車両のタイヤ止め装置
【課題】車両がない場合に邪魔になり難く、確実に車両の前進又は後退を制限することができる車両のタイヤ止め装置を提供する。
【解決手段】この車両のタイヤ止め装置10は、水平な第1軸心O1回りで地面Eに揺動可能に軸支され、車両AのタイヤTが乗ることによって揺動する押圧部材16と、第1軸心O1と平行な第2軸心O2回りで地面Eに揺動可能に軸支され、起立によってタイヤTの進行を停止させるストッパ部材20と、押圧部材16の揺動によってストッパ部材20を起立させる回転部材18とを備えたものである。
【解決手段】この車両のタイヤ止め装置10は、水平な第1軸心O1回りで地面Eに揺動可能に軸支され、車両AのタイヤTが乗ることによって揺動する押圧部材16と、第1軸心O1と平行な第2軸心O2回りで地面Eに揺動可能に軸支され、起立によってタイヤTの進行を停止させるストッパ部材20と、押圧部材16の揺動によってストッパ部材20を起立させる回転部材18とを備えたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のタイヤ止め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図10に一般的な車両のタイヤ止め装置90を示す。このタイヤ止め装置90は駐車場等の地面Eに載置されるコンクリートブロックからなる。
【0003】
このタイヤ止め装置90は、地面Eを前進又は後退してくる車両の前又は後ろのタイヤTと当接し、その車両のさらなる前進又は後退を制限することができる。これにより、駐車場においては、車両を壁等や他の車両と衝突させることなく整列させることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のタイヤ止め装置90は、確実に車両の前進又は後退を制限するためにある程度の高さを有しており、車両がない場合に邪魔になりやすかった。
【0005】
この点、特開平9-317235号公報開示の車両のタイヤ止め装置を採用することも考えられる。図11(a)及び(b)に示すこのタイヤ止め装置95は、地面E内に埋設されて地表に開いた凹部96aを画定するブロック96と、水平な軸心O回りでブロック96に揺動可能に軸支され、車両のタイヤTが乗ることによって地面Eと面一の状態から揺動するストッパ部材97とからなる。
【0006】
このタイヤ止め装置95によれば、図11(a)に示す状態から図11(b)に示す状態へと、車両が地面Eを前進又は後退する場合、その車両の前又は後ろのタイヤTがストッパ部材97を揺動させ、ストッパ部材97によってその車両のさらなる前進又は後退を制限することができる。また、車両がない場合には、ストッパ部材97が地面Eと面一になるため、邪魔になることもない。
【0007】
しかしながら、このタイヤ止め装置95は、タイヤTが乗ることによって揺動するストッパ部材97自身がタイヤTと当接し、車両の前進又は後退を制限しなければならない。このため、このタイヤ止め装置95は、その確実性に不安がある。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、車両がない場合に邪魔になり難く、確実に車両の前進又は後退を制限することができる車両のタイヤ止め装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両のタイヤ止め装置は、水平な第1軸心回りで地面に揺動可能に軸支され、車両のタイヤが乗ることによって揺動する押圧部材と、
該第1軸心と平行な第2軸心回りで該地面に揺動可能に軸支され、起立によって該タイヤの進行を停止させるストッパ部材と、
該押圧部材の揺動によって該ストッパ部材を起立させるリンク機構とを備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明の車両のタイヤ止め装置では、車両が地面を前進又は後退することによってタイヤが押圧部材に乗ると、押圧部材は水平な第1軸心回りで揺動する。すると、リンク機構が押圧部材の揺動によってストッパ部材を起立させる。この際、ストッパ部材は、第1軸心と平行な第2軸心回りで揺動し、起立する。このため、起立したストッパ部材によってタイヤの進行が停止される。こうして、車両のさらなる前進又は後退を確実に制限することができる。
【0011】
また、このタイヤ止め装置では、タイヤが押圧部材に乗っていない状態においては、ストッパ部材が起立していない。このため、このタイヤ止め装置は、従来のコンクリートブロックよりも低くなり得ることから、邪魔になり難い。
【0012】
したがって、このタイヤ止め装置は、車両がない場合に邪魔になり難く、確実に車両の前進又は後退を制限することができる。
【0013】
このタイヤ止め装置は、車両の左右のタイヤ用として二つで1セットとして用いられてもよいし、両タイヤ用として一つで用いられてもよい。
【0014】
本発明のタイヤ止め装置において、前記リンク機構は、前記第1軸心及び前記第2軸心と平行な第3軸心回りで前記地面に揺動可能に軸支され、前記押圧部材と係合して前記ストッパ部材を起立させる回転部材であることができる。
【0015】
この場合、タイヤが押圧部材に乗ることにより、押圧部材と係合する回転部材がストッパ部材を起立させることができる。こうして、このタイヤ止め装置は本発明の効果を発揮することができる。このタイヤ止め装置は、簡易な構成であり、部品点数が少なく、製造コストの低廉化を実現することができる。
【0016】
より具体的には、前記押圧部材は、前記タイヤが自身に乗ることによって下降する押圧爪を前記第2軸心側に有し、前記回転部材は、該押圧爪の下降によって下降する被押圧部と、該被押圧部の下降によって上昇する立ち上げ部とを有し、前記ストッパ部材は、該立ち上げ部の上昇によって上昇し、該タイヤと当接する当接部を有することが好ましい。この場合、タイヤが押圧部材に乗ると、押圧部材の押圧爪が下降し、回転部材の被押圧部が下降し、回転部材の立ち上げ部が上昇する。こうして、押圧部材の押圧爪の下降を回転部材の立ち上げ部の上昇に変換することができる。この際、第3軸芯の位置によって立ち上げ部の上昇距離を選択することができる。そして、回転部材の立ち上げ部の上昇によって、ストッパ部材の当接部が上昇する。この際、回転部材の立ち上げ部とストッパ部材の第2軸芯との距離によって、当接部の上昇距離を大きくすることができる。
【0017】
押圧爪としては、押圧部材を曲げた形状や突起を有した形状等を採用することができる。タイヤが乗っていない状態で水平な押圧爪であることが好ましい。このタイヤ止め装置は、押圧部材の地面からの高さを低くしながら、押圧爪の下降距離を大きく確保できることから、確実に停車の作用を生じさせつつ邪魔になり難いものとなる。
【0018】
また、本発明のタイヤ止め装置において、前記押圧部材は、前記タイヤが自身に乗ることによって下降する押圧爪を前記第2軸心側に有し、
前記リンク機構は、前記第1軸心及び前記第2軸心と平行な第3軸心回りで前記地面に揺動可能に軸支され、該押圧爪の下降によって揺動する回転部材と、該回転部材と一体に設けられた第1クランクと、該第1軸心、該第2軸心及び該第3軸心と平行な第4軸心回りで該第1クランクに揺動可能に軸支され、該第1クランクの揺動によって前後に移動するロッドとからなり、
前記ストッパ部材は、該第1軸心、該第2軸心、第3軸心及び該第4軸心と平行な第5軸心回りで該ロッドを揺動可能に軸支し、該ロッドの前進又は後退によって自身を起立させる第2クランクを有することができる。
【0019】
この場合、タイヤが押圧部材に乗ることによって押圧部材が揺動し、押圧部材の押圧爪が下降する。そして、リンク機構の回転部材は押圧爪の下降によって第3軸心回りで揺動し、第1クランクも回転部材と一体に第3軸心回りで揺動し、ロッドが第1クランクの揺動によって第4軸心回りで揺動しながら前後に移動する。これによって、ストッパ部材の第2クランクが第5軸心回りで揺動し、ストッパ部材が起立する。こうして、このタイヤ止め装置は本発明の効果を発揮することができる。このタイヤ止め装置は、構成がやや複雑であるものの、第1軸芯と第2軸芯との距離を比較的大きなものとすることができるため、大型車両用のものとして好適である。
【0020】
本発明のタイヤ止め装置において、前記ストッパ部材は、前記タイヤの進行方向と同じ方向に揺動して該タイヤと対面することが好ましい。このストッパ部材は、タイヤの進行方向とは逆の方向に揺動してタイヤと対面するストッパ部材よりも、タイヤに対して抗力を及ぼしやすく、例え小さなストッパ部材であっても、停車の効果をより確実なものとすることができる。
【0021】
本発明のタイヤ止め装置は、前記地面に固定されるハウジングを備え、前記押圧部材、前記リンク機構及び前記ストッパ部材は該ハウジングに設けられていることが好ましい。このタイヤ止め装置は、押圧部材、リンク機構及びストッパ部材をハウジングに収納することができるため、持ち運びや施工等の取り扱いが容易となる。
【0022】
なお、本発明のタイヤ止め装置は、地面上に設置されたり、地面内に埋設されたりして用いられ得る。このタイヤ止め装置を地面上に設置する場合、従来のコンクリートブロックのように施工が容易である。また、このタイヤ止め装置を地面内に埋設する場合には、深さが浅く、施工がさほど面倒ではない。
【0023】
また、このタイヤ止め装置は、地面に固定されなくてもその機能を十分に発揮するが、固定されていることがより好ましい。タイヤ止め装置を地面に固定すれば、タイヤ止め装置の盗難を防止できるとともに、設置位置が変化することはなく、より安定した機能を発揮することができる。なお、固定手段としてはネジやボルト等を採用することができる。
【0024】
本発明のタイヤ止め装置は、前記押圧部材に前記タイヤが載らない状態で前記ストッパ部材を倒伏させる付勢部材を備えていることが好ましい。このタイヤ止め装置は、押圧部材にタイヤが乗らない状態でストッパ部材が起立したままとなることはないため、邪魔になり難い。また、付勢部材の付勢力がタイヤが押圧部材に乗ることによって勝るものである場合には、押圧部材に車両よりも質量の小さいもの、例えば、人等が乗っても、ストッパ部材が倒伏状態を維持することができるため、ストッパ部材が邪魔にならず、安全である。
【0025】
この付勢部材としては、地面やハウジングと押圧部材、回転部材、ロッド又はストッパ部材との間に設けるばね等を採用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0027】
実施例1の車両のタイヤ止め装置10は、図1に示すように、二つで1セットとして用いられている。各タイヤ止め装置10は、車両Aの左右のタイヤTの間隔と同じ間隔で隔てられた状態で地面Eに図示しないボルトによって固定されている。
【0028】
各タイヤ止め装置10は、図2に示すように、ハウジング12、14、押圧部材16、回転部材18及びストッパ部材20を有している。ハウジング12、14はハウジング本体12と、固定板14とからなる。押圧部材16、回転部材18及びストッパ部材20はほぼ同一の幅を有している。
【0029】
ハウジング本体12は、タイヤTの幅よりも広い幅方向の両端に上方に延びる側壁12aを有している。両側壁12aには、その前方(図中左側)に第1軸孔12bが互いに対面するように貫設され、その中央に第3軸孔12cが互いに対面するように貫設され、その後方に上方に開くU字形状の切欠き12dが互いに対面するように貫設され、切欠き12dの周辺に複数のビス孔が貫設されている。また、固定板14は、ハウジング本体12よりも厚い板状をなし、水平方向で見て中央寄りの位置に軸孔14aが貫設されている。
【0030】
押圧部材16は、水平方向で見てへの字形状をなし、幅方向に延びる本体16aと、この本体16aの幅方向の両端から本体16aに対して直角に折れ曲がった耳部16bとからなる。両耳部16bには第1軸孔12bと整合する軸孔16cが貫設されている。
【0031】
回転部材18は、水平方向で見て逆への字形状をなし、幅方向に延びる本体18aと、この本体18aの幅方向の両端から本体18aに対して直角に折れ曲がった耳部18bとからなる。両耳部18bには第3軸孔12cと整合する軸孔18cが貫設されている。
【0032】
ストッパ部材20は、水平方向で見てコの字形状をなし、幅方向に延びる本体20aと、この本体20aと一体に設けられて幅方向に延びるシャフト20bとからなる。本体20aの両端には抜け止め用の凸部20cが幅方向に突設されている。
【0033】
これら押圧部材16、回転部材18、ストッパ部材20及びハウジング12、14を組み付けることにより、図3及び図4に示す各タイヤ止め装置10が得られる。この際、まず、図2に示すように、頭部をもつピン22、ワッシャ23、割ピン24及び圧縮コイルばね25を用意する。圧縮コイルばね25は付勢部材に相当する。
【0034】
そして、ハウジング本体12の両第3軸孔12cに両耳部18bの両軸孔18cが整合するように回転部材18をハウジング本体12に挿入し、両第3軸孔12c及び軸孔18cに内側からピン22を挿入し、ワッシャ23を介してピン22に割ピン24を嵌める。これにより、回転部材18は、図5及び図6に示すように、ピン22の中心である水平な第3軸心O3回りで地面Eに揺動可能に軸支される。両側のピン22が連続していないことにより、タイヤTの進行が邪魔されることはない。この回転部材18がリンク機構である。
【0035】
また、図2に示すように、ハウジング本体12の両第1軸孔12bに両耳部16bの両軸孔16cが整合するように押圧部材16をハウジング本体12に挿入し、両第1軸孔12b及び軸孔16cに内側からピン22を挿入し、ワッシャ23を介してピン22に割ピン24を嵌める。また、押圧部材16の本体16aとハウジング本体12との間に圧縮コイルばね25を設ける。これらにより、押圧部材16も、図5及び図6に示すように、ピン22の中心である水平な第1軸心O1回りで地面Eに揺動可能に軸支される。ここにおいても、両側のピン22が連続していないことにより、タイヤTの進行が邪魔されることはない。
【0036】
さらに、図2に示すように、ハウジング本体12の切欠き12dにストッパ部材20のシャフト20bを嵌め、シャフト20bの両側からそれぞれ固定板14をその軸孔14aに嵌め込み、両固定板14を外側からそれぞれ複数本のビス13により両側壁12aと一体化する。これにより、ストッパ部材20も、図5及び図6に示すように、シャフト20bの中心である水平な第2軸心O2回りで地面Eに揺動可能に軸支される。第1〜3軸心O1〜O3は互いに平行である。
【0037】
こうして得られた各タイヤ止め装置10は、押圧部材16、回転部材18及びストッパ部材20をハウジング12、14に収納したものであるため、持ち運びや施工等の取り扱いが容易である。そして、駐車場等の地面Eにおいて、図示しないボルトによりハウジング12、14が地面Eに固定され、各タイヤ止め装置10が地面E上に容易に設置される。こうしてタイヤ止め装置10を地面Eに固定すれば、タイヤ止め装置10の盗難を防止できるとともに、設置位置が変化することはなく、より安定した機能を発揮することができる。
【0038】
これらのタイヤ止め装置10では、押圧部材16は、本体16aが水平方向で見てへの字形状をなしていることから、タイヤTが自身に乗ることによって下降する押圧爪16dを第2軸心O2側に有することとなる。また、回転部材18は、本体18aが水平方向で見て逆への字形状をなしていることから、押圧爪16dの下降によって下降する被押圧部18dと、被押圧部18dの下降によって上昇する立ち上げ部18eとを有することとなる。さらに、ストッパ部材20は、本体20aが水平方向で見てコの字形状をなしていることから、立ち上げ部18eの上昇によって上昇し、タイヤTと当接する当接部20dと、当接部20dの反対側に位置してハウジング本体12の底面と当接して当接部20dがより上昇しないように規制する規制部20eとを有することとなる。
【0039】
以上のように構成された各タイヤ止め装置10では、図1に示すように、車両Aが地面Eを例えば後退する際に役に立つ。この際、図6に示すように、タイヤTが進行方向Dで押圧部材16に乗ると、押圧部材16は水平な第1軸心O1回りで揺動する。すると、回転部材18が押圧部材16の揺動によってストッパ部材20を起立させる。すなわち、押圧部材16の押圧爪16dが下降し、回転部材18の被押圧部18dが下降し、回転部材18の立ち上げ部18eが上昇する。こうして、押圧部材16の押圧爪16dの下降を回転部材18の立ち上げ部18eの上昇に変換することができる。この際、第3軸芯O3の位置によって立ち上げ部18eの上昇距離を選択することができる。
【0040】
そして、回転部材18の立ち上げ部18eの上昇によって、ストッパ部材20がタイヤTの進行方向Dと同一方向にθ(60)°揺動し、当接部20dが上昇する。つまり、ストッパ部材20が第2軸心O2回りで揺動して起立する。この際、回転部材18の立ち上げ部18eとストッパ部材20の第2軸芯O2との距離によって、当接部20dの上昇距離を大きくすることができる。当接部20dが最も上昇した位置において、規制部20eがハウジング本体12の底面と当接するため、当接部20dはその位置で固定されることとなる。
【0041】
こうして、各タイヤ止め装置10では、起立したストッパ部材20の当接部20dがタイヤTと当接し、タイヤTの進行が停止される。こうして、車両Aのさらなる後退を確実に制限することができる。特に、これらのタイヤ止め装置10では、ストッパ部材20がタイヤTの進行方向Dと同じ方向に揺動してタイヤTと対面するため、タイヤTに対して抗力を及ぼしやすく、例え小さなストッパ部材20であっても、停車の効果をより確実なものとすることができる。
【0042】
また、各タイヤ止め装置10では、図5に示すように、タイヤTが押圧部材16に乗っていない状態においては、押圧部材16が圧縮コイルばね25の付勢力によって逆に揺動し、ストッパ部材20は自重によって逆に揺動し、ストッパ部材20の揺動によって回転部材18が逆に揺動する。このため、このタイヤ止め装置10は、この状態において、ストッパ部材20が起立しておらず、従来のコンクリートブロックよりも低くなり得ることから、邪魔になり難い。
【0043】
したがって、各タイヤ止め装置10は、車両Aがない場合に邪魔になり難く、確実に車両Aの後退を制限することができる。特に、各タイヤ止め装置10は、タイヤTが乗っていない状態で水平な押圧爪16dを採用しているため、押圧部材16の地面Eからの高さを低くしながら、押圧爪16dの下降距離を大きく確保でき、確実に停車の作用を生じさせつつ邪魔になり難いものとなっている。
【0044】
また、各タイヤ止め装置10は、簡易な構成であり、部品点数が少なく、製造コストの低廉化を実現することができる。
【0045】
なお、上記実施例1のタイヤ止め装置10では、付勢部材としての圧縮コイルばね25を押圧部材16の本体16aとハウジング本体12との間に設けたが、回転部材18の本体18aのうちの第1軸心O1側とハウジング本体12との間に付勢部材としての圧縮コイルばね25を設けてもよく、ストッパ部材20のシャフト20bとハウジング本体12との間等に付勢部材としてのねじり渦巻きばねを設けてもよい。また、圧縮コイルばね25は板ばねにしてもよい。
【0046】
また、各タイヤ止め装置10を地面E内に埋設することも可能である。この場合においても、深さが浅く、施工がさほど面倒ではない。
【実施例2】
【0047】
実施例2の車両のタイヤ止め装置30は、図7〜9に示すように、ハウジング32、14、押圧部材36、リンク機構38及びストッパ部材40を有している。
【0048】
ハウジング32は幅方向の両端に上方に延びる側壁32aを有している。両側壁32aには、その前方(図中左側)に第1軸孔32bが互いに対面するように貫設され、その中央に第3軸孔32cが互いに対面するように貫設され、切欠き32dの周辺に複数のビス孔が貫設されている。また、固定板14は、ハウジング32よりも厚い板状をなし、水平方向で見て中央寄りの位置に軸孔14aが貫設されている。
【0049】
押圧部材36は本体36aと両耳部36bとからなる。本体36aの押圧部36dはほぼ直角に下方に屈曲されている。両耳部36bには第1軸孔32bと整合する軸孔36cが貫設されている。
【0050】
リンク機構38は、回転部材33と第1クランク34とロッド35とからなる。回転部材33は、実施例1の回転部材18の本体18aよりも小型の本体33aと、この本体33aと一体に設けられて幅方向に延びるシャフト33bとからなる。回転部材33のシャフト33bの両端には上方に延びる第1クランク34が一体に固定されている。両第1クランク34の先端には第4軸孔34aが貫設されており、両第4軸孔34aにピンを介して後方に延びるロッド35が揺動可能に軸支されている。
【0051】
ストッパ部材40は本体40aとシャフト40bと2個の第2クランク40dとからなる。両第2クランク40dはシャフト40bの両端で上方に延びて一体に固定されている。両第2クランク40dの先端には第5軸孔40eが貫設されており、両第5軸孔40eにピンを介して前方に延びるロッド35が揺動可能に軸支されている。
【0052】
他の構成は実施例1のタイヤ止め装置10と同様である。これら押圧部材36、リンク機構38、ストッパ部材40及びハウジング32、14を実施例1と同様に組み付けることにより各タイヤ止め装置30が得られる。これにより、押圧部材36は、ピン22の中心である水平な第1軸心O1回りで地面Eに揺動可能に軸支される。また、回転部材33は、シャフト33bの中心である水平な第3軸心O3回りで地面Eに揺動可能に軸支される。さらに、ストッパ部材40は、シャフト40bの中心である水平な第2軸心O2回りで地面Eに揺動可能に軸支される。そして、両ロッド35は、第1、2クランク34、40d間において、第4、5軸孔34a、40eの中心である第3、4軸心O3、O4回りで揺動可能に軸支され、前後に移動することとなる。第1〜5軸心O1〜O5は互いに平行である。
【0053】
以上のように構成された各タイヤ止め装置30では、図9に示すように、タイヤTが押圧部材36に乗ることによって押圧部材36が揺動し、押圧部材36の押圧爪36dが下降する。そして、リンク機構38の回転部材33は押圧爪36dの下降によって第3軸心O3回りで揺動し、両第1クランク34も回転部材33と一体に第3軸心O3回りで揺動し、両ロッド35が第1クランク34の揺動によって第4軸心O4回りで揺動しながら後方に移動する。これによって、ストッパ部材40の両第2クランク40dが第5軸心O5回りで揺動し、ストッパ部材40が起立する。
【0054】
こうして、このタイヤ止め装置30も実施例1と同様の効果を発揮することができる。このタイヤ止め装置30は、構成がやや複雑であるものの、第1軸芯O1と第2軸芯O2との距離を比較的大きなものとすることができるため、大型車両用のものとして好適である。他の作用効果は実施例1と同様である。
【0055】
なお、上記実施例2のタイヤ止め装置30では、回転部材33の揺動によってロッド35が後方に移動する構成としたが、回転部材33の揺動によってロッド35が前方に移動する構成とすることも可能である。
【0056】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は車両のタイヤ止め装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施例1に係り、車両のタイヤ止め装置を設置した状態を示す全体平面図である。
【図2】本発明の実施例1に係り、車両のタイヤ止め装置の分解斜視図である。
【図3】本発明の実施例1に係り、車両のタイヤ止め装置の斜視図である。
【図4】本発明の実施例1に係り、車両のタイヤ止め装置の平面図である。
【図5】本発明の実施例1に係り、図4に示す車両のタイヤ止め装置のV−V矢視断面図である。
【図6】本発明の実施例1に係り、タイヤが車両のタイヤ止め装置の上に乗った状態を示す図5と同様の断面図である。
【図7】本発明の実施例2に係り、車両のタイヤ止め装置の平面図である。
【図8】本発明の実施例2に係り、図7に示す車両のタイヤ止め装置のVIII−VIII矢視断面図である。
【図9】本発明の実施例2に係り、タイヤが車両のタイヤ止め装置の上に乗った状態を示す図8と同様の断面図である。
【図10】従来の車両のタイヤ止め装置に係り、タイヤが車両のタイヤ止め装置に当接した状態を示す断面図である。
【図11】従来の車両のタイヤ止め装置に係り、図(a)はタイヤが車両のタイヤ止め装置の上に乗る前の状態を示す断面図、図(b)はタイヤが車両のタイヤ止め装置の上に乗った状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
10、30、90、95…タイヤ止め装置
O1…第1軸心
E…地面
A…車両
T…タイヤ
16、36…押圧部材
O2…第2軸心
20、40、97…ストッパ部材
18、38…リンク機構
O3…第3軸心
18、33…回転部材
16d、36d…押圧爪
18d…被押圧部
18e…立ち上げ部
20d…当接部
34…第1クランク
O4…第4軸心
35…ロッド
O5…第5軸心
40d…第2クランク
12、14、32…ハウジング
25…圧縮コイルばね(付勢部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のタイヤ止め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図10に一般的な車両のタイヤ止め装置90を示す。このタイヤ止め装置90は駐車場等の地面Eに載置されるコンクリートブロックからなる。
【0003】
このタイヤ止め装置90は、地面Eを前進又は後退してくる車両の前又は後ろのタイヤTと当接し、その車両のさらなる前進又は後退を制限することができる。これにより、駐車場においては、車両を壁等や他の車両と衝突させることなく整列させることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のタイヤ止め装置90は、確実に車両の前進又は後退を制限するためにある程度の高さを有しており、車両がない場合に邪魔になりやすかった。
【0005】
この点、特開平9-317235号公報開示の車両のタイヤ止め装置を採用することも考えられる。図11(a)及び(b)に示すこのタイヤ止め装置95は、地面E内に埋設されて地表に開いた凹部96aを画定するブロック96と、水平な軸心O回りでブロック96に揺動可能に軸支され、車両のタイヤTが乗ることによって地面Eと面一の状態から揺動するストッパ部材97とからなる。
【0006】
このタイヤ止め装置95によれば、図11(a)に示す状態から図11(b)に示す状態へと、車両が地面Eを前進又は後退する場合、その車両の前又は後ろのタイヤTがストッパ部材97を揺動させ、ストッパ部材97によってその車両のさらなる前進又は後退を制限することができる。また、車両がない場合には、ストッパ部材97が地面Eと面一になるため、邪魔になることもない。
【0007】
しかしながら、このタイヤ止め装置95は、タイヤTが乗ることによって揺動するストッパ部材97自身がタイヤTと当接し、車両の前進又は後退を制限しなければならない。このため、このタイヤ止め装置95は、その確実性に不安がある。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、車両がない場合に邪魔になり難く、確実に車両の前進又は後退を制限することができる車両のタイヤ止め装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両のタイヤ止め装置は、水平な第1軸心回りで地面に揺動可能に軸支され、車両のタイヤが乗ることによって揺動する押圧部材と、
該第1軸心と平行な第2軸心回りで該地面に揺動可能に軸支され、起立によって該タイヤの進行を停止させるストッパ部材と、
該押圧部材の揺動によって該ストッパ部材を起立させるリンク機構とを備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明の車両のタイヤ止め装置では、車両が地面を前進又は後退することによってタイヤが押圧部材に乗ると、押圧部材は水平な第1軸心回りで揺動する。すると、リンク機構が押圧部材の揺動によってストッパ部材を起立させる。この際、ストッパ部材は、第1軸心と平行な第2軸心回りで揺動し、起立する。このため、起立したストッパ部材によってタイヤの進行が停止される。こうして、車両のさらなる前進又は後退を確実に制限することができる。
【0011】
また、このタイヤ止め装置では、タイヤが押圧部材に乗っていない状態においては、ストッパ部材が起立していない。このため、このタイヤ止め装置は、従来のコンクリートブロックよりも低くなり得ることから、邪魔になり難い。
【0012】
したがって、このタイヤ止め装置は、車両がない場合に邪魔になり難く、確実に車両の前進又は後退を制限することができる。
【0013】
このタイヤ止め装置は、車両の左右のタイヤ用として二つで1セットとして用いられてもよいし、両タイヤ用として一つで用いられてもよい。
【0014】
本発明のタイヤ止め装置において、前記リンク機構は、前記第1軸心及び前記第2軸心と平行な第3軸心回りで前記地面に揺動可能に軸支され、前記押圧部材と係合して前記ストッパ部材を起立させる回転部材であることができる。
【0015】
この場合、タイヤが押圧部材に乗ることにより、押圧部材と係合する回転部材がストッパ部材を起立させることができる。こうして、このタイヤ止め装置は本発明の効果を発揮することができる。このタイヤ止め装置は、簡易な構成であり、部品点数が少なく、製造コストの低廉化を実現することができる。
【0016】
より具体的には、前記押圧部材は、前記タイヤが自身に乗ることによって下降する押圧爪を前記第2軸心側に有し、前記回転部材は、該押圧爪の下降によって下降する被押圧部と、該被押圧部の下降によって上昇する立ち上げ部とを有し、前記ストッパ部材は、該立ち上げ部の上昇によって上昇し、該タイヤと当接する当接部を有することが好ましい。この場合、タイヤが押圧部材に乗ると、押圧部材の押圧爪が下降し、回転部材の被押圧部が下降し、回転部材の立ち上げ部が上昇する。こうして、押圧部材の押圧爪の下降を回転部材の立ち上げ部の上昇に変換することができる。この際、第3軸芯の位置によって立ち上げ部の上昇距離を選択することができる。そして、回転部材の立ち上げ部の上昇によって、ストッパ部材の当接部が上昇する。この際、回転部材の立ち上げ部とストッパ部材の第2軸芯との距離によって、当接部の上昇距離を大きくすることができる。
【0017】
押圧爪としては、押圧部材を曲げた形状や突起を有した形状等を採用することができる。タイヤが乗っていない状態で水平な押圧爪であることが好ましい。このタイヤ止め装置は、押圧部材の地面からの高さを低くしながら、押圧爪の下降距離を大きく確保できることから、確実に停車の作用を生じさせつつ邪魔になり難いものとなる。
【0018】
また、本発明のタイヤ止め装置において、前記押圧部材は、前記タイヤが自身に乗ることによって下降する押圧爪を前記第2軸心側に有し、
前記リンク機構は、前記第1軸心及び前記第2軸心と平行な第3軸心回りで前記地面に揺動可能に軸支され、該押圧爪の下降によって揺動する回転部材と、該回転部材と一体に設けられた第1クランクと、該第1軸心、該第2軸心及び該第3軸心と平行な第4軸心回りで該第1クランクに揺動可能に軸支され、該第1クランクの揺動によって前後に移動するロッドとからなり、
前記ストッパ部材は、該第1軸心、該第2軸心、第3軸心及び該第4軸心と平行な第5軸心回りで該ロッドを揺動可能に軸支し、該ロッドの前進又は後退によって自身を起立させる第2クランクを有することができる。
【0019】
この場合、タイヤが押圧部材に乗ることによって押圧部材が揺動し、押圧部材の押圧爪が下降する。そして、リンク機構の回転部材は押圧爪の下降によって第3軸心回りで揺動し、第1クランクも回転部材と一体に第3軸心回りで揺動し、ロッドが第1クランクの揺動によって第4軸心回りで揺動しながら前後に移動する。これによって、ストッパ部材の第2クランクが第5軸心回りで揺動し、ストッパ部材が起立する。こうして、このタイヤ止め装置は本発明の効果を発揮することができる。このタイヤ止め装置は、構成がやや複雑であるものの、第1軸芯と第2軸芯との距離を比較的大きなものとすることができるため、大型車両用のものとして好適である。
【0020】
本発明のタイヤ止め装置において、前記ストッパ部材は、前記タイヤの進行方向と同じ方向に揺動して該タイヤと対面することが好ましい。このストッパ部材は、タイヤの進行方向とは逆の方向に揺動してタイヤと対面するストッパ部材よりも、タイヤに対して抗力を及ぼしやすく、例え小さなストッパ部材であっても、停車の効果をより確実なものとすることができる。
【0021】
本発明のタイヤ止め装置は、前記地面に固定されるハウジングを備え、前記押圧部材、前記リンク機構及び前記ストッパ部材は該ハウジングに設けられていることが好ましい。このタイヤ止め装置は、押圧部材、リンク機構及びストッパ部材をハウジングに収納することができるため、持ち運びや施工等の取り扱いが容易となる。
【0022】
なお、本発明のタイヤ止め装置は、地面上に設置されたり、地面内に埋設されたりして用いられ得る。このタイヤ止め装置を地面上に設置する場合、従来のコンクリートブロックのように施工が容易である。また、このタイヤ止め装置を地面内に埋設する場合には、深さが浅く、施工がさほど面倒ではない。
【0023】
また、このタイヤ止め装置は、地面に固定されなくてもその機能を十分に発揮するが、固定されていることがより好ましい。タイヤ止め装置を地面に固定すれば、タイヤ止め装置の盗難を防止できるとともに、設置位置が変化することはなく、より安定した機能を発揮することができる。なお、固定手段としてはネジやボルト等を採用することができる。
【0024】
本発明のタイヤ止め装置は、前記押圧部材に前記タイヤが載らない状態で前記ストッパ部材を倒伏させる付勢部材を備えていることが好ましい。このタイヤ止め装置は、押圧部材にタイヤが乗らない状態でストッパ部材が起立したままとなることはないため、邪魔になり難い。また、付勢部材の付勢力がタイヤが押圧部材に乗ることによって勝るものである場合には、押圧部材に車両よりも質量の小さいもの、例えば、人等が乗っても、ストッパ部材が倒伏状態を維持することができるため、ストッパ部材が邪魔にならず、安全である。
【0025】
この付勢部材としては、地面やハウジングと押圧部材、回転部材、ロッド又はストッパ部材との間に設けるばね等を採用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0027】
実施例1の車両のタイヤ止め装置10は、図1に示すように、二つで1セットとして用いられている。各タイヤ止め装置10は、車両Aの左右のタイヤTの間隔と同じ間隔で隔てられた状態で地面Eに図示しないボルトによって固定されている。
【0028】
各タイヤ止め装置10は、図2に示すように、ハウジング12、14、押圧部材16、回転部材18及びストッパ部材20を有している。ハウジング12、14はハウジング本体12と、固定板14とからなる。押圧部材16、回転部材18及びストッパ部材20はほぼ同一の幅を有している。
【0029】
ハウジング本体12は、タイヤTの幅よりも広い幅方向の両端に上方に延びる側壁12aを有している。両側壁12aには、その前方(図中左側)に第1軸孔12bが互いに対面するように貫設され、その中央に第3軸孔12cが互いに対面するように貫設され、その後方に上方に開くU字形状の切欠き12dが互いに対面するように貫設され、切欠き12dの周辺に複数のビス孔が貫設されている。また、固定板14は、ハウジング本体12よりも厚い板状をなし、水平方向で見て中央寄りの位置に軸孔14aが貫設されている。
【0030】
押圧部材16は、水平方向で見てへの字形状をなし、幅方向に延びる本体16aと、この本体16aの幅方向の両端から本体16aに対して直角に折れ曲がった耳部16bとからなる。両耳部16bには第1軸孔12bと整合する軸孔16cが貫設されている。
【0031】
回転部材18は、水平方向で見て逆への字形状をなし、幅方向に延びる本体18aと、この本体18aの幅方向の両端から本体18aに対して直角に折れ曲がった耳部18bとからなる。両耳部18bには第3軸孔12cと整合する軸孔18cが貫設されている。
【0032】
ストッパ部材20は、水平方向で見てコの字形状をなし、幅方向に延びる本体20aと、この本体20aと一体に設けられて幅方向に延びるシャフト20bとからなる。本体20aの両端には抜け止め用の凸部20cが幅方向に突設されている。
【0033】
これら押圧部材16、回転部材18、ストッパ部材20及びハウジング12、14を組み付けることにより、図3及び図4に示す各タイヤ止め装置10が得られる。この際、まず、図2に示すように、頭部をもつピン22、ワッシャ23、割ピン24及び圧縮コイルばね25を用意する。圧縮コイルばね25は付勢部材に相当する。
【0034】
そして、ハウジング本体12の両第3軸孔12cに両耳部18bの両軸孔18cが整合するように回転部材18をハウジング本体12に挿入し、両第3軸孔12c及び軸孔18cに内側からピン22を挿入し、ワッシャ23を介してピン22に割ピン24を嵌める。これにより、回転部材18は、図5及び図6に示すように、ピン22の中心である水平な第3軸心O3回りで地面Eに揺動可能に軸支される。両側のピン22が連続していないことにより、タイヤTの進行が邪魔されることはない。この回転部材18がリンク機構である。
【0035】
また、図2に示すように、ハウジング本体12の両第1軸孔12bに両耳部16bの両軸孔16cが整合するように押圧部材16をハウジング本体12に挿入し、両第1軸孔12b及び軸孔16cに内側からピン22を挿入し、ワッシャ23を介してピン22に割ピン24を嵌める。また、押圧部材16の本体16aとハウジング本体12との間に圧縮コイルばね25を設ける。これらにより、押圧部材16も、図5及び図6に示すように、ピン22の中心である水平な第1軸心O1回りで地面Eに揺動可能に軸支される。ここにおいても、両側のピン22が連続していないことにより、タイヤTの進行が邪魔されることはない。
【0036】
さらに、図2に示すように、ハウジング本体12の切欠き12dにストッパ部材20のシャフト20bを嵌め、シャフト20bの両側からそれぞれ固定板14をその軸孔14aに嵌め込み、両固定板14を外側からそれぞれ複数本のビス13により両側壁12aと一体化する。これにより、ストッパ部材20も、図5及び図6に示すように、シャフト20bの中心である水平な第2軸心O2回りで地面Eに揺動可能に軸支される。第1〜3軸心O1〜O3は互いに平行である。
【0037】
こうして得られた各タイヤ止め装置10は、押圧部材16、回転部材18及びストッパ部材20をハウジング12、14に収納したものであるため、持ち運びや施工等の取り扱いが容易である。そして、駐車場等の地面Eにおいて、図示しないボルトによりハウジング12、14が地面Eに固定され、各タイヤ止め装置10が地面E上に容易に設置される。こうしてタイヤ止め装置10を地面Eに固定すれば、タイヤ止め装置10の盗難を防止できるとともに、設置位置が変化することはなく、より安定した機能を発揮することができる。
【0038】
これらのタイヤ止め装置10では、押圧部材16は、本体16aが水平方向で見てへの字形状をなしていることから、タイヤTが自身に乗ることによって下降する押圧爪16dを第2軸心O2側に有することとなる。また、回転部材18は、本体18aが水平方向で見て逆への字形状をなしていることから、押圧爪16dの下降によって下降する被押圧部18dと、被押圧部18dの下降によって上昇する立ち上げ部18eとを有することとなる。さらに、ストッパ部材20は、本体20aが水平方向で見てコの字形状をなしていることから、立ち上げ部18eの上昇によって上昇し、タイヤTと当接する当接部20dと、当接部20dの反対側に位置してハウジング本体12の底面と当接して当接部20dがより上昇しないように規制する規制部20eとを有することとなる。
【0039】
以上のように構成された各タイヤ止め装置10では、図1に示すように、車両Aが地面Eを例えば後退する際に役に立つ。この際、図6に示すように、タイヤTが進行方向Dで押圧部材16に乗ると、押圧部材16は水平な第1軸心O1回りで揺動する。すると、回転部材18が押圧部材16の揺動によってストッパ部材20を起立させる。すなわち、押圧部材16の押圧爪16dが下降し、回転部材18の被押圧部18dが下降し、回転部材18の立ち上げ部18eが上昇する。こうして、押圧部材16の押圧爪16dの下降を回転部材18の立ち上げ部18eの上昇に変換することができる。この際、第3軸芯O3の位置によって立ち上げ部18eの上昇距離を選択することができる。
【0040】
そして、回転部材18の立ち上げ部18eの上昇によって、ストッパ部材20がタイヤTの進行方向Dと同一方向にθ(60)°揺動し、当接部20dが上昇する。つまり、ストッパ部材20が第2軸心O2回りで揺動して起立する。この際、回転部材18の立ち上げ部18eとストッパ部材20の第2軸芯O2との距離によって、当接部20dの上昇距離を大きくすることができる。当接部20dが最も上昇した位置において、規制部20eがハウジング本体12の底面と当接するため、当接部20dはその位置で固定されることとなる。
【0041】
こうして、各タイヤ止め装置10では、起立したストッパ部材20の当接部20dがタイヤTと当接し、タイヤTの進行が停止される。こうして、車両Aのさらなる後退を確実に制限することができる。特に、これらのタイヤ止め装置10では、ストッパ部材20がタイヤTの進行方向Dと同じ方向に揺動してタイヤTと対面するため、タイヤTに対して抗力を及ぼしやすく、例え小さなストッパ部材20であっても、停車の効果をより確実なものとすることができる。
【0042】
また、各タイヤ止め装置10では、図5に示すように、タイヤTが押圧部材16に乗っていない状態においては、押圧部材16が圧縮コイルばね25の付勢力によって逆に揺動し、ストッパ部材20は自重によって逆に揺動し、ストッパ部材20の揺動によって回転部材18が逆に揺動する。このため、このタイヤ止め装置10は、この状態において、ストッパ部材20が起立しておらず、従来のコンクリートブロックよりも低くなり得ることから、邪魔になり難い。
【0043】
したがって、各タイヤ止め装置10は、車両Aがない場合に邪魔になり難く、確実に車両Aの後退を制限することができる。特に、各タイヤ止め装置10は、タイヤTが乗っていない状態で水平な押圧爪16dを採用しているため、押圧部材16の地面Eからの高さを低くしながら、押圧爪16dの下降距離を大きく確保でき、確実に停車の作用を生じさせつつ邪魔になり難いものとなっている。
【0044】
また、各タイヤ止め装置10は、簡易な構成であり、部品点数が少なく、製造コストの低廉化を実現することができる。
【0045】
なお、上記実施例1のタイヤ止め装置10では、付勢部材としての圧縮コイルばね25を押圧部材16の本体16aとハウジング本体12との間に設けたが、回転部材18の本体18aのうちの第1軸心O1側とハウジング本体12との間に付勢部材としての圧縮コイルばね25を設けてもよく、ストッパ部材20のシャフト20bとハウジング本体12との間等に付勢部材としてのねじり渦巻きばねを設けてもよい。また、圧縮コイルばね25は板ばねにしてもよい。
【0046】
また、各タイヤ止め装置10を地面E内に埋設することも可能である。この場合においても、深さが浅く、施工がさほど面倒ではない。
【実施例2】
【0047】
実施例2の車両のタイヤ止め装置30は、図7〜9に示すように、ハウジング32、14、押圧部材36、リンク機構38及びストッパ部材40を有している。
【0048】
ハウジング32は幅方向の両端に上方に延びる側壁32aを有している。両側壁32aには、その前方(図中左側)に第1軸孔32bが互いに対面するように貫設され、その中央に第3軸孔32cが互いに対面するように貫設され、切欠き32dの周辺に複数のビス孔が貫設されている。また、固定板14は、ハウジング32よりも厚い板状をなし、水平方向で見て中央寄りの位置に軸孔14aが貫設されている。
【0049】
押圧部材36は本体36aと両耳部36bとからなる。本体36aの押圧部36dはほぼ直角に下方に屈曲されている。両耳部36bには第1軸孔32bと整合する軸孔36cが貫設されている。
【0050】
リンク機構38は、回転部材33と第1クランク34とロッド35とからなる。回転部材33は、実施例1の回転部材18の本体18aよりも小型の本体33aと、この本体33aと一体に設けられて幅方向に延びるシャフト33bとからなる。回転部材33のシャフト33bの両端には上方に延びる第1クランク34が一体に固定されている。両第1クランク34の先端には第4軸孔34aが貫設されており、両第4軸孔34aにピンを介して後方に延びるロッド35が揺動可能に軸支されている。
【0051】
ストッパ部材40は本体40aとシャフト40bと2個の第2クランク40dとからなる。両第2クランク40dはシャフト40bの両端で上方に延びて一体に固定されている。両第2クランク40dの先端には第5軸孔40eが貫設されており、両第5軸孔40eにピンを介して前方に延びるロッド35が揺動可能に軸支されている。
【0052】
他の構成は実施例1のタイヤ止め装置10と同様である。これら押圧部材36、リンク機構38、ストッパ部材40及びハウジング32、14を実施例1と同様に組み付けることにより各タイヤ止め装置30が得られる。これにより、押圧部材36は、ピン22の中心である水平な第1軸心O1回りで地面Eに揺動可能に軸支される。また、回転部材33は、シャフト33bの中心である水平な第3軸心O3回りで地面Eに揺動可能に軸支される。さらに、ストッパ部材40は、シャフト40bの中心である水平な第2軸心O2回りで地面Eに揺動可能に軸支される。そして、両ロッド35は、第1、2クランク34、40d間において、第4、5軸孔34a、40eの中心である第3、4軸心O3、O4回りで揺動可能に軸支され、前後に移動することとなる。第1〜5軸心O1〜O5は互いに平行である。
【0053】
以上のように構成された各タイヤ止め装置30では、図9に示すように、タイヤTが押圧部材36に乗ることによって押圧部材36が揺動し、押圧部材36の押圧爪36dが下降する。そして、リンク機構38の回転部材33は押圧爪36dの下降によって第3軸心O3回りで揺動し、両第1クランク34も回転部材33と一体に第3軸心O3回りで揺動し、両ロッド35が第1クランク34の揺動によって第4軸心O4回りで揺動しながら後方に移動する。これによって、ストッパ部材40の両第2クランク40dが第5軸心O5回りで揺動し、ストッパ部材40が起立する。
【0054】
こうして、このタイヤ止め装置30も実施例1と同様の効果を発揮することができる。このタイヤ止め装置30は、構成がやや複雑であるものの、第1軸芯O1と第2軸芯O2との距離を比較的大きなものとすることができるため、大型車両用のものとして好適である。他の作用効果は実施例1と同様である。
【0055】
なお、上記実施例2のタイヤ止め装置30では、回転部材33の揺動によってロッド35が後方に移動する構成としたが、回転部材33の揺動によってロッド35が前方に移動する構成とすることも可能である。
【0056】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は車両のタイヤ止め装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施例1に係り、車両のタイヤ止め装置を設置した状態を示す全体平面図である。
【図2】本発明の実施例1に係り、車両のタイヤ止め装置の分解斜視図である。
【図3】本発明の実施例1に係り、車両のタイヤ止め装置の斜視図である。
【図4】本発明の実施例1に係り、車両のタイヤ止め装置の平面図である。
【図5】本発明の実施例1に係り、図4に示す車両のタイヤ止め装置のV−V矢視断面図である。
【図6】本発明の実施例1に係り、タイヤが車両のタイヤ止め装置の上に乗った状態を示す図5と同様の断面図である。
【図7】本発明の実施例2に係り、車両のタイヤ止め装置の平面図である。
【図8】本発明の実施例2に係り、図7に示す車両のタイヤ止め装置のVIII−VIII矢視断面図である。
【図9】本発明の実施例2に係り、タイヤが車両のタイヤ止め装置の上に乗った状態を示す図8と同様の断面図である。
【図10】従来の車両のタイヤ止め装置に係り、タイヤが車両のタイヤ止め装置に当接した状態を示す断面図である。
【図11】従来の車両のタイヤ止め装置に係り、図(a)はタイヤが車両のタイヤ止め装置の上に乗る前の状態を示す断面図、図(b)はタイヤが車両のタイヤ止め装置の上に乗った状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
10、30、90、95…タイヤ止め装置
O1…第1軸心
E…地面
A…車両
T…タイヤ
16、36…押圧部材
O2…第2軸心
20、40、97…ストッパ部材
18、38…リンク機構
O3…第3軸心
18、33…回転部材
16d、36d…押圧爪
18d…被押圧部
18e…立ち上げ部
20d…当接部
34…第1クランク
O4…第4軸心
35…ロッド
O5…第5軸心
40d…第2クランク
12、14、32…ハウジング
25…圧縮コイルばね(付勢部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平な第1軸心回りで地面に揺動可能に軸支され、車両のタイヤが乗ることによって揺動する押圧部材と、
該第1軸心と平行な第2軸心回りで該地面に揺動可能に軸支され、起立によって該タイヤの進行を停止させるストッパ部材と、
該押圧部材の揺動によって該ストッパ部材を起立させるリンク機構とを備えていることを特徴とする車両のタイヤ止め装置。
【請求項2】
前記リンク機構は、前記第1軸心及び前記第2軸心と平行な第3軸心回りで前記地面に揺動可能に軸支され、前記押圧部材と係合して前記ストッパ部材を起立させる回転部材であることを特徴とする請求項1記載の車両のタイヤ止め装置。
【請求項3】
前記押圧部材は、前記タイヤが自身に乗ることによって下降する押圧爪を前記第2軸心側に有し、
前記回転部材は、該押圧爪の下降によって下降する被押圧部と、該被押圧部の下降によって上昇する立ち上げ部とを有し、
前記ストッパ部材は、該立ち上げ部の上昇によって上昇し、該タイヤと当接する当接部を有することを特徴とする請求項2記載の車両のタイヤ止め装置。
【請求項4】
前記押圧部材は、前記タイヤが自身に乗ることによって下降する押圧爪を前記第2軸心側に有し、
前記リンク機構は、前記第1軸心及び前記第2軸心と平行な第3軸心回りで前記地面に揺動可能に軸支され、該押圧爪の下降によって揺動する回転部材と、該回転部材と一体に設けられた第1クランクと、該第1軸心、該第2軸心及び該第3軸心と平行な第4軸心回りで該第1クランクに揺動可能に軸支され、該第1クランクの揺動によって前後に移動するロッドとからなり、
前記ストッパ部材は、該第1軸心、該第2軸心、第3軸心及び該第4軸心と平行な第5軸心回りで該ロッドを揺動可能に軸支し、該ロッドの前進又は後退によって自身を起立させる第2クランクを有することを特徴とする請求項1記載の車両のタイヤ止め装置。
【請求項5】
前記ストッパ部材は、前記タイヤの進行方向と同じ方向に揺動して該タイヤと対面することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の車両のタイヤ止め装置。
【請求項6】
前記地面に固定されるハウジングを備え、前記押圧部材、前記リンク機構及び前記ストッパ部材は該ハウジングに設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の車両のタイヤ止め装置。
【請求項7】
前記押圧部材に前記タイヤが載らない状態で前記ストッパ部材を倒伏させる付勢部材を備えていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の車両のタイヤ止め装置。
【請求項1】
水平な第1軸心回りで地面に揺動可能に軸支され、車両のタイヤが乗ることによって揺動する押圧部材と、
該第1軸心と平行な第2軸心回りで該地面に揺動可能に軸支され、起立によって該タイヤの進行を停止させるストッパ部材と、
該押圧部材の揺動によって該ストッパ部材を起立させるリンク機構とを備えていることを特徴とする車両のタイヤ止め装置。
【請求項2】
前記リンク機構は、前記第1軸心及び前記第2軸心と平行な第3軸心回りで前記地面に揺動可能に軸支され、前記押圧部材と係合して前記ストッパ部材を起立させる回転部材であることを特徴とする請求項1記載の車両のタイヤ止め装置。
【請求項3】
前記押圧部材は、前記タイヤが自身に乗ることによって下降する押圧爪を前記第2軸心側に有し、
前記回転部材は、該押圧爪の下降によって下降する被押圧部と、該被押圧部の下降によって上昇する立ち上げ部とを有し、
前記ストッパ部材は、該立ち上げ部の上昇によって上昇し、該タイヤと当接する当接部を有することを特徴とする請求項2記載の車両のタイヤ止め装置。
【請求項4】
前記押圧部材は、前記タイヤが自身に乗ることによって下降する押圧爪を前記第2軸心側に有し、
前記リンク機構は、前記第1軸心及び前記第2軸心と平行な第3軸心回りで前記地面に揺動可能に軸支され、該押圧爪の下降によって揺動する回転部材と、該回転部材と一体に設けられた第1クランクと、該第1軸心、該第2軸心及び該第3軸心と平行な第4軸心回りで該第1クランクに揺動可能に軸支され、該第1クランクの揺動によって前後に移動するロッドとからなり、
前記ストッパ部材は、該第1軸心、該第2軸心、第3軸心及び該第4軸心と平行な第5軸心回りで該ロッドを揺動可能に軸支し、該ロッドの前進又は後退によって自身を起立させる第2クランクを有することを特徴とする請求項1記載の車両のタイヤ止め装置。
【請求項5】
前記ストッパ部材は、前記タイヤの進行方向と同じ方向に揺動して該タイヤと対面することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の車両のタイヤ止め装置。
【請求項6】
前記地面に固定されるハウジングを備え、前記押圧部材、前記リンク機構及び前記ストッパ部材は該ハウジングに設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の車両のタイヤ止め装置。
【請求項7】
前記押圧部材に前記タイヤが載らない状態で前記ストッパ部材を倒伏させる付勢部材を備えていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の車両のタイヤ止め装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−45806(P2006−45806A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225093(P2004−225093)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(501486947)株式会社弘洋電機 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(501486947)株式会社弘洋電機 (4)
【Fターム(参考)】
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