説明

車両用灯具

【課題】光軸ズレを抑えつつ、高い組付作業性と組付精度を得ることができる車両用灯具を提供すること。
【解決手段】ハウジングとその開口部を覆うアウタレンズによって画成される灯室内にLED13を光源とするポジションランプユニット(LEDユニット)8を収容して成るヘッドランプ(車両用灯具)1において、前記ポジションランプユニット8に、階段状の複数の取付座が形成された一体の第1インナレンズ18と、該第1のインナレンズ18に被着される第2インナレンズ15を設け、前記第1インナレンズ18に形成された複数の取付座の各々に、LED13を実装して複数に分割されたLED基板17をそれぞれ取り付ける。又、前記第1インナレンズ18を透光性樹脂によって一体成形する。更に、前記LED基板17の表面と裏面の略全面に銅箔を被着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングとその開口部を覆うハウジングによって画成される灯室内にLEDを光源とするLEDユニットを収容して成る車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば車両前端の左右に配置されるヘッドランプには、ハウジングとその開口部を覆うレンズによって画成される灯室内に、ハイビーム用(走行ビーム用)ランプユニットとロービーム用(すれ違いビーム用)ランプユニット、ターンランプユニット、ポジションランプユニット等を収容して成るコンビネーション型のものが使用されている。
【0003】
ところで、斯かるコンビネーション型のヘッドランプには、ハイビーム用及びロービーム用ランプニットの光源にバルブを使用し、ポジションランプユニットの光源にLEDを使用するものがある。この場合、光源にLEDを使用するポジションランプにあっては、アウタレンズの曲面形状に合わせてハウジングを階段状に形成し、階段の各段上に、分割した各LED基板をそれぞれ配置することによって、各LED基板に実装されたLEDとアウタレンズのプリズム(レンズカット部)とが等間隔となるようにし、アウタレンズの外から診た場合の輝度の不均一化を防ぐようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところが、上記構成を採用した場合、アウタレンズの湾曲が大きい箇所では、当該箇所でアウタレンズ上のプリズムと全て同じ方向に向けて配置されたLEDとの関係が不適正となるため、LEDからの出射光の指向性が悪化し、輝度が低下するという問題があった。
【0005】
そこで、特許文献2には、アウタレンズの内側に該アウタレンズの曲面に沿って多数の小ボックスを階段状に配列し、各小ボックス毎に個別にフレネルレンズ(インナレンズ)を配置することによって、アウタレンズの曲率等に関係なく、LEDとフレネルレンズを最適な関係で態様させるようにした車両用灯具が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−349306号公報
【特許文献2】特開2000−123610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2において提案された車両用灯具においては、多数の各小ボックス毎に分割されたLED基板を取り付けるため、各LED基板と仕切壁との熱膨張差による光軸ズレは抑えられるが、各小ボックス毎に個別にフレネルレンズを組み付けるため、その組付作業が面倒で、高い組付精度を得ることが困難であるという問題がある。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とする処は、光軸ズレを抑えつつ、高い組付作業性と組付精度を得ることができる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ハウジングとその開口部を覆うアウタレンズによって画成される灯室内にLEDを光源とするLEDユニットを収容して成る車両用灯具において、前記LEDユニットに、階段状の複数の取付座が形成された一体の第1インナレンズと、該第1のインナレンズに被着される第2インナレンズを設け、前記第1インナレンズに形成された複数の取付座の各々に、LEDを実装して複数に分割されたLED基板をそれぞれ取り付けたことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記第1インナレンズを透光性樹脂によって一体成形したことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記LED基板の表面と裏面の略全面に同種の金属箔を被着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、第1インナレンズに形成された複数の取付座の各々に、複数に分割されたLED基板をそれぞれ取り付けるため、各LED基板と第1インナレンズとの熱膨張差による光軸ズレを抑えることができる。又、第1インナレンズを複数に分割することなく一体に形成し、この第1インナレンズを基準としてこれに第2インナレンズを被着するとともに、該第1インナレンズに複数のLED基板を取り付けるようにしたため、組付作業性と組付精度を高めることができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、第1インナレンズを透光性樹脂によって一体成形したため、該第1インナレンズの複数の縦壁部分(段差部分)にもLEDからの光を導光させることができ、この部分を斜め方向から視認したときに該部分が光って見え、車両用灯具全体の輝度が高められる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、LED基板の表面と裏面の略全面に熱膨張率が等しい同種の金属箔を被着したため、温度変化した場合にLED基板の表面と裏面は同量だけ熱膨張又は熱収縮し、該LED基板の反りが防がれて光軸ズレが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るヘッドランプの正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】本発明に係るヘッドランプのポジションランプユニットの分解斜視図である。
【図5】本発明に係るヘッドランプのポジションランプユニットを構成する第1インナレンズとLED基板の組立体の斜視図である。
【図6】図5のC−C線断面図である。
【図7】図5のD−D線断面図である。
【図8】図5のE−E線断面図である。
【図9】本発明に係るヘッドランプのポジションランプユニットの斜視図である。
【図10】図9のF−F線断面図である。
【図11】図9のG−G線断面図である。
【図12】図9のH−H線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は本発明に係る車両用灯具の一形態としてのヘッドランプの正面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は図1のB−B線断面図である。
【0018】
本実施の形態に係るヘッドランプ1は、不図示の車両前端部の左右に設けられるものであって、ハウジング2とその前面開口部を覆うアウタレンズ3によって画成される灯室4(図2及び図3参照)内に、ハイビーム(走行ビーム)用ランプユニット5、ロービーム(すれ違いビーム)用ランプユニット6、ターンランプユニット7及びLEDユニットであるポジションランプユニット8を収容して構成されている。尚、図示のヘッドランプ1は、車両の左側端部に配されるものであるが、左右のヘッドランプ1は対称であって、その基本構成は同じであるため、以下、左側のヘッドランプ1についてのみ説明する。
【0019】
上記ハウジング2は、樹脂にて一体成形され、図2及び図3に示すように、その前面開口部の周縁には断面横U字状の嵌合凹部2aが形成されている。又、前記アウタレンズ3は、透明樹脂によって一体成形されており、その周縁に車両後方に向かって一体に突出する凸部3aがハウジング2の前記嵌合凹部2aに車両前方から嵌め込まれ、その嵌め込み部がホットメルト9によって接着されることによって該アウタレンズ3がハウジング2に接合一体化されている。
【0020】
前記ハイビーム用ランプユニット5とロービーム用ランプユニット6及びターンランプユニット7は、光源としてバルブ10,11,12(図1参照)をそれぞれ使用するものであって、これらは横方向に並設されている。
【0021】
LEDユニットである前記ポジションランプユニット8は、ロービーム用ランプユニット6の上方に配され、図2に示すように、これにはアウタレンズ3の曲面に沿って横方向に階段状に配置された複数(図示例では6個)のLED(発光ダイオード)13が光源として配設されている。ここで、図2及び図3に示すように、ハウジング2とアウタレンズ3によって画成された前記灯室4内のロービーム用ランプユニット6の上方には横方向(図3の紙面垂直方向)に長いエクステンション14とその前面開口部を覆う透明な第2インナレンズ15及びハウジング16によって密閉空間Sが形成されており、この密閉空間Sには、分割された複数のLED基板17に実装された複数の前記LED13と該LED13の前方を覆う透明な第1インナレンズ18が収容されている。
【0022】
ところで、本実施の形態に係るヘッドランプ1においては、灯室4内下部のターンランプユニット7の下方には、ポジションランプユニット8の光源である複数のLED13の点灯を制御するためのLED点灯制御回路19が配置されている。そして、このLED点灯制御回路19とポジションランプユニット8とは、ハイビーム用ランプユニット5とターンランプユニット7を迂回してハウジング2の内面に沿って横U字状に配索された電源コード20によって電気的に接続されている。
【0023】
又、図3に示すように、上下方向においてポジションランプユニット8とロービーム用ランプユニット6との間には遮熱板21がポジションランプユニット8との間に上下方向の隙間を設けて配設されている。ここで、遮熱板21は、耐熱性の高い金属や樹脂で構成されており、当該ヘッドランプ1の車両外側方端(車両の左側端部に配される図示のヘッドランプ1においては、正面視で斜め上方に傾斜する左側端部)まで延設されている。
【0024】
次に、LEDユニットである前記ポジションランプユニット8の構成の詳細を図4〜図12に基づいて以下に説明する。
【0025】
図4はポジションランプユニットの分解斜視図、図5は同ポジションランプユニットを構成する第1インナレンズとLED基板の組立体の斜視図、図6は図5のC−C線断面図、図7は図5のD−D線断面図、図8は図5のE−E線断面図、図9はポジションランプユニットの斜視図、図10は図9のF−F線断面図、図11は図9のG−G線断面図、図12は図9のH−H線断面図である。
【0026】
第1インナレンズ18は、図4、図5及び図8に示すように、ポリカーボネイト等の透光性樹脂によって6段の階段状に一体成形されており、各階段の平坦面には円形レンズ18aがそれぞれ形成されている。そして、各円形レンズ18aの内面には、図7及び図8に示すように平行光線化プリズム18bが形成されている。
【0027】
又、第1インナレンズ18の各階段の平坦面の端部には、図6に示すようにボス18Aが形成されており、このボス18Aの内端面は取付座18cを形成している。そして、各ボス18Aにはネジ孔18dがそれぞれ形成されており、各取付座18cには複数(本実施の形態では6つ)に分割された前記LED基板17がネジ孔18dに螺着されたネジ22によって取り付けられている。各LED基板17には1つの前記LED13がそれぞれ実装されており、各LED13は第1インナレンズ18に形成された各円形レンズ18aの内面の平行光線化プリズム18bの中心に対向配置され、該LED13には図4に示す前記電源コード20がそれぞれ電気的に接続されている。尚、図示しないが、各LED基板17の表面と裏面には銅箔等の同種の金属箔が前面に亘って被着されている。
【0028】
以上のように、第1インナレンズ18の各階段部には複数(6つ)に分割されたLED基板17がLED13と共にそれぞれ取り付けられるが、これらのLED基板17が取り付けられた第1インナレンズ18の前面には前記第2インナレンズ15が図9〜図12に示す取付構造によって被着される。ここで、第2インナレンズ15は,第1インナレンズ18と同様にポリカーボネイト等の透光性樹脂によってアウタレンズ3の内面に沿うよう円弧状に一体成形されており(図2参照)、その中央部と左右両端部が第1インナレンズ18に裏面側から挿通するビス23によって第1インナレンズ18にそれぞれ取り付けられている。尚、図11及び図12に示すように、第2インナレンズ15の外面には幅方向(図11及び図12の紙面垂直方向)に長い配光用プリズム15aが形成されている。
【0029】
以上のように組付一体化された第1インナレンズ18と第2インナレンズ15は図4に示す前記ハウジング16に組み付けられるが、このハウジング16には前記遮熱板21が複数本のネジ24によって取り付けられる。
【0030】
而して、本実施の形態に係るヘッドランプ1に設けられたLEDユニットとしてのポジションランプユニット8においては、第1インナレンズ18に形成された複数(6つ)の取付座18cの各々に、複数(6つ)に分割されたLED基板17がそれぞれ取り付けられるため、各LED基板17と第1インナレンズ18との熱膨張差による光軸ズレが小さく抑えられ。特に、本実施の形態では、各LED基板17の表面と裏面の全面に熱膨張率が等しい銅箔等の同種の金属箔を被着したため、温度変化した場合にLED基板17の表面と裏面は同量だけ熱膨張又は熱収縮し、該LED基板17の反りが防がれて光軸ズレが一層確実に抑えられる。
【0031】
又、本実施の形態では、第1インナレンズ18を複数に分割することなく一体に形成し、この第1インナレンズ18を基準としてこれに第2インナレンズ15を被着するとともに、該第1インナレンズ18に複数のLED基板17を取り付けるようにしたため、組付作業性と組付精度が高められる。
【0032】
更に、本実施の形態では、第1インナレンズ18を透光性樹脂によって一体成形したため、該第1インナレンズ18の図8に示す複数の縦壁部分(段差部分)18eにもLED13からの光を導光させることができ、この縦壁部分18eを斜め方向から視認したときに該部分が光って見え、これによって当該ヘッドランプ1の輝度が高められる。
【0033】
その他、本実施の形態では、LEDユニットであるポジションランプユニット8を灯室4内の上部に配置し、その下方にロービーム用ランプユニット6を配置するとともに、該ポジションランプユニット8を点灯制御するためのLE点灯制御回路19を灯室4内の下部に配置したため、ハイビーム用ランプユニット5とロービーム用ランプユニット6及びターンランプユニット7からの熱によるLED点灯制御回路19の加熱が抑制され、該LED点灯制御回路19の作動安定性が高められる。
【0034】
又、本実施の形態では、上下方向においてポジションランプユニット8とロービーム用ランプユニット6との間に遮熱板21をポジションランプユニット8との間に上下方向の隙間を設けて配設したため、ポジションランプユニット8とロービーム用ランプユニット6の間に断熱性の高い空気層が形成される。このため、ロービーム用ランプユニット6からポジションランプユニット8への熱伝達がポジションランプユニット8とロービーム用ランプユニット6の間に形成される断熱性の高い空気層によって効果的に遮断され、ポジションランプユニット8が熱的に保護される。この結果、ポジションランプユニット8の光源であるLED13の温度上昇が抑制され、該LED13の発光効率と寿命の低下が防がれるという効果が得られる。
【0035】
尚、以上は本発明をヘッドランプに対して適用した形態について説明したが、本発明は、リヤコンビネーションランプ等の他の車両用灯具に対しても同様に適用可能であることは勿論である。例えば、ポジションランプユニットをデイタイミングランプユニットとして、長い時間点灯しているランプとしても良い。連続点灯時間の長い機能を有するランプとしたときには、点灯により発生する光源からの熱によって熱膨張が生じるが、本発明に係る車両用灯具であるヘッドランプ1においては、第1インナレンズ18を基準としてとして第2インナレンズ15とLED基板17を取り付けているため、連続点灯によってLED基板17(LED13)と第1インナレンズ18との光軸ズレを抑制することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 ヘッドランプ(車両用灯具)
2 ハウジング
2a ハウジングの嵌合凹部
3 アウタレンズ
3a アウタレンズの凸部
4 灯室
5 ハイビーム用ランプユニット
6 ロービーム用ランプユニット
7 ターンランプユニット
8 ポジションランプユニット(LEDユニット)
9 ホットメルト
10〜12 バルブ(光源)
13 LED( 光源)
14 エクステンション
15 第2インナレンズ
15a 第2インナレンズの配光用プリズム
16 ハウジング
17 LED基板
18 第1インナレンズ
18A 第1インナレンズのボス
18a 第1インナレンズの円形レンズ
18b 第1インナレンズの平行光線化プリズム
18c 第1インナレンズの取付座
18d 第1インナレンズのネジ孔
18e 第1インナレンズの縦壁部分
19 LED点灯制御回路
20 電源コード
21 遮熱板
22〜24 ネジ
S 密閉空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングとその開口部を覆うアウタレンズによって画成される灯室内にLEDを光源とするLEDユニットを収容して成る車両用灯具において、
前記LEDユニットに、階段状の複数の取付座が形成された一体の第1インナレンズと、該第1のインナレンズに被着される第2インナレンズを設け、前記第1インナレンズに形成された複数の取付座の各々に、LEDを実装して複数に分割されたLED基板をそれぞれ取り付けたことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記第1インナレンズを透光性樹脂によって一体成形したことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記LED基板の表面と裏面の略全面に同種の金属箔を被着したことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用灯具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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