説明

車両用回転電機

【課題】半導体パッケージを実装する際の自由度が高く、コスト低減を図ることができる車両用回転電機を提供すること。
【解決手段】車両用発電機1の整流器モジュール群5、6は、複数の整流器モジュール(半導体パッケージ)5X等を含んで構成されている。これら複数の整流器モジュール5X等は、回転子の回転軸を中心とした円弧上に等間隔で配置される。また、各整流器モジュール5X等は、2つのパッケージ周方向側面30、32から引き出されるとともにこれら2つのパッケージ周方向側面30、32の中心にある仮想的な面に対して対称形状の通信端子44、46、出力端子45、47を有する。隣接する2つの整流器モジュールから引き出された通信端子44、46同士、あるいは出力端子45、47同士を互いに接触させた状態で溶接あるいはろう付けにより接合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車やトラック等に搭載される車両用回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、突出端子と固定端子とを有するインバータモジュールにおいて、互いに隣接するモジュール同士で突出端子と固定端子とを連結して電気的接続を行うとともに、各モジュールをモータの中心軸周りに環状配置した機電一体型モータ用電力変換装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、ハウジング内に、6つの半導体スイッチング素子のそれぞれを、回転軸軸線に対して点対称的に配設された6つの基板に個別に支持し、素子駆動用の制御回路を各基板の配置中心に配設するようにした三相電動機の駆動回路配置構造が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−131794号公報
【特許文献2】特許第2690551号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された機電一体型モータ用電力変換装置には以下の問題があった。(1)界磁可能な回転子を有する車両用回転電機においては、リア側に励磁用回路が実装されるため、この励磁用回路と干渉してしまって各モジュールを環状に配置することができない。(2)グランド端子を設けて相互接続しようとすると、同様に突出端子と固定端子を電気的に接続する必要があるため、部品点数や工数が増加してコストがかかる。(3)突出端子と固定端子とを接続するための固定用部品(例えばネジ)が接続箇所の数だけ必要になって、その分コストがかかる。(4)フレーム端面を、突出端子と固定端子に合わせた形状とする必要があり、フレームの形状が複雑になる。(5)電力端子(例えば、発電機の出力端子)以外に相互接続する端子がある場合には、それらについても突出端子と固定端子が必要になってコストがかかる。
【0006】
また、特許文献2に開示された三相電動機の駆動回路には以下の問題があった。(6)界磁可能な回転子を有する車両用回転電機においては、リア側に励磁用回路が実装されるため、点対称的に6つの基板を配置すると、励磁用回路に対応する位置のスペースが無駄に空くことになる。(7)ハイサイド側とローサイド側の一対のスイッチング素子を内蔵したモジュールを実装する場合には、固定子巻線が奇数相(例えば三相)の場合には点対称に配置することができない。
【0007】
このように、特許文献1、2に開示された従来技術では、実装の自由度が少ないとともに端子形状や種類あるいはその接続方法に起因してコスト高になるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、半導体パッケージを実装する際の自由度が高く、コスト低減を図ることができる車両用回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の車両用回転電機は、界磁巻線を有する回転子と、回転子と対向配置された固定子と、固定子に備わった固定子巻線に誘起される交流電流を直流電流に変換してバッテリに供給、または、バッテリから供給される直流電流を交流電流に変換して固定子巻線に供給する電力変換器と、界磁巻線に流れる励磁電流を制御する励磁制御回路とを備える車両用回転電機において、電力変換器は、それぞれがスイッチング素子を有する複数の半導体パッケージを含んで構成され、複数の半導体パッケージは、回転子の回転軸を中心とした円弧上に等間隔で配置され、複数の半導体パッケージのそれぞれは、2つの周方向側面から引き出されるとともにこれら2つの周方向側面の中心にある仮想的な面に対して対称形状の相互接続用端子を有し、周方向に隣接する2つの半導体パッケージのそれぞれの対向する周方向側面から引き出された相互接続用端子同士を互いに接触させた状態で溶接あるいはろう付けにより接合している。
【0010】
半導体パッケージの実装面に励磁制御回路等の他の部品を配置した場合であっても、残りの領域を有効利用して各半導体パッケージを実装することが可能になり、実装の自由度を向上させることができる。また、相互接続端子同士を互いに接触させた状態で溶接等によって接合しているため、接合する端部を単純な形状とすることができ、しかも接合にネジ等の他の部品が不要になって部品点数の低減によるコスト低減が可能になる。また、相互接続端子同士を接合しているため、半導体パッケージを搭載するフレーム等の形状を端子形状に合わせる必要がなく、半導体パッケージを実装するフレーム等の形状の簡略化が可能となる。
【0011】
また、上述した半導体パッケージは、固定子を保持するフレームに直接固定され、あるいは、このフレームに電気的に接続されてスイッチング素子の冷却を行う冷却用部材に固定されるとともに、スイッチング素子のグランド側端子と電気的に接続された固定端子を有することが望ましい。半導体パッケージを固定する際に、同時にグランド側端子(図2に示す例では、「GND」で示される電流検出素子53の一方端側)の接続を行うことが可能になり、相互接続用端子の数を減らすことができる。
【0012】
また、上述した半導体パッケージは、スイッチング素子のオン/オフタイミングを制御する制御回路を備え、相互接続用端子には、他の半導体パッケージに備わった制御回路と相互接続するための制御回路接続端子が含まれ、制御回路接続端子は、2つの周方向側面のそれぞれから突出する2つのリードフレームによって構成されており、これら2つのリードフレームの間に制御回路を配置するとともに、これら2つのリードフレームと制御回路とを1本のボンディングワイヤによって電気的に接続することが望ましい。制御回路を2つのリードフレームの間に配置することにより、1本のボンディングワイヤを用いて2つのリードフレームと制御回路の間の相互接続を行うことができるようになり、ワイヤボンディング工程の簡略化とともに、制御回路上のパッド数の低減、省スペース化が可能となる。
【0013】
また、上述した半導体パッケージは、回転子の回転軸に垂直な面に対して傾斜して実装されることが望ましい。これにより、径方向に沿った実装面積を小さくすることができる。一般に、プーリ等が配置される回転軸に沿った向きは、搭載スペースに比較的余裕があることが多いが、径方向に沿った向きには、同じ駆動ベルトを用いて連結される各種の補機が配置されるため搭載スペースに余裕がないことが多い。このような場合に、径方向に沿った実装面積を小さくすることは特に有効となる。
【0014】
また、上述した相互接続端子には、スイッチング素子と固定子巻線との間で流れる電流が流れる電流供給端子が含まれ、制御回路接続端子は、電流供給端子よりも細いことが望ましい。制御回路接続端子には電流供給端子ほど電流が流れないため細くしても支障はなく、これにより、省スペース化と材料削減を実現することができる。
【0015】
また、上述した電流供給端子は、制御回路接続端子よりも内周側に配置されることが望ましい。内周側に配置することにより、電流供給端子の長さを短くすることができ、材料低減とともに低抵抗化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施形態の車両用発電機の構成を示す図である。
【図2】整流器モジュールの構成を示す図である。
【図3】制御回路の詳細構成を示す図である。
【図4】整流器モジュール内部の実装状態を示す平面図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】6つの整流器モジュールの実装状態における配置を示す図である。
【図7】整流器モジュールの外観形状を示す平面図である。
【図8】整流器モジュールの実装状態の変形例を示す図である。
【図9】整流器モジュールの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の車両用回転電機を適用した一実施形態の車両用発電機について、図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態の車両用発電機の構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態の車両用発電機1は、2つの固定子巻線2、3、界磁巻線4、2つの整流器モジュール群5、6、発電制御装置7を含んで構成されている。2つの整流器モジュール群5、6が電力変換器に対応する。
【0018】
一方の固定子巻線2は、多相巻線(例えばX相巻線、Y相巻線、Z相巻線からなる三相巻線)であって、固定子鉄心(図示せず)に巻装されている。同様に、他方の固定子巻線3は、多相巻線(例えばU相巻線、V相巻線、W相巻線からなる三相巻線)であって、上述した固定子鉄心に、固定子巻線2に対して電気角で30度ずらした位置に巻装されている。本実施形態では、これら2つの固定子巻線2、3と固定子鉄心によって固定子が構成されている。
【0019】
界磁巻線4は、固定子鉄心の内周側に対向配置された界磁極(図示せず)に巻装されて回転子を構成している。励磁電流を流すことにより、界磁極が磁化される。界磁極が磁化されたときに発生する回転磁界によって固定子巻線2、3が交流電圧を発生する。
【0020】
一方の整流器モジュール群5は、一方の固定子巻線2に接続されており、全体で三相全波整流回路が構成され、固定子巻線2に誘起される交流電流を直流電流に変換する。この整流器モジュール群5は、固定子巻線2の相数に対応する数(三相巻線の場合には3個)の整流器モジュール5X、5Y、5Zを備えている。整流器モジュール5Xは、固定子巻線2に含まれるX相巻線に接続されている。整流器モジュール5Yは、固定子巻線2に含まれるY相巻線に接続されている。整流器モジュール5Zは、固定子巻線2に含まれるZ相巻線に接続されている。
【0021】
他方の整流器モジュール群6は、一方の固定子巻線3に接続されており、全体で三相全波整流回路が構成され、固定子巻線3に誘起される交流電流を直流電流に変換する。この整流器モジュール群6は、固定子巻線3の相数に対応する数(三相巻線の場合には3個)の整流器モジュール6U、6V、6Wを備えている。整流器モジュール6Uは、固定子巻線3に含まれるU相巻線に接続されている。整流器モジュール6Vは、固定子巻線3に含まれるV相巻線に接続されている。整流器モジュール6Wは、固定子巻線3に含まれるW相巻線に接続されている。
【0022】
発電制御装置7は、界磁巻線4に流す励磁電流を制御する励磁制御回路であって、励磁電流を制御することにより車両用発電機1の発電電圧(各整流器モジュールの出力電圧)を制御する。また、発電制御装置7は、通信端子および通信線を介してECU8(外部制御装置)と接続されており、ECU8との間で双方向のシリアル通信(例えば、LIN(Local Interconnect Network)プロトコルを用いたLIN通信)を行い、通信メッセージを送信あるいは受信する。
【0023】
本実施形態の車両用発電機1はこのような構成を有しており、次に、整流器モジュール5X等の詳細について説明する。
【0024】
図2は、整流器モジュール5Xの構成を示す図である。なお、他の整流器モジュール5Y、5Z、6U、6V、6Wも同じ構成を有している。図2に示すように、整流器モジュール5Xは、3つのMOSトランジスタ50、51、52、電流検出素子53、制御回路54を備えている。MOSトランジスタ50は、ソースが固定子巻線2のX相巻線に接続され、ドレインがMOSトランジスタ52を介してバッテリ9の正極端子に接続されたハイサイド側のスイッチング素子である。MOSトランジスタ51は、ドレインがX相巻線に接続され、ソースが電流検出素子53を介してバッテリ9の負極端子(アース)に接続されたローサイド側のスイッチング素子である。
【0025】
MOSトランジスタ52は、ハイサイド側のMOSトランジスタ50とバッテリ9の正極端子との間に挿入され、ドレインがMOSトランジスタ50のドレイン側に接続されたスイッチング素子であり、バッテリ逆接続時およびロードダンプサージ抑止のための保護用に用いられる。MOSトランジスタ50、51のみが備わった従来構成では、バッテリ9が逆接続されたときに、MOSトランジスタ50、51のボディーダイオードを介して大電流が流れるが、逆接続時にこの保護用のMOSトランジスタ52をオフすることにより、MOSトランジスタ50、51のボディダイオードを介して流れる電流を阻止することができる。また、車両用発電機1に接続されたバッテリ9が外れた場合に固定子巻線2のX相巻線に大きなロードダンプサージが発生するが、このときにMOSトランジスタ52をオフすることにより、車両用発電機1から電気負荷10、12等に大きなサージ電圧が印加されることを阻止することができる。なお、整流動作のみに着目した場合には、上述したMOSトランジスタ52は省略するようにしてもよい。
【0026】
図3は、制御回路54の詳細構成を示す図である。図3に示すように、制御回路54は、制御部100、電源102、バッテリ電圧検出部110、動作検出部120、130、140、温度検出部150、電流検出部160、ドライバ170、172、174、通信回路180を備えている。
【0027】
電源102は、エンジン始動に伴って固定子巻線2のX相巻線に所定の相電圧が発生したときに動作を開始し、制御回路54に含まれる各素子に動作電圧を供給する。この動作自体は、発電制御装置7において従来から行われている動作と同じであり、同じ技術を用いて実現することができる。
【0028】
ドライバ170は、出力端子(G1)がハイサイド側のMOSトランジスタ50のゲートに接続されており、MOSトランジスタ50をオンオフする駆動信号を生成する。同様に、ドライバ172は、出力端子(G2)がローサイド側のMOSトランジスタ51のゲートに接続されており、MOSトランジスタ51をオンオフする駆動信号を生成する。ドライバ174は、出力端子(G3)が保護用のMOSトランジスタ52のゲートに接続されており、MOSトランジスタ52をオンオフする駆動信号を生成する。
【0029】
バッテリ電圧検出部110(バッテリ電圧検出手段)は、差動増幅器とその出力をデジタルデータに変換するアナログ−デジタル変換器(AD)によって構成されており、バッテリ9の正極端子の電圧に対応するデータを出力する。制御部100は、このデータに基づいてロードダンプなどの高電圧サージの発生を検出する。
【0030】
動作検出部120は、差動増幅器とその出力をデジタルデータに変換するアナログ−デジタル変換器(AD)によって構成されており、ハイサイド側のMOSトランジスタ50のソース・ドレイン間電圧(図2、図3のB−C端子間電圧)に対応するデータを出力する。制御部100は、このデータに基づいて、ドライバ170の駆動状態に対応するMOSトランジスタ50の動作状態を監視し、適宜MOSトランジスタ50の制御や故障検知を行う。
【0031】
動作検出部130は、差動増幅器とその出力をデジタルデータに変換するアナログ−デジタル変換器(AD)によって構成されており、ローサイド側のMOSトランジスタ51のソース・ドレイン間電圧(図2、図3のC−D端子間電圧)に対応するデータを出力する。制御部100は、このデータに基づいて、ドライバ172の駆動状態に対応するMOSトランジスタ51の動作状態を監視し、適宜MOSトランジスタ51の制御や故障検知を行う。
【0032】
動作検出部140は、差動増幅器とその出力をデジタルデータに変換するアナログ−デジタル変換器(AD)によって構成されており、保護用に用いられるMOSトランジスタ52のソース・ドレイン間電圧(図2、図3のA−B端子間電圧)に対応するデータを出力する。制御部100は、このデータに基づいて、ドライバ174の駆動状態に対応するMOSトランジスタ52の動作状態を監視し、適宜MOSトランジスタ52の制御や故障検知を行う。
【0033】
温度検出部150は、定電流源、ダイオード、差動増幅器とその出力をデジタルデータに変換するアナログ−デジタル変換器(AD)によって構成されており、温度によって変化するダイオードの順方向電圧降下に対応するデータを出力する。制御部100は、このデータに基づいて整流器モジュール5Xの温度を検出する。
【0034】
電流検出部160は、差動増幅器とその出力をデジタルデータに変換するアナログ−デジタル変換器(AD)によって構成されており、電流検出素子53(例えば抵抗)の両端電圧(図2、図3のD−GND端子間電圧)に対応するデータを出力する。制御部100は、このデータに基づいてローサイド側のMOSトランジスタ51のソース・ドレイン間に流れる電流を検出する。
【0035】
通信回路180は、発電制御装置7と同様の通信手段であって、発電制御装置7とECU8の間を接続する通信端子および通信線に共通に接続されており、ECU8との間で双方向のシリアル通信(例えば、LINプロトコルを用いたLIN通信)を行い、通信メッセージを送信あるいは受信する。
【0036】
例えば、通信頻度として、1通信あたり20ms程度でECU8との間で通信メッセージを送受信しているような場合を考えると、1秒間に50回の通信を行うことができる。したがって、本実施形態において6個の通信モジュール5X等を追加してそのための通信メッセージの送受信が増加しても、発電制御装置7とECU8との間で発電状態を含む通信メッセージやダイアグ情報等の通信メッセージの送受信を行う発電制御に支障はないといえる。
【0037】
次に、整流器モジュール5Xの構造および配置について説明する。なお、他の整流器モジュール5Y、5Z、6U、6V、6Wも同じ構造および配置を有しており、詳細な説明は省略する。
【0038】
図4は、整流器モジュール5X内部の実装状態を示す平面図である。図5は、図4のV−V線断面図である。これらの図において用いられている各端子に付された符号(X、BATT、GND、L1、L2、L3)は、図2において同じ符号が付された各端子に対応している。
【0039】
図4および図5において、ハイサイド側のMOSトランジスタ50、ローサイド側のMOSトランジスタ51、保護用のMOSトランジスタ52のそれぞれは、同一の製造方法で同一のサイズに形成されている。また、ドレインを共通にするMOSトランジスタ50とMOSトランジスタ52はリードフレームの同一のアイランドaに搭載され、MOSトランジスタ51はアイランドbに搭載されている。これら2つのアイランドa、bの面積は、搭載するMOSトランジスタの数に比例する面積比となるように、すなわち、アイランドaの面積がアイランドbの面積の2倍になるように設定されている。さらに、MOSトランジスタ50、51、52が搭載されたアイランドa、bは、全て断面方向に同一の放熱構造(ヒートシンクの配置等)を備えており、整流器モジュール5Xは、構成する部品全体をモールド樹脂で封止する半導体パッケージとして形成されている。
【0040】
図6は、6つの整流器モジュール5X、5Y、5Z、6U、6V、6Wの実装状態における配置を示す図である。図7は、整流器モジュール5Xの外観形状を示す平面図である。
【0041】
図6に示すように、6つの整流器モジュール5X、5Y、5Z、6U、6V、6Wは、車両用発電機1のリヤフレーム60の軸方向端面上に、発電制御装置7やブラシ装置20が搭載された領域を除いて回転子の回転軸を中心とした円弧上に均等(等間隔)に配置されている。なお、図6では、整流器モジュール5X、5Y、5Z、6U、6V、6Wの順番に配置されている場合を図示したが、固定子巻線2、3の引出線の位置等に応じてこの順番は適宜変更される。6つの整流器モジュール5X、5Y、5Z、6U、6V、6Wを円環状ではなく円弧上に配置することにより、各整流器モジュールの実装領域として用いなかった残りの領域に発電制御装置7等の他の部品を配置することが可能になる。
【0042】
図7に示すように、整流器モジュール5X等のそれぞれは、平面形状が長方形を有しており、パッケージ内周側側面30とパッケージ外周側側面32のそれぞれに固定端子40、42が設けられている。これらの固定端子40、42は、図2に示すGND端子を兼ねており、リヤフレーム60にネジによって締め付けることにより、半導体パッケージの固定とボディアースとしてのリヤフレーム60への電気的接続が同時に行われる。なお、リヤフレーム60に直接整流器モジュール5X等を取り付ける代わりに、リヤフレーム60に電気的に接続されてMOSトランジスタ50等の冷却を行う冷却用部材(放熱フィン)に固定端子40、42をネジ締めするようにしてもよい。
【0043】
また、一方のパッケージ周方向側面34からは、通信端子44(L1、L2、L3)と出力端子45(BATT)が引き出され、他方のパッケージ周方向側面36からは、通信端子46(L1、L2、L3)と出力端子47(BATT)とステータ端子48(X)が引き出されている。通信端子44と通信端子46、あるいは、出力端子45と出力端子47は、パッケージ周方向側面34、36の中心面(周方向に沿った仮想的な中心面)Sに対して左右対称の形状および配置を有している。上述した通信端子44、46、出力端子45、47が相互接続用端子に対応する。また、通信端子44、46が制御回路接続端子に、出力端子45、47が電流供給端子にそれぞれ対応する。
【0044】
図5に示すように、通信端子44と通信端子46は、別々のリードフレームによって構成されており、半導体パッケージ内において1本のボンディングワイヤを用いて相互に、かつ、制御回路54(正確には制御回路54内の通信回路180)と接続されている。出力端子45と出力端子47は、共通のリードフレームによって構成されており、半導体パッケージからこのリードフレームの両端を別々に突出させることにより実現している。また、ステータ端子48は、固定子巻線2に含まれるX相巻線から引き出された引出線に、溶接やろう付けによって接続される。
【0045】
本実施形態では、周方向に沿って隣接する2つの整流器モジュールに着目すると、一方のパッケージ周方向側面34から突出する通信端子44と出力端子45と、他方のパッケージ周方向側面36から突出する通信端子46と出力端子47は、それらの中間位置で面接触した状態で溶接あるいはろう付けされ、相互に電気的接続が行われる。溶接やろう付け箇所の接触面積を大きくするとともにこれらの作業をしやすくするために、これらの各端子の端部は、軸方向に沿って折り曲げられている。この折り曲げられた端部同士を接触させた状態で溶接治具(あるいは、ろう付け治具)で挟み込むことができるため、溶接等の作業を確実に実施することが可能となる。
【0046】
また、本実施形態では、内周側に出力端子45、47が配置され、外周側に通信端子44、46が配置されており、内周側の出力端子45、47の方が外周側の通信端子44、46よりも幅が広い(太い)導体を用いて形成されている。出力端子45、47を内周側に配置することにより、相互接続する際の円周方向の長さを短くし、さらに幅を広くすることにより、大電流が流れる出力端子45、47の抵抗値を下げている。反対に、大電流が流れない通信端子44、46については、幅を狭く(細く)することにより、省スペースと材料削減を実現している。
【0047】
ところで、リヤフレーム60の軸方向端面に配置した6つの整流器モジュール5X、5Y、5Z、6U、6V、6Wは、図8に示すように、リヤフレーム60の軸方向端面(回転軸に垂直な面)に対して半導体パッケージの主面(例えばヒートシンクが配置された下面)が所定の傾斜をなすように配置してもよい。これにより、回転軸を中心とした径方向に沿った実装面積を小さくすることができる。一般に、プーリ等が配置される回転軸に沿った向きは、搭載スペースに比較的余裕があることが多いが、径方向に沿った向きには、同じ駆動ベルトを用いて連結される各種の補機が配置されるため搭載スペースに余裕がないことが多い。このような場合に、径方向に沿った実装面積を小さくすることは特に有効となる。
【0048】
このように、本実施形態の車両用発電機1では、半導体パッケージとしての各整流器モジュール5X等の実装面に発電制御装置7やブラシ装置等の他の部品を配置した場合であっても、残りの領域を有効利用して各整流器モジュールを実装することが可能になり、実装の自由度を向上させることができる。また、通信端子同士や出力端子同士を互いに接触させた状態で溶接等によって接合しているため、接合する端部を単純な形状とすることができ、しかも接合にネジ等の他の部品が不要になって部品点数の低減によるコスト低減が可能になる。また、各整流器モジュール5X等をリヤフレーム60に固定する際に、同時にグランド側端子の接続を行うことが可能になり、相互接続用端子の数を減らすことができる。
【0049】
また、制御回路54を2つのリードフレームの間に配置することにより、1本のボンディングワイヤを用いて2つのリードフレームと制御回路54の間の相互接続を行うことができるようになり、ワイヤボンディング工程の簡略化とともに、制御回路54上のパッド数の低減、省スペース化が可能となる。
【0050】
また、通信端子44、46を出力端子45、47よりも細くすることにより、省スペース化と材料削減を実現することができる。一方、出力端子45、47を内周側に配置することにより、相互接続される出力端子45、47の長さを短くすることができ、材料低減とともに低抵抗化を実現することができる。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、2つの固定子巻線2、3と2つの整流器モジュール群5、6を備えるようにしたが、一方の固定子巻線2と一方の整流器モジュール群5を備える車両用発電機についても本発明を適用することができる。また、上述した実施形態では、Y結線された2つの固定子巻線2、3を備えた車両用発電機1について説明したが、Δ結線された固定子巻線を備える車両用発電機についても本発明を適用することができる。
【0052】
また、上述した実施形態では、各整流器モジュール5X等を用いて整流動作(発電動作)を行う場合について説明したが、MOSトランジスタ50、51のオン/オフタイミングを変更することにより、バッテリ9から印加される直流電流を交流電流に変換して固定子巻線2、3に供給することにより、車両用発電機1に電動動作を行わせるようにしてもよい。
【0053】
また、上述した実施形態では、2つの整流器モジュール群5、6のそれぞれに3つの整流器モジュールを含ませるようにしたが、整流器モジュールの数は3以外であってもよい。例えば、5相や7相の固定子巻線に対応して整流器モジュールが5あるいは7になった場合であっても、これらを円弧上に均等配置すればよい。
【0054】
また、上述した実施形態では、各整流器モジュール5X等のそれぞれは、平面形状が長方形形状の場合について説明したが、図9に示すように台形形状を有する場合でもよい。台形形状の場合、リードフレームの露出する長さが少なくなり、耐腐食性、耐震性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
上述したように、本発明によれば、半導体パッケージ(整流器モジュール)の実装面に発電制御装置7等の他の部品を配置した場合であっても、残りの領域を有効利用して各整流器モジュールを実装することが可能になる。また、通信端子や出力端子等の相互接続端子同士を互いに接触させた状態で溶接等によって接合しているため、接合する端部を単純な形状とすることができ、しかも接合にネジ等の他の部品が不要になって部品点数の低減によるコスト低減が可能になる。
【符号の説明】
【0056】
1 車両用発電機
2、3 固定子巻線
4 界磁巻線
5、6 整流器モジュール群
5X、5Y、5Z、6U、6V、6W 整流器モジュール
7 発電制御装置
8 ECU
9 バッテリ
10、12 電気負荷
30 パッケージ内周側側面
32 パッケージ外周側側面
40、42 固定端子
34、36 パッケージ周方向側面
44、46 通信端子
45、47 出力端子
48 ステータ端子
50、51、52 MOSトランジスタ
53 電流検出素子
54 制御回路
60 リヤフレーム
180 通信回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界磁巻線を有する回転子と、前記回転子と対向配置された固定子と、前記固定子に備わった固定子巻線に誘起される交流電流を直流電流に変換してバッテリに供給、または、バッテリから供給される直流電流を交流電流に変換して前記固定子巻線に供給する電力変換器と、前記界磁巻線に流れる励磁電流を制御する励磁制御回路とを備える車両用回転電機において、
前記電力変換器は、それぞれがスイッチング素子を有する複数の半導体パッケージを含んで構成され、
前記複数の半導体パッケージは、前記回転子の回転軸を中心とした円弧上に等間隔で配置され、
前記複数の半導体パッケージのそれぞれは、2つの周方向側面から引き出されるとともにこれら2つの周方向側面の中心にある仮想的な面に対して対称形状の相互接続用端子を有し、
周方向に隣接する2つの前記半導体パッケージのそれぞれの対向する周方向側面から引き出された前記相互接続用端子同士を互いに接触させた状態で溶接あるいはろう付けにより接合することを特徴とする車両用回転電機。
【請求項2】
請求項1において、
前記半導体パッケージは、前記固定子を保持するフレームに直接固定され、あるいは、このフレームに電気的に接続されて前記スイッチング素子の冷却を行う冷却用部材に固定されるとともに、前記スイッチング素子のグランド側端子と電気的に接続された固定端子を有することを特徴とする車両用回転電機。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記半導体パッケージは、前記スイッチング素子のオン/オフタイミングを制御する制御回路を備え、
前記相互接続用端子には、他の半導体パッケージに備わった前記制御回路と相互接続するための制御回路接続端子が含まれ、
前記制御回路接続端子は、前記2つの周方向側面のそれぞれから突出する2つのリードフレームによって構成されており、
これら2つのリードフレームの間に前記制御回路を配置するとともに、これら2つのリードフレームと前記制御回路とを1本のボンディングワイヤによって電気的に接続することを特徴とする車両用回転電機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記半導体パッケージは、前記回転子の回転軸に垂直な面に対して傾斜して実装されることを特徴とする車両用回転電機。
【請求項5】
請求項3において、
前記相互接続端子には、前記スイッチング素子と前記固定子巻線との間で流れる電流が流れる電流供給端子が含まれ、
前記制御回路接続端子は、前記電流供給端子よりも細いことを特徴とする車両用回転電機。
【請求項6】
請求項5において、
前記電流供給端子は、前記制御回路接続端子よりも内周側に配置されることを特徴とする車両用回転電機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−151977(P2011−151977A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11712(P2010−11712)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】