農用作業車両
【課題】
トラニオンアームを操作する走行変速レバーに変速時の負荷がかかりにくい構成として作業者の労力軽減を図ると共に、補助モータからの駆動力でトラニオンアームを操作することにより、機体の発進や停止がスムースに行える構成とする。
【解決手段】
トラニオンアーム24を駆動力で移動させる補助モータ33を設け、補助モータ33の回転を伝動する補助伝動軸34を設け、変速操作レバー22の傾斜角度を検出する角度センサ25を設け、角度センサ25からの信号を受けて補助モータ33の回転数を変更制御する制御装置39を設け、走行停止ペダル29の操作に連動して補助伝動軸34の回転を規制する回転規制手段37を設け、走行停止ペダル29の操作に連動してトラニオンアーム24を中立位置に移動させる連動部材38を設けて構成する。
トラニオンアームを操作する走行変速レバーに変速時の負荷がかかりにくい構成として作業者の労力軽減を図ると共に、補助モータからの駆動力でトラニオンアームを操作することにより、機体の発進や停止がスムースに行える構成とする。
【解決手段】
トラニオンアーム24を駆動力で移動させる補助モータ33を設け、補助モータ33の回転を伝動する補助伝動軸34を設け、変速操作レバー22の傾斜角度を検出する角度センサ25を設け、角度センサ25からの信号を受けて補助モータ33の回転数を変更制御する制御装置39を設け、走行停止ペダル29の操作に連動して補助伝動軸34の回転を規制する回転規制手段37を設け、走行停止ペダル29の操作に連動してトラニオンアーム24を中立位置に移動させる連動部材38を設けて構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、操作レバーの傾斜角度に対応してモータで変速調節を行なう油圧式無段変速装置(HST)を備えた苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術としては、特許文献1に開示されているように、走行変速レバーをガススプリングで付勢し、増速操作時の操作荷重を低下させると共に、中立位置への操作時には操作荷重を増加させる構成とし、作業者が増速操作を軽い力で行えると共に、中立位置には変速レバーの戻りが生じにくい構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−257229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来構成では、走行変速レバーを操作してトラニオンアームを移動させているため、変速レバーに変速時の抵抗がかかることには変わりが無く、作業時が長時間に及ぶと従来通り作業者に大きな負担がかかる問題がある。
【0005】
また、走行変速レバーの移動幅に対応して走行速度が変更される構成ではあるが、手作業では発進時や停止時に微細な速度の変更を行うことは難しく、機体の発進が停滞したり、機体を停止させたい位置から若干前後に停止位置がずれてしまったりする問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的とするもので、この目的達成のため、次のような技術的手段を講じた。
請求項1記載の本発明は、左右一対の前輪(10)及び後輪(11)を備えた走行車体(2)の後部に作業装置(4)を昇降リンク装置(3)を介して昇降可能に設け、該走行車体(2)に機体の走行速度及び前後進を変更する油圧式無段変速装置(23)を設け、該油圧式無段変速装置(23)のトラニオンアーム(24)を操作する変速操作レバー(22)を設け、該変速操作レバー(22)を中立位置に移動させる走行停止ペダル(29)を設け、前記後輪(11)の回転数を計測する後輪回転センサ(14)を設けた苗移植機において、前記トラニオンアーム(24)を駆動力で移動させる補助モータ(33)を設け、該補助モータ(33)の回転を伝動する補助伝動軸(34)を設け、前記変速操作レバー(22)の傾斜角度を検出する角度センサ(25)を設け、該角度センサ(25)からの信号を受けて補助モータ(33)の回転数を変更制御する制御装置(39)を設け、前記走行停止ペダル(29)の操作に連動して補助伝動軸(34)の回転を規制する回転規制手段(37)を設け、前記走行停止ペダル(29)の操作に連動してトラニオンアーム(24)を中立位置に移動させる連動部材(38)を設けたことを特徴とする苗移植機とした。
【0007】
上記構成により、油圧式無段変速装置(23)を制御する変速操作レバー(22)の前後方向の操作で、前後進中立位置から前方側に向けての高速前進状態と、後方側に向けての高速後進状態とに切替操作することができる。
【0008】
また、変速操作レバー(22)の操作傾斜角度を角度センサ(25)で検出することにより、検出された変速操作レバー(22)の傾斜角度に合わせて補助モータ(33)の回転数を変更してトラニオンアーム(24)を操作することができる。
【0009】
そして、走行停止ペダル(29)の踏み込み操作すると、該操作に連動して回転規制手段(38)が補助伝動軸(34)の回転を規制しながら連動部材(37)がトラニオンアーム(24)を中立位置に復帰させるので、走行停止ペダル(29)の操作で優先的に機体の走行を停止させることができる。
【0010】
請求項2記載の本発明は、前記作業装置(4)を下降させて直進を開始すると後輪回転センサ(14)が後輪(11)の回転数を検出し、圃場の一端から他端まで移動する間に検出した後輪(11)の回転数を制御装置(39)に発信して基準回転数を記録し、前記走行停止ペダル(29)を操作してトラニオンアーム(24)を中立位置に移動させると停止前の補助モータ(33)の回転数と停止時の後輪回転数を制御装置(39)に発信する構成とし、前記走行停止ペダル(29)が解除されると基準回転数と停止時の後輪回転数とを比較し、停止時の後輪回転数が基準回転数と略同じであれば停止状態を維持し、停止時の後輪回転数が基準回転数よりも少なければ補助モータ(33)を停止前と同じ回転数で回転させる信号を制御装置(39)から発信する構成としたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機とした。
【0011】
上記構成により、後輪回転センサ(14)で計測した車体が圃場の一端から他端まで移動する際の後輪(11)の基準回転数と走行停止ペダル(29)を操作して停止した時点での後輪(11)の回転数とを比較し、停止時の後輪(11)の回転数が基準回転数と略同じ場合は補助モータ(33)を変速操作レバー(22)が操作されるまで駆動しないことにより、走行停止ペダル(29)を解除すると同時に機体が移動することを防止できる。
【0012】
また、停止時の後輪(11)の回転数が基準回転数よりも少ない場合、走行停止ペダル(29)を解除すると制御装置(39)が補助モータ(33)を停止前と同じ回転数で回転を再開させてトラニオンアーム(24)を停止前の位置に戻す構成としたことにより、停止前の走行速度に自動復帰させることができる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、角度センサ(25)が検出した変速操作レバー(22)の傾斜角度に合わせて補助モータ(33)の回転数を変更して油圧式無段変速装置(23)のトラニオンアーム(24)を操作する構成としたことにより、変速操作レバー(22)を変速操作する抵抗が大幅に軽減されて作業者は変速操作レバー(22)を軽い力で操作することができるので、走行速度や前後進の変更が容易になり、作業能率が向上すると共に、作業者の労力が軽減される。
【0014】
また、補助モータ(33)の駆動力のよりトラニオンアーム(24)を操作することにより、油圧式無段変速装置(23)の切替を微細に行うことができるので、機体の発進や停止をスムースに行うことができ、作業能率が向上する。
【0015】
そして、走行停止ペダル(29)を踏込操作すると、回転規制手段(38)が補助伝動軸(34)の回転を規制すると共に、連動部材(37)がトラニオンアーム(24)を中立位置に戻すことにより、走行停止ペダル(29)を操作すると補助モータ(33)からの駆動力の供給が停止するため、補助モータ(33)が回転中であっても強制的にトラニオンアーム(24)を中立位置に戻すことができるので、機体が任意の位置で確実に停止する。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、走行車体(2)が圃場の一端から他端まで移動する際の後輪(11)の基準回転数と停止ペダルを操作して停止した時点での後輪(11)の回転数を比較することにより、苗の植付作業の途中で停止したか、あるいは圃場端で停止したかを判断することができるので、苗の植付作業の途中で停止しても走行停止ペダル(29)を操作すると停止前の走行速度に自動復帰するため、作業能率が向上する。
【0017】
また、作業を一行程分終了して圃場端で停止したと判断した場合は、走行停止ペダル(29)を解除しても変速操作レバー(22)を操作するまでは補助モータ(33)を駆動させないことにより、圃場端で走行停止ペダル(29)を解除すると同時に走行が再開されることが防止され、圃場端での旋回動作を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】苗移植機の側面図
【図2】苗移植機の平面図
【図3】変速操作レバーとブレーキペダルの操作連動機構を示す左側面図
【図4】変速操作レバーとブレーキペダルの操作連動機構を示す背面図
【図5】変速操作レバーとブレーキペダルの操作連動機構を示す右側面図
【図6】制御ブロック回路図
【図7】整地ロータの要部平面図
【図8】整地ロータの別構成例を示す要部平面図
【図9】苗移植機に装備した予備苗載せ台の側面図
【図10】予備苗載せ台の斜視図
【図11】予備苗載せ台の展開図
【図12】苗取り板の斜視図
【図13】苗取り板から苗タンクへの苗装填状態を示す斜視図
【図14】別構成例の苗載せ台の収納状態を示す平面図
【図15】別構成例の苗載せ台の展開状態を示す平面図
【図16】別構成例の苗載せ台の要部側面図
【図17】変速操作レバーの操作による走行速度の変化を示すフローチャート
【図18】ブレーキペダル操作による停止前速度復帰を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1及び図2は、農用作業車両の一例として4条植えの苗植付部を装備した乗用型田植機1を示すものである。
【0020】
走行車体2の略中央に駆動源であるエンジン20を搭載し、該エンジン20の回転動力をベルト伝動装置21及び油圧式無断変速装置(HST)23を介してミッションケ−ス12内の変速伝動装置(図示省略)に伝え、該変速伝動装置で減速された回転動力を左右の前輪10,10及び後輪11,11とに伝動する構成としている。
【0021】
該前輪10,10は左右の前輪ファイナルケース13,13にそれぞれ取り付けされ、後輪11,11はメインフレーム15の後端に支持された左右後輪ギヤケース18,18に車軸17を介してそれぞれ取り付ける。
【0022】
また、前記エンジン20の回転動力は、ミッションケース12内の差動ギヤ機構(図示省略)を介して左右両側の後輪ギヤケース18,18に亘って連結する後輪伝動軸18a、苗植付部への植付伝動軸26、及び施肥装置5へのPTO軸等を伝動するようになっている。
【0023】
前記エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、該エンジンカバー30の上方に運転席31が設置される。そして、該運転席31の前方にはフロントカバー32を設け、該フロントカバー32の上方に左右の前輪10,10を操舵するステアリングハンドル9を装備する。該フロントカバー32の内部にはリザーバタンク16を設け、該リザーバタンク16と油圧式無段変速装置23とをパイプ19で連結している。
【0024】
前記運転席31の後方側に設置された施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出装置57の繰出部61によって一定量づつ繰り出すものである。この肥料は施肥ホース62を介して植付条近傍に施肥する施肥ガイド62aまで誘導され、植付部4の下部側に設けられた溝切器62bによって形成された溝内に繰り出される。
【0025】
上記構成により、施肥装置5から繰り出された肥料は苗の植付位置近傍に確実に施肥されるので、苗が肥料不足により生育不良を起こすことが無く、苗の成長と収穫物の品質が安定する。
【0026】
前記施肥装置5の左右一側にはブロアモータ(図示省略)により空気の流れを強制的に作り出すブロア58を設け、該ブロア58で発生させた空気の流れがエアチャンバ59を経由して施肥ホース62に吹き込まれる構成とする。
【0027】
また、前記走行車体2の上側で且つエンジンカバー30及びフロントカバー32の下側には作業者が搭乗すると共に移動自在なフロア35を形成し、前記操縦席31の左右両側で且つフロア35の左右両端部に作業者が機体に搭乗する際の足場となる左右の補助ステップ28,28を強固に固着する。そして、該フロア35の前側で勝つ左右両側に、補充用の苗を複数積載する左右の予備苗載せ台45,45を設け、前記フロア35の操縦席31よりも後側で且つ左右両側部分に後上りに円弧状に傾斜した左右の後輪11,11が跳ね上げる泥の飛散を防止する左右の後輪フェンダ36,36を設ける。
【0028】
上記構成により、作業者は機体に搭乗する際、左右の補助ステップ28,28のどちらからでも機体に搭乗することができるので、乗り込みやすい側から乗り込むことができ、安全且つ軽い労力で搭乗できる。
【0029】
また、後輪フェンダ36,36を設けたことにより、作業者に泥土が飛散することを防止できるので、作業中に泥まみれになり不快感を覚えながら作業することがなく、作業に集中することにより作業能率が向上する。
【0030】
さらに、走行車体2の後部には、作業装置の一例として苗植付部4が平行リンク40,41、リンクベースフレーム42、縦リンク43等から構成される昇降リンク機構3を介して装着され、該苗植付部4と車体2との間には苗植付部4を上下に昇降する油圧昇降シリンダ46を装備している。
【0031】
該苗植付部4は、車体側のPTO軸から連動される植付伝動軸26を有すると共に、該植付伝動軸26から駆動力を受けて苗タンク51、苗繰出ベルト51b及び苗植付具52等を連動する伝動機構を内装した苗植付伝動ケース50を設けている。
【0032】
該苗植付伝動ケース50を主体として、苗植付伝動ケース50の上側にはマット状苗を載せて後側下部へ繰出す苗タンク51を左右方向へ往復移動可能に支持し、後側には楕円形状の植付軌跡に沿って昇降回転し、苗タンクの苗取出口部51aから分離保持する苗を圃場面に植え付ける苗植付具52を設けた構成としている。
【0033】
また、前記苗植付部4は、昇降リンク機構3に対する装着の前後方向に沿って配置するローリング軸44の周りに左右傾斜回動可能に設けて、ローリング制御可能に設けている。
【0034】
さらに、前記苗植付部4の下方位置には、圃場の泥面に接地して滑走しながら泥面を整地する中央のセンタフロート55と左右のサイドフロート56,56が設けられている。
そして、苗植付部4の前側には、圃場面を代掻きしながら整地する整地ロータ27を配設している。整地ロータ27は、前側で且つ左右方向中央部に位置するセンタロータ部27aと、後側で且つ左右両側に位置するサイドロータ部27b,27bから構成される。
【0035】
上記構成により、左右に摺動しながら苗を圃場に植え付ける苗植付部4の前側の圃場を整地ロータ27、センタフロート55及び左右のサイドフロート56,56で整地することにより、苗の植付深さを略均等にすることができるので、浅く植えられた苗が風や水流によって流されたり、過度に深く植えられた苗が日照不足や根腐りで枯れてしまうことが防止され、苗が存在しない欠株が減少して収穫量が安定する。
【0036】
また、苗植付部4をローリング軸44に沿って左右方向に傾斜回動可能に装着していることにより、圃場の傾斜に沿って機体が左右方向に傾斜するとこの傾斜に合わせて苗植付部4を左右方向に傾斜させることができるので、圃場面と苗植付部4が略平行姿勢となり、苗の植付深さを左右方向に亘って略均一にすることができる。
【0037】
そして、図1〜図5で示すように、前記フロントカバー32の上側で且つ左右一側に油圧式無段変速装置23を操作する変速操作レバー22を回動軸芯Q1を支点として前後方向に揺動操作可能に設ける。そして、該変速操作レバー22の下端部側には変速操作レバー22の操作に伴う傾斜角度を検出するポテンショメータ(角度センサ)25を設け、該ポテンショメータ25の検出角度に対応して発信される信号を受ける図6で示す制御装置39を配置する。
【0038】
なお、制御装置39は、図示はしていないが、一般的にはフロントカバー32の内部に設けるが、温度変化や大きな振動、夾雑物等の影響の無い場所であれば機体の何処に配置してもよい。
【0039】
そして、前記変速操作レバー22の前後方向への揺動操作量に対応してポテンショメータ25が制御装置39に前進、後進、加速及び減速を信号として発信し、この信号を受けて正転または逆転すると共に回転数が変化する正逆転自在且つ変速回転自在なアシストモータ33を前記油圧式無段変速装置23のトラニオンアーム24を回動操作自在に取り付ける。
【0040】
図17に示すように、変速操作レバー22を前後進中立位置から前側に操作すると、ポテンショメータ25が変速操作レバー22の角度を検出して制御装置39に前進信号を発信し、この信号を制御装置39が受けるとアシストモータ33が正転駆動してトラニオンアーム24を回動操作し、油圧式無段変速装置23を前進に切り替え、機体の前進を開始する。
【0041】
そして、変速操作レバー22を前側にさらに移動させると、変速操作レバー22の移動に伴う角度変化をポテンショメータ25が検出して制御装置39に前進加速信号を発信し、アシストモータ33を正転駆動させて油圧式無段変速装置23の出力を増大させて前進走行速度を加速させる。
【0042】
また、変速操作レバー22を前後進中立位置に向かって後側に操作すると、変速操作レバー22の移動に伴う角度変化をポテンショメータ25が検出して制御装置39に前進減速信号を発信し、アシストモータ33を逆転駆動させて油圧式無段変速装置23の出力を減少させ、前進走行速度を減速させる。
【0043】
逆に、変速操作レバー22を前後進中立位置から後側に操作すると、ポテンショメータ25が変速操作レバー22の角度を検出して制御装置39に後進信号を発信し、この信号を制御装置39が受けるとアシストモータ33が逆転駆動してトラニオンアーム24を回動操作し、油圧式無段変速装置23を後進に切り替え、機体の後進を開始する。
【0044】
そして、変速操作レバー22を後側にさらに移動させると、変速操作レバー22の移動に伴う角度変化をポテンショメータ25が検出して制御装置39に減速信号を発信し、アシストモータ33を逆転駆動させて油圧式無段変速装置23の出力を増大させて後進走行速度を加速させる。
【0045】
また、変速操作レバー22を前後進中立位置に向かって前側に操作すると、変速操作レバー22の移動に伴う角度変化をポテンショメータ25が検出して制御装置39に後進減速信号を発信し、アシストモータ33を正転駆動させて油圧式無段変速装置23の出力を減少させ、後進走行速度を減速させる。
【0046】
なお、前進及び後進のいずれの場合でも、変速操作レバー22を前後進中立位置に戻すと、ポテンショメータ25は変速操作レバー22が初期位置に戻ったことを検知して停止信号を制御装置39に発信し、アシストモータ33を正転または逆転駆動させてトラニオンアーム24を中立位置に戻し、機体の走行を停止させる。
【0047】
上記構成は、変速操作レバー22の操作による角度の変化をポテンショメータ25で検出し、制御装置39に信号を発信してアシストモータ33の回転方向及び回転数を変化させてトラニオンアーム24を操作する構成としたことにより、作業者は変速操作レバー22を操作する際に生じる抵抗をほぼ感じることが無くなるので、長時間の作業、あるいは頻繁に変速操作レバー22の操作をする場合でも腕に余分な負担がかからなくなり、作業者の労力が軽減される。
【0048】
また、ポテンショメータ25で変速操作レバー22の角度を細かく検出し、トラニオンアーム24を微細に操作することにより、発進時や停止時に構成部材の挙動による機体の揺れが生じない速度を設定することができるので、いっそう作業者は作業に集中することができ、作業能率が向上する。
【0049】
前記アシストモータ33は制御装置39の出力側にケーブル等を介して接続され、該アシストモータ33の出力軸には出力ギア33aを軸着する。そして、後述するブレーキペダル29側にアシストモータ33の回転を伝動する補助伝動シャフト34に軸着した減速ギア33bを該出力ギア33aと噛み合わせる。また、該減速ギア33bよりも機体内側の補助伝動シャフト34に上下回動自在な回動アーム34aを設け、該回動アーム34aの上下回動によりトラニオンアーム24を押し引きして油圧式無段変速装置23の出力を変更させるトラニオンロッド34bを回動アーム34aに設ける。
【0050】
さらに、補助伝動シャフト34は、減速ギア33bや回動アーム34aよりも機体内側に噛合クラッチ34cを介装し、スプリング34dによって常時クラッチ入方向に押圧しており、該補助伝動シャフト34を軸方向にスライドさせることにより入切する構成としている。
【0051】
また、前記フロントカバー32の下側で且つ左右一側には、変速操作レバー22を中立位置に移動させるブレーキペダル(走行停止ペダル)29を設ける。該ブレーキペダル29は回動軸芯Q2を支点として上下に回動自在に配置され、下方への踏込操作にすると、ブレーキペダル29の端部と変速操作レバー22を連動させる連動機構(図示省略)を動作させて変速操作レバー22を中立位置に移動させる。
【0052】
そして、前記ブレーキペダル29よりも機体前側に停止連動アーム47を配置し、該停止連動アーム47に第1昇降ロッド48aと第2昇降ロッド48bの上側端部を取り付ける。さらに、該第1昇降ロッド48aの下側端部には、第1昇降ロッド48aが上方に移動すると前記補助伝動シャフト34をクラッチ切方向にスライドさせるシフトアーム37aを設けた回転規制アーム37を上下回動自在に設ける。また、第2昇降ロッド48bの下側端部には、第2昇降ロッド48bが上方に移動すると補助伝動シャフト34の外周縁部に沿って溝部が嵌り込むと共に補助伝動シャフト34と一体回動する制御アーム34eを上方回動させる連動カム38を取り付ける。該制御アーム34eが連動カム38によって上方回動することにより、回動アーム34aが上方回動してトラニオンロッド34bをトラニオンアーム24が中立位置になるまで移動させる構成としている。
【0053】
なお、連動カム38は、少なくとも溝部の周辺に摩擦係数が高く且つ表面が平坦なゴム等の高分子化合物で構成する摩擦部材を取り付けておくと、補助伝動シャフト34の回転に強力な抵抗をかけて早期に停止させることができると共に、補助伝動シャフト34に抵抗をかけても傷付くことを防止できる。
【0054】
上記構成により、ブレーキペダル29を踏むと変速操作レバー22が中立位置に移動し、ポテンショメータ25は制御装置39に停止信号を発信するので、ブレーキペダル29を踏むとその場で停止するため、作業者は任意の位置で機体を停止させることができるので、圃場に大きな凹凸や落下物がある場合など、緊急停止する必要がある場合すぐに停止することができ、危機回避が行なえる。
【0055】
また、ブレーキペダル29を踏むと回動規制アーム37が補助伝動シャフト34をクラッチ切方向に移動させ、連動カム38が補助伝動シャフト34の回転を規制すると共に制御アーム34eを上方回動させることにより、補助伝動シャフト34の回転を停止させると共にトラニオンアーム24を中立位置に移動させることができるので、ブレーキペダル29を踏込操作するとトラニオンアーム24が確実に中立位置になり、機体がいっそう即座に停止する。
【0056】
また、泥等の汚れや経年劣化によりポテンショメータ25が誤検知をして、変速操作レバー22の操作を受け付けなくなった場合でも、ブレーキペダル29を踏込操作すれば強制的に機体の走行を停止させることができるので、機体が旋回位置や停止位置を越えることがなく、苗の植付作業が安定して行われる。
【0057】
前記左右の後輪11,11を取り付けた左右後輪ギヤケース18,18に、後輪11,11の回転数を検出する後輪回転センサ14がそれぞれ内装し、該後輪回転センサ14を制御装置39の入力側にケーブル等を用いて接続する。
【0058】
図18で示すように、前記苗植付部4を下降させ、苗を圃場に植え付けながら直進を開始すると、後輪回転センサ14が後輪11,11の回転数を検出し、圃場の一端から他端まで移動する間に検出した後輪の回転数を制御装置39に発信して基準回転数を記録する。また、ブレーキペダル29を踏込操作して前記トラニオンアーム24を中立位置に移動させると、停止前のアシストモータ33の回転数と停止時の後輪11の回転数を制御装置39に信号として発信する構成とする。そして、前記ブレーキペダル29をもう一度踏込操作して解除すると、制御装置39で基準回転数と停止時の後輪11の回転数が比較される。
【0059】
停止時の後輪11の回転数が基準回転数と同じまたは略同じであれば、圃場の一端から他端まで移動しており旋回動作を開始した、あるいは旋回動作中であると判断し、制御装置39に記憶されている停止前のアシストモータ33の回転数を消去して、作業者が新たに変速操作レバー22を操作した角度をポテンショメータ25で検出してアシストモータを駆動させ、トラニオンアーム24を操作して走行速度を再設定する。
【0060】
上記制御により、圃場端で苗補給や休憩のために機体を一時停止させ、作業を再開する際に、旋回途中で機体が高速で発進することを防止できるので、作業者は旋回動作に適した速度を再設定して次の植付条に合わせた旋回を行なえるため、苗の植付を略一直線に行なえる。
【0061】
逆に、停止時の後輪11の回転数が基準回転数よりも少なければ、苗の植付作業中に苗の補給等で機体を停止させていたと判断し、制御装置39に記憶された停止前のアシストモータ33の回転数を信号としてアシストモータ33に発進し、変速操作レバー22の操作の有無にかかわらず、中立位置にあるトラニオンアーム24を停止前の位置に移動させ、停止前の走行速度に復帰させる。
【0062】
上記制御により、苗の植付作業の途中で一時停止させた機体の走行を再開すると走行停止前の速度に自動的に復帰することができるので、作業者は変速操作レバー22を操作して走行停止前の苗の植付に最適な走行速度を再度調整する必要が無く、苗の植付を能率的に行なえる。
【0063】
なお、停止前の走行速度に復帰させる際、ブレーキペダル29の解除と同時に高速化すると構成部材の挙動により機体が揺れることがあるので、ごく低速で前進する発進速度に一端トラニオンアーム24を切り替えた後、徐々に高速化する方向にトラニオンアーム24を自動的に移動させる制御を制御装置39で設定可能とすると、作業者は機体の揺れで不快感を覚えたり酔ったりすることがなく、作業に集中することができ、作業能率が向上する。
【0064】
次に、別実施例の田植機について説明する。
変速操作レバー22にこれの操作量を検出するポテンショメータ25を設け、HSTのトラニオンアーム24の作動をアシストモータ33により作動させる構成で、かつ、電装トラブル時等の安全性確保のため、ブレーキペダルを踏むと、トラニオンアーム24を中立位置に戻すように連動構成してある構成のものにおいて、所定の回転数に設定された設定回転数よりも、検出される旋回内側の後輪の回転数が大きくなると、旋回内側のサイドクラッチを切りにし、また、設定回転数よりも検出される旋回内側の後輪の回転数が小さくなったときは、旋回内側のサイドクラッチを強制的に入りにすることによって、旋回内側の後輪を所定の回転量だけ強制駆動する旋回制御(所謂Zターン制御)と連動制御する構成としてあり、旋回時は減速し、植付開始後に加速するようにして、元の設定速度に復帰させるように構成することを特徴としている。
【0065】
上記構成により、苗補給等でブレーキペダルを踏み込んで機体を停止した場合、後輪回転センサの検出値から植付行程の途中と判断した場合のみ、元のスピードに復帰させるように構成する。これによれば、変速操作が不要となり、ハンドル操作のみで作業が可能となる。
【0066】
また、上記構成において、ブレーキペダルのスタートスイッチの回路にモータの電源を入り切りするリレー回路を組み込み、ブレーキペダルを踏むと、強制的にモータの作動をOFFにする構成とすることで、より安全性が確保される。
【0067】
図7に示す実施例は、苗植付部の前側に圃場面を代掻きしながら整地する整地ロータ27を配設したものにおいて、サイドロータ27b,27bの前側中央に位置するセンタロータ27aの左右両側にレーキ63L,63Rを設けた構成である。
【0068】
該センタロータ27aにレーキ63L,63Rを設けることで、センタフロート55とサイドフロート56,56間に所定の隙間を確保することができるため、大量の夾雑物がある場合でも夾雑物が隙間を通り抜けることが可能となり、苗の植付姿勢を乱す不具合を解消することができる。
【0069】
また、該レーキ63L,63Rは、図8に示すように、後方に向かうほど機体外側に広がる防波板状の舟底形状とすることにより、夾雑物を左右のサイドロータ27b,27b側に押し流すことができ、センタフロート55とサイドフロート56,56間に夾雑物が詰まるのを防止することができるので、センタフロート55とサイドフロート56,56の間に夾雑物が溜まり込み、センタフロート55及びサイドフロート56,56が持ち上げられて整地機能及び苗植付部4の上下位置の認識機能を果たせなくなることが防止される。
【0070】
次に予備苗載せ台45の構成例について説明する。
例えば、図9〜図11に示すように、3段の予備苗載せ台(以下単に苗枠と云う)A1,A2,A3において、各段A1,A2,A3は苗1枚分の長さとし、上、下段の苗枠A1、A3は表裏共に使用できるように構成し、上段A1と中段A2を前側において連結部材B1で連結し、中段A2と下段A3を後側において連結部材B2で連結する。
【0071】
そして、連結部材B1,B2は苗1/2枚分の長さとし、展開したとき苗枠の一部として使用できる構成とする。上段A1を前側へ、下段A3を後側へ開き、図11に示すとおりに一直線上に延ばした際、各段の苗枠A1、A2,A3及び連結部材B1,B2にて構成される一連の苗枠が苗4枚分の長さになる構成とする。
【0072】
上記構成により、3段の苗枠で4枚分の苗を載置することができるので、少ないスペースでより長い苗載せ台を構成することができる。
図12は苗取り板の構成例を示すもので、長方形の苗取り板65において、短辺部分から長辺部分に亘ってL字型の把持部66を形成する。把持部66には、長辺部分を若干短くして断面矩形状のカット面66aを形成する。そして、苗取り板65の把持部のない他の2辺には鋭利な掬い面65a,65bを形成する。
【0073】
上記構成により、長辺の掬い面65a、短辺の掬い面65bのどちら側からでも苗を掬い取ることができるので、作業者は作業のし易い方から苗を取ることができ、作業能率が向上する。
【0074】
また、把持部の一部にカット面を形成することで、図13に示すように、苗を苗タンクに装填する際、そのカット面66aが苗タンク51のフェンス51f上端に当たり、その当たった衝撃を利用して苗を苗タンクへ勢い良く滑り込ませることができる。
【0075】
さらに、予備苗載せ台の別実施例について説明すると、図14〜図16に示すように、支柱67、苗枠フレーム68上に架設された予備苗載せ台45は、数個に分割されて6枚の苗枠板A1〜A6からなり、ピ二オンフレーム69に架設されたピニオン70と各苗枠板A1〜A6に形成されたラック71を介して伸縮スライド自在に構成されている。
【0076】
上記構成により、図14の収縮(収納)状態から一方側の苗枠板A1を前方に引くだけで、または、他方側の苗枠板A6を後方へ引くだけで図15に示す伸長(展開)状態に拡げることが可能で、多くの苗箱を載せることができる。なお、72は苗送りローラであり、ローラフレーム73に架設している。
【符号の説明】
【0077】
4 作業装置(苗植付部)
10 前輪
11 後輪
14 後輪回転センサ
22 走行変速レバー
23 油圧式無段変速装置(HST)
24 トラニオンアーム
25 角度センサ(ポテンショメータ)
29 走行停止ペダル
33 補助モータ(アシストモータ)
34 補助伝動軸
37 回転規制手段
38 連動部材
39 制御装置
【技術分野】
【0001】
この発明は、操作レバーの傾斜角度に対応してモータで変速調節を行なう油圧式無段変速装置(HST)を備えた苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術としては、特許文献1に開示されているように、走行変速レバーをガススプリングで付勢し、増速操作時の操作荷重を低下させると共に、中立位置への操作時には操作荷重を増加させる構成とし、作業者が増速操作を軽い力で行えると共に、中立位置には変速レバーの戻りが生じにくい構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−257229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来構成では、走行変速レバーを操作してトラニオンアームを移動させているため、変速レバーに変速時の抵抗がかかることには変わりが無く、作業時が長時間に及ぶと従来通り作業者に大きな負担がかかる問題がある。
【0005】
また、走行変速レバーの移動幅に対応して走行速度が変更される構成ではあるが、手作業では発進時や停止時に微細な速度の変更を行うことは難しく、機体の発進が停滞したり、機体を停止させたい位置から若干前後に停止位置がずれてしまったりする問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的とするもので、この目的達成のため、次のような技術的手段を講じた。
請求項1記載の本発明は、左右一対の前輪(10)及び後輪(11)を備えた走行車体(2)の後部に作業装置(4)を昇降リンク装置(3)を介して昇降可能に設け、該走行車体(2)に機体の走行速度及び前後進を変更する油圧式無段変速装置(23)を設け、該油圧式無段変速装置(23)のトラニオンアーム(24)を操作する変速操作レバー(22)を設け、該変速操作レバー(22)を中立位置に移動させる走行停止ペダル(29)を設け、前記後輪(11)の回転数を計測する後輪回転センサ(14)を設けた苗移植機において、前記トラニオンアーム(24)を駆動力で移動させる補助モータ(33)を設け、該補助モータ(33)の回転を伝動する補助伝動軸(34)を設け、前記変速操作レバー(22)の傾斜角度を検出する角度センサ(25)を設け、該角度センサ(25)からの信号を受けて補助モータ(33)の回転数を変更制御する制御装置(39)を設け、前記走行停止ペダル(29)の操作に連動して補助伝動軸(34)の回転を規制する回転規制手段(37)を設け、前記走行停止ペダル(29)の操作に連動してトラニオンアーム(24)を中立位置に移動させる連動部材(38)を設けたことを特徴とする苗移植機とした。
【0007】
上記構成により、油圧式無段変速装置(23)を制御する変速操作レバー(22)の前後方向の操作で、前後進中立位置から前方側に向けての高速前進状態と、後方側に向けての高速後進状態とに切替操作することができる。
【0008】
また、変速操作レバー(22)の操作傾斜角度を角度センサ(25)で検出することにより、検出された変速操作レバー(22)の傾斜角度に合わせて補助モータ(33)の回転数を変更してトラニオンアーム(24)を操作することができる。
【0009】
そして、走行停止ペダル(29)の踏み込み操作すると、該操作に連動して回転規制手段(38)が補助伝動軸(34)の回転を規制しながら連動部材(37)がトラニオンアーム(24)を中立位置に復帰させるので、走行停止ペダル(29)の操作で優先的に機体の走行を停止させることができる。
【0010】
請求項2記載の本発明は、前記作業装置(4)を下降させて直進を開始すると後輪回転センサ(14)が後輪(11)の回転数を検出し、圃場の一端から他端まで移動する間に検出した後輪(11)の回転数を制御装置(39)に発信して基準回転数を記録し、前記走行停止ペダル(29)を操作してトラニオンアーム(24)を中立位置に移動させると停止前の補助モータ(33)の回転数と停止時の後輪回転数を制御装置(39)に発信する構成とし、前記走行停止ペダル(29)が解除されると基準回転数と停止時の後輪回転数とを比較し、停止時の後輪回転数が基準回転数と略同じであれば停止状態を維持し、停止時の後輪回転数が基準回転数よりも少なければ補助モータ(33)を停止前と同じ回転数で回転させる信号を制御装置(39)から発信する構成としたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機とした。
【0011】
上記構成により、後輪回転センサ(14)で計測した車体が圃場の一端から他端まで移動する際の後輪(11)の基準回転数と走行停止ペダル(29)を操作して停止した時点での後輪(11)の回転数とを比較し、停止時の後輪(11)の回転数が基準回転数と略同じ場合は補助モータ(33)を変速操作レバー(22)が操作されるまで駆動しないことにより、走行停止ペダル(29)を解除すると同時に機体が移動することを防止できる。
【0012】
また、停止時の後輪(11)の回転数が基準回転数よりも少ない場合、走行停止ペダル(29)を解除すると制御装置(39)が補助モータ(33)を停止前と同じ回転数で回転を再開させてトラニオンアーム(24)を停止前の位置に戻す構成としたことにより、停止前の走行速度に自動復帰させることができる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、角度センサ(25)が検出した変速操作レバー(22)の傾斜角度に合わせて補助モータ(33)の回転数を変更して油圧式無段変速装置(23)のトラニオンアーム(24)を操作する構成としたことにより、変速操作レバー(22)を変速操作する抵抗が大幅に軽減されて作業者は変速操作レバー(22)を軽い力で操作することができるので、走行速度や前後進の変更が容易になり、作業能率が向上すると共に、作業者の労力が軽減される。
【0014】
また、補助モータ(33)の駆動力のよりトラニオンアーム(24)を操作することにより、油圧式無段変速装置(23)の切替を微細に行うことができるので、機体の発進や停止をスムースに行うことができ、作業能率が向上する。
【0015】
そして、走行停止ペダル(29)を踏込操作すると、回転規制手段(38)が補助伝動軸(34)の回転を規制すると共に、連動部材(37)がトラニオンアーム(24)を中立位置に戻すことにより、走行停止ペダル(29)を操作すると補助モータ(33)からの駆動力の供給が停止するため、補助モータ(33)が回転中であっても強制的にトラニオンアーム(24)を中立位置に戻すことができるので、機体が任意の位置で確実に停止する。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、走行車体(2)が圃場の一端から他端まで移動する際の後輪(11)の基準回転数と停止ペダルを操作して停止した時点での後輪(11)の回転数を比較することにより、苗の植付作業の途中で停止したか、あるいは圃場端で停止したかを判断することができるので、苗の植付作業の途中で停止しても走行停止ペダル(29)を操作すると停止前の走行速度に自動復帰するため、作業能率が向上する。
【0017】
また、作業を一行程分終了して圃場端で停止したと判断した場合は、走行停止ペダル(29)を解除しても変速操作レバー(22)を操作するまでは補助モータ(33)を駆動させないことにより、圃場端で走行停止ペダル(29)を解除すると同時に走行が再開されることが防止され、圃場端での旋回動作を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】苗移植機の側面図
【図2】苗移植機の平面図
【図3】変速操作レバーとブレーキペダルの操作連動機構を示す左側面図
【図4】変速操作レバーとブレーキペダルの操作連動機構を示す背面図
【図5】変速操作レバーとブレーキペダルの操作連動機構を示す右側面図
【図6】制御ブロック回路図
【図7】整地ロータの要部平面図
【図8】整地ロータの別構成例を示す要部平面図
【図9】苗移植機に装備した予備苗載せ台の側面図
【図10】予備苗載せ台の斜視図
【図11】予備苗載せ台の展開図
【図12】苗取り板の斜視図
【図13】苗取り板から苗タンクへの苗装填状態を示す斜視図
【図14】別構成例の苗載せ台の収納状態を示す平面図
【図15】別構成例の苗載せ台の展開状態を示す平面図
【図16】別構成例の苗載せ台の要部側面図
【図17】変速操作レバーの操作による走行速度の変化を示すフローチャート
【図18】ブレーキペダル操作による停止前速度復帰を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1及び図2は、農用作業車両の一例として4条植えの苗植付部を装備した乗用型田植機1を示すものである。
【0020】
走行車体2の略中央に駆動源であるエンジン20を搭載し、該エンジン20の回転動力をベルト伝動装置21及び油圧式無断変速装置(HST)23を介してミッションケ−ス12内の変速伝動装置(図示省略)に伝え、該変速伝動装置で減速された回転動力を左右の前輪10,10及び後輪11,11とに伝動する構成としている。
【0021】
該前輪10,10は左右の前輪ファイナルケース13,13にそれぞれ取り付けされ、後輪11,11はメインフレーム15の後端に支持された左右後輪ギヤケース18,18に車軸17を介してそれぞれ取り付ける。
【0022】
また、前記エンジン20の回転動力は、ミッションケース12内の差動ギヤ機構(図示省略)を介して左右両側の後輪ギヤケース18,18に亘って連結する後輪伝動軸18a、苗植付部への植付伝動軸26、及び施肥装置5へのPTO軸等を伝動するようになっている。
【0023】
前記エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、該エンジンカバー30の上方に運転席31が設置される。そして、該運転席31の前方にはフロントカバー32を設け、該フロントカバー32の上方に左右の前輪10,10を操舵するステアリングハンドル9を装備する。該フロントカバー32の内部にはリザーバタンク16を設け、該リザーバタンク16と油圧式無段変速装置23とをパイプ19で連結している。
【0024】
前記運転席31の後方側に設置された施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出装置57の繰出部61によって一定量づつ繰り出すものである。この肥料は施肥ホース62を介して植付条近傍に施肥する施肥ガイド62aまで誘導され、植付部4の下部側に設けられた溝切器62bによって形成された溝内に繰り出される。
【0025】
上記構成により、施肥装置5から繰り出された肥料は苗の植付位置近傍に確実に施肥されるので、苗が肥料不足により生育不良を起こすことが無く、苗の成長と収穫物の品質が安定する。
【0026】
前記施肥装置5の左右一側にはブロアモータ(図示省略)により空気の流れを強制的に作り出すブロア58を設け、該ブロア58で発生させた空気の流れがエアチャンバ59を経由して施肥ホース62に吹き込まれる構成とする。
【0027】
また、前記走行車体2の上側で且つエンジンカバー30及びフロントカバー32の下側には作業者が搭乗すると共に移動自在なフロア35を形成し、前記操縦席31の左右両側で且つフロア35の左右両端部に作業者が機体に搭乗する際の足場となる左右の補助ステップ28,28を強固に固着する。そして、該フロア35の前側で勝つ左右両側に、補充用の苗を複数積載する左右の予備苗載せ台45,45を設け、前記フロア35の操縦席31よりも後側で且つ左右両側部分に後上りに円弧状に傾斜した左右の後輪11,11が跳ね上げる泥の飛散を防止する左右の後輪フェンダ36,36を設ける。
【0028】
上記構成により、作業者は機体に搭乗する際、左右の補助ステップ28,28のどちらからでも機体に搭乗することができるので、乗り込みやすい側から乗り込むことができ、安全且つ軽い労力で搭乗できる。
【0029】
また、後輪フェンダ36,36を設けたことにより、作業者に泥土が飛散することを防止できるので、作業中に泥まみれになり不快感を覚えながら作業することがなく、作業に集中することにより作業能率が向上する。
【0030】
さらに、走行車体2の後部には、作業装置の一例として苗植付部4が平行リンク40,41、リンクベースフレーム42、縦リンク43等から構成される昇降リンク機構3を介して装着され、該苗植付部4と車体2との間には苗植付部4を上下に昇降する油圧昇降シリンダ46を装備している。
【0031】
該苗植付部4は、車体側のPTO軸から連動される植付伝動軸26を有すると共に、該植付伝動軸26から駆動力を受けて苗タンク51、苗繰出ベルト51b及び苗植付具52等を連動する伝動機構を内装した苗植付伝動ケース50を設けている。
【0032】
該苗植付伝動ケース50を主体として、苗植付伝動ケース50の上側にはマット状苗を載せて後側下部へ繰出す苗タンク51を左右方向へ往復移動可能に支持し、後側には楕円形状の植付軌跡に沿って昇降回転し、苗タンクの苗取出口部51aから分離保持する苗を圃場面に植え付ける苗植付具52を設けた構成としている。
【0033】
また、前記苗植付部4は、昇降リンク機構3に対する装着の前後方向に沿って配置するローリング軸44の周りに左右傾斜回動可能に設けて、ローリング制御可能に設けている。
【0034】
さらに、前記苗植付部4の下方位置には、圃場の泥面に接地して滑走しながら泥面を整地する中央のセンタフロート55と左右のサイドフロート56,56が設けられている。
そして、苗植付部4の前側には、圃場面を代掻きしながら整地する整地ロータ27を配設している。整地ロータ27は、前側で且つ左右方向中央部に位置するセンタロータ部27aと、後側で且つ左右両側に位置するサイドロータ部27b,27bから構成される。
【0035】
上記構成により、左右に摺動しながら苗を圃場に植え付ける苗植付部4の前側の圃場を整地ロータ27、センタフロート55及び左右のサイドフロート56,56で整地することにより、苗の植付深さを略均等にすることができるので、浅く植えられた苗が風や水流によって流されたり、過度に深く植えられた苗が日照不足や根腐りで枯れてしまうことが防止され、苗が存在しない欠株が減少して収穫量が安定する。
【0036】
また、苗植付部4をローリング軸44に沿って左右方向に傾斜回動可能に装着していることにより、圃場の傾斜に沿って機体が左右方向に傾斜するとこの傾斜に合わせて苗植付部4を左右方向に傾斜させることができるので、圃場面と苗植付部4が略平行姿勢となり、苗の植付深さを左右方向に亘って略均一にすることができる。
【0037】
そして、図1〜図5で示すように、前記フロントカバー32の上側で且つ左右一側に油圧式無段変速装置23を操作する変速操作レバー22を回動軸芯Q1を支点として前後方向に揺動操作可能に設ける。そして、該変速操作レバー22の下端部側には変速操作レバー22の操作に伴う傾斜角度を検出するポテンショメータ(角度センサ)25を設け、該ポテンショメータ25の検出角度に対応して発信される信号を受ける図6で示す制御装置39を配置する。
【0038】
なお、制御装置39は、図示はしていないが、一般的にはフロントカバー32の内部に設けるが、温度変化や大きな振動、夾雑物等の影響の無い場所であれば機体の何処に配置してもよい。
【0039】
そして、前記変速操作レバー22の前後方向への揺動操作量に対応してポテンショメータ25が制御装置39に前進、後進、加速及び減速を信号として発信し、この信号を受けて正転または逆転すると共に回転数が変化する正逆転自在且つ変速回転自在なアシストモータ33を前記油圧式無段変速装置23のトラニオンアーム24を回動操作自在に取り付ける。
【0040】
図17に示すように、変速操作レバー22を前後進中立位置から前側に操作すると、ポテンショメータ25が変速操作レバー22の角度を検出して制御装置39に前進信号を発信し、この信号を制御装置39が受けるとアシストモータ33が正転駆動してトラニオンアーム24を回動操作し、油圧式無段変速装置23を前進に切り替え、機体の前進を開始する。
【0041】
そして、変速操作レバー22を前側にさらに移動させると、変速操作レバー22の移動に伴う角度変化をポテンショメータ25が検出して制御装置39に前進加速信号を発信し、アシストモータ33を正転駆動させて油圧式無段変速装置23の出力を増大させて前進走行速度を加速させる。
【0042】
また、変速操作レバー22を前後進中立位置に向かって後側に操作すると、変速操作レバー22の移動に伴う角度変化をポテンショメータ25が検出して制御装置39に前進減速信号を発信し、アシストモータ33を逆転駆動させて油圧式無段変速装置23の出力を減少させ、前進走行速度を減速させる。
【0043】
逆に、変速操作レバー22を前後進中立位置から後側に操作すると、ポテンショメータ25が変速操作レバー22の角度を検出して制御装置39に後進信号を発信し、この信号を制御装置39が受けるとアシストモータ33が逆転駆動してトラニオンアーム24を回動操作し、油圧式無段変速装置23を後進に切り替え、機体の後進を開始する。
【0044】
そして、変速操作レバー22を後側にさらに移動させると、変速操作レバー22の移動に伴う角度変化をポテンショメータ25が検出して制御装置39に減速信号を発信し、アシストモータ33を逆転駆動させて油圧式無段変速装置23の出力を増大させて後進走行速度を加速させる。
【0045】
また、変速操作レバー22を前後進中立位置に向かって前側に操作すると、変速操作レバー22の移動に伴う角度変化をポテンショメータ25が検出して制御装置39に後進減速信号を発信し、アシストモータ33を正転駆動させて油圧式無段変速装置23の出力を減少させ、後進走行速度を減速させる。
【0046】
なお、前進及び後進のいずれの場合でも、変速操作レバー22を前後進中立位置に戻すと、ポテンショメータ25は変速操作レバー22が初期位置に戻ったことを検知して停止信号を制御装置39に発信し、アシストモータ33を正転または逆転駆動させてトラニオンアーム24を中立位置に戻し、機体の走行を停止させる。
【0047】
上記構成は、変速操作レバー22の操作による角度の変化をポテンショメータ25で検出し、制御装置39に信号を発信してアシストモータ33の回転方向及び回転数を変化させてトラニオンアーム24を操作する構成としたことにより、作業者は変速操作レバー22を操作する際に生じる抵抗をほぼ感じることが無くなるので、長時間の作業、あるいは頻繁に変速操作レバー22の操作をする場合でも腕に余分な負担がかからなくなり、作業者の労力が軽減される。
【0048】
また、ポテンショメータ25で変速操作レバー22の角度を細かく検出し、トラニオンアーム24を微細に操作することにより、発進時や停止時に構成部材の挙動による機体の揺れが生じない速度を設定することができるので、いっそう作業者は作業に集中することができ、作業能率が向上する。
【0049】
前記アシストモータ33は制御装置39の出力側にケーブル等を介して接続され、該アシストモータ33の出力軸には出力ギア33aを軸着する。そして、後述するブレーキペダル29側にアシストモータ33の回転を伝動する補助伝動シャフト34に軸着した減速ギア33bを該出力ギア33aと噛み合わせる。また、該減速ギア33bよりも機体内側の補助伝動シャフト34に上下回動自在な回動アーム34aを設け、該回動アーム34aの上下回動によりトラニオンアーム24を押し引きして油圧式無段変速装置23の出力を変更させるトラニオンロッド34bを回動アーム34aに設ける。
【0050】
さらに、補助伝動シャフト34は、減速ギア33bや回動アーム34aよりも機体内側に噛合クラッチ34cを介装し、スプリング34dによって常時クラッチ入方向に押圧しており、該補助伝動シャフト34を軸方向にスライドさせることにより入切する構成としている。
【0051】
また、前記フロントカバー32の下側で且つ左右一側には、変速操作レバー22を中立位置に移動させるブレーキペダル(走行停止ペダル)29を設ける。該ブレーキペダル29は回動軸芯Q2を支点として上下に回動自在に配置され、下方への踏込操作にすると、ブレーキペダル29の端部と変速操作レバー22を連動させる連動機構(図示省略)を動作させて変速操作レバー22を中立位置に移動させる。
【0052】
そして、前記ブレーキペダル29よりも機体前側に停止連動アーム47を配置し、該停止連動アーム47に第1昇降ロッド48aと第2昇降ロッド48bの上側端部を取り付ける。さらに、該第1昇降ロッド48aの下側端部には、第1昇降ロッド48aが上方に移動すると前記補助伝動シャフト34をクラッチ切方向にスライドさせるシフトアーム37aを設けた回転規制アーム37を上下回動自在に設ける。また、第2昇降ロッド48bの下側端部には、第2昇降ロッド48bが上方に移動すると補助伝動シャフト34の外周縁部に沿って溝部が嵌り込むと共に補助伝動シャフト34と一体回動する制御アーム34eを上方回動させる連動カム38を取り付ける。該制御アーム34eが連動カム38によって上方回動することにより、回動アーム34aが上方回動してトラニオンロッド34bをトラニオンアーム24が中立位置になるまで移動させる構成としている。
【0053】
なお、連動カム38は、少なくとも溝部の周辺に摩擦係数が高く且つ表面が平坦なゴム等の高分子化合物で構成する摩擦部材を取り付けておくと、補助伝動シャフト34の回転に強力な抵抗をかけて早期に停止させることができると共に、補助伝動シャフト34に抵抗をかけても傷付くことを防止できる。
【0054】
上記構成により、ブレーキペダル29を踏むと変速操作レバー22が中立位置に移動し、ポテンショメータ25は制御装置39に停止信号を発信するので、ブレーキペダル29を踏むとその場で停止するため、作業者は任意の位置で機体を停止させることができるので、圃場に大きな凹凸や落下物がある場合など、緊急停止する必要がある場合すぐに停止することができ、危機回避が行なえる。
【0055】
また、ブレーキペダル29を踏むと回動規制アーム37が補助伝動シャフト34をクラッチ切方向に移動させ、連動カム38が補助伝動シャフト34の回転を規制すると共に制御アーム34eを上方回動させることにより、補助伝動シャフト34の回転を停止させると共にトラニオンアーム24を中立位置に移動させることができるので、ブレーキペダル29を踏込操作するとトラニオンアーム24が確実に中立位置になり、機体がいっそう即座に停止する。
【0056】
また、泥等の汚れや経年劣化によりポテンショメータ25が誤検知をして、変速操作レバー22の操作を受け付けなくなった場合でも、ブレーキペダル29を踏込操作すれば強制的に機体の走行を停止させることができるので、機体が旋回位置や停止位置を越えることがなく、苗の植付作業が安定して行われる。
【0057】
前記左右の後輪11,11を取り付けた左右後輪ギヤケース18,18に、後輪11,11の回転数を検出する後輪回転センサ14がそれぞれ内装し、該後輪回転センサ14を制御装置39の入力側にケーブル等を用いて接続する。
【0058】
図18で示すように、前記苗植付部4を下降させ、苗を圃場に植え付けながら直進を開始すると、後輪回転センサ14が後輪11,11の回転数を検出し、圃場の一端から他端まで移動する間に検出した後輪の回転数を制御装置39に発信して基準回転数を記録する。また、ブレーキペダル29を踏込操作して前記トラニオンアーム24を中立位置に移動させると、停止前のアシストモータ33の回転数と停止時の後輪11の回転数を制御装置39に信号として発信する構成とする。そして、前記ブレーキペダル29をもう一度踏込操作して解除すると、制御装置39で基準回転数と停止時の後輪11の回転数が比較される。
【0059】
停止時の後輪11の回転数が基準回転数と同じまたは略同じであれば、圃場の一端から他端まで移動しており旋回動作を開始した、あるいは旋回動作中であると判断し、制御装置39に記憶されている停止前のアシストモータ33の回転数を消去して、作業者が新たに変速操作レバー22を操作した角度をポテンショメータ25で検出してアシストモータを駆動させ、トラニオンアーム24を操作して走行速度を再設定する。
【0060】
上記制御により、圃場端で苗補給や休憩のために機体を一時停止させ、作業を再開する際に、旋回途中で機体が高速で発進することを防止できるので、作業者は旋回動作に適した速度を再設定して次の植付条に合わせた旋回を行なえるため、苗の植付を略一直線に行なえる。
【0061】
逆に、停止時の後輪11の回転数が基準回転数よりも少なければ、苗の植付作業中に苗の補給等で機体を停止させていたと判断し、制御装置39に記憶された停止前のアシストモータ33の回転数を信号としてアシストモータ33に発進し、変速操作レバー22の操作の有無にかかわらず、中立位置にあるトラニオンアーム24を停止前の位置に移動させ、停止前の走行速度に復帰させる。
【0062】
上記制御により、苗の植付作業の途中で一時停止させた機体の走行を再開すると走行停止前の速度に自動的に復帰することができるので、作業者は変速操作レバー22を操作して走行停止前の苗の植付に最適な走行速度を再度調整する必要が無く、苗の植付を能率的に行なえる。
【0063】
なお、停止前の走行速度に復帰させる際、ブレーキペダル29の解除と同時に高速化すると構成部材の挙動により機体が揺れることがあるので、ごく低速で前進する発進速度に一端トラニオンアーム24を切り替えた後、徐々に高速化する方向にトラニオンアーム24を自動的に移動させる制御を制御装置39で設定可能とすると、作業者は機体の揺れで不快感を覚えたり酔ったりすることがなく、作業に集中することができ、作業能率が向上する。
【0064】
次に、別実施例の田植機について説明する。
変速操作レバー22にこれの操作量を検出するポテンショメータ25を設け、HSTのトラニオンアーム24の作動をアシストモータ33により作動させる構成で、かつ、電装トラブル時等の安全性確保のため、ブレーキペダルを踏むと、トラニオンアーム24を中立位置に戻すように連動構成してある構成のものにおいて、所定の回転数に設定された設定回転数よりも、検出される旋回内側の後輪の回転数が大きくなると、旋回内側のサイドクラッチを切りにし、また、設定回転数よりも検出される旋回内側の後輪の回転数が小さくなったときは、旋回内側のサイドクラッチを強制的に入りにすることによって、旋回内側の後輪を所定の回転量だけ強制駆動する旋回制御(所謂Zターン制御)と連動制御する構成としてあり、旋回時は減速し、植付開始後に加速するようにして、元の設定速度に復帰させるように構成することを特徴としている。
【0065】
上記構成により、苗補給等でブレーキペダルを踏み込んで機体を停止した場合、後輪回転センサの検出値から植付行程の途中と判断した場合のみ、元のスピードに復帰させるように構成する。これによれば、変速操作が不要となり、ハンドル操作のみで作業が可能となる。
【0066】
また、上記構成において、ブレーキペダルのスタートスイッチの回路にモータの電源を入り切りするリレー回路を組み込み、ブレーキペダルを踏むと、強制的にモータの作動をOFFにする構成とすることで、より安全性が確保される。
【0067】
図7に示す実施例は、苗植付部の前側に圃場面を代掻きしながら整地する整地ロータ27を配設したものにおいて、サイドロータ27b,27bの前側中央に位置するセンタロータ27aの左右両側にレーキ63L,63Rを設けた構成である。
【0068】
該センタロータ27aにレーキ63L,63Rを設けることで、センタフロート55とサイドフロート56,56間に所定の隙間を確保することができるため、大量の夾雑物がある場合でも夾雑物が隙間を通り抜けることが可能となり、苗の植付姿勢を乱す不具合を解消することができる。
【0069】
また、該レーキ63L,63Rは、図8に示すように、後方に向かうほど機体外側に広がる防波板状の舟底形状とすることにより、夾雑物を左右のサイドロータ27b,27b側に押し流すことができ、センタフロート55とサイドフロート56,56間に夾雑物が詰まるのを防止することができるので、センタフロート55とサイドフロート56,56の間に夾雑物が溜まり込み、センタフロート55及びサイドフロート56,56が持ち上げられて整地機能及び苗植付部4の上下位置の認識機能を果たせなくなることが防止される。
【0070】
次に予備苗載せ台45の構成例について説明する。
例えば、図9〜図11に示すように、3段の予備苗載せ台(以下単に苗枠と云う)A1,A2,A3において、各段A1,A2,A3は苗1枚分の長さとし、上、下段の苗枠A1、A3は表裏共に使用できるように構成し、上段A1と中段A2を前側において連結部材B1で連結し、中段A2と下段A3を後側において連結部材B2で連結する。
【0071】
そして、連結部材B1,B2は苗1/2枚分の長さとし、展開したとき苗枠の一部として使用できる構成とする。上段A1を前側へ、下段A3を後側へ開き、図11に示すとおりに一直線上に延ばした際、各段の苗枠A1、A2,A3及び連結部材B1,B2にて構成される一連の苗枠が苗4枚分の長さになる構成とする。
【0072】
上記構成により、3段の苗枠で4枚分の苗を載置することができるので、少ないスペースでより長い苗載せ台を構成することができる。
図12は苗取り板の構成例を示すもので、長方形の苗取り板65において、短辺部分から長辺部分に亘ってL字型の把持部66を形成する。把持部66には、長辺部分を若干短くして断面矩形状のカット面66aを形成する。そして、苗取り板65の把持部のない他の2辺には鋭利な掬い面65a,65bを形成する。
【0073】
上記構成により、長辺の掬い面65a、短辺の掬い面65bのどちら側からでも苗を掬い取ることができるので、作業者は作業のし易い方から苗を取ることができ、作業能率が向上する。
【0074】
また、把持部の一部にカット面を形成することで、図13に示すように、苗を苗タンクに装填する際、そのカット面66aが苗タンク51のフェンス51f上端に当たり、その当たった衝撃を利用して苗を苗タンクへ勢い良く滑り込ませることができる。
【0075】
さらに、予備苗載せ台の別実施例について説明すると、図14〜図16に示すように、支柱67、苗枠フレーム68上に架設された予備苗載せ台45は、数個に分割されて6枚の苗枠板A1〜A6からなり、ピ二オンフレーム69に架設されたピニオン70と各苗枠板A1〜A6に形成されたラック71を介して伸縮スライド自在に構成されている。
【0076】
上記構成により、図14の収縮(収納)状態から一方側の苗枠板A1を前方に引くだけで、または、他方側の苗枠板A6を後方へ引くだけで図15に示す伸長(展開)状態に拡げることが可能で、多くの苗箱を載せることができる。なお、72は苗送りローラであり、ローラフレーム73に架設している。
【符号の説明】
【0077】
4 作業装置(苗植付部)
10 前輪
11 後輪
14 後輪回転センサ
22 走行変速レバー
23 油圧式無段変速装置(HST)
24 トラニオンアーム
25 角度センサ(ポテンショメータ)
29 走行停止ペダル
33 補助モータ(アシストモータ)
34 補助伝動軸
37 回転規制手段
38 連動部材
39 制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の前輪(10)及び後輪(11)を備えた走行車体(2)の後部に作業装置(4)を昇降リンク装置(3)を介して昇降可能に設け、該走行車体(2)に機体の走行速度及び前後進を変更する油圧式無段変速装置(23)を設け、該油圧式無段変速装置(23)のトラニオンアーム(24)を操作する変速操作レバー(22)を設け、該変速操作レバー(22)を中立位置に移動させる走行停止ペダル(29)を設け、前記後輪(11)の回転数を計測する後輪回転センサ(14)を設けた苗移植機において、
前記トラニオンアーム(24)を駆動力で移動させる補助モータ(33)を設け、該補助モータ(33)の回転を伝動する補助伝動軸(34)を設け、前記変速操作レバー(22)の傾斜角度を検出する角度センサ(25)を設け、該角度センサ(25)からの信号を受けて補助モータ(33)の回転数を変更制御する制御装置(39)を設け、前記走行停止ペダル(29)の操作に連動して補助伝動軸(34)の回転を規制する回転規制手段(37)を設け、前記走行停止ペダル(29)の操作に連動してトラニオンアーム(24)を中立位置に移動させる連動部材(38)を設けたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記作業装置(4)を下降させて直進を開始すると後輪回転センサ(14)が後輪(11)の回転数を検出し、圃場の一端から他端まで移動する間に検出した後輪(11)の回転数を制御装置(39)に発信して基準回転数を記録し、前記走行停止ペダル(29)を操作してトラニオンアーム(24)を中立位置に移動させると停止前の補助モータ(33)の回転数と停止時の後輪回転数を制御装置(39)に発信する構成とし、前記走行停止ペダル(29)が解除されると基準回転数と停止時の後輪回転数とを比較し、停止時の後輪回転数が基準回転数と略同じであれば停止状態を維持し、停止時の後輪回転数が基準回転数よりも少なければ補助モータ(33)を停止前と同じ回転数で回転させる信号を制御装置(39)から発信する構成としたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項1】
左右一対の前輪(10)及び後輪(11)を備えた走行車体(2)の後部に作業装置(4)を昇降リンク装置(3)を介して昇降可能に設け、該走行車体(2)に機体の走行速度及び前後進を変更する油圧式無段変速装置(23)を設け、該油圧式無段変速装置(23)のトラニオンアーム(24)を操作する変速操作レバー(22)を設け、該変速操作レバー(22)を中立位置に移動させる走行停止ペダル(29)を設け、前記後輪(11)の回転数を計測する後輪回転センサ(14)を設けた苗移植機において、
前記トラニオンアーム(24)を駆動力で移動させる補助モータ(33)を設け、該補助モータ(33)の回転を伝動する補助伝動軸(34)を設け、前記変速操作レバー(22)の傾斜角度を検出する角度センサ(25)を設け、該角度センサ(25)からの信号を受けて補助モータ(33)の回転数を変更制御する制御装置(39)を設け、前記走行停止ペダル(29)の操作に連動して補助伝動軸(34)の回転を規制する回転規制手段(37)を設け、前記走行停止ペダル(29)の操作に連動してトラニオンアーム(24)を中立位置に移動させる連動部材(38)を設けたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記作業装置(4)を下降させて直進を開始すると後輪回転センサ(14)が後輪(11)の回転数を検出し、圃場の一端から他端まで移動する間に検出した後輪(11)の回転数を制御装置(39)に発信して基準回転数を記録し、前記走行停止ペダル(29)を操作してトラニオンアーム(24)を中立位置に移動させると停止前の補助モータ(33)の回転数と停止時の後輪回転数を制御装置(39)に発信する構成とし、前記走行停止ペダル(29)が解除されると基準回転数と停止時の後輪回転数とを比較し、停止時の後輪回転数が基準回転数と略同じであれば停止状態を維持し、停止時の後輪回転数が基準回転数よりも少なければ補助モータ(33)を停止前と同じ回転数で回転させる信号を制御装置(39)から発信する構成としたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−230596(P2011−230596A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101098(P2010−101098)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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