説明

車両用前照灯

【課題】オーバーヘッドサイン用の配光パターンを左右に広げて所定のポイントに光が配されるように配光制御すること。
【解決手段】この発明は、放電灯2と、リフレクタ3と、投影レンズ4と、シェード5と、反射部材6と、を備える。シェード5の窓部12には、カットオフラインCL1、CL2、CL3を形成するエッジ13、14、15が設けられている。反射部材6は、投影レンズ4とシェード5との間に配置されている。反射部材6には、オーバーヘッドサイン用の配光パターンOSPを左右に広げる反射凹面19、20、21が設けられている。この結果、この発明は、オーバーヘッドサイン用の配光パターンOSPを左右に広げて所定のポイントに光が配されるように配光制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カットオフラインを有する配光パターンとオーバーヘッドサイン用の配光パターンとを車両の前方に照射させるプロジェクタタイプの車両用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用前照灯は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、従来の車両用前照灯について説明する。従来の車両用前照灯は、リフレクタからの反射光の一部をシェードで遮蔽して、シェードを通過した残りの反射光でカットオフラインを有する配光パターンを形成し、かつ、シェードを通過した残りの反射光の一部をオーバーヘッドサイン用受光面で反射させてオーバーヘッドサイン用の配光パターンを形成するものである。
【0003】
かかるプロジェクタタイプの車両用前照灯から照射されるオーバーヘッドサイン用の配光パターンにおいては、左右に広げて、所定のポイントに光が配されるようにする必要がある。
【0004】
このように、かかるプロジェクタタイプの車両用前照灯においては、オーバーヘッドサイン用の配光パターンを左右に広げて所定のポイントに光が配されるように配光制御する必要がある、という課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−21463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、オーバーヘッドサイン用の配光パターンを左右に広げて所定のポイントに光が配されるように配光制御する必要がある、という点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明(請求項1にかかる発明)は、光源と、光源からの光を反射させる反射面を有するリフレクタと、反射面からの反射光を前方に投影する投影レンズと、反射面からの反射光の一部を遮蔽して残りの反射光でカットオフラインを有する配光パターンを形成する窓部を有するシェードと、窓部を通過する反射光の一部を反射させてオーバーヘッドサイン用の配光パターンを形成する反射部材と、を備え、窓部には、カットオフラインを形成するエッジが設けられていて、反射部材が、投影レンズとシェードとの間に配置されていて、反射部材には、オーバーヘッドサイン用の配光パターンを左右に広げる反射凹面が設けられている、ことを特徴とする。
【0008】
この発明(請求項2にかかる発明)は、エッジが、対向車線側の水平カットオフラインを形成する第1水平エッジと、その第1水平エッジよりも下位に位置していて走行車線側の水平カットオフラインを形成する第2水平エッジと、中央の斜めカットオフラインを形成する中央斜めエッジと、を有し、反射凹面が、下側に凹んだ形状をなし、第1水平エッジ側の窓部を通過した光を反射させて対向車線側の部分を形成する第1反射凹面と、第2水平エッジ側の窓部を通過した光を反射させて走行車線側の部分を形成する第2反射凹面と、中央斜めエッジ側の窓部を通過した光を反射させて中央の繋部分を形成する第3反射凹面と、を有し、第2反射凹面の面積が第1反射凹面の面積よりも小さい、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯は、反射部材の反射凹面により、オーバーヘッドサイン用の配光パターンを左右に広げることができるので、所定のポイントに光が配されるように配光制御することができる。
【0010】
この発明(請求項2にかかる発明)の車両用前照灯は、第2反射凹面の面積が第1反射凹面の面積よりも小さいので、第2水平エッジ側の窓部を通過して第2反射凹面で走行車線側に反射される反射光が第1水平エッジ側の窓部を通過して第1反射凹面で対向車線側に反射される反射光よりも少なくなるが、第2水平エッジが第1水平エッジよりも下位に位置するので、第2水平エッジ側の窓部を通過する光が第1水平エッジ側の窓部を通過する光よりも多い。この結果、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用前照灯は、第1水平エッジ側の窓部を通過した光(第2水平エッジ側の窓部を通過した光よりも少ない光)を第1反射凹面で反射させて、その反射光(第2反射面で反射された反射光よりも多い反射光)で対向車線側の部分を形成し、一方、第2水平エッジ側の窓部を通過した光(第1水平エッジ側の窓部を通過した光よりも多い光)を第2反射凹面で反射させて、その反射光(第1反射面で反射された反射光よりも少ない反射光)で走行車線側の部分を形成し、かつ、中央斜めエッジ側の窓部を通過した光(第1水平エッジ側の窓部を通過した光よりも多く、かつ、第2水平エッジ側の窓部を通過した光よりも少ない光)を第3反射凹面で反射させて、その反射光(第1反射面で反射された反射光よりも少なく、かつ、第2反射面で反射された反射光よりも多い反射光)でオーバーヘッドサイン用の配光パターンのうち中央の繋部分を形成する。これにより、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用前照灯は、オーバーヘッドサイン用の配光パターン全体をほぼ均一の明るさにすることができ、オーバーヘッドサインの視認性が向上され、交通安全に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、この発明にかかる車両用前照灯の実施例1を示す縦断面図(垂直断面図)である。
【図2】図2は、同じく、シェードおよび反射部材の斜視図(図1におけるII矢視図)である。
【図3】図3は、同じく、シェードおよび反射部材の説明図である。
【図4】図4は、同じく、シェードおよび反射部材の一部拡大平面図である。
【図5】図5は、同じく、シェードおよび反射部材の一部拡大正面図である。
【図6】図6は、同じく、反射部材の第1反射凹面、第2反射凹面、第3反射凹面の反射作用と、平板の反射部材の反射作用と、を示す説明図である。
【図7】図7は、図6(B)に示す平板の反射部材により形成されるオーバーヘッドサイン用の配光パターンをスクリーン上において示す説明図である。
【図8】図8は、同じく、図6(A)に示す反射部材により形成される左右に広げられたオーバーヘッドサイン用の配光パターンをスクリーン上において示す説明図である。
【図9】図9は、同じく、図6(A)に示す反射部材により形成される明るさが均一なオーバーヘッドサイン用の配光パターンをスクリーン上において示す説明図である。
【図10】図10は、この発明にかかる車両用前照灯の実施例2を示すシェードおよび反射部材の説明図である。
【図11】図11は、同じく、シェードおよび反射部材の一部拡大平面図である。
【図12】図12は、同じく、シェードおよび反射部材の一部拡大正面図である。
【図13】図13は、反射部材の第1反射凹面、第2反射凹面、第3反射凹面の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明にかかる車両用前照灯の実施例のうちの2例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。図7〜図9において、符号「VU−VD」は、スクリーンの上下の垂直線を示す。符号「HL−HR」は、スクリーンの左右の水平線を示す。また、この明細書あるいは特許請求の範囲において、「上、下、前、後、左、右」は、この発明にかかる車両用灯具を車両に装備した際の「上、下、前、後、左、右」である。
【実施例1】
【0013】
(構成の説明)
図1〜図9は、この発明にかかる車両用前照灯の実施例1を示す。以下、この実施例1にかかる車両用前照灯の構成について説明する。図1において、符号1は、この実施例1にかかるプロジェクタタイプの車両用前照灯(たとえば、ヘッドランプやフォグランプなど)である。前記車両用前照灯1は、自動車(車両)の前部の左右にそれぞれ装備される。前記車両用前照灯1は、左側通行用の車両用前照灯である。図3(A)はシェードおよび反射部材の平面図、図3(B)はシェードおよび反射部材の正面図、図3(C)はシェードおよび反射部材の右側面図、である。
【0014】
前記車両用前照灯1は、図1に示すように、光源としての放電灯2と、リフレクタ3と、投影レンズ(集光レンズ、凸レンズ)4と、シェード5と、反射部材6と、取付ブラケット7(フレーム)と、ランプハウジング(図示せず)と、図示しないランプレンズ(たとえば、素通しのアウターレンズなど)と、を備えるものである。
【0015】
前記放電灯2および前記リフレクタ3および前記投影レンズ4および前記シェード5および前記反射部材6および前記取付ブラケット7は、プロジェクタランプユニットを構成する。前記プロジェクタランプユニットは、前記ランプハウジングおよび前記ランプレンズにより区画されている灯室(図示せず)内に、たとえば光軸調整機構(図示せず)を介して配置されている。
【0016】
前記放電灯2は、メタルハライドランプなどの高圧金属蒸気放電灯、高輝度放電灯(HID)などの放電灯である。前記放電灯2は、前記リフレクタ3にソケット8を介して着脱可能に取り付けられている。なお、前記放電灯2以外に、ハロゲン電球、白熱電球を使用しても良い。
【0017】
前記リフレクタ3は、前側(前記車両用前照灯1の光の照射方向側)が開口し、かつ、後側が閉塞した中空の凹形状をなす。前記リフレクタ3の内凹面には、アルミ蒸着もしくは銀塗装などが施されていて、反射面9が形成されている。前記反射面9は、前記放電灯2から放射される光を前記シェード5および前記反射部材6および前記投影レンズ4側に反射させるものである。前記反射面9は、楕円反射面である。すなわち、前記反射面9は、楕円を基本(基準、基調)とする自由曲面(NURBS曲面)の反射面である。
【0018】
前記リフレクタ3の後側の閉塞部のうち、前記反射面9の光軸Z−Zが交差する箇所には、透孔11が設けられている。前記放電灯2が前記透孔11中から前記リフレクタ3内に挿入された状態で、前記ソケット8が前記透孔11の縁に着脱可能に取り付けられている。この結果、前記放電灯2は、前記リフレクタ3に前記ソケット8を介して着脱可能に取り付けられている。
【0019】
前記投影レンズ4は、非球面レンズの凸レンズである。前記投影レンズ4の前方側は、凸非球面をなし、一方、前記投影レンズ4の後方側は、平非球面(平面)をなす。前記投影レンズ4のレンズ軸は、前記反射面9の光軸Z−Zと一致(ほぼ一致も含む)する。前記投影レンズ4は、前記反射面9からの反射光を前方に投影する。
【0020】
前記シェード5および前記反射部材6は、製造コストが安価である板部材(たとえば、薄鋼板)からなる。前記シェード5と前記反射部材6とは、適宜固定手段(ボルトナット、スクリュー、加締め付け、溶接など)により、固定されている。前記シェード5は、前記リフレクタ3の前側の開口部全体を覆う板形状をなす。なお、図2、図3において、前記シェード5は、四角形をなしているが、この四角形に限定されない。
【0021】
前記シェード5は、前記リフレクタ3と前記投影レンズ4との間に配置されている。図1〜図3に示すように、前記シェード5の中央部(中央部から上部にかけて)には、横長のほぼ長方形形状(半繭形形状)の窓部12が設けられている。前記シェード5は、前記反射面9からの反射光の一部を遮蔽し、前記窓部12を通過して遮蔽されなかった残りの反射光の一部L1で、図7〜図9に示すカットオフラインCL1、CL2、CL3を有する配光パターン(以下、「ロービーム用配光パターン」と称する)LPを形成する。
【0022】
前記窓部12の下側縁には、前記ロービーム用配光パターンLPの前記カットオフラインCL1、CL2、CL3を形成するエッジ13、14、15が設けられている。前記エッジは、第1水平エッジ(上水平エッジ)13と、前記第1水平エッジ13よりも下位に位置する第2水平エッジ(下水平エッジ)14と、前記第1水平エッジ13と前記第2水平エッジ14との間の中央斜めエッジ15と、を有する。
【0023】
前記第1水平エッジ13は、対向車線側の水平カットオフライン(下水平カットオフライン)CL1を形成する。前記第2水平エッジ14は、走行車線側の水平カットオフライン(上水平カットオフライン)CL2を形成する。前記中央斜めエッジ15は、中央の斜めカットオフラインCL3を形成する。なお、図7〜図9において、符号「E」は、エルボー点である。前記窓部12は、前記ロービーム用配光パターンLPを形成する。
【0024】
前記反射部材6は、固定保持部材10を介して前記投影レンズ4と前記シェード5との間に配置されている。前記反射部材6と前記固定保持部材10とは、図2、図3に示すように、薄鋼板を側面から見て「レ」の字形状に折り曲げた一体構造をなす。前記固定保持部材10は、前記シェード5の正面の前記エッジ13、14、15よりも下側の箇所に固定されている垂直な固定部16と、前記固定部16の上端から前方側に斜め下側に(側面から見て「レ」の字形状に)折り曲げられた保持部17と、から構成されている。前記固定保持部材10の前記保持部17の中央部には、四角形の開口部18が設けられている。前記固定保持部材10の前記保持部17の前記開口部18の前方側の縁部の中央部には、前記反射部材6が一体に設けられている。
【0025】
前記反射部材6には、前記オーバーヘッドサイン用の配光パターンOSPを左右に広げる反射凹面19、20、21が設けられている。前記反射凹面19、20、21は、正面から見て「V」の字形状に下側に凹んだ形状をなしている。前記反射凹面は、第1反射凹面19と、第2反射凹面20と、第3反射凹面21と、を有する。
【0026】
図4、図5に示すように、前記第1反射凹面19は、V字の一方の傾斜面の中央部(図4、図5中の二点鎖線にて示す箇所)から頂部(上部)にかけての一部からなる。前記第2反射凹面20は、V字の他方の傾斜面の中央部(図4、図5中の二点鎖線にて示す箇所)から頂部(上部)にかけての一部からなる。前記第3反射凹面21は、V字の一方の傾斜面の中央部(図4、図5中の二点鎖線にて示す箇所)からV字の谷を跨いでV字の他方の傾斜面の中央部(図4、図5中の二点鎖線にて示す箇所)にかけての一部からなる。
【0027】
前記第1反射凹面19は、前記第1水平エッジ13と対向する。前記第1反射凹面19は、図1、図6(A)に示すように、前記第1水平エッジ13側の前記窓部12を通過した光(前記反射面9からの反射光であって、前記窓部12を通過して前記シェード5で遮蔽されなかった残りの反射光の一部)L2を反射させ、その反射光L3により、図9に示すように、前記オーバーヘッドサイン用の配光パターンOSPのうちの対向車線側の部分(図9中、一点鎖線で示す部分)OSP1を形成する。
【0028】
前記第2反射凹面20は、前記第2水平エッジ14に対向する。前記第2反射凹面20は、図1、図6(A)に示すように、前記第2水平エッジ14側の前記窓部12を通過した光(前記反射面9からの反射光であって、前記窓部12を通過して前記シェード5で遮蔽されなかった残りの反射光の一部)L4を反射させ、その反射光L5により、図9に示すように、前記オーバーヘッドサイン用の配光パターンOSPのうちの走行車線側の部分(図9中、二点鎖線で示す部分)OSP2を形成する。
【0029】
前記第3反射凹面21は、前記中央斜めエッジ15に対向する。前記第3反射凹面21は、図1、図6(A)に示すように、前記中央斜めエッジ15側の前記窓部12を通過した光(前記反射面9からの反射光であって、前記窓部12を通過して前記シェード5で遮蔽されなかった残りの反射光の一部)L6を反射させ、その反射光L7により、図9に示すように、前記オーバーヘッドサイン用の配光パターンOSPのうちの中央の繋部分(図9中、三点鎖線で示す部分)OSP3を形成する。
【0030】
前記反射凹面19、20、21に入射する光L2、L4、L6は、主に、前記反射面9からの反射光であって、前記窓部12を通過して遮蔽されなかった残りの反射光の一部のうち、前記投影レンズ4に入射しない光(所謂、無効光)L8である。
【0031】
前記第2反射凹面20の面積は、前記第1反射凹面19の面積よりも小さい。すなわち、図4、図5に示すように、前記反射部材6の前記反射凹面19、20、21は、V字の谷を通る中心線Oに対して、V字の左右の傾斜面の幅Aは、同等である。また、前記第3反射凹面21のV字の谷の中央線OからV字の一方の傾斜面の中央部(図4、図5中の二点鎖線にて示す箇所)までの幅と、前記第3反射凹面21のV字の谷の中央線OからV字の他方の傾斜面の中央部(図4、図5中の二点鎖線にて示す箇所)までの幅とは、同等である。これにより、前記第1反射凹面19のV字の一方の傾斜面の中央部(図4、図5中の二点鎖線にて示す箇所)から頂部(上部)までの幅と、前記第2反射凹面20のV字の他方の傾斜面の中央部(図4、図5中の二点鎖線にて示す箇所)から頂部(上部)までの幅とが同等となる。そして、V字の他方の傾斜面の前記第2反射凹面20および前記第3反射凹面21の一部分(後側の部分)が切欠22により切り欠かれている。この結果、前記第2反射凹面20の面積は、前記第1反射凹面19の面積よりも小さい。前記中心線Oは、前記ロービーム用配光パターンLPの前記エルボー点Eを形成する前記第1水平エッジ13と前記中央斜めエッジ15との交点(交線)を通る線分である。
【0032】
前記シェード5の正面の前記エッジ13、14、15の近傍の箇所には、サブシェード23が設けられている。前記サブシェード23は、前記反射部材6と一体構造の前記固定保持部材10と一体構造をなす。前記サブシェード23の上縁には、前記ロービーム用配光パターンLPの前記カットオフラインCL1、CL2、CL3を形成するエッジ130、140、150が、前記シェード5の前記エッジ13、14、15に対応して設けられている。前記シェード5の前記エッジ13、14、15と前記サブシェード23の前記エッジ130、140、150との2重エッジにより、前記ロービーム用配光パターンLPの前記カットオフラインCL1、CL2、CL3近傍の色を消す作用をなす。
【0033】
前記放電灯2が前記ソケット8を介して着脱可能に取り付けられている前記リフレクタ3と、前記投影レンズ4と、前記反射部材6が固定されている前記シェード5とは、前記取付ブラケット7にそれぞれ固定保持されている。前記取付ブラケット7は、前記光軸調整機構を介して前記ランプハウジングに取り付けられている。
【0034】
(作用の説明)
この実施例1における車両用前照灯1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0035】
プロジェクタランプユニットの放電灯2を点灯する。すると、放電灯2から放射される光は、リフレクタ3の反射面9でシェード5および反射部材6および投影レンズ4側に反射される。
【0036】
すると、反射面9からの反射光の一部(図示せず)は、シェード5により遮蔽される。一方、図1に示すように、シェード5の窓部12を通過してシェード5で遮蔽されなかった反射面9からの反射光の大部分L1は、投影レンズ4を透過して、図7〜図9に示すカットオフラインCL1、CL2、CL3を有するロービーム用配光パターンLPを形成して、車両の前方に照射される。
【0037】
また、図1、図6(A)に示すように、シェード5の窓部12を通過してシェード5で遮蔽されなかった反射面9からの反射光の一部L2、L4、L6は、反射部材6の反射凹面19、20、21で投影レンズ4側に反射されて、その反射光L3、L5、L7が投影レンズ4を透過して、左右に広げられた図8、図9に示すオーバーヘッドサイン用の配光パターンOSPを形成して、車両の前方に照射される。
【0038】
すなわち、第1反射凹面19は、図1、図6(A)に示すように、第1水平エッジ13、130側の窓部12を通過した光L2を反射させ、その反射光L3により、図9中の一点鎖線に示すように、オーバーヘッドサイン用の配光パターンOSPのうちの対向車線側の部分OSP1を形成する。
【0039】
第2反射凹面20は、図1、図6(A)に示すように、第2水平エッジ14、140側の窓部12を通過した光L4を反射させ、その反射光L5により、図9中の二点鎖線に示すように、オーバーヘッドサイン用の配光パターンOSPのうちの走行車線側の部分OSP2を形成する。
【0040】
第3反射凹面21は、図1、図6(A)に示すように、中央斜めエッジ15、150側の窓部12を通過した光L6を反射させ、その反射光L7により、図9中の三点鎖線に示すように、オーバーヘッドサイン用の配光パターンOSPのうちの中央の繋部分OSP3を形成する。
【0041】
(効果の説明)
この実施例1における車両用前照灯1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0042】
この実施例1における車両用前照灯1は、反射部材6の反射凹面19、20、21により、オーバーヘッドサイン用の配光パターンOSP(OSP1、OSP2、OSP3)を左右に広げることができるので、所定のポイントに光が配されるように配光制御することができる。
【0043】
たとえば、図6(B)に示す平板の反射部材60の場合においては、窓部12を通過した反射光L2、L4、L6を反射させた反射光L30、L50、L70が左右に広がらずに中央に集まる。このために、図7に示すように、平板の反射部材60で反射された反射光30、50、70で形成されるオーバーヘッドサイン用の配光パターンOSP4は、左右に広がらず、所定のポイントに光が配されるように配光制御することが困難である。
【0044】
これに対して、この実施例1における車両用前照灯1は、図6(A)に示すように、窓部12を通過した反射光L2、L4、L6を、正面から見て「V」の字形状に下側に凹んだ形状をなしている反射部材6の反射凹面19、20、21により、左右に広がった反射光L3、L5、L7として反射させる。この結果、この実施例1における車両用前照灯1は、図8に示すように、平板の反射部材60で形成されるオーバーヘッドサイン用の配光パターンOSP4(図8中の点線で示す配光パターン)よりも左右に広げられたオーバーヘッドサイン用の配光パターンOSP(OSP1、OSP2、OSP3)を形成することができる。
【0045】
この実施例1における車両用前照灯1は、第2反射凹面20の面積が第1反射凹面19の面積よりも小さいので、第2水平エッジ14、140側の窓部12を通過して第2反射凹面20で走行車線側に反射される反射光L5が第1水平エッジ13、130側の窓部12を通過して第1反射凹面19で対向車線側に反射される反射光L3よりも少なくなるが、第2水平エッジ14、140が第1水平エッジ13、130よりも下位に位置するので、第2水平エッジ14、140側の窓部12を通過する光L4が第1水平エッジ13、130側の窓部12を通過する光L2よりも多い。この結果、この実施例1における車両用前照灯1は、図9に示すように、第1水平エッジ13、130側の窓部12を通過した光L2(第2水平エッジ14、140側の窓部12を通過した光L4よりも少ない光)を第1反射凹面19で反射させて、その反射光L3(第2反射面20で反射された反射光L5よりも多い反射光)でオーバーヘッドサイン用の配光パターンOSPのうち対向車線側の部分OSP1を形成し、一方、第2水平エッジ14、140側の窓部12を通過した光L4(第1水平エッジ13、130側の窓部12を通過した光L2よりも多い光)を第2反射凹面20で反射させて、その反射光L5(第1反射面19で反射された反射光L3よりも少ない反射光)でオーバーヘッドサイン用の配光パターンOSPのうち走行車線側の部分OSP2を形成し、かつ、中央斜めエッジ15、150側の窓部12を通過した光L6(第1水平エッジ13、130側の窓部12を通過した光L2よりも多く、かつ、第2水平エッジ14、140側の窓部12を通過した光L4よりも少ない光)を第3反射凹面21で反射させて、その反射光L7(第1反射面19で反射された反射光L3よりも少なく、かつ、第2反射面20で反射された反射光L5よりも多い反射光)でオーバーヘッドサイン用の配光パターンOSPのうち中央の繋部分OSP3を形成する。これにより、この実施例1における車両用前照灯1は、オーバーヘッドサイン用の配光パターンOSP(OSP1、OSP2、OSP3)全体をほぼ均一の明るさにすることができ、オーバーヘッドサインOSP(OSP1、OSP2、OSP3)の視認性が向上され、交通安全に貢献することができる。
【0046】
この実施例1における車両用前照灯1は、反射凹面19、20、21に入射する光L2、L4、L6として、主に、反射面9からの反射光であって、窓部12を通過して遮蔽されなかった残りの反射光の一部のうち、投影レンズ4に入射しない光(所謂、無効光)L8を有効利用するものである。
【実施例2】
【0047】
(実施例2の説明)
図10〜図12は、この発明にかかる車両用前照灯の実施例2を示す。以下、この実施例2における車両用前照灯について説明する。図中、図1〜図9と同符号は、同一のものを示す。
【0048】
前記の実施例1の車両用前照灯1は、切欠22により、反射部材6の第2反射凹面20の面積を第1反射凹面19の面積よりも小さくするものである。この実施例2の車両用前照灯は、V字の谷を中心線Oに対して第2水平エッジ14、140および中央斜めエッジ15、150側に幅B分ずらして(オフセットして)、反射部材600の第2反射凹面200側の幅Cを第1反射面190側の幅Dよりも小さくする。これにより、反射部材600の第2反射凹面200側の面積を第1反射凹面190側の面積よりも小さくするものである。なお、図10〜図12中、符号「210」は、第3反射凹面である。
【0049】
この実施例2の車両用前照灯は、以上のごとき構成からなるので、前記の実施例1の車両用前照灯1とほぼ同様の作用効果を達成することができる。
【0050】
(実施例1の変形例の説明)
図13は、この発明にかかる車両用前照灯の実施例1の変形例を示す。以下、この実施例1の変形例における車両用前照灯について説明する。図中、図1〜図9と同符号は、同一のものを示す。
【0051】
前記の実施例1の車両用前照灯1は、反射部材6の反射凹面19、20、21が正面から見て「V」の字形状に下側に凹んだ形状をなしている。図13(A)に示す反射部材601の反射凹面191、201、211は、正面から見て「U」の字形状に下側に凹んだ形状をなしている。図13(B)に示す反射部材602の反射凹面192、202、212は、正面から見て「逆台形」の形状に下側に凹んだ形状をなしている。図13(C)に示す反射部材603の反射凹面193、203、213は、正面から見て「逆台形で左右両傾斜面が内側に湾曲した」形状に下側に凹んだ形状をなしている。
【0052】
(実施例1、2、変形例以外の例の説明)
前記の実施例1、2、変形例は、左側通行用の車両用前照灯である。右側通行用の車両用前照灯の場合は、シェードおよびシェードのエッジ、ロービーム用配光パターンおよびロービーム用配光パターンLPのカットオフライン、オーバーヘッドサイン用の配光パターンが左右反転する(逆転する)。
【符号の説明】
【0053】
1 車両用前照灯
2 放電灯(光源)
3 リフレクタ
4 投影レンズ
5 シェード
6、600、601、602、603 反射部材
60 平板の反射部材
7 取付ブラケット
8 ソケット
9 反射面
10 固定保持部材
11 透孔
12 窓部
13、130 第1水平エッジ
14、140 第2水平エッジ
15、150 中央斜めエッジ
16 固定部
17 保持部
18 開口部
19、190、191、192、193 第1反射凹面
20、200、201、202、203 第2反射凹面
21、210、211、212、213 第3反射凹面
22 切欠
23 サブシェード
Z−Z 光軸
LP ロービーム用配光パターン
CL1 対向車線側のカットオフライン
CL2 走行車線側のカットオフライン
CL3 中央の斜めカットオフライン
E エルボー点
OSP オーバーヘッドサイン用の配光パターン
OSP1 対向車線側の部分
OSP2 走行車線側の部分
OSP3 中央の繋部分
OSP4 平板の反射部材によるオーバーヘッドサイン用の配光パターン
L1〜L8 光(光路)
O 中心線
A 第1反射凹面側の幅、第2反射凹面側の幅
B オフセット幅
C 第2反射凹面側の幅
D 第1反射凹面側の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カットオフラインを有する配光パターンとオーバーヘッドサイン用の配光パターンとを車両の前方に照射させるプロジェクタタイプの車両用前照灯において、
光源と、
前記光源からの光を反射させる反射面を有するリフレクタと、
前記反射面からの反射光を前方に投影する投影レンズと、
前記反射面からの反射光の一部を遮蔽して残りの反射光で前記カットオフラインを有する配光パターンを形成する窓部を有するシェードと、
前記窓部を通過する反射光の一部を反射させて前記オーバーヘッドサイン用の配光パターンを形成する反射部材と、
を備え、
前記窓部には、前記カットオフラインを形成するエッジが設けられていて、
前記反射部材は、前記投影レンズと前記シェードとの間に配置されていて、
前記反射部材には、前記オーバーヘッドサイン用の配光パターンを左右に広げる反射凹面が設けられている、
ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記エッジは、対向車線側の水平カットオフラインを形成する第1水平エッジと、前記第1水平エッジよりも下位に位置していて走行車線側の水平カットオフラインを形成する第2水平エッジと、中央の斜めカットオフラインを形成する中央斜めエッジと、を有し、
前記反射凹面は、下側に凹んだ形状をなし、前記第1水平エッジ側の窓部を通過した光を反射させて対向車線側の部分を形成する第1反射凹面と、前記第2水平エッジ側の窓部を通過した光を反射させて走行車線側の部分を形成する第2反射凹面と、前記中央斜めエッジ側の窓部を通過した光を反射させて中央の繋部分を形成する第3反射凹面と、を有し、
前記第2反射凹面の面積は、前記第1反射凹面の面積よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−238471(P2012−238471A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106598(P2011−106598)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】