説明

車両用灯具

【課題】灯具の光軸方向における長さを大きくすることなく、放熱用フィンの長さを大きく確保して放熱性を向上させ、光源に高出力の半導体発光素子が使用でき、かつ、部品点数の低減、及び、薄型化を可能にする車両用灯具を提供する。
【解決手段】発光ダイオード11が実装された回路基板12と、発光ダイオードを挿通させる前後面に貫通している開口部19を有しているとともに、裏面側に回路基板12が取り付けられる取付座部21と複数枚の放熱用フィン22を一体に設け、かつ、前面側に発光ダイオード11からの光を前方に向かって反射する反射面20を設けたリフレクタ13と、リフレクタ13の前面に配設された投影レンズ14とを備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用灯具に関するものであり、特に発光ダイオード(通称、「LED」とも呼ばれている)等の半導体発光素子を光源とし、該光源で発生した熱を効率良く放出(熱消散)させることができる車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電球に代わり、低消費電力、低発熱、メンテナンスフリーを特徴とした発光ダイオード等の半導体発光素子を光源としてなる車両用灯具が採用され始めている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の車両用灯具は、発光ダイオード等の半導体発光素子を使用するものであるが、該半導体発光素子等はそれ自体が熱を発生し、また熱の影響を受けて破損しやすい。さらに、半導体発光素子は、高出力になるに従って発熱量も増加する。このため、半導体発光素子を光源とする車両用灯具には、光源で発生した熱を灯具外部に効率良く放出させるためにヒートシンクが取り付けられている。
【0004】
図3は、光源に発光ダイオードを用いた従来の車両用灯具の一例を示す。同図において、車両用灯具101は、光源としての発光ダイオード102と、該発光ダイオード102が実装された回路基板103と、リフレクタ104と、投影レンズ(集光レンズ)105と、シェード106と、フレーム部材107と、ヒートシンク108と、ランプハウジング(図示せず)と、図示しないランプレンズ(例えば、素通しのアウターレンズ等)と、を備えている。
【0005】
このように構成された車両用灯具101では、発光ダイオード102の発光により回路基板103が発熱すると、該熱がヒートシンク108側に伝えられ、該ヒートシンク108を通して外部に放出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−163912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1、及び、図3に示すような車両用灯具では、ヒートシンクの放熱用フィンが回路基板の裏面側より後方に向かって大きく突出した構造になっているので、灯具の光軸方向における長さが大きくなって灯具自体が大型化し、灯具の裏面側に設けられたハーネス等の周辺部品と干渉してしまう虞があった。また、周辺部品等との干渉を避けるのに、ヒートシンクの突出量を小さくすると、放熱性が低下し、高出力の発光ダイオードに対応できないという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、灯具の光軸方向における長さを大きくすることなく、放熱用フィンの長さを大きく確保して放熱性を向上させ、光源に高出力の半導体発光素子が使用でき、かつ、部品点数の低減、及び、薄型化を可能にする車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両用灯具は、半導体発光素子を光源としてなる車両用灯具において、前記半導体発光素子が実装された回路基板と、前記半導体発光素子を挿通させる前後面に貫通している開口部を有しているとともに、裏面側に前記回路基板が取り付けられる取付座部と複数枚の放熱用フィンを一体に設け、かつ、前面側に前記半導体発光素子からの光を前方に向かって反射する反射面を設けてなるリフレクタと、前記リフレクタの前面に配設されたレンズと、を備えるようにしてなる。
【0010】
この構成によれば、リフレクタ自体をヒートシンクとし、該リフレクタの裏面側に半導体発光素子が実装された回路基板を取り付ける取付座部と複数枚の放熱用フィンを一体に設けているので、半導体発光素子の発光により発熱された回路基板の熱は、取付座部からリフレクタ内部を通って放熱用フィンに伝えられ、効率良く放出(熱消散)できる。したがって、放熱用フィンの突出量はリフレクタの後方への突出形状で吸収することができ、車両灯具の光軸方向における長さを大きくすることなく、リフレクタの裏面側から後方に向かって延びる放熱用フィンの突出量を大きく確保して放熱性を高めることが可能になる。また、部品点数の低減、及び、薄型化も可能になる。
【0011】
上記構成において、前記放熱用フィンは、前記取付座部に据え付けられた前記回路基板よりも後方に突出して設けてなる、構成を採用できる。
【0012】
この構成によれば、回路基板は放熱用フィンの突出先端部よりも内側で、該放熱用フィンの領域内に吸収されて該放熱用フィンよりもリフレクタ本体側に凹んだ状態で設けられ、該回路基板がハーネス等の周辺部品と干渉しないように保護することができる。
【0013】
上記構成において、前記レンズが投影レンズで、かつ、該投影レンズと前記リフレクタとの間に該リフレクタから前記投影レンズに向かう反射光の一部を遮蔽して所定の配光パターンを形成するシェードが設けられてなる、構成を採用できる。
【0014】
この構成によれば、シェードで所定の配光パターンを形成し、該配光パターンを投影レンズで投光することにより、車両用標識灯や車両用前照灯等としても使用できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、リフレクタ自体をヒートシンクとし、該リフレクタの裏面側に半導体発光素子が実装された回路基板を取り付ける取付座部と複数枚の放熱用フィンを一体に設け、半導体発光素子の発光により発熱された回路基板の熱を、取付座部より放熱用フィンに伝えて効率良く放出(熱消散)できるようにしているので、放熱用フィンの突出量はリフレクタの後方への突出形状で吸収され、車両灯具の光軸方向における長さを大きくすることなく、リフレクタの裏面側から延びる放熱用フィンの突出量を大きく確保して放熱性を向上させることができる。この結果、高出力の半導体発光素子を使用する車両用灯具に適用できるとともに、部品点数の低減を図り、かつ、灯具全体の薄型化も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態として示す車両用灯具の縦方向(垂直方向)の断面図である。
【図2】同上車両用灯具の背面側より見た図である。
【図3】従来における車両用灯具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の最良の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。図1及び図2は本発明に係る実施形態の車両用灯具を示すもので、図1はその縦方向(垂直方向)の断面図、図2はその背面側より見た図である。以下の説明において、図1の左右方向左側を前方、右側を後方とし、また上下方向を上下、紙面に垂直な方向を左右として説明する。
【0018】
図1及び図2において、本実施の形態における車両用灯具10は、自動車(車両)の前部の左右にそれぞれ装備される、例えばプロジェクタタイプの前照灯である。
【0019】
前記車両用前照灯10は、図1に示すように、光源としての発光ダイオード11と、該発光ダイオード11が実装された回路基板12と、リフレクタ13と、投影レンズ14と、シェード15と、フレーム部材16と、ランプハウジング(図示せず)と、図示しないランプレンズ(例えば、素通しのアウターレンズ等)と、を備えている。
【0020】
前記発光ダイオード11と回路基板12とリフレクタ13と投影レンズ14及びシェード15並びにフレーム部材16は、ランプユニットを構成する。該ランプユニットは、前記ランプハウジング及びランプレンズにより区画されている灯室(図示せず)内に、例えば光軸調整機構(図示せず)を介して配置されている。
【0021】
前記発光ダイオード11は、半導体発光素子である。該発光ダイオード11は回路基板12の前面側に実装されて、該回路基板12と一体に取り扱われて配設される。該回路基板12の前後の両面には回路配線(図示せず)が露出し、発光ダイオード11が実装されている前面と反対の後面側には電源用ソケット17が実装されている。また、回路基板12には上下方向に離れて2つの取付孔18,18が設けられている。
【0022】
前記リフレクタ13は、前記フレーム部材16に固定保持されている。該リフレクタ13は、熱伝導性が優れた金属材、例えばアルミニューム製であり、前側(前記車両用灯具10の光の照射方向)が開口し、後側が閉塞した中空の凹形状を成している。また、該リフレクタ13の後側の閉塞部の中央には、前記発光ダイオード11を挿通させる前後面に貫通している開口部19を設けている。
【0023】
前記リフレクタ13の内凹面(前面)にはアルミ蒸着若しくは銀塗装等が施され、反射面20が形成されている。該反射面20は、前記発光ダイオード11からの光を前記シェード15及び前記投影レンズ14側に反射させるもので、楕円若しくは楕円を基本とする自由曲面等の反射面からなる。
【0024】
前記リフレクタ13の外凸面(裏面)には前記回路基板12が光軸Zに対して垂直に取り付けられる取付座部21と、複数の放熱用フィン22,22…が一体に設けられている。なお、前記取付座部21は前記回路基板12の外形に合致した四角形状に形成されており、ほぼ中央部に該リフレクタ13の内凹面側に連通している前記開口部19が設けられている。また、前記取付座部21には前記回路基板12の前記取付孔18,18にそれぞれ対応する2つの取付孔23,23が形成されている。
【0025】
前記リフレクタ13の放熱用フィン22,22…は、前記取付座部21の外側を囲むようにして、前記リフレクタ13の外凸面から後側に向けて突出した状態で形成されている。また、放熱用フィン22,22…の突出量は、図1に示すように、前記回路基板12が取付座部21に取り付けられた時、該回路基板12の裏面側に実装されている電源用ソケット17等の部品が放熱用フィン22,22の後端部(突出先端部)から後方に突出しないで、該放熱用フィン22,22…の領域内に吸収された状態で収納配置されるように設定されている。さらに、放熱用フィン22の一部には、取付用ブラケット(図示せず)が取り付けられる4つの取付孔24,24,24,24が形成されている。なお、該放熱用フィン22の数及び形状は任意に設定される。
【0026】
そして、前記リフレクタ13の取付座部21に前記回路基板12を取り付ける場合、該回路基板12の前面側に前記発光ダイオード11を実装し、かつ、後面側に前記電源用ソケット17を実装した回路基板12を用意する。次いで、発光ダイオード11を開口部19に対応させて回路基板12を取付座部21上に配置し、かつ、リフレクタ13の取付孔18,18と回路基板12の取付孔23,23をそれぞれ対応させると、発光ダイオード11が開口部19内に挿入された状態となる。続いて、回路基板12の後側からビス25,25を、取付孔23,23を通って取付孔18,18にそれぞれ締め付ける。これにより、取付座部21上において、回路基板12がリフレクタ13に固定保持される。
【0027】
なお、回路基板12が取付座部21に取り付けられた状態では、発光ダイオード11は、図1に示すように開口部19を挿通してリフレクタ13の内凹面(前面)側に露出し、かつ、回路基板12及び電源用ソケット17は、放熱用フィン22,22…も後端部(突出先端部)よりもリフレクタ13側に凹んで収納された状態となる。これにより、回路基板12がハーネス等の周辺部品と干渉しないように保護できる。また、発光ダイオード11の発光により発熱された回路基板12の熱は、取付座部21より放熱用フィン22,22…の全体に伝えられて効率良く放出(熱消散)できる。
【0028】
前記投影レンズ14は、非球面レンズの凸レンズ(集光レンズ)である。該投影レンズ14の前方側は凸非球面を成し、後方側は平非球面を成す。該投影レンズ14は前記フレーム部材16に固定保持されている。
【0029】
前記シェード15は、製造コストが安価である板構造(本実施例では薄鋼板構造)から成る。該シェード15には開口部26が設けられている。該シェード15は、前記リフレクタ13の反射面20から前記投影レンズ14に向かう反射光の一部を開口部26以外の部分で遮蔽し、残り反射光を開口部26から通して所定の配光パターンを形成するものである。
【0030】
したがって、この実施形態に係る車両用灯具10は、リフレクタ13自体をヒートシンクとし、該リフレクタ13の裏面に発光ダイオード11等が実装された回路基板12が取り付けられる取付座部21と複数枚の放熱用フィン22,22…を一体に設けているので、発光ダイオード11の発光により発熱された回路基板12の熱は、取付座部21からリフレクタ13の内部を通って放熱用フィン22,22の全体に伝えられることになる。これにより、別途、ヒートシンクを設けなくても該リフレクタ13を利用して効率良く放出(熱消散)できる。また、放熱用フィン22,22…の突出量はリフレクタ13の後方への突出(凸面)形状で吸収され、車両灯具の光軸方向における長さL(図1参照)を大きくすることなく、裏面側から延びる放熱用フィン22,22…の突出量を大きく確保して放熱性を高めることができる。これにより、高出力の発光ダイオード11を使用する車両用灯具10にも適用できるとともに、部品点数の低減を図り、薄型化も可能になる。
【0031】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は、特許請求の範囲の概念を逸脱しない範囲で、上記実施の形態の構造に種々の変形や変更を施すことも可能である。
【0032】
例えば、上記実施の形態では、車両用灯具20は、プロジェクタタイプの前照灯を一例として説明したが、レンズ等を変更することにより、車両用標識灯等として使用することも可能である。
【0033】
また、回路基板12が取付座部21に取り付けられた状態では、回路基板12及び電源用ソケット17が放熱用フィン22,22…の後端部(突出先端部)よりも内側で、該放熱用フィン22,22…の領域内に吸収された状態で配置してなる構造を開示したが、電源用ソケット17は突出し、回路基板12だけが収納される構造にしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10 車両用灯具
11 発光ダイオード(半導体発光素子)
12 回路基板
13 リフレクタ
14 投影レンズ
15 シェード
16 フレーム部材
17 電源用ソケット
18 取付孔
19 開口部
20 反射面
21 取付座部
22 放熱用フィン
23 取付孔
24 取付孔
25 開口部
Z 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体発光素子を光源としてなる車両用灯具において、
前記半導体発光素子が実装された回路基板と、
前記半導体発光素子を挿通させる前後面に貫通している開口部を有しているとともに、裏面側に前記回路基板が取り付けられる取付座部と複数枚の放熱用フィンを一体に設け、かつ、前面側に前記半導体発光素子からの光を前方に向かって反射する反射面を設けてなるリフレクタと、
前記リフレクタの前面に配設されたレンズと、
を備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記放熱用フィンは、前記取付座部に据え付けられた前記回路基板よりも後方に突出して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記レンズが投影レンズで、かつ、該投影レンズと前記リフレクタとの間に該リフレクタから前記投影レンズに向かう反射光の一部を遮蔽して所定の配光パターンを形成するシェードが設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−176926(P2010−176926A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16017(P2009−16017)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】