説明

車両の前側方視認装置

【課題】本発明は、車両の前側方の視認性を良好にする車両の前側方視認装置を提供する。
【解決手段】ドアミラー1の有効利用を図っている前側方視認装置10は、車両9に固定される助手席側のドアミラー1のハウジング6に固定されて、運転席から視認される位置に反射面12aが設けられた助手席側死角ミラー12と、助手席側死角ミラー12の後方で車両9のボディBに固定されて車両9の助手席側の視認領域Sに向けられると共に、助手席側死角ミラー12に像を投影する補助ミラー13と、を備えている。このように、ドアミラー1のミラー部2とは別に、ハウジング6に助手席側死角ミラー12が固定されているので、運転者が、後方視界を変更させるためにドアミラー1のミラー部2を傾動させても、助手席側死角ミラー12の反射角度が変わることがなく、前側方の視認領域Sを常に一定の状態に維持させることができる。しかも、補助ミラー13を採用することで、前側方の視認領域が広くなり、特に、助手席側の前輪近辺の視認が良好になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者が車両の前側方の視認を確保するために利用される装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開平11−170914号公報がある。この公報に記載された車両の前側方視認装置は、ドアに固定された補助ミラーを有し、この補助ミラーは、車両の助手席側の視認領域に向けられていて、補助ミラーの像はドアミラーのミラー部に投影される。そして、ミラー部に写し出された像を運転者が見ることで車両の前側方を視認することができる。このような構成を採用することで、補助ミラーを車両のボディに固定させるだけで、既存のドアミラーで前側方の視認が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−170914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の車両の前側方視認装置にあっては、運転者が、後方視界を変更させるためにドアミラーの反射鏡を傾動させてしまうと、補助ミラーの像がドアミラーの反射鏡に写らなくなってしまうか、前側方の視認領域が変わってしまって、望ましい前側方の視認ができなくなってしまう虞がある。また、ドアミラーの反射鏡には前側方の像と後方の像とが同時に写り込んだ状態になっているので、運転中に、ドアミラーによって後方確認しづらく、駐車時にあっても、前側方を確認しづらいといった問題点がある。
【0005】
本発明は、車両の前側方の視認性を良好にする車両の前側方視認装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両の前側方の視認を確保するための装置において、
車両に固定される助手席側のアウターミラーのハウジングに固定されて、運転席から視認される位置に反射面が設けられた助手席側死角ミラーと、
助手席側死角ミラーの後方で車両のボディに固定されて車両の助手席側の視認領域に向けられると共に、助手席側死角ミラーに像を投影する補助ミラーと、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この車両の前側方視認装置においては、車両のボディに固定された補助ミラーによって、車両の助手席側前方を、助手席側のアウターミラーのハウジングに固定された助手席側死角ミラーに写し出し、助手席側死角ミラーを運転者が見ることで、車両の助手席側前方を運転者が視認することができる。このように、アウターミラーのミラー部とは別に、ハウジングに助手席側死角ミラーが固定されているので、運転者が、後方視界を変更させるためにドアミラーのミラー部を傾動させても、助手席側死角ミラーの反射角度が変わることがなく、前側方の視界を常に一定の状態に維持させることができる。しかも、補助ミラーを採用することで、前側方の視認領域が広くなり、特に、助手席側前輪近辺の視認が良好になる。
【0008】
また、ハウジングに形成された視認用窓部内に、アウターミラーのミラー部及び助手席側死角ミラーが配置されていると好適である。
このような構成を採用すると、視認用窓部から助手席側死角ミラーの反射面を露出させることができるので、ハウジングの下や横から張り出すように助手席側死角ミラー(例えば特開2007−137316号公報参照)を配置させる必要がなく、一般的なアウターミラーの外観形状を維持させることができる。
【0009】
また、ミラー部のボディ側の下側には、切り欠かれてなる死角ミラー露出部が形成されていると好適である。
助手席側のアウターミラーのミラー部のボディ側は、運転者から見ると車両のボディが写り込み、助手席の乗員から見ると自身が写り込んでいるので、その領域を有効活用するために、助手席側のアウターミラーのミラー部のボディ側に死角ミラー露出部を形成している。そして、ミラー部のボディ側で且つ下側に死角ミラー露出部を形成することで、運転者から見た場合に、ミラー部のボディ側で、車両のボディの写り込みを確保することができる。助手席側のアウターミラーのボディ側に自車を写り込ませるのは、運転者にとって、後方にいる他車と自車との位置関係を視認する上で好ましいことである。
【0010】
また、助手席側死角ミラーの反射面は、視認用窓部の縁部を通る平面から突出しないと好適である。
このような構成を採用すると、不自然に助手席側死角ミラーがアウターミラーから突出することなく、アウターミラーの外観品質を維持させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両の前側方の視認性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る車両の前側方視認装置に適用されるドアミラーの一実施形態を示す図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】本発明に係る車両の前側方視認装置を車内側から見た斜視図である。
【図4】本発明に係る車両の前側方視認装置を車外側から見た斜視図である。
【図5】車両の側方から見たときの視認領域を示す図である。
【図6】車両の上方から見たときの視認領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る車両の前側方視認装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、右ハンドルの車両について説明する。
【0014】
図1〜図4に示されるように、フロントサイドウインドウFを通して視認することが可能なアウターミラーの一例をなすドアミラー1は、ミラー部2を有するドアミラー本体3と、ドアミラー本体3を車両のボディBに取り付けるためのドアミラーベース4と、からなる。
【0015】
ドアミラー本体3のハウジング6には、ミラー部2の傾動機構が固定されると共に、ミラー部2を露出させるための開口が形成されている。ミラー部2は、ハウジング6に開口として形成された視認用窓部6cから露出させられ、視認用窓部6c内で自在に傾動させることができる。
【0016】
ドアミラー1の有効利用を図っている前側方視認装置10は、車両9に固定される助手席側のドアミラー1のハウジング6に固定されて、運転席から視認される位置に反射面12aが設けられた助手席側死角ミラー12と、助手席側死角ミラー12の後方で車両9のボディBに固定されて車両9の助手席側の視認領域S(図5及び図6参照)に向けられると共に、助手席側死角ミラー12に像を投影する補助ミラー13と、を備えている。
【0017】
助手席側死角ミラー12は、図1及び図2に示されるように、ハウジング6の視認用窓部6cから露出させられると共に、ハウジング6に設けられたベース部14の頂部に斜め下向きに固定されている。このように、視認用窓部6cから助手席側死角ミラー12の反射面12aを覗かせているので、ハウジング6の下や横から張り出すように助手席側死角ミラー12を配置させる必要がなく、一般的なドアミラーの外観形状を維持させることができる。
【0018】
また、ミラー部2のボディB側の下側には、L字状に切り欠かれてなる死角ミラー露出部2aが形成され、窓部6c内で死角ミラー露出部2aから助手席側死角ミラー12を露出させている。そして、助手席側死角ミラー12は、運転者からの見易さを考慮して平面鏡が採用され、上下に長く形成され、上方が広く、下にゆくにつれて狭くっている。また、助手席側死角ミラー12は、上下に長い長方形であってもよい。このような形状の助手席側死角ミラー12は、上下方向の長さを長くすることで、ボディBに沿った側方死角を確実に写し出すことができ、視認領域Sを前方に長くすることができる(図6参照)。
【0019】
助手席側のドアミラー1のミラー部2のボディB側は、運転者から見ると車両9のボディBが写り込み、助手席の乗員から見ると自身が写り込んでいるので、その領域を有効活用するために、助手席側のドアミラー1のミラー部2のボディB側の下側には、L字状に切り欠かれた死角ミラー露出部2aが形成されている。そして、死角ミラー露出部2aをミラー部2のボディB側で且つ下側に形成することで、運転者から見た場合に、ミラー部2のボディB側のミラー張り出し部2bで、車両9のボディBの写り込みを確保することができる。
【0020】
助手席側死角ミラー12の反射面12aは、視認用窓部6cの縁部を通る平面から突出しないように、すなわち、ハウジング6を側面側から見て反射面12aが見えない位置に配置されている。このような構成を採用すると、不自然に助手席側死角ミラー12がドアミラー1から突出することなく、ドアミラー1の外観品質を維持させることができる。
【0021】
図3及び図4に示されるように、補助ミラー組立体Aは、車両の前側方の視界を広範囲に確保するために凸面鏡をなす補助ミラー13を有すると共に、助手席側死角ミラー12の後方に配置され、車両9のボディBにベース部15を介して固定されている。補助ミラー13は、中空のベース部15の前面において、車両9の助手席側の視認領域S(図5及び図6参照)に向けられるように貼り付けられ、ベース部15は、ボルトやビスによってボディBに固定されている。この補助ミラー13は、鉛直方向の軸線に対して約7度下方に傾けられている。
【0022】
この車両の前側方視認装置10においては、車両のボディBに固定された補助ミラー13によって車両9の助手席側前方を、助手席側のドアミラー1のハウジング6に固定された助手席側死角ミラー12に写し出し、助手席側死角ミラー12を運転者が見ることで、車両9の助手席側前方の視認領域Sを運転者が視認することができる。このように、ドアミラー1のミラー部2とは別に、ハウジング6に助手席側死角ミラー12が固定されているので、運転者が、後方視界を変更させるためにドアミラー1のミラー部2を傾動させても、助手席側死角ミラー12の反射角度が変わることがなく、前側方の視認領域Sを常に一定の状態に維持させることができる。しかも、補助ミラー13を採用することで、前側方の視認領域が広くなり、特に、助手席側前輪Cの近辺の視認が良好になる。
【0023】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0024】
補助ミラー13や助手席側死角ミラー12は手動又は電動により傾動自在に構成されてもよい。
【0025】
補助ミラー組立体Aは、走行時に、電動でドア内に格納できるようにしてもよい。
【0026】
ハウジング6には、ミラー部2を露出させるための視認用窓部6cが形成されているが、この視認用窓部6cとは別の視認用窓部を設け、この視認用窓部から助手席側死角ミラー12を露出させても良い。
【0027】
本発明は、左ハンドルの車両についても適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1…ドアミラー(アウターミラー)、2…ミラー部、2a…死角ミラー露出部、6…ハウジング、6c…視認用窓部、9…車両、10…前側方視認装置、12…助手席側死角ミラー、12a…反射面、13…補助ミラー、A…補助ミラー組立体、B…ボディ、S…視認領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前側方の視認を確保するための装置において、
前記車両に固定される助手席側のアウターミラーのハウジングに固定されて、運転席から視認される位置に反射面が設けられた助手席側死角ミラーと、
前記助手席側死角ミラーの後方で前記車両のボディに固定されて前記車両の助手席側の視認領域に向けられると共に、前記助手席側死角ミラーに像を投影する補助ミラーと、を備えたことを特徴とする車両の前側方視認装置。
【請求項2】
前記ハウジングに形成された視認用窓部内に、前記アウターミラーのミラー部及び前記助手席側死角ミラーが配置されていることを特徴とする請求項1記載の車両の前側方視認装置。
【請求項3】
前記ミラー部のボディ側の下側には、切り欠かれてなる死角ミラー露出部が形成されていることを特徴とする請求項2記載の車両の前側方視認装置。
【請求項4】
前記助手席側死角ミラーの前記反射面は、前記視認用窓部の縁部を通る平面から突出しないことを特徴とする請求項2又は3に記載の車両の前側方視認装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−71564(P2013−71564A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211344(P2011−211344)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000148689)株式会社村上開明堂 (185)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】