距離測定装置、位置測定装置、及び距離測定方法
【課題】外乱の影響を受けにくい距離測定装置を提供する。
【解決手段】本発明を例示する距離測定装置の一態様は、光周波数コム光源(11)が発振する光パルス信号(S)を光電変換して電気信号に変換する光電変換部(12)と、前記光電変換部が生成する電気信号(S’)から、前記光パルス信号の複数種類のモード間ビート信号を分離して抽出する分離抽出手段(13−1、13−2、13−3、13−4)と、抽出された前記複数種類のモード間ビート信号の間の強度関係と、前記複数種類のモード間ビート信号の間の周波数関係とに基づき、前記光周波数コム光源から前記光電変換部までの距離(D)を算出する演算手段(14)とを備える。
【解決手段】本発明を例示する距離測定装置の一態様は、光周波数コム光源(11)が発振する光パルス信号(S)を光電変換して電気信号に変換する光電変換部(12)と、前記光電変換部が生成する電気信号(S’)から、前記光パルス信号の複数種類のモード間ビート信号を分離して抽出する分離抽出手段(13−1、13−2、13−3、13−4)と、抽出された前記複数種類のモード間ビート信号の間の強度関係と、前記複数種類のモード間ビート信号の間の周波数関係とに基づき、前記光周波数コム光源から前記光電変換部までの距離(D)を算出する演算手段(14)とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光周波数コムを使用した距離測定装置、位置測定装置、距離測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光周波数コムを使用した距離測定装置は、光周波数コム光源が発振するパルス列(光パルス信号)を1対の光パルス信号に分岐し、一方の光パルス信号を直接フォトダイオードで電気信号に変換すると共に、他方の光パルス信号を移動反射鏡で反射させてからフォトダイオードで電気信号に変換する(特許文献1等を参照。)。
【0003】
これら一対のフォトダイオードの各々が出力する電気信号には、光周波数コムの様々なモード間ビート信号が含まれており、一方の電気信号に含まれる所定周波数のモード間ビート信号と、他方の電気信号に含まれる同じ周波数のモード間ビート信号との間の位相差は、光パルス信号の分岐点から移動反射鏡までの距離によって変化する。よって、従来の距離測定装置では、周波数の等しい1対のモード間ビート信号の間の位相差を、移動反射鏡の距離情報として算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−184181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この距離測定装置では、1対の光パルス信号の非共通光路に存在する媒質の揺らぎが測定精度に直接影響するという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、外乱の影響を受けにくい距離測定装置、位置測定装置、距離測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明を例示する距離測定装置の一態様は、光周波数コム光源が発振する光パルス信号を光電変換して電気信号に変換する光電変換部と、前記光電変換部が生成する電気信号から、前記光パルス信号の複数種類のモード間ビート信号を分離して抽出する分離抽出手段と、抽出された前記複数種類のモード間ビート信号の間の強度関係と、前記複数種類のモード間ビート信号の間の周波数関係とに基づき、前記光周波数コム光源から前記光電変換部までの距離を算出する演算手段とを備える。
【0008】
本発明を例示する位置測定装置の一態様は、固定部を基準とした可動部の第1方向の位置及び第2方向の位置を個別に測定する第1位置測定装置及び第2位置測定装置の各々として、本発明を例示する距離測定装置の一態様を使用した位置測定装置であって、前記第1位置測定装置は複数の光電変換部を備え、それら複数の光電変換部は、前記可動部のうち前記第1方向とは非平行な第1側面上に前記第2方向にかけて配列されており、前記第1位置測定装置の光周波数コム光源は、前記第1側面に向かって光パルス信号を発振可能な姿勢で前記固定部の側に固定されており、前記第2位置測定装置は複数の光電変換部を備え、それら複数の光電変換部は、前記可動部のうち前記第2方向とは非平行な第2側面上に前記第1方向にかけて配列されており、前記第2位置測定装置の光周波数コム光源は、前記第2側面に向かって光パルス信号を発振可能な姿勢で前記固定部の側に固定されている。
【0009】
本発明を例示する距離測定装置の一態様は、光周波数コム光源が発振する光パルス信号を光電変換して電気信号に変換する光電変換手順と、前記光電変換手順で生成される電気信号から、前記光パルス信号の複数種類のモード間ビート信号を分離して抽出する分離抽出手順と、抽出された前記複数種類のモード間ビート信号の間の強度関係と、前記複数種類のモード間ビート信号の間の周波数関係とに基づき、前記光周波数コム光源から前記光電変換の変換面までの距離を算出する演算手順とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外乱の影響を受けにくい距離測定装置、位置測定装置、距離測定方法が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の距離測定装置の全体構成図である。
【図2】光パルス信号Sの波形の模式図である。
【図3】光周波数コムの模式図である。
【図4】複数種類のモード間ビート信号の関係を示す図である。
【図5】複数種類のモード間ビート信号の強度と距離との関係を示す図である。
【図6】第2実施形態のXYZステージの概念図である。
【図7】X位置測定装置の構成図である。
【図8】Y位置測定装置の構成図である。
【図9】Z位置測定装置の構成図である。
【図10】第3実施形態の距離測定装置の全体構成図である。
【図11】(A)は、第4実施形態の位置測定装置の配置図であり、(B)は、第4実施形態の位置測定装置の回路図である。
【図12】第5実施形態の距離測定装置の全体構成図である。
【図13】(A)は、第6実施形態の位置測定装置の配置図であり、(B)は、第5実施形態の位置測定装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態として距離測定装置を説明する。
【0013】
図1は、本実施形態の距離測定装置の全体構成図である。図1に示すとおり距離測定装置には、光周波数コム光源11と、フォトディテクタ12と、回路部100とが備えられ、その回路部100には、4種類のフィルタ13−1、13−2、13−3、13−4と、距離演算部14とが備えられる。
【0014】
光周波数コム光源11からフォトディテクタ12までの距離Dは可変であって、この距離Dが測定対象である。よって、例えば、光周波数コム光源11に物体Aを固定し、フォトディテクタ12に物体Bを固定すれば、物体Aを基準とした物体Bの所定方向の位置を測定することができる。なお、回路部100は、フォトディテクタ12と共に物体Bの側へ固定されてもよいが、フォトディテクタ12と電気的に接続されているのであれば、回路部100は物体Bに固定されている必要は無い。
【0015】
光周波数コム光源11は、例えばフェムト秒光周波数コム光源、アト秒光周波数コム光源などの光周波数コム光源であって、パルス幅がフェムト秒又はアト秒と狭められた光パルスを一定のパルス発振周期Tで繰り返し発振する。なお、図2に示したのは、光周波数コム光源11から発振される光パルス列(光パルス信号S)の波形を模式的に示す図である。
【0016】
この光パルス信号Sのフーリエ変換である光周波数コムは、図3に示すとおり一定のモード間隔(繰り返し周波数frep)を有している。その繰り返し周波数frepは、パルス発振周期Tの逆数(1/T)である。以下、繰り返し周波数frepは50MHzに設定されたと仮定する。
【0017】
図1に示すフォトディテクタ12は、フォトダイオードなどの光電変換素子であって、光周波数コム光源11に対して光電変換面を正対させた姿勢で前述した物体Bの側へ固定されている。フォトディテクタ12は、光周波数コム光源11から発振された光パルス信号Sを受光し、一定のサンプリング周波数で繰り返し光電変換することにより、その光パルス信号Sを電気信号S’へと変換する。
【0018】
フォトディテクタ12のサンプリング周波数は、繰り返し周波数frepよりも十分に高く、例えば、12GHzに設定されている。また、このサンプリング周波数は、光パルス信号Sの光周波数より低い。よって、フォトディテクタ12の出力する電気信号S’には、光パルス信号Sのモード間ビート信号のみが現れる。
【0019】
モード間ビート信号とは、光周波数コム(図3)の櫛間(モード間)のビート干渉光に対応した信号である。ビート干渉光には、図4に示すとおり、モードズレ数iが1であるモード間のビート干渉光(ビート周波数はfrep)や、モードズレ数iが2であるモード間のビート干渉光(ビート周波数は2frep)や、モードズレ数iが3であるモード間のビート干渉光(ビート周波数は3frep)や、モードズレ数iが4であるモード間のビート干渉光(ビート周波数は4frep)などがある。
【0020】
なお、ビートズレ数iが異なると、ビート干渉光に寄与するモードの本数も異なるため、ビート干渉光の強度(ビート干渉強度)は、図4に示すとおりモードズレ数iによって異なる。通常は、モードズレ数iの小さいビート干渉光ほど、それに寄与するモードの本数も多いので、ビート干渉強度も高くなる。但し、これらのビート干渉光の強度比は、図3に示した光周波数コムの形状(=光周波数コム光源11の発光スペクトル)によって一義的に決まる。
【0021】
ここで、光周波数コム光源11から射出した直後の光パルス信号Sの電場の時間変化Ecomb(t)は、以下の式(1)で表される。
【0022】
【数1】
但し、Bは振幅、tは時間、fCEOは光周波数コムのキャリア・エンベロープオフセット周波数、frepは光周波数コムの繰り返し周波数、Nは整数、c.c.は、式(1)の第1項の複素共役である。
【0023】
したがって、フォトディテクタ12に到達するときにおける光パルス信号Sの電場の時間変化Etarget(t)は、以下の式(2)で表される。
【0024】
【数2】
但し、ngは、光パルス信号Sの光路に存在する媒質の群屈折率である。
【0025】
したがって、フォトディテクタ12が出力する電気信号S’の時間変化IPD(t)は、以下の式(3)で表される。
【0026】
【数3】
式(3)の第1項が、モードズレ数iが1であるビート干渉光に対応したモード間ビート信号S1(周波数frep)であり、第2項が、モードズレ数iが2であるビート干渉光に対応したモード間ビート信号S2(周波数2frep)であり、第3項が、モードズレ数iが3であるビート干渉光に対応したモード間ビート信号S3(周波数3frep)であり、第4項が、モードズレ数iが4であるビート干渉光に対応したモード間ビート信号S4(周波数4frep)である。
【0027】
さて、フォトディテクタ12の出力する電気信号S’は、図1に示すとおり、フィルタ13−1、13−2、13−3、13−4の各々へ入力される。なお、フィルタ13−1に対する電気信号S’の入力タイミングと、フィルタ13−2に対する電気信号S’の入力タイミングと、フィルタ13−3に対する電気信号S’の入力タイミングと、フィルタ13−4に対する電気信号S’の入力タイミングとは一致していなくても構わない。
【0028】
フィルタ13−1は、パスバンドがfrepに設定されたフィルタ回路である。よって、フィルタ13−1は、電気信号S’からモード間ビート信号S1のみを抽出し、距離演算部14へ出力する。
【0029】
フィルタ13−2は、パスバンドが2frepに設定されたフィルタ回路である。よって、フィルタ13−2は、電気信号S’からモード間ビート信号S2のみを抽出し、距離演算部14へ出力する。
【0030】
フィルタ13−3は、パスバンドが3frepに設定されたフィルタ回路である。よって、フィルタ13−3は、電気信号S’からモード間ビート信号S3のみを抽出し、距離演算部14へ出力する。
【0031】
フィルタ13−4は、パスバンドが4frepに設定されたフィルタ回路である。よって、フィルタ13−4は、電気信号S’から電気ビート信号S4のみを抽出し、距離演算部14へ出力する。
【0032】
したがって、4種類のフィルタ13−1、13−2、13−3、13−4は、電気信号S’から、4種類のモード間ビート信号S1、S2、S3、S4を分離して抽出する。
【0033】
ここで、4種類のモード間ビート信号S1、S2、S3、S4の各々の強度と、距離Dとの関係を考える。
【0034】
先ず、モード間ビート信号S1の強度は、モードズレ数iが1であるモード同士がフォトディテクタ12に到達するときにおけるビート干渉強度に相当する。これらのモード同士は、光周波数コム光源11から射出した直後は確実に強く干渉するものの、フォトディテクタ12に到達する時点では、距離Dがモード間の差周波数(frep)に対して所定の条件を満たす場合にのみ強く干渉する。よって、モード間ビート信号S1の強度は、距離Dが(c/(frepng))の整数倍となった場合にのみ強くなる(c:光速、ng:光パルス信号Sの光路に存在する媒質の群屈折率)。したがって、モード間ビート信号S1の強度と距離Dとの関係は、図5(A)に示すとおりとなる。
【0035】
次に、モード間ビート信号S2の強度は、モードズレ数iが2であるモード同士がフォトディテクタ12に到達するときにおけるビート干渉強度に相当する。これらのモード同士は、光周波数コム光源11から射出した直後は確実に強く干渉するものの、フォトディテクタ12に到達する時点では、距離Dがモード間の差周波数(2frep)に対して所定の条件を満たす場合にのみ強く干渉する。よって、モード間ビート信号S2の強度は、距離Dが(c/(2frepng))の整数倍となった場合にのみ強くなる(c:光速、ng:光パルス信号Sの光路に存在する媒質の群屈折率)。したがって、モード間ビート信号S2の強度と距離Dとの関係は、図5(B)に示すとおりとなる。
【0036】
次に、モード間ビート信号S3の強度は、モードズレ数iが3であるモード同士のフォトディテクタ12に到達するときにおけるビート干渉強度に相当する。これらのモード同士は、光周波数コム光源11から射出した直後は確実に強く干渉するものの、フォトディテクタ12に到達する時点では、距離Dがモード間の差周波数(3frep)に対して所定の条件を満たす場合にのみ強く干渉する。よって、モード間ビート信号S3の強度は、距離Dが(c/(3frepng))の整数倍となった場合にのみ強くなる(c:光速、ng:光パルス信号Sの光路に存在する媒質の群屈折率)。したがって、モード間ビート信号S3の強度と距離Dとの関係は、図5(C)に示すとおりとなる。
【0037】
次に、モード間ビート信号S4の強度は、モードズレ数iが4であるモード同士がフォトディテクタ12に到達するときにおけるビート干渉強度に相当する。これらのモード同士は、光周波数コム光源11から射出した直後は確実に強く干渉するものの、フォトディテクタ12に到達する時点では、距離Dがモード間の差周波数(4frep)に対して所定の条件を満たす場合にのみ強く干渉する。よって、モード間ビート信号S4の強度は、距離Dが(c/(4frepng))の整数倍となった場合にのみ強くなる(c:光速、ng:光パルス信号Sの光路に存在する媒質の群屈折率)。したがって、モード間ビート信号S4の強度と距離Dとの関係は、図5(D)に示すとおりとなる。
【0038】
以上の図5(A)〜(D)を比較すると明らかなとおり、距離Dに対する強度の変化パターンは、モード間ビート信号S1、S2、S3、S4の間で互いに異なる。したがって、現時点におけるモード間ビート信号S1、S2、S3、S4の強度関係に基づけば、現時点における距離Dを算出することができる。
【0039】
そこで、距離演算部14は、モード間ビート信号S1の強度I1と、モード間ビート信号S2の強度I2と、電気ビート信号S3の強度I3と、モード間ビート信号S4の強度I4とを参照し(モード間ビート信号の強度は、モード間ビート信号のピーク強度又は時間積分値である。)、それらの強度I1、I2、I3、I4の関係を以下の演算式(4)へ当てはめることにより、現時点における間隔Dを算出する。この演算式(4)は、モード間ビート信号S1、S2、S3、S4の周波数関係によって決まる演算式である(詳細は後述)。
【0040】
【数4】
但し、cは光速であり、ngは光パルス信号Sの光路に存在する媒質の群屈折率である。また、p2、p3、p4は、光周波数コム光源11の発光スペクトル(図3)によって決まる補正係数であり、距離Dがゼロであるときにおけるモード間ビート信号S1、S2、S3、S4の強度比をb1:b2:b3:b4とおくと、補正係数p2、p3、p4は、p2=b1/b2、p3=b2/b3、p4=b1/b4で表される。
【0041】
なお、強度比b1:b2:b3:b4は、光周波数コム光源11の発光スペクトル(図3)の形状によって決まるので、演算式(4)の係数c/(2πfrepng)=Aは、定数である。よって、距離演算部14が係数Aの値を予め記憶しておけば、距離Dの算出に要する演算負荷を抑えることができる。
【0042】
以上、本実施形態の距離測定装置は、光周波数コム光源11が発振する光パルス信号Sをフォトディテクタ12で電気信号S’に変換し、その電気信号S’から、複数種類のモード間ビート信号(ここでは4種類のモード間ビート信号S1、S2、S3、S4)を分離して抽出し、それら複数種類のモード間ビート信号の間の強度関係(ここでは強度I1、I2、I3、I4の関係)と、それら複数種類のモード間ビート信号の間の周波数関係(ここでは演算式(4))とに基づき、距離Dを算出する。
【0043】
すなわち、本実施形態の距離測定装置は、距離Dの演算に使用すべき複数種類の信号を生成するために、光パルス信号Sを光領域で分岐する代わりに、光パルス信号Sを電気領域で分離する。このため、本実施形態の距離測定装置では、複数種類の信号の光領域における経路(光路)が1系統のみ(シングルパス)となる。したがって、本実施形態の距離測定装置では、その光路に存在する媒質が揺らいだとしても、距離Dの測定精度が低下することは無い。
【0044】
しかも、本実施形態の距離測定装置では、距離Dの演算用に取得すべきデータが、複数種類の信号の間の位相差ではなく、複数種類の信号の間の強度関係である。このため、本実施形態の距離測定装置では、複数種類の信号の各々が距離演算部14へ入力されるタイミングを完全に一致させる必要は無い。したがって、本実施形態の距離測定装置では、複数種類の信号(S1、S2、S3、S4)の電気領域における経路を、それぞれ任意に設定することが可能である。
【0045】
なお、本実施形態では、演算に使用するモード間ビート信号の組み合わせを、モードズレ数が1、2、3、4であるモード間ビート信号S1、S2、S3、S4の組み合わせとしたが、他の組み合わせとしてもよい。例えば、モードズレ数が2、3、4、5であるモード間ビート信号S2、S3、S4、S5の組み合わせ、モードズレ数が3、4、5、6であるモード間ビート信号S3、S4、S5、S6の組み合わせとしてもよい。モード間ビート信号の個数は、2以上であればよいが、演算式をシンプルにするためには、4以上であることが望ましい。なお、上述した演算式(4)は、採用された組み合わせに応じて適切に変更されるものとする。
[演算式(4)の説明]
以下、演算式(4)について説明する。
【0046】
演算式(4)に含まれるI1、I2、I3、I4は、モード間ビート信号S1、S2、S3、S4の強度である。モード間ビート信号S1、S2、S3、S4の強度と距離Dとの関係は前述したとおりである(図5(A)〜(D)を参照)。よって、強度I1、I2、I3、I4の関係は、以下の式(5)で表わされる。
【0047】
【数5】
但し、cは光速であり、ngは光パルス信号Sの光路に存在する媒質の群屈折率である。また、p2、p3、p4は、距離Dがゼロであるときのモード間ビート信号S1、S2、S3、S4の強度比b1:b2:b3:b4に対して、p2=b1/b2、p3=b1/b3、p4=b1/b4で表される補正係数である。
【0048】
したがって、以下の式(6)が成り立つ。
【0049】
【数6】
また、以下の式(7)も成り立つ。
【0050】
【数7】
したがって、以下の式(8)が成り立つ。
【0051】
【数8】
そして、以上の式(7)、(8)からは、以下の式(9)が導出される。
【0052】
【数9】
この式(9)を変形すると、上述した演算式(4)が導出される。
【0053】
以上の結果、モード間ビート信号の組み合わせがモード間ビート信号S1、S2、S3、S4の組み合わせであるときに演算式(4)を使用できることは、明らかである。
【0054】
なお、第1実施形態において、光周波数コム(図3)の櫛の本数(モード数)が十分に多い場合は、距離Dがゼロであるときのモード間ビート信号S1、S2、S3、S4の強度比b1:b2:b3:b4は、1:1:1:1に近くなる。
【0055】
よって、その場合には、補正係数p2、p3、p4の各々が1に近くなるので、演算式(4)の代わりに以下の演算式(10)を使用してもよい。
【0056】
【数10】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態として、位置測定装置を搭載したXYZステージを説明する。
【0057】
図6は、本実施形態のXYZステージの概念図である。図6に示すとおり、XYZステージには、ステージ固定部100fと、ステージ可動部100mと、光周波数コム光源11’とが備えられる。ステージ可動部100mは、ステージ固定部100fに対して相対移動することが可能な支持台などであり、その移動方向は、互いに垂直なX方向、Y方向、Z方向の各々である。
【0058】
そして、本実施形態のXYZステージには、ステージ固定部100fを基準としたステージ可動部100mのX方向の位置を測定するためのX位置測定装置(符号12X、102Xなど)と、ステージ固定部100fを基準としたステージ可動部100のY方向の位置を測定するためのY位置測定装置(符号12Y、102Yなど)と、ステージ固定部100fを基準としたステージ可動部100mのZ方向の位置を測定するためのZ位置測定装置(不図示)とが備えられる。これらのX位置測定装置、Y位置測定装置、Z位置測定装置の各々の測定原理は共通であり、第1実施形態の距離測定装置の測定原理と基本的に同じである。
【0059】
先ず、X位置測定装置を詳しく説明する。図7は、X位置測定装置200Xの構成図である。
【0060】
図7に示すとおりX位置測定装置200Xは、光周波数コム光源11’の第1出力端子に接続された光ファイバ110Xと、光ファイバ110Xの先端に設けられたフェルール102Xと、ステージ可動部100mのうちX方向と非平行な側面(YZ平面と平行な側面100mX)にYZ方向にかけて配列された複数のフォトディテクタ12Xと、回路部100Xとによって構成されており、フェルール102Xは、側面100mXに向かって光パルス信号を発振可能な姿勢(側面100mXに正対する姿勢)でステージ固定部100fの側へ固定されている。
【0061】
光周波数コム光源11’は、第1実施形態の光周波数コム光源11と同様の光周波数コム光源であって、光ファイバ110Xに対して光パルス信号を供給する。なお、光周波数コム光源11’は、複数の出力端子を有しており、X位置測定装置200Xの光ファイバ110Xだけでなく、Y位置測定装置(図8)の光ファイバ110Y及びZ位置測定装置(図9)の光ファイバ100Zにも光パルス信号を同時に供給することができる。
【0062】
X位置測定装置200Xの複数のフォトディテクタ12Xの各々は、第1実施形態のフォトディテクタと同様の光電変換素子であって、入射光を一定のサンプリング周波数で光電変換することにより電気信号へと変換する。
【0063】
ここで、複数のフォトディテクタ12XのY方向の配列数は、ステージ可動部100mのY方向のストロークに応じた数に設定されており、複数のフォトディテクタ12XのZ方向の配列数は、ステージ可動部100mのZ方向のストロークに応じた数に設定されている(因みに図6では、Z方向のストロークよりもY方向のストロークの方が大きく、Z方向の配列数よりもY方向の配列数の方が多い例を示した。)。また、上述したフェルール102Xの端部には、不図示のピンホール部材が設けられており、フェルール102Xから射出する光パルス信号は、発散しながら進行する。
【0064】
よって、X位置測定装置200Xのフェルール102Xは、ステージ可動部100mのYZ方向の位置に依らず、複数のフォトディテクタ12Xの少なくとも1つへ確実に光パルス信号を投光することができる。このフェルール102Xが、X位置測定装置200Xの光周波数コム光源として機能する。
【0065】
X位置測定装置200Xの回路部100Xは、第1実施形態の回路部100(図1参照)にセレクタ103を追加したものである。このセレクタ103は、複数のフォトディテクタ12Xの各々から出力される電気信号のうち、強度が最高である1つの電気信号(ピーク強度又は時間積分値が最高である1つの電気信号)のみを選択する。よって、X位置測定装置200Xでは、複数のフォトディテクタ12Xのうちフェルール102Xに正対している1つのフォトディテクタ12Xのみが、電気信号の参照先として選択される。
【0066】
回路部100Xにおける4種類のフィルタ13−1、13−2、13−3、13−4及び距離演算部14は、セレクタ103によって選択された電気信号に対して第1実施形態と同様の処理を施すことにより、フェルール102Xから側面100mXまでの距離DXを、ステージ可動部100mのX方向の位置として算出する。
【0067】
なお、X位置測定装置200Xの回路部100Xは、複数のフォトディテクタ12Xと電気的に接続されているのであれば、ステージ可動部100mの内部に搭載されても、ステージ可動部100mの外部に配置されてもどちらでも構わない(以上、X位置測定装置200Xの説明。)。
【0068】
次に、Y位置測定装置を説明する。図8は、Y位置測定装置200Yの構成図である。
【0069】
図8に示すとおりY位置測定装置200Yは、光周波数コム光源11’の第2出力端子に接続された光ファイバ110Yと、光ファイバ110Yの先端に設けられたフェルール102Yと、ステージ可動部100mのうちY方向と非平行な側面(XZ平面と平行な側面100mY)にXZ方向にかけて配列された複数のフォトディテクタ12Yと、回路部100Yと、によって構成されており、フェルール102Yは、側面100mYに向かって光パルス信号を発振可能な姿勢(側面100mYに正対する姿勢)でステージ固定部100fの側へ固定されている。
【0070】
Y位置測定装置200Yの複数のフォトディテクタ12Yの各々は、X位置測定装置のフォトディテクタ12Xと同様のフォトディテクタである。
【0071】
ここで、複数のフォトディテクタ12YのX方向の配列数は、ステージ可動部100mのX方向のストロークに応じた数に設定されており、複数のフォトディテクタ12YのZ方向の配列数は、ステージ可動部100mのZ方向のストロークに応じた数に設定されている(因みに図6では、Z方向のストロークよりもX方向のストロークの方が大きく、Z方向の配列数よりもX方向の配列数の方が多い例を示した。)。
【0072】
また、上述したフェルール102Yの端部には、不図示のピンホール部材が設けられており、フェルール102Yから射出する光パルス信号は、発散しながら進行する。
【0073】
よって、Y位置測定装置200Yのフェルール102Yは、ステージ可動部100mのXZ方向の位置に依らず、複数のフォトディテクタ12Yの少なくとも1つへ確実に光パルス信号を投光することができる。このフェルール102Yが、Y位置測定装置200Yの光周波数コム光源として機能する。
【0074】
Y位置測定装置200Yの回路部100Yは、X位置測定装置200Xの回路部100Xと同じ構成をしており、複数のフォトディテクタ12Yから出力される電気信号に基づき、フェルール102Yから側面100mYまでの距離DYを、ステージ可動部100mのY方向の位置として算出する。
【0075】
なお、Y位置測定装置200Yの回路部100Yは、複数のフォトディテクタ12Yと電気的に接続されているのであれば、ステージ可動部100mの内部に搭載されても、ステージ可動部100mの外部に配置されてもどちらでも構わない(以上、Y位置測定装置200Yの説明。)。
【0076】
次に、Z位置測定装置を説明する。図9は、Z位置測定装置200Zの構成図である。
【0077】
図9に示すとおりZ位置測定装置200Zは、光周波数コム光源11’の第3出力端子に接続された光ファイバ110Zと、光ファイバ110Zの先端に設けられたフェルール102Zと、ステージ可動部100mのうちZ方向と非平行な側面(XY平面と平行な側面100mZ)にXY方向にかけて配列された複数のフォトディテクタ12Zと、回路部100Zと、によって構成されており、フェルール102Zは、側面100mZに向かって光パルス信号を発振可能な姿勢(側面100mZに正対する姿勢)でステージ固定部100fの側へ固定されている。
【0078】
Z位置測定装置200Zの複数のフォトディテクタ12Zの各々は、X位置測定装置のフォトディテクタ12Xと同様のフォトディテクタである。
【0079】
ここで、複数のフォトディテクタ12ZのX方向の配列数は、ステージ可動部100mのX方向のストロークに応じた数に設定されており、複数のフォトディテクタ12ZのY方向の配列数は、ステージ可動部100mのY方向のストロークに応じた数に設定されている。
【0080】
また、上述したフェルール102Zの端部には、不図示のピンホール部材が設けられており、フェルール102Zから射出する光パルス信号は、発散しながら進行する。
【0081】
よって、Z位置測定装置200Zのフェルール102Zは、ステージ可動部100mのXY方向の位置に依らず、複数のフォトディテクタ12Zの少なくとも1つへ確実に光パルス信号を投光することができる。このフェルール102Zが、Z位置測定装置200Zの光周波数コム光源として機能する。
【0082】
Z位置測定装置200Yの回路部100Zは、X位置測定装置200Xの回路部100Xと同じ構成をしており、複数のフォトディテクタ12Zから出力される電気信号に基づき、フェルール102Zから側面100mZまでの距離DZを、ステージ可動部100mのZ方向の位置として算出する。
【0083】
なお、Z位置測定装置200Zの回路部100Zは、複数のフォトディテクタ12Zと電気的に接続されているのであれば、ステージ可動部100mの内部に搭載されても、ステージ可動部100mの外部に配置されてもどちらでも構わない(以上、Z位置測定装置200Zの説明)。
【0084】
以上、本実施形態のXYZステージは、第1実施形態と同じ原理のX位置測定装置200X、Y位置測定装置200Y、Z位置測定装置200Zを使用するので、ステージ可動部100mとステージ固定部100fとの間に存在する媒質の揺らぎの影響を受けずにステージ可動部100mのXYZ方向の位置を測定することができる。したがって、本実施形態のXYZステージは、ステージ可動部100mのXYZ方向の位置制御を高精度に行うことも可能である。
【0085】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態として距離測定装置を説明する。本実施形態は、第1実施形態の変形例である。
【0086】
図10は、本実施形態の距離測定装置の全体構成図である。図10に示すとおり、本実施形態の距離測定装置は、第1実施形態の距離測定装置(図1)において、光周波数コム光源11とフォトディテクタ12との間にビームエキスパンダ300を配置したものである。なお、ビームエキスパンダ300は、光周波数コム光源11の固定先と同じ側(上述した物体Aの側)に固定されている。
【0087】
したがって、本実施形態では、光周波数コム光源11から射出した光パルス信号Sの光束は、ビームエキスパンダ300によって拡大され、光パルス信号Sの照射範囲300Aは、第1実施形態のそれよりも拡大される。この場合、距離測定の方向(図10の左右方向)と垂直な方向(図10の上下方向及び手前奧方向)へフォトディテクタ12が相対移動したとしても、フォトディテクタ12が照射範囲300Aの内部に存在する限り、距離測定が可能である。
【0088】
したがって、本実施形態によると、光周波数コム光源11及びビームエキスパンダ300を固定した物体(上述した物体A)と、フォトディテクタ12を固定した物体(上述した物体B)の相対移動範囲を、広く確保することができる。
【0089】
なお、本実施形態では、上述した物体Bに固定されるフォトディテクタの個数を1としたが、2以上に冗長化することで、物体Bの相対移動範囲を更に拡大してもよい。
【0090】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態として位置測定装置を説明する。本実施形態は、第3実施形態の距離測定装置の応用例である。
【0091】
図11(A)は、本実施形態の位置測定装置の配置図であり、図11(B)は、本実施形態の位置測定装置の回路図(フォトディテクタ12より後段の回路図)である。図11(A)、(B)に示すとおり本実施形態の位置測定装置は、光周波数コム光源11a及びビームエキスパンダ300からなるユニット500aと、光周波数コム光源11b及びビームエキスパンダ300からなるユニット500bと、光周波数コム光源11c及びビームエキスパンダ300からなるユニット500cと、フォトディテクタ12と、第1実施形態の回路部100と同様の3つの回路部100a、100b、100cとを備える。
【0092】
3系統のユニット500a、500b、500cの各々は、固定部(不図示)の側へ固定されており、フォトディテクタ12は、移動物体400の側へ固定されている。そして、3系統のユニット500a、500b、500cは、フォトディテクタ12の存在する範囲に対して互いに異なる方向から光パルス信号を照射する。なお、3系統のユニット500a、500b、500cの各々が照射する光パルス信号の光束径は、ビームエキスパンダ300によって拡大されている。
【0093】
これらの系統のユニット500a、500b、500cと3系統の回路部100a、100b、100cとが、移動物体400に関する3方向の距離測定を個別に行い、フォトディテクタ12は、それら3方向の距離測定に共用される。
【0094】
ここで、3系統のユニット500a、500b、500cへ個別に設けられた3つの光周波数コム光源11a、11b、11cの間では、繰り返し周波数が互いに異なる値に設定されている。以下、光周波数コム光源11aの繰り返し周波数をfrepaとおき、光周波数コム光源11bの繰り返し周波数をfrepbとおき、光周波数コム光源11cの繰り返し周波数をfrepcとおく。
【0095】
そして、3系統の回路部100a、100b、100cは、これらの光周波数コム11a、11b、11cに個別に対応した設計となっている。
【0096】
具体的に、回路部100aは、4つのフィルタ回路として、パスバンドがfrepaに設定されたフィルタ回路と、パスバンドが2frepaに設定されたフィルタ回路と、パスバンドが3frepaに設定されたフィルタ回路と、パスバンドが4frepaに設定されたフィルタ回路とを備える。この構成により、回路部100aは、ユニット500aから移動物体400までの距離を算出する。
【0097】
また、回路部100bは、4つのフィルタ回路として、パスバンドがfrepbに設定されたフィルタ回路と、パスバンドが2frepbに設定されたフィルタ回路と、パスバンドが3frepbに設定されたフィルタ回路と、パスバンドが4frepbに設定されたフィルタ回路とを備える。この構成により、回路部100bは、ユニット500bから移動物体400までの距離を算出する。
【0098】
また、回路部100cは、4つのフィルタ回路として、パスバンドがfrepcに設定されたフィルタ回路と、パスバンドが2frepcに設定されたフィルタ回路と、パスバンドが3frepcに設定されたフィルタ回路と、パスバンドが4frepcに設定されたフィルタ回路とを備える。この構成により、回路部100cは、ユニット500cから移動物体400までの距離を算出する。
【0099】
したがって、本実施形態では、移動物体400が光パルス信号の照射範囲から外れない限りは、移動物体400の3次元位置(空間内の位置)を測定することができる。
【0100】
なお、本実施形態では、移動物体400に固定されるフォトディテクタの個数を1としたが、2以上に冗長化することで、移動物体400の可動範囲を更に拡大してもよい。
【0101】
[第5実施形態]
以下、本発明の第5実施形態として距離測定装置を説明する。本実施形態は、第3実施形態の変形例である。
【0102】
図12は、本実施形態の距離測定装置の全体構成図である。図12に示すとおり、本実施形態の距離測定装置は、第3実施形態の距離測定装置(図10)において、フォトディテクタ12の代わりに、フォトディテクタ12と同様の4つのフォトディテクタ12−1、12−2、12−3、12−4を(上述した物体Bの側に)近接して配列したものである。そして、本実施形態では、4つのフォトディテクタ12−1、12−2、12−3、12−4は、回路部100における4つのフィルタ回路13−1、13−2、13−3、13−4に対して個別に接続される。
【0103】
すなわち、本実施形態では、光パルス信号の分岐を、フォトディテクタの後段で行うのではなく、フォトディテクタの配置面にて行う。このような分岐方法を採用した場合にも、第3実施形態と同じ効果が得られる。
【0104】
なお、本実施形態では、物体Bの側へ固定されるフォトディテクタを1組み(4つ)としたが、2組み以上に冗長化することで、物体Bの相対移動範囲を更に拡大してもよい。
【0105】
[第6実施形態]
以下、本発明の第6実施形態として位置測定装置を説明する。本実施形態は、第5実施形態の距離測定装置の応用例であって、第4実施形態の変形例である。
【0106】
図13(A)は、本実施形態の位置測定装置の配置図であり、図13(B)は、本実施形態の位置測定装置の回路図である。図13に示すとおり、本実形態の位置測定装置は、第4実施形態の位置測定装置(図11)において、フォトディテクタ12の代わりに、フォトディテクタ12と同様の4つのフォトディテクタ12−1、12−2、12−3、12−4を移動物体400上に近接して配列したものである。これら4つのフォトディテクタ12−1、12−2、12−3、12−4は、3方向の距離測定に共用される。
【0107】
フォトディテクタ12−1、12−2、12−3、12−4には、第4実施形態の回路部100a、100b、100cと同様の回路部100a、100b、100cが接続されている。
【0108】
但し、本実施形態におけるフォトディテクタ12−1、12−2、12−3、12−4は、回路部100a内の4つのフィルタ回路に対して個別に接続され、フォトディテクタ12−1、12−2、12−3、12−4は、回路部100b内の4つのフィルタ回路に対して個別に接続され、フォトディテクタ12−1、12−2、12−3、12−4は、回路部100c内の4つのフィルタ回路に対して個別に接続される。
【0109】
したがって、本実施形態では、光パルス信号の分岐を、フォトディテクタの後段で行うのではなく、フォトディテクタの配置面にて行う。このような分岐方法を採用した場合にも、第4実施形態と同様、移動物体400の3次元位置(空間内の位置)を測定することができる。
【0110】
なお、本実施形態では、移動物体400に固定されるフォトディテクタを1組み(4つ)としたが、2組み以上に冗長化することで、移動物体400の可動範囲を更に拡大してもよい。
[その他]
なお、第3実施形態〜第6実施形態では、第1実施形態と同様、演算に使用するモード間ビート信号の組み合わせを、モードズレ数が1、2、3、4であるモード間ビート信号S1、S2、S3、S4の組み合わせとしたが、他の組み合わせとしてもよい。例えば、モードズレ数が2、3、4、5であるモード間ビート信号S2、S3、S4、S5の組み合わせ、モードズレ数が3、4、5、6であるモード間ビート信号S3、S4、S5、S6の組み合わせとしてもよい。モード間ビート信号の個数は、2以上であればよいが、演算式をシンプルにするためには、4以上であることが望ましい。なお、上述した演算式(4)は、採用された組み合わせに応じて適切に変更されるものとする。
【符号の説明】
【0111】
11…光周波数コム光源、12…フォトディテクタ、100…回路部、13−1…フィルタ、13−2…フィルタ、13−3…フィルタ、13−4…フィルタ、14…距離演算部
【技術分野】
【0001】
本発明は、光周波数コムを使用した距離測定装置、位置測定装置、距離測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光周波数コムを使用した距離測定装置は、光周波数コム光源が発振するパルス列(光パルス信号)を1対の光パルス信号に分岐し、一方の光パルス信号を直接フォトダイオードで電気信号に変換すると共に、他方の光パルス信号を移動反射鏡で反射させてからフォトダイオードで電気信号に変換する(特許文献1等を参照。)。
【0003】
これら一対のフォトダイオードの各々が出力する電気信号には、光周波数コムの様々なモード間ビート信号が含まれており、一方の電気信号に含まれる所定周波数のモード間ビート信号と、他方の電気信号に含まれる同じ周波数のモード間ビート信号との間の位相差は、光パルス信号の分岐点から移動反射鏡までの距離によって変化する。よって、従来の距離測定装置では、周波数の等しい1対のモード間ビート信号の間の位相差を、移動反射鏡の距離情報として算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−184181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この距離測定装置では、1対の光パルス信号の非共通光路に存在する媒質の揺らぎが測定精度に直接影響するという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、外乱の影響を受けにくい距離測定装置、位置測定装置、距離測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明を例示する距離測定装置の一態様は、光周波数コム光源が発振する光パルス信号を光電変換して電気信号に変換する光電変換部と、前記光電変換部が生成する電気信号から、前記光パルス信号の複数種類のモード間ビート信号を分離して抽出する分離抽出手段と、抽出された前記複数種類のモード間ビート信号の間の強度関係と、前記複数種類のモード間ビート信号の間の周波数関係とに基づき、前記光周波数コム光源から前記光電変換部までの距離を算出する演算手段とを備える。
【0008】
本発明を例示する位置測定装置の一態様は、固定部を基準とした可動部の第1方向の位置及び第2方向の位置を個別に測定する第1位置測定装置及び第2位置測定装置の各々として、本発明を例示する距離測定装置の一態様を使用した位置測定装置であって、前記第1位置測定装置は複数の光電変換部を備え、それら複数の光電変換部は、前記可動部のうち前記第1方向とは非平行な第1側面上に前記第2方向にかけて配列されており、前記第1位置測定装置の光周波数コム光源は、前記第1側面に向かって光パルス信号を発振可能な姿勢で前記固定部の側に固定されており、前記第2位置測定装置は複数の光電変換部を備え、それら複数の光電変換部は、前記可動部のうち前記第2方向とは非平行な第2側面上に前記第1方向にかけて配列されており、前記第2位置測定装置の光周波数コム光源は、前記第2側面に向かって光パルス信号を発振可能な姿勢で前記固定部の側に固定されている。
【0009】
本発明を例示する距離測定装置の一態様は、光周波数コム光源が発振する光パルス信号を光電変換して電気信号に変換する光電変換手順と、前記光電変換手順で生成される電気信号から、前記光パルス信号の複数種類のモード間ビート信号を分離して抽出する分離抽出手順と、抽出された前記複数種類のモード間ビート信号の間の強度関係と、前記複数種類のモード間ビート信号の間の周波数関係とに基づき、前記光周波数コム光源から前記光電変換の変換面までの距離を算出する演算手順とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外乱の影響を受けにくい距離測定装置、位置測定装置、距離測定方法が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の距離測定装置の全体構成図である。
【図2】光パルス信号Sの波形の模式図である。
【図3】光周波数コムの模式図である。
【図4】複数種類のモード間ビート信号の関係を示す図である。
【図5】複数種類のモード間ビート信号の強度と距離との関係を示す図である。
【図6】第2実施形態のXYZステージの概念図である。
【図7】X位置測定装置の構成図である。
【図8】Y位置測定装置の構成図である。
【図9】Z位置測定装置の構成図である。
【図10】第3実施形態の距離測定装置の全体構成図である。
【図11】(A)は、第4実施形態の位置測定装置の配置図であり、(B)は、第4実施形態の位置測定装置の回路図である。
【図12】第5実施形態の距離測定装置の全体構成図である。
【図13】(A)は、第6実施形態の位置測定装置の配置図であり、(B)は、第5実施形態の位置測定装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態として距離測定装置を説明する。
【0013】
図1は、本実施形態の距離測定装置の全体構成図である。図1に示すとおり距離測定装置には、光周波数コム光源11と、フォトディテクタ12と、回路部100とが備えられ、その回路部100には、4種類のフィルタ13−1、13−2、13−3、13−4と、距離演算部14とが備えられる。
【0014】
光周波数コム光源11からフォトディテクタ12までの距離Dは可変であって、この距離Dが測定対象である。よって、例えば、光周波数コム光源11に物体Aを固定し、フォトディテクタ12に物体Bを固定すれば、物体Aを基準とした物体Bの所定方向の位置を測定することができる。なお、回路部100は、フォトディテクタ12と共に物体Bの側へ固定されてもよいが、フォトディテクタ12と電気的に接続されているのであれば、回路部100は物体Bに固定されている必要は無い。
【0015】
光周波数コム光源11は、例えばフェムト秒光周波数コム光源、アト秒光周波数コム光源などの光周波数コム光源であって、パルス幅がフェムト秒又はアト秒と狭められた光パルスを一定のパルス発振周期Tで繰り返し発振する。なお、図2に示したのは、光周波数コム光源11から発振される光パルス列(光パルス信号S)の波形を模式的に示す図である。
【0016】
この光パルス信号Sのフーリエ変換である光周波数コムは、図3に示すとおり一定のモード間隔(繰り返し周波数frep)を有している。その繰り返し周波数frepは、パルス発振周期Tの逆数(1/T)である。以下、繰り返し周波数frepは50MHzに設定されたと仮定する。
【0017】
図1に示すフォトディテクタ12は、フォトダイオードなどの光電変換素子であって、光周波数コム光源11に対して光電変換面を正対させた姿勢で前述した物体Bの側へ固定されている。フォトディテクタ12は、光周波数コム光源11から発振された光パルス信号Sを受光し、一定のサンプリング周波数で繰り返し光電変換することにより、その光パルス信号Sを電気信号S’へと変換する。
【0018】
フォトディテクタ12のサンプリング周波数は、繰り返し周波数frepよりも十分に高く、例えば、12GHzに設定されている。また、このサンプリング周波数は、光パルス信号Sの光周波数より低い。よって、フォトディテクタ12の出力する電気信号S’には、光パルス信号Sのモード間ビート信号のみが現れる。
【0019】
モード間ビート信号とは、光周波数コム(図3)の櫛間(モード間)のビート干渉光に対応した信号である。ビート干渉光には、図4に示すとおり、モードズレ数iが1であるモード間のビート干渉光(ビート周波数はfrep)や、モードズレ数iが2であるモード間のビート干渉光(ビート周波数は2frep)や、モードズレ数iが3であるモード間のビート干渉光(ビート周波数は3frep)や、モードズレ数iが4であるモード間のビート干渉光(ビート周波数は4frep)などがある。
【0020】
なお、ビートズレ数iが異なると、ビート干渉光に寄与するモードの本数も異なるため、ビート干渉光の強度(ビート干渉強度)は、図4に示すとおりモードズレ数iによって異なる。通常は、モードズレ数iの小さいビート干渉光ほど、それに寄与するモードの本数も多いので、ビート干渉強度も高くなる。但し、これらのビート干渉光の強度比は、図3に示した光周波数コムの形状(=光周波数コム光源11の発光スペクトル)によって一義的に決まる。
【0021】
ここで、光周波数コム光源11から射出した直後の光パルス信号Sの電場の時間変化Ecomb(t)は、以下の式(1)で表される。
【0022】
【数1】
但し、Bは振幅、tは時間、fCEOは光周波数コムのキャリア・エンベロープオフセット周波数、frepは光周波数コムの繰り返し周波数、Nは整数、c.c.は、式(1)の第1項の複素共役である。
【0023】
したがって、フォトディテクタ12に到達するときにおける光パルス信号Sの電場の時間変化Etarget(t)は、以下の式(2)で表される。
【0024】
【数2】
但し、ngは、光パルス信号Sの光路に存在する媒質の群屈折率である。
【0025】
したがって、フォトディテクタ12が出力する電気信号S’の時間変化IPD(t)は、以下の式(3)で表される。
【0026】
【数3】
式(3)の第1項が、モードズレ数iが1であるビート干渉光に対応したモード間ビート信号S1(周波数frep)であり、第2項が、モードズレ数iが2であるビート干渉光に対応したモード間ビート信号S2(周波数2frep)であり、第3項が、モードズレ数iが3であるビート干渉光に対応したモード間ビート信号S3(周波数3frep)であり、第4項が、モードズレ数iが4であるビート干渉光に対応したモード間ビート信号S4(周波数4frep)である。
【0027】
さて、フォトディテクタ12の出力する電気信号S’は、図1に示すとおり、フィルタ13−1、13−2、13−3、13−4の各々へ入力される。なお、フィルタ13−1に対する電気信号S’の入力タイミングと、フィルタ13−2に対する電気信号S’の入力タイミングと、フィルタ13−3に対する電気信号S’の入力タイミングと、フィルタ13−4に対する電気信号S’の入力タイミングとは一致していなくても構わない。
【0028】
フィルタ13−1は、パスバンドがfrepに設定されたフィルタ回路である。よって、フィルタ13−1は、電気信号S’からモード間ビート信号S1のみを抽出し、距離演算部14へ出力する。
【0029】
フィルタ13−2は、パスバンドが2frepに設定されたフィルタ回路である。よって、フィルタ13−2は、電気信号S’からモード間ビート信号S2のみを抽出し、距離演算部14へ出力する。
【0030】
フィルタ13−3は、パスバンドが3frepに設定されたフィルタ回路である。よって、フィルタ13−3は、電気信号S’からモード間ビート信号S3のみを抽出し、距離演算部14へ出力する。
【0031】
フィルタ13−4は、パスバンドが4frepに設定されたフィルタ回路である。よって、フィルタ13−4は、電気信号S’から電気ビート信号S4のみを抽出し、距離演算部14へ出力する。
【0032】
したがって、4種類のフィルタ13−1、13−2、13−3、13−4は、電気信号S’から、4種類のモード間ビート信号S1、S2、S3、S4を分離して抽出する。
【0033】
ここで、4種類のモード間ビート信号S1、S2、S3、S4の各々の強度と、距離Dとの関係を考える。
【0034】
先ず、モード間ビート信号S1の強度は、モードズレ数iが1であるモード同士がフォトディテクタ12に到達するときにおけるビート干渉強度に相当する。これらのモード同士は、光周波数コム光源11から射出した直後は確実に強く干渉するものの、フォトディテクタ12に到達する時点では、距離Dがモード間の差周波数(frep)に対して所定の条件を満たす場合にのみ強く干渉する。よって、モード間ビート信号S1の強度は、距離Dが(c/(frepng))の整数倍となった場合にのみ強くなる(c:光速、ng:光パルス信号Sの光路に存在する媒質の群屈折率)。したがって、モード間ビート信号S1の強度と距離Dとの関係は、図5(A)に示すとおりとなる。
【0035】
次に、モード間ビート信号S2の強度は、モードズレ数iが2であるモード同士がフォトディテクタ12に到達するときにおけるビート干渉強度に相当する。これらのモード同士は、光周波数コム光源11から射出した直後は確実に強く干渉するものの、フォトディテクタ12に到達する時点では、距離Dがモード間の差周波数(2frep)に対して所定の条件を満たす場合にのみ強く干渉する。よって、モード間ビート信号S2の強度は、距離Dが(c/(2frepng))の整数倍となった場合にのみ強くなる(c:光速、ng:光パルス信号Sの光路に存在する媒質の群屈折率)。したがって、モード間ビート信号S2の強度と距離Dとの関係は、図5(B)に示すとおりとなる。
【0036】
次に、モード間ビート信号S3の強度は、モードズレ数iが3であるモード同士のフォトディテクタ12に到達するときにおけるビート干渉強度に相当する。これらのモード同士は、光周波数コム光源11から射出した直後は確実に強く干渉するものの、フォトディテクタ12に到達する時点では、距離Dがモード間の差周波数(3frep)に対して所定の条件を満たす場合にのみ強く干渉する。よって、モード間ビート信号S3の強度は、距離Dが(c/(3frepng))の整数倍となった場合にのみ強くなる(c:光速、ng:光パルス信号Sの光路に存在する媒質の群屈折率)。したがって、モード間ビート信号S3の強度と距離Dとの関係は、図5(C)に示すとおりとなる。
【0037】
次に、モード間ビート信号S4の強度は、モードズレ数iが4であるモード同士がフォトディテクタ12に到達するときにおけるビート干渉強度に相当する。これらのモード同士は、光周波数コム光源11から射出した直後は確実に強く干渉するものの、フォトディテクタ12に到達する時点では、距離Dがモード間の差周波数(4frep)に対して所定の条件を満たす場合にのみ強く干渉する。よって、モード間ビート信号S4の強度は、距離Dが(c/(4frepng))の整数倍となった場合にのみ強くなる(c:光速、ng:光パルス信号Sの光路に存在する媒質の群屈折率)。したがって、モード間ビート信号S4の強度と距離Dとの関係は、図5(D)に示すとおりとなる。
【0038】
以上の図5(A)〜(D)を比較すると明らかなとおり、距離Dに対する強度の変化パターンは、モード間ビート信号S1、S2、S3、S4の間で互いに異なる。したがって、現時点におけるモード間ビート信号S1、S2、S3、S4の強度関係に基づけば、現時点における距離Dを算出することができる。
【0039】
そこで、距離演算部14は、モード間ビート信号S1の強度I1と、モード間ビート信号S2の強度I2と、電気ビート信号S3の強度I3と、モード間ビート信号S4の強度I4とを参照し(モード間ビート信号の強度は、モード間ビート信号のピーク強度又は時間積分値である。)、それらの強度I1、I2、I3、I4の関係を以下の演算式(4)へ当てはめることにより、現時点における間隔Dを算出する。この演算式(4)は、モード間ビート信号S1、S2、S3、S4の周波数関係によって決まる演算式である(詳細は後述)。
【0040】
【数4】
但し、cは光速であり、ngは光パルス信号Sの光路に存在する媒質の群屈折率である。また、p2、p3、p4は、光周波数コム光源11の発光スペクトル(図3)によって決まる補正係数であり、距離Dがゼロであるときにおけるモード間ビート信号S1、S2、S3、S4の強度比をb1:b2:b3:b4とおくと、補正係数p2、p3、p4は、p2=b1/b2、p3=b2/b3、p4=b1/b4で表される。
【0041】
なお、強度比b1:b2:b3:b4は、光周波数コム光源11の発光スペクトル(図3)の形状によって決まるので、演算式(4)の係数c/(2πfrepng)=Aは、定数である。よって、距離演算部14が係数Aの値を予め記憶しておけば、距離Dの算出に要する演算負荷を抑えることができる。
【0042】
以上、本実施形態の距離測定装置は、光周波数コム光源11が発振する光パルス信号Sをフォトディテクタ12で電気信号S’に変換し、その電気信号S’から、複数種類のモード間ビート信号(ここでは4種類のモード間ビート信号S1、S2、S3、S4)を分離して抽出し、それら複数種類のモード間ビート信号の間の強度関係(ここでは強度I1、I2、I3、I4の関係)と、それら複数種類のモード間ビート信号の間の周波数関係(ここでは演算式(4))とに基づき、距離Dを算出する。
【0043】
すなわち、本実施形態の距離測定装置は、距離Dの演算に使用すべき複数種類の信号を生成するために、光パルス信号Sを光領域で分岐する代わりに、光パルス信号Sを電気領域で分離する。このため、本実施形態の距離測定装置では、複数種類の信号の光領域における経路(光路)が1系統のみ(シングルパス)となる。したがって、本実施形態の距離測定装置では、その光路に存在する媒質が揺らいだとしても、距離Dの測定精度が低下することは無い。
【0044】
しかも、本実施形態の距離測定装置では、距離Dの演算用に取得すべきデータが、複数種類の信号の間の位相差ではなく、複数種類の信号の間の強度関係である。このため、本実施形態の距離測定装置では、複数種類の信号の各々が距離演算部14へ入力されるタイミングを完全に一致させる必要は無い。したがって、本実施形態の距離測定装置では、複数種類の信号(S1、S2、S3、S4)の電気領域における経路を、それぞれ任意に設定することが可能である。
【0045】
なお、本実施形態では、演算に使用するモード間ビート信号の組み合わせを、モードズレ数が1、2、3、4であるモード間ビート信号S1、S2、S3、S4の組み合わせとしたが、他の組み合わせとしてもよい。例えば、モードズレ数が2、3、4、5であるモード間ビート信号S2、S3、S4、S5の組み合わせ、モードズレ数が3、4、5、6であるモード間ビート信号S3、S4、S5、S6の組み合わせとしてもよい。モード間ビート信号の個数は、2以上であればよいが、演算式をシンプルにするためには、4以上であることが望ましい。なお、上述した演算式(4)は、採用された組み合わせに応じて適切に変更されるものとする。
[演算式(4)の説明]
以下、演算式(4)について説明する。
【0046】
演算式(4)に含まれるI1、I2、I3、I4は、モード間ビート信号S1、S2、S3、S4の強度である。モード間ビート信号S1、S2、S3、S4の強度と距離Dとの関係は前述したとおりである(図5(A)〜(D)を参照)。よって、強度I1、I2、I3、I4の関係は、以下の式(5)で表わされる。
【0047】
【数5】
但し、cは光速であり、ngは光パルス信号Sの光路に存在する媒質の群屈折率である。また、p2、p3、p4は、距離Dがゼロであるときのモード間ビート信号S1、S2、S3、S4の強度比b1:b2:b3:b4に対して、p2=b1/b2、p3=b1/b3、p4=b1/b4で表される補正係数である。
【0048】
したがって、以下の式(6)が成り立つ。
【0049】
【数6】
また、以下の式(7)も成り立つ。
【0050】
【数7】
したがって、以下の式(8)が成り立つ。
【0051】
【数8】
そして、以上の式(7)、(8)からは、以下の式(9)が導出される。
【0052】
【数9】
この式(9)を変形すると、上述した演算式(4)が導出される。
【0053】
以上の結果、モード間ビート信号の組み合わせがモード間ビート信号S1、S2、S3、S4の組み合わせであるときに演算式(4)を使用できることは、明らかである。
【0054】
なお、第1実施形態において、光周波数コム(図3)の櫛の本数(モード数)が十分に多い場合は、距離Dがゼロであるときのモード間ビート信号S1、S2、S3、S4の強度比b1:b2:b3:b4は、1:1:1:1に近くなる。
【0055】
よって、その場合には、補正係数p2、p3、p4の各々が1に近くなるので、演算式(4)の代わりに以下の演算式(10)を使用してもよい。
【0056】
【数10】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態として、位置測定装置を搭載したXYZステージを説明する。
【0057】
図6は、本実施形態のXYZステージの概念図である。図6に示すとおり、XYZステージには、ステージ固定部100fと、ステージ可動部100mと、光周波数コム光源11’とが備えられる。ステージ可動部100mは、ステージ固定部100fに対して相対移動することが可能な支持台などであり、その移動方向は、互いに垂直なX方向、Y方向、Z方向の各々である。
【0058】
そして、本実施形態のXYZステージには、ステージ固定部100fを基準としたステージ可動部100mのX方向の位置を測定するためのX位置測定装置(符号12X、102Xなど)と、ステージ固定部100fを基準としたステージ可動部100のY方向の位置を測定するためのY位置測定装置(符号12Y、102Yなど)と、ステージ固定部100fを基準としたステージ可動部100mのZ方向の位置を測定するためのZ位置測定装置(不図示)とが備えられる。これらのX位置測定装置、Y位置測定装置、Z位置測定装置の各々の測定原理は共通であり、第1実施形態の距離測定装置の測定原理と基本的に同じである。
【0059】
先ず、X位置測定装置を詳しく説明する。図7は、X位置測定装置200Xの構成図である。
【0060】
図7に示すとおりX位置測定装置200Xは、光周波数コム光源11’の第1出力端子に接続された光ファイバ110Xと、光ファイバ110Xの先端に設けられたフェルール102Xと、ステージ可動部100mのうちX方向と非平行な側面(YZ平面と平行な側面100mX)にYZ方向にかけて配列された複数のフォトディテクタ12Xと、回路部100Xとによって構成されており、フェルール102Xは、側面100mXに向かって光パルス信号を発振可能な姿勢(側面100mXに正対する姿勢)でステージ固定部100fの側へ固定されている。
【0061】
光周波数コム光源11’は、第1実施形態の光周波数コム光源11と同様の光周波数コム光源であって、光ファイバ110Xに対して光パルス信号を供給する。なお、光周波数コム光源11’は、複数の出力端子を有しており、X位置測定装置200Xの光ファイバ110Xだけでなく、Y位置測定装置(図8)の光ファイバ110Y及びZ位置測定装置(図9)の光ファイバ100Zにも光パルス信号を同時に供給することができる。
【0062】
X位置測定装置200Xの複数のフォトディテクタ12Xの各々は、第1実施形態のフォトディテクタと同様の光電変換素子であって、入射光を一定のサンプリング周波数で光電変換することにより電気信号へと変換する。
【0063】
ここで、複数のフォトディテクタ12XのY方向の配列数は、ステージ可動部100mのY方向のストロークに応じた数に設定されており、複数のフォトディテクタ12XのZ方向の配列数は、ステージ可動部100mのZ方向のストロークに応じた数に設定されている(因みに図6では、Z方向のストロークよりもY方向のストロークの方が大きく、Z方向の配列数よりもY方向の配列数の方が多い例を示した。)。また、上述したフェルール102Xの端部には、不図示のピンホール部材が設けられており、フェルール102Xから射出する光パルス信号は、発散しながら進行する。
【0064】
よって、X位置測定装置200Xのフェルール102Xは、ステージ可動部100mのYZ方向の位置に依らず、複数のフォトディテクタ12Xの少なくとも1つへ確実に光パルス信号を投光することができる。このフェルール102Xが、X位置測定装置200Xの光周波数コム光源として機能する。
【0065】
X位置測定装置200Xの回路部100Xは、第1実施形態の回路部100(図1参照)にセレクタ103を追加したものである。このセレクタ103は、複数のフォトディテクタ12Xの各々から出力される電気信号のうち、強度が最高である1つの電気信号(ピーク強度又は時間積分値が最高である1つの電気信号)のみを選択する。よって、X位置測定装置200Xでは、複数のフォトディテクタ12Xのうちフェルール102Xに正対している1つのフォトディテクタ12Xのみが、電気信号の参照先として選択される。
【0066】
回路部100Xにおける4種類のフィルタ13−1、13−2、13−3、13−4及び距離演算部14は、セレクタ103によって選択された電気信号に対して第1実施形態と同様の処理を施すことにより、フェルール102Xから側面100mXまでの距離DXを、ステージ可動部100mのX方向の位置として算出する。
【0067】
なお、X位置測定装置200Xの回路部100Xは、複数のフォトディテクタ12Xと電気的に接続されているのであれば、ステージ可動部100mの内部に搭載されても、ステージ可動部100mの外部に配置されてもどちらでも構わない(以上、X位置測定装置200Xの説明。)。
【0068】
次に、Y位置測定装置を説明する。図8は、Y位置測定装置200Yの構成図である。
【0069】
図8に示すとおりY位置測定装置200Yは、光周波数コム光源11’の第2出力端子に接続された光ファイバ110Yと、光ファイバ110Yの先端に設けられたフェルール102Yと、ステージ可動部100mのうちY方向と非平行な側面(XZ平面と平行な側面100mY)にXZ方向にかけて配列された複数のフォトディテクタ12Yと、回路部100Yと、によって構成されており、フェルール102Yは、側面100mYに向かって光パルス信号を発振可能な姿勢(側面100mYに正対する姿勢)でステージ固定部100fの側へ固定されている。
【0070】
Y位置測定装置200Yの複数のフォトディテクタ12Yの各々は、X位置測定装置のフォトディテクタ12Xと同様のフォトディテクタである。
【0071】
ここで、複数のフォトディテクタ12YのX方向の配列数は、ステージ可動部100mのX方向のストロークに応じた数に設定されており、複数のフォトディテクタ12YのZ方向の配列数は、ステージ可動部100mのZ方向のストロークに応じた数に設定されている(因みに図6では、Z方向のストロークよりもX方向のストロークの方が大きく、Z方向の配列数よりもX方向の配列数の方が多い例を示した。)。
【0072】
また、上述したフェルール102Yの端部には、不図示のピンホール部材が設けられており、フェルール102Yから射出する光パルス信号は、発散しながら進行する。
【0073】
よって、Y位置測定装置200Yのフェルール102Yは、ステージ可動部100mのXZ方向の位置に依らず、複数のフォトディテクタ12Yの少なくとも1つへ確実に光パルス信号を投光することができる。このフェルール102Yが、Y位置測定装置200Yの光周波数コム光源として機能する。
【0074】
Y位置測定装置200Yの回路部100Yは、X位置測定装置200Xの回路部100Xと同じ構成をしており、複数のフォトディテクタ12Yから出力される電気信号に基づき、フェルール102Yから側面100mYまでの距離DYを、ステージ可動部100mのY方向の位置として算出する。
【0075】
なお、Y位置測定装置200Yの回路部100Yは、複数のフォトディテクタ12Yと電気的に接続されているのであれば、ステージ可動部100mの内部に搭載されても、ステージ可動部100mの外部に配置されてもどちらでも構わない(以上、Y位置測定装置200Yの説明。)。
【0076】
次に、Z位置測定装置を説明する。図9は、Z位置測定装置200Zの構成図である。
【0077】
図9に示すとおりZ位置測定装置200Zは、光周波数コム光源11’の第3出力端子に接続された光ファイバ110Zと、光ファイバ110Zの先端に設けられたフェルール102Zと、ステージ可動部100mのうちZ方向と非平行な側面(XY平面と平行な側面100mZ)にXY方向にかけて配列された複数のフォトディテクタ12Zと、回路部100Zと、によって構成されており、フェルール102Zは、側面100mZに向かって光パルス信号を発振可能な姿勢(側面100mZに正対する姿勢)でステージ固定部100fの側へ固定されている。
【0078】
Z位置測定装置200Zの複数のフォトディテクタ12Zの各々は、X位置測定装置のフォトディテクタ12Xと同様のフォトディテクタである。
【0079】
ここで、複数のフォトディテクタ12ZのX方向の配列数は、ステージ可動部100mのX方向のストロークに応じた数に設定されており、複数のフォトディテクタ12ZのY方向の配列数は、ステージ可動部100mのY方向のストロークに応じた数に設定されている。
【0080】
また、上述したフェルール102Zの端部には、不図示のピンホール部材が設けられており、フェルール102Zから射出する光パルス信号は、発散しながら進行する。
【0081】
よって、Z位置測定装置200Zのフェルール102Zは、ステージ可動部100mのXY方向の位置に依らず、複数のフォトディテクタ12Zの少なくとも1つへ確実に光パルス信号を投光することができる。このフェルール102Zが、Z位置測定装置200Zの光周波数コム光源として機能する。
【0082】
Z位置測定装置200Yの回路部100Zは、X位置測定装置200Xの回路部100Xと同じ構成をしており、複数のフォトディテクタ12Zから出力される電気信号に基づき、フェルール102Zから側面100mZまでの距離DZを、ステージ可動部100mのZ方向の位置として算出する。
【0083】
なお、Z位置測定装置200Zの回路部100Zは、複数のフォトディテクタ12Zと電気的に接続されているのであれば、ステージ可動部100mの内部に搭載されても、ステージ可動部100mの外部に配置されてもどちらでも構わない(以上、Z位置測定装置200Zの説明)。
【0084】
以上、本実施形態のXYZステージは、第1実施形態と同じ原理のX位置測定装置200X、Y位置測定装置200Y、Z位置測定装置200Zを使用するので、ステージ可動部100mとステージ固定部100fとの間に存在する媒質の揺らぎの影響を受けずにステージ可動部100mのXYZ方向の位置を測定することができる。したがって、本実施形態のXYZステージは、ステージ可動部100mのXYZ方向の位置制御を高精度に行うことも可能である。
【0085】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態として距離測定装置を説明する。本実施形態は、第1実施形態の変形例である。
【0086】
図10は、本実施形態の距離測定装置の全体構成図である。図10に示すとおり、本実施形態の距離測定装置は、第1実施形態の距離測定装置(図1)において、光周波数コム光源11とフォトディテクタ12との間にビームエキスパンダ300を配置したものである。なお、ビームエキスパンダ300は、光周波数コム光源11の固定先と同じ側(上述した物体Aの側)に固定されている。
【0087】
したがって、本実施形態では、光周波数コム光源11から射出した光パルス信号Sの光束は、ビームエキスパンダ300によって拡大され、光パルス信号Sの照射範囲300Aは、第1実施形態のそれよりも拡大される。この場合、距離測定の方向(図10の左右方向)と垂直な方向(図10の上下方向及び手前奧方向)へフォトディテクタ12が相対移動したとしても、フォトディテクタ12が照射範囲300Aの内部に存在する限り、距離測定が可能である。
【0088】
したがって、本実施形態によると、光周波数コム光源11及びビームエキスパンダ300を固定した物体(上述した物体A)と、フォトディテクタ12を固定した物体(上述した物体B)の相対移動範囲を、広く確保することができる。
【0089】
なお、本実施形態では、上述した物体Bに固定されるフォトディテクタの個数を1としたが、2以上に冗長化することで、物体Bの相対移動範囲を更に拡大してもよい。
【0090】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態として位置測定装置を説明する。本実施形態は、第3実施形態の距離測定装置の応用例である。
【0091】
図11(A)は、本実施形態の位置測定装置の配置図であり、図11(B)は、本実施形態の位置測定装置の回路図(フォトディテクタ12より後段の回路図)である。図11(A)、(B)に示すとおり本実施形態の位置測定装置は、光周波数コム光源11a及びビームエキスパンダ300からなるユニット500aと、光周波数コム光源11b及びビームエキスパンダ300からなるユニット500bと、光周波数コム光源11c及びビームエキスパンダ300からなるユニット500cと、フォトディテクタ12と、第1実施形態の回路部100と同様の3つの回路部100a、100b、100cとを備える。
【0092】
3系統のユニット500a、500b、500cの各々は、固定部(不図示)の側へ固定されており、フォトディテクタ12は、移動物体400の側へ固定されている。そして、3系統のユニット500a、500b、500cは、フォトディテクタ12の存在する範囲に対して互いに異なる方向から光パルス信号を照射する。なお、3系統のユニット500a、500b、500cの各々が照射する光パルス信号の光束径は、ビームエキスパンダ300によって拡大されている。
【0093】
これらの系統のユニット500a、500b、500cと3系統の回路部100a、100b、100cとが、移動物体400に関する3方向の距離測定を個別に行い、フォトディテクタ12は、それら3方向の距離測定に共用される。
【0094】
ここで、3系統のユニット500a、500b、500cへ個別に設けられた3つの光周波数コム光源11a、11b、11cの間では、繰り返し周波数が互いに異なる値に設定されている。以下、光周波数コム光源11aの繰り返し周波数をfrepaとおき、光周波数コム光源11bの繰り返し周波数をfrepbとおき、光周波数コム光源11cの繰り返し周波数をfrepcとおく。
【0095】
そして、3系統の回路部100a、100b、100cは、これらの光周波数コム11a、11b、11cに個別に対応した設計となっている。
【0096】
具体的に、回路部100aは、4つのフィルタ回路として、パスバンドがfrepaに設定されたフィルタ回路と、パスバンドが2frepaに設定されたフィルタ回路と、パスバンドが3frepaに設定されたフィルタ回路と、パスバンドが4frepaに設定されたフィルタ回路とを備える。この構成により、回路部100aは、ユニット500aから移動物体400までの距離を算出する。
【0097】
また、回路部100bは、4つのフィルタ回路として、パスバンドがfrepbに設定されたフィルタ回路と、パスバンドが2frepbに設定されたフィルタ回路と、パスバンドが3frepbに設定されたフィルタ回路と、パスバンドが4frepbに設定されたフィルタ回路とを備える。この構成により、回路部100bは、ユニット500bから移動物体400までの距離を算出する。
【0098】
また、回路部100cは、4つのフィルタ回路として、パスバンドがfrepcに設定されたフィルタ回路と、パスバンドが2frepcに設定されたフィルタ回路と、パスバンドが3frepcに設定されたフィルタ回路と、パスバンドが4frepcに設定されたフィルタ回路とを備える。この構成により、回路部100cは、ユニット500cから移動物体400までの距離を算出する。
【0099】
したがって、本実施形態では、移動物体400が光パルス信号の照射範囲から外れない限りは、移動物体400の3次元位置(空間内の位置)を測定することができる。
【0100】
なお、本実施形態では、移動物体400に固定されるフォトディテクタの個数を1としたが、2以上に冗長化することで、移動物体400の可動範囲を更に拡大してもよい。
【0101】
[第5実施形態]
以下、本発明の第5実施形態として距離測定装置を説明する。本実施形態は、第3実施形態の変形例である。
【0102】
図12は、本実施形態の距離測定装置の全体構成図である。図12に示すとおり、本実施形態の距離測定装置は、第3実施形態の距離測定装置(図10)において、フォトディテクタ12の代わりに、フォトディテクタ12と同様の4つのフォトディテクタ12−1、12−2、12−3、12−4を(上述した物体Bの側に)近接して配列したものである。そして、本実施形態では、4つのフォトディテクタ12−1、12−2、12−3、12−4は、回路部100における4つのフィルタ回路13−1、13−2、13−3、13−4に対して個別に接続される。
【0103】
すなわち、本実施形態では、光パルス信号の分岐を、フォトディテクタの後段で行うのではなく、フォトディテクタの配置面にて行う。このような分岐方法を採用した場合にも、第3実施形態と同じ効果が得られる。
【0104】
なお、本実施形態では、物体Bの側へ固定されるフォトディテクタを1組み(4つ)としたが、2組み以上に冗長化することで、物体Bの相対移動範囲を更に拡大してもよい。
【0105】
[第6実施形態]
以下、本発明の第6実施形態として位置測定装置を説明する。本実施形態は、第5実施形態の距離測定装置の応用例であって、第4実施形態の変形例である。
【0106】
図13(A)は、本実施形態の位置測定装置の配置図であり、図13(B)は、本実施形態の位置測定装置の回路図である。図13に示すとおり、本実形態の位置測定装置は、第4実施形態の位置測定装置(図11)において、フォトディテクタ12の代わりに、フォトディテクタ12と同様の4つのフォトディテクタ12−1、12−2、12−3、12−4を移動物体400上に近接して配列したものである。これら4つのフォトディテクタ12−1、12−2、12−3、12−4は、3方向の距離測定に共用される。
【0107】
フォトディテクタ12−1、12−2、12−3、12−4には、第4実施形態の回路部100a、100b、100cと同様の回路部100a、100b、100cが接続されている。
【0108】
但し、本実施形態におけるフォトディテクタ12−1、12−2、12−3、12−4は、回路部100a内の4つのフィルタ回路に対して個別に接続され、フォトディテクタ12−1、12−2、12−3、12−4は、回路部100b内の4つのフィルタ回路に対して個別に接続され、フォトディテクタ12−1、12−2、12−3、12−4は、回路部100c内の4つのフィルタ回路に対して個別に接続される。
【0109】
したがって、本実施形態では、光パルス信号の分岐を、フォトディテクタの後段で行うのではなく、フォトディテクタの配置面にて行う。このような分岐方法を採用した場合にも、第4実施形態と同様、移動物体400の3次元位置(空間内の位置)を測定することができる。
【0110】
なお、本実施形態では、移動物体400に固定されるフォトディテクタを1組み(4つ)としたが、2組み以上に冗長化することで、移動物体400の可動範囲を更に拡大してもよい。
[その他]
なお、第3実施形態〜第6実施形態では、第1実施形態と同様、演算に使用するモード間ビート信号の組み合わせを、モードズレ数が1、2、3、4であるモード間ビート信号S1、S2、S3、S4の組み合わせとしたが、他の組み合わせとしてもよい。例えば、モードズレ数が2、3、4、5であるモード間ビート信号S2、S3、S4、S5の組み合わせ、モードズレ数が3、4、5、6であるモード間ビート信号S3、S4、S5、S6の組み合わせとしてもよい。モード間ビート信号の個数は、2以上であればよいが、演算式をシンプルにするためには、4以上であることが望ましい。なお、上述した演算式(4)は、採用された組み合わせに応じて適切に変更されるものとする。
【符号の説明】
【0111】
11…光周波数コム光源、12…フォトディテクタ、100…回路部、13−1…フィルタ、13−2…フィルタ、13−3…フィルタ、13−4…フィルタ、14…距離演算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光周波数コム光源が発振する光パルス信号を光電変換して電気信号に変換する光電変換部と、
前記光電変換部が生成する電気信号から、前記光パルス信号の複数種類のモード間ビート信号を分離して抽出する分離抽出手段と、
抽出された前記複数種類のモード間ビート信号の間の強度関係と、前記複数種類のモード間ビート信号の間の周波数関係とに基づき、前記光周波数コム光源から前記光電変換部までの距離を算出する演算手段と、
を備えたことを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の距離測定装置において、
前記分離抽出手段が分離して抽出する前記複数種類のモード間ビート信号は、
周波数の最も低いモード間ビート信号S1と、周波数が次に低いモード間ビート信号S2と、周波数が次に低いモード間ビート信号S3と、周波数が次に低いモード間ビート信号S4とであり、
前記演算手段は、
前記モード間ビート信号S1、S2、S3、S4の強度I1、I2、I3、I4を以下の演算式(11)に当てはめることにより前記距離Dを算出する
【数11】
なお、A、p2、p3、p4は、前記光周波数コム光源に固有の特性と、前記光パルス信号の光路に存在する媒質の特性とに応じて予め決められた係数である
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の距離測定装置において、
前記演算手段は、
前記演算式(11)の代わりに演算式(12)を使用する
【数12】
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の距離測定装置において、
前記光周波数コム光源と前記光電変換部との間に、前記光周波数コム光源が発振した光パルス信号の光束径を拡大するビームエキスパンダを配置した
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の距離測定装置において、
互いに固定された複数の前記光電変換部を備え、
前記分離抽出手段は、複数の前記光電変換部が個別に生成する複数種類の電気信号から前記複数種類のモード間ビート信号を個別に抽出する
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項6】
固定部を基準とした可動部の第1方向の位置及び第2方向の位置を個別に測定する第1位置測定装置及び第2位置測定装置の各々として、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の距離測定装置を使用した位置測定装置であって、
前記第1位置測定装置は複数の光電変換部を備え、それら複数の光電変換部は、前記可動部のうち前記第1方向とは非平行な第1側面上に前記第2方向にかけて配列されており、
前記第1位置測定装置の光周波数コム光源は、前記第1側面に向かって光パルス信号を発振可能な姿勢で前記固定部の側に固定されており、
前記第2位置測定装置は複数の光電変換部を備え、それら複数の光電変換部は、前記可動部のうち前記第2方向とは非平行な第2側面上に前記第1方向にかけて配列されており、
前記第2位置測定装置の光周波数コム光源は、前記第2側面に向かって光パルス信号を発振可能な姿勢で前記固定部の側に固定されている
ことを特徴とする位置測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の位置測定装置において、
前記第1位置測定装置及び前記第2位置測定装置は、1つの光周波数コム光源を共有している
ことを特徴とするステージ位置測定装置。
【請求項8】
固定部を基準とした可動部の第1方向の位置及び第2方向の位置を個別に測定する第1位置測定装置及び第2位置測定装置の各々として、請求項4又は請求項5に記載の距離測定装置を使用した位置測定装置であって、
前記第1位置測定装置及び前記第2位置測定装置は、前記光電変換部を共有している
ことを特徴とするステージ位置測定装置。
【請求項9】
光周波数コム光源が発振する光パルス信号を光電変換して電気信号に変換する光電変換手順と、
前記光電変換手順で生成される電気信号から、前記光パルス信号の複数種類のモード間ビート信号を分離して抽出する分離抽出手順と、
抽出された前記複数種類のモード間ビート信号の間の強度関係と、前記複数種類のモード間ビート信号の間の周波数関係とに基づき、前記光周波数コム光源から前記光電変換の変換面までの距離を算出する演算手順と、
を含むことを特徴とする距離測定方法。
【請求項1】
光周波数コム光源が発振する光パルス信号を光電変換して電気信号に変換する光電変換部と、
前記光電変換部が生成する電気信号から、前記光パルス信号の複数種類のモード間ビート信号を分離して抽出する分離抽出手段と、
抽出された前記複数種類のモード間ビート信号の間の強度関係と、前記複数種類のモード間ビート信号の間の周波数関係とに基づき、前記光周波数コム光源から前記光電変換部までの距離を算出する演算手段と、
を備えたことを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の距離測定装置において、
前記分離抽出手段が分離して抽出する前記複数種類のモード間ビート信号は、
周波数の最も低いモード間ビート信号S1と、周波数が次に低いモード間ビート信号S2と、周波数が次に低いモード間ビート信号S3と、周波数が次に低いモード間ビート信号S4とであり、
前記演算手段は、
前記モード間ビート信号S1、S2、S3、S4の強度I1、I2、I3、I4を以下の演算式(11)に当てはめることにより前記距離Dを算出する
【数11】
なお、A、p2、p3、p4は、前記光周波数コム光源に固有の特性と、前記光パルス信号の光路に存在する媒質の特性とに応じて予め決められた係数である
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の距離測定装置において、
前記演算手段は、
前記演算式(11)の代わりに演算式(12)を使用する
【数12】
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の距離測定装置において、
前記光周波数コム光源と前記光電変換部との間に、前記光周波数コム光源が発振した光パルス信号の光束径を拡大するビームエキスパンダを配置した
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の距離測定装置において、
互いに固定された複数の前記光電変換部を備え、
前記分離抽出手段は、複数の前記光電変換部が個別に生成する複数種類の電気信号から前記複数種類のモード間ビート信号を個別に抽出する
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項6】
固定部を基準とした可動部の第1方向の位置及び第2方向の位置を個別に測定する第1位置測定装置及び第2位置測定装置の各々として、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の距離測定装置を使用した位置測定装置であって、
前記第1位置測定装置は複数の光電変換部を備え、それら複数の光電変換部は、前記可動部のうち前記第1方向とは非平行な第1側面上に前記第2方向にかけて配列されており、
前記第1位置測定装置の光周波数コム光源は、前記第1側面に向かって光パルス信号を発振可能な姿勢で前記固定部の側に固定されており、
前記第2位置測定装置は複数の光電変換部を備え、それら複数の光電変換部は、前記可動部のうち前記第2方向とは非平行な第2側面上に前記第1方向にかけて配列されており、
前記第2位置測定装置の光周波数コム光源は、前記第2側面に向かって光パルス信号を発振可能な姿勢で前記固定部の側に固定されている
ことを特徴とする位置測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の位置測定装置において、
前記第1位置測定装置及び前記第2位置測定装置は、1つの光周波数コム光源を共有している
ことを特徴とするステージ位置測定装置。
【請求項8】
固定部を基準とした可動部の第1方向の位置及び第2方向の位置を個別に測定する第1位置測定装置及び第2位置測定装置の各々として、請求項4又は請求項5に記載の距離測定装置を使用した位置測定装置であって、
前記第1位置測定装置及び前記第2位置測定装置は、前記光電変換部を共有している
ことを特徴とするステージ位置測定装置。
【請求項9】
光周波数コム光源が発振する光パルス信号を光電変換して電気信号に変換する光電変換手順と、
前記光電変換手順で生成される電気信号から、前記光パルス信号の複数種類のモード間ビート信号を分離して抽出する分離抽出手順と、
抽出された前記複数種類のモード間ビート信号の間の強度関係と、前記複数種類のモード間ビート信号の間の周波数関係とに基づき、前記光周波数コム光源から前記光電変換の変換面までの距離を算出する演算手順と、
を含むことを特徴とする距離測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−141272(P2012−141272A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1277(P2011−1277)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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