説明

貯湯式給湯機

【課題】保温動作のタイミングを最適化することにより省エネ性能を向上させた貯湯式給湯機を提供すること。
【解決手段】本発明の貯湯式給湯機は、湯水を貯える貯湯タンク10と、浴槽22内の湯水と貯湯タンク10内の高温水とを熱交換する追い焚き熱交換器27と、浴槽22内の湯水を追い焚き熱交換器27へ送る循環ポンプ26と、給湯温度の設定や風呂運転の設定を行う操作部34を有した浴室リモコン32と、浴室リモコン32には浴室内に人が居るかどうかを判別する人感センサー部36とを備え、人感センサー部36で人を検知した時に浴槽内の湯水の保温運転を開始する給湯機であって、操作部34を操作することによって人感センサー部36の判定レベルを設定可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室リモコンに人感センサーを有する貯湯式給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヒートポンプ給湯機に代表される貯湯式給湯機には、自動湯張り機能や追い焚き機能を搭載し、オール電化住宅の増加に伴い、現在では必要不可欠な機能となっている。特に、風呂の自動運転機能は、設定水位または設定水量まで浴槽に湯張りを行ったり(自動湯張り機能)、浴槽内の温度を自動で設定温度まで沸き上げたり(自動保温機能)、浴槽内の水位が低下すれば自動的に浴槽へ設定水位まで補水を行ったり(自動足し湯機能)、ユーザにとっては大変便利な機能を有している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図3は、従来の貯湯式給湯機の構成図である。図3に示すように、従来の貯湯式給湯機は、湯水を貯える貯湯タンク110を備え、貯湯タンク110内の高温水を混合弁123で冷水と混合して浴槽122へ供給している。また、浴槽122内の温水を追い焚きするときは、循環ポンプ126を駆動して、風呂サーミスタ130で浴槽内の湯水の温度を検出した後、所定温度よりも浴槽内の湯水の温度が低い場合には、追い焚き熱交換器127で浴槽水と、貯湯タンク110内の高温水とを熱交換して浴槽水の追い焚きを行う。
【特許文献1】特開平09−170752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、人が入浴中でなくても所定時間毎に定期的に循環ポンプ126を駆動して風呂サーミスタ130で浴槽の湯温チェックを行う為、循環の度に給湯機本体と浴槽とをつなぐ配管の中の冷えた水を、浴槽内に供給してしまうことになり、その結果、放熱による温度低下だけではなく、冷水を浴槽に供給してしまうことによる湯温低下を引き起こしてしまい、ひいては、沸き上げ用の熱量が余計にかかってしまい、省エネという観点から課題があった。
【0005】
特に、貯湯タンクを有する給湯機は、夜間の電力が安い時間に貯湯タンクに高温水を貯えて、昼間の電力が高い時間には、貯湯タンク内の高温水を使用するという思想の給湯機であるので、電力が安い夜間時間帯になる前に貯湯タンク内の高温水が湯切れを引き起こしてしまうと、昼間の電力が高い時間帯に貯湯タンク内の湯水を沸き上げなければならなくなってしまう。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、保温動作のタイミングを最適化することにより省エネ性能を向上させた貯湯式給湯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の貯湯式給湯機は、湯水を貯える貯湯タンクと、浴槽内の湯水と前記貯湯タンク内の高温水とを熱交換する追い焚き熱交換器と、前記浴槽内の湯水を前記追い焚き熱交換器へ送る循環ポンプと、給湯温度の設定や風呂運転の設定を行う操作部を有した浴室リモコンと、前記浴室リモコンには浴室内に人が居るかどうかを判別する人感センサー部とを備え、人感センサー部で人を検知した時に浴槽内の湯水の保温運転を開始する給湯機であって、前記操作部を操作することによって前記人感センサー部の判定レベルを設定可能に構成したことにより、人感センサー部で検知した時に保温運転を開始するので、所定時間毎に循環ポンプを駆動して、浴槽と熱交換器とを接続している配管の中の冷えた水を浴槽へ供給して浴槽の湯水の湯温を下げてしまうことがな
くなり、ユーザが浴室に入った時だけ保温動作に入ることができるので無駄な沸き上げ用の熱量を使うこともなくなり、省エネ性の改善につながる。
【0008】
また、ユーザの浴室の大きさがどのようなものであっても、その設置条件にあったレベルに人感センサー部36の感度を変更することができるので、人を検出しなくて保温動作しないとか、人が居ないのに保温動作になって省エネにならないということが回避できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、保温動作のタイミングを最適化することにより省エネ性能を向上させた貯湯式給湯機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明の貯湯式給湯機は、湯水を貯える貯湯タンクと、浴槽内の湯水と貯湯タンク内の高温水とを熱交換する追い焚き熱交換器と、浴槽内の湯水を追い焚き熱交換器へ送る循環ポンプと、給湯温度の設定や風呂運転の設定を行う操作部を有した浴室リモコンと、浴室リモコンには浴室内に人が居るかどうかを判別する人感センサー部とを備え、人感センサー部で人を検知した時に浴槽内の湯水の保温運転を開始する給湯機であって、操作部を操作することによって人感センサー部の判定レベルを設定可能に構成したことにより、所定時間毎に循環ポンプを駆動して、浴槽と熱交換器とを接続している配管の中の冷えた水を浴槽へ供給して浴槽の湯水の湯温を下げてしまうことがなくなり、ユーザが浴室に入った時だけ保温動作に入ることができるので無駄な沸き上げ用の熱量を使うこともなくなり、省エネ性の改善につながり、また、ユーザの浴室の大きさがどのようなものであっても、その設置条件にあったレベルに人感センサー部36の感度を変更することができるので、人を検出しなくて保温動作しないとか、人が居ないのに保温動作になって省エネにならないということが回避できる。
【0011】
第2の発明の貯湯式給湯機は、特に第1の発明において、人感センサー部の判定レベルを記憶する記憶手段を備えたことにより、風呂の湯張りをするたびに、毎回設定する必要がない。
【0012】
第3の発明の貯湯式給湯機は、特に第1または第2の発明において、給湯機の設置時に行う試運転モードのステップに、人感センサーの判定レベルを設定するステップを組み込んだことにより、設置業者が試運転時に必ず設定するステップとなり、ユーザが使用するときには設定する必要がなく、初回の湯張りから人感センサーを使用した省エネの運転を行うことができる。
【0013】
第4の発明の貯湯式給湯機は、特に第1から第3の発明において、試運転モードが終了後に人感センサーの判定レベルを設定する場合は、操作部を特殊操作することによって設定可能に構成したことにより、ユーザが意識して人感センサーの判定レベルを変更しないと変更できないようにしており、操作ミスで不必要に人感センサーの判定レベルが変更されてしまうことを防止することができる。
【0014】
第5の発明の貯湯式給湯機は、特に第1から第4の発明において、前記浴室リモコンに設定温度や運転状況を表示する表示部を備え、前記人感センサーの判定レベルを設定中は、前記表示部に前記人感センサーの反応状態を表示することにより、人感センサー部の判定レベルを切り替えたときに、人を検出しているかどうかを視覚的に判断することができ、メンテナンス性を向上させることができる。
【0015】
第6の発明の貯湯式給湯機は、特に第1から第5の発明において、前記浴室リモコンに
音声を報知するスピーカを備え、前記人感センサーの判定レベルを設定中は、前記スピーカにより前記人感センサーの反応状態を報知することにより、人を検出しているかどうかを聴覚的に判断することができ、メンテナンス性を向上させることができる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は本発明の一実施例による貯湯式給湯器の構成図を示すものである。
【0018】
図1に示すように、本願発明の貯湯式給湯機は、内部に湯水を貯湯する貯湯タンク10を有し、貯湯タンク10の上部には給湯管11が接続され、貯湯タンク10の下部には給水管12が接続されている。また、給水管12は上水道が接続される給水口13から水道圧を減圧させる減圧弁14を介して接続されている。
【0019】
貯湯タンク10内では、比重差からお湯が上部、水が下部に分離して温度層が上下に形成されている。貯湯タンク10内の湯水の沸き上げ時には、タンク10上部からお湯が貯湯されることで、お湯が押し下げられる形で層を形成して蓄積される。そして、給湯管11の末端にはシャワー21やカラン20などの給湯端末が接続され、給湯端末から湯を出すと、貯湯タンク10の下部には給水管12が接続されているので常時給水圧が掛かっており、給水管12からタンク10内に水が給水されて、タンク10内は常に湯水で満たされた状態となる。
【0020】
また貯湯タンク10には、下部から上部へと連結された沸き上げ配管15が接続されてあり、その沸き上げ配管15には、沸き上げポンプ16と熱源部17が介在している。そして沸き上げ時には、沸き上げポンプ16を駆動させて、タンク10下部の湯水を熱源部17へと供給し、熱源部17によって湯水が加熱した後、タンク10上部へと戻されることで貯湯されていく。なお熱源部17は、ヒートポンプサイクル機構を有したヒートポンプ若しくヒータ等の熱源があげられる。
【0021】
また、出湯管11と給水管12から分岐した給水分岐管42とを接続し適温の湯を生成する給湯混合弁43を備えており、カラン20もしくはシャワー21から出湯する際には、給湯混合弁43で設定温度の湯に混合されて供給される。
【0022】
また、出湯管11と給水分岐管42とを接続し適温の湯を生成する風呂給湯混合弁23を備えており、風呂給湯混合弁23の下流側に風呂給湯サーミスタ24と、風呂への湯張りを開始/停止する風呂注湯弁25とを有しており、風呂への湯張りが開始されると風呂注湯弁25を開いて、風呂給湯混合弁23で適温に混合された湯を浴槽22へ供給してる。なお、風呂給湯混合弁23の制御は、風呂給湯サーミスタ24で検出する温度が、設定した湯張り温度となるように風呂給湯混合弁23を駆動する。
【0023】
また、浴槽22内の湯水を追い焚きするための追い焚き熱交換器27を有しており、追い焚き熱交換器27で浴槽22内の湯水と、貯湯タンク10内の高温水とを熱交換している。そして浴槽22内の湯水を追い焚き熱交換器27へ供給するための循環ポンプ26を備えており、浴槽22と循環ポンプ26と追い焚き熱交換器27とが給湯配管で環状に接続されている。
【0024】
また、追い焚き熱交換器27の高温水循環側回路には、給湯管11から出湯した高温水が流れ、追い焚き熱交換器27で熱交換した後の温水は貯湯タンク10の底部へ返流されるように構成されている。なお、貯湯タンク10の底部と追い焚き熱交換器27との間に
は追い焚きポンプ29が配設されており、追い焚きポンプ29を駆動することによって、追い焚き熱交換器27へ高温水を供給するようにしている。
【0025】
また、循環ポンプ26と追い焚き熱交換器27との間には、浴槽22内の湯水の水位を検出する水位センサー40と、浴槽22内の湯水の温度を検出する風呂サーミスタ30を設け、追い焚き熱交換器27の浴槽水循環側の下流側には追い焚きサーミスタ28が配設されている。そして浴槽22内の湯水を追い焚きするときには、まず循環ポンプ26を駆動して、風呂サーミスタ30で浴槽水の温度を検出し、検出した浴槽水の温度が設定温度となるまで循環ポンプ26を駆動する。また安全性の観点から浴槽22へ高温の湯を供給しないために、追い焚きサーミスタ28で検出する温度が60度を超えないように循環ポンプ26を駆動させる。
【0026】
また、浴室には浴室リモコン32が設置されている。浴室リモコン32には、給湯温度を変更するためのUP/DOWNスイッチや、風呂運転の自動を入/切するための風呂自動運転スイッチなどの操作部34がある。また、給湯温度や風呂自動運転中など給湯機の運転状態を表示するための表示部35がある。そして、浴室リモコン32には、人が浴室に入ってきたことを検出するための人感センサー部36と、人感センサー部36の判定レベルを記憶するための記憶部(図示せず)を備えている。なお、人感センサー部36は赤外線センサーで構成されている。
【0027】
次に浴槽22への湯張り運転について説明する。
【0028】
まず、浴室リモコン32の操作部34に配設された風呂自動運転スイッチを入り操作するか、もしくは予め自動湯張り時間を設定している場合には予約時間になると、風呂注湯弁25が開き、風呂給湯混合弁23で混合された湯が浴槽22へ供給される。
【0029】
そして、浴室リモコン32もしくは台所などに設置した別の給湯機リモコン(図示せず)で設定した設定水位までお湯はりが完了すると、風呂注湯弁25を閉じて、循環ポンプ26を駆動し、浴槽22内の湯を攪拌し、かつ、追い焚き熱交換器27にて貯湯タンク10の湯水と熱交換をして浴槽温度を設定温度まで沸上げを行う。
【0030】
そして、設定温度まで沸上げが終了すると、浴室リモコン32に設けたスピーカ(図示せず)から報知音を鳴らしたり、表示部35にお風呂が沸きあがったことを知らせる表示を行う。この時点で、ユーザが入浴すると浴槽温度が設定温度になっているため快適に入浴することができる。
【0031】
次に、浴槽22内の温水の保温運転について説明する。
【0032】
本来、湯張りが終了した時点で家族全員が入浴すればよいが、家族の生活パターンの違いからふろ湯張りを完了した時間よりも遅い時間帯に入浴する場合も考えられる。この場合、従来の貯湯式給湯機においても自動で保温運転を行っていた。しかしながら上述したとおり、所定時間毎に循環ポンプ26を駆動させてしまい、循環ポンプ26を駆動するたびに浴槽22内の温水の温度を低下させてしまう。
【0033】
そこで本発明では、人感センサー部36で人が浴室にいないことを検出している間は、自動で保温運転を行わないようにしている。すなわち、人感センサー部36で人が浴室へ入室してきたことを検出してから、循環ポンプ26を駆動させて保温運転に入る。
【0034】
その結果、従来の貯湯式給湯機のように、所定時間毎(例えば、15分毎)に循環ポンプ26を駆動させて、自動で保温運転を行う場合に比べて、浴槽22と追い焚き熱交換器
27とを接続する配管内に溜まった冷水が浴槽22へ入る回数が極端に減るので、放熱以外で浴槽22内の湯水の温度を下げてしまうことを防止する。
【0035】
なお、保温運転とは浴槽22内の湯水の温度を設定温度に保つ運転をいい、追い焚き熱交換器27で追い焚きを行うだけではなく、浴槽22から湯水があふれない範囲であれば、風呂注湯弁25を開いて貯湯タンク10から高温水を供給して、浴槽22内の温度を上昇させてもよい。
【0036】
しかしながらユーザの使用性や好みを考慮すると、人感センサー部36を用いた保温運転よりも、従来からの保温運転の方が使い勝手が良い場合がある。そこで本実施の形態の貯湯式給湯機では、人感センサー部36を無効にして通常の保温運転を行うこともできる。そのためユーザは人感センサー部36を利用した保温運転と、通常の保温運転の両方を選択することができ、非常に使い勝手が向上する。
【0037】
従来からの保温運転を行う場合は、浴室リモコン32で所定の操作をすることにより、人感センサー部36の機能を無効にする。その結果、従来の保温運転と同じように、所定時間毎(例えば、15分毎)に循環ポンプ26を駆動させて、風呂サーミスタ30で浴槽22内の温度を検出し、検出した温度が所定温度を下回った時に、追い焚きポンプ29を駆動させて、浴槽22内の湯水を追い焚きする。このように人感センサー部36の機能を使用するかしないかをユーザの好みに応じて変更することができる。
【0038】
また、人感センサー部36を有効にした場合、人感センサー部36で人を検知した時だけ循環ポンプ26を駆動させてもよいが、人の不在時間があまりにも長すぎて、放熱だけであっても浴槽22内の湯水の温度が極度に低くなってしまう場合がある。その時には、人感センサー部36で人を検知してから浴槽22内の湯水を追い焚きしていたのでは、人が入室してから浴槽22に入るまでの間に設定温度まで追い焚きをすることが出来ない場合がある。
【0039】
そのため、本実施の形態1では、人感センサー部36が有効になっている場合は、人感センサー部36が無効になっているときに循環ポンプ26を動かしている所定時間を長く設定している。つまり人感センサー部36が無効になっているときの循環ポンプ26の駆動は所定時間α毎に行い、人感センサー部36が有効になっているときの循環ポンプ26の駆動時間は所定時間β毎に行った時に、所定時間α<所定時間βの関係を有している。その結果、人感センサー部36が有効になっているときは、無効になっているときに比べて循環ポンプ26の駆動回数が減り、循環ポンプ26が駆動することによって発生する浴槽22内の湯水の低下を防ぐことができる。
【0040】
また、人感センサー部36が無効になっている場合の保温運転は、循環ポンプ26を駆動して風呂サーミスタ30で温度を検知し、検知した浴槽22内の湯水の温度が所定温度以下になっている場合に追い焚きポンプ29を駆動して浴槽22内の湯水の追い焚きを行っている。
【0041】
しかしながら、人感センサー部36が有効になっている場合の保温運転は、人感センサー部36で人の入室を検知すると、すぐに追い焚きを開始しなければ、入室した人が浴槽22につかるまでに浴槽22内の湯水の温度を上昇させることができない。そのため通常の保温運転では、まず循環ポンプ26を駆動して浴槽22内の湯水の温度を風呂サーミスタ30で検出した後、所定温度よりも低い場合は追い焚きポンプ29を駆動していたが、人感センサー部36が有効になっている場合は、人感センサー部36で人を検知すると、循環ポンプ26と追い焚きポンプ29とを同時に駆動している。その結果、より早く浴槽22内の湯水の温度を上昇させることができる。
【0042】
また、人感センサー部36が有効になっている場合であっても、別のユーザ入浴してから、次のユーザが入浴するまでの時間が、所定時間Aよりも短い場合には、次のユーザが浴室に入室したことを検知したとしても、保温運転を開始しない。これは、別のユーザから次のユーザまでの時間間隔が短いため、それほど浴槽22内の湯水の温度が低下していないと判断している。
【0043】
例えば、所定時間Aを10分に設定したとする。そしてユーザXの入浴が終わってから、ユーザYの入室を検知した時間が5分であったとすると、保温運転は開始しない。時間間隔があまり経っていない時点で保温運転を開始してしまうと、追い焚き熱交換器27と浴槽22とを結んでいる給湯配管に残った冷水が入って、逆に浴槽22内の湯水の温度を低下しかねないからである。
【0044】
人感センサー部36で人を検知したときの保温動作は、浴槽22内の温度を確認するステップを飛ばして、上述したとおり循環ポンプ26と追い焚きポンプ29とを同時に駆動させているが、追い焚き熱交換器27から浴槽22へ接続されている給湯配管内に残っている冷水は、熱交換されないまま浴槽22へ供給されるので、浴槽22の湯水の温度を低下させてしまうため、時間間隔があまり経っていない時点での保温運転を行わないことで、浴槽22内の湯水の温度低下を防止している。
【0045】
次に、人感センサー部36の判定レベルの調節について説明する。
【0046】
通常の人感センサー部36の判定レベルの調節は、貯湯式給湯機を設置した時に行う。通常、貯湯式給湯機を設置した時には、貯湯式給湯機の配管内に介在する空気などを抜くための試運転モードを有しており、浴室リモコン32の表示部35に表示される指示に従って操作部34を操作することで、設置業者は試運転モードを実行することができ、貯湯式給湯機の設置時に試運転を行っている。
【0047】
そこで、本実施の形態1では、試運転モードに人感センサー部36の判定レベルの調節を行うステップを入れている。つまり、試運転時に表示部35に表示される指示内容に、人感センサー部36の判定レベルを調節するステップを入れて、判定レベルを調節するステップを終了しなければ、次のステップにいくことがないようにしている。その結果、ユーザは貯湯式給湯機が設置された後に、ユーザ自らが設定する必要がなく、ユーザが設定する煩わしさを感じることがない。
【0048】
また、設置業者が設置して試運転を実行した後に、ユーザの思い通りに人感センサー部36が機能しない場合には、ユーザ自らが設定できるようにしている。しかしながら、簡単に操作して判定レベルを変更できるようになっていた場合、ユーザが操作部34を何気なく触っているときに、気付かない間に人感センサー部36の判定レベルが変更してしまうかもしれない。
【0049】
そこで、本実施の形態1では、操作部34を特殊操作することで判定レベルを変更することができるようにしている。なお、特殊操作とは、通常の操作部34の操作方法ではされることの無い操作のことを言い、例えば、取扱説明書を見ながらでなければ行うことの無い操作方法のことを指している。本実施の形態1では、UPスイッチとDOWNスイッチを同時に10秒間押すことで、判定レベルが変更できるモードに移る。この場合、UPスイッチとDOWNスイッチは通常相反するスイッチであると感覚的にユーザが分かるため、通常の操作ではUPスイッチとDOWNスイッチが同時に10秒間押されることは殆ど無く、本実施の形態では特殊操作の一例として挙げた。なお、特殊操作はこれに限定されることなく、他の操作方法でも問題はない。
【0050】
図2は本発明の判定レベル変更のフローチャートである。
【0051】
まず、STEP001でユーザが特殊操作を行ったかを判断する。実施の形態1では特殊操作としてUPスイッチとDOWNスイッチとを同時に10秒間押すこととし、特殊操作があるか無いかを判断する。特殊操作があった場合には、表示部35に判定レベル変更画面を表示し、STEP002へと進む。一方、特殊操作が無い場合には、最初に戻る。そして、表示部35にはUPスイッチもしくはDOWNスイッチで判定レベルを変更できることが表示されるため、ユーザはUPスイッチもしくはDOWNスイッチを押して判定レベルを変更するように促される。
【0052】
次に、STEP002ではUPスイッチの操作があったかどうかを判断する。UPスイッチの操作があった場合にはSTEP004へ進み、判定レベルを(+1)してSTEP006へ進む。つまり人感センサー部36の反応感度を上げる。そしてUPスイッチの操作が無かった場合にはSTEP003へ進み、DOWNスイッチの操作があったかどうかを判断する。DOWNスイッチの操作が合った場合にはSTEP005へ進み、判定レベルを(−1)する。つまり人感センサー部36の反応感度を下げる。そしてDOWNスイッチの操作が無かった場合にはSTEP006へ進む。
【0053】
次に、STEP006に進むと表示部35には、検知したい場所まで移動するように促すメッセージが表示される。例えば「5秒後に人感センサーで入室検知を行います。」と表示されるので、この間にユーザは検知して欲しい場所まで浴室内を移動する。例えば、浴室の入口に入った時に人感センサー部36で人体検知して欲しい場合には、この間に浴室の入口まで移動して人体検知するかどうかを確認する。人体を検知した場合にはSTEP007へ進み、人体を検知しなかった場合にはSTEP009へ移動する。
【0054】
STEP007では表示部35に人体を検出したことを示す「1」を表示し、STEP009では人体を検出しなかったことを示す「0」を表示する。なお、この表示は「0」、「1」に限定されるものではなく、例えば「検知しました」、「検知しません」などの文字情報で示してもよい。このようなステップを入れることで、設置業者もしくはユーザは視覚的に確認することができる。そしてSTEP007およびSTEP009の次は、それぞれSTEP008およびSTEP010に進む。
【0055】
STEP008では、浴室リモコン32に設けたスピーカからブザー音を鳴らし、STEP010では、ブザー音を鳴らさないようにしている。このようなステップを入れることで、設置業者もしくはユーザは聴覚的にも確認することができる。STEP008およびSTEP010の次は、ともにSTEP011に進む。
【0056】
STEP011では、人感センサー部の判定レベルを記憶する記憶手段に設定した判定レベルを記憶させて、STEP012に進む。STEP012では判定レベルの設定を終了するかどうかを確認するメッセージを表示部35に表示させて、ユーザに「はい」もしくは「いいえ」を選択するように促す。ユーザが「はい」を選んだ場合には判定レベル設定を終了し、表示部35は通常の画面に戻り、「いいえ」を選んだ場合にはSTEP002に戻り、再度判定レベルを設定する。
【0057】
もしくはSTEP012では、判定レベルの設定を終了するかどうかを確認するために表示部35にメッセージを表示したが、STEP011の段階で、UP/DOWNスイッチ操作が無い状態で一定時間が経過すると、不揮発性メモリの記憶部にその変更した判定レベルを書き込んで記憶して終了し、UP/DOWNスイッチの操作が合った場合にはSTEP002に戻る構成にしてもよい。
【0058】
以上のように、人感センサー部36の判定レベルを調整するモードを設けて、その設置条件にあった判定レベルに変更することができるので、人を検出しなくて保温動作しないとか、人が居ないのに保温動作になって省エネにならないということが回避でき、品質を向上させることができる。また、操作部34の特殊操作をしたときだけ人感センサー部の判定レベルを調整できるようにすることで、ユーザが容易に変更してしまうこともなく、使い勝手を損なうことはない。
【0059】
また、本発明の貯湯式給湯機では設置した1回目だけ起動される試運転時を備えており、このときに必ず人感センサー部36の判定レベルを切り替えることが出来る調整モードのステップを組み込んで構成されている。従って、わざわざ特殊操作をして人感センサー部36の判定レベルの調整モードにする必要も無く設置状況に合わせた人感センサー部36の調整が出来るので施工時の利便性を良くることが出来る。
【0060】
そして、施工時の調整がされないままにユーザに引き渡されることもないため、所定時間毎に給湯機本体から浴槽までの配管の中の冷えた水を浴槽で攪拌させることで浴槽の湯水の湯温を下げてしまうこともなくなり、ユーザが浴室に入った時に保温動作に入ることができるので無駄な沸き上げ用の熱量を使うこともなくなり省エネ性の改善につながり、使い勝手が良くなる。
【0061】
また、浴室リモコン32の特殊操作により人感センサー部36の判定レベルを切り替えているときは、表示部35に人感センサー部36が人が検出しているかどうかの反応状態を表示する構成としてある。上述した実施例では、人感センサー部36が人を検出しているときは表示部35の給湯温度の数表示部に「1」を表示して人を検出していないときは「0」を表示するものである。更には、浴室リモコン32が音声案内を報知するスピーカを備え、人感センサー部36が人を検出しているときにブザー音を報知する構成としてある。このように構成することで、人感センサーの判定レベルの設定中は視覚的、あるいは聴覚的に判定レベルを確認できるので調整しやすくなり、メンテナンス性が向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、本発明に係る貯湯式給湯機は、熱源にヒートポンプを用いる他、電気ヒータ、石油、ガスなどの熱源を使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施の形態1における貯湯式給湯機の構成図
【図2】同形態1における判定レベル変更のフローチャート
【図3】従来の貯湯式給湯機の構成図
【符号の説明】
【0064】
10 貯湯タンク
11 給湯管
12 給水管
15 沸き上げ配管
16 沸き上げポンプ
17 熱源部
20 カラン
21 シャワーヘッド
22 浴槽
26 循環ポンプ
27 追い焚き熱交換器
29 追い焚きポンプ
30 風呂サーミスタ
32 浴室リモコン
34 操作部
35 表示部
36 人感センサー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯える貯湯タンクと、浴槽内の湯水と前記貯湯タンク内の高温水とを熱交換する追い焚き熱交換器と、前記浴槽内の湯水を前記追い焚き熱交換器へ送る循環ポンプと、給湯温度の設定や風呂運転の設定を行う操作部を有した浴室リモコンと、前記浴室リモコンには浴室内に人が居るかどうかを判別する人感センサー部とを備え、人感センサー部で人を検知した時に浴槽内の湯水の保温運転を開始する給湯機であって、前記操作部を操作することによって前記人感センサー部の判定レベルを設定可能に構成したことを特徴とする貯湯式給湯機。
【請求項2】
前記人感センサー部の判定レベルを記憶する記憶手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の貯湯式給湯機。
【請求項3】
給湯機の設置時に行う試運転モードのステップに、前記人感センサーの判定レベルを設定するステップを組み込んだことを特徴とする請求項1または2に記載の貯湯式給湯機。
【請求項4】
前記試運転モードが終了後に前記人感センサーの判定レベルを設定する場合は、前記操作部を特殊操作することによって設定可能に構成したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の貯湯式給湯機。
【請求項5】
前記浴室リモコンに設定温度や運転状況を表示する表示部を備え、前記人感センサーの判定レベルを設定中は、前記表示部に前記人感センサーの反応状態を表示することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の貯湯式給湯機。
【請求項6】
前記浴室リモコンに音声を報知するスピーカを備え、前記人感センサーの判定レベルを設定中は、前記スピーカにより前記人感センサーの反応状態を報知することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の貯湯式給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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