説明

車輌用前照灯

【課題】構造の簡素化を確保した上でランプユニットの過度の回動を規制すると共に周辺部品との干渉を回避する。
【解決手段】光源9から出射された光を照射し水平方向へ回動可能とされたランプユニット7と、被支持部20を有しランプユニットの水平方向への回動支点とされたスイブル軸17と、被支持部を水平方向へ回動可能に支持するブラケット26と、ブラケットに取り付けられスイブル軸を押さえる軸押さえ部材39とを備え、被支持部は軸押さえ部材によって上方から押さえられる被押さえ面20aと上縁が被押さえ面の外周縁に連続されランプユニットの回動時に摺動する摺動面20cと上縁が被押さえ面の外周縁に連続されスイブル軸が所定の角度以上に回動されたときに軸押さえ部材に接触される被規制面20bとを有し、スイブル軸の回動中心から被規制面の上縁までの距離がスイブル軸の回動中心から摺動面の上縁までの距離より短くされた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車輌用前照灯に関する。詳しくは、スイブル軸にランプユニットの回動時に摺動する摺動面とスイブル軸の回動時にスイブル軸を押さえる軸押さえ部材に接触可能な被規制面とを形成することにより構造の簡素化を確保した上でランプユニットの過度の回動を規制すると共に周辺部品との干渉を回避する技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用前照灯には、例えば、カバーとランプハウジングによって構成された灯具外筐の内部に、光源と光源から出射された光を反射するリフレクターを有するランプユニットが配置されたものがある。
【0003】
このような車輌用前照灯には、ランプユニットがブラケットに水平方向(左右方向)へ回動自在に支持され、ランプユニットがアクチュエーターの駆動力によって回動されるタイプがある。ランプユニットがその下方に配置されたアクチュエーターによって水平方向へ回動されることにより、車輌の進行方向に追従して光軸の向きを変化させる所謂スイブル動作が行われる。
【0004】
上記のようなランプユニットが水平方向へ回動される車輌用前照灯にあっては、ランプユニットの上端部に上方へ突出されたスイブル軸が取り付けられ、スイブル軸を介してランプユニットがブラケットに対して回動される。従って、ランプユニットはスイブル軸を回動支点として水平方向へ回動される。
【0005】
ランプユニットがスイブル軸を支点として回動される車輌用前照灯には、スイブル軸(被吊り下げ部)がブラケットに水平方向へ回動可能に支持される被支持部を有し、スイブル軸のブラケットからの脱落を防止する軸押さえ部材(規制部材)がブラケットに取り付けられたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−94196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に記載された車輌用前照灯にあっては、被支持部が略半球状に形成されて被支持部が前方へ張り出しているため、被支持部の前方に配置される周辺部品と干渉する場合がある。
【0008】
また、特許文献1に記載された車輌用前照灯にあっては、被支持部が略半球状に形成され軸押さえ部材の平板状の部分によって上方から押さえられている。このような構造においては、車輌の走行時の振動やランプユニットの慣性によりランプユニットとスイブル軸が一体になって過度に回動されるおそれがある。そこで、特許文献1に記載された車輌用前照灯においては、ランプユニットに突起部を設け、突起部がブラケットに接触されることによりランプユニットの過度の回動を防止している。ところが、特許文献1に記載された構造では、ランプユニットに突起部を設ける分、灯具外筐の内部の構造が複雑になってしまうという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記した問題点を克服し、構造の簡素化を確保した上でランプユニットの過度の回動を規制すると共に周辺部品との干渉を回避することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
車輌用前照灯は、上記した課題を解決するために、光源から出射された光を前方へ照射し少なくとも水平方向へ回動可能とされたランプユニットと、被支持部を有し上方へ突出された状態で前記ランプユニットに取り付けられ前記ランプユニットの少なくとも水平方向への回動支点とされたスイブル軸と、前記被支持部を少なくとも水平方向へ回動可能に支持するブラケットと、前記ブラケットに取り付けられ前記スイブル軸を押さえる軸押さえ部材とを備え、前記被支持部は前記軸押さえ部材によって上方から押さえられる被押さえ面と上縁が前記被押さえ面の外周縁に連続され前記ランプユニットの回動時に摺動する摺動面と上縁が前記被押さえ面の外周縁に連続され前記スイブル軸が所定の角度以上に回動されたときに前記軸押さえ部材に接触される被規制面とを有し、前記スイブル軸の回動中心から前記被規制面の上縁までの距離が前記スイブル軸の前記回動中心から前記摺動面の上縁までの距離より短くされたものである。
【0011】
従って、車輌用前照灯にあっては、スイブル軸における被支持部の被規制面の方向への張出し部分が小さい。
【0012】
また、スイブル軸の被規制面が軸押さえ部材に接触することによりスイブル軸の所定の角度以上の回動が規制される。
【発明の効果】
【0013】
本発明車輌用前照灯は、光源から出射された光を前方へ照射し少なくとも水平方向へ回動可能とされたランプユニットと、被支持部を有し上方へ突出された状態で前記ランプユニットに取り付けられ前記ランプユニットの少なくとも水平方向への回動支点とされたスイブル軸と、前記被支持部を少なくとも水平方向へ回動可能に支持するブラケットと、前記ブラケットに取り付けられ前記スイブル軸を押さえる軸押さえ部材とを備え、前記被支持部は前記軸押さえ部材によって上方から押さえられる被押さえ面と上縁が前記被押さえ面の外周縁に連続され前記ランプユニットの回動時に摺動する摺動面と上縁が前記被押さえ面の外周縁に連続され前記スイブル軸が所定の角度以上に回動されたときに前記軸押さえ部材に接触される被規制面とを有し、前記スイブル軸の回動中心から前記被規制面の上縁までの距離が前記スイブル軸の前記回動中心から前記摺動面の上縁までの距離より短くされたことを特徴とする。
【0014】
従って、スイブル軸における被支持部の被規制面の方向への張出し部分が小さいので、被支持部及び軸押さえ部材の周囲に配置される周辺部品と被支持部及び軸押さえ部材との干渉を回避することができる。
【0015】
また、スイブル軸の被規制面が軸押さえ部材に接触することによりランプユニットの過度の回動が防止されるので、車輌用前照灯の内部の構造においてランプユニットの過度の回動を規制する構造を別途設ける必要がなく、構造の簡素化を確保した上でランプユニットの過度の回動を規制することができる。
【0016】
請求項2に記載した発明にあっては、前記ブラケットが樹脂材料によって形成され、前記スイブル軸が樹脂材料によって形成され、金属材料によって形成され前記ブラケットと前記スイブル軸の間に介在されて前記ランプユニットの回動時に前記被支持部が摺動される中間部材を設けている。
【0017】
従って、スイブル軸の回動時に樹脂材料によって形成された被支持部が金属材料によって形成された中間部材に対して摺動するため、スイブル軸の回動時に摺動に伴う削り粉が発生し難く、スイブル軸及びブラケットが磨耗し難いため、スイブル軸及びブラケットの耐久性の向上によるランプユニットの円滑な動作状態を確保することができる。
【0018】
請求項3に記載した発明にあっては、前記被押さえ面に上方へ突出された被規制突部が設けられ、前記軸押さえ部材に前記被規制突部が挿入される規制部を有し前記スイブル軸を上方から押さえる押さえ部が設けられている。
【0019】
従って、スイブル軸の移動に対して軸押さえ部材の規制部によりスイブル軸の被規制突部にスイブル軸の移動に反する力が作用するので、スイブル軸の移動を規制することができ、ランプユニットのブラケットからの位置ずれを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明車輌用前照灯を実施するための最良の形態について添付図面を参照して説明する(図1乃至図5参照)。
【0021】
車輌用前照灯1は車体の前端部における左右両端部に取り付けられて配置されている。
【0022】
車輌用前照灯1は、図1に示すように、前方に開口された凹部が形成されたランプハウジング2とランプハウジング2の開口2aを閉塞するカバー3とを備えている。ランプハウジング2とカバー3によって灯具外筐4が構成され、灯具外筐4の内部空間が灯室5として形成されている。
【0023】
ランプハウジング2の後端部には前後に貫通された取付用開口2bが形成されている。
【0024】
ランプハウジング2の後端部には取付用開口2bを閉塞するバックカバー6が取り付けられている。
【0025】
灯室5にはランプユニット7が配置されている。ランプユニット7は、リフレクター8と、リフレクター8の後端部に保持された光源9と、リフレクター8の前方に位置されたレンズホルダー10と、レンズホルダー10の前端部に保持された投影レンズ11と、リフレクター8とレンズホルダー10の間に配置されたシェード12とを有している。
【0026】
リフレクター8は前方に開口された椀状に形成され、内面が反射面8aとして形成されている。リフレクター8は前端部がシェード12の後面に取り付けられている。リフレクター8は光源9から出射された光を投影レンズ11へ向けて反射する機能を有している。
【0027】
光源9としては、例えば、放電灯が用いられている。なお、光源9として、例えば、発光ダイオード(LED)等の他の種類が用いられてもよい。
【0028】
レンズホルダー10は略前後方向に貫通された環状に形成されている。レンズホルダー10は後端部がシェード12の前面に取り付けられている。
【0029】
投影レンズ11は光源9から出射された光を前方へ投影する機能を有している。
【0030】
シェード12には透過孔12aが形成されている。シェード12は光源9から出射された光の一部を遮蔽する機能を有している。
【0031】
ランプユニット7の下端部にはジョイント部材13が取り付けられている。
【0032】
ランプユニット7の下側にはアクチュエーター14が配置されている。アクチュエーター14は、ケース体15と、ケース体15の内部に配置された図示しない駆動機構と、駆動機構に連結された駆動軸16とを有している。駆動軸16はケース体15から上方へ突出して位置されている。アクチュエーター14は駆動軸16が前後方向へ移動可能かつ水平方向へ回動可能とされている。アクチュエーター14の駆動軸16はジョイント部材13に連結されている。
【0033】
ランプユニット7の上端部には上方へ突出された状態でスイブル軸17が取り付けられている。スイブル軸17は、図2及び図3に示すように、上下方向に延びる円柱状に形成された軸部18と、軸部18の上側に設けられた軸状の連結部19と、連結部19の上側に設けられた被支持部20とが樹脂材料によって一体に形成されて成る。
【0034】
連結部19は軸部18より径が小さくされ、中心軸が軸部18の中心軸Pと同軸上に位置されている。
【0035】
被支持部20は外面が略上方を向く被押さえ面20aと、それぞれ上縁が被押さえ面20aの外周縁に連続された被規制面20b、20bと、上縁が被押さえ面20aの外周縁に連続された摺動面20cとから成る。被押さえ面20aは、外周縁のうち摺動面20cに連続する部分が軸部18の中心軸Pを中心とした円弧状に形成され、被規制面20b、20bに連続する部分がそれぞれ略直線状に形成されている。
【0036】
被規制面20b、20bはそれぞれ前斜め左方及び前斜め右方を向き、左右方向において連続して形成されている。
【0037】
摺動面20cは下方に凸の球面に形成されている。摺動面20cは被規制面20b、20bの後側及び下側に位置され、被規制面20b、20bの下縁及び左右両側縁に連続されている。
【0038】
被支持部20は、図3に示すように、軸部18の中心軸Pから被規制面20bの上縁までの距離Lが軸部18の中心軸Pから摺動面20cの上縁までの距離Rより短くされている。上記した距離Lは軸部18の中心軸Pから被規制面20bの上縁における任意の位置までの距離であり、軸部18の中心軸Pから被規制面20bの上縁の任意の位置までの距離が中心軸Pから摺動面20cの上縁までの距離より短くされている。
【0039】
被支持部20の被押さえ面20aには上方へ突出された被規制突部21が設けられている。被規制突部21は、例えば、上方に凸の略半球状に形成されている。被規制突部21は半球の中心が軸部18の中心軸P上に位置されている。
【0040】
スイブル軸17は中間部材22に支持される。中間部材22は上下方向に貫通され前方に開口された形状に形成されている。中間部材22は下側に位置された囲み部23と、囲み部23の上端から外側斜め上方へ張り出された被摺動部24と、被摺動部24の上端から外方へ張り出され前方に開口されたU字状のフランジ部25とが金属材料によって一体に形成されて成る。中間部材22は被摺動部24及びフランジ部25の前端の位置が一致されている。
【0041】
囲み部23は略半円筒状に形成されている。
【0042】
被摺動部24の内面は被支持部20の摺動面20cが摺動される被摺動面24aとして形成されている。
【0043】
スイブル軸17は連結部19が中間部材22の前側の開口22aから挿入されて中間部材22に支持される。スイブル軸17が中間部材22に支持された状態においては、連結部19が囲み部23の内側に位置され、被支持部20の摺動面20cが被摺動部24の被摺動面24aに接触した状態とされる。
【0044】
中間部材22はブラケット26に取り付けられる(図1乃至図3参照)。ブラケット26は図示しないエイミング調整機構によって左右方向及び上下方向へランプハウジング2に傾動自在に支持されている。
【0045】
ブラケット26は、図1に示すように、上下方向を向くベース部27と、ベース部27の左右両端部からそれぞれ上方へ突出された柱部28、28(図1に1つのみ示す。)と、柱部28、28の上端部を連結する腕部29とから成る。ブラケット26は樹脂材料により形成されている。ベース部27には挿通孔27aが形成されている。ベース部27はアクチュエーター14の上側に位置されており、挿通孔27aにジョイント部材13及び駆動軸16が挿通された状態にされている。
【0046】
腕部29の左右方向における中央部は軸支持部30として設けられている。
【0047】
軸支持部30には軸受凹部31が形成されている。軸受凹部31は上下方向において貫通され前方に開口された形状に形成されている。軸受凹部31には下側に位置する軸挿入面32と、軸挿入面32の上側に連続して位置する受け面33と、受け面33の外側に連続して位置する部材支持面34とが連続されて成る。
【0048】
軸挿入面32は円弧面状に形成されている。受け面33はすり鉢状に形成されている。部材支持面34は前方に開口されたU字状に形成され、上方を向く載置面34aと載置面34aの外周縁に連続され内方を向く規制面34bとから成る。
【0049】
軸支持部30の前面には左右両側にそれぞれ前方へ突出された位置決め突部35、35が設けられている。
【0050】
軸支持部30には、上面における後端寄りの位置に上方へ突出された上側係合突部36、36が左右に離隔して設けられ、下面における後端寄りの位置に下方へ突出された下側係合突部37、37が左右に離隔して設けられている。
【0051】
軸支持部30の上面における軸受凹部31の後方には前方に開口された挿入部38が設けられ、挿入部38は上側係合突部36、36間に位置されている。
【0052】
軸受凹部31にはスイブル軸17が支持された中間部材22が挿入されて取り付けられる。中間部材22は、囲み部23が軸挿入面32の内側に位置され、被摺動部24が受け面33に接した状態とされ、フランジ部25が部材支持面34に接した状態で軸受凹部31に取り付けられる。中間部材22はフランジ部25が部材支持面34に嵌合され規制面34bによって回転が規制されることにより、ブラケット26の軸支持部30に回動不能な状態で取り付けられる。
【0053】
上記したように、中間部材22がブラケット26に取り付けられた状態において、スイブル軸17が中間部材22に支持されており、スイブル軸17はブラケット26に中間部材22を介して上下方向へ傾動可能かつ左右方向(水平方向)へ回動可能とされる。
【0054】
ブラケット26の軸支持部30には軸押さえ部材39が取り付けられる。軸押さえ部材39は、図2に示すように、前後方向を向くベース面部40と、ベース面部40の上縁における左右両端部からそれぞれ後方へ突出された上側係合部41、41と、ベース面部40の上縁における中央部から後方へ突出された押さえ部42と、ベース面部40の下縁における左右両端部からそれぞれ後方へ突出された下側係合部43、43とが弾性を有する金属材料によって一体に形成されて成る。
【0055】
ベース面部40には左右に離隔して位置決め孔40a、40aが形成されている。上側係合部41、41の後端部にはそれぞれ係合孔41a、41aが形成されている。押さえ部42の前後方向における中央部には上方へ凸の略半球状に形成された規制部42aが設けられている。下側係合部43、43の後端部にはそれぞれ係合孔43a、43aが形成されている。
【0056】
スイブル軸17が中間部材22を介してブラケット26の軸支持部30に支持された状態においてブラケット26の軸支持部30に軸押さえ部材39が取り付けられる。
【0057】
軸押さえ部材39は、上側係合部41、41と下側係合部43、43の間隔が広がるように弾性変形された後に弾性復帰して上側係合部41、41の係合孔41a、41a及び下側係合部43、43の係合孔43a、43aがそれぞれ上側係合突部36、36及び下側係合突部37、37に係合されてブラケット26の軸支持部30に取り付けられる(図3及び図4参照)。このとき、ベース面部40の位置決め孔40a、40aに軸支持部30の位置決め突部35、35が嵌合され、押さえ部42の先端部が軸支持部30の挿入部38に挿入されている。
【0058】
軸押さえ部材39が軸支持部30に取り付けられた状態において、被規制突部21が押さえ部42の規制部42aに挿入された状態で押さえ部42によって上方から押さえられている。
【0059】
また、軸押さえ部材39が軸支持部30に取り付けられた状態において、中間部材22の前端がベース面部40の後面の近傍に位置した状態とされ、中間部材22の前方への移動が軸押さえ部材39によって規制される。
【0060】
上記のように構成された車輌用前照灯1において、アクチュエーター14の駆動軸16が回転されると、ジョイント部材13を介してアクチュエーター14の駆動力が伝達され、ランプユニット7とスイブル軸17が一体になって駆動軸16の回転方向に応じて左右方向へ回動されスイブル動作が行われる。ランプユニット7が回動されるときには、スイブル軸17の軸部18の中心軸Pが回動中心とされ、スイブル軸17の摺動面20cが中間部材22の被摺動部24の被摺動面24aに摺動される。
【0061】
上記したスイブル動作により、ランプユニット7が車輌の進行方向に追従して左右方向へ回動され光軸の向きが車輌の進行方向に応じて変化される。
【0062】
また、車輌用前照灯1においては、レベリング調整又はエイミング調整である光軸調整を行うことが可能とされている。
【0063】
レベリング調整は駆動機構により駆動軸16が前後方向へ移動され、ランプユニット7がスイブル軸17の被規制突部21を支点としてブラケット26に対して上下方向へ傾動されることにより行われる。このとき、スイブル軸17の摺動面20cが中間部材22の被摺動面24aに摺動される。
【0064】
エイミング調整はエイミング機構の動作によりブラケット26とランプユニット7とアクチュエーター14が一体になってランプハウジング2に対して上下方向又は左右方向へ傾動されることにより行われる。
【0065】
車輌用前照灯1においては、上記したスイブル動作中に車輌の走行時の振動やランプユニット7の慣性によりランプユニット7が所定の角度以上に回動されるような力が付与されるおそれがある。
【0066】
車輌用前照灯1において、ランプユニット7に上記のような所定の角度以上に回動される力が付与されたときには、ランプユニット7と一体になって回動されるスイブル軸17における被支持部20の被規制面20b、20bが軸押さえ部材39のベース面部40の後面に接触される(図5参照)。例えば、ランプユニット7が左方向に所定の角度まで回動されると、スイブル軸17が左方向に回動されて一方の被規制面20bが軸押さえ部材39のベース面部40に接触される(図5の一点鎖線参照)。同様に、ランプユニット7が右方向に所定の角度まで回動されると、スイブル軸17が右方向に回動されて他方の被規制面20bが軸押さえ部材39のベース面部40に接触される(図5の二点鎖線参照)。
【0067】
このように、被規制面20b、20bがベース面部40に接触されることにより、スイブル軸17の回動が規制されスイブル軸17と一体に回動されるランプユニット7の回動も規制されるので、ランプユニット7の過度の回動を規制することができる。
【0068】
また、車輌用前照灯1においては、車輌の走行時の振動や衝撃等によりランプユニット7に前方への力が付与されることがある。ランプユニット7に前方への力が付与されると、スイブル軸17にも前方への力が加えられる。
【0069】
しかしながら、車輌用前照灯1においては、スイブル軸17の被規制突部21が押さえ部42の規制部42aに挿入された状態で押さえ部42によって上方から押さえられている。
【0070】
従って、規制部42aにより被規制突部21に前方への力に反する力が作用するので、スイブル軸17の前方への移動を規制することができ、ランプユニット7のブラケット26からの位置ずれを防止することができる。
【0071】
なお、上記には、軸押さえ部材39の規制部42aが上方へ凸の略半球状に形成された例を示したが、規制部の形状は上方へ凸の略半球状に限られることはない。規制部はスイブル軸17が水平方向に回動可能な状態でスイブル軸17の前方への移動が規制されるような形状であれば他の形状であってもよい。
【0072】
また、上記には、軸押さえ部材39の規制部42aの凹部にスイブル軸17の被規制突部21が挿入された状態でスイブル軸17の前方への移動が規制された例を示したが、規制部を上下に貫通された規制孔とし規制孔にスイブル軸17の被規制突部21が挿入されていてもよい。この場合には、スイブル軸17の被押さえ面20aが軸押さえ部材39の押さえ部42によって上方から押さえられた状態とされ、規制部として形成された規制孔によってスイブル軸17の前方への移動が規制される。
【0073】
以上に記載した通り、車輌用前照灯1にあっては、スイブル軸17の被支持部20にランプユニット7の回動時に摺動する摺動面20cとスイブル軸17の回動時に軸押さえ部材39に接触可能な被規制面20bとが形成され、スイブル軸17の回動中心から被規制面20bの上縁までの距離Lがスイブル軸17の回動中心から摺動面20cの上縁までの距離Rより短くされている。
【0074】
従って、被支持部20の前方への張出し部分が小さいので、被支持部20及び軸押さえ部材39の周囲に配置される周辺部品と被支持部20及び軸押さえ部材39との干渉を回避することができる。
【0075】
また、被規制面20b、20bが軸押さえ部材39に接触することによりスイブル軸17の所定の角度以上の回動が規制されるので、ランプユニット7の過度の回動が防止される。従って、スイブル軸17がランプユニット7の過度の回動を防止する機能を有するので、灯具外筐4の内部の構造においてランプユニット7の過度の回動を規制する構造を設ける必要がなく、構造の簡素化を確保した上でランプユニット7の過度の回動を規制することができる。
【0076】
また、車輌用前照灯1にあっては、金属材料によって形成されブラケット26とスイブル軸17の間に介在されてランプユニット7の回動時に被支持部20が摺動される中間部材22を設けている。
【0077】
従って、スイブル軸17の回動時に樹脂材料によって形成された被支持部20が金属材料によって形成された中間部材22に対して摺動するため、スイブル軸17の回動時に摺動に伴う削り粉が発生し難く、スイブル軸17及びブラケット26が磨耗し難いため、スイブル軸17及びブラケット26の耐久性の向上によるランプユニット7の円滑な動作状態を確保することができる。
【0078】
上記した発明を実施するための最良の形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図2乃至図5と共に本発明の実施の形態を示すものであり、本図は、車輌用前照灯の概略縦断面図である。
【図2】スイブル軸、中間部材、軸押さえ部材及びブラケットの軸支持部等を示す分解斜視図である。
【図3】軸押さえ部材がブラケットの軸支持部に取り付けられスイブル軸が中間部材を介してブラケットに支持された状態を示す拡大断面図である。
【図4】軸押さえ部材がブラケットの軸支持部に取り付けられスイブル軸が中間部材を介してブラケットに支持された状態を示す斜視図である。
【図5】スイブル軸の回動時に被支持部が軸押さえ部材に接触されてスイブル軸の回動が規制された状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0080】
1…車輌用前照灯、7…ランプユニット、8…光源、17…スイブル軸、20…被支持部、20a…被押さえ面、20b…被規制面、20c…摺動面、21…被規制突部、22…中間部材、26…ブラケット、39…軸押さえ部材、42…押さえ部、42a…規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射された光を前方へ照射し少なくとも水平方向へ回動可能とされたランプユニットと、
被支持部を有し上方へ突出された状態で前記ランプユニットに取り付けられ前記ランプユニットの少なくとも水平方向への回動支点とされたスイブル軸と、
前記被支持部を少なくとも水平方向へ回動可能に支持するブラケットと、
前記ブラケットに取り付けられ前記スイブル軸を押さえる軸押さえ部材とを備え、
前記被支持部は前記軸押さえ部材によって上方から押さえられる被押さえ面と上縁が前記被押さえ面の外周縁に連続され前記ランプユニットの回動時に摺動する摺動面と上縁が前記被押さえ面の外周縁に連続され前記スイブル軸が所定の角度以上に回動されたときに前記軸押さえ部材に接触される被規制面とを有し、
前記スイブル軸の回動中心から前記被規制面の上縁までの距離が前記スイブル軸の前記回動中心から前記摺動面の上縁までの距離より短くされた
ことを特徴とする車輌用前照灯。
【請求項2】
前記ブラケットが樹脂材料によって形成され、
前記スイブル軸が樹脂材料によって形成され、
金属材料によって形成され前記ブラケットと前記スイブル軸の間に介在されて前記ランプユニットの回動時に前記被支持部が摺動される中間部材を設けた
ことを特徴とする請求項1に記載の車輌用前照灯。
【請求項3】
前記被押さえ面に上方へ突出された被規制突部が設けられ、
前記軸押さえ部材に前記被規制突部が挿入される規制部を有し前記スイブル軸を上方から押さえる押さえ部が設けられた
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車輌用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−58320(P2013−58320A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194794(P2011−194794)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】