説明

車両用灯具

【課題】従来の車両用灯具では、配光パターンのカットオフラインの下側の一部を滑らかに減光することが難しい。
【解決手段】シェード兼付加リフレクタ5には、すれ違い用配光パターンLPの対向車線側カットオフラインCL1および斜めカットオフラインCL2および走行車線側カットオフラインCL3を形成するカットオフライン形成部すなわち突起部15の水平部16および傾斜部17および角部22が設けられている。付加反射面14のうち少なくとも突起部15の水平部16近傍には、カットオフした反射光L3の一部L4を投影レンズ4側に拡散反射させる拡散部としての球凸部18が設けられている。この結果、この発明は、すれ違い用配光パターンLPのうち少なくとも対向車線側カットオフラインCL1下側の一部20を滑らかに減光することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光源としてたとえばLEDなどの半導体型光源を使用するいわゆるプロジェクタタイプの車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用灯具は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、この従来の車両用灯具について説明する。従来の車両用灯具は、投影レンズと、光源と、リフレクタと、付加リフレクタと、遮蔽部と、から構成されている。光源を点灯すると、その光源からの光がリフレクタで反射し、その反射光の一部が付加リフレクタでカットオフされ、カットオフされなかった反射光が投影レンズ側に進み、また、カットオフされた反射光が付加リフレクタで投影レンズ側に反射され、投影レンズからカットオフラインを有する配光パターンが車両の前方に照射される。この従来の車両用灯具は、遮蔽部により、配光パターンのカットオフラインの下側の一部を滑らかに減光することができる。
【0003】
ところが、従来の車両用灯具は、遮蔽部により、リフレクタからの反射光の一部および付加リフレクタからの反射光の一部を遮蔽するものであるから、配光パターンのカットオフラインの下側の一部の光が抜け、この結果、配光パターンのうち、光が抜けた部分とその周囲の部分との光の強弱の差が大きく、滑らかに減光することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−77890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする問題点は、従来の車両用灯具では、配光パターンのカットオフラインの下側の一部を滑らかに減光することが難しいという点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明(請求項1にかかる発明)は、シェード兼付加リフレクタには配光パターンの対向車線側カットオフラインおよび斜めカットオフラインおよび走行車線側カットオフラインを形成するカットオフライン形成部がそれぞれ設けられていて、付加反射面のうち少なくとも対向車線側カットオフラインを形成するカットオフライン形成部の近傍にはカットオフした反射光の一部を拡散させる拡散部が設けられている、ことを特徴とする。
【0007】
また、この発明(請求項2にかかる発明)は、拡散部が、付加反射面のうち、対向車線側カットオフラインを形成するカットオフライン形成部と斜めカットオフラインを形成するカットオフライン形成部との境から対向車線側カットオフラインを形成するカットオフライン形成部側の箇所に設けられている、ことを特徴とする。
【0008】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)は、拡散部が球凸形状をなす、ことを特徴とする。
【0009】
さらにまた、この発明(請求項4にかかる発明)は、球凸形状をなす拡散部の頂点が灯具光軸よりも付加反射面側に位置する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、付加反射面のうち少なくとも対向車線側カットオフラインを形成するカットオフライン形成部の近傍に設けられている拡散部により、シェード兼付加リフレクタでカットオフした反射光の一部を拡散(散乱)させるので、配光パターンのうち少なくとも対向車線側カットオフライン下側の一部の光を弱くすることができる。これにより、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、配光パターンのうち少なくとも対向車線側カットオフライン下側の一部を滑らかに減光することができる。特に、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、拡散部により、配光パターンのうち少なくとも対向車線側カットオフライン下側の一部の光を抜くのではなく拡散(散乱) させて弱くするものであるから、遮蔽部により配光パターンのカットオフラインの下側の一部の光を抜く従来の車両用灯具と比較して、配光パターンのうち少なくとも対向車線側カットオフライン下側において、光を弱くした部分とその周囲の部分との光の強弱の差が小さくすることができ、この結果、さらに滑らかに減光することができる。
【0011】
また、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用灯具は、拡散部が、付加反射面のうち、対向車線側カットオフラインを形成するカットオフライン形成部と斜めカットオフラインを形成するカットオフライン形成部との境から対向車線側カットオフラインを形成するカットオフライン形成部側の箇所に設けられているので、配光パターンの走行車線側の遠方視認性が維持された状態で、配光パターンの対向車線側カットオフライン下側の一部を滑らかに減光することができる。
【0012】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用灯具は、拡散部が球凸形状をなすものであるから、付加反射面の形態がどのような形態であっても、確実に、配光パターンのうち少なくとも対向車線側カットオフライン下側の一部を滑らかに減光することができる。しかも、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用灯具は、拡散部が球凸形状をなすものであるから、部品点数が増加して製造コストが上がることがなく、かつ、シェード兼付加リフレクタでカットオフした反射光の一部を確実に拡散(散乱)させることができる。
【0013】
さらにまた、この発明(請求項4にかかる発明)の車両用灯具は、球凸形状をなす拡散部の頂点が灯具光軸よりも付加反射面側に位置するので、シェード兼付加リフレクタでカットオフした反射光を多く拡散(散乱)させて、配光パターンの対向車線側カットオフラインおよび斜めカットオフラインから離れた部分の光を弱めて配光パターンの手前側の視認性を低下させたり、あるいは、拡散光(散乱光)が多くなって迷光としてドライバーや他のドライバーや歩行者に不快感や違和感を与えたりすることがない。すなわち、球凸形状をなす拡散部の頂点が灯具光軸よりも付加反射面と反対側に突出すると、シェード兼付加リフレクタでカットオフした反射光を多く拡散(散乱)させて、配光パターンの対向車線側カットオフラインおよび斜めカットオフラインから離れた部分の光を弱めて配光パターンの手前側の視認性を低下させたり、あるいは、拡散光(散乱光)が多くなって迷光としてドライバーや他のドライバーや歩行者に不快感や違和感を与えたりすることがある。これに対して、この発明(請求項5にかかる発明)の車両用灯具は、球凸形状をなす拡散部の頂点が灯具光軸よりも付加反射面側に位置するので、配光パターンの手前側の視認性を確実に維持することができ、また、ドライバーや他のドライバーや歩行者に不快感や違和感を与えたりする迷光の発生を確実に減少もしくは防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明にかかる車両用灯具の実施例を示すシェード兼付加リフレクタの斜視図である。
【図2】同じく、シェード兼付加リフレクタを示す平面視図である。
【図3】同じく、図2におけるIII−III線断面に対応する縦断面図である。
【図4】同じく、図2におけるIV−IV線断面に対応する縦断面図である。
【図5】同じく、図2におけるV−V線断面に対応する縦断面図である。
【図6】同じく、付加反射面からの反射光で形成されたすれ違い用配光パターンを示すスクリーン上のすれ違い用配光パターンの説明図である。
【図7】同じく、シェード兼付加リフレクタでカットオフされなかった収束型反射面からの反射光で形成されたすれ違い用配光パターンを示すスクリーン上のすれ違い用配光パターンの説明図である。
【図8】同じく、図6のすれ違い用配光パターンと図7のすれ違い用配光パターンとを合成したすれ違い用配光パターン示すスクリーン上のすれ違い用配光パターンの説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、この発明にかかる車両用灯具の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。図面において、符号「VU−VD」は、スクリーンの上下の垂直線を示す。符号「HL−HR」は、スクリーンの左右の水平線を示す。符号「Z−Z」は、灯具光軸(ランプユニットの光軸、収束型反射面の光軸、投影レンズの光軸)を示す。
【実施例】
【0016】
以下、この実施例における車両用灯具の構成について説明する。この例は、たとえば、自動車用前照灯について説明する。図3において、符号1は、この実施例における車両用灯具である。前記車両用灯具1は、図3に示すように、いわゆるプロジェクタタイプであって、ユニット構造をなす。前記車両用灯具1は、リフレクタ2と、半導体型光源3と、投影レンズ(凸レンズ、集光レンズ)4と、シェード兼付加リフレクタ5と、ヒートシンク部材6と、図示しない自動車用前照灯のランプハウジングおよびランプレンズ(たとえば、素通しのアウターレンズなど)と、から構成されている。
【0017】
前記リフレクタ2および前記半導体型光源3および前記投影レンズ4および前記シェード兼付加リフレクタ5および前記ヒートシンク部材6は、ランプユニットを構成する。1個もしくは複数個の前記ランプユニットは、自動車用前照灯のランプハウジングおよびランプレンズにより区画されている灯室内に、たとえば光軸調整機構を介して配置されている。
【0018】
前記リフレクタ2は、光不透過性の樹脂部材などから構成されており、ケーシングやハウジングやホルダなどの保持部材と兼用である。前記リフレクタ2と前記シェード兼付加リフレクタ5と前記ヒートシンク部材6とは、相互に固定されている。
【0019】
前記リフレクタ2の前側の部分は、円筒形状のホルダ部7を構成している。前記ホルダ部7には、前記投影レンズ4が固定されている。一方、前記リフレクタ2の中央側から後側までの部分は、ほぼ光軸Z−Zに沿って水平に上側の部分の閉塞部と下側の部分の開口部とからなる。前記リフレクタ2のドーム形状の閉塞部の凹内面には、アルミ蒸着もしくは銀塗装などが施されていて収束型反射面8が設けられている。
【0020】
前記収束型反射面8は、楕円を基調とした反射面、たとえば、回転楕円面や楕円を基本とした自由曲面(NURBS曲面)などの反射面(図3、図4、図5の垂直断面が楕円面をなし、かつ、図示しない水平断面が放物面ないし変形放物面をなす反射面)からなる。このために、前記収束型反射面8は、第1焦点F1と第2焦点(水平断面上の焦線、すなわち、上(平面)から見て両端が前記投影レンズ4側に位置し中央が前記半導体型光源3側に位置するような湾曲した焦線)F2と、光軸Z−Zと、を有する。
【0021】
前記半導体型光源3は、たとえば、LED、EL(有機EL)などの自発光半導体型光源(この実施例ではLED)を使用する。前記半導体型光源3は、熱伝導性絶縁基板(たとえば、セラミック)の基板9と、前記基板9の一面(上面)に設けられている微小な矩形形状(正方形形状)のLEDチップの発光体(図示せず)と、前記発光体を覆うほぼ半球形状(ドーム形状)の光透過部材(レンズ)10と、からなるものである。前記半導体型光源3の前記基板9は、前記ヒートシンク部材6の一面(上面)に固定されている。前記半導体型光源3の前記発光体(発光部)は、前記収束型反射面8の前記第1焦点F1もしくはその近傍に位置する。
【0022】
前記投影レンズ4は、非球面レンズの凸レンズである。前記投影レンズ4の前方側(外部側)は、曲率が大きい(曲率半径が小さい)凸非球面をなし、一方、前記投影レンズ4の後方側(前記半導体型光源3側)は、曲率が小さい(曲率半径が大きい)凸非球面をなす。このような投影レンズ4を使用することにより、前記投影レンズ4の焦点距離が小さくなるので、その分、この実施例における車両用灯具1の前記投影レンズ4の光軸Z−Z方向の寸法がコンパクトとなる。なお、前記投影レンズ4の後方側は、平非球面(平面)をなすものであってもよい。
【0023】
前記投影レンズ4は、前側焦点(前記半導体型光源3側の焦点)および後側焦点(外部側の焦点)と、前記前側焦点と前記後側焦点とを結ぶ光軸Z−Zとを有する。前記収束型反射面8の光軸Z−Zと前記投影レンズ4の光軸Z−Zとは、灯具光軸としてほぼ一致する。前記投影レンズ4の前側焦点は、レンズ焦点(物空間側の焦点面であるメリジオナル像面)FLである。前記投影レンズ4の前記レンズ焦点FLは、前記収束型反射面8の第2焦点F2もしくはその近傍に位置する。なお、前記半導体型光源3から放射される光L1は、高い熱を持たないので、前記投影レンズ4として樹脂製のレンズを使用することができる。前記投影レンズ4は、この例ではアクリルを使用する。前記投影レンズ4は、カットオフラインCL1、CL2、CL3を有する配光パターン、たとえば、すれ違い用配光パターン(ロービーム用配光パターン)LPを車両の前方に照射(投影)するものである。
【0024】
前記シェード兼付加リフレクタ5は、前記リフレクタ2と同様に、光不透過性の樹脂部材などから構成されている。前記シェード兼付加リフレクタ5は、前記投影レンズ4と前記半導体型光源3との間に配置されている。前記シェード兼付加リフレクタ5は、図1〜図5に示すように、中空形状をなし、水平板の上面板部11と、垂直板の左右面板部12と、円弧板の前面板部13と、からなる。前記シェード兼付加リフレクタ5の前記上面板部11と前記前面板部13との角部(縁部、エッジ部)は、前記収束型反射面8の第2焦点F2もしくはその近傍、あるいは、前記投影レンズ4のレンズ焦点FLもしくはその近傍に位置する。
【0025】
前記シェード兼付加リフレクタ5には、前記半導体型光源3から放射されて前記収束型反射面8で反射された反射光L2の一部L3をカットオフして前記すれ違い用配光パターンLPのカットオフラインCL1、CL2、CL3を形成するシェード、すなわち、前記上面板部11が設けられている。
【0026】
前記シェード兼付加リフレクタ5の前記上面板部11の上面には、アルミ蒸着もしくは銀塗装などが施されていて、前記上面板部11(シェード)でカットオフされた前記収束型反射面8からの反射光L2の一部L3を前記投影レンズ4側に反射させる付加反射面14が設けられている。前記付加反射面14は、全体に亘って段差が無い下り勾配の傾斜面をなす。すなわち、前記付加反射面14は、光軸Z−Zにほぼ沿って水平線に対して(約1°〜3°)傾斜している。
【0027】
前記シェード兼付加リフレクタ5の前記上面板部11と前記前面板部13との角部のうち左側の部分には、突起部15が一体に設けられている。前記突起部15は、水平部16と、傾斜部17と、からなる。
【0028】
前記突起部15の前記水平部16は、前記すれ違い用配光パターンLPの対向車線側カットオフライン(下水平カットオフライン)CL1を形成するカットオフライン形成部である。前記突起部15の前記傾斜部17は、前記すれ違い用配光パターンLPの斜めカットオフラインCL2を形成するカットオフライン形成部である。前記突起部15の前記水平部16と前記傾斜部17との境(交点)21は、前記すれ違い用配光パターンLPの対向車線側カットオフラインCL1と斜めカットオフラインCL2との交点であるエルボー点Eを形成する。前記シェード兼付加リフレクタ5の前記上面板部11と前記前面板部13との角部のうち右側の部分22は、前記すれ違い用配光パターンLPの走行車線側カットオフライン(上水平カットオフライン)CL3を形成するカットオフライン形成部である。
【0029】
前記付加反射面14の前記突起部15の近傍には、拡散部としての球凸部18が設けられている。前記球凸部18は、半球凸形状をなす。前記球凸部18は、カットオフされる反射光L3(前記上面板部11(シェード)でカットオフされる前記収束型反射面8からの反射光L2の一部であって、前記付加反射面14で反射される反射光)の一部L4を拡散反射(散乱反射)させるものである。前記球凸部18は、前記付加反射面14のうち、前記突起部15の前記水平部16と前記傾斜部17との境21から前記水平部16側に設けられている。たとえば、図2に示すように、前記球凸部18の直径T2は、約1〜10mmである。また、前記球凸部18は、前記シェード兼付加リフレクタ5の前記上面板部11と前記前面板部13との角部から後側(前記半導体型光源3側)に寸法T1(約1〜3mm)離れた位置に位置する。さらに、前記球凸部18は、光軸Z−Zから左側に寸法T3(約0〜5mm)離れた位置に位置する。
【0030】
また、図3に示すように、前記球凸部18の頂点は、光軸Z−Zよりも下側(前記付加反射面14側)に位置する。前記球凸部18の表面には、図示しないが、小凹凸の光拡散素子群(拡散系プリズム群)が設けられている。なお、前記球凸部18の表面は、前記付加反射面14の延長であるから、反射面である。また、前記球凸部18の表面に小凹凸の光拡散素子群(拡散系プリズム群)を設けなくても良い。
【0031】
前記ヒートシンク部材6は、たとえば、樹脂や金属性ダイカストなどの熱伝導率が高い材料からなる。前記ヒートシンク部材6は、上部が平板形状をなし、中間部から下部にかけてフィン形状をなす。
【0032】
この実施例における車両用灯具1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0033】
まず、車両用灯具1の半導体型光源3の発光体を点灯発光させる。すると、半導体型光源3の発光体から光L1が放射される。この光L1は、収束型反射面8で反射され、この反射光L2が収束型反射面8の第2焦点F2に収束(集中)する。第2焦点F2に収束(集中)する反射光L2の一部L3は、シェード兼付加リフレクタ5の上面板部11のシェードによりカットオフされ、かつ、シェード兼付加リフレクタ5の突起部15の水平部16および傾斜部17および上面板部11と前面板部13との角部22によりすれ違い用配光パターンLPのカットオフラインCL1、CL2、CL3およびエルボー点Eが形成される。このシェード兼付加リフレクタ5によりカットオフされた反射光L3の大部分は、シェード兼付加リフレクタ5の全体に亘って段差が無い下り勾配の傾斜面をなす上面板部11の上面の付加反射面14により投影レンズ4側に反射される。一方、シェード兼付加リフレクタ5の上面板部11のシェードによりカットオフされなかった反射光L2は、そのまま投影レンズ4側に進む。
【0034】
そして、投影レンズ4側に進んだ光L2および投影レンズ4側に反射された光L3は、投影レンズ4を透過して、投影レンズ4のレンズ焦点FLにおける光の像を上下左右に反転させた光の像、すなわち、カットオフラインCL1、CL2、CL3およびエルボー点Eを有するすれ違い用配光パターンLPとして自動車(車両)前方に投影されて路面などを照明する。
【0035】
また、図3に示すように、シェード兼付加リフレクタ5によりカットオフされる反射光L3の一部L4は、付加反射面14の突起部15の近傍の球凸部18(球凸部18の表面の小凹凸の光拡散素子群(拡散系プリズム群))により、投影レンズ4側に拡散反射(散乱反射)される。この結果、図6に示すように、シェード兼付加リフレクタ5によりカットオフされた反射光L3の大部分により形成されるすれ違い用配光パターンLPの対向車線側カットオフラインCL1と斜めカットオフラインCL2との交点(エルボー点E)から対向車線側カットオフラインCL1側に対応する箇所には、球凸部18が無い場合と比較して、光が弱い部分19(図6中の斜め破線が施されている部分)が形成される。一方、図7に示すように、シェード兼付加リフレクタ5によりカットオフされなかった反射光L2により形成されるすれ違い用配光パターンLPは、光が弱い部分がないすれ違い用配光パターンである。この図6に示すすれ違い用配光パターンLPと図7に示すすれ違い用配光パターンLPとを合成することにより、図8に示すように、対向車線側カットオフラインCL1と斜めカットオフラインCL2との交点(エルボー点E)から対向車線側カットオフラインCL1側に対応する箇所に滑らかな減光部20(図8中の斜め破線が施されている部分)が形成されているすれ違い用配光パターンLPが形成される。
【0036】
この実施例における車両用灯具1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0037】
この実施例における車両用灯具1は、付加反射面14のうち少なくとも対向車線側カットオフラインCL1を形成するカットオフライン形成部すなわち突起部15の水平部16の近傍に設けられている拡散部としての球凸部18により、シェード兼付加リフレクタ5でカットオフされる反射光L3の一部L4を拡散(散乱)させるので、すれ違い用配光パターンLPのうち少なくとも対向車線側カットオフラインCL1下側の一部19、20の光を弱くすることができる。これにより、この実施例における車両用灯具1は、すれ違い用配光パターンLPのうち少なくとも対向車線側カットオフラインCL1下側の一部20を滑らかに減光することができる。特に、この実施例における車両用灯具1は、拡散部としての球凸部18により、すれ違い用配光パターンLPのうち少なくとも対向車線側カットオフラインCL1下側の一部19、20の光を抜くのではなく拡散(散乱) させて弱くするものであるから、遮蔽部により配光パターンのカットオフラインの下側の一部の光を抜く従来の車両用灯具と比較して、すれ違い用配光パターンLPのうち少なくとも対向車線側カットオフラインCL1下側において、光を弱くした部分19、20とその周囲の部分との光の強弱の差が小さくすることができ、この結果、さらに滑らかに減光することができる。すなわち、この実施例における車両用灯具1は、付加反射面14の突起部15の近傍に設けられている拡散部としての球凸部18により、シェード兼付加リフレクタ5でカットオフされる反射光L3の一部L4を投影レンズ4側に拡散反射させるので、すれ違い用配光パターンLPの対向車線側カットオフラインCL1と斜めカットオフラインCL2との交点(エルボー点E)から対向車線側カットオフラインCL1側に対応する箇所の光を、拡散部としての球凸部18が無い場合と比較して、弱くすることができる。これにより、この実施例における車両用灯具1は、すれ違い用配光パターンLPの対向車線側カットオフラインCL1と斜めカットオフラインCL2との交点(エルボー点E)から対向車線側カットオフラインCL1側に対応する一部(減光部20)を滑らかに減光することができる。
【0038】
また、この実施例における車両用灯具1は、拡散部としての球凸部18が、付加反射面14のうち、突起部15の水平部16(対向車線側カットオフラインCL1を形成するカットオフライン形成部)と傾斜部17(斜めカットオフラインCL2を形成するカットオフライン形成部)との境21から水平部16側の箇所、すなわち、すれ違い用配光パターンLPの対向車線側カットオフラインCL1と斜めカットオフラインCL2との交点(エルボー点E)から対向車線側カットオフラインCL1側に対応する箇所に設けられているので、走行車線側の遠方視認性が維持された状態で、対向車線側の対向車線側カットオフラインCL1の下側の配光の一部(減光部20)を滑らかに減光することができる。
【0039】
さらに、この実施例における車両用灯具1は、拡散部としての球凸部18が球凸形状をなすものであるから、付加反射面14の形態がどのような形態であっても、たとえば、傾斜角度が異なる付加反射面14あるいは段差がある付加反射面14であっても、確実に、すれ違い用配光パターンLPのうち少なくとも対向車線側カットオフラインCL1下側の一部20を滑らかに減光することができる。しかも、この実施例における車両用灯具1は、拡散部としての球凸部18が球凸形状をなすものであるから、部品点数が増加して製造コストが上がることがなく、しかも、シェード兼付加リフレクタ5でカットオフした反射光L3の一部L4を投影レンズ4側に確実に拡散反射(散乱反射)させることができる。
【0040】
さらにまた、この実施例における車両用灯具1は、球凸部18の頂点が光軸Z−Zよりも下側(付加反射面14側)に位置するので、シェード兼付加リフレクタ5でカットオフされる反射光L3を多く拡散(散乱)させて、すれ違い用配光パターンLPの対向車線側カットオフラインCL1および斜めカットオフラインCL2から離れた部分の光を弱めてすれ違い用配光パターンLPの手前側(スクリーンの下側)の視認性を低下させたり、あるいは、拡散光(散乱光)が多くなって迷光としてドライバーや他のドライバーや歩行者に不快感や違和感を与えたりすることがない。すなわち、球凸部18の頂点が光軸Z−Zよりも上側(付加反射面14と反対側)に突出すると、シェード兼付加リフレクタ5でカットオフさせる反射光L3を多く拡散(散乱)させて、すれ違い用配光パターンLPの対向車線側カットオフラインCL1および斜めカットオフラインCL2から離れた部分の光を弱めてすれ違い用配光パターンLPの手前側(スクリーンの下側)の視認性を低下させたり、あるいは、拡散光(散乱光)が多くなって迷光としてドライバーや他のドライバーや歩行者に不快感や違和感を与えたりすることがある。これに対して、この実施例における車両用灯具1は、球凸部18の頂点が光軸Z−Zよりも下側(付加反射面14側)に位置するので、すれ違い用配光パターンLPの手前側(スクリーンの下側)の視認性を確実に維持することができ、また、ドライバーや他のドライバーや歩行者に不快感や違和感を与えたりする迷光の発生を確実に減少もしくは防止することができる。
【0041】
さらにまた、この実施例における車両用灯具1は、球凸部18の表面には小凹凸の光拡散素子群(拡散系プリズム群)が設けられているので、シェード兼付加リフレクタ5でカットオフされる反射光L3の一部L4を投影レンズ4側に確実に拡散反射させることができ、その結果、すれ違い用配光パターンLPの対向車線側カットオフラインCL1と斜めカットオフラインCL2との交点(エルボー点E)から対向車線側カットオフラインCL1側に対応する一部(減光部20)を滑らかに減光することができる。
【0042】
さらにまた、この実施例における車両用灯具1は、シェード兼付加リフレクタ5が中空形状をなすので、中実形状のシェード兼付加リフレクタと比較して、ひけなどの歪の発生を抑制することができる。このために、この実施例における車両用灯具1は、中空形状のシェード兼付加リフレクタ5に設けられている突起部15の水平部16および傾斜部17への歪の影響をさらに小さくすることができるので、突起部15の水平部16および傾斜部17ですれ違い用配光パターンLPの対向車線側カットオフラインCL1および斜めカットオフラインCL2をさらに高精度に形成することができる。しかも、この実施例における車両用灯具1は、シェード兼付加リフレクタ5が中空形状をなすので、シェード兼付加リフレクタ5の上面板部11と前面板部13との角部22への歪の影響も小さくすることができ、その結果、シェード兼付加リフレクタ5の上面板部11と前面板部13との角部22ですれ違い用配光パターンLPの走行車線側カットオフラインCL3を高精度に形成することができる。その上、この実施例における車両用灯具1は、シェード兼付加リフレクタ5が中空形状をなすので、シェード兼付加リフレクタ5の上面板部11すなわち付加反射面14に設けた拡散部としての球凸部18への歪の影響も小さくすることができ、その結果、球凸部18により、すれ違い用配光パターンLPの対向車線側カットオフラインCL1下側の一部20を滑らかに減光することができる。
【0043】
ここで、この実施例における車両用灯具1は、シェード兼付加リフレクタ5が中空形状をなすものであるが、シェード兼付加リフレクタ5が中実形状をなすものであっても良い。この発明の車両用灯具は、シェード兼付加リフレクタ5が中実形状をなすものであっても、シェード兼付加リフレクタ5に設けられている突起部15の水平部16および傾斜部17ですれ違い用配光パターンLPの対向車線側カットオフラインCL1および斜めカットオフラインCL2を形成するものであるから、中実形状のシェード兼付加リフレクタにひけなどの歪が発生する場合があっても、突起部15の水平部16および傾斜部17には中実形状のシェード兼付加リフレクタの歪の影響が小さい。このために、この発明の車両用灯具は、シェード兼付加リフレクタが中実形状であって、その中実形状のシェード兼付加リフレクタにひけなどの歪が発生する場合があっても、歪の影響が小さい突起部15の水平部16および傾斜部17ですれ違い用配光パターンLPの対向車線側カットオフラインCL1および斜めカットオフラインCL2を高精度に形成することができる。
【0044】
また、この実施例における車両用灯具1は、シェード兼付加リフレクタ5の全体に亘って段差が無い上面板部11の上面の付加反射面14により、この付加反射面14からの反射光L3で形成されるすれ違い用配光パターンLPにおいて配光むらが発生するのを確実に防止することができるので、すれ違い用配光パターンLPのある部分にダークゾーンが発生するのを確実に防止することができる。これにより、この実施例における車両用灯具1は、すれ違い用配光パターンLPのある部分に発生するダークゾーンの配光の不均一から、ドライバーに視覚的不快感を与えることがないので、交通安全に貢献することができる。
【0045】
なお、前記の実施例においては、カットオフラインCL1、CL2、CL3およびエルボー点Eを有するすれ違い用配光パターンLPを照射する車両用灯具として自動車用前照灯について説明するものである。ところが、この発明においては、カットオフラインを有する配光パターンであれば、すれ違い用配光パターン以外の配光パターンであっても良い。
【0046】
また、前記の実施例においては、シェード兼付加リフレクタ5は、中空形状をなすものである。ところが、この発明においては、中実形状のシェード兼付加リフレクタであっても良い。
【符号の説明】
【0047】
1 車両用灯具
2 リフレクタ
3 半導体型光源
4 投影レンズ
5 シェード兼付加リフレクタ
6 ヒートシンク部材
7 ホルダ部
8 収束型反射面
9 基板
10 光透過部材
11 上面板部
12 左右面板部
13 前面板部
14 付加反射面
15 突起部
16 水平部(対向車線側カットオフラインを形成するカットオフライン形成部)
17 傾斜部(斜めカットオフラインを形成するカットオフライン形成部)
18 球凸部(拡散部)
19 光が弱い部分
20 減光部
21 境
22 角部(走行車線側カットオフラインを形成するカットオフライン形成部)
HL−HR 左右の水平線
VU−VD 上下の垂直線
F1 収束型反射面の第1焦点
F2 収束型反射面の第2焦点
FL 投影レンズのレンズ焦点
Z−Z 光軸(灯具光軸、ランプユニットの光軸、収束型反射面の光軸、投影レンズの光軸)
CL1、CL2、CL3 カットオフライン
E エルボー点
LP すれ違い用配光パターン
L1 半導体型光源から放射される光
L2 収束型反射面で反射される光
L3 付加反射面で反射される光
L4 球凸部で投影レンズ側に拡散反射される光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源として半導体型光源を使用する車両用灯具において、
楕円を基調とする収束型反射面を有するリフレクタと、
発光部が前記収束型反射面の第1焦点もしくはその近傍に位置するように配置されている前記半導体型光源と、
レンズ焦点が前記収束型反射面の第2焦点もしくはその近傍に位置する投影レンズと、
前記投影レンズと前記半導体型光源との間に配置されていて、前記半導体型光源から放射されて前記収束型反射面で反射された反射光の一部をカットオフして配光パターンのカットオフラインを形成するシェードと、カットオフした反射光を前記投影レンズ側に反射させる付加反射面と、がそれぞれ設けられているシェード兼付加リフレクタと、
を備え、
前記シェード兼付加リフレクタには、前記配光パターンの対向車線側カットオフラインおよび斜めカットオフラインおよび走行車線側カットオフラインを形成するカットオフライン形成部がそれぞれ設けられていて、
前記付加反射面のうち少なくとも前記対向車線側カットオフラインを形成する前記カットオフライン形成部の近傍には、カットオフした反射光の一部を拡散させる拡散部が設けられている、
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記拡散部は、前記付加反射面のうち、前記対向車線側カットオフラインを形成する前記カットオフライン形成部と前記斜めカットオフラインを形成する前記カットオフライン形成部との境から前記対向車線側カットオフラインを形成する前記カットオフライン形成部側の箇所に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記拡散部は、球凸形状をなす、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
球凸形状をなす前記拡散部の頂点は、灯具光軸よりも前記付加反射面側に位置する、
ことを特徴とする請求項3に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−165474(P2010−165474A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4689(P2009−4689)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】