説明

車両用ランプ

【課題】自動車のフェンダーに配設したランプによる自車両の乗員に対する眩惑を防止した車両用ランプを提供する。
【解決手段】自動車CARのフェンダーFDに配設したランプHLであって、当該ランプHLから出射される光のうち当該車両の乗員席(乗員の眼EYE)に向けて出射される光を遮光する遮光手段4を備える。遮光手段4はランプHLに設けられたルーバ4で構成され、例えばランプHLに設けられたエクステンション3又はアウターレンズ12と一体に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両用ランプに関し、特に自動車のフェンダーに配備されるヘッドランプ等の車両用ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車、特に車体の小型化を図った自動車では、車体の小型化に伴ってエンジンルームも狭くなり、エンジンルーム内におけるエンジンや各種部品の配設に制約を受け易くなる。このことはエンジンルーム内に臨んで配設しているヘッドランプについても同様であり、エンジンルーム内のスペースを確保するためにヘッドランプの小型化が要求され、そのためにヘッドランプの設計、製造が難しく、かつ所要の照射光量を得ることが困難になる。特許文献1ではヘッドランプを自動車の車体前部左右のフェンダーに配設する技術が開示されており、このようにヘッドランプをフェンダーに配設することでエンジンルーム内における各種部品を配設するためのスペースが確保できるとともに、ヘッドランプの小型化の要求が緩和されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−121399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようにヘッドランプをフェンダーに配設する場合、自動車のデザイン上の要求や、ヘッドランプと車体の寸法関係からヘッドランプの一部がフェンダーの後方領域にまで延長配置されることが考えられる。このような場合、ヘッドランプの前面カバーやアウターレンズが自動車の運転席や助手席に着座している乗員の視覚に入るようになり、ヘッドランプから出射した照射光が前面カバーやアウターレンズで屈折されあるいは内面反射されたときに当該屈折光や反射光が当該乗員の眼に入り、乗員を眩惑してしまうおそれがある。通常のランプではランプ本来の照射領域を外れた方向に出射される光を遮光するためのエクステンション等の遮光手段が設けられているが、照射領域に向けられた光の一部が前面カバーやアウターレンズにおいて屈折されて乗員に向けられることがあり、特にフェンダーに配置したヘッドランプでは前面カバーやアウターレンズでの屈折による眩惑が著しいものになる。このような問題はフォグランプやその他のランプをフェンダーに配設した場合にも生じることになる。
【0005】
本発明の目的はフェンダーに配設したランプによる自車両の乗員に対する眩惑を防止した車両用ランプを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は車両のフェンダーに配設したランプであって、当該ランプから出射される光のうち当該車両の乗員席に向けて出射される光を遮光する遮光手段を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明において、遮光手段はランプに設けられ、少なくとも前記乗員席に向けた方向に重ねられている複数のルーバ片を有するルーバで構成される。例えば、ルーバはランプに設けられたエクステンション又はアウターレンズと一体に形成される。あるいは、本発明において遮光手段は車両のフロントスポイラで構成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ランプから出射された光のうち、乗員席に向けて出射される光を遮光手段によって遮光するので乗員に対する眩惑を防止する。遮光手段をルーバで構成することにより、車両の前方からの視認性が得られるとともに前方に向けて光を照射することが可能とされる一方でランプの後方に存在する乗員に向けての光を遮光して乗員への眩惑が防止できる。遮光手段としてのルーバをエクステンション又はアウターレンズと一体に形成することによりランプを構成する部品点数の増加が回避できる。また、遮光手段をフロントスポイラで構成することにより既存のランプを用いて本発明が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明を適用した自動車の外観図。
【図2】本発明にかかるヘッドランプの上面図。
【図3】図1の自動車の前後方向に沿った要部の概略断面図。
【図4】実施形態1のヘッドランプの断面図。
【図5】実施形態2のヘッドランプの断面図。
【図6】実施形態3のヘッドランプを適用した自動車の要部の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明を小型自動車、ここでは電気自動車のヘッドランプに適用した実施形態1の外観図、図2は当該ヘッドランプの上面図、図3は図1の自動車の前後方向に沿った概略断面図である。自動車CARは車体の前部左右のフェンダーFDの上面がフロントガラスFGから車体前部のグリル部GRに向けて緩やかに下方に傾斜した曲面に形成されており、これら左右のフェンダーFDに左右のヘッドランプHLが配設されている。これらのヘッドランプHLは詳細を後述するように光照射面となるアウターレンズ12を有するランプハウジング1を有しており、前記フェンダーFDの上面一部を切り欠いて設けた開口部内に当該ランプハウジング1が埋設状態に配設されるとともに、そのアウターレンズ12で前記フェンダーFDの切り欠いた上面一部を構成している。
【0011】
図4は前記ヘッドランプHLの拡大断面図であり、ヘッドランプHLは前面から上面にわたる領域が開口された断面形状がL字型をしたランプボディ11と、このランプボディ11の前記開口を覆うように固定された光透過性樹脂からなるアウターレンズ12とでランプハウジング1を構成している。このランプハウジング1は前記フェンダーFDの開口部内に配設したときに前記アウターレンズ12がフェンダーFDの上面の一部を構成することは前記した通りである。また、前記ランプハウジング1内にはランプユニット2が内装され、このランプユニット2から出射した光を前記アウターレンズ12を通して自動車CARの前方に照射する。さらに、前記ランプハウジング1内にはアウターレンズ12を透してランプハウジング1内のランプユニット2以外の領域が外部に露見することを防止するための疑似リフレクタ(エクステンション)3が配設されている。
【0012】
前記ランプハウジング1内に配設されている前記ランプユニット2はプロジェクタ型のランプユニットとして構成されている。このランプユニット2の詳細については省略するが、回転楕円面を基礎としたリフレクタ22と、このリフレクタ22内に配設された光源、ここではLED(発光ダイオード)21と、リフレクタ22で反射されたLED21からの光を前方に向けて照射する照射レンズ23とを含んで構成されている。前記LED21、リフレクタ22、照射レンズ23はベース体24によって一体化されてユニットとして構成されている。
【0013】
前記エクステンション3は樹脂を成形して形成するとともに、成形した樹脂の表面にアルミニウムの蒸着や塗装を施している。このエクステンション3は前記ランプユニット2の照射レンズ23に対応する領域を開口して当該照射レンズ23を自車の前方に向けて露呈させているが、その他の領域は前記ランプハウジング1の内部を覆い隠す形状とされている。また、このエクステンション3の前記ランプユニット2の上側を覆って前記アウターレンズ12の内面に沿って延長されている領域、すなわちランプユニット2のほぼ直上の領域は本発明の遮光手段として構成されている。この遮光手段は、自動車の前方に向けて上方に傾斜させた車幅方向に細長い複数枚のルーバ片41を前後方向に配列したルーバ4として構成されており、前記エクステンション3と一体に形成されている。前記複数のルーバ片41の傾斜角度は自動車の前方から人間がヘッドランプHLを観察したときにアウターレンズ12を透して照射レンズ23ないしランプユニット2が視認できるような角度に形成されている。あるいは、前記ランプユニット2から出射された光がルーバ片41の間を透して自車の前方の上方領域に向けて照射することが可能な角度であってもよい。また、その一方で前記複数のルーバ片41は自動車のフロントガラス側、特に運転席や助手席等の乗員席に着座した乗員の眼EYEからの視線方向に対しては隣接するルーバ片41が板厚方向に重なり、ルーバ片41の間を透してランプユニット2ないしその直上領域を視認することができないように構成されている。
【0014】
この実施形態1のヘッドランプHLでは、ランプハウジング1を自動車のフェンダーFDに設けた凹部内に埋設状態に配設しているので、左右のフェンダーFD間に区画されるエンジンルーム内のスペースの有効利用を図ることができることは勿論である。ヘッドランプHLを点灯したときには、ランプユニット2の光源21から出射した光はリフレクタ22で反射された後、照射レンズ23によって集光されながらアウターレンズ12を透過して自動車の前方に向けて照射される。特に、自車の前方の上方領域を照明する配光が要求される場合には、投射レンズ23から出射された上向きの光はルーバ4を通して、すなわち複数のルーバ片41の隙間を通して前上方に照射されることになる。これにより、所望の配光での光照射が実現される。さらに、自動車CARの前方から人間がヘッドランプHLを観察したときにアウターレンズ12を透して照射レンズ23ないしランプユニット2が視認でき、ヘッドランプHLの意匠性が確保される。
【0015】
一方、図3に示すように、乗員の眼EYEからヘッドランプHLを見たときには、ランプハウジング1内に設けたルーバ4によってランプユニット2が隠され、ランプユニット2を見ることはできない。そのため、ルーバ4が存在しない場合にはランプユニット2から出射される光の一部は投射レンズ23での屈折やランプユニット2の各部での反射によってランプユニット2のほぼ直上に向けられ、アウターレンズ12を透過する際にここで屈折されて自動車CARのフロントガラスFG方向に出射されて乗員の眼EYEに入って乗員を眩惑する眩惑光となるが、ここではルーバ4の複数のルーバ片41の板厚方向の重なりによってアウターレンズ12に入射される光が遮光されアウターレンズ12に入射されることはない。したがって、ヘッドランプHLを点灯したときに当該ヘッドランプHLから出射される光が自動車の乗員に向けて照射されることはなく、乗員に対する眩惑が防止される。
【0016】
この実施形態1ではルーバ4をエクステンション3と一体に形成しているのでルーバ4を独立した部品として構成する必要がなく、ヘッドランプHLの構成部品点数が増えるようなことはない。また、ルーバ4をエクステンション3とは別に独立した構成とし、このルーバ4をランプハウジング1内に配設する構成であってもよい。
【0017】
(実施形態2)
実施形態1では、ランプユニット2から出射した光の一部を遮光して眩惑を防止するための遮光手段として、エクステンション3に設けたルーバ4で構成していたが、このルーバ4ではランプユニット2から出射されてルーバ片41の間を透過した光がアウターレンズ12を透過する際にアウターレンズ12での屈折や反射によって光の一部が乗員に向けられ、この光によって乗員が眩惑されることが無いこともない。実施形態2では遮光手段をアウターレンズと一体に形成したルーバで構成している。すなわち、実施形態1のエクステンション3のルーバ4をアウターレンズ12と一体に形成したルーバ層として構成している。
【0018】
図5は実施形態2のヘッドランプHLの断面図であり、実施形態1と同一部分には同一符号を付してある。同図において、アウターレンズ12は光透過性の樹脂を成形しているが、この成形に際しては光を透過しない樹脂を用いた所謂二色成形によってアウターレンズ12内にルーバ4を形成している。二色成形についての詳細な説明は省略するが、ここではカーボン等の光を透過しない添加材を含んだ樹脂をアウターレンズ12の厚み方向に傾斜させた状態で一体成形することによって複数のルーバ層42を形成し、このルーバ層42でルーバ4を形成している。ルーバ層42はアウターレンズ12のランプユニット2の直上領域に設けられており、各ルーバ層42の傾斜角度は実施形態1と同じでよく、これら複数のルーバ層42は自動車の運転席や助手席に着座した乗員の視線方向に対して隣接するルーバ層42が重なり、ルーバ層42の間を透過してランプユニット2の直上領域が視認できないように構成されている。
【0019】
実施形態2では、ランプユニット2から前方の上方領域に照射される光はルーバ層42の間を透過して照射されるため、所望の配光での光照射が実現できるとともに、自動車の前方から人間がヘッドランプHLを観察したときにルーバ層42の隙間を透してランプユニット2が視認でき、ヘッドランプHLの意匠性が確保できることは実施形態1と同じである。また、ランプユニット2から出射される光の一部は投射レンズ23での屈折等によって自動車のフロントガラス方向に向けられるが、これらの光はランプハウジング1内に設けたエクステンション3によって遮光される。また、他の一部はアウターレンズ12のランプユニット2のほぼ直上に向けられ、アウターレンズ12において屈折されて乗員の方向に向けられるが、これらの光はアウターレンズ12に設けた複数のルーバ層42によって遮光される。したがって、ヘッドランプHLを点灯したときに当該ヘッドランプHLから出射される光によって自動車の乗員が眩惑されることが防止される。
【0020】
実施形態2においてはルーバ4を構成するルーバ層42をアウターレンズ12と一体に形成しているので、ルーバ4を独立した部品として構成する必要がなく、ヘッドランプHLを構成する部品点数が削減できる。また、実施形態1のようにエクステンション3にルーバを構成する必要がないので既存のエクステンションをそのまま利用することができる。なお、図示は省略するが、実施形態2ではルーバ4のみをアウターレンズ12と一体に形成しているが、エクステンション3の一部をアウターレンズ12と一体成形してエクステンション層として形成し、これらエクステンション層とルーバ層とで遮光手段を構成するようにしてもよい。
【0021】
(実施形態3)
図6は実施形態3のヘッドランプを備えた自動車の断面図である。このヘッドランプHLの遮光手段は実施形態1,2のようなルーバ構造ではなく、自動車に備えたフロントスポイラ5で構成している。すなわち、自動車にはフロントガラスFGの前側のボンネット上にフロントスポイラ5を備えており、このフロントスポイラ5をヘッドランプHLの一部の上側を覆うように配設し、このフロントスポイラ5を遮光手段として構成したものである。ヘッドランプHLは図3に示したヘッドランプと同様にランプハウジング1内にランプユニット2とエクステンション3を備えているが、実施形態1,2のようなルーバ4からなる遮光手段を備えてはいない。また、前記フロントスポイラ5は乗員の眼EYEでヘッドランプHLのアウターレンズ12の一部、特にランプユニット2の直上領域を直接見ることができないように、すなわちランプユニット2から出射されアウターレンズ12を透過した光が自動車CARの前方に照射されることは可能であるが、自動車の後方に向けては照射されることがない形状、寸法、位置に配設されている。
【0022】
実施形態3では、ランプユニット2から出射される光はアウターレンズ12を透過して自動車CARの前方ないし上方に照射されて所望の配光が得られるが、ランプユニット2から出射された光の一部は投射レンズ23での屈折によって自動車のフロントガラスFG方向に向けられるが、これらの光の一部はランプハウジング1内に設けたエクステンション3によって遮光される。また、エクステンション3によって遮光されない光はアウターレンズ12のランプユニット2のほぼ直上領域に向けられ、この領域を透過してアウターレンズ12で屈折されることにより一部はフロントガラスFGの方向に向けられるが、これらの光はフロントスポイラ5によって遮光される。したがって、ヘッドランプHLを点灯したときに当該ヘッドランプHLから出射される光によって自動車の乗員が眩惑されることが防止される。
【0023】
実施形態3はフロントスポイラを備える自動車にのみ適用されるものであるが、ヘッドランプHLには遮光手段を作り込む必要がないため、既存のヘッドランプを用いて構成でき、ヘッドランプ自体の高コスト化が防止できる。また、ヘッドランプの形状の違いやフェンダーにおけるヘッドランプの配設位置の違いに対応してフロントスポイラを設計しあるいは配設位置を設定するだけで遮光効果が得られるので異なる車種に対して適応することが可能である。
【0024】
実施形態3におけるフロントスポイラは、所謂自動車のデザインの要求から疑似スポイラとして構成されているようなスポイラであってもよい。
【0025】
前記各実施形態では本発明を自動車のヘッドランプに適用した例を示したが、自車の前方から側方領域を照明するフォグランプやクリアランスランプ等の補助ランプや、あるいは前方方向や側方方向に標識光を出射するターンシグナルランプ等の標識ランプについても、これらのランプを自動車のフェンダーに配設する場合には同様に適用することが可能である。また、本発明におけるアウターレンズはいわゆる前面カバーと称する光透過性のカバーで構成されるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は特に自動車のフェンダーに配設したランプに採用することが可能である。
【符号の説明】
【0027】
CAR 自動車
FD フェンダー
HL ヘッドランプ
GR グリル
1 ランプハウジング
2 ランプユニット
3 エクステンション
4 ルーバ(遮光手段)
5 フロントスポイラ(遮光手段)
11 ランプボディ
12 アウターレンズ
21 光源
22 リフレクタ
23 照射レンズ
41 ルーバ片
42 ルーバ層





【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフェンダーに配設したランプであって、当該ランプから出射した光のうち当該車両の乗員席に向けて出射される光を遮光する遮光手段を備えることを特徴とする車両用ランプ。
【請求項2】
前記遮光手段はランプに設けられ、少なくとも前記乗員席に向けた方向に重ねられている複数のルーバ片を有するルーバで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ランプ。
【請求項3】
前記ルーバはランプに設けられたエクステンション又はアウターレンズと一体に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用ランプ。
【請求項4】
前記遮光手段は車両のフロントスポイラであることを特徴とする請求項1に記載の車両用ランプ。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−89325(P2013−89325A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226300(P2011−226300)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】