説明

農用供給装置

【課題】肥料、薬剤、籾等の圃場に供給する農用供給物を貯留する貯留部を備えた農用供給装置において、残留物を排出する際の排出流路の開き忘れや閉じ忘れのないようにしたものである。
【解決手段】肥料、薬剤、籾等の圃場に供給する農用供給物を貯留する貯留部1の据付け姿勢で、残留物排出口4から残留物回収筒5に通じる排出流路bが閉止され、貯留部1を横軸心P周りで傾動させると、排出流路bが残留物回収筒5と連通状態になって、残留物回収筒5よりも高位に位置する貯留部1内の残留物が排出流路bを通って残留物回収筒b内に流下するように構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、施肥機や、播種機等のように、肥料や、種子等を圃場等に供給する農用供給装置に関し、詳しくは、供給作業終了後に繰出し部の上流側に残留した残留物を回収できるようにした農用供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多条供給形態の農用供給装置の一例である施肥播種機としては、肥料や種子を繰出す繰出装置1をホッパー18の下方に左右横方向に複数基並設し、これら各繰出装置1の各残留物排出口(回収口3)を送風搬送の回収パイプ23に連通して、各残留物排出口3における回収シャッタ2の開きにより排出する残留物をこの回収パイプ23を通して機外へ回収可能に設け、これら多数基のうち一部の回収シャッタ2と、全部のシャッタ2とに切替えて開閉操作する操作具4を設けたものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−242635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のものでは、繰出装置1(送り出し部)の流路上手側に残留物排出用のシャッタ2が設けられていて、シャッタ2を開いてから残留物の排出を行っていた。即ち、特許文献1のものでは、ホッパー18の残留物を排出する際には、シャッタ2を開ける必要があり、特許文献1のように各繰出装置(送り出し部)毎にシャッタを設けていると、残留物を排出するときにシャッタの開き忘れや閉じ忘れを引き起こす虞があった。
【0005】
本発明の目的は、ホッパの下部の送り出し部よりも流路上手側で排出される残留物の排出流路の開き忘れや閉じ忘れのない農用供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔第1発明の構成〕
第1発明は、農用供給物を貯留する貯留部と、前記貯留部の農用供給物を送り出す送り出し部とを備え、前記送り出し部よりも上手側位置に残留物排出口を設け、前記残留物排出口から排出される残留物を残留物回収筒を通して機外へ回収可能に設けた農用供給装置において、前記貯留部の据付け姿勢で、前記残留物排出口から前記残留物回収筒に通じる排出流路が閉止され、前記貯留部を横軸心周りで傾動させると、前記排出流路が前記残留物回収筒と連通状態になって、前記残留物回収筒よりも高位に位置する前記貯留部内の残留物が前記排出流路を通って前記残留物回収筒内に流下するように構成してあることを特徴とする。
【0007】
〔第1発明の作用〕
貯留部の残留物を残留物回収筒に排出する場合、貯留部を残留物回収筒よりも高位に位置させることにより、貯留部の残留物が自重によって貯留部及び残留物排出口から排出流路を流下して残留物回収筒に無理なく排出される。
第1発明によれば、貯留部を横軸心周りに傾動させることで、貯留部を残留物回収筒よりも高位に位置させて、貯留部から残留物回収筒に通じる排出流路が連通状態になって、排出流路から貯留部内の残留物を機外に回収できる。このように、貯留部を傾動させることで、残留物を排出するのに適切な姿勢(貯留部を残留物回収筒よりも高位に位置させて残留物が排出流路を流下し易い姿勢)に貯留部の姿勢を変更しながら、排出流路と残留物回収筒との連通状態を現出して貯留部内の残留物を機外に回収できる。
【0008】
〔第1発明の効果〕
第1発明によれば、農用供給装置を保守点検などで貯留部に残留する農用供給物を回収する場合、従来のように、シャッタを手動操作で開閉操作する必要がなく、貯留部を横軸心周りで傾動させるだけで、貯留部を残留物回収筒よりも高位に位置させながら、排出流路と残留物回収筒との連通状態を現出できるとともに、貯留部を元の据付け姿勢に戻すことで、前記排出流路を閉止できるので、前記排出流路の開き忘れや閉じ忘れを防止できる。従って、貯留部のメンテナンスを能率よく行うことができ、又、作業に際し、前記排出流路の閉じ忘れがないことから農用供給物の無駄を生じさせることもない。
【0009】
〔第2発明の構成〕
第2発明は、第1発明の構成において、前記残留物回収筒の外周に残留物排出口と連通する開口を形成し、前記貯留部の据付け姿勢で前記残留物回収筒の開口が閉塞され、前記貯留部を前記横軸心周りで傾動させると前記貯留部と残留物回収筒とが相対回動して前記開口が開いて、前記排出流路が前記残留物回収筒と連通状態となるように構成してある。
【0010】
〔第2発明の作用効果〕
第2発明によれば、前記貯留部と残留物回収筒との間の排出流路にシャッターや開閉弁等の弁開閉機構を設けることなく、残留物回収筒の外周に開口を形成し、この開口が貯留部の傾動させることで残留物回収筒と貯留部(貯留部の残留物排出口から残留物回収筒に向けて形成された排出流路)とを相対回動させて、残留物回収筒に形成した前記開口が排出流路と連通する状態(開状態)を現出でき、貯留部を据付け姿勢に戻すことによって開口が排出流路と連通しない状態(閉状態)を現出できる。このように残留物回収筒に、貯留部を据付姿勢から残留物の排出姿勢に傾動させたときに前記排出流路と残留物回収筒とが連通する開口を設けるという簡素な構造で、排出流路の開き忘れや閉じ忘れをなくすことができた。
【0011】
第2発明によれば、前記貯留部を傾動させることで残留物回収筒が相対回動して、残留物回収筒に形成した開口と残留物排出口とを連通する開状態と、貯留部を据付け姿勢に戻すことで残留物回収筒が相対回動して前記開口を閉じる閉状態とに切り換わる。これにより、前記開口の開き忘れや閉じ忘れをすることがない。従って、貯留部のメンテナンスを能率よく行うことができ、又、作業に際し、前記開口の閉じ忘れがないことから農用供給物の無駄を生じさせることもない。
【0012】
〔第3発明の構成〕
第3発明は、第1発明又は第2発明の構成において、前記送り出し部及び前記残留物排出口を複数設け、複数の前記残留物排出口を前記残留物回収筒に並列に接続してある。
【0013】
〔第3発明の作用効果〕
第3発明によれば、前記貯留部の傾動に連動して、残留物回収筒に対して複数の残留物排出口の流路が連通する開状態と閉じられた閉状態とに切り換わるので、多数の流路が残留物回収筒に接続されるように形成されていても、流路の開き忘れや閉じ忘れが生じない。
【0014】
〔第4発明の構成〕
第4発明は、第1発明〜第3発明のうちのいずれか一つの発明の構成において、前記残留物回収筒内に残留物を移送するスクリューを備えている。
【0015】
〔第4発明の作用効果〕
第4発明によれば、前記残留物回収筒内に排出された残留物はスクリューで強制移送される。従って、排出された残留物は残留物回収筒を通して確実に回収することができるとともに、自然落下による排出に比べて確実且つ迅速に回収することができる。
【0016】
〔第5発明の構成〕
第5発明は、第4発明の構成において、前記スクリューの搬送上手側よりも搬送下手側の搬送ピッチを長くしてある。
【0017】
〔第5発明の作用効果〕
複数の送り出し部と、複数の送り出し部に対応して複数の残留物排出口とを備え、複数の残留物排出口に対して連通可能な複数の開口が残留物回収筒に形成されている場合、貯留部の残留物を排出するときに各残留物排出口と残留物回収筒の各開口とを連通させた状態で各残留物排出口から同時に残留物を排出するようにすると、残留物回収筒の搬送下手側ほど、残留物の搬送量が多くなる。
第5発明のように、残留物回収筒内に備えたスクリューの搬送ピッチを、搬送上手側よりも搬送下手側を長くすれば、搬送上手側よりも搬送下手側の一回転当たりの搬送量を多くすることができる。従って、複数の送り出し部に対応して複数の残留物排出口がそれぞれ残留物回収筒に連通する場合、詰まりや停滞を生じさせることなく、残留物排出物を良好に回収することができる。
【0018】
〔第6発明の構成〕
第6発明は、第1発明〜第5発明のいずれか一つの発明の構成において、前記農用供給物が粒状体、粉状体、又は両者が混在した粉粒体であり、前記貯留部が農用供給物を貯留するホッパで、前記送り出し部が前記ホッパの下側に設けられた農用供給物を繰出す繰出しロールで構成されている。
【0019】
〔第6発明の作用効果〕
第6発明によれば、ホッパに収容された農用供給物を圃場に供給するときは、繰出しロールを回転させると、繰出しロールの回転によって農用供給物が繰出されて圃場に供給される。農用供給物の圃場への供給作業が終了して、ホッパ内の残留物を排出するときは、ホッパを横軸心周りに傾動させることで、残留物回収筒よりも高位に位置するホッパ内の残留物が排出流路を通って残留物回収筒内に流下し、これに連動して残留物を回収する残留物回収筒の開口が開いて、残留物回収筒を通して残留物を回収することができる。
【0020】
〔第7発明の構成〕
第7発明は、第1発明〜第6発明のいずれかの発明において、前記残留物回収筒が前記貯留部及び送り出し部を支持する強度部材である。
【0021】
〔第7発明の作用効果〕
前記残留物回収筒を、貯留部及び送り出し部を支持する強度部材を兼ねているので、専用の支持部材、部品点数を削減することができる。従って、構造を簡素にすることができ、生産性を向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】施肥装置付き乗用型田植機全体の側面図である。
【図2】施肥装置付き乗用型田植機全体の平面図である。
【図3】施肥装置の背面図である。
【図4】施肥装置の側面図である。
【図5】肥料繰出し部の縦断側面図である。
【図6】施肥装置の残留物回収筒の閉状態を示す一部縦断側面図である。
【図7】施肥装置を揺動させた残留物回収筒の開状態を示す一部縦断側面図である。
【図8】(a),(b)は残留物回収筒内のスクリューを示す概略図である。
【図9】別実施の形態の施肥装置の据付け姿勢の状態を示す一部縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態の一例を図面に基づいて説明する。
〔乗用型田植機の全体構成〕
図1に示すように、操向操作自在な左右一対の前輪11及び操向操作不能な左右一対の後輪12を備えた走行機体8の車体フレーム10の前部側に、エンジン13及びミッションケース14を備え、走行機体8の前後中央部にステアリングハンドル等を装備した操縦部15と運転座席16とを設け、走行機体8を構成する車体フレーム10の後部には農用供給装置としての施肥装置3が配置されている。
前記エンジン13の左右両側、及び前記操縦部15と運転座席16との間、ならびに前記運転座席16の左右両側には、ほぼ平坦なステップ部分を有した運転部ステップ17が設けられ、この運転部ステップ17のさらに外側で前記エンジン13の配設箇所と対向する左右箇所に予備苗のせ台18が配設されている。
走行機体8の後方には、リフトシリンダ19aを備えたリンク機構19を昇降操作自在に連結して、リンク機構19に作業装置の一例である苗植付装置9を装着して、施肥装置3を適用した農作業機の一例である乗用型田植機を構成してある。
【0024】
〔苗植付装置〕
苗植付装置9は6条植えに構成されており、3個の植付伝動ケース40、植付伝動ケース40の左右両側に回転駆動自在に支持される回転ケース41、回転ケース41の両端に配備される一対の植付爪42、3個の接地フロート43、及び苗のせ台44等によって構成してある。
【0025】
〔施肥装置〕
前記施肥装置3は、肥料(農用供給物の一例)を貯留する透明樹脂製の貯留部の一例であるホッパ1と、そのホッパ1の下側に配置された肥料(農用供給物)を送り出す送り出し部としての4個の肥料繰出し部2とを備え、これらのホッパ1および肥料繰出し部2は、図1,2,3に示すように、走行機体8の後部で、運転座席16の後側近くにおいて車体フレーム10の上部に設けた支持枠22によって支持されている。
【0026】
前記支持枠22は、車体フレーム10の左右一対のメインフレーム10A上に立設された左右一対のブロワ支持板22aと、そのブロワ支持板22aの上側に立設した支柱22bと、左右の支柱22bの上端側に掛け渡された横長フレーム22cとで構成され、前記ブロワ支持板22aの後端側には、苗植付装置9を昇降自在に装着するためのリンク機構19の一端側が連結されている。
【0027】
図5及び図6に示すように、肥料繰出し部2は、外周に肥料入込み用の凹部23aが周方向に沿って多数形成された繰出しロール23を、ホッパ1の肥料の残留物排出口4の下方で、かつ、漏斗部24の上方に回転可能に配置してある。尚、図中の符号23bは、繰出しロール23の周面に摺接して、すり切り作用するブラシである。
【0028】
前記肥料繰出し部2は、図3及び図4に示すように、ミッションケース14から苗植付装置9に動力を伝達するように後方へ延出されPTO軸70から、横向きに動力を取り出すクランク軸71の回転運動による連係ロッド72の往復運動が、ワンウェイクラッチ73により回転運動に変換されて、伝動軸25を経て駆動軸26に伝えるように構成された繰出し駆動装置74の動力で駆動される。
これにより、図3乃至図5に示すように、繰出しロール23の凹部23aにホッパ1から肥料が入込み、駆動軸26の間欠的な回転により肥料が漏斗部24に繰出される。そして、後述する起風手段29の電動ブロア30からの高圧の風が、送風ダクト31を介して漏斗部24の下方に接続された分岐吐出管34に供給され、高圧の風により肥料が可撓性の搬送ホース46を通って作溝器45に迅速に供給され、作溝器45により田面に形成された溝に肥料が送り込まれて施肥作業が行われるのである。
【0029】
図3、図5及び図6に示すように、肥料繰出し部2を構成する繰出しロール23の上手側における、ホッパ1の下部後側に肥料の残留物排出口4が形成されている。残留物排出口4は、肥料排出流路aを構成する残留物回収筒5に連通可能に接続されている。残留物回収筒5は、ホッパ1に近接配置されている。残留物回収筒5内には、図3、図6〜図8に示すように、肥料搬送用のスクリュー35が内蔵されている。スクリュー35の始端側のスクリュー軸36にハンドル37が付設されており、スクリュー35の終端側の下部には、残留物排出用の短い排出筒38が取付けられている。排出筒38から排出された残留物は、袋39に回収される。
【0030】
図8(a)に示すように、残留物回収筒5は、2つの筒体を連結して構成されている。残留物回収筒5内に設けられたスクリュー35は合成樹脂により構成されて、所定長さの短いスクリューを連結することによって構成されており、スクリュー35の搬送ピッチは、スクリュー35の全長に亘って一定に形成してある。
【0031】
残留物回収筒5の残留物排出口4との接続部に、残留物排出口4と連通可能な開口6を形成してある。開口6は、ホッパ1の据付け姿勢で閉塞されており、ホッパ1を横軸心P周りで後方上方に傾動させると、残留物回収筒5は横軸心P周りに下方に移動し、ホッパ1が残留物回収筒5よりも高位に位置し、ホッパ1内の残留物が残留物回収筒5内に自然流下するように排出流路bが傾斜するとともに、ホッパ1と残留物回収筒5とが相対回動して開口6が開いて、ホッパ1の残留物排出口4から残留物回収筒5に通じる排出流路bが連通状態となる。
【0032】
図4、図6、図7に示すように、支持枠22の上部の支柱22bの上端にピン孔47を形成したブラケット48を固定し、ホッパ1を支持する横長フレーム22cにピン孔49を形成したブラケット50を固定し、ブラケット48のピン孔47とブラケット50のピン孔49にピン51を挿通して、ホッパ1をピン51の横軸心P周りで回動できるようにしてある。
【0033】
前記支持枠22の前側の上部支柱22dの上端に上向きU字状の受け部22eが形成されており、この受け部22eに前記横長フレーム22cから前方に延出された前後フレーム22fを受け止め支持させてある。前後フレーム22fに被係止部57を設け、前側上部支柱22dに締付けフック58を取り付け、ホッパ1の据付け姿勢では締付けフック58を被係止部57に引っ掛けてホッパ1を固定する。
【0034】
前記支持枠22の後側の上部支柱22bから後向きに、上下に長い長孔59を形成したブラケット60を固定し、L字状の丸棒又はフラットバー等の棒材61の上端部を残留物回収筒5の外周面に固定し、下端部62を長孔59に係入し、棒材61の端部に図示しない抜け止めを施してある。
【0035】
前記残留物排出口4に対応するホッパ1の外面に残留物排出口4に接続された角筒体63aが形成された断面半円形の筒保持前半部63が固設されており、この角筒体63aの内部に残留物の排出流路bが形成されている。筒保持前半部63に対応して、断面半円形の筒保持後半部64が設けられており、筒保持前半部63と筒保持後半部64を、それぞれ上下に形成した鍔部63b,64a同士をボルト65で連結することで、残留物回収筒5が筒保持前半部及び後半部63,64の内周面に沿って回動自在に支持されている。
【0036】
ホッパ1内を清掃するときには、ホッパ1内の残留物を排出する。ホッパ1内の残留物を排出は次の手順で行う。
図6に示す状態から、締付けフック58を操作して被係合部57との係合を外し、図7に示すように、ホッパ1を横軸心P周りに後方上方(時計回り)に約45度傾動させると、残留物回収筒5は、横軸心Pを中心に後方に移動しながら下降し、角筒体63aの排出流路bが斜め下向きに傾斜した排出姿勢となる。この過程で、残留物回収筒5に固定された棒材61の下端部62は長孔59に沿って下降するので、残留物回収筒5はその回動が規制され、据付け状態より時計回りに約15度回動する。一方、このときホッパ1は時計回りに45度回動するので、結果、相対的に残留物回収筒5はホッパ1に対して時計回りに約30度回動して、残留物回収筒5の開口6が自動的に開いて角筒体63に形成された排出流路bと連通状態となる。
【0037】
即ち、ホッパ1の据付け姿勢で、残留物排出口4から残留物回収筒5に通じる排出流路bが閉止され、横軸心P周りでホッパ1を傾動させることに連係して排出流路bが連通状態に開かれる連係機構67を備えている。連係機構67は、前記ブラケット60に形成された長孔59と、この長孔59に下端部62が係合され、上端部を残留物回収筒5に固定した棒材61とで構成されており、前記連係機構67を介して、ホッパ1を前記横軸心P周りで傾動させることに連動してホッパ1と残留物排出筒5とが相対回動して開口6が自動的に開閉される。
【0038】
図3及び図8(a)に示すように、ホッパ1の下部に対して、肥料繰出し部2及び残留物排出口4が左右横方向に複数設けられており、複数の残留物排出口4が残留物回収筒5に並列に接続されている。
前記排出流路bを介してホッパ1と残留物回収筒5とが連通した状態で、スクリュー軸36の一端に取り付けられたハンドル37を操作することにより、ホッパ1から排出された肥料の残留物が排出筒38から排出され、下方に受けられた袋39で残留物が回収される。
【0039】
図7に示す状態から、ホッパ1を戻すときは、ホッパ1を横軸心P周りに反時計方向に回動させることで、図6に示す据付け姿勢に戻り、ホッパ1が残留物の排出姿勢から据付け姿勢に戻る過程で、開口6も自動的に閉塞させる。
【0040】
〔起風手段〕
施肥装置3から繰り出された肥料を風力で苗植付装置9側の圃場へ搬送するための起風手段29は次のように構成されている。
図1〜図4に示すように、左右一対のブロワ支持板22aにわたって支持させた電動ブロワ30と、その電動ブロワ30に外気を導入し、搬送風を流動させる送風ダクト31とを備えている。そして、送風ダクト31は、前記電動ブロワ30に外気を導入供給するための吸気管32と、前記電動ブロワ30の出口管側に接続されて、電動ブロワ30により生起された風を各漏斗部24の下方の分岐吐出管34に供給するためのパイプ状の送気管33とで構成されている。前記吸気管32は、電動ブロワ30の車体横外向きの吸気部30aに基端側が接続してある。
【0041】
電動ブロワ30の排気部30b側に接続される送気管33は、下流側が左右に分岐された二股状の分岐接続管33Aと、その分岐接続管33Aの端部に接続されて車体横向きに配設された横向き送気管33Bとで構成され、横向き送風管33Bの長手方向複数箇所には、苗植付装置9の各肥料供給箇所へ肥料を送出するための、多数の分岐吐出管34が設けられている。
【0042】
前記電動ブロア30の排気部30bと送気管33の二股状の分岐接続管33Aの基端部とを可撓性の蛇腹管75で接続されている。
これにより、ホッパ1の据付け姿勢では、蛇腹管75は縮んだ状態にあり、ホッパ1を横軸心P周りで傾動させると蛇腹管75が伸びるようにしてあり、送気管33を取り外さなくてもホッパ1のメンテナンスを行えるようにしてある。
【0043】
〔別実施形態〕
(1)図9は、残留物回収筒5を、施肥装置3を支持する支持枠22における後方の支柱22bの上端に固定し、残留物回収筒5を施肥装置3のホッパ1及び肥料繰出し部2を支持する強度部材を兼ねている。
残留物回収筒5には、前記実施の形態と同じようにスクリュー35が内蔵されている。残留物回収筒5には、施肥装置3を回動自在に支持するための筒保持部76が外嵌され、筒保持部76には、ホッパ1の残留物を排出するための排出流路bを形成する角筒体76aを備えているとともに、ホッパ1及び肥料繰出し部2を支持する前後フレーム22の後端が筒保持部76の筒部76bに連結されている。ホッパ1及び繰出し部2は、筒部76bの横軸心P(この横軸芯Pはスクリュー軸36の軸心と一致する)周りに回動可能で、ホッパ1を45度回動させた状態で、角筒体76aの内部に形成された排出流路bと連通する開口6が全開するように残留物回収筒5の外周面に形成されている。ホッパ1の残留物排出口(排出流路bの始端部開口)は、繰出し部2における図示しない繰出しロールの直上方近傍の後壁に形成されている。
【0044】
ホッパ1の掃除やメンテナンスはホッパ1内の残留物を排出して行われる。ホッパ1内の残留物の排出は次の手順で行う。
図9に示す状態から、締付けフック58を操作して被係合部57との係合を外し、前後フレーム22fを持上げてホッパ1を横軸心P周りに後方上方(図9で時計回り)に45度程傾動させる。残留物回収筒5は、支柱22bに固定されており、ホッパ1を持上げると角筒体76aの排出流路bが斜め下向きに傾斜した排出姿勢となって残留物回収筒5の開口6が開いて角筒体76aに形成された排出流路bと連通状態となる。
【0045】
肥料繰出し部2及び残留物排出口4が左右横方向に複数設けられており、複数の残留物排出口4が残留物回収筒5に並列に接続されている。
排出流路bを介してホッパ1と残留物回収筒5とが連通した状態で、スクリュー軸36を図8と同様に設けたハンドルを操作することにより、残留物が排出され回収される。
【0046】
農用供給装置が粉粒体供給装置である場合、貯留部の残留物を排出する排出流路bは、繰出しロール23よりも上手側であれば、上記別実施の形態のように、ホッパ1よりも下方であってもよい。
【0047】
(2)スクリュー35の搬送ピッチとしては、図8(b)のようにスクリュー35の搬送上手側よりも搬送下手側(排出筒38側)の搬送ピッチを長く形成してもよい。図8(b)では、搬送ピッチを搬送下手側ほど徐々に長くなるように連続的にピッチを変更してある。図8(b)では、ホッパ1からの排出流路bが4つ形成されている。各排出流路bから同時に同量ずつ排出されるとすると、残留物回収筒5内の残留物は、最上手側(ハンドル37側)の開口6から排出される一回転当たりの排出量を基準(1倍)として、2つ目、3つ目、4つ目の開口6と合流する箇所では2倍、3倍、4倍の排出量となるから、スクリュー35の搬送ピッチもそれに応じて2倍長、3倍長、4倍長と順次長くしてもよい。
【0048】
(3)スクリュー35を回転させる手段としては、クラッチを備えたベルト伝動手段、電動モータ等の駆動手段で構成してもよい。
【0049】
(4)農用供給物としては液体肥料や液体の除草剤その他の薬剤であってもよい。この場合、タンクを貯留部とし、繰出し用ポンプを送り出し部とし、タンクの下部にドレン用の開閉弁を設け、ドレン用の開閉弁にタンクを残留物を排出する排出姿勢に傾動させたときにドレン用開閉弁が開弁する連係機構を設けて、タンクを排出姿勢に傾動させるのに連係してドレン用開閉弁を開弁させて、タンク内の残留物が残留物回収筒を通して排出されるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、施肥装置の他、除草剤などの粉、粒若しくは粉、粒を混合した薬剤を散布する施薬装置或いは籾を直播する播種装置などの粉粒体供給装置や液体肥料を供給する液肥供給装置、液体薬剤を供給する液薬供給装置であってもよい。前記施肥装置、施薬装置、播種装置などの粉粒体供給装置並びに液肥供給装置及び液薬供給装置などの液体供給装置を総称して、農用供給装置と総称する。
【0051】
播種装置としては、苗植付装置を備えていない播種専用の装置とし、他の粉粒体供給装置や液体供給装置も専用機として構成してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 ホッパ(貯留部)
2 肥料繰出し部(送り出し部)
4 残留物排出口
5 残留物回収筒
6 開口
35 スクリュー
b 排出流路
P 横軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農用供給物を貯留する貯留部と、前記貯留部の農用供給物を送り出す送り出し部とを備え、前記送り出し部よりも上手側位置に残留物排出口を設け、前記残留物排出口から排出される残留物を残留物回収筒を通して機外へ回収可能に設けた農用供給装置において、
前記貯留部の据付け姿勢で、前記残留物排出口から前記残留物回収筒に通じる排出流路が閉止され、前記貯留部を横軸心周りで傾動させると、前記排出流路が前記残留物回収筒と連通状態になって、前記残留物回収筒よりも高位に位置する前記貯留部内の残留物が前記排出流路を通って前記残留物回収筒内に流下するように構成してあることを特徴とする農用供給装置。
【請求項2】
前記残留物回収筒の外周に残留物排出口と連通する開口を形成し、前記貯留部の据付け姿勢で前記残留物回収筒の開口が閉塞され、前記貯留部を前記横軸心周りで傾動させると前記貯留部と残留物回収筒とが相対回動して前記開口が開いて、前記排出流路が前記残留物回収筒と連通状態となるように構成してある請求項1記載の農用供給装置。
【請求項3】
前記送り出し部及び前記残留物排出口を複数設け、複数の前記残留物排出口を前記残留物回収筒に並列に接続してある請求項1または2記載の農用供給装置。
【請求項4】
前記残留物回収筒内に残留物を移送するスクリューを備えている請求項1〜3のいずれか一項に記載の農用供給装置。
【請求項5】
前記スクリューの搬送上手側よりも搬送下手側の搬送ピッチを長くしてある請求項4記載の農用供給装置。
【請求項6】
前記農用供給物が粒状体、粉状体、又は両者が混在した粉粒体であり、前記貯留部が農用供給物を貯留するホッパで、前記送り出し部が前記ホッパの下側に設けられた農用供給物を繰出す繰出しロールで構成されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の農用供給装置。
【請求項7】
前記残留物回収筒が前記貯留部及び送り出し部を支持する強度部材である請求項1〜6のいずれか一項に記載の農用供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−193789(P2010−193789A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42572(P2009−42572)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】