説明

軟弱地盤上への盛土の構築方法及びその盛土構造物

【課題】 強度及び靱性能が向上した軟弱地盤上への盛土の構築方法及びその盛土構造物を提供する。
【解決手段】 軟弱地盤上への盛土の構築方法において、粒度調整砕石をセメントで安定化処理したセメント改良礫土3にジオテキスタイル4を用いて、曲げ剛性と靱性能を向上させた梁部材5を軟弱地盤1上に敷設し、この梁部材5上に盛土6を構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱地盤上への盛土の構築法及びその盛土構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、軟弱地盤上への盛土の構築法としては、以下に開示するようなものがあった。
(1)サンドマット工法
この工法は、図7に示すように、軟弱地盤101上にサンドマット102を敷いて、その上に盛土103を構築するものである
(2)コラムネット工法
この工法は、図8に示すように、軟弱層202に支持層201に届くまで、改良杭203を打設する(深層混合処理工法)。その上に土木安定ネット204を配置し、不織布205を介して盛土206を構築するようにしていた。
【0003】
(3)表面混合処理工法
この工法は、スタビライザー等により軟弱層を固化材と混合するものである。
また、本願の発明者らは、盛土の壁面工として、土嚢を積みコンクリートを食いつかせたRRR工法(盛土工法)を提案している(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平4−53204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した工法(1)は、上載荷重の分散効果、施工機械のトラフィカビリティー改善、軟弱層の圧密のための上部排水層の役割、盛土内の水位低下をもたらすといった効果がある反面、大地震時において液状化し、盛土が沈下するといった問題がある。
また、上記した工法(2)は、ネットに吊り上げ効果を期待している。そのため、従来工法よりも地盤改良率を低減できるといった効果がある反面、改良杭の本数はネットの弛み量できまる。そのため、改良杭を盛土を支持する杭として見ると、杭の本数が過大(支持力としては過大)となる。
【0006】
また、上記した工法(3)は、地盤改良と言っても、悪質土を普通の土のレベルにする程度であり、軟弱層が浅い場合に限られる(2m以下)。また、ネットを併用できないといった問題があった。
本発明は、上記状況に鑑みて、強度及び靱性能が向上した軟弱地盤上への盛土の構築方法及びその盛土構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕軟弱地盤上への盛土の構築方法において、粒度調整砕石をセメントで安定化処理したセメント改良礫土にジオテキスタイルを用いて、曲げ剛性と靱性能を向上させた梁部材を軟弱地盤上に敷設し、この梁部材上に盛土を構築することを特徴とする。
〔2〕軟弱地盤上への盛土構造物において、粒度調整砕石をセメントで安定化処理したセメント改良礫土にジオテキスタイルを用いて、曲げ剛性と靱性能を向上させた軟弱地盤上に敷設される梁部材と、この梁部材上に構築される盛土を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、強度及び靱性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例を示す軟弱地盤上へ施工される盛土構造物の模式図である。
【図2】本発明の実験例を示す軟弱地盤上へ施工される盛土構造物の模式図である。
【図3】本発明の実験例を示す供試体の3点曲げ試験の様子を示す図である。
【図4】本発明の実験例を示す荷重(kN/m)に対する載荷点における鉛直変位を示す図である。
【図5】本発明の実験例を示す歪み(με)に対する載荷点における鉛直変位を示す図である。
【図6】本発明の実験例を示す供試体底面中央における引張変位(クラック幅)(mm)に対する載荷点における鉛直変位を示す図である。
【図7】従来の軟弱地盤上へ施工される盛土構造物(サンドマット工法)の模式図である。
【図8】従来の軟弱地盤上へ施工される盛土構造物(コラムネット工法)の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の軟弱地盤上への盛土の構築方法は、粒度調整砕石をセメントで安定化処理したセメント改良礫土にジオテキスタイルを用いて、曲げ剛性と靱性能を向上させた梁部材を軟弱地盤上に敷設し、この梁部材上に盛土を構築する。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施例を示す軟弱地盤上へ施工される盛土構造物の模式図である。
この図において、1は軟弱地盤、2はその軟弱地盤に打設される地盤改良杭、5は軟弱地盤1上に配置されるセメント改良礫土3にジオテキスタイル4を用いた梁部材である。ここで、セメント改良礫土とは粒度調整砕石に少量のセメント(50kg/m3 程度)を混ぜたものであり、高強度、高剛性を有する。また、ジオテキスタイル4は、主に補強土工法で広く用いられ補強材(高分子材料)である。6はその梁部材5上に構築される盛土である。
【0012】
本発明の特徴は、良質土である粒調砕石をさらにセメント安定処理し用いる点にある(通常の土より高品質)。また、ジオテキスタイル(引張抵抗材)を用いることにより、高い曲げ剛性と靱性能が期待できる。さらに、遮水効果を有する。
そのため、本発明によれば、改良杭の本数(地盤改良率に関連)を低減でき、さらには改良杭をなくすようにすることもできる。
【0013】
図2は本発明の実験例を示す軟弱地盤上へ施工される盛土構造物の模式図、図3はその供試体の3点曲げ試験の様子を示す図、図4はその荷重(kN/m)に対する載荷点における鉛直変位を示す図、図5はその歪み(με)に対する載荷点における鉛直変位を示す図、図6はその供試体底面中央における引張変位(クラック幅)(mm)に対する載荷点における鉛直変位を示す図である。
【0014】
図2において、11は支持層、12は軟弱地盤、13は地盤改良杭、14は本発明にかかるセメント改良礫土にジオテキスタイルを用いた梁部材、15はその梁部材14上に構築された軌道、16はその軌道15を走行する鉄道車両である。
図3において、21,22は供試体の支持部、23は供試体へ荷重Fが印加される荷重印加部であり、線は、ジオテキスタイル敷設位置を示している。
【0015】
図4において、曲線Aは本発明にかかるジオテキスタイルを有する供試体の特性曲線であり、ジオテキスタイルのない供試体の特性曲線Bに比べると強い強度を維持していることが明らかである。
また、図5において、ジオテキスタイルの歪みは、ピーク強度発現直前に張力が発生(○印あり)しており、徐々に歪む(με)ことが明らかである。
【0016】
また、図6において、ジオテキスタイルを有する供試体の底面の変位Aは、ジオテキスタイルのない供試体の変位に比して小さいことが明らかである。
上記から、本発明にかかるセメント改良礫土にジオテキスタイルを用いた梁部材は、靱性能が増加し、多少の施工ムラがあってもこれを補償できることが明らかである。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の軟弱地盤上への盛土の構築方法及びその盛土構造物は、強度及び靱性能が向上した軟弱地盤上への盛土構造物として利用することができる。
【符号の説明】
【0018】
,12 軟弱地盤
,13 地盤改良杭
3 セメント改良礫土
4 ジオテキスタイル
5,14 梁部材
6 盛土
11 支持層
15 軌道
16 鉄道車両
21,22 支持部
23 荷重印加部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒度調整砕石をセメントで安定化処理したセメント改良礫土にジオテキスタイルを用いて、曲げ剛性と靱性能を向上させた梁部材を軟弱地盤上に敷設し、該梁部材上に盛土を構築することを特徴とする軟弱地盤上への盛土の構築方法。
【請求項2】
粒度調整砕石をセメントで安定化処理したセメント改良礫土にジオテキスタイルを用いて、曲げ剛性と靱性能を向上させた軟弱地盤上に敷設される梁部材と、該梁部材上に構築される盛土を具備することを特徴とする軟弱地盤上への盛土構造物。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−220108(P2011−220108A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149830(P2011−149830)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【分割の表示】特願2006−222282(P2006−222282)の分割
【原出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】