説明

貝類収容容器

【課題】貝類を水と共に収容する貝類収容容器において、容器の上方に収容された貝類が吐き出した砂粒を、下方に収容された貝類が吸い込んでしまうことを防止する。
【解決手段】容器本体の内底面3に、貝類が吐き出した砂粒53を溜めるための、穴状の有底の砂溜凹部5を設け、その砂溜凹部5の穴径を、収容される貝類の殻よりも小さく設定する。また、砂溜凹部5の側面を、溜まった砂粒52が砂溜凹部5から排出されないように、逆テーパ形状に形成し、内底面3を砂溜凹部5に向って下り勾配の斜面6によって形成する。これにより、貝類が吐き出した砂粒53を斜面6に沿って転がして、砂溜凹部5に落下させ、砂粒52として砂溜凹部5の内部に留めておき、貝類が殻内に取り込めないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あさり、はまぐり等の貝類を収容して、貝類の輸送及び一時保管の用に供される貝類収容容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、魚介類を海水等と共に収容して、輸送又は一時保管を行うための容器には、軽量で保温性に富んだ発泡樹脂から成る発泡容器が用いられている。魚類を収容する発泡容器の一例としては、例えば特許文献1に示すような、魚体に対応する凹部及び排水孔等を有する発泡容器が知られているが、特に貝類専用の収容容器は存在せず、通常の内底面が平坦な形状の発泡容器が使用されている。
【0003】
発泡容器には、通常、既に砂吐き(又は砂抜き)の済んだ貝類が収容される。しかしながら、このような砂吐きを済ませた貝類であっても、発泡容器に収容された状態での輸送等が長時間に及ぶ場合には、微量ではあるが砂粒を吐くことがある。ところが、発泡容器には多数の貝類が折り重なった状態で収容されているので、上方の貝類が吐き出した砂粒が容器の内底面に溜まり、この内底面に溜まった砂粒を下方の貝類が吸い込んでしまうことがあり、貝類の商品価値を低下させる一因となっている。
【特許文献1】特開2004−75190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、容器の上方に収容された貝類が吐き出した砂粒を、下方に収容された貝類が吸い込んでしまうことを防止することができる貝類収容容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、貝類を水と共に収容する貝類収容容器であって、容器本体の内底面に、貝類が吐き出した砂粒を溜めるための、穴状又は溝状の有底の砂溜凹部を設けたものである。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の貝類収容容器において、砂溜凹部の穴径又は溝幅は、収容される貝類の殻よりも小さく形成されているものである。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の貝類収容容器において、砂溜凹部の側面は、溜まった砂粒が該砂溜凹部から排出されないように、逆テーパ形状又はオーバーハング形状に形成されているものである。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の貝類収容容器において、容器本体の内底面は、砂溜凹部に向って下り勾配の斜面によって成るものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、容器の上方に収容された貝類が吐き出した砂粒が砂溜凹部に落下して溜められるので、下方に収容された貝類が容器の内底面に沈殿された砂粒を貝殻内に吸い込んでしまうことを防止できる。これにより、貝類の商品価値を高めることができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、砂溜凹部の穴径又は溝幅は、収容される貝類の殻の例えば最小幅よりも小さく形成されているので、貝類が砂溜凹部に入り込んでその中に溜められた砂粒を貝殻内に吸い込むことを防止できるようになる。
【0011】
請求項3の発明によれば、砂溜凹部の側面が逆テーパ形状又はオーバーハング形状に形成されているので、砂溜凹部に溜まった砂粒が輸送時の振動又は貝類の呼吸や運動に伴う水流によって攪拌されるようなことがあっても、砂粒が砂溜凹部の側面に衝突して撥ね返されることにより砂溜凹部の内部に留まり易くなる。これにより、下方に収容された貝類が砂粒を吸い込んでしまうことをより一層防止できるようになる。
【0012】
請求項4の発明によれば、容器本体の内底面が、砂溜凹部に向って下り勾配の斜面によって成るので、容器の内底面に沈殿された砂粒が斜面に沿って転がって砂溜凹部に落下し易くなる。これにより、下方に収容された貝類が砂粒を吸い込んでしまうことをより一層防止できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施形態1)
本発明の第1の実施形態による貝類収容容器について図面を参照して説明する。図1は貝類収容容器を示している。貝類収容容器1は、貝類50を水(真水又は汽水、海水若しくはそれらと略同濃度の塩水)51と共に収容する発泡樹脂からなる発泡容器であって、その容器本体2は、内底面3と内底面3の周縁から上方に起立された側壁4等によって構成されている。内底面3には、貝類50が吐き出した砂粒を溜めるための穴状の有底の砂溜凹部5が複数個設けられている。
【0014】
砂溜凹部5は、内底面3に互いに適宜間隔を空けて設けられている。各々の砂溜凹部5の配置は、特に限定されないが、本実施の形態では、例えば容器本体2の長手方向に7行、短手方向に3列のマトリクス状に等間隔に配列されている。
【0015】
図2は、砂溜凹部5の近傍の断面を示している。砂溜凹部5の穴径は、収容される貝類50が落下しないように、貝類50の殻の角方向における最小幅よりも小さく設計されている。これにより、貝類50は砂溜凹部5に溜められた砂粒52に達することができず、砂粒52を貝殻内に吸い込むことができない。砂溜凹部5の穴径は、収容される貝類50が特定の種類に限定されていれば、その貝殻の大きさに応じて設計すればよく、収容される貝類50が限定されていなければ、食用の貝類として最も小さい殻を有する貝類、例えば、しじみ等の殻の大きさに応じて設計すればよい。また、砂溜凹部5の深さは、内底面3の強度及び容器本体2の保冷性に実用上の影響を及ぼさない程度であって、貝類50が砂溜凹部5に溜まった砂粒52に届かない程度の寸法に設定されていることが望ましい。例えば、本実施の形態においては、内底面3の肉厚が約20〜30mm、砂溜凹部5の深さが約4〜5mm程度に設定されている。
【0016】
また、砂溜凹部5の側面は、溜まった砂粒52が砂溜凹部5から排出されて内底面3に戻らないように、逆テーパ形状に形成されている。砂溜凹部5の側面の逆テーパ角αは、貝類収容容器1の内面側を形成するための雄型が離型できる程度の角度に設定されている。上述のごとく貝類収容容器1は、発泡樹脂によって形成されているので、離型時における雄型の移動に追従して変形可能である。従って、砂溜凹部5の側面に図2に示した逆テーパ角α程度の僅かな逆テーパを設けても、離型時に砂溜凹部5の周縁が損傷を受けることもない。そして、このように砂溜凹部5の側面をテーパ形状に形成することにより、砂溜凹部5に溜まった砂粒52が輸送時の振動又は貝類の呼吸や運動に伴う水流によって攪拌されるようなことがあっても、砂粒52が砂溜凹部5の側面に衝突して撥ね返されるので、砂溜凹部5の内部に留まり易くなる。
【0017】
また、容器本体2の内底面3は、砂溜凹部5に向って傾斜角βを有する下り勾配の斜面6によって形成されている。これにより、内底面3に沈殿された砂粒53が矢印に沿って転がって砂溜凹部5に落下し易くなる。
【0018】
(実施形態2)
図3は、本発明の第2の実施形態による貝類収容容器を示している。貝類収容容器10は、その内底面13に有底で溝状の砂溜凹部15が形成されている点において貝類収容容器1とは異なる。砂溜凹部15の本数や配置は特に限定されないが、本実施の形態においては、例えば容器本体12の長手方向に平行に3本、短手方向に平行に7本、等間隔な格子状に形成されている。
【0019】
また、図4は、容器本体12の短手方向のみに溝状の砂溜凹部15が形成されている貝類収容容器10を示している。
【0020】
砂溜凹部15の溝幅は、収容される貝類が落下しないように、貝類の殻よりも小さく設計されている。砂溜凹部15の深さ及び側面の形状、並びに内底面13の斜面16については、貝類収容容器1と同様である。
【0021】
以上のように、本実施形態の貝類収容容器1又は10によれば、容器の上方に収容された貝類50によって吐き出しされて容器の内底面13に沈殿された砂粒53が砂溜凹部5又は15に落下して砂粒52として溜められるので、下方に収容された貝類50が砂粒52を貝殻内に吸い込んでしまうことを防止できる。これにより、貝類50の商品価値を高めることができる。また、砂溜凹部5の穴径又は砂溜凹部15の溝幅は、収容される貝類50の殻よりも小さく形成されているので、貝類50は砂溜凹部5又は15に入り込むことができず、砂粒52を貝殻内に吸い込むことができない。また、砂溜凹部5又は15の側面が逆テーパ形状に形成されているので、砂溜凹部5又は15に溜まった砂粒52が輸送時の振動又は貝類50の運動に伴う水流によって攪拌されるようなことがあっても、砂溜凹部5又は15の側面に衝突して撥ね返されることにより砂溜凹部5又は15の内部に留まり易くなる。さらに、内底面3又は13が砂溜凹部5又は15に向って下り勾配の斜面6又は16によって成るので、内底面3又は13に沈殿された砂粒53が斜面6又は16に沿って転がって砂溜凹部5又は15に落下し易くなる。これらの作用により、下方に収容された貝類50が砂粒52又は53を吸い込んでしまうことをより一層防止できるようになる。
【0022】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、内底面3に形成する砂溜凹部5の形状は、図1に示したような平面視で円形のものに限られることなく、平面視で多角形のもの及び星型の形状であってもよい。また、砂溜凹部5又は15の底面の中央部を凸状に形成してもよい。砂溜凹部5又は15の形状をこのように成形することにより、砂粒52が砂溜凹部5又は15の隅部に溜まり易くなり、貝類50が砂粒52を貝殻内に取り込むのが困難となる。
【0023】
また、砂溜凹部5又は15の側面は、上述した逆テーパ形状に限られることなく、例えば、開口部に近づくに従い側面が内側にせり出した、いわゆるオーバハング形状であってもよい。このようなオーバハング形状の一例としては、開口部が内部空間よりも狭く形成された球形等が挙げられる。また、内面が平坦な通常の発泡容器を成形するための雄金型を改造して、貝類収容容器1又は10を成形する場合には、雄金型の改造行程を簡素化するために、内底面3又は13の斜面6又は16を省略するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態による貝類収容容器の斜視図。
【図2】図1におけるA−A線断面図。
【図3】本発明の第2の実施形態による貝類収容容器の斜視図。
【図4】本発明の第2の実施形態による別の貝類収容容器の平面図。
【符号の説明】
【0025】
1 貝類収容容器
2 容器本体
3 内底面
5 砂溜凹部
6 斜面
10 貝類収容容器
12 容器本体
13 内底面
15 砂溜凹部
16 斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貝類を水と共に収容する貝類収容容器であって、
容器本体の内底面に、貝類が吐き出した砂粒を溜めるための、穴状又は溝状の有底の砂溜凹部を設けたことを特徴とする貝類収容容器。
【請求項2】
前記砂溜凹部の穴径又は溝幅は、収容される貝類の殻よりも小さく形成されていることを特徴とする請求項1に記載の貝類収容容器。
【請求項3】
前記砂溜凹部の側面は、溜まった砂粒が該砂溜凹部から排出されないように、逆テーパ形状又はオーバーハング形状に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の貝類収容容器。
【請求項4】
前記容器本体の内底面は、前記砂溜凹部に向って下り勾配の斜面によって成ることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の貝類収容容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−137480(P2006−137480A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330536(P2004−330536)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(593025619)トーホー工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】