出信号と第2検出信号の検出時間差に基づいて前記傾きを算出することを特徴とする請求項2記載の角度検出装置。
【請求項4】
前記第1、第2加速度センサは動的加速度センサであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の角度検出装置。
【請求項5】
感度軸が相互に交差するように配置されると共に歩行に対応する動的加速度を検出して対応する第1、第2検出信号を出力する第1、第2加速度センサと、前記第1、第2加速度センサを収容する筐体と、前記第1、第2検出信号を増幅する第1、第2の増幅手段と、前記増幅手段の出力信号に基づいて歩数を計数する計数手段とを有する歩数計において、
請求項1乃至4のいずれか一に記載の角度検出装置と、前記角度検出装置が算出した前記筐体の傾きに応じて前記第1、第2増幅手段のうち、片方又は両方のゲインを小さくする制御手段とを備えて成ることを特徴とする歩数計。
【請求項6】
前記制御手段は、所定時間毎に、前記第1、第2増幅手段のゲインを最大にした後、前記筐体の傾きを算出するように前記角度検出装置を制御すると共に、前記角度検出装置が算出した前記筐体の傾きに応じて前記第1、第2増幅手段のうち、片方又は両方のゲインを小さくすることを特徴とする請求項5記載の歩数計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−109324(P2009−109324A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281615(P2007−281615)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】