説明

車両挙動制御装置

【課題】特別な対策や構造の変更を必要とすることなく、ブレーキを用いて車両挙動制御する際の油圧系や駆動系の振動騒音の発生を低減させる。
【解決手段】車速、ハンドル角に基づいて目標横加速度を算出し、目標横加速度と実横加速度とに基づいて車両に付加すべき第1、第2の付加ヨーモーメント、を算出し、第1、第2の制動力を算出する。更に、車両の左右輪間車輪速差を算出して第3の制動力を算出する。そして、これら第1、第2、第3の制動力に基づいて各輪に付加する制動力を、少なくとも左側の前後輪に付加する制動力と右側の前後輪に付加する制動力の大きな方の制動力の側の前輪と後輪のブレーキ液圧が同じ値となるように設定する。第3の制動力を出力する際には、トランスファクラッチを略直結状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各輪独立に制動力を付加して車両挙動を制御する車両挙動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両においては、各輪独立に制動力を付加して所望のヨーモーメントを発生させて安定性向上や運動性能向上を図る様々な車両挙動制御の技術が提案され実用化されてきている。例えば、特開2007−131251号公報(以下、特許文献1)では、横転防止制御時において、実横加速度の絶対値が値Gy1以上値Gy2以下である比較的早期の段階では旋回方向内側の前輪にのみ内側前輪制動力を発生させ、値Gy2以上値Gy3以下になると内側前輪制動力に加えて旋回方向内側の後輪に内側後輪制動力を発生させ、更に、実横加速度の絶対値が値Gy3以上になると内側後輪制動力に加えて旋回方向外側の前輪に外側車輪制動力を発生させて、旋回方向と反対方向のヨーイングモーメントを強制的に発生させてロール角の増大を抑制する車両の運動制御装置の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−131251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、車両のアンダーステア傾向を検出して旋回内輪ブレーキによる車両回頭方向のヨーモーメントを付加することで、後輪にも十分なすべり角が付き、4輪トータルのコーナリングフォースをある程度高めることは可能である。この際、ブレーキ制御の加圧遅れを避けるため、ブレーキ液圧の応答性を高めるために、ブレーキ駆動部のハイドロリックユニット(H/U)のポンプモータの回転数を上げたり、H/Uのバルブを作動させると振動騒音が悪化するという問題がある。特に、上述の特許文献1に開示されるような、4輪加圧(旋回外輪にもブレーキをかける)制御の場合、4輪液圧の独立制御はH/Uのバルブの作動音が大きくなってしまう。すなわち、上述の特許文献1に開示される技術では、始めに旋回方向内輪側にブレーキ、更に横加速度等が大きくなると旋回方向外輪側にもブレーキ力を付加することで車体に働く減速度も大きくなり、前軸の接地荷重が増加して車両のアンダステアを改善する効果は期待できる。しかしながら、ブレーキ制御の目標液圧が4輪独立になってしまい、制御作動時の振動騒音を抑えるためには、ブレーキ油圧系のハードウェア(H/Uのポンプやバルブ、配管等)に対策が必要となり、構造の見直しや、コストの上昇を招くという課題を生じる。また、例えば、4輪駆動車におけるトラクションコントロール制御において、各車輪のスリップを抑えるブレーキ制御を各輪独立に実行すると、同様に、油圧系の振動騒音が問題になる他、駆動系の共振(前後軸逆位相の車輪回転変動)による車体振動が生じる虞がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、特別な対策や構造の変更を必要とすることなく、ブレーキを用いて車両挙動制御する際の油圧系や駆動系の振動騒音の発生を低減させることが可能となる車両挙動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両挙動制御装置の一態様は、車両の運転状態を検出する運転状態検出手段と、上記運転状態に基づいて車両の左側の前後輪に付加する制動力と右側の前後輪に付加する制動力を算出する制動力算出手段と、上記左側の前後輪に付加する制動力と上記右側の前後輪に付加する制動力の大きな方の制動力の側の前輪と後輪のブレーキ液圧を同じ値に設定して制動制御する制動制御手段とを備えた。
【発明の効果】
【0007】
本発明による車両挙動制御装置によれば、特別な対策や構造の変更を必要とすることなく、ブレーキを用いて車両挙動制御する際の油圧系や駆動系の振動騒音の発生を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の一形態による、車両挙動制御装置を搭載した車両の概略構成を示す説明図である。
【図2】本発明の実施の一形態による、制御ユニットの機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施の一形態による、ブレーキ駆動部の構成説明図である。
【図4】本発明の実施の一形態による、車両挙動制御プログラムのフローチャートである。
【図5】本発明の実施の一形態による、第1の目標ヨーモーメントと第2の目標ヨーモーメントの違いを説明するための、本制御を適用したときの定常円旋回テストにおける横加速度とハンドル角比の特性説明図である。
【図6】本発明の実施の一形態による、第1の目標ヨーモーメントと第2の目標ヨーモーメントの違いを説明するための、ブレーキ力を発生させる制御状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
図1において、符号1は車両前部に配置されたエンジンを示し、このエンジン1による駆動力は、エンジン1後方の自動変速装置(トルクコンバータ等も含んで図示)2からトランスミッション出力軸2aを経てトランスファ3に伝達される。
【0011】
更に、このトランスファ3に伝達された駆動力は、リヤドライブ軸4、プロペラシャフト5、ドライブピニオン軸部6を介して後輪終減速装置7に入力される一方、リダクションドライブギヤ8、リダクションドリブンギヤ9、ドライブピニオン軸部となっているフロントドライブ軸10を介して前輪終減速装置11に入力される。ここで、自動変速装置2、トランスファ3および前輪終減速装置11等は、一体にケース12内に設けられている。
【0012】
また、後輪終減速装置7に入力された駆動力は、後輪左ドライブ軸13rlを経て左後輪14rlに、後輪右ドライブ軸13rrを経て右後輪14rrに伝達される。前輪終減速装置11に入力された駆動力は、前輪左ドライブ軸13flを経て左前輪14flに、前輪右ドライブ軸13frを経て右前輪14frに伝達される。
【0013】
トランスファ3は、リダクションドライブギヤ8側に設けたドライブプレート15aとリヤドライブ軸4側に設けたドリブンプレート15bとを交互に重ねて構成したトルク伝達容量可変型クラッチとしての湿式多板クラッチ(トランスファクラッチ)15と、このトランスファクラッチ15の締結力(後軸駆動トルク)を可変自在に付与するトランスファピストン16とにより構成されている。従って、本車両は、トランスファピストン16による押圧力を制御し、トランスファクラッチ15の締結力を制御することで、トルク配分比が前輪と後輪で、例えば100:0から50:50の間で可変できるフロントエンジン・フロントドライブ車ベース(FFベース)の4輪駆動車となっている。
【0014】
トランスファピストン16の押圧力は、複数のソレノイドバルブ等を擁した油圧回路で構成するトランスファクラッチ駆動部31bで与えられる。このトランスファクラッチ駆動部31bを駆動させる制御信号(前後軸間の締結トルク:トランスファクラッチトルク)は、前後駆動力配分制御部31aから出力される。前後駆動力配分制御部31aは、前後駆動力配分制御手段として設けられ、例えば、公知のトランスファ3への入力トルクや車両のヨーレート等のパラメータに応じて前後軸間の駆動力配分を設定し、該設定した前後軸間の駆動力配分に応じたトランスファクラッチトルクをトランスファクラッチ駆動部31bに出力する。
【0015】
一方、符号32bは車両のブレーキ駆動部を示し、このブレーキ駆動部32bには、図3に示す、ドライバにより操作されるブレーキペダル41と接続されたマスターシリンダ42が接続されている。そして、ドライバがブレーキペダル41を操作するとマスターシリンダ42により、ブレーキ駆動部32bを通じて、4輪14fl,14fr,14rl,14rrの各ホイールシリンダ(左前輪ホイールシリンダ17fl,右前輪ホイールシリンダ17fr,左後輪ホイールシリンダ17rl,右後輪ホイールシリンダ17rr)にブレーキ圧が導入され、これにより4輪が制動される。
【0016】
ブレーキ駆動部32bは、加圧源、減圧弁、増圧弁等を備えたハイドロリックユニットで、上述のドライバによるブレーキ操作以外にも、ブレーキ制御部32aからの信号に応じて、各ホイールシリンダ17fl,17fr,17rl,17rrに対して、それぞれ独立にブレーキ圧を導入自在に構成されている。
【0017】
ブレーキ駆動部32bは、具体的には、図3に示すように構成され、左後輪14rlに左後輪ホイールシリンダ17rlが、右後輪14rrに右後輪ホイールシリンダ17rrが、左前輪14flに左前輪ホイールシリンダ17flが、及び、右前輪14frに右前輪ホイールシリンダ17frが設けられている。左前輪14flと右後輪14rrに対するブレーキ駆動部32bで第1のブレーキ回路40aを構成し、左前輪14flと左後輪14rlに対するブレーキ駆動部32bで第2のブレーキ回路40bを構成している。
【0018】
ホイールシリンダ17fl,17fr,17rl,17rrの各々は、それぞれの出口弁42fl,42fr,42rl,42rr、及び、それぞれの入口弁43fl,43fr,43rl,43rrと結合されている。これらの各弁42fl,42fr,42rl,42rr,43fl,43fr,43rl,43rrは、ブレーキ制御部32aにより電気的に作動される。
【0019】
そして、これら各弁42fl,42fr,42rl,42rr,43fl,43fr,43rl,43rrは、それらの作動位置において、出口弁42fl,42fr,42rl,42rrは、それぞれのブレーキ回路内において、ホイールシリンダ17fl,17fr,17rl,17rrを、それぞれの逆止弁44a、44bを介して、モータ45により共に駆動される、それぞれのポンプ46a、46bと連通されている。励磁されていない基本位置においては、出口弁42fl,42fr,42rl,42rrは、この流路が遮断されている。
【0020】
また、各ブレーキ回路40a、40bの出口弁42fl,42fr,42rl,42rrとポンプ46a、46bとの間には、低圧貯蔵容器47a、47bが設けられている。入口弁43fl,43fr,43rl,43rrは、それが励磁されていない基本位置において、各ブレーキ回路40a、40bに対しマスターシリンダ42から切換弁48a、48bを介してホイールシリンダ17fl,17fr,17rl,17rrへの圧力媒体(オイル)の妨害されない流れを可能にする。入口弁43fl,43fr,43rl,43rrが作動されたときには、このオイルの流れが遮断される。
【0021】
更に、各ブレーキ回路40a、40bには、制御弁49a、49bが介装されており、制御弁49a、49bは、切換弁48a、48bと組合わされて、ドライバによるブレーキペダル41の操作とは独立してブレーキ圧力の上昇が可能となっている。これらブレーキ駆動部32bに設けられた各弁の制御は、ブレーキ制御部32aにより行われる。
【0022】
次に、制御ユニット30について説明する。
制御ユニット30には、運転状態検出手段としての、各車輪14fl,14fr,14rl,14rrの車輪速センサ(左前輪車輪速センサ21fl,右前輪車輪速センサ21fr,左後輪車輪速センサ21rl,右後輪車輪速センサ21rr)、ハンドル角センサ22、横加速度センサ23から、各車輪の車輪速(左前輪車輪速ωfl,右前輪車輪速ωfr,左後輪車輪速ωrl,右後輪車輪速ωrr)、ハンドル角θH、車体横加速度(dy/dt)等の各信号が入力される。
【0023】
そして、制御ユニット30は、車速V(例えば、4輪車輪速の平均)、ハンドル角θHに基づいて車両横運動の目標とする車両挙動としての目標横加速度(dy/dt)tを算出し、この目標横加速度(dy/dt)tと実際の車両挙動としての実際の横加速度(dy/dt)とに基づいて車両に付加すべき第1の付加ヨーモーメントMzt1を算出し、目標横加速度(dy/dt)tと実際の横加速度(dy/dt)とに基づいて第1の付加ヨーモーメントMzt1に加えて車両に付加すべき第2の付加ヨーモーメントMzt2を算出し、第1の付加ヨーモーメントMzt1に基づいて旋回内側車輪に付加する制動力を第1の制動力FB1として算出し、第2の付加ヨーモーメントMzt2に基づいて旋回内側車輪と旋回外側車輪との間の制動力差を変えることなく車両に付加する制動力を第2の制動力FB2として算出する。更に、車両の左右輪間車輪速差(スリップ量)Δωを算出し、該車両の左右輪間車輪速差(スリップ量)の絶対値|Δω|が予め設定した値e3より大きい場合に、該車両の左右輪間車輪速差(スリップ量)Δωに基づいて車両に付加する第3の制動力FB3を算出する。そして、これら第1、第2、第3の制動力FB1、FB2、FB3に基づいて各輪に付加する制動力を、少なくとも左側の前後輪に付加する制動力と右側の前後輪に付加する制動力の大きな方の制動力の側の前輪と後輪のブレーキ液圧を同じ値となるように設定してブレーキ制御部32aに対して出力する。この際、第3の制動力FB3を出力する際には、前後駆動力配分制御部31aにトランスファクラッチスリップ防止制御指令の信号を出力して、トランスファクラッチ15を略直結状態とさせる。このように、制御ユニット30は、制動力算出手段、制動制御手段としての機能を有して構成されている。
【0024】
このため、制御部ユニット30は、図2に示すように、目標横加速度算出部30a、横加速度偏差算出部30b、目標ヨーモーメント算出部30c、第1、2の制動力算出部30d、左右輪間車輪速差算出部30e、左右輪間車輪速差判定部30f、第3の制動力算出部30g、各輪の制動力算出部30h、各輪のブレーキ液圧算出部30iから主要に構成されている。
【0025】
目標横加速度算出部30aは、4輪車輪速センサ21fl,21fr,21rl,21rrから4輪車輪速ωfl,ωfr,ωrl,ωrrが入力され、ハンドル角センサ22からハンドル角θHが入力される。そして、例えば、以下の(1)式により、車両横運動の目標とする車両挙動としての目標横加速度(dy/dt)tを算出し、横加速度偏差算出部30bに出力する。
(dy/dt)t=(1/(1+A・V))・(V/l)・(θH/n)…(1)
ここで、Aはスタビリティファクタ、lはホイールベース、nはステアリングギヤ比である。
【0026】
横加速度偏差算出部30bは、横加速度センサ23から実際の横加速度(dy/dt)が入力され、目標横加速度算出部30aから目標横加速度(dy/dt)tが入力される。そして、以下の(2)式により、横加速度偏差Δ(dy/dt)を算出して目標ヨーモーメント算出部30cに出力する。
Δ(dy/dt)=(dy/dt)−(dy/dt)t …(2)
目標ヨーモーメント算出部30cは、ハンドル角センサ22からハンドル角θHが入力され、横加速度偏差算出部30bから横加速度偏差Δ(dy/dt)が入力される。
【0027】
そして、横加速度偏差の絶対値|Δ(dy/dt)|が予め設定しておいた第1の横加速度偏差閾値e1よりも大きく(|Δ(dy/dt)|>e1)、且つ、横加速度偏差Δ(dy/dt)とハンドル角θHが異符号の場合で、車両がアンダーステア傾向にある条件の場合には、車両に旋回方向へのヨーモーメントを付加する必要があると判定して、この付加ヨーモーメントを第1の付加ヨーモーメントMzt1として、例えば、以下の(3)式により、算出する。
Mzt1=GMZ1・Δ(dy/dt) …(3)
ここで、GMZ1は予め実験・計算等で設定しておいたヨーモーメントゲインである。
【0028】
また、上述の条件が成立せず、車両に旋回方向へのヨーモーメントを付加する必要がないと判定できる場合には、第1の付加ヨーモーメントMzt1を0に設定する。
【0029】
更に、目標ヨーモーメント算出部30cでは、以下のようにして、第1の付加ヨーモーメントMzt1に加えて車両に付加すべき第2の付加ヨーモーメントMzt2を算出する。すなわち、横加速度偏差の絶対値|Δ(dy/dt)|が予め設定しておいた第2の横加速度偏差閾値e2(>e1)よりも大きく(|Δ(dy/dt)|>e2)、且つ、横加速度偏差Δ(dy/dt)とハンドル角θHが異符号の場合で、車両がアンダーステア傾向にある条件の場合には、第1の付加ヨーモーメントMzt1に加えて車両に旋回方向へのヨーモーメントを付加する必要があると判定して、この付加ヨーモーメントを第2の付加ヨーモーメントMzt2として、例えば、以下の(4)式により、算出する。
Mzt2=GMZ2・Δ(dy/dt) …(4)
ここで、GMZ2は予め実験・計算等で設定しておいたヨーモーメントゲインである。
【0030】
また、上述の条件が成立せず、第1の付加ヨーモーメントMzt1に加えて車両に旋回方向へのヨーモーメントを付加する必要がないと判定できる場合には、第2の付加ヨーモーメントMzt2を0に設定する。
【0031】
尚、ここで、算出される第1の付加ヨーモーメントMzt1と第2の付加ヨーモーメントMzt2の詳細については、後述する。
【0032】
こうして、目標ヨーモーメント算出部30cで算出された第1の付加ヨーモーメントMzt1と第2の付加ヨーモーメントMzt2は、第1、2の制動力算出部30dに出力される。
【0033】
第1、2の制動力算出部30dは、目標ヨーモーメント算出部30cから第1の付加ヨーモーメントMzt1と第2の付加ヨーモーメントMzt2が入力される。そして、例えば、以下の(5)式により、旋回内側車輪に付加する制動力を第1の制動力FB1として算出し、また、例えば、以下の(6)式により、旋回内側車輪と旋回外側車輪との間の制動力差を変えることなく車両に付加する制動力を第2の制動力FB2として算出する。
FB1=|Mzt1|/(w/2) …(5)
ここで、wは、トレッドである。
【0034】
FB2=GFb・|Mzt2| …(6)
ここで、GFbは、制動力への換算ゲイン(所定値)である。こうして算出された第1の制動力FB1と第2の制動力FB2は、各輪の制動力算出部30hに出力される。
【0035】
ここで、第1の制動力FB1と第2の制動力FB2の差異を、図5により説明する。
図5の定常円旋回テストにおける横加速度とハンドル角比の特性説明図は、所定の一定の半径の円に沿って車両が旋回走行する際の、横加速度(dy/dt):横軸とハンドル角比(=ハンドル角θH/極低速でのハンドル角θH0):縦軸の特性の一例を示すもので、図5中の破線で示すラインL0は基準ステア特性のラインである。そして、この基準ステア特性のラインL0から、横加速度(dy/dt)が小さくなる方向に横軸に対して第1の横加速度偏差閾値e1だけ平行移動したラインがL1、第2の横加速度偏差閾値e2だけ平行移動したラインがL2となっている。
【0036】
通常の車両では、車速Vが高速になり横加速度(dy/dt)が大きくなっていくに従い、極低速でのハンドル角θH0よりもハンドル角θHを切り足さなければ、所定の一定の半径の円に沿って旋回走行することが困難になるため、ハンドル角比が大きくなっていく傾向にある。
【0037】
すなわち、一般の車両の特性では、破線Nsu0に示すように、横加速度(dy/dt)が大きくなると、タイヤコーナリングフォースの非線形性により、基準ステア特性のラインから外れ、横加速度(dy/dt)に対してハンドル角比がより大きな特性を描いていく。
【0038】
本実施の形態の制御では、基準ステア特性のラインL0から第1の横加速度偏差閾値e1だけ外れた点P1以降の状態となると、旋回内側前後輪にFBfi、FBriの制動力が発生されて第1の付加ヨーモーメントMzt1が付加され、車両のアンダーステア傾向が防止される。これにより車両の特性はNsu1で示すようなラインL1に近づいた特性に改善されることになる。
【0039】
そして、車両の特性がNsu1に改善されても、基準ステア特性のラインL0から第2の横加速度偏差閾値e2だけ外れた点P2以降の状態になると、上述の旋回内側前後輪の制動力FBfi、FBriに加え、旋回内側車輪と旋回外側車輪との間の制動力差を変えることなく4輪に制動力が発生されて、第2の付加ヨーモーメントMzt2が付加されて、車両のアンダーステア傾向が防止される。これにより車両の特性はNsu2で示すようなラインL2に近づいた特性に改善されることになる。
【0040】
左右輪間車輪速差算出部30eは、4輪車輪速センサ21fl,21fr,21rl,21rrから4輪車輪速ωfl,ωfr,ωrl,ωrrが入力される。そして、例えば、以下の(7)式により、車両の左右輪間車輪速差(スリップ量)Δωを算出して左右輪間車輪速差判定部30fに出力する。
Δω=max(ωfi,ωri)−max(ωfo,ωro) …(7)
ここで、ωfiは旋回内側前輪の車輪速、ωriは旋回内側後輪の車輪速、ωfoは旋回外側前輪の車輪速、ωroは旋回外側後輪の車輪速であり、max(ωfi,ωri)は、ωfiとωriの大きな方の値、max(ωfo,ωro)は、ωfoとωroの大きな方の値である。この車両の左右輪間車輪速差(スリップ量)Δωは、左右輪間車輪速差判定部30fに出力される。
【0041】
左右輪間車輪速差判定部30fは、左右輪間車輪速差算出部30eから車両の左右輪間車輪速差(スリップ量)Δωが入力される。そして、車両の左右輪間車輪速差(スリップ量)の絶対値|Δω|と予め設定した値e3とを比較して、車両の左右輪間車輪速差(スリップ量)の絶対値|Δω|がe3よりも大きい場合(|Δω|>e3の場合)は、前後駆動力配分制御部31aにトランスファクラッチスリップ防止制御指令の信号を出力して、トランスファクラッチ15を略直結状態とさせる。また、左右輪間車輪速差判定部30fは、車両の左右輪間車輪速差(スリップ量)の絶対値|Δω|と予め設定した値e3との比較結果を、第3の制動力算出部30gに出力する。
【0042】
第3の制動力算出部30gは、左右輪間車輪速差判定部30fから車両の左右輪間車輪速差(スリップ量)の絶対値|Δω|と予め設定した値e3との比較結果、及び、車両の左右輪間車輪速差(スリップ量)Δωが入力される。そして、車両の左右輪間車輪速差(スリップ量)の絶対値|Δω|がe3よりも大きい場合(|Δω|>e3の場合)は、例えば、以下の(8)式により、スリップ補正値Δωdを算出する。
Δωd=Δω−e3・(Δω/|Δω|) …(8)
また、|Δω|>e3以外の場合は、スリップ補正値Δωdを0に設定する。
【0043】
左右輪間車輪速差判定部30fは、算出(設定)したスリップ補正値Δωdを基に、例えば、以下の(9)式により、左右輪間(旋回内側車輪と旋回外側車輪との間)で生じるスリップを補正する制動力(旋回内側前後輪に付加する制動力の和)を第3の制動力FB3として算出し、各輪の制動力算出部30hに出力する。
FB3=GFd・Δωd …(9)
ここで、GFdは、予め設定しておいた制動力への換算ゲイン(所定値)である。
【0044】
各輪の制動力算出部30hは、第1、2の制動力算出部30dから第1の制動力FB1と第2の制動力FB2が入力され、第3の制動力算出部30gから第3の制動力FB3が入力される。そして、例えば、以下の(10)、(11)式により旋回外側車輪の制動力(旋回外側前輪の制動力FBfo、旋回外側後輪の制動力FBro)、旋回内側車輪の制動力(旋回内側前輪の制動力FBfi、旋回内側後輪の制動力FBri)を算出して、各輪のブレーキ液圧算出部30iに出力する。
FBfo=FBro=FB2/2+max(−FB3,0) …(10)
FBfi=FBri=FB1+FB2/2+max(FB3,0) …(11)
ここで、max(−FB3,0)は、−FB3と0の大きな方の値、max(FB3,0)は、FB3と0の大きな方の値である。
【0045】
各輪のブレーキ液圧算出部30iは、各輪の制動力算出部30hから、各輪の制動力FBfo、FBro、FBfi、FBriが入力される。そして、例えば、以下の(12)、(13)式により、各輪のブレーキ液圧(旋回外側前輪ブレーキ液圧PBfo、旋回内側前輪ブレーキ液圧PBfi、旋回外側後輪ブレーキ液圧PBro、旋回内側後輪ブレーキ液圧PBri)を算出してブレーキ制御部32aに出力する。
PBfo=PBro=FBfo・CB=FBro・CB …(12)
PBfi=PBri=FBfi・CB=FBri・CB …(13)
ここで、CBはブレーキ諸元(ホイールシリンダ径等)によって定まる定数である。
【0046】
上述の(10)、(11)式からも明らかなように、本実施の形態では、図6に示すように、まず、横加速度偏差の絶対値|Δ(dy/dt)|が第1の横加速度偏差閾値e1以上となって、第1の付加ヨーモーメントMzt1を付加する状況となると、旋回内側前後輪にFBfi、FBriの制動力が発生される(図5中、Cv1の状態)。
【0047】
その後、横加速度偏差の絶対値|Δ(dy/dt)|が第2の横加速度偏差閾値e2以上となって、第2の付加ヨーモーメントMzt2を付加する状況となると、上述の旋回内側前後輪の制動力FBfi、FBriに加え、旋回内側車輪と旋回外側車輪との間の制動力差を変えることなく4輪に制動力が発生される(図5中、Cv2の状態)。
【0048】
この際、車輪のスリップを防止するための制動力FB3は、何れの制動力も付加されていない状態、旋回内側前後輪にのみ制動力が付加されている状態、全ての車輪に制動力が付加されている状態の何れの状態においても、車両のスリップ状態に応じて付加される。この車輪のスリップを防止するための制動力FB3が付加される場合には、トランスファクラッチ15を略直結状態とさせて、前後軸間の差回転を抑止してスリップを確実に防止するようになっている。
【0049】
そして、上述の(10)〜(13)式に示すように、左側の前後輪に付加する制動力と右側の前後輪に付加する制動力の大きな方の制動力の側の前輪と後輪のブレーキ液圧が同じ値に設定される(すなわち、PBfi=PBri、或いは、PBfo=PBro)ようになっている(尚、本実施の形態では、左側の前後輪に付加する制動力と右側の前後輪に付加する制動力の小さな方の制動力の側の前輪と後輪のブレーキ液圧も同じ値に設定される)。このため、図3に示すような、ハイドロリックユニットで構成されるブレーキ駆動部32bにおいて、高圧輪側の昇圧弁は開放状態として、モータ45の吐出圧をモータ回転数のみで制御することができるので、ブレーキ駆動部32bの各弁の作動や駆動系振動等による振動騒音の悪化を抑制することができるようになるのである。
【0050】
次に、上述の制御ユニット30で実行される車両挙動制御プログラムを、図4のフローチャートで説明する。
まず、ステップ(以下、「S」と略称)S101で、必要パラメータ、すなわち、4輪車輪速ωfl,ωfr,ωrl,ωrr、ハンドル角θH、車体横加速度(dy/dt)等の各信号を読み込む。
【0051】
次に、S102に進み、目標横加速度算出部30aで、例えば、前述の(1)式により、車両横運動の目標とする車両挙動としての目標横加速度(dy/dt)tを算出する。
【0052】
次いで、S103に進み、横加速度偏差算出部30bで、前述の(2)式により、横加速度偏差Δ(dy/dt)を算出する。
【0053】
次に、S104に進み、目標ヨーモーメント算出部30cで、横加速度偏差の絶対値|Δ(dy/dt)|が予め設定しておいた第1の横加速度偏差閾値e1よりも大きく(|Δ(dy/dt)|>e1)、且つ、横加速度偏差Δ(dy/dt)とハンドル角θHが異符号の場合で、車両がアンダーステア傾向にある条件の場合には、車両に旋回方向へのヨーモーメントを付加する必要があると判定して、この付加ヨーモーメントを第1の付加ヨーモーメントMzt1として、例えば、上述の(3)式により、算出する。また、上述の条件が成立せず、車両に旋回方向へのヨーモーメントを付加する必要がないと判定できる場合には、第1の付加ヨーモーメントMzt1を0に設定する。
【0054】
次いで、S105に進み、目標ヨーモーメント算出部30cで、横加速度偏差の絶対値|Δ(dy/dt)|が予め設定しておいた第2の横加速度偏差閾値e2(>e1)よりも大きく(|Δ(dy/dt)|>e2)、且つ、横加速度偏差Δ(dy/dt)とハンドル角θHが異符号の場合で、車両がアンダーステア傾向にある条件の場合には、第1の付加ヨーモーメントMzt1に加えて車両に旋回方向へのヨーモーメントを付加する必要があると判定して、この付加ヨーモーメントを第2の付加ヨーモーメントMzt2として、例えば、上述の(4)式により、算出する。また、上述の条件が成立せず、第1の付加ヨーモーメントMzt1に加えて車両に旋回方向へのヨーモーメントを付加する必要がないと判定できる場合には、第2の付加ヨーモーメントMzt2を0に設定する。
【0055】
次に、S106に進み、左右輪間車輪速差算出部30eで、例えば、上述の(7)式により、車両の左右輪間車輪速差(スリップ量)Δωを算出する。
【0056】
次いで、S107に進み、左右輪間車輪速差判定部30fは、車両の左右輪間車輪速差(スリップ量)の絶対値|Δω|と予め設定した値e3とを比較する。この比較の結果、車両の左右輪間車輪速差(スリップ量)の絶対値|Δω|がe3よりも大きい場合(|Δω|>e3の場合)は、前後駆動力配分制御部31aにトランスファクラッチスリップ防止制御指令の信号を出力して、トランスファクラッチ15を略直結状態とさせて、S109に進む。また、|Δω|≦e3の場合は、そのまま、S109に進む。
【0057】
S107、或いは、S108からS109へと進むと、第1、2の制動力算出部30dで、例えば、上述の(5)式により、旋回内側車輪に付加する制動力を第1の制動力FB1として算出する。
【0058】
その後、S110に進み、第1、2の制動力算出部30dで、例えば、上述の(6)式により、旋回内側車輪と旋回外側車輪との間の制動力差を変えることなく車両に付加する制動力を第2の制動力FB2として算出する。
【0059】
次いで、S111に進むと、第3の制動力算出部30gで、車両の左右輪間車輪速差(スリップ量)の絶対値|Δω|がe3よりも大きい場合(|Δω|>e3の場合)は、例えば、上述の(8)式により、スリップ補正値Δωdを算出する。また、|Δω|>e3以外の場合は、スリップ補正値Δωdを0に設定する。
【0060】
そして、左右輪間車輪速差判定部30fで、算出(設定)したスリップ補正値Δωdを基に、例えば、上述の(9)式により、左右輪間(旋回内側車輪と旋回外側車輪との間)で生じるスリップを補正する制動力(旋回内側前後輪に付加する制動力の和)を第3の制動力FB3として算出する。
【0061】
次に、S112に進み、各輪の制動力算出部30hで、上述の(10)、(11)式により旋回外側車輪の制動力(旋回外側前輪の制動力FBfo、旋回外側後輪の制動力FBro)、旋回内側車輪の制動力(旋回内側前輪の制動力FBfi、旋回内側後輪の制動力FBri)を算出する。
【0062】
次いで、S113に進んで、各輪のブレーキ液圧算出部30iで、上述の(12)、(13)式により、各輪のブレーキ液圧(旋回外側前輪ブレーキ液圧PBfo、旋回内側前輪ブレーキ液圧PBfi、旋回外側後輪ブレーキ液圧PBro、旋回内側後輪ブレーキ液圧PBri)を算出してブレーキ制御部32aに出力してプログラムを抜ける。
【0063】
このように、本発明の実施の形態によれば、車速V、ハンドル角θHに基づいて車両横運動の目標とする車両挙動としての目標横加速度(dy/dt)tを算出し、この目標横加速度(dy/dt)tと実際の横加速度(dy/dt)とに基づいて車両に付加すべき第1、第2の付加ヨーモーメントMzt1、Mzt2を算出し、第1、第2の付加ヨーモーメントMzt1、Mzt2に基づいて第1、第2の制動力FB1、FB2を算出する。更に、車両の左右輪間車輪速差(スリップ量)Δωを算出し、該車両の左右輪間車輪速差(スリップ量)の絶対値|Δω|が予め設定した値e3より大きい場合に、該車両の左右輪間車輪速差(スリップ量)Δωに基づいて車両に付加する第3の制動力FB3を算出する。そして、これら第1、第2、第3の制動力FB1、FB2、FB3に基づいて各輪に付加する制動力を、少なくとも左側の前後輪に付加する制動力と右側の前後輪に付加する制動力の大きな方の制動力の側の前輪と後輪のブレーキ液圧を同じ値となるように設定してブレーキ制御部32aに対して出力する。この際、第3の制動力FB3を出力する際には、トランスファクラッチ15を略直結状態とさせる。このため、図3に示すような、ハイドロリックユニットで構成されるブレーキ駆動部32bにおいて、高圧輪側の昇圧弁は開放状態として、モータ45の吐出圧をモータ回転数のみで制御することができるので、ブレーキ駆動部32bの各弁の作動や駆動系振動等による振動騒音の悪化を抑制することができ、特別な対策や構造の変更を必要とすることなく、ブレーキを用いて車両挙動制御する際の油圧系や駆動系の振動騒音の発生を低減させることが可能となる。
【0064】
尚、本発明の実施の形態では、車両横運動の目標とする車両挙動として目標目標横加速度(dy/dt)tを用いて、この目標横加速度(dy/dt)tと実際の横加速度(dy/dt)を基に、第1の付加ヨーモーメントMzt1、第2の付加ヨーモーメントMzt2を算出するようになっているが、例えば、以下の(14)式により、目標ヨーレートγtを算出し、この目標ヨーレートγtと実際のヨーレートγ(ヨーレートセンサからの検出値)を基に、ヨーレート偏差Δγを求めて第1の付加ヨーモーメントMzt1、第2の付加ヨーモーメントMzt2を算出するようにしても良い。
γt=(1/(1+A・V))・(V/l)・(θH/n) …(14)
また、本発明の実施の形態では、旋回内側車輪に第1の制動力FB1を付加することにより、第1の付加ヨーモーメントMzt1を発生させるようになっているが、これは、旋回外側車輪の制動力を0とする場合の例であり、他に、旋回内側車輪に付加する制動力と旋回外側車輪に付加する制動力との間に所定の制動力差を設けて第1の付加ヨーモーメントMzt1を発生させる制御においても同様に適用できる。
【0065】
更に、本発明の実施の形態では、第1、第2、第3の制動力FB1、FB2、FB3を算出し、これら第1、第2、第3の制動力FB1、FB2、FB3に基づいて各輪に付加する制動力を求めるようにしているが、これに限ることなく、たとえば、第1、第2、第3の制動力FB1、FB2、FB3の何れか一つ、或いは、何れか2つの制動力に基づいて各輪に付加する制動力を求める場合についても本発明が適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0066】
1 エンジン
2 自動変速装置
3 トランスファ
14fl、14fr、14rl、14rr 車輪
15 トランスファクラッチ
17fl,17fr,17rl,17rr ホイールシリンダ
21fl、21fr、21rl、21rr 車輪速センサ(運転状態検出手段)
22 ハンドル角センサ(運転状態検出手段)
23 横加速度センサ(運転状態検出手段)
30 制御ユニット(制動力算出手段、制動制御手段)
30a 目標横加速度算出部
30b 横加速度偏差算出部
30c 目標ヨーモーメント算出部
30d 第1、2の制動力算出部
30e 左右輪間車輪速差算出部
30f 左右輪間車輪速差判定部
30g 第3の制動力算出部
30h 各輪の制動力算出部
30i 各輪のブレーキ液圧算出部
31a 前後駆動力配分制御部
31b トランスファクラッチ駆動部
32a ブレーキ制御部
32b ブレーキ駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転状態を検出する運転状態検出手段と、
上記運転状態に基づいて車両の左側の前後輪に付加する制動力と右側の前後輪に付加する制動力を算出する制動力算出手段と、
上記左側の前後輪に付加する制動力と上記右側の前後輪に付加する制動力の大きな方の制動力の側の前輪と後輪のブレーキ液圧を同じ値に設定して制動制御する制動制御手段とを備えたことを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項2】
上記制動力算出手段は、少なくとも上記車両の運転状態に基づいて車両横運動の目標とする車両挙動を算出し、上記車両横運動の実際の車両挙動を検出して、上記車両横運動の目標とする車両挙動と上記車両横運動の実際の車両挙動とに基づいて車両に付加すべきヨーモーメントを算出し、該付加ヨーモーメントに基づいて上記車両の左側の前後輪に付加する制動力と上記右側の前後輪に付加する制動力を算出することを特徴とする請求項1記載の車両挙動制御装置。
【請求項3】
上記制動力算出手段は、少なくとも上記車両の運転状態に基づいて車両の左右輪間のスリップ量を算出し、該スリップ量に基づいて上記車両の左側の前後輪に付加する制動力と上記右側の前後輪に付加する制動力を算出することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両挙動制御装置。
【請求項4】
前後軸間の駆動力配分を可変制御自在な前後駆動力配分制御手段を有し、
上記制動力算出手段が、上記スリップ量に基づいた制動力を設定して上記制動制御手段で制動制御する場合は、上記前後駆動力配分制御手段は、上記前後軸間を略直結とすることを特徴とする請求項3記載の車両挙動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−71663(P2013−71663A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213122(P2011−213122)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】