説明

車両用ウインドウ制御システム

【課題】 車両状況に応じて車両の防犯レベルを増すことができる車両用ウインドウ制御システムを提供する。
【解決手段】 車両用ウインドウ制御システム1において、1つの窓枠8に対し、第一の窓開閉体2と、これに重なる形で配置される第二の窓開閉体3とが配置されるとともに、車両にて所定条件が成立すると、これらを独立に駆動する駆動部22,23のいずれか又は双方に対し、車両の防犯レベルが増すような駆動モードが設定され、それに従う駆動制御が実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ウインドウ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平8−25961号公報
【特許文献2】特開平10−114218号公報
【0003】
従来、車両の盗難や車上狙いを防止する車両用防犯装置が知られている。こうした装置では、ユーザーがセキュリティをセット状態とすることにより警戒動作が開始される。そして、警戒動作中にドアやトランクが抉じ開けられたり、フロントガラスが割られたりすると、タイヤに始動ロックを施したり、燃料噴射装置を制御したりして車両を走行不能もしくは走行困難することにより盗難を防止する。また、警報出力によって第三者に異常発生を報知するものもある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両への侵入するに際し最も狙われる箇所が車両の窓ガラスである。しかしながら、窓ガラスは乗員の脱出ということを想定してある程度の割れやすさも必要であるから、窓ガラスの強度を単純に増すことによって車両の盗難や車上狙いを防止することは難しい。
【0005】
特許文献1及び2には、窓ガラスを2枚設け、一方を通常用の窓ガラス、他方を遮光用の窓ガラスとする技術が開示されている。車室内における保温性を高めることができるとともに、遮光性の強化により車室内のプライバシーを守るという効果を達成している。ただし、上記のような割れ易さを考慮するのであれば、これを実現するためには、双方の窓ガラスの強度設定を再検討しなければならない。
【0006】
本発明は、車両状況に応じて車両の防犯レベルを増すことができる車両用ウインドウ制御システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の車両用ウインドウ制御システムは、
車両の所定の窓枠に対し開閉可能に設けられる第一の窓開閉体と、
第一の窓開閉体を開閉駆動する第一駆動部と、
第一の窓開閉体に重なる形で、所定の窓枠に対し開閉可能に設けられる第二の窓開閉体と、
第二の窓開閉体を、第一の窓開閉体とは独立に開閉駆動する第二駆動部と、
車両における予め定められたセキュリティ強化実行条件の成立判定に必要とされる判定情報を取得する判定情報取得手段と、
取得された判定情報に基づいて、セキュリティ強化実行条件の成立判定を行う条件成立判定手段と、
第一駆動部及び第二駆動部に対し予め定められたそれぞれの通常駆動モードを設定し、設定された各駆動モードに従いそれら各駆動部の駆動制御を実行する通常制御モードが自身に設定されている状態にて、セキュリティ強化実行条件が成立した場合には、当該通常制御モードよりも車両の防犯レベルが増すように第一駆動部及び第二駆動部のうち少なくとも一方に対し通常駆動モードとは異なるセキュリティ強化駆動モードを設定し、設定された各駆動モードに従いそれら各駆動部の駆動制御を実行するセキュリティ強化制御モードに制御モードを切り替える駆動制御手段と、
を特徴とする。
【0008】
上記本発明の構成によれば、車両のセキュリティを強化すべき条件が成立した場合に、車両の窓開閉体(窓ガラス等)をより防犯レベルが増すように駆動して、盗難や車上狙いに備えることができる。
【0009】
また、本発明において、駆動制御手段は、通常制御モードにおいて、第一駆動部には、通常駆動モードとして第一の窓開閉体の開閉駆動を許可する駆動モードを設定し、かつ第二駆動部には、通常駆動モードとして第二の窓開閉体を全開状態に保持する駆動モードを設定するように構成できる。これにより、通常時使用する第一の窓開閉体と使用しない第二の窓開閉体を区別して備えることができるので、例えば、第二の窓開閉体を、用途に応じた素材のものとすることができる。また、第二の窓開閉体はあくまで非常時に使用されるものとするならば、これに与えられる機能を第一の窓開閉体よりも落として設定し、コストダウンを図ることもできる。
【0010】
さて、本発明において、駆動制御手段は、セキュリティ強化制御モードにおいて、少なくとも第二駆動部に、セキュリティ強化駆動モードとして第二の窓開閉体を全閉状態に保持する駆動モードを設定することができる。これにより、通常使用されない窓開閉体を使用する形で防犯レベルを増すことができる。さらには、セキュリティ強化制御モードにおいて、第一駆動部だけでなく第二駆動部にも、セキュリティ強化駆動モードとして第二の窓開閉体を全閉状態に保持する駆動モードを設定すれば、窓開閉体の多重構造が形成されるので、防犯レベルをより増すことができる。
【0011】
このように窓開閉体の多重構造を実現する場合には、セキュリティ強化実行条件に含まれる前提条件を成立させるための前提条件成立用操作を行うための前提条件成立用操作部を設けることができ、その上で、判定情報取得手段が、前提条件成立用操作部への操作状態情報を判定情報の1つとして取得し、さらに、条件成立判定手段が、前提条件成立用操作がなされたことが前提条件として含まれたセキュリティ強化実行条件の成立を判定するように構成できる。この構成によると、ユーザーの意図的な操作により窓開閉体の多重構造の実施が許可される構成となるので、ユーザーが必要ないと判断する時に窓開閉体が強化されることはない。なお、条件成立判定手段は、前提条件成立用操作がなされた場合にセキュリティ強化実行条件が成立したと判定するようにしてもよい。
【0012】
また、窓開閉体の多重構造を実現する場合には、車両の停車状態を検出する停車検出手段を設けることができ、その上で、判定情報取得手段が、停車検出手段の検出結果情報を車両状態情報の1つとして取得し、条件成立判定手段が、車両の停車状態が前提条件として含まれたセキュリティ強化実行条件の成立を判定するように構成することができる。この構成によると、少なくとも車両走行中においては窓が割りにくい状況が生じない。つまり、車両停車状態においては、窓を割らなければならない緊急な状況への急変は生じにくいので、上記構成では、そうした安定な状況を作った上で、窓開閉体の強化、即ち多重構造の実施が許可されるようにできる。
【0013】
ところで、本発明においては、車室内への不正侵入行為ないし車両盗難行為を検知するための車両不正行為検知手段と、警報出力手段と、所定のセキュリティ状態設定操作部への操作に基づいて警報出力手段による警報出力を許可するセキュリティセット状態と当該警報出力を禁止するセキュリティアンセット状態との間で切り替えるセキュリティ状態切替設定手段と、セキュリティセット状態おいて不正侵入行為ないし車両盗難行為が検知された場合に警報出力手段による警報出力を実行する警報出力制御手段と、を有した車両用警報装置を設けることができ、このときのセキュリティ状態設定操作部が、上記した前提条件成立用操作部に兼用され、セキュリティセット操作が上記した前提条件成立用操作となるように構成できる。この構成によると、余計な操作部を設けることなく上記した前提条件成立用操作が可能となる。また、車室内への不正侵入行為ないし車両盗難行為が検知された際には、窓開閉体の強化(窓開閉体の多重化)と同時に警報出力も実施されるので、より効果的な防犯状況を作り出すことができる。
【0014】
また、本発明において、車室内への不正侵入行為ないし車両盗難行為を検知するための車両不正行為検知手段を設けることができる。この場合、判定情報取得手段が、車両不正行為検知手段の検知結果情報を判定情報として取得し、条件成立判定手段が、当該前提条件が成立し、かつ不正侵入行為ないし車両盗難行為が検知された場合に、セキュリティ強化実行条件が成立したと判定するように構成できる。この構成によると、車室内への不正侵入行為ないし車両盗難行為が検知された場合のような、セキュリティ強化が必要となった時に限り窓開閉体の強化が図られる。このため、無駄なセキュリティ強化動作を省略できる。なお、ここでの不正侵入行為検知手段は、上記車両用警報装置のものに兼用させることができる。
【0015】
また、本発明において、車両の予め定められた車両周辺領域内に侵入する接近者を検知する接近者検知手段を設けることができる。この場合、条件成立判定手段が、前提条件が成立し、かつ接近者が検知された場合に、セキュリティ強化実行条件が成立したと判定するように構成できる。この構成によると、車両に不審者が接近した場合のような、セキュリティ強化が必要となった時に限り窓開閉体の強化が図られる。このため、無駄なセキュリティ強化動作を省略できる。
【0016】
通常制御モードにおいて、第一駆動部に第一の窓開閉体の開閉駆動を許可する駆動モードを設定し、かつ第二駆動部に第二の窓開閉体を全開状態に保持する駆動モードを設定する構成で、かつ、セキュリティ強化制御モードにおいて、少なくとも第二駆動部に、セキュリティ強化駆動モードとして第二の窓開閉体を全閉状態に保持する駆動モードを設定する構成においては、第二の窓開閉体を、第一の窓開閉体よりも高強度な材料にて形成しておくことができる。また、同様の構成において、第二の窓開閉体を、第一の窓開閉体よりも遮光性の高い材料にて形成しておくことができる。この構成では、通常時使用する第一の窓開閉体と通常時に使用しない第二の窓開閉体とが決められていて、第二の窓開閉体が、第一の窓開閉体との多重配置にのみ使用される構成を前提としている。つまり、第二の窓開閉体が基本的には開いたままとされる構成である。このような場合、基本的に開いたままの第二の窓開閉体を割らなければならない状況は生じ難い。従って、その使用用途が防犯性の向上ということであるならば、第二の窓開閉体をより防犯性能の高い材料としておくことは望ましいことである。また、第二の窓開閉体が高強度の材料である場合は、あえて第一の窓開閉体に重ねずとも、セキュリティ強化実行条件成立時に少なくとも当該第二の窓開閉体が全閉状態を保持するようにしてもよい。
【0017】
ところで、本発明においては、第一の窓開閉体の破損を検出する窓開閉体破損検出手段を設けることができる。この場合、条件成立判定手段が、第一の窓開閉体の破損をセキュリティ強化実行条件の成立として検出し、駆動制御手段が、当該セキュリティ強化実行条件が成立した場合には、第二駆動部にセキュリティ強化駆動モードとして第二の窓開閉体の少なくとも閉駆動を許可する駆動モードを設定するセキュリティ強化制御モードに、自身の制御モードを切り替えるように構成できる。この構成によると、窓開閉体が破損して車両のセキュリティレベルが低下した場合に、もう一つの窓開閉体を閉じることができるようになる。これにより、窓の修理のためにディーラーまで運転する際に、少なくとも窓を閉めた状態とすることができるので、車外の風などの影響を受けることなく、スムーズに運転することが可能となる。なお、車両停車、前提条件成立用操作を前提条件とし、その上での窓開閉体の破損をセキュリティ強化実行条件の成立として検出するようにしてもよい。
【0018】
また、この場合の駆動制御手段は、セキュリティ強化実行条件が成立した場合には、第二駆動部にセキュリティ強化駆動モードとして第二の窓開閉体の開閉駆動を許可する駆動モードを設定するセキュリティ強化制御モードに、自身の制御モードを切り替えるように構成してもよい。この構成によると、窓開閉体が破損すると、それに代わる窓開閉体が使用可能となる。
【0019】
なお、この場合の駆動制御手段は、セキュリティ強化実行条件が成立した場合には、第二駆動部に、セキュリティ強化駆動モードとして第二の窓開閉体を全閉状態にて保持する駆動モードを設定するセキュリティ強化制御モードに切り替えるように構成してもよい。この構成によると、窓開閉体が破損すると、それに代わる窓開閉体を確実に閉状態とすることができ、車外の風などの影響を受けることなく、スムーズに運転することが可能となる。さらに、開けることができない不自由さをユーザーに感じさせることができるので、ユーザーに修理を促すという効果も期待できる。
【0020】
なお、ユーザーに修理を促すという効果を実現するためには、上記のように破損していない第二の窓開閉体を閉じたまま保持してしまうという方法のように、第二の窓開閉体の機能を、通常使用する第一の窓開閉体の機能よりも劣るようにして、不自由さを感じさせるようにすればよい。例えば、全閉位置と全開位置との中間位置で静止できないようにする等、駆動機能をより単純なものにする方法である。具体的には、第二駆動部を、第二の窓開閉体の駆動機能レベルが、第一の窓開閉体の駆動機能レベルよりも劣るものとする方法がある。また、駆動制御手段による駆動制御内容を、第二の窓開閉体の駆動機能レベルが第一の窓開閉体の駆動機能レベルよりも劣るようにそれぞれ定める方法もある。
【0021】
なお、第一の窓開閉体の代替として使用される第二の窓開閉体は、あくまで第一の窓開閉体の代替として使用されるのであるから、第一の窓開閉体と同じ又は同等の遮光性及び強度を有した材料にて形成されていることが望ましい。
【0022】
ところで、本発明においては、可搬型の携帯機を構成に含むことができる。この場合、車両には、セキュリティ強化実行条件が成立した場合に、当該セキュリティ強化実行条件の成立情報を、車外に無線送信する成立情報送信手段を設け、他方、携帯機には、成立情報を無線受信する成立情報受信手段と、該成立情報を受信した場合にセキュリティ強化実行条件の成立を報知する報知手段と、を設けることができる。これにより、車両の危険な状況をユーザーが遠隔地にて把握することが可能となる。
【0023】
また、この場合、携帯機は、セキュリティ強化制御モード実行操作部と、当該セキュリティ強化制御モード実行操作部による操作に伴い駆動制御手段に設定されている制御モードをセキュリティ強化制御モードに切り替えるモード切替情報を無線送信するモード切替情報送信手段と、を備えるを設けることができる。一方、車両には、当該モード切替情報を(車外から)無線受信するモード切替情報受信手段を設けて、駆動制御手段を、セキュリティ強化実行条件が成立した場合に、モード切替情報の受信に基づいて、自らの制御モードをセキュリティ強化制御モードに切り替えるように構成できる。これにより、車両の危険な状況をユーザーが把握した上で、セキュリティ強化制御モードへの切り替えが可能となる。ユーザーの判断で切り替えられるから、無駄なモード切替を省略できる。
【0024】
また、この場合、窓開閉体破損検出手段、接近者検知手段、車両不正行為検知手段等の判定情報取得手段が撮影手段を有して構成され、その撮影画像から、窓開閉体の破損検知、接近者検知、不正侵入行為ないし車両盗難行為の検知を行うものであった場合には、当該撮影画像を、携帯機上で画面表示する表示手段を設けておけば、その撮影映像を見た上で、適切にモード切替を行うことも可能となる。
【0025】
なお、当該携帯機上に前提条件成立用操作部を設けることもできる。具体的には、携帯機に、当該前提条件成立用操作部への操作に伴い前提条件成立情報を無線送信する前提条件成立情報送信手段を設ける一方で、車両に、当該前提条件成立情報を無線受信する前提条件成立情報受信手段を設け、条件成立判定が、前提条件成立情報の受信に基づく形で、セキュリティ強化実行条件の成立を判定するように構成できる。これにより、車外から前提条件を成立させることが可能となる。
【0026】
また、当該携帯機は、携帯電話機やスマートキー等の車両用携帯機とすることができる。既存の携帯機への機能付加により実現することで、ユーザーが別途携帯機を所持する手間を省くことができる。
【0027】
また、本発明においては、所定の窓枠には、第一の窓開閉体と、複数の第二の窓開閉体とを重なる形で設けることができる。具体的にいえば、それら複数の第二の窓開閉体のうち、第一のものとして、上記で既に述べたような、セキュリティ強化制御モードにおいて窓開閉体の強度を増すように機能する第二の窓開閉体(重ね配置用窓開閉体)を有し、さらにそれとは別の第二のものとして、上記で述べたような、第一の窓開閉体の代替として使用される第二の窓開閉体(破損代替用窓開閉体)とを有するように構成できる。この構成によると、用途に応じて第二の窓開閉体を使い分けることができる。さらには、これら用途ごとに適した条件の材料にて窓開閉体を構成すれば、各用途における効果が増す。例えば重ね配置用窓開閉体であれば、第一の窓開閉体より強度が高い、遮光性に優れるような材料、破損代替用窓開閉体であれば第一の窓開閉体と強度、遮光性が同等のもの材料とすることができる。
【0028】
ところで、本発明における駆動制御手段は、自らの制御モードがセキュリティ強化制御モードに切り替えられている状態において、予め定められた通常制御モード復帰操作がなされた場合に、通常制御モードに復帰するものとすることができる。この構成によると、一度セキュリティ強化成立条件が成立した場合には、それを解除するためのユーザー操作があるまでセキュリティ強化制御モードが保持されるので、セキュリティ強化成立条件が解消される度に開閉駆動が実行され、バッテリー電力の消費を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0030】
図1は、本発明の車両用ウインドウ制御システムの構成を示すブロック図である。図1に示す本実施形態における車両用ウインドウ制御システム1は、ECU10と、車両(ここでは自動車)の各座席に対応するドアに設けられた窓開閉体(窓ガラス)を開閉駆動するための駆動部20と、当該駆動部20を駆動するための開閉操作部30とを備えて構成されており、開閉操作部30への操作に基づいて、ECU10が駆動部20の駆動制御を実行する。
【0031】
駆動部20は、対応する窓開閉体の開閉駆動を実行するモータであり、車両(ここでは自動車)の各座席に対応するドア毎に設けられている。ただし、本発明においては、図2及び図3に示すように、複数の窓開閉体2,3が、ドア7に設けられた窓枠(開口部)8内にて、全閉状態で車両内外に重なるように取り付けられている。このため、それぞれに駆動部22,23が設けられている。本実施形態においては、2枚の窓開閉体2,3が設けられており、車両外側に位置する第一の窓開閉体(第一窓ガラス)2が第一駆動部22によって開閉駆動され、他方、車両内側に位置する第二の窓開閉体(第二窓ガラス)3が第二駆動部23によって開閉駆動されるようになっている。第一駆動部22及び第二駆動部23は、双方の窓開閉体2,3をそれぞれ独立に開閉駆動するものである。
【0032】
ただし、ECU10が通常制御モードを実行している場合には、第一の窓開閉体2のみ開閉駆動が可能となり、他方の第二の窓開閉体3は、開状態を保持し続ける。つまり、ECU10は、通常時の制御モード(以下、通常制御モードという)においては、第一駆動部22に対し第一の窓開閉体2の開閉駆動を許可する駆動モードを通常駆動モードとして設定する一方で、第二駆動部23に対し第二の窓開閉体を全開状態に保持する駆動モードを設定する。そして、各駆動部22,23に設定された各々の通常駆動モードに従う形で、それぞれを独立に駆動制御している。このため、車両走行中等の通常時には、通常の車両と同様、一枚の窓開閉体のみが開閉するようになっている。
【0033】
開閉操作部30は、各窓枠(開口部)8毎に設けられている。ここでは、車両の各座席に着座しているユーザーによって操作可能となるように、各座席に対応するドアに設けられており、ウインドウ昇降操作を行なうためのUpスイッチ及びDownスイッチを備えている。なお、本実施形態においては、ユーザーによる開閉操作部30への開閉操作により開閉可能な窓開閉体は第一の窓開閉体2である。
【0034】
なお、第一駆動部22及び第二駆動部23からなる駆動部20は21A〜21Dまで存在しており、符号A〜Dが各座席との対応関係を示している。同様に、開閉操作部30も、30A〜30Dまで存在しており、符号A〜Dが各座席との対応関係を示している。つまり、駆動部21Aと開閉操作部30Aとは同じ座席に対応して設けられており、開閉操作部30への開閉操作により駆動部21Aの第一駆動部22が駆動するようになっている。
【0035】
ECU10は、本実施形態においてはパワーウインドウ駆動用のECUであり、CPU,ROM,RAM、I/O(Input/Output)、及びこれらを接続するバスライン等を備えてなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、ROM等の記憶部に記憶された所定のプログラムをCPUが実行する形で、パワーウィンドウ駆動用の各種機能並びに本発明に係る機能を実現する。
【0036】
ECU10は、各開閉操作部30(30A〜30D)及び各駆動部20(21A〜21D)と接続している。上記した通常制御モードにおいては、各開閉操作部30からの操作入力を受けて、これに基づいて、対応する第一駆動部21を開閉駆動する。本実施形態においては、開閉操作部30の操作に応じて、第一の窓開閉体2を、全閉位置から全開位置にかけての任意の位置に保持することができる。
【0037】
ところで、本実施形態において、ECU10は、警報機(警報出力手段)50、セキュリティセット操作部(セキュリティ状態設定操作部)51、車室内への不正侵入行為ないし車両盗難行為を検知するためのセンサ部(車両不正行為検知手段)52と接続している。そして、ECU10は、セキュリティセット操作部51への操作に基づいて警報機50による警報出力を許可するセキュリティセット状態と当該警報出力を禁止するセキュリティアンセット状態との間で切り替えるセキュリティ状態切替設定手段として機能するとともに、上記のセキュリティセット状態おいて不正侵入行為ないし車両盗難行為が検知された場合に警報機50による警報出力を実行する警報出力制御手段としての機能する。つまり、ECU10、警報機50、操作部51、及びセンサ部52によって、車両用警報装置が構成されている。センサ部52は、車両への不正侵入行為ないしは車両盗難行為を検出するセンサであり、1以上のセンサからなる。セキュリティセット状態において、センサ部52の検出結果に基づいて上記のような不正行為が検出された場合には、警報機50からブザー音ないしは警告音声等による警報出力がなされる。
【0038】
なお、本実施形態におけるセンサ部52には、車両への不正侵入行為ないしは車両盗難行為を検出するセンサとして、車両への衝撃(振動)を検出する衝撃センサ(振動センサ)、車両への不正侵入を検出する侵入者検出センサ、侵入する前の段階で車両の予め定められた車両周辺領域内に侵入する接近者を検知する接近者検出部(接近者検知手段)、窓開閉体の破損を検出する窓開閉体破損検出部、ドアロックの不正な解除を検出する不正ロック解除検出部を備え、さらに、車両盗難行為を検出するセンサとして、車両の一定レベル以上の傾斜状態を検出する傾斜センサ等を備えている。
【0039】
衝撃センサは、車両への衝撃(振動)を検出するものであり、その検出結果がECU10に入力される。ECU10では、入力された検出結果に基づいて、車両への所定レベル以上の衝撃(振動)の有無を判定し、所定レベル以上の衝撃があった場合を、車両への不正侵入行為ないしは車両盗難行為として検出する。
【0040】
窓開閉体破損検出部としては、例えば車室内圧力をモニタする圧力センサと、モニタされる車室内圧力が所定レベル以上の圧力変動が検出された場合に窓ガラスの破損として検出する圧力異常検出部とで構成し、その検出結果をECU10に出力する。なお、圧力異常検出部はECU10に設けてもよい。また、窓開閉体を車内から撮影するカメラ(撮影手段)と、その撮影画像に基づいて窓開閉体の破損箇所を検出する図示しない画像解析部とで構成することもできる。窓間開閉体の破損検出は他の方法で行われても当然よい。
【0041】
接近者検出部としては、車室内ないしは車室外に取り付けられて車外の所定範囲内を撮影するカメラ(撮影手段)と、その撮影画像に基づいて当該車両に接近する接近対象物を検出する図示しない画像解析部(接近対象物検出部)とで構成することもできる。なお、カメラを、上記した窓開閉体を撮影するカメラに兼用させてもよい。また、接近者検出部としては、出力する音波や電磁波の反射波を検出するソナーやレーダ等を用いることもでき、受信した反射波に基づいて所定距離内に接近対象物が検出された場合を、車両への不正侵入行為ないしは車両盗難行為として検出することもできる。当然、他の方法であってもよい。
【0042】
不正ロック解除検出部としては、車両のドアロック状態が正規の手順とは異なる形で解除されることを検出するものとして構成される。例えば、ドアロックがロック状態であるか否かを検出するドアロックセンサと、予め定められた正規のロック解除操作に伴い出力されるロック解除信号を検出するロック解除信号検出部とを備えて、ドアロックセンサによりドアロックの解除状態(アンロック状態)が検出されるに際して上記のロック解除信号が検出されているか否かを判定し、ロック解除信号が検出されていない場合を、車両への不正侵入行為ないしは車両盗難行為として検出することができる。なお、不正なドアロック解除の検出方法は他の方法で行われても当然よい。
【0043】
また、傾斜センサは、車両の傾斜度を検出するものであり、その検出結果がECU10に入力される。ECU10では、入力された検出結果に基づいて、車両の所定レベル以上の傾斜の有無を判定し、所定レベル以上の傾斜があった場合を、車両盗難行為として検出する。車両のレッカー移動等による盗難は、当該傾斜センサにより検出可能となる。
【0044】
これら以外にも、車両への不正侵入行為及び車両盗難行為を検出する検出手段を設けてもよいし、これらのうちいずれかを車両への不正侵入行為及び車両盗難行為を検出する検出手段から外してもよいが、本実施形態においては、所定レベル以上の衝撃の検出、窓間開閉体2の破損の検出、車外の所定範囲内に接近する接近対象物の検出(例えば不審人物の検出)、不正なドアロック解除の検出、車両の所定レベル以上の傾斜の検出を、車両への不正侵入行為及び車両盗難行為の検出とする。
【0045】
上記のようなセンサ部52により車両への不正侵入行為ないしは車両盗難行為が検出されると、ECU10は、上記した警報出力を実行する。さらには、それら車両への不正侵入行為ないしは車両盗難行為が検出されることにより、所定のセキュリティ強化実行条件が成立したと判定されると、自車両のセキュリティを強化する駆動制御を実行する。本実施形態においては、ECU10の制御モードを、上記した通常制御モードより車両の防犯レベルが増すセキュリティ強化制御モードに設定する形でなされる。セキュリティ強化制御モードでは、第一駆動部22及び第二駆動部23のうち少なくとも一方の駆動モードが、上記した通常駆動モードとは異なるセキュリティ強化駆動モードに変更して設定され、設定された各々の通常駆動モードに従う形で各駆動部22,23のそれぞれを独立に駆動制御する。なお、セキュリティ強化制御モードは複数種が定められており、成立するセキュリティ強化実行条件(センサ部52における検出内容や車両状態)に応じて、設定されるセキュリティ強化制御モードが異なるようになっている。
【0046】
ただし、セキュリティ強化実行条件の中には、予め定められた前提条件が満足されることを前提として成立するものもあり、そうした条件の場合は、車両への不正侵入行為ないしは車両盗難行為が検出に伴い直ちにセキュリティ強化制御モードが設定されるということはない。
【0047】
本実施形態においては、一部のセキュリティ強化実行条件の前提条件として、車両が停車状態であることと、当該前提条件を成立させるための予め定められた前提条件成立用操作部への前提条件成立用操作がなされた状態であること、さらには車両内に乗員がいない状態であることといった条件が定められている。
【0048】
なお、本実施形態における前提条件成立用操作部は、セキュリティセット操作部51であり、当該操作部51にセキュリティセット操作がなされてセキュリティセット状態となっていることが上記前提条件に含まれている。ただし、セキュリティセット操作部51とは別に前提条件成立用操作部を設けてもよい。
【0049】
また、これら前提条件はなくてもよいが、車両走行中等のような車両状態の急変が生じやすい状態で窓開閉体が強度アップすることを防ぐという観点からすれば、車両停車状態を上記前提状態に含めておくことが望ましく、さらには、ユーザーが意図しない状態で窓開閉体が強度アップすることを防ぐという観点からすれば、前提条件成立用操作(ここではセキュリティセット操作)がなされた状態であることを上記前提状態に含めておくことが望ましい。また、セキュリティ強化制御モードにおいて窓開閉体の強度アップ状態が保持される場合には、車両内に取り残された乗員がいない状態を上記前提状態に含めておくことも有効である。
【0050】
これらの前提条件の成立を検出するために、ECU10には、セキュリティセット操作部51と、車両の停車状態を検出する停車状態検出部(停車検出手段)54と、車室内の乗員を検出する乗員検出部(乗員検出手段)55とが接続している。本実施形態においては、停車状態検出部53としてシフトポジションセンサ54が設けられており、シフトポジションがパーキングポジションである場合を停車状態として検出する。他方、乗員検出部54は、各座席に着座するユーザーを撮影するための図示しないカメラ(撮影手段)と、その撮影画像を解析する図示しない画像解析部とを備えてなり、解析の結果、撮影画像上に人が特定されなかった場合を車両内に乗員がいない状態として検出する。
【0051】
また、ECU10は、第二の窓開閉体3を開閉駆動するための操作部55と接続している。当該操作部55は車室内に設けられており、通常は操作入力が無効化されているが、所定の前提条件の成立に基づいて操作入力が有効となる。第二の窓開閉体が使える状態というのは、ある意味で車両のセキュリティ性が増した状態であるともいえるので、本実施形態においては、この状態を、ECU10の制御モードをセキュリティ強化制御モードに切り替える形で実行する。
【0052】
以下、ECU10により実行されるセキュリティ強化処理について、図4のフローチャートを用いて説明する。なお、当該処理は、ECU10の所定記憶部に格納されたプログラムをCPUが実行する形でなされる。
【0053】
S11では、ECU10が、車両における予め定められたセキュリティ強化実行条件の成立判定に必要とされる判定情報を取得する(判定情報取得手段)。ここでの判定情報とは、上記前提条件の成立判定に必要となる前提条件情報(車両停車状態、前提条件成立操作部の操作状態、車両内の乗員の有無)と、車両への不正侵入行為ないしは車両盗難行為の検出結果情報とである。
【0054】
S12〜S15、さらにはS19では、S11で取得した判定情報に基づくセキュリティ強化実行条件の成立判定を行う(条件成立判定手段)。
【0055】
S12では、ECU10が、S11で取得した判定情報に基づいて、車両が停車した状態にあるか否かを判定する。停車状態でなければS19に進み、停車状態であればS13に進む。
【0056】
S13では、ECU10が、S11で取得した判定情報に基づいて、セキュリティセット状態であるか否かを判定する。セキュリティセット状態でなければS19に進み、セキュリティセット状態であればS14に進む。
【0057】
S14では、ECU10が、S11で取得した判定情報に基づいて、車室内の乗員の有無を判定する。車室内に乗員がいると判定された場合にはS18に進む。
【0058】
S18では、ECU10に、第一のセキュリティ強化制御モードが設定される。つまり、S12〜S14での判定処理が第一のセキュリティ強化実行条件の成立判定処理であって、それらの処理を経て第一のセキュリティ強化実行条件が成立したことにより、当該条件に対応する第一のセキュリティ強化制御モードが設定される。ここでは、それまでに設定されていた制御モードが、第二駆動部23に対し第二の窓開閉体3の開閉駆動を許可するセキュリティ強化駆動モードを設定する第一のセキュリティ強化制御モードに切り替えられる。これにより、第一の窓開閉体2の代替となる第二の窓開閉体3が動くようになるので、車両の防犯レベルが増す。第二の窓開閉体3は、車室内の操作部55により操作可能とされ、各ドアの開閉操作部30からは、第一の窓開閉体2の開閉操作がなされる。なお、この第一のセキュリティ強化制御モードにおいて、第一駆動部22の駆動モードは、それまでに設定されていた駆動モードのままである。S18が終了すると、S19に進む。
【0059】
なお、このS18のステップを省略して、そのままS19に進む処理としてもよい。S18において設定される第一のセキュリティ強化制御モードは、車内からのユーザーのマニュアル操作でのみ、第二の窓開閉体の開閉を許可するように定めた制御モードであるから、例えば第二の窓開閉体の開閉操作を行うための専用の車室内操作部55が存在しない場合にはS18を省略してよい。
【0060】
他方、S14にて、車室内に乗員がいないと判定された場合にはS15に進む。
【0061】
S15では、S11で取得した判定情報に基づいて、車両への不正侵入行為ないしは車両盗難行為の有無を判定する。そうした行為があればS16に進み、無ければS19に進む。なお、S15では、車両の予め定められた車両周辺領域内に侵入する接近者が検知されることも、車両への不正侵入行為ないしは車両盗難行為として判定するものとし、窓ガラスの破損は、車両への不正侵入行為ないしは車両盗難行為として判定しないものとする。
【0062】
S16では、ECU10に、第二のセキュリティ強化制御モードが設定される。つまり、S12〜S15での判定処理が第二のセキュリティ強化実行条件の成立判定処理であって、それらの処理を経て第二のセキュリティ強化実行条件が成立したことにより、当該条件に対応する第二のセキュリティ強化制御モードが設定される。ここでは、それまでに設定されていた制御モードが第一駆動部22と第二駆動部23との双方に対し第一窓開閉体2及び第二窓開閉体3を全閉状態に保持するセキュリティ強化駆動モードを設定する第二のセキュリティ強化制御モードに切り替えられる。これにより、窓開閉体による多重構造が実現され、車両の防犯レベルが増す。S16が終了すると、S17に進む。
【0063】
なお、S15において、車両への不正侵入行為ないしは車両盗難行為が検出されることは、警報出力条件(セキュリティセット状態における車両への不正侵入行為ないしは車両盗難行為が検出:S13とS15)の成立を意味するから、S16では警報機50による警報出力が同時に実施される。
【0064】
ここで、S19について説明する。S19では、S11で取得した判定情報に基づいて、第一の窓開閉体(窓ガラス)2が破損しているか否かを判定する。破損していなければS21に進み、現在の制御モードを保持した状態でS17に進む。他方、破損していた場合にはS20に進む。
【0065】
なお、S19においても、窓開閉体2の破損が検出されることは、警報出力条件の一部の成立を意味するから、この段階で警報出力条件の全てが成立していれば、S19では警報機50による警報出力が同時に実施される。
【0066】
S20では、ECU10に、第三のセキュリティ強化制御モードが設定される。なお、当該第三のセキュリティ強化制御モードに対応する第三のセキュリティ強化実行条件の成立判定処理は、S19の判定処理のみである。つまり、第一の窓開閉体(窓ガラス)2が破損しているだけで、ECU10に、第三のセキュリティ強化制御モードが設定される。ここでは、それまでに設定されていた制御モードが、第二駆動部23に対し第二窓開閉体3を全閉状態に保持するセキュリティ強化駆動モードを設定する第三のセキュリティ強化制御モードに切り替えられる。これにより、割れていない第二の窓開閉体3が閉状態となり、運転中に車外からの風等の影響を受けない状況を作り出せる。また、第二の窓開閉体3が、第一の窓開閉体2よりも車内側にあることで、破損した第一の窓開閉体2の破片等が車室内に入り込むことを防ぐこともできる。S20が終了すると、S17に進む。
【0067】
なお、S20において、ECU10に第三のセキュリティ強化制御モードが設定されるに伴い、第一駆動部22に対しては、それまでの駆動モードを継続して設定するようにしてもよいが、第一の窓開閉体2の開閉駆動を禁止するセキュリティ強化駆動モードを設定してもよい。第一の駆動部に対し開閉駆動を禁止する駆動モードを設定することで、破損状態の第一の窓開閉体2が動作することによる車両の損傷等を防ぐことができる。
【0068】
S17では、ECU10が、自身に現在設定されている制御モードに従う形で、第一駆動部22及び第二駆動部23の駆動制御を行う。具体的にいえば、この段階で各第一駆動部22及び第二駆動部23に設定されている駆動モードに従って、それら駆動部22,23の駆動制御を実行する。駆動モードには、通常駆動モードの他にも、各セキュリティ強化制御モードにて定められた個別の駆動モードがあるので、それらの中で設定されている駆動モードに従う駆動制御を、それら駆動部22,23毎に実行する。
【0069】
S17の処理の終了により本処理は終了となる。なお、本処理は所定周期で繰り返し実行されるものである。
【0070】
なお、上記セキュリティ強化処理は、ECU10の制御モードを通常制御モードからセキュリティ強化制御モードに切り替えるための処理であって、通常制御モード(双方の駆動部22,23を通常駆動モードとする制御モード)への復帰はできない。通常制御モードへの復帰は、図5のフローチャートに示す通常復帰処理により実施される。
【0071】
以下、ECU10により実行される通常復帰処理について、図5のフローチャートを用いて説明する。なお、当該処理は、ECU10の所定記憶部に格納されたプログラムをCPUが実行する形でなされる。
【0072】
S101では、ECU10が、自らの制御モードを上記の通常制御モードに復帰させるための情報を取得する。本実施形態において、ECU10の通常制御モードへの復帰は、予め定められた通常制御モード復帰操作が検出された場合に実施される。なお、本実施形態における通常制御モード復帰操作は、停車状態の解除操作(即ち走行操作ないし走行準備操作)、セキュリティアンセット操作である。いずれもユーザーによる操作である。なお、停車状態の解除操作は、ここではシフトポジションがパーキングポジション以外のポジションとする操作であり、セキュリティアンセット操作は、セキュリティセット操作部52への再操作であり、図示しないシフトレバー及びセキュリティセット操作部52が通常制御モード復帰操作部として機能する。
【0073】
続くS102では、上記のような通常制御モード復帰操作があったか否かを判定し、通常制御モード復帰操作があった場合にはS103に進み、現在の制御モードを保持した状態でS104に進む。他方、通常制御モード復帰操作がない場合にはS105に進む。
【0074】
S105では、ECU10に通常制御モードが設定される。なお、ここでは、それまでに設定されていた制御モードが解除される(各駆動部22,23に個別に設定されていた駆動モードが解除される)とともに、当該制御モードから、第一駆動部22に対し第一窓開閉体2の開閉駆動を許可する通常駆動モードを設定し、かつ第二駆動部23に対し第二窓開閉体3を全開状態に保持する通常駆動モードを設定する通常制御モードに、制御モードが切り替えられる。S105が終了すると、S104に進む。
【0075】
S104では、ECU10が、自身に現在設定されている制御モードに従う形で、第一駆動部22及び第二駆動部23の駆動制御を行う。具体的にいえば、この段階で各第一駆動部22及び第二駆動部23に設定されている駆動モードに従って、それら駆動部22,23の駆動制御を実行する。駆動モードには、通常駆動モードの他にも、各セキュリティ強化制御モードにて定められた個別の駆動モードがあるので、それらの中で設定されている駆動モードに従う駆動制御を、それら駆動部22,23毎に実行する。
【0076】
S104の処理の終了により本処理は終了となる。なお、本処理は所定周期で繰り返し実行されるものである。
【0077】
なお、上記セキュリティ強化処理においては、対応する窓開閉体2,3の全閉保持を実行するセキュリティ強化駆動モードが設定された駆動部22,23は、S14にて車室内に乗員が検出されるか、あるいは通常復帰処理により通常制御モードが設定されない限り、対応する窓開閉体2,3を開状態とできる駆動モードに戻ることはない。即ち、車室内に乗員が検出される状態を作ることもユーザー操作であるから、一度各駆動部22,23に設定された全閉保持の駆動モードは、所定のユーザー操作が無ければ開駆動は生じないようになっている。これにより、窓開閉体2,3の無駄な開駆動を省略し、無駄な電力消費を抑制できる。また、通常駆動モードへの復帰も、ユーザー操作を伴う形で実施される、つまり、ユーザーの明確な意図の下でしか通常駆動モードへの復帰できないようになっているから、セキュリティ強化駆動モードと通常駆動モードとの間での無駄なモード切り替えが生じず、窓開閉体2,3の無駄な開閉駆動を省略でき、ひいては無駄な電力消費を抑制できる。
【0078】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0079】
例えば、上記実施形態のセキュリティ強化処理(図4)において、第二の窓開閉体3は、第一の窓開閉体2の破損時にその代替として機能しなければならないので、第一の窓開閉体2と同じ又は同等の遮光性及び強度を有した材料にて構成される必要がある。上記実施形態では、第一の窓開閉体2の材料と同じ材料にて構成されていた。ところが、第一の窓開閉体2の破損時に駆動しない処理とする場合には(図4のS19、S20を省略する)、第二の窓開閉体3は、使用用途が防犯性の向上に限られるから、第一の窓開閉体2よりも高強度な材料にて形成しておくことができる。同様に、防犯性の向上としてプライバシー保護の向上や車内の物色防止を実現するなら、第二の窓開閉体3は、第一の窓開閉体よりも遮光性の高い材料にて形成してもよい。また、双方を同時に実施してもよい。ただし、いずれを実施する場合も、車両走行中において第二の窓開閉体3が全開状態に保持されることは必須(前提)となる。また、車両内に乗員がいる状況においては、第二の窓開閉体3の開駆動が可能であることも必須(前提)となる。
【0080】
逆に、上記実施形態のセキュリティ強化処理(図4)において、第二の窓開閉体3を、車両への不正侵入行為ないしは車両盗難行為が検出された場合に駆動しない処理とする場合には(図4のS12〜S16、S18を省略する)、第二の窓開閉体3は、使用用途が第一の窓開閉体2の破損時の代替使用に限られるから、第一の窓開閉体2の材料と同じ材料にて構成される必要がある。
【0081】
また、上記実施形態のセキュリティ強化処理(図4)において、第二のセキュリティ強化モードは、車両への不正侵入行為ないしは車両盗難行為が検出された場合に設定され、第一の窓開閉体2と第二の窓開閉体3の双方を同時に全閉状態に保持するモードであるが、少なくとも通常時使用しない(前回状態に保持される)第二の窓開閉体3を全閉状態に保持するモードとするようにしてもよい。つまり、通常時使用しない少なくとも第二の窓開閉体3が全閉状態に保持されれば、それまでよりもセキュリティレベルが向上した状態となる。
【0082】
また、上記実施形態のように、必ずしも通常使用できる窓開閉体2と通常使用できない窓開閉体3とを区別して設けなくともよい。ただし、区別して設けることで、各々の窓開閉体に明確な役割を与えることができ、各セキュリティ強化制御モードにおける各々の駆動状態を固定的に設定できるという点で有効となる。特に上記のような材料分担を行う場合には必須となる。
【0083】
上記実施形態のセキュリティ強化処理(図4)においては、窓開閉体2の破損が検出された場合には、第三のセキュリティ強化モードとして、第二の窓開閉体3を全閉状態に保持する駆動制御が実行されたが、少なくとも第二の窓開閉体3を閉駆動が可能な状態とすればよい。例えば、第二の窓開閉体3の開閉駆動を許可するようにするだけでもよい。
【0084】
また、上記実施形態のセキュリティ強化処理(図4)において、窓開閉体2の破損が検出された場合に設定される第三のセキュリティ強化モードは、窓開閉体2の破損の検出のみで、他の前提条件の成立に関らず実行されるようになっているが、例えば、上記実施形態における前提条件(車両停車、前提条件成立操作あり、車両内に乗員無し)の少なくとも1つを前提条件として加えてもよい。
【0085】
また、通常使用する第一の窓開閉体2と通常時使用できない第二の窓開閉体3とが区別され、かつセキュリティ強化モードとして第二の窓開閉体3の駆動を許可する構成においては、第二の窓開閉体3の機能を、通常使用する第一の窓開閉体2の機能よりも劣るようにして、不自由さを感じさせるようにしてもよい。これにより、不自由さをユーザーに感じさせることができるので、ユーザーに修理を促すという効果が期待できる。例えば、セキュリティ強化モードにおいて第二の窓開閉体3を、全閉位置と全開位置との中間位置で静止できないようにする等の方法である。また、機能を劣るようにして不自由さを感じさせるという意味では、第二の窓開閉体3の全閉保持もこれに含まれる。具体的にこれらを実現する場合には、第二の窓開閉体3の駆動部23を、第一の窓開閉体2の駆動部22よりも駆動機能が劣る仕様のものとしてもよいし、ECU10による駆動制御内容を、第二の窓開閉体の駆動機能レベルが第一の窓開閉体の駆動機能レベルよりも劣るように定めてもよい。これらの場合、コストダウンの効果も得られる。
【0086】
また、通常使用する第一の窓開閉体2と通常時使用できない第二の窓開閉体3とが区別され、かつセキュリティ強化モードとして第二の窓開閉体3の駆動を許可する構成において、上記実施形態では車室内の専用の開閉操作部55から第二の窓開閉体3の開閉操作が可能とされているが、車室内に設けられた開閉操作部30によって第二の窓開閉体3の開閉操作が可能となってもよい。この場合、ECU10は、第一の窓開閉体3の開閉駆動を禁止し、かつ開閉操作部30の操作入力に割り当てられている開閉制御対象を、第一の窓開閉体2から第二の窓開閉体3に切り替えるようにする。
【0087】
ところで、セキュリティ強化実行条件の成立の最終判定をユーザーが行うように構成してもよい。つまり、ユーザーが上記実施形態のようなセキュリティ強化実行条件の成立を確認し、必要と感じた場合に所定の操作をすることで、セキュリティ強化モードが実行されるようにする構成である。
【0088】
具体的には、本発明の車両用ウインドウ制御システム1を図6のように構成して、セキュリティ強化処理を図9のようにして実行することで実現できる。
【0089】
図6は、図1と同様、車両用ウインドウ制御システムの構成を示すブロック図である。図6に示す車両用ウインドウ制御システム1は、ECU10に無線送信部(例えばRF送信回路等)11と無線受信部(例えばRF受信回路等)12とが接続している点で図1とは異なっており、これらによって、車外に持ち出し可能な可搬型の携帯機100と無線通信可能に構成されている。
【0090】
携帯機100は、ECU10との無線通信を可能とするための無線送信部(例えばRF送信回路等)101及び無線受信部(例えばRF受信回路等)102と、表示部103、スピーカ104、操作部105とが、マイコン構成を有してなる周知の制御部108に接続する形で構成されている。なお、携帯機100は、携帯電話機であってもよいし、車両のスマートキーであってもよく、それらの機能部110は制御部108に接続する形で設けられている。なお、携帯電話機ないしスマートキーの機能部110の構成は周知であるから説明は省略する。
【0091】
また、図6の構成においては、図7及び図8に示すように、1つの窓枠8内に対し車両内外にて全閉状態で重なるように3枚の窓開閉体2,3,4が設けられており、それらを各々独立に駆動する駆動部22,23,24が駆動部20として各座席に対応して設けられている。本実施形態におけるECU10は、通常駆動モードにおいては、第一駆動部22に対し第一の窓開閉体2の開閉駆動を許可する駆動モードを通常駆動モードとして設定する一方で、第二駆動部23に対し第二の窓開閉体3を全開状態に保持する駆動モードを設定し、同じく第三駆動部24に対し第三の窓開閉体4を全開状態に保持する駆動モードを設定する。そして、各駆動部22,23,24に設定された各々の通常駆動モードに従う形で、それぞれを独立に駆動制御している。上記図1の実施形態と同様、車両走行中等の通常時には一枚の窓開閉体のみが開閉するようになっている。
【0092】
さらにいえば、第二の窓開閉体3が第一の窓開閉体2の代替として使用される専用の開閉体であり、第三の窓開閉体4が第一の窓開閉体2と重なるように駆動して防犯レベルを増すための専用の開閉体と定められている。
【0093】
以下、上記構成において、ECU10により実行されるセキュリティ強化処理について、図6のフローチャートを用いて説明する。なお、当該処理は、ECU10の所定記憶部に格納されたプログラムをCPUが実行する形でなされる。
【0094】
S31〜S35は、図4のS11〜S15と同様の処理であるから説明を省略する。
【0095】
S36は、車両停車状態、セキュリティセット状態、車室内に乗員が不在の状態が検出された状態で、車両への不正侵入行為ないしは車両盗難行為が検出された状態であり、上記図4の実施形態において、第二のセキュリティ強化実行条件が成立した状態である。このセキュリティ強化実行条件(図中のセキュリティ強化条件A)の成立に伴いS36では、当該第二のセキュリティ強化実行条件の成立情報を、送信部(成立情報送信手段)11から車外に無線送信する。その上で、S37に進み、携帯機100から無線送信されてくる、ECU10に設定されている制御モードを当該第二のセキュリティ強化制御モードに切り替えるためのモード切替情報(図中のセキュリティ強化実行指示A)の受信待機状態となる。同時に、ECU10が備えるタイマー機能を実行して時間計時を開始する。
【0096】
このとき、携帯機100は、無線送信された当該成立情報を受信部(成立情報受信手段)102にて無線受信することができ、該成立情報を受信した場合には該成立情報に基づくセキュリティ強化実行条件(第二のセキュリティ強化実行条件)の成立を報知する。報知手段としては、表示部103ないし音声出力部であるスピーカ104を利用でき、表示部103での出力の場合は、例えば現在の車両状況を説明する画面表示がなされる。スピーカ104での出力の場合は、現在の車両状況を説明する音声出力がなされてもよいし、ブザー音のような警報音を出力するようにしてもよい。なお、なお、現在の車両状況を説明するためには、成立情報に、どの検出部により車両への不正侵入行為ないしは車両盗難行為が特定されたかが反映されている必要がある。どの検出部が異常(車両への不正侵入行為ないしは車両盗難行為が検出)を検出しているかがわかれば、車両の現在の状況が分かる。その上で、携帯機100の操作部105として設けられたセキュリティ強化実行操作部106を操作すると、送信部(モード切替情報送信手段)101から上記モード切替情報が外部に無線送信される。
【0097】
なお、本実施形態においては、成立情報の報知が図10に示すような形で実施され、この報知(表示)に伴い、所定の操作部105がセキュリティ強化実行操作部106に切り替わる。表示画面103a上には、現在の車両状況を説明する表示とともに、操作部106の操作を促す表示と、当該操作部106の位置を指示する表示がなされている。
【0098】
S37では、タイマーを起動してから所定時間内に、受信部12(モード切替情報受信手段)にて、上記モード切替情報(図中のセキュリティ強化実行指示A)を受信した場合にはS38に進み、所定時間内に受信できなければS42に進む。S42では、現在の制御モードを保持した状態でS39に進む。
【0099】
S38では、ECU10に、第二のセキュリティ強化制御モードが設定される。ここでは、それまでに設定されていた制御モードが、第一駆動部22と第二駆動部23と第三駆動部24の全てに対し対応する窓開閉体2,3,4を全閉状態に保持するセキュリティ強化駆動モードを設定する第二のセキュリティ強化制御モードに切り替えられ、その上でS39に進む。
【0100】
なお、第二のセキュリティ強化制御モードにおいては、窓開閉体2,3,4の全てが全閉状態となることで、防犯レベルを最も高い状態とすることができるが、少なくとも第三の窓開閉体4が全閉状態を保持するようになっていれば防犯性の向上という効果は達成でき、さらに望ましくは、第三の窓開閉体4を含む2枚以上の窓開閉体が全閉状態を保持するようになれば、より高い効果が見込めるので、そのような設定となっていてもよい。
【0101】
また、S40は、車両停車状態、セキュリティセット状態、車室内の乗員不在の状態が検出された状態であり、上記図4の実施形態において、第一のセキュリティ強化実行条件が成立した状態である。このセキュリティ強化実行条件(図中のセキュリティ強化条件B)の成立に伴いS40では、ECU10に、第一のセキュリティ強化制御モードが設定される。ここでは、それまでに設定されていた制御モードが、第二駆動部23及び第三駆動部24に対し対応する窓開閉体3,4の開閉駆動を許可するセキュリティ強化駆動モードを設定する第一のセキュリティ強化制御モードに切り替えられる。これにより、第一の窓開閉体2の代替となる第二の窓開閉体3が動くようになるので、車両の防犯レベルが増す。
【0102】
なお、ここでも、上記第二のセキュリティ強化制御モードの設定時のように、携帯機100にて成立状態を報知し、携帯機100からの操作に基づいて制御モードを切り替えるようにしてもよいが、ここでは、車室内に乗員がいる状況であるから、携帯機100での操作を求めるような処理とはしていない。
【0103】
S41は、図4のS18と同様の処理であるから説明を省略する。S42は、図4のS21と同様の処理であるから説明を省略する。
【0104】
S43は、第一の窓開閉体2の破損が検出された状態であり、上記図4の実施形態において第三のセキュリティ強化実行条件が成立した状態である。この第三のセキュリティ強化実行条件(図中のセキュリティ強化条件B)の成立に伴いS43では、上記したS36と同様、当該セキュリティ強化実行条件の成立情報を、送信部(成立情報送信手段)11から車外に無線送信する。その上で、S44に進み、携帯機100から無線送信されてくる、ECU10に設定されている制御モードを当該第三のセキュリティ強化制御モードに切り替えるためのモード切替情報(図中のセキュリティ強化実行指示B)の受信待機状態となる。同時に、ECU10が備えるタイマー機能を実行して時間計時を開始する。
【0105】
このとき、携帯機100は、無線送信された当該成立情報を受信部(成立情報受信手段)102にて無線受信することができ、該成立情報を受信した場合には該成立情報に基づくセキュリティ強化実行条件(第三のセキュリティ強化実行条件)の成立を報知する。報知手段としては、表示部103ないし音声出力部であるスピーカ104を利用でき、表示部103での出力の場合は、例えば現在の車両状況を説明する画面表示がなされる。スピーカ104での出力の場合は、現在の車両状況を説明する音声出力がなされてもよいし、ブザー音のような警報音を出力するようにしてもよい。なお、現在の車両状況を説明するためには、成立情報に、窓の破損があったことが反映されている必要がある。その上で、携帯機100の操作部105として設けられたセキュリティ強化実行操作部106を操作すると、送信部(モード切替情報送信手段)101から上記モード切替情報が外部に無線送信される。
【0106】
なお、本実施形態においては、成立情報の報知が図11に示すような形で実施され、この報知(表示)に伴い、所定の操作部105がセキュリティ強化実行操作部106に切り替わる。表示画面103a上には、現在の車両状況を説明する表示とともに、操作部106の操作を促す表示と、当該操作部106の位置を指示する表示がなされている。
【0107】
S44では、タイマーを起動してから所定時間内に、受信部(モード切替情報受信手段)12にて上記モード切替情報(図中のセキュリティ強化実行指示B)を受信した場合にはS45に進み、所定時間内に受信できなければS42に進む。なお、ここで受信するモード切替情報は、S37で受信するものと同じ内容のものであるが、ECU10側が、成立しているセキュリティ強化実行条件に基づいて、どのセキュリティ強化制御モードの設定に対応するモード切替情報であるかを判断するものとする。
【0108】
S45では、ECU10に、第三のセキュリティ強化制御モードが設定される。ここでは、それまでに設定されていた制御モードが、第二駆動部23に対し第二窓開閉体3を全閉状態に保持するセキュリティ強化駆動モードを設定する第三のセキュリティ強化制御モードに切り替えられる。これにより、割れていない第二の窓開閉体3が閉状態となり、運転中に車外からの風等の影響を受けない状況を作り出せる。また、第二の窓開閉体3が、第一の窓開閉体2よりも車内側に隣接していることで、破損した第一の窓開閉体2の破片等が車室内に入り込むことを防ぐこともできる。S45が終了すると、S39に進む。
【0109】
なお、S45において、ECU10に第三のセキュリティ強化制御モードが設定されるに伴い、第一駆動部22及び第三駆動部24に対しては、それまでの駆動モードを継続して設定するようにしてもよいが、第一駆動部22に対しては第一の窓開閉体2の開閉駆動を禁止するセキュリティ強化駆動モードを設定してもよい。第一の駆動部に対し開閉駆動を禁止する駆動モードを設定することで、破損状態の第一の窓開閉体2が動作することによる車両の損傷等を防ぐことができる。
【0110】
S39では、ECU10が、自身に現在設定されている制御モードに従う形で、第一〜第三駆動部22,23,24の駆動制御を行う。具体的にいえば、この段階で各駆動部22,23,24に設定されている駆動モードに従って、それら駆動部22,23,24の駆動制御を実行する。駆動モードには、通常駆動モードの他にも、各セキュリティ強化制御モードにて定められた個別の駆動モードがあるので、それらの中で設定されている駆動モードに従う駆動制御を、それら駆動部22,23,24毎に実行する。
【0111】
S39の処理の終了により本処理は終了となる。なお、本処理は所定周期で繰り返し実行されるものである。
【0112】
なお、この実施形態において、車両への不正侵入行為・車両盗難行為を検出したり、窓開閉体2の破損を検出する検出部52が、車室外を撮影するカメラ(撮影手段)が撮影した撮影画像に基づいて、それらの検出を行う構成である場合には、S36やS43においてセキュリティ強化実行条件の成立を報知する際に、カメラにより撮影された画像を表示できるようにしてもよい。例えば、携帯機100が図10ないし図11の報知状態になるに伴い撮影画像表示操作部108を操作することで、図12のような撮影画像(ここでは静止画とする)を表示することができる。なお、ここでの撮影画像表示操作部108は、携帯機100が報知状態になるに伴い操作部105のいずれかに割り当てられ、操作可能となる。
【0113】
また、携帯機100には、前提条件成立用操作部を設けることもできる。上記実施形態においては、所定操作に基づいて、図13のような画面表示状態とすると、操作部105のいずれかに前提条件成立用操作部107が割り当てられ、操作可能となるようになっている。なお、前提条件成立用操作部は、本実施形態のようにセキュリティセット操作部107に兼用させて構成することもできる。
【0114】
また、携帯機100には、車両側からのセキュリティ強化実行条件の成立の報知によらず、強制的にセキュリティ強化制御モードを設定するセキュリティ強化駆動モード強制実行操作部を設けてもよい。これにより、遠隔的にセキュリティ強化制御モードを設定することが可能となる。
【0115】
また、上記実施形態においては、窓開閉体2,3,4を同一の材料にて構成しているが、通常使用される窓開閉体2に対し、窓開閉体3はこれと同じないしは同程度の強度及び遮光性を有する材料にて形成される必要があり、また、窓開閉体4も同様とすることができる。ただし、窓開閉体4は、ここでは防犯用に使用されるのみであるから、第一の窓開閉体よりも高強度な材料にて形成してもよいし、第一の窓開閉体よりも遮光性の高い材料にて形成してもよい。双方を同時に実施してもよい。ただし、いずれを実施する場合も、車両走行中において窓開閉体4が全開状態に保持されることは必須(前提)となる。また、車両内に乗員がいる状況においては、窓開閉体4の開駆動が可能であることも必須(前提)となる。
【0116】
なお、上記したすべての実施形態において、図5の通常復帰処理における通常復帰操作(S102)は、停車状態の解除操作(即ち走行操作ないし走行準備操作)、セキュリティアンセット操作とされているが、これら以外の他のユーザー操作であってもよい。例えば、車両がスマートエントリーシステムを搭載した車両であれば、当該システムにより車外のキーが検出されることを通常復帰操作としてもよい。つまり、車外のキーが認証されるためにユーザーが行った操作が、通常復帰操作となるのである。この場合、ECU10を通信インターフェース(図中のI/F)を介して車内LANに接続し、当該LANを介してスマートエントリーシステムの制御部からキー認証情報を取得する形で、通常復帰操作を検出できる。これにより、ユーザーが車両の状態を視認できる位置に達すると、自動的に通常制御モードが設定される。この場合、当該キーを上記の携帯機100とするとよい。さらにはその携帯機100が携帯電話機であるとさらによい。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の第一実施形態である車両用ウインドウ制御システムを概略的に示すブロック図。
【図2】第一実施形態において車両に配置される窓開閉体を説明する図。
【図3】第一実施形態における窓開閉体の駆動を説明する図。
【図4】セキュリティ強化処理の流れを説明するフローチャート。
【図5】通常復帰処理の流れを説明するフローチャート。
【図6】本発明の第二実施形態である車両用ウインドウ制御システムを概略的に示すブロック図。
【図7】第二実施形態において車両に配置される窓開閉体を説明する図。
【図8】第二実施形態における窓開閉体の駆動を説明する図。
【図9】第二実施形態に適用可能な、図4とは異なるセキュリティ強化処理の流れを説明するフローチャート。
【図10】セキュリティ強化実行条件の成立報知の第一例。
【図11】セキュリティ強化実行条件の成立報知の第二例。
【図12】セキュリティ強化実行条件の成立報知の第三例。
【図13】セキュリティ強化実行条件の前提条件を遠隔成立させるための操作を説明する図。
【符号の説明】
【0118】
1 車両用ウインドウ制御システム
2 第一の窓開閉体
3,4 第二の窓開閉体
10 ECU(セキュリティ状態切替設定手段、警報出力制御手段)
20 駆動部(21A〜21D)
30 開閉操作部(30A〜30D)
22,23,24 駆動部
50 警報機(警報出力手段)
51 セキュリティセット操作部(セキュリティ状態設定操作部、前提条件成立用操作部)
52 センサ部(車両不正行為検知手段:衝撃センサ、接近者検出部、不正ロック解除検出部、傾斜センサ等)
53 停車状態検出部(停車検出手段
54 乗員検出部(乗員検出手段)
100 携帯機
108 制御部
11 送信部(成立情報送信手段)
12 受信部(モード切替情報受信手段)
101 送信部(モード切替情報送信手段)
102 受信部(成立情報受信手段)
103 表示部(報知手段)
104 スピーカ(報知手段)
105 操作部
106 セキュリティ強化実行操作部
107 セキュリティセット操作部(セキュリティ状態設定操作部、前提条件成立用操作部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の所定の窓枠に対し開閉可能に設けられる第一の窓開閉体と、
前記第一の窓開閉体を開閉駆動する第一駆動部と、
前記第一の窓開閉体に重なる形で、前記所定の窓枠に対し開閉可能に設けられる第二の窓開閉体と、
前記第二の窓開閉体を、前記第一の窓開閉体とは独立に開閉駆動する第二駆動部と、
前記車両における予め定められたセキュリティ強化実行条件の成立判定に必要とされる判定情報を取得する判定情報取得手段と、
取得された前記判定情報に基づいて、前記セキュリティ強化実行条件の成立判定を行う条件成立判定手段と、
前記第一駆動部及び前記第二駆動部に対し予め定められたそれぞれの通常駆動モードを設定し、設定された各駆動モードに従いそれら各駆動部の駆動制御を実行する通常制御モードが自身に設定されている状態にて、前記セキュリティ強化実行条件が成立した場合には、当該通常制御モードよりも前記車両の防犯レベルが増すように前記第一駆動部及び前記第二駆動部のうち少なくとも一方に対し前記通常駆動モードとは異なるセキュリティ強化駆動モードを設定し、設定された各駆動モードに従いそれら各駆動部の駆動制御を実行するセキュリティ強化制御モードに切り替える駆動制御手段と、
を特徴とする車両用ウインドウ制御システム。
【請求項2】
前記駆動制御手段は、前記通常制御モードにおいて、前記第一駆動部には、前記通常駆動モードとして前記第一の窓開閉体の開閉駆動を許可する駆動モードを設定し、かつ前記第二駆動部には、前記通常駆動モードとして前記第二の窓開閉体を全開状態に保持する駆動モードを設定するものである請求項1記載の車両用ウインドウ制御システム。
【請求項3】
前記セキュリティ強化実行条件に含まれる前提条件を成立させるための前提条件成立用操作がなされる前提条件成立用操作部を備え、
前記判定情報取得手段は、前記前提条件成立用操作部への操作状態情報を前記判定情報の1つとして取得し、
前記条件成立判定手段は、前記前提条件成立用操作がなされたことが前提条件として含まれた前記セキュリティ強化実行条件の成立を判定するものであり、
前記駆動制御手段は、当該セキュリティ強化実行条件が成立した場合には、前記第一駆動部及び前記第二駆動部の双方に、前記セキュリティ強化駆動モードとして前記第一の窓開閉体と前記第二の窓開閉体との双方を全閉状態として保持する駆動モードを設定する前記セキュリティ強化制御モードに切り替えるものである請求項1又は請求項2に記載の車両用ウインドウ制御システム。
【請求項4】
前記条件成立判定手段は、前記前提条件成立用操作がなされた場合に前記セキュリティ強化実行条件が成立したと判定するものである請求項3記載の車両用ウインドウ制御システム。
【請求項5】
前記車両の停車状態を検出する停車検出手段を備え、
前記判定情報取得手段は、前記停車検出手段の検出結果情報を前記車両状態情報の1つとして取得し、
前記条件成立判定手段は、前記車両の停車状態が前提条件として含まれた前記セキュリティ強化実行条件の成立を判定するものであり、
前記駆動制御手段は、当該セキュリティ強化実行条件が成立した場合には、前記第一駆動部及び前記第二駆動部の双方に、前記セキュリティ強化駆動モードとして前記第一の窓開閉体と前記第二の窓開閉体との双方を全閉状態として保持する駆動モードを設定する前記セキュリティ強化制御モードに切り替えるものである請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車両用ウインドウ制御システム。
【請求項6】
車室内への不正侵入行為ないし車両盗難行為を検知するための車両不正行為検知手段と、警報出力手段と、所定のセキュリティ状態設定操作部への操作に基づいて前記警報出力手段による警報出力を許可するセキュリティセット状態と当該警報出力を禁止するセキュリティアンセット状態との間で切り替えるセキュリティ状態切替設定手段と、前記セキュリティセット状態おいて前記不正侵入行為ないし前記車両盗難行為が検知された場合に前記警報出力手段による警報出力を実行する警報出力制御手段と、を有した車両用警報装置を備え、
前記セキュリティ状態設定操作部が前提条件成立用操作部に兼用されており、前記セキュリティセット操作が前記前提条件成立用操作とされている請求項3又は請求項5に記載の車両用ウインドウ制御システム。
【請求項7】
車室内への不正侵入行為ないし車両盗難行為を検知するための車両不正行為検知手段を備え、
前記判定情報取得手段は、前記車両不正行為検知手段の検知結果情報を前記判定情報として取得し、
前記条件成立判定手段は、当該前提条件が成立し、かつ前記不正侵入行為ないし前記車両盗難行為が検知された場合に、前記セキュリティ強化実行条件が成立したと判定するものである請求項3ないし請求項6のいずれか1項に記載の車両用ウインドウ制御システム。
【請求項8】
前記車両の予め定められた車両周辺領域内に侵入する接近者を検知する接近者検知手段を備え、
前記条件成立判定手段は、前記前提条件が成立し、かつ前記接近者が検知された場合に、前記セキュリティ強化実行条件が成立したと判定するものである請求項3ないし請求項7のいずれか1項に記載の車両用ウインドウ制御システム。
【請求項9】
請求項2記載の要件を備え、
前記第二の窓開閉体は、前記第一の窓開閉体よりも高強度な材料にて形成されている請求項3ないし請求項8のいずれか1項に記載の車両用ウインドウ制御システム。
【請求項10】
請求項2記載の要件を備え、
前記第二の窓開閉体は、前記第一の窓開閉体よりも遮光性の高い材料にて形成されている請求項3ないし請求項9のいずれか1項に記載の車両用ウインドウ制御システム。
【請求項11】
前記第一の窓開閉体の破損を検出する窓開閉体破損検出手段を備え、
前記条件成立判定手段は、前記第一の窓開閉体の破損を前記セキュリティ強化実行条件の成立として検出するものであり、
前記駆動制御手段は、当該セキュリティ強化実行条件が成立した場合には、前記第二駆動部に、前記セキュリティ強化駆動モードとして前記第二の窓開閉体の少なくとも閉駆動を許可する駆動モードを設定する前記セキュリティ強化制御モードに切り替えるものである請求項2記載の車両用ウインドウ制御システム。
【請求項12】
前記駆動制御手段は、前記セキュリティ強化実行条件が成立した場合には、前記第二駆動部に、前記セキュリティ強化駆動モードとして前記第二の窓開閉体を全閉状態にて保持する駆動モードを設定する前記セキュリティ強化制御モードに切り替えるものである請求項11記載の車両用ウインドウ制御システム。
【請求項13】
前記駆動制御手段は、前記セキュリティ強化実行条件が成立した場合には、前記第二駆動部に、前記セキュリティ強化駆動モードとして前記第二の窓開閉体の開閉駆動を許可する駆動モードを設定する前記セキュリティ強化制御モードに切り替えるものである請求項11記載の車両用ウインドウ制御システム。
【請求項14】
前記第二の窓開閉体は、前記セキュリティ強化実行条件が成立した場合には、全閉位置と全開位置との中間位置で静止できないようになっている請求項11記載の車両用ウインドウ制御システム。
【請求項15】
前記第二駆動部は、前記第二の窓開閉体の駆動機能レベルが、前記第一の窓開閉体の駆動機能レベルよりも劣るように設けられている請求項11ないし請求項14のいずれか1項に記載の車両用ウインドウ制御システム。
【請求項16】
前記駆動制御手段は、前記第二の窓開閉体の駆動機能レベルが、前記第一の窓開閉体の駆動機能レベルよりも劣るように、それぞれの駆動制御内容を定めている請求項11ないし請求項15のいずれか1項に記載の車両用ウインドウ制御システム。
【請求項17】
前記第二の窓開閉体は、前記第一の窓開閉体と同じ遮光性を有した材料にて形成されている請求項1ないし請求項16のいずれか1項に記載の車両用ウインドウ制御システム。
【請求項18】
前記車両は、前記セキュリティ強化実行条件が成立した場合に、当該セキュリティ強化実行条件の成立情報を、車外の可搬型の携帯機に無線送信する成立情報送信手段を備え、
前記携帯機は、前記成立情報を無線受信する成立情報受信手段と、該成立情報を受信した場合に前記セキュリティ強化実行条件の成立を報知する報知手段と、を備えてなる請求項1ないし請求項17のいずれか1項に記載の車両用ウインドウ制御システム。
【請求項19】
前記携帯機は、セキュリティ強化制御モード実行操作部と、当該セキュリティ強化制御モード実行操作部による操作に伴い前記駆動制御手段に設定されている制御モードを前記セキュリティ強化制御モードに切り替えるモード切替情報を無線送信するモード切替情報送信手段と、を備える一方で、
前記車両は、当該モード切替情報を無線受信するモード切替情報受信手段を備えており、
前記駆動制御手段は、前記セキュリティ強化実行条件が成立した場合には、前記モード切替情報の受信に基づいて、自らの制御モードを前記セキュリティ強化制御モードに切り替えるものである請求項18記載の車両用ウインドウ制御システム。
【請求項20】
請求項3又は請求項6に記載の要件を備え、
前記携帯機には、当該携帯機上に前記前提条件成立用操作部が設けられている請求項18又は請求項19に記載の車両用ウインドウ制御システム。
【請求項21】
前記携帯機は、携帯電話機である請求項18ないし請求項20のいずれか1項に記載の車両用ウインドウ制御システム。
【請求項22】
請求項2記載の要件を備え、
前記所定の窓枠には、前記第一の窓開閉体と複数の前記第二の窓開閉体とが重なる形で設けられるとともに、それら複数の前記第二の窓開閉体として、請求項3ないし請求項10のいずれか1項に記載の前記第二の窓開閉体を重ね配置用窓開閉体として有し、かつ請求項11ないし請求項17のいずれか1項に記載の前記第二の窓開閉体を破損代替用窓開閉体として、前記重ね配置用窓開閉体とは別に有してなる請求項2ないし請求項21のいずれか1項に記載の車両用ウインドウ制御システム。
【請求項23】
前記駆動制御手段は、自らの制御モードが前記セキュリティ強化制御モードに切り替えられている状態において、予め定められた通常制御モード復帰操作がなされた場合に、前記通常制御モードに復帰するものである請求項1ないし請求項22のいずれか1項に記載の車両用ウインドウ制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−228240(P2009−228240A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72294(P2008−72294)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】