説明

車両用ミラー装置

【課題】仮に凸部が磨耗してもステーに対する収容部材のガタの発生を抑制する。
【解決手段】車両用ドアミラー装置10では、嵌合凹部72が嵌合凸部60に嵌合される際に、ケース34の回動方向に嵌合凹部72と嵌合凸部60とが当接することで、直交面58と対向面70との間に間隙G2が形成されている。このため、仮に嵌合凸部60が磨耗して嵌合凸部60の外形が小さくなっても、間隙G2がなくなるまでは、嵌合凹部72と嵌合凸部60とが当接されて勘合される。また、間隙G2がバイザとステーとの間の間隙に比して大きく設定されている。このため、バイザがステーに当接した際でも、間隙G2が形成されるため、ケース34の回動方向において嵌合凹部72と嵌合凸部60とが互いに当接される。これにより、例えば、バイザがステーに当接した際を車両用ドアミラー装置10の使用寿命の目安とされる場合でも、ステーに対するバイザのガタを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられる車両用ミラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1の手動格納式ドアミラー装置では、ステーに固定されたスタンドの支軸にブラケットが回動可能に支持されており、ブラケットにミラー部(収容部材)が結合されている。これにより、ミラー部が使用位置と格納位置との間で回動可能に構成されている。
【0003】
また、スタンドにはスタンド側対向面が設けられており、スタンド側対向面に凸部が突設されている。一方、ブラケットにはブラケット側対向面が設けられており、ブラケット側対向面に凹部が形成されている。ミラー部の使用位置又は格納位置では、ブラケット側対向面とスタンド側対向面とが当接すると共に、凹部と凸部とが互いに当接された状態で、凹部と凸部とが嵌合されている。そして、凸部と凹部との嵌合状態からミラー部が回動されると、凸部と凹部との嵌合が解除されて、ミラー部に節度感が付与される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−187483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の手動格納式ドアミラー装置では、ミラー部が使用位置と格納位置との間で回動される際に、凸部が凹部上及びブラケット側対向面上を常に摺動するため、凸部が磨耗する可能性がある。仮に凸部が磨耗すると、ミラー部の使用位置又は格納位置において、ブラケット側対向面とスタンド側対向面とが当接する一方、凹部と凸部とが互いに当接しなくなるため、ステーに対するミラー部のガタが発生する。このため、上記の手動格納式ドアミラー装置では、スタンドを金属により製作することで、凸部が磨耗することを抑制している。
【0006】
したがって、ミラー部が繰り返し回動されることによって、仮に凸部が磨耗しても、ステーに対するミラー部のガタの発生を抑制できる構造にしておくことが望ましい。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮し、仮に凸部が磨耗しても、ステーに対する収容部材のガタの発生を抑制できる車両用ミラー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の車両用ミラー装置は、車体に組付けられたステーに固定され、支持軸を含んで構成された支持部材と、前記支持軸に回動可能に支持された回動体と、前記回動体に結合され、アウタミラーを収容すると共に、上下方向において前記ステーとの間に第1間隙が形成されるように配置された収容部材と、前記支持部材に設けられ、前記支持軸と直交する方向に配置された直交面と前記直交面から上方へ突出された凸部とを含んで構成され、かつ前記回動体が回動する際に前記収容部材に節度感を付与するための節度付与部と、前記回動体に設けられると共に、前記直交面の上方に前記直交面と対向して配置された対向面と前記対向面に設けられて前記凸部と嵌合可能に構成された凹部とを含んで構成され、前記凹部が前記凸部に嵌合される際に前記回動体の回動方向において前記凹部と前記凸部とが互いに当接することで前記直交面と前記対向面との間に第2間隙を形成させると共に前記第2間隙が前記第1間隙に比して大きく設定された被節度付与部と、を備えている。
【0009】
請求項1に記載の車両用ミラー装置では、車体に組付けられたステーに支持部材が固定されており、支持部材の支持軸に回動体が回動可能に支持されている。この回動体には、アウタミラーを収容する収容部材が結合されている。これにより、収容部材が支持軸回りに回動可能に構成されている。このため、例えば、非常時に車両前方へ向けて配置する前可倒位置とアウタミラーを車両後方へ向けて配置する使用位置とアウタミラーを車体側へ向けて配置する格納位置との間で、収容部材を回動できる。そして、収容部材とステーとの間には、上下方向において、第1間隙が形成されている。
【0010】
また、支持部材には、節度付与部が設けられている。節度付与部は、支持軸と直交する方向に配置された直交面を有しており、直交面には、直交面から上方へ突出された凸部が設けられている。
【0011】
一方、回動体には、被節度付与部が設けられている。この被節度付与部には、直交面に対して上方の位置において、直交面と対向する対向面が設けられている。また、対向面には凹部が形成されており、凹部は凸部と勘合可能に構成されている。これにより、回動体の回動によって凹部と凸部との勘合が解除されて、凸部が凹部の内周面上及び対向面上を摺動する構成にすることで、回動体を介して収容部材へ節度感を付与させることができる。
【0012】
ところで、凸部が凹部の内周面上及び対向面上を繰り返し摺動することによって、凸部が磨耗する可能性がある。仮に凸部が磨耗すると、凸部の外形が小さくなるため、凹部が凸部に嵌合される際に、凹部と凸部との間にガタが発生する可能性がある。
【0013】
ここで、凹部が凸部に嵌合される際に回動体の回動方向において凹部と凸部とが互いに当接することで、直交面と対向面との間に第2間隙が形成される。このため、仮に凸部が磨耗して凸部の外形が小さくなっても、第2間隙がなくなるまで(対向面が直交面に当接するまで)は、回動体の回動方向において凹部と凸部とが互いに当接された状態で、凹部と凸部とが勘合される。これにより、ステーに対する収容部材のガタが直ちに発生することを抑制できる。
【0014】
そして、収容部材が回動体に結合されているため、仮に凸部が磨耗して第2間隙が小さくなると、第1間隙が小さくなる(収容部材がステーに接近する)。ここで、第2間隙が第1間隙に比して大きく設定されている。このため、仮に凸部の磨耗量が大きくなり、最終的に収容部材がステーに当接した際(第1間隙がなくなる際)でも、対向面と直交面との間に第2間隙が形成されているため、回動体の回動方向において凹部と凸部とが互いに当接されている。これにより、例えば、収容部材がステーに当接した際を車両用ミラー装置の使用寿命の1つの目安とされる場合においても、回動体の回動方向において凹部と凸部とが互いに当接されるため、ステーに対する収容部材のガタを抑制できる。
【0015】
請求項2に記載の車両用ミラー装置は、請求項1に記載の車両用ミラー装置において、前記凸部は、前記直交面に対して第1角度に傾斜された一対の凸部傾斜面を含んで構成され、前記凹部は、前記対向面に対して第2角度に傾斜された一対の凹部傾斜面を含んで構成され、前記第1角度が前記第2角度に比して小さく設定されている。
【0016】
請求項2に記載の車両用ミラー装置では、凸部が、一対の凸部傾斜面を含んで構成されており、凸部傾斜面は直交面に対して第1角度に傾斜されている。また、凹部は、一対の凹部傾斜面を含んで構成されており、凹部傾斜面は、対向面に対して第2角度に傾斜されている。
【0017】
ここで、第1角度が第2角度に比して小さく設定されている。このため、凹部が凸部に勘合する際に、凹部傾斜面と対向面との境界部分が凸部傾斜面に当接するように構成できるため、凸部傾斜面と凹部傾斜面とが面で当接しない。これにより、凸部と凹部とを安定して当接させることができるため、第2間隙の間隙寸法を安定化できる。しかも、凸部傾斜面と凹部傾斜面とが面で当接しないため、凸部が凹部を摺動する際の摺動抵抗を低減できる。
【0018】
請求項3に記載の車両用ミラー装置は、請求項1又は請求項2に記載の車両用ミラー装置において、上下方向において前記凸部と前記凹部との間には第3間隙が形成されている。
【0019】
請求項3に記載の車両用ミラー装置では、凸部と凹部との間に、上下方向において、第3間隙が形成されているため、収容部材の回動によって仮に凸部が磨耗しても、上下方向における凸部と凹部との間の第3間隙を維持できる。換言すると、回動体の回動方向において凹部と凸部とが互いに当接しているため、凸部が磨耗した量に応じて凹部が凸部に接近するが、凸部が磨耗した量に応じて凸部の外形が凹部から離間する。これにより、第2間隙がなくなる前に、凹部及び凸部における互いに当接される当接部位以外の部分が当接することを抑制できる。したがって、当該当接部位以外の部分によって、ステーに対する収容部材のガタが発生することを抑制できる。
【0020】
請求項4に記載の車両用ミラー装置は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両用ミラー装置において、前記凸部と前記凹部とが嵌合される際の上下方向におけるオーバーラップ量が前記第2間隙に比して大きく設定されている。
【0021】
請求項4に記載の車両用ミラー装置では、凸部と凹部とが嵌合される際の上下方向におけるオーバーラップ量が第2間隙に比して大きく設定されているため、仮に凸部が磨耗して、直交面と対向面とが当接しても(第2間隙がなくなっても)、上下方向において凸部と凹部とがオーバーラップしている。このため、上下方向において凸部と凹部とは常にオーバーラップするため、凸部と凹部とによって収容部材に対して節度感を常に付与できる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の車両用ミラー装置によれば、仮に凸部が磨耗してもステーに対する収容部材のガタの発生を抑制できる。
【0023】
請求項2に記載の車両用ミラー装置によれば、第2間隙の寸法を安定化できる。
【0024】
請求項3に記載の車両用ミラー装置によれば、凹部及び凸部における互いに当接される当接部位以外の部分によるステーに対する収容部材のガタの発生を抑制できる。
【0025】
請求項4に記載の車両用ミラー装置によれば、凸部及び凹部によって収容部材に対して節度感を常に付与できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置に用いられる嵌合凹部と嵌合凸部との嵌合状態を示す支持軸の径方向外側から見た拡大した断面図(図4の1−1線断面図)である。
【図2】本発明の実施の形態に係る車両用ドアミラー装置を示す車両後方から見た正面図である。
【図3】図2に示される車両用ドアミラー装置を示す断面図(図2の3−3線断面図)である。
【図4】図2に示される車両用ドアミラー装置の主要部を分解した斜め上方から見た斜視図である。
【図5】図2に示される車両用ドアミラー装置の主要部を分解した斜め下方から見た斜視図である。
【図6】図4に示される主要部を示す縦断面図(図3の6−6線断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本実施の形態では、先に、本発明の実施の形態に係る「車両用ミラー装置」としての車両用ドアミラー装置10の全体の構成について説明し、次いで、本発明の要部である節度機構54の構成について説明する。
【0028】
(車両用ドアミラー装置10の全体の構成について)
【0029】
図2には、車両用ドアミラー装置10の全体が車両後方から見た正面図にて示されており、図3には、車両用ドアミラー装置10が車幅方向外側から見た断面図にて示されている。なお、図面に適宜示される矢印FRは車両前方を示し、矢印OUTは車幅方向外側(車両右方)を示し、矢印UPは上方を示している。また、車両用ドアミラー装置10は、車両のドア(図示省略)に設置されて、車両の車幅方向外側に配置されている。
【0030】
これらの図に示すように、車両用ドアミラー装置10は、ステー12と、「支持部材」としてのスタンド22と、「回動体」としてのケース34と、「収容部材」としてのバイザ46と、を含んで構成されている。
【0031】
ステー12は、車両のドアの車幅方向外側に配置されており、ステー12の車幅方向内側部分が車両のドア(車体)に固定されている。ステー12には、車幅方向外側の部分において、後述するスタンド22を収容するスタンド収容部14が設けられている。図3に示すように、スタンド収容部14は、上方及び下方へ開放されており、スタンド収容部14の下方の開口部は、ロアカバー16によって塞がれている。スタンド収容部14には、後述するスタンド22を固定するための3箇所の固定部18が設けられている(図3には、1箇所の固定部18のみ示されている)。固定部18は、上下方向と直交する方向に沿って配置されており、固定部18には、挿通孔20が上下方向に沿って貫通形成されている。
【0032】
図3〜図6に示すように、スタンド22は、ステー12のスタンド収容部14内に配置されている。スタンド22は、樹脂により製作されており、スタンド22の下部には、略円柱形状のスタンド側ベース部24が設けられている。スタンド側ベース部24には、下端部において、3箇所の被固定部26が設けられている(図5参照)。被固定部26は、有底円筒状に形成されると共に、スタンド側ベース部24から下方へ突出されて、固定部18に対応する位置に配置されている。そして、ステー12の固定部18の挿通孔20内にスクリュー28が挿通されて、スクリュー28によって、被固定部26が固定部18に締結(固定)されている(図3参照)。これにより、スタンド22がステー12を介して車両のドア(車体)に連結されている。
【0033】
スタンド側ベース部24の略中央部には、略円筒状の支持軸30が設けられており、支持軸30はスタンド側ベース部24から上方へ突出されている。支持軸30の上端部には、外周部において、溝部32が設けられており、溝部32は、支持軸30の径方向外側に開放されると共に、支持軸30の周方向に沿って形成されている。
【0034】
ケース34は、樹脂により製作されて、スタンド側ベース部24の上方に設けられている。ケース34は、略円筒形状のケース側ベース部36を有している。ケース側ベース部36の略中央部には、支持孔38が上下方向に沿って貫通形成されており、支持孔38内にスタンド22の支持軸30が挿入されると共に、支持軸30の上端部がケース側ベース部36に対して上方に突出されている。これにより、ケース34が、スタンド22の支持軸30に回動可能に支持されている。
【0035】
図4に示すように、ケース側ベース部36の上部には、支持孔38の径方向外側において、後述する圧縮バネ88を収容するためのバネ収容部40が設けられている。バネ収容部40は、支持孔38の周方向に沿って凹状に形成されると共に、上方へ開放されている。
【0036】
また、ケース34には、ケース側ベース部36の車幅方向外側において、支持部42が設けられており、支持部42は、ケース側ベース部36から支持孔38の径方向外側へ突出されて、ケース側ベース部36と一体に形成されている。支持部42には、後述するバイザ46を締結させるための4箇所の締結部44が設けられている(図5参照)。
【0037】
図3に示すように、バイザ46は、バイザ46の車両後方部分を構成する本体部48とバイザ46の車両前方部分を構成するカバー部50とを含んで構成されており、本体部48にカバー部50が組み付けられて一体にされている。バイザ46は、略直方体形容器状に形成されており、バイザ46の車両後方面が開放されている。バイザ46内には、バイザ46の開放部分において、アウタミラー52が設けられており、バイザ46によってアウタミラー52の全周部及び車両前方面が覆われている(図2参照)。また、アウタミラー52は、アウタミラー52の鏡面を車両後方へ向けて配置されており、アウタミラー52によって乗員が車両後方を視認可能にされている。
【0038】
また、バイザ46は、スタンド22及びケース34を収容した状態で、両者を覆っており、ケース34の締結部44の部位において、図示しないスクリュー等の締結部材によってバイザ46がケース34に締結(結合)されている。これにより、バイザ46はスタンド22の支持軸30回りに回動可能に構成されており、図2に示される使用位置とアウタミラー52が車両のドアと略対向して配置される格納位置との間で、バイザ46が回動可能に構成されている。なお、非常時には、アウタミラー52が略車幅方向外側へ向けて配置される前可倒位置にバイザ46が回動できるように構成されている。
【0039】
さらに、図3に示すように、バイザ46の下部とステー12との間には、上下方向において、「第1間隙」としての間隙G1が形成されている。これにより、初期状態において、バイザ46とステー12とが、上下方向において当接されないように構成されている。
【0040】
(節度機構54の構成について)
【0041】
次に、節度機構54の構成について説明する。図4及び図5に示すように、節度機構54は、スタンド22に設けられた節度付与部56と、ケース34に設けられた被節度付与部68と、圧縮バネ88(広義には、「付勢部材」として把握される要素である)と、バネ座金84(広義には、「制限部材」として把握される要素である)とを含んで構成されている。
【0042】
図4に示すように、節度付与部56は、スタンド側ベース部24の上部において、支持軸30の径方向外側に設けられている。節度付与部56は、直交面58を有しており、直交面58は、支持軸30の軸方向(上下方向)に対して直交する方向に沿って配置されている。
【0043】
直交面58には、複数(本実施の形態では3つ)の「凸部」としての嵌合凸部60が設けられており、嵌合凸部60は、直交面58に対して上方に突設されている(図4には、2箇所の嵌合凸部60のみ示されている)。嵌合凸部60は、支持軸30から支持軸30の径方向外側へ放射状に延在されると共に、支持軸30の周方向に所定間隔毎(120°毎に)に配置されている。また、嵌合凸部60の断面は、支持軸30の径方向から見て、台形状に形成されている。
【0044】
図1に示すように、嵌合凸部60は、一対の凸部傾斜面62A、62Bを有している。なお、図1では、説明の便宜上、ハッチングを省略している。この凸部傾斜面62A、62Bは、上方へ向かうに従い互いに接近する方向へ傾斜されており、凸部傾斜面62A、62Bと直交面58との間の成す角度が、「第1角度」としての角度θ1に設定されている。凸部傾斜面62A、62Bの上端には、上面64が掛け渡されており、上面64は支持軸30の軸方向に対して直交する方向に沿って配置されている。また、上面64と凸部傾斜面62A、62Bとの境界部分が、それぞれ凸部境界部66A、66Bとされている。さらに、支持軸30の径方向から見た嵌合凸部60の断面において、嵌合凸部60の下端における幅寸法(凸部傾斜面62A、62Bと直交面58との境界部分間の寸法)が幅寸法W1とされている。
【0045】
図5に示すように、被節度付与部68は、ケース側ベース部36の下端部に設けられると共に、スタンド22の節度付与部56の上方において、節度付与部56と対向する位置に形成されている。被節度付与部68は対向面70を有しており、対向面70は、嵌合凸部60と対向する位置において円環状に形成されると共に、スタンド22の直交面58と平行に配置されている。
【0046】
対向面70には、複数(本実施の形態では3つ)の「凹部」としての嵌合凹部72が設けられており、嵌合凹部72は下方へ開放されている。嵌合凹部72は、支持軸30の径方向に沿って放射状に延在されると共に、支持軸30の周方向に所定間隔毎(120°毎に)に配置されている。また、嵌合凹部72の断面は、支持軸30の径方向から見て、台形状に形成されている。
【0047】
図1に示すように、嵌合凹部72は、一対の凹部傾斜面74A、74Bを有している。凹部傾斜面74A、74Bは、上方へ向かうに従い互いに接近する方向へ傾斜されており、凹部傾斜面74A、74Bと対向面70との間の成す角度は、「第2角度」としての角度θ2とされている。また、角度θ2は角度θ1に比して大きく設定されており、具体的には、角度θ2と角度θ1との差が、0.5°以上となるように設定されている。一対の凹部傾斜面74A、74Bの上端には、底面76が掛け渡されており、底面76は嵌合凸部60の上面64と平行に配置されている。
【0048】
また、凹部傾斜面74A、74Bと対向面70との境界部分は、それぞれ凹部境界部78A,78Bとされており、凹部境界部78A,78Bの断面は円弧状に形成されている。さらに、支持軸30の径方向から見た嵌合凹部72の断面において、嵌合凹部72の開口部の幅寸法W2(一対の凹部境界部78A,78B間の寸法)は、嵌合凸部60の幅寸法W1に比して小さく設定されている。
【0049】
さらに、図5に示すように、対向面70には、各嵌合凹部72の間の位置において、下方へ開放された3箇所の摺動凹部80が設けられている。この摺動凹部80は、支持軸30の周方向に所定間隔毎(120°毎に)に配置されると共に、支持軸30の周方向に嵌合凹部72に比して長く延伸されている。また、摺動凹部80の上下方向の深さは、嵌合凹部72の上下方向の深さに比して浅く設定されている。
【0050】
ここで、図1に示すように、バイザ46が使用位置又は格納位置に回動された際には、嵌合凹部72内に嵌合凸部60が配置されて、嵌合凹部72が嵌合凸部60に嵌合されるように構成されている。また、角度θ2が角度θ1に比して大きく設定されると共に、幅寸法W1が幅寸法W2に比して大きく設定されているため、嵌合凹部72が嵌合凸部60に嵌合される際には、嵌合凹部72の一対の凹部境界部78A,78Bが嵌合凸部60の凸部傾斜面62A、62Bに当接されている。つまり、ケース34(バイザ46)の回動方向(図1の矢印A方向及び矢印B方向)において、嵌合凹部72と嵌合凸部60とが当接されている。
【0051】
また、ケース34の回動方向において嵌合凹部72の一対の凹部境界部78A,78Bが嵌合凸部60の凸部傾斜面62A、62Bに当接されることで、直交面58と対向面70との間には、上下方向において、「第2間隙」としての間隙G2が形成されており、間隙G2の寸法は間隙G1の寸法に比して大きく設定されている。さらに、嵌合凸部60の上面64と嵌合凹部72の底面76との間には、上下方向において、「第3間隙」としての間隙G3が形成されており、間隙G3の寸法は間隙G2の寸法に比して小さく設定されている。またさらに、嵌合凸部60と嵌合凹部72との上下方向におけるオーバーラップ量H(上下方向における嵌合凸部60の上面64と対向面70との間の寸法)は、間隙G2に比して大きく設定されている。
【0052】
そして、バイザ46が使用位置と格納位置との間で回動される際には、ケース34が支持軸30回りに回動されて、ケース34の被節度付与部68がスタンド22の節度付与部56に対して相対回動する。この際には、嵌合凸部60が、嵌合凹部72からこの嵌合凹部72に隣接する次の嵌合凹部72に配置されて、当該隣接する嵌合凹部72が嵌合凸部60に嵌合するように構成されている。
【0053】
一方、図4及び図5に示すように、バネ座金84は、略円環板状に形成されている。バネ座金84の内周部には、複数(本実施の形態では6つ)の規制部86が設けられており、各規制部86は、バネ座金84の径方向内側へ向かうに従い上方へ傾斜するように屈曲されている。バネ座金84内には、支持軸30の上端部が挿入されており、規制部86の先端部が支持軸30の溝部32と係合されている。これにより、バネ座金84の上方への移動が制限されている。
【0054】
圧縮バネ88は、上下方向に沿って螺旋状に形成されて、ケース34のバネ収容部40とバネ座金84との間に設けられている。そして、圧縮バネ88が自然状態(圧縮バネ88に付勢力が作用していない状態)から圧縮された状態で、圧縮バネ88の下端がケース34のバネ収容部40の底面に当接されると共に、圧縮バネ88の上端がバネ座金84に当接されている。これにより、圧縮バネ88は、ケース34を下方へ付勢して、嵌合凹部72を嵌合凸部60へ嵌合させる方向へ付勢している。
【0055】
次に、本実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0056】
以上の構成の車両用ドアミラー装置10では、バイザ46の使用位置において、嵌合凹部72の凹部境界部78A,78Bが嵌合凸部60の一対の凸部傾斜面62A、62Bに当接された状態で、嵌合凹部72が嵌合凸部60と嵌合されている。また、圧縮バネ88は、嵌合凹部72を嵌合凸部60へ嵌合させる方向へ付勢しているため、圧縮バネ88の付勢力によって凹部境界部78A,78Bが凸部傾斜面62A、62Bを押圧して、ステー12に対してバイザ46がガタなく設置されている。
【0057】
次に、バイザ46を使用位置から格納位置へ回動させる際について説明する。バイザ46を使用位置から格納位置へ向けて回動させると、ケース34がスタンド22に対して支持軸30回りに相対回動される。換言すると、スタンド22が、バイザ46の回動方向とは反対方向(図1の矢印A方向)へケース34に対して相対回動する。このため、圧縮バネ88の付勢力に抗して、凸部傾斜面62Aが凹部境界部78A上を摺動する。これにより、圧縮バネ88の付勢力に抗してケース34がスタンド22に対して上方へ相対移動される。
【0058】
そして、嵌合凸部60の凸部境界部66Aが、嵌合凹部72の凹部境界部78Aに到達すると、ケース34の対向面70上を嵌合凸部60の上面64が摺動する。
【0059】
バイザ46が格納位置へ向けてさらに回動されると、嵌合凸部60の凸部境界部66Bが、対向面70と摺動凹部80との境界部分に到達し、摺動凹部80の内周面上を摺動する。したがって、圧縮バネ88の付勢力によってケース34がスタンド22に対して下方へ相対移動される。これにより、嵌合凸部60が嵌合凹部72から摺動凹部80へ移動(回動)される際に、嵌合凸部60が対向面70を通過することで、バイザ46に節度感が付与される。
【0060】
そして、バイザ46が格納位置へ向けてさらに回動されると、嵌合凸部60の凸部境界部66Aが、次の対向面70に到達し、嵌合凸部60の上面64が対向面70と摺動する。
【0061】
さらに、嵌合凸部60の凸部境界部66Bが、次の嵌合凹部72の凹部境界部78Bに到達すると、凸部境界部66Bが次の嵌合凹部72の凹部傾斜面74B上を摺動して、次の嵌合凹部72と嵌合凸部60とが嵌合する。したがって、嵌合凸部60が摺動凹部80から次の嵌合凹部72へ移動(回動)される際に、嵌合凸部60が次の対向面70を通過することで、バイザ46に節度感が付与される。
【0062】
以上により、バイザ46が使用位置から格納位置へ回動されて、嵌合凹部72の凹部境界部78A,78Bが嵌合凸部60の凸部傾斜面62A、62Bに当接された状態で、嵌合凹部72が嵌合凸部60と嵌合される。そして、この際にも、圧縮バネ88が嵌合凹部72を嵌合凸部60へ嵌合させる方向へ付勢しているため、圧縮バネ88の付勢力によって凹部境界部78A,78Bが凸部傾斜面62A、62Bを押圧して、ステー12に対してバイザ46がガタなく設置される。
【0063】
ところで、上述したように、ケース34がスタンド22に対して相対回動する際には、嵌合凸部60が嵌合凹部72上、対向面70上、及び摺動凹部80上を常に摺動するため、嵌合凹部72に比して嵌合凸部60が磨耗されやすく構成にされている。
【0064】
このため、バイザ46が繰り返し回動されて、仮に嵌合凸部60が磨耗すると、嵌合凸部60の外形が小さくなるため、嵌合凹部72と嵌合凸部60との嵌合状態において、嵌合凹部72と嵌合凸部60との間にガタが発生する可能性がある。
【0065】
ここで、嵌合凹部72が嵌合凸部60に嵌合される際には、ケース34の回動方向において嵌合凹部72の凹部境界部78A,78Bと嵌合凸部60の凸部傾斜面62A、62Bとが互いに当接することで、直交面58と対向面70との間に間隙G2が形成されている。このため、仮に嵌合凸部60が磨耗して嵌合凸部60の外形が小さくなっても、間隙G2がなくなるまで(対向面70が直交面58に当接するまで)は、ケース34の回動方向において凹部境界部78A,78Bと凸部傾斜面62A、62Bとが互いに当接された状態で、嵌合凹部72と嵌合凸部60とが勘合される。これにより、ステー12に対するバイザ46のガタが直ちに発生することを抑制できる。
【0066】
そして、バイザ46がケース34に結合(締結)されているため、仮に嵌合凸部60が磨耗して間隙G2が小さくなると、間隙G1が小さくなる(バイザ46がステー12に接近する)。ここで、間隙G2が間隙G1に比して大きく設定されている。このため、仮に嵌合凸部60の磨耗量が大きくなり、最終的にバイザ46がステー12に当接した際(間隙G1がなくなる際)でも、対向面70と直交面58との間に間隙G2が形成されているため、ケース34の回動方向において凹部境界部78A,78Bと凸部傾斜面62A、62Bとが互いに当接されている。これにより、例えば、バイザ46がステー12に当接した際を車両用ドアミラー装置10の使用寿命の1つの目安とされる場合においても、ケース34(バイザ46)の回動方向において嵌合凹部72と嵌合凸部60とが互いに当接されるため、ステー12に対するバイザ46のガタを抑制できる。
【0067】
以上により、バイザ46が繰り返し回動されることによって、仮に嵌合凸部60が磨耗しても、バイザ46の回動方向におけるステー12に対するバイザ46のガタを抑制できる。
【0068】
また、直交面58と凸部傾斜面62A、62Bとの成す角度θ1が、対向面70と凹部傾斜面74との成す角度θ2に比して小さく設定されている。このため、嵌合凹部72が嵌合凸部60に勘合する際に、凹部境界部78A,78Bが凸部傾斜面62A、62Bに当接するため、凸部傾斜面62A、62Bと凹部傾斜面74A、74Bとが面で当接しない。これにより、嵌合凸部60と嵌合凹部72とを安定して当接させることができるため、間隙G2の寸法を安定化できる。しかも、凸部傾斜面62A、62Bと凹部傾斜面74A、74Bとが面で当接しないため、凸部傾斜面62A、62Bが凹部境界部78A,78Bを摺動する際の摺動抵抗を低減できる。
【0069】
さらに、上下方向における嵌合凸部60の上面64と嵌合凹部72の底面76との間には、間隙G3が形成されている。このため、仮に嵌合凸部60が磨耗しても、この間隙G3を維持できる。換言すると、凹部境界部78A,78Bが凸部傾斜面62A、62Bに当接しているため、嵌合凸部60が磨耗した量に応じて嵌合凹部72が嵌合凸部60に接近するが、嵌合凸部60が磨耗した量に応じて嵌合凸部60の上面64及び凸部傾斜面62A、62Bが嵌合凹部72から離間する。これにより、間隙G2がなくなる前に嵌合凸部60の上面64と嵌合凹部72の底面76とが当接することを抑制できる。したがって、嵌合凸部60の上面64と嵌合凹部72の底面76とが当接されることで、ステー12に対するバイザ46のガタが発生することを抑制できる。
【0070】
また、嵌合凹部72と嵌合凸部60とが嵌合される際の上下方向におけるオーバーラップ量Hが、間隙G2に比して大きく設定されている。このため、仮に嵌合凸部60が磨耗して、直交面58と対向面70とが当接しても(間隙G2がなくなっても)、上下方向において嵌合凸部60と嵌合凹部72とがオーバーラップしている。このため、嵌合凸部60と嵌合凹部72とによって、バイザ46が回動される際のバイザ46に対する節度感を常に付与できる。
【0071】
さらに、ケース34の凹部境界部78A,78Bの断面が円弧状に形成されている。これにより、凸部傾斜面62A、62Bと凹部境界部78A,78Bとが線接触されるため、凸部傾斜面62A、62Bが凹部傾斜面74A、74B上を摺動する際の摺動抵抗を一層低減できる。
【0072】
また、スタンド22が樹脂により製作されているため、車両用ドアミラー装置10を軽量化でき、車両用ドアミラー装置10のコストアップを抑制できる。
【0073】
なお、本実施の形態では、スタンド22が樹脂により製作されている。これに替えて、スタンド22を金属により製作して、インサート成形などにより嵌合凸部60を樹脂により製作してもよい。また、スタンド22全体を金属により製作してもよい。これにより、嵌合凸部60の磨耗を一層抑制できる。
【0074】
また、本実施の形態では、嵌合凹部72が嵌合凸部60に嵌合される際に、凹部境界部78A,78Bが凸部傾斜面62A、62Bに当接するように構成されている。これに替えて、嵌合凹部72が嵌合凸部60に嵌合される際に、凹部傾斜面74A、74Bが凸部傾斜面62A、62Bに面で当接されるように構成してもよい。
【0075】
さらに、本実施の形態では、直交面58と凸部傾斜面62A、62Bとの成す角度θ1が、対向面70と凹部傾斜面74との成す角度θ2に比して小さく設定されている。これに替えて、対向面70と凹部傾斜面74との成す角度θ2を直交面58と凸部傾斜面62A、62Bとの成す角度θ1に比して小さく設定してもよい。
【符号の説明】
【0076】
10 車両用ドアミラー装置(車両用ミラー装置)
12 ステー
22 スタンド(支持部材)
30 支持軸
34 ケース(回動体)
46 バイザ(収容部材)
52 アウタミラー
56 節度付与部
58 直交面
60 嵌合凸部(凸部)
62A 凸部傾斜面
62B 凸部傾斜面
68 被節度付与部
70 対向面
72 嵌合凹部(凹部)
74A 凹部傾斜面
74B 凹部傾斜面
G1 間隙(第1間隙)
G2 間隙(第2間隙)
G3 間隙(第3間隙)
θ1 角度(第1角度)
θ2 角度(第2角度)
H オーバーラップ量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に組付けられたステーに固定され、支持軸を含んで構成された支持部材と、
前記支持軸に回動可能に支持された回動体と、
前記回動体に結合され、アウタミラーを収容すると共に、上下方向において前記ステーとの間に第1間隙が形成されるように配置された収容部材と、
前記支持部材に設けられ、前記支持軸と直交する方向に配置された直交面と前記直交面から上方へ突出された凸部とを含んで構成され、かつ前記回動体が回動する際に前記収容部材に節度感を付与するための節度付与部と、
前記回動体に設けられると共に、前記直交面の上方に前記直交面と対向して配置された対向面と前記対向面に設けられて前記凸部と嵌合可能に構成された凹部とを含んで構成され、前記凹部が前記凸部に嵌合される際に前記回動体の回動方向において前記凹部と前記凸部とが互いに当接することで前記直交面と前記対向面との間に第2間隙を形成させると共に前記第2間隙が前記第1間隙に比して大きく設定された被節度付与部と、
を備えた車両用ミラー装置。
【請求項2】
前記凸部は、前記直交面に対して第1角度に傾斜された一対の凸部傾斜面を含んで構成され、
前記凹部は、前記対向面に対して第2角度に傾斜された一対の凹部傾斜面を含んで構成され、
前記第1角度が前記第2角度に比して小さく設定された請求項1に記載の車両用ミラー装置。
【請求項3】
上下方向において前記凸部と前記凹部との間には第3間隙が形成された請求項1又は請求項2に記載の車両用ミラー装置。
【請求項4】
前記凸部と前記凹部とが嵌合される際の上下方向におけるオーバーラップ量が前記第2間隙に比して大きく設定された請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両用ミラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−103656(P2013−103656A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249954(P2011−249954)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】