説明

車両用前照灯

【課題】 光源からの反射光を投影レンズ光軸の略平行線上に高光度の光線を入射可能とし、上下分光色を緩和させ、配光パターン上の色ムラを抑制できる車両用前照灯を提供する。
【解決手段】 本発明は、投影レンズ6と、第1光源2と、第1光源2からの光を車両前方に反射させる第1リフレクタ3と、第1リフレクタ3で反射された光の一部を投影レンズ6の後方側焦点近傍で遮蔽するシェード5とを備える第1光源ユニット10と、第1光源ユニット10と共通の投影レンズ6と、放熱部材7を介して第1光源2と背中合わせに設けられた第2光源2’と、第2光源2’からの光を車両前方に反射させる第2リフレクタ3’と、第2リフレクタ3’で反射された光の一部を遮蔽する第1光源ユニット10と共通のシェード5とを備える第2光源ユニット10’を有し、第1光源2と第2光源2’は横向きにかつ車両前後方向に離間して配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源として例えばLEDなどの半導体発光素子を使用した車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用前照灯は従来から提案されている(たとえば、特許文献1、図6参照)。この車両用前照灯は、光源としてLEDなどの半導体発光素子2と、光源からの光を前方に照射する反射面を有するリフレクタと、放熱板4と、反射面からの反射光を前方に照射する投影レンズ6とを備えるものである。これらはホルダ8によって保持されている。反射面は光源に対して車両上下方向上側に位置している。光源すなわちLEDを点灯発光させると、LEDの上方側に光度の強い光が照射され、反射面で反射された後、投影レンズ後側焦点に設けられる遮光手段によって遮光され、投影レンズ6によって所定の配光パターンとして前方に照射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−313513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の車両用前照灯では、光源からの光度の強い光が上方の反射面により反射され、反射面からの反射光が投影レンズの下側端部を通り、高強度の光線が出射されてしまうため、配光パターン上に分光色や色ムラなどが出てしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みなされたものであって、光源からの反射光を投影レンズ光軸の略平行線上に高光度の光線を入射可能とし、上下分光色を緩和させ、配光パターン上の色ムラを抑制できる車両用前照灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、半導体発光素子を光源とする車両用灯具ユニットにおいて、車両前後方向に光軸を有する投影レンズと、前記投影レンズ後方かつ光軸上に配置された第1光源と、前記第1光源からの光を車両前方に反射させる第1リフレクタと、前記第1リフレクタで反射された光の一部を前記投影レンズの後方側焦点近傍で遮蔽するシェードとを備える第1光源ユニットと、前記第1光源ユニットと共通の投影レンズと、放熱部材を介して前記第1光源と背中合わせに設けられた第2光源と、前記第2光源からの光を車両前方に反射させる第2リフレクタと、前記第2リフレクタで反射された光の一部を遮蔽する前記第1光源ユニットと共通のシェードとを備える第2光源ユニットを有し、前記第1光源と前記第2光源は横向きにかつ車両前後方向に離間して配置されている、ことを特徴とする。
【0007】
上記構成において、前記第2光源ユニットの前記第2光源は前記第1光源よりも前方に設けられ、拡散配光パターンを形成することを特徴とする。
【0008】
上記構成において、前記第1光源及び前記第2光源は、前記投影レンズの光軸よりも上方に設置されており、前記シェードの上端面には、前記第1リフレクタ及び前記第2リフレクタからの反射光を反射させる反射面が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体発光素子を光軸に対して横向きに設置することにより、半導体発光素子からの光のうち高光度の光が光軸とほぼ平行方向に反射されるので、光量を落とすことなく、高光度の項を投影レンズの左右端部に入射させることができ、光源が前後方向に離間していることにより、適正な配光パターンを形成することができる。
【0010】
また、第2光源ユニットの第2光源が第1光源ユニットの第1光源よりも前方に設けられており、拡散用配光パターンを形成し、第1光源ユニットにより集光配光パターンを形成することにより、車両用前照灯として前方視認性に優れる配光パターンを形成することができる。
【0011】
また、第1光源および第2光源が投影レンズの光軸よりも上方に設置されているため、放射光度の強い光源からの光をシェードによって遮蔽されることなく、前方に照射させることができ、さらに、シェードの上端面に設けられた反射面によって、光束利用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の縦断面であるA−A断面を示す図である。
【図2】本発明の水平断面であるのB−B断面を示す図である。
【図3】本発明の斜視図を示す図である。
【図4】本発明の配光パターンを表す図である。
【図5】本発明の第2の実施例の縦断面を示す図である。
【図6】従来技術を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0014】
以下、この実施例における車両用前照灯の構成について説明する。図中、符号1は、実施例における車両用前照灯である。図1は、本発明の縦断面であるA−A断面を示す図である。図2は、本発明の水平断面であるのB−B断面を示す図である。図3は、本発明の斜視図を示す図である。
【0015】
車両用前照灯1は、図1〜図3に示すように、プロジェクタタイプであって、ユニット構造をなす。車両用前照灯1は、第1光源ユニット10及び第2光源ユニット10’を有している。第1光源ユニット10は、半導体発光素子(第1半光源)2と、半導体発光素子2の側方に配置される第1リフレクタ3と、反射面Rを有し、第2光源ユニット10’は、半導体発光素子(第2光源)2’と、半導体発光素子2’の側方に配置される第2リフレクタ3’と、反射面R’を有し、第1光源ユニット10及び第2光源ユニット10’で共通のシェード5と、投影レンズ(凸レンズ、集光レンズ)6と、から構成されている。
【0016】
第1リフレクタ3および第2リフレクタ3’は、光不透過性の樹脂部材などから構成されており、ホルダ8などの保持部材により投影レンズ6とともに保持されている。また、第1リフレクタ3は、図2に示すように、垂直線V−Vにおいて、左右に2分割してなるものである。第1リフレクタ3は、図示しない固定手段(たとえば、ボルトナット、スクリュー、加締め、クリップなど)により、放熱部材7もしくは放熱部材と一体に設けられた台座4に、一体に固定されている。
【0017】
第1リフレクタ3および第2リフレクタ3’は、前側部分が半円形に開口し、前側部分から中央部分を経て後側の部分までが閉塞している。第1リフレクタ3及び第2リフレクタ3’の内面には、アルミ蒸着若しくは銀塗装などが施されていて反射面R、R’が設けられている。
【0018】
反射面R、R’は、楕円を基調とした反射面、たとえば、回転楕円面や楕円を基本とした自由曲面からなる反射面からなる。
【0019】
第1光源ユニット10の第1リフレクタ3の反射面Rの、第1焦点である半導体発光素子2と第2焦点Fとを結ぶ軸は、レンズ軸Z−Zと一致するように設定されている。
【0020】
第2光源ユニット10’の第2リフレクタ3’の反射面R’の、第1焦点である半導体発光素子2’と第2焦点Fとを結ぶ軸は、レンズ軸Z−Zと交差するように設定されている。
【0021】
半導体発光素子2及び2’は、たとえば、LED、EL(有機EL)などの自発光半導体型光源(この実施例ではLED)を使用する。半導体発光素子2及び2’は、図1および図2に示すように、放熱部材7と一体に設けられた台座4に取り付けられることによって、第1リフレクタ3および第2リフレクタ3’に保持される。その際、半導体発光素子2はレンズ光軸Z−Z上であって、反射面Rの第1焦点に位置するように配置され、半導体発光素子2’は、半導体発光素子2よりも車両前後方向前方に位置しており、レンズ光軸Z−Zから車幅方向外側にずらされて、反射面R’の第1焦点に位置するように配置される。
【0022】
第1リフレクタ3及び第2リフレクタ3’の共通の第2焦点F近傍には、シェード5が設けられている。シェード5は、図1及び図3が示すように、板状部材から構成されており、左右方向に細長い形状をなす。板状部材の端部は第2焦点F近傍部分に位置しており、配光パターンLPのカットラインCL(図4参照)を形成するエッジ部が設けられている。なお、シェード5の上面部に反射面11を設けてもよい。
【0023】
ホルダ8の車両前方側縁部には、投影レンズ6が保持されている。ホルダ8は、図1に示すように、車両前方側縁部に投影レンズ、車両後方側縁部には、シェード5と、第1リフレクタ3及び第2リフレクタ3’とを、保持している。
【0024】
投影レンズ6は、図1に示すように、非球面レンズの凸レンズである。投影レンズ6の前方側は、凸非球面をなし、一方、投影レンズ6の後方側は、平非球面をなす。投影レンズ6は、前側焦点(図示せず)および後側焦点F10と、前側焦点と後側焦点を結ぶ軸、すなわち、レンズ光軸Z−Zとを有する。レンズ光軸Z−Zと前記第1光源ユニットの反射面Rの第1焦点と第2焦点Fを結ぶ軸は、ほぼ一致する。
【0025】
そして、図1及び図2に示すように、半導体発光素子2及び2’の放射強度のうち最大光放射強度の放射方向が、投影レンズ6のレンズ光軸Z−Zに対して、ほぼ直交するように配置されている。また、反射面R及びR’は、半導体発光素子2及び2’の側方に位置している。反射面R及びR’の光軸は、投影レンズ6のレンズ光軸Z−Z上の後側焦点F10で交差している。さらに、反射面Rの第1焦点は、半導体発光素子2近傍であって、投影レンズ6のレンズ光軸Z−Z近傍に配置されている。さらにまた、反射面Rの第2焦点Fは、投影レンズ6の後側焦点F10もしくはその近傍に位置している。
【0026】
この実施例による車両用前照灯は、以上のごとき構成から成り、以下、その作用について説明する。
【0027】
まず、車両用前照灯1の半導体発光素子2及び2’を発光させる。すると、半導体発光素子2及び2’から放射された光L1であって放射強度の強い光のうちほとんどは、半導体発光素子2及び2’の側方に位置する反射面R及びR’で反射され、投影レンズ6の光軸Z−Z水平方向に入射する。
【0028】
つぎに、反射面R及びR’で反射された反射光は、反射面R及びR’の第2焦点に進む。ここで、その反射光の一部は、シェード5により遮られ、一方、シェード5で遮られなかった反射光は、放射強度の強い光が、投影レンズ6のレンズ光軸Z−Zの水平方向近傍に入射し、投影レンズ6を透過して外部へ照射される。図4においては、車両用前照灯1から外部に投影された配光パターンLPの例を示す。図4に示すように、配光パターンLPの上縁には、シェード5によりカットオフラインCLが形成されている。
【0029】
ここで、第1光源ユニット10の反射面Rは、第1焦点を半導体発光素子2近傍に有しており、第2焦点をレンズ後側焦点近傍に有しており、投影レンズ6のレンズ光軸とほぼ一致する光軸を有しているため、カットラインが鮮明で光度の高い集光した配光パターンを照射することが出来る。
【0030】
また、第2光源ユニット10’の反射面R’は、第1焦点が前記半導体発光素子2よりも前方にあり、投影レンズ6の光軸Z−Zから車幅方向外側にずれているため、第1光源ユニット10よりも拡散した配光パターンを照射することが出来る。
【0031】
この実施例における車両用前照灯1は、以上のような構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0032】
この実施例における車両用前照灯1は、半導体発光素子2及び2’を光軸に対して横向きに設置することにより、半導体発光素子2及び2’からの光のうち高光度の光が光軸とほぼ平行方向に反射することができる。よって、上下分光色を抑えることができ、配光パターン上の色ムラを抑制することができ、最適な配光パターンが得られる。
【0033】
さらに、第1光源ユニット10によって集光配光パターンを形成し、第2光源ユニット10’によって拡散配光パターンを形成するため、一つの灯具によって遠方視認性に優れる最適な配光パターンを形成することができる。
【0034】
以上、実施例を用いて本発明を説明したが、半導体発光素子2及び2’を光軸よりも上方に設置することにより、光軸と平行な光をより多く投影レンズ6に入射させることができ、シェード上端面の反射面11にもより多くの光を入射させることができる。
【0035】
図5は、本発明の第2の実施例の縦断面を示す図である。図5に示すように、第2実施例の車両用前照灯では、第1光源ユニット10と第2光源ユニットの光源である半導体発光素子2、2’を投影レンズ6の光軸よりも上方に移動させている。このように、第1光源である半導体発光素子2および第2光源である半導体発光素子2’が投影レンズ6よりも上方に設置させることで、放射光度の強い光源からの光をシェード5によって遮蔽されることなく、前方に照射させることができ、さらに、シェード5の上端面に設けられた反射面によって、光束利用効率を向上させることができる。
【0036】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0037】
1 車両用前照灯
2 半導体発光素子(第1光源)
2’ 半導体発光素子(第2光源)
3 第1リフレクタ
3’ 第2リフレクタ
4 台座
5 シェード
6 投影レンズ
7 放熱部材
8 ホルダ
10 第1光源ユニット
10’ 第2光源ユニット
11 シェード上端面反射面
Z−Z レンズ光軸
F 第2焦点
F10 レンズ後側焦点
LP すれ違い配光パターン
L1 分光(赤)
L2 分光(青)
CL カットオフライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体発光素子を光源とする車両用灯具ユニットにおいて、
車両前後方向に光軸を有する投影レンズと、前記投影レンズ後方かつ光軸上に配置された第1光源と、前記第1光源からの光を車両前方に反射させる第1リフレクタと、前記第1リフレクタで反射された光の一部を前記投影レンズの後方側焦点近傍で遮蔽するシェードとを備える第1光源ユニットと、
前記第1光源ユニットと共通の投影レンズと、放熱部材を介して前記第1光源と背中合わせに設けられた第2光源と、前記第2光源からの光を車両前方に反射させる第2リフレクタと、前記第2リフレクタで反射された光の一部を遮蔽する前記第1光源ユニットと共通のシェードとを備える第2光源ユニットを有し、前記第1光源と前記第2光源は横向きにかつ車両前後方向に離間して配置されていることを特徴とする車両用灯具ユニット。
【請求項2】
前記第2光源ユニットの前記第2光源は前記第1光源よりも前方に設けられ、拡散配光パターンを形成することを特徴とする、請求項1に記載の車両用灯具ユニット。
【請求項3】
前記第1光源及び前記第2光源は、前記投影レンズの光軸よりも上方に設置されており、前記シェードの上端面には、前記第1リフレクタ及び前記第2リフレクタからの反射光を反射させる反射面が設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用灯具ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−181277(P2011−181277A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43146(P2010−43146)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】