説明

車両用灯具

【課題】従来の車両用灯具では、ヘッドランプの配光パターンの光量が低下し、また、見栄え上課題がある。
【解決手段】この発明は、リフレクタ4、31が、第1光源2からの光を第1配光パターンとして所定の方向に反射させる反射面9、35と、導光部と、第2光源3からの光を導光部中に入射させる入射面10と、導光部中に入射した第2光源3からの光を第2配光パターンとして所定の方向に出射させる出射面11、21、22と、を有する。この結果、この発明は、第1配光パターンの光量の低下を防ぐことができ、また、見栄えが向上される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、1つのランプユニットに複数のランプ機能を有する車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用灯具は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、従来の車両用灯具について説明する。従来の車両用灯具は、リフレクタに設けられているヘッドランプバルブと、ハウジングに設けられている発光ダイオードバルブと、リフレクタに設けられている貫通孔に貫通して設けられている発光ダイオードバルブの導光部と、を備えるものである。ヘッドランプバルブを点灯させると、ヘッドランプの配光パターンが照射される。また、発光ダイオードバルブを点灯させると、導光部を通ってクリアランスランプの配光パターンが照射される。
【0003】
ところが、従来の車両用灯具は、発光ダイオードバルブの導光部を貫通させるための貫通孔をリフレクタに設けるものであるから、ヘッドランプバルブからの光を反射させるリフレクタの反射面の一部が減り、その分、ヘッドランプの配光パターンの光量が低下する。また、従来の車両用灯具は、リフレクタに貫通孔を設け、かつ、その貫通孔に発光ダイオードバルブの導光部を貫通させるものであるから、外部から貫通孔や発光ダイオードバルブの導光部が見えて、見栄え上課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−166145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする問題点は、従来の車両用灯具では、ヘッドランプの配光パターンの光量が低下し、また、見栄え上課題があるという点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明(請求項1にかかる発明)は、リフレクタが、第1光源からの光を第1配光パターンとして所定の方向に反射させる反射面と、導光部と、第2光源からの光を導光部中に入射させる入射面と、導光部中に入射した第2光源からの光を第2配光パターンとして所定の方向に出射させる出射面と、を有する、ことを特徴とする。
【0007】
また、この発明(請求項2にかかる発明)は、第1光源と第2光源とが同一の取付部材に取り付けられている、ことを特徴とする。
【0008】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)は、導光部のうち入射面および出射面以外の面には導光部中に入射した光を反射させる反射面としての表面処理が施されている、ことを特徴とする。
【0009】
さらにまた、この発明(請求項4にかかる発明)は、導光部が、導光性を有する樹脂から構成されていて、リフレクタのうち入射面および出射面を含む一部からなる、ことを特徴とする。
【0010】
さらにまた、この発明(請求項5にかかる発明)は、出射面には第2光源からの光の出射を制御する出射制御素子群が設けられている、ことを特徴とする。
【0011】
さらにまた、この発明(請求項6にかかる発明)は、出射面を含む一部分の肉厚がその他の部分の肉厚よりも厚い、ことを特徴とする。
【0012】
さらにまた、この発明(請求項7にかかる発明)は、出射面を含む一部分の肉厚がその他の部分の肉厚よりも厚く、出射面を含む肉厚部分のうち出射面と対向する面が導光部中を導かれてきた第2光源からの光を出射面側に反射させる傾斜面である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、前記の課題を解決するための手段により、第1光源を点灯すると、第1光源からの光がリフレクタの反射面で第1配光パターンとして所定の方向に反射される。また、第2光源を点灯すると、第2光源からの光が、リフレクタの入射面からリフレクタの導光部中に入射し、リフレクタの導光部中出射面まで導かれ、その出射面から第2配光パターンとして所定の方向に出射する。このように、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、リフレクタに貫通孔を設ける必要が無いので、その分、第1配光パターンの光量が低下するようなことが無く、また、見栄えが低下するようなこともない。
【0014】
また、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用灯具は、前記の課題を解決するための手段により、第1光源および第2光源とリフレクタとの相対位置精度が向上する。その結果、第1光源からの光とリフレクタの反射面とで得られる第1配光パターン、および、第2光源からの光とリフレクタの入射面、導光部、出射面とで得られる第2配光パターンの精度を向上させることができる。
【0015】
しかも、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用灯具は、第1光源と第2光源とを同一の取付部材に取り付けるので、第1光源と第2光源とを別個の取付部材に取り付けるものと比較して、部品点数を軽減することができ、その分、製造コストを安価にすることができる。
【0016】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用灯具は、前記の課題を解決するための手段により、入射面から導光部中に入射した第2光源からの光が導光部のうち入射面および出射面以外の面に達すると、表面処理が施されている反射面で導光部中に反射する。この結果、導光部の出射面以外の面から外部に出射する光(露光)をなくすことができ、その分、第2光源からの光を導光部の出射面から効率良く出射させることができる。
【0017】
さらにまた、この発明(請求項4にかかる発明)の車両用灯具は、前記の課題を解決するための手段により、入射面から導光部中に入射した第2光源からの光を導光部中出射面側に確実に導くことができる。この結果、リフレクタ全体が導光部であるものと比較して、第2光源からの光を出射面から効率良く出射させることができる。
【0018】
さらにまた、この発明(請求項5にかかる発明)の車両用灯具は、前記の課題を解決するための手段により、出射面から出射する第2光源からの光であって第2配光パターンを高精度に配光制御することができる。
【0019】
さらにまた、この発明(請求項6にかかる発明)の車両用灯具は、前記の課題を解決するための手段により、出射面を含む一部分の肉厚がその他の部分の肉厚とほぼ同一のものと比較して、肉厚が厚い分出射面の面積が大きくなる。その結果、出射面からの出射光量が増す。
【0020】
さらにまた、この発明(請求項7にかかる発明)の車両用灯具は、前記の課題を解決するための手段により、出射面からの出射光量がさらに増す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、この発明にかかる車両用灯具の実施例1を示す主要構成部品の一部破断斜視図である。
【図2】図2は、同じく、主要構成部品を示す分解斜視図である。
【図3】図3は、同じく、光路を示す主要構成部品の正面図である。
【図4】図4は、同じく、光路を示す主要構成部品の縦断面図(垂直断面図)である。
【図5】図5は、同じく、主要構成部品を示す側面図である。
【図6】図6は、同じく、主要構成部品を示す縦断面図(垂直断面図)である。
【図7】図7は、同じく、出射面の第1変形例を示す一部縦断面図(一部垂直断面図)である。
【図8】図8は、同じく、出射面の第2変形例を示す一部縦断面図(一部垂直断面図)である。
【図9】図9は、同じく、導光部の第1変形例を示す一部縦断面図(一部垂直断面図)である。
【図10】図10は、同じく、導光部の第2変形例を示す一部縦断面図(一部垂直断面図)である。
【図11】図11は、同じく、導光部の第3変形例を示す一部縦断面図(一部垂直断面図)である。
【図12】図12は、同じく、導光部の第4変形例を示す一部縦断面図(一部垂直断面図)である。
【図13】図13は、この発明にかかる車両用灯具の実施例2を示す主要構成部品の縦断面図(垂直断面図)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、この発明にかかる車両用灯具の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。この明細書において、「上、下、前、後、右、左」は、車両用灯具を車両に装備された際の「上、下、前、後、右、左」である。なお、図1および図3において、第2光源の半導体型光源を図示するために第2リフレクタ5の垂直板部16の一部を破断してある。また、図3および図4において光路の一部を実線矢印で示してある。さらに、図4において、光路を明確にするためにハッチングを省略してある。さらにまた、図4(A)は、図3におけるA−A線断面図、図4(B)は、図3におけるB−B線断面図、図4(C)は、図3におけるC−C線断面図である。
【実施例1】
【0023】
図1〜図6は、この発明にかかる車両用灯具の実施例1を示す。以下、この実施例1における車両用灯具の構成について説明する。図において、符号1は、この実施例1における車両用灯具である。前記車両用灯具1は、この例では、リフレクタタイプの車両用前照灯である。前記車両用灯具1は、ランプハウジング(図示せず)と、ランプレンズ(図示せず)と、第1光源2と、第2光源3と、第1リフレクタ4と、第2リフレクタ5と、取付部材6と、を備えるものである。前記車両用灯具1は、車両の前部の左右両側部の所定の位置に装備されている。
【0024】
前記第1光源2および前記第2光源3および前記第1リフレクタ4および前記第2リフレクタ5および前記取付部材6は、ランプユニットを構成する。前記第1光源2および前記第2光源3および前記第1リフレクタ4および前記第2リフレクタ5および前記取付部材6は、前記ランプハウジングおよび前記ランプレンズにより区画されている灯室内に光軸調整装置(図示せず)を介して光軸調整可能に配置されている。
【0025】
前記第1光源2および前記第2光源3は、この例では、半導体型光源を使用する。前記第1光源2および前記第2光源3としての半導体型光源は、たとえば、LED、EL(有機EL)などの自発光半導体型光源(この実施例1ではLED)を使用する。前記第1光源2および前記第2光源3としての半導体型光源は、板形状の基板7と、前記基板7の一面(上面)に固定されている微小な直方体形状の光源チップ(半導体チップ)の発光体(図示せず)と、前記発光体を覆う半球形状(ドーム形状)の光透過部材すなわちレンズ8と、から構成されている。
【0026】
前記第1リフレクタ4は、導光性を有する樹脂、たとえば、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂などからなる。前記第1リフレクタ4は、光を照射(反射または出射)させる方向側、すなわち、前側と、下側とがそれぞれ開口し、かつ、その他の4方向側(後側、上側、右側、左側)が閉塞した回転放物面の2分の1(上半分)の中空形状をなす。
【0027】
前記第1リフレクタ4の内面には、第1反射面9が設けられている。前記第1反射面9は、パラボラ系の自由曲面(NURBS曲面)からなる。前記第1反射面9は、基準焦点(擬似焦点、焦点)F1および基準光軸(擬似光軸、光軸)Z1をそれぞれ有する。前記第1反射面9は、アルミ蒸着や銀塗装などにより形成されている。前記第1反射面9は、前記第1光源2からの光を第1配光パターンとして所定の方向に反射させる反射面である。
【0028】
この例における前記第1リフレクタ4は、全体が導光部を構成するものである。前記第1リフレクタ4の前側の開口端部の左右両下面には、入射面10が設けられている。前記入射面10は、図4(A)に示すように、この例では、円柱形の凹部が設けられていて、前記凹部の底面に半球形状の凸部が設けられてなる。なお、前記入射面10としては、平面、曲面、傾斜面であっても良いし、小凹凸面であっても良い。
【0029】
前記第1リフレクタ4の前側の開口端部の前面には、半環状形状の出射面11が設けられている。前記出射面11には、出射制御素子群としての小凹凸のプリズム素子群(図示せず)が設けられている。
【0030】
前記第1リフレクタ4の前側の開口端部において、前記出射面11を含む一部分12の肉厚は、その他の部分の肉厚よりも厚い。また、前記出射面11を含む肉厚部分12のうち前記出射面11と対向する面13は、傾斜面をなす。
【0031】
前記第1リフレクタ4のうち、すなわち、導光部のうち前記入射面10および前記出射面11以外の面14には、前記導光部すなわち前記第1リフレクタ4中に入射した光を反射させる反射面としての表面処理が施されている。なお、表面処理が施されている前記反射面14には、前記第1反射面9も含まれている。前記反射面14は、前記第1反射面9と同様に、アルミ蒸着や銀塗装などにより表面処理が施されている。
【0032】
前記第2リフレクタ5は、樹脂製部材からなる。前記第2リフレクタ5は、光を照射(反射または出射)させる方向側、すなわち、上側と、後側とがそれぞれ開口し、かつ、その他の4方向側(下側、前側、右側、左側)が閉塞した回転楕円面の4分の1(前下四半分)の中空形状をなす。
【0033】
前記第2リフレクタ5の内面には、第2反射面15が設けられている。前記第2反射面15は、収束型の反射面であって、楕円系の自由曲面(NURBS曲面)からなる。前記第2反射面15は、第1基準焦点(第1擬似焦点、第1焦点)F21および第2基準焦点(第2擬似焦点、第2焦点)F22および基準光軸(擬似光軸、光軸)Z2をそれぞれ有する。前記第2反射面15は、アルミ蒸着や銀塗装などにより形成されている。前記第2反射面15は、前記第1光源2からの光を前記第1反射面9に反射させる反射面である。
【0034】
前記第2リフレクタ5には、垂直板部16と水平板部17とがそれぞれ一体に設けられている。前記垂直板部16は、前記第2リフレクタ5の後側の開口部と面一に設けられている。前記水平板部17は、前記第2リフレクタ5の上側の開口部とほぼ面一に設けられている。
【0035】
前記取付部材6は、熱伝導率が高い樹脂材料もしくは金属材料、例えばアルミダイカスト製から構成されている。前記取付部材6は、前記第1光源2と前記第2光源3とを取り付ける同一の取付部材と、ヒートシンク部材とを兼用するものである。
【0036】
前記取付部材6には、1個の第1取付部18と、2個の第2取付部19と、を備えるものである。前記第1取付部18には、前記第1光源2が1個取り付けられている。2個の前記第2取付部19には、1個の前記第2光源3がそれぞれ取り付けられている。
【0037】
前記第1リフレクタ4および前記第2リフレクタ5および前記取付部6を組み立てる。すると、前記第1光源2は、前記第2反射面15の前記第1基準焦点F21もしくはその近傍に位置する。一方、2個の前記第2光源3は、前記第1リフレクタ4の前側の開口端部の左右両下面の前記入射面10にそれぞれ対向する。さらに、前記第1反射面9の前記基準焦点F1と前記第2反射面15の前記第2基準焦点F22とは、一致もしくはほぼ一致する。
【0038】
2個の前記第2光源3には、切替装置20が電気的に接続されている。前記切替装置20は、2個の前記第2光源3の発光状態を第1発光状態と第2発光状態とに切り替える装置である。前記切替装置20は、たとえば、パルスワイド変調(PWM)方式や電圧制御方式を用いるものである。
【0039】
この実施例1における車両用灯具1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0040】
まず、第1光源2を点灯発光させる。すると、第1光源2からの光(図6中の実線矢印を参照)は、第2反射面15で反射する。その反射光は、第2反射面15の第2基準焦点F22(第1反射面9の基準焦点F1もしくはその近傍)に収束してさらに放射(拡散)して第1反射面9で反射する。その反射光は、第1配光パターン(図示せず)として所定の方向車両の前方に照射される。
【0041】
第1配光パターンとしては、走行用配光パターン(ハイビーム用配光パターン)、霧用配光パターン(フォグランプ用配光パターン)、すれ違い用配光パターン(ロービーム用配光パターン)、高速道路用配光パターン(ミッドビーム用配光パターン)などの前照灯用配光パターンである。なお、カットオフラインを有するすれ違い用配光パターンや高速道路用配光パターンの場合には、第2リフレクタ5の水平板部17がシェードとしての機能を果たす。水平板部17のエッジを第2反射面15の第2基準焦点F22(第1反射面9の基準焦点F1もしくはその近傍)に位置させる。
【0042】
つぎに、第2光源3を点灯発光させる。すると、第2光源3からの光(図3および図4中の実線矢印を参照)は、第1リフレクタ4の入射面10から第1リフレクタ4すなわち導光部中に入射する。第1リフレクタ4すなわち導光部中に入射した光は、第1リフレクタ4の導光作用により、第1リフレクタ4中を導かれて、第1リフレクタ4の出射面11から第2配光パターン(図示せず)として所定の方向車両の前方に照射される。
【0043】
第2配光パターンとしては、切替装置20により、2個の第2光源3の発光状態を第1発光状態に切り替えた場合には、デイタイムランニングランプ用配光パターン(昼間灯用配光パターン)が得られ、2個の第2光源3の発光状態を第2発光状態に切り替えた場合には、クリアランスランプ用配光パターン(車幅灯用配光パターン)が得られる。なお、デイタイムランニングランプ用配光パターンが得られているときには、第1配光パターンは照射されていない。一方、クリアランスランプ用配光パターンが得られているときには、第1配光パターンは照射される。すなわち、第1配光パターンは、デイタイムランニングランプ用配光パターンが照射されているときには照射されず、一方、クリアランスランプ用配光パターンが照射されているときに照射される。
【0044】
この実施例1における車両用灯具1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0045】
この実施例1における車両用灯具1は、第1リフレクタ4に導光部を一体に設けたものであるから、リフレクタすなわち第1リフレクタ4や第2リフレクタ5に貫通孔(第2光源3の導光部を貫通させるための孔)を設ける必要が無いので、その分、第1配光パターンの光量が低下するようなことが無く、また、見栄えが低下するようなこともない。
【0046】
また、この実施例1における車両用灯具1は、第1光源2と第2光源3とを同一の取付部材6にそれぞれ取り付けるものであるから、第1光源2および第2光源3とリフレクタすなわち第1リフレクタ4および第2リフレクタ5との相対位置精度が向上する。その結果、第1光源2からの光と第1リフレクタ4の第1反射面9および第2リフレクタ5の第2反射面15とで得られる第1配光パターン、および、第2光源3からの光と第1リフレクタ4の入射面10、導光部、出射面11とで得られる第2配光パターンの精度を向上させることができる。
【0047】
しかも、この実施例1における車両用灯具1は、第1光源2と第2光源3とを同一の取付部材6に取り付けるので、第1光源2と第2光源3とを別個の取付部材に取り付けるものと比較して、部品点数を軽減することができ、その分、製造コストを安価にすることができる。
【0048】
さらに、この実施例1における車両用灯具1は、第1リフレクタ4すなわち導光部のうち入射面10および出射面11以外の面に反射面14(第1反射面9を含む)としての表面処理が施されているものであるから、入射面10から第1リフレクタ4すなわち導光部中に入射した第2光源3からの光が第1リフレクタ4すなわち導光部のうち入射面10および出射面11以外の面に達すると、表面処理が施されている反射面14(第1反射面9を含む)で第1リフレクタ4すなわち導光部中に反射する。この結果、第1リフレクタ4すなわち導光部の出射面11以外の面から外部に出射する光(露光)をなくすことができ、その分、第2光源3からの光を第1リフレクタ4すなわち導光部の出射面11から効率良く出射させることができる。
【0049】
さらにまた、この実施例1における車両用灯具1は、出射面11に第2光源3からの光の出射を制御する出射制御素子群としての小凹凸のプリズム素子群が設けられているものであるから、出射面11から出射する第2光源3からの光であって第2配光パターンを高精度に配光制御することができる。
【0050】
さらにまた、この実施例1における車両用灯具1は、出射面11を含む一部分12の肉厚がその他の部分の肉厚よりも厚いものであるから、出射面を含む一部分の肉厚がその他の部分の肉厚とほぼ同一のものと比較して、肉厚が厚い分出射面の面積が大きくなる。その結果、出射面11からの出射光量が増す。
【0051】
さらにまた、この実施例1における車両用灯具1は、出射面11を含む一部分12の肉厚がその他の部分の肉厚よりも厚く、また、出射面11を含む肉厚部分12のうち出射面11と対向する面13が傾斜面をなすものであるから、出射面11からの出射光量がさらに増す。
【0052】
図7は、出射面の第1変形例を示す一部縦断面図(一部垂直断面図)である。この第1変形例の出射面21は、出射面21を含む一部分の肉厚がその他の部分の肉厚とほぼ同等の肉厚からなるものである。この第1変形例の出射面21は、出射面11を含む一部分12の肉厚がその他の部分の肉厚よりも厚いものと比較して、出射面21からの出射光量が第1配光パターンの光量に影響を与えない程度に若干減るが、第1リフレクタ4の構造が簡単となり、その分、製造コストが安価となる。
【0053】
図8は、出射面の第2変形例を示す一部縦断面図(一部垂直断面図)である。この第2変形例の出射面22は、出射面22を含む一部分23の肉厚がその他の部分の肉厚よりも厚く、一方、出射面22を含む肉厚部分23のうち出射面22と対向する面24が平面をなすものである。この第2変形例の出射面22は、出射面11を含む肉厚部分12のうち出射面11と対向する面13が傾斜面をなすものと比較して、出射面22からの出射光量が第1配光パターンの光量に影響を与えない程度に若干減るが、第1リフレクタ4の構造が簡単となり、その分、製造コストが安価となる。
【0054】
図9は、導光部の第1変形例を示す一部縦断面図(一部垂直断面図)である。この第1変形例の導光部25は、導光性を有する樹脂から構成されていて、第1リフレクタ4のうち入射面10および第1変形例の出射面21を含む一部からなるものである。この第1変形例の導光部25は、入射面10から導光部25中に入射した第2光源3からの光を導光部25中出射面21側に確実に導くことができる。この結果、第1リフレクタ4全体が導光部であるものと比較して、第2光源3からの光を出射面21から効率良く出射させることができる。
【0055】
図10は、導光部の第2変形例を示す一部縦断面図(一部垂直断面図)である。この第2変形例の導光部26は、導光性を有する樹脂から構成されていて、第1リフレクタ4のうち入射面10および第2変形例の出射面22を含む一部からなるものである。この第2変形例の導光部26は、前記の第1変形例の導光部25とほぼ同様に、入射面10から導光部26中に入射した第2光源3からの光を導光部26中出射面21側に確実に導くことができる。この結果、第1リフレクタ4全体が導光部であるものと比較して、第2光源3からの光を出射面22から効率良く出射させることができる。しかも、出射面22の面積が大きくなり、その分、出射面22からの出射光量が増す。
【0056】
図11は、導光部の第3変形例を示す一部縦断面図(一部垂直断面図)である。この第3変形例の導光部27は、導光性を有する樹脂から構成されていて、第1リフレクタ4のうち入射面10および出射面11を含む一部からなるものである。この第3変形例の導光部27は、前記の第1、2変形例の導光部25、26とほぼ同様に、入射面10から導光部27中に入射した第2光源3からの光を導光部27中出射面11側に確実に導くことができる。この結果、第1リフレクタ4全体が導光部であるものと比較して、第2光源3からの光を出射面11から効率良く出射させることができる。しかも、出射面11を含む肉厚部分の導光部27のうち出射面11と対向する面13が傾斜面をなすものであるから、出射面11からの出射光量がさらに増す。
【0057】
図12は、導光部の第4変形例を示す一部縦断面図(一部垂直断面図)である。この第4変形例の導光部28は、導光性を有する樹脂から構成されていて、第1リフレクタ4のうち入射面10および出射面11を含む一部からなるものである。この第4変形例の導光部28は、前記の第1、2、3変形例の導光部25、26、27とほぼ同様に、入射面10から導光部28中に入射した第2光源3からの光を導光部28中出射面11側に確実に導くことができる。この結果、第1リフレクタ4全体が導光部であるものと比較して、第2光源3からの光を出射面11から効率良く出射させることができる。しかも、出射面11を含む肉厚部分の導光部28のうち出射面11と対向する面13が傾斜面をなし、かつ、導光部28と第1リフレクタ4との境界面も傾斜面29をなすものであるから、出射面11からの出射光量がさらに増す。
【実施例2】
【0058】
図13は、この発明にかかる車両用灯具の実施例2を示す。図中、図1〜図12とどう符号は、同一のものを示す。以下、この実施例2における車両用灯具について説明する。図において、符号30は、この実施例2における車両用灯具である。前記車両用灯具30は、この例では、プロジェクタタイプの車両用前照灯である。前記車両用灯具30は、ランプハウジング(図示せず)と、ランプレンズ(図示せず)と、第1光源2と、第2光源3と、リフレクタ31と、取付部材32と、投影レンズ(凸レンズ、集光レンズ)33と、ホルダ部材34と、を備えるものである。
【0059】
前記第1光源2および前記第2光源3および前記リフレクタ31および前記取付部材32および前記投影レンズ33および前記ホルダ部材34は、ランプユニットを構成する。1個もしくは複数個の前記ランプユニットは、自動車用前照灯のランプハウジングおよびランプレンズにより区画されている灯室内に、たとえば光軸調整機構を介して配置されている。
【0060】
前記リフレクタ31は、前記の実施例1における車両用灯具1の第1リフレクタ4と同様に、導光性を有する樹脂、たとえば、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂などからなる。前記リフレクタ31は、光を照射(反射または出射)させる方向側、すなわち、前側と、下側とがそれぞれ開口し、かつ、その他の4方向側(後側、上側、右側、左側)が閉塞した回転楕円面の4分の1(上後四半分)の中空形状をなす。
【0061】
前記リフレクタ31の内面には、反射面35が設けられている。前記反射面35は、収束型反射面であって、楕円を基調とした反射面、たとえば、回転楕円面や楕円を基本とした自由曲面(NURBS曲面)などの反射面(図13の垂直断面が楕円面をなし、かつ、図示しない水平断面が放物面ないし変形放物面をなす反射面)からなる。このために、前記反射面35は、第1基準焦点(第1擬似焦点、第1焦点)F31と第2基準焦点(第2擬似焦点、第2焦点、水平断面上の焦線、すなわち、上(平面)から見て両端が前記投影レンズ33側に位置し中央が前記第1光源2側に位置するような湾曲した焦線)F32と、基準光軸(擬似光軸、光軸)Z3と、を有する。前記反射面35は、アルミ蒸着や銀塗装などにより形成されている。前記反射面35は、前記第1光源2からの光を第1配光パターンとして所定の方向に反射させる反射面である。
【0062】
この例における前記リフレクタ31は、全体が導光部を構成するものである。前記リフレクタ31の前側の開口端部の左右両下面には、前記の実施例1における車両用灯具1の入射面10と同様に、入射面(図示せず)が設けられている。前記リフレクタ31の前側の開口端部の前面には、半環状形状の出射面11が設けられている。
【0063】
前記取付部材32は、たとえば、樹脂や金属性ダイカストなどの熱伝導率が高い材料からなる。前記取付部材32は、ヒートシンク部材と兼用する。前記取付部材32は、上部が平板形状をなし、中間部から下部にかけてフィン形状をなす。前記取付部材32には、前記第1光源2と前記第2光源3とがそれぞれ取り付けられている。すなわち、前記第1光源2と前記第2光源3とは、同一の前記取付部材32にそれぞれ取り付けられている。前記第1光源2は、前記反射面35の第1基準焦点F31もしくはその近傍に位置する。前記第2光源3は、前記入射面に対向する。
【0064】
前記投影レンズ33は、非球面レンズの凸レンズである。前記投影レンズ33は、図示しない前側焦点(前記第1光源2および前記第2光源3側の焦点)および後側焦点(外部側の焦点)と、前記前側焦点と前記後側焦点とを結ぶ光軸Z3とを有する。前記投影レンズ33の光軸Z3と前記反射面35の光軸Z3とは、一致もしくはほぼ一致する。また、前記投影レンズ33の前側焦点と前記反射面35の第2基準焦点F32とは、一致もしくはほぼ一致する。
【0065】
前記ホルダ部材34は、前記投影レンズ33を保持する。前記ホルダ部材34は、カットオフラインを有する第1配光パターンを得る場合には、シェードとしての機能を果たし、エッジが前記反射面35の第2基準焦点F32もしくはその近傍に位置する。
【0066】
この実施例2における車両用灯具30は、以上のごとき構成からなるので、前記の実施例1における車両用灯具1の作用効果とほぼ同様の作用効果を達成することができる。この実施例2における車両用灯具30においては、前記の実施例1における車両用灯具1の第1、2変形例の出射面21、22および第1、2、3、4変形例の導光部25、26、27、28、を適用することができる。
【0067】
なお、この実施例1における車両用灯具1がリフレクタタイプの車両用前照灯であり、また、この実施例2における車両用灯具30がプロジェクタタイプの車両用前照灯である。ところが、この発明においては、リフレクタタイプの車両用前照灯やプロジェクタタイプの車両用前照灯以外の車両用灯具にも適用することができる。
【0068】
また、この実施例1、2においては、1個の第1光源2と2個の第2光源3とを使用するものである。ところが、この発明においては、第1光源を2個以上、また、第2光源を1個もしくは3個以上使用しても良い。
【0069】
さらに、この実施例1、3においては、第2光源3の点灯で得られる所定の配光パターンがデイタイムランニングランプ用配光パターンとクリアランスランプ用配光パターンとであって、2つのランプ機能が得られるものである。ところが、この発明においては、第2光源の点灯で得られる所定の配光パターンがデイタイムランニングランプ用配光パターンやクリアランスランプ用配光パターン以外の配光パターンであっても良いし、また、得られるランプ機能が1つのランプ機能あるいは3つ以上のランプ機能であっても良い。なお、1つのランプ機能の場合においては、切替装置が不要となる。
【符号の説明】
【0070】
1 車両用灯具
2 第1光源
3 第2光源
4 第1リフレクタ
5 第2リフレクタ
6 取付部材
7 基板
8 レンズ
9 第1反射面
10 入射面
11、21、22 出射面
12、23 肉厚部分
13、29 傾斜面
14 反射面
15 第2反射面
16 垂直板部
17 水平板部
18 第1取付部
19 第2取付部
20 切替装置
24 平面
25、26、27、28 導光部
30 車両用灯具
31 リフレクタ
32 取付部材
33 投影レンズ
34 ホルダ部材
35 反射面
F1 第1反射面の基準焦点(擬似焦点、焦点)
Z1 第1反射面の基準光軸(擬似光軸、光軸)
F21 第2反射面の第1基準焦点(第1擬似焦点、第1焦点)
F22 第2反射面の第2基準焦点(第2擬似焦点、第2焦点)
Z2 第2反射面の基準光軸(擬似光軸、光軸)
F31 反射面の第1基準焦点(第1擬似焦点、第1焦点)
F32 反射面の第2基準焦点(第2擬似焦点、第2焦点)
Z3 反射面の基準光軸(擬似光軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのランプユニットに複数のランプ機能を有する車両用灯具において、
第1光源と、第2光源と、リフレクタと、を備え、
前記リフレクタは、前記第1光源からの光を第1配光パターンとして所定の方向に反射させる反射面と、導光部と、前記第2光源からの光を前記導光部中に入射させる入射面と、前記導光部中に入射した前記第2光源からの光を第2配光パターンとして所定の方向に出射させる出射面と、を有する、
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記第1光源と前記第2光源とは、同一の取付部材に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記導光部のうち前記入射面および前記出射面以外の面には、前記導光部中に入射した光を反射させる反射面としての表面処理が施されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記導光部は、導光性を有する樹脂から構成されていて、前記リフレクタのうち前記入射面および前記出射面を含む一部からなる、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記出射面には、前記第2光源からの光の出射を制御する出射制御素子群が設けられている、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記出射面を含む一部分の肉厚は、その他の部分の肉厚よりも厚い、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記出射面を含む一部分の肉厚は、その他の部分の肉厚よりも厚く、
前記出射面を含む肉厚部分のうち前記出射面と対向する面は、前記導光部中を導かれてきた前記第2光源からの光を前記出射面側に反射させる傾斜面である、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−34729(P2011−34729A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178217(P2009−178217)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】