説明

農用粒状物供給装置

【課題】貯留部に農用粒状物が残留している状態でシャッタを閉じても、シャッタによる農用粒状物のかみ込みを抑制する農用粒状物供給装置を提供する。
【解決手段】貯留部31と、貯留部31の下部に備えられる繰出しケース34と、繰出しケース34に内装される繰出し体37と、繰出し体37の上方近傍に形成される排出口35aと、排出口35aの上部に設けた横軸心40周りに回動する回動端部39aと回動端部39aとは反対側の自由端部39bとを有するシャッタ39と、を備え、このシャッタ39は、自由端部39bが排出口35aの下部に接触する閉状態と、自由端部39bが排出口35aの下部から外側の上方に離れた開状態とに切換可能に構成され、回動端部39aと自由端部39bとの間の部分に、回動端部39aと自由端部39bとを結ぶ仮想線よりも開状態から閉状態への回動方向に突出した突出部39cが備えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥料や種苗等の農用粒状物を田面に供給する農用粒状物供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような農用粒状物供給装置としては、例えば田植機に備えられた施肥装置が知られている(特許文献1参照)。この施肥装置は、肥料を貯留部(ホッパー)から繰り出すための繰出し体を内装した繰出しケースを備えており、繰出しケースの下部には、農用粒状物(肥料)を貯留部から排出するための排出口が形成されている。この排出口は田面に肥料を供給する通常の作業では使用されず、通常の作業が終了して貯留部に残る肥料を回収する際に使用される。排出口にはシャッタ(弁体)が配設されており、外部からの操作でシャッタを横軸心周りに回動させることによって、排出口の開閉ができるように構成されている。排出口から排出された農用粒状物は回収管に送られ、別途備えたブロアからの風によって回収管端部の回収口へ搬送され、回収口にて袋や容器に回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4107588号公報(図6参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の回収作業において、袋や容器の容量に対して貯留部に残留している農用粒状物が多い場合は、回収作業の途中で袋等を交換する必要がある。交換の際には、農用粒状物が排出口から排出されるのを一時停止するため、前記シャッタを閉じることになる。しかし、貯留部に農用粒状物が残留している状態でシャッタを閉じようとすると、シャッタを完全に閉じるまではシャッタの自由端部と排出口の下部との隙間に農用粒状物が流れ込んでくるため、農用粒状物をかみ込んだ状態でシャッタが閉じられる場合がある。農用粒状物をかみ込んだ状態でシャッタを閉じてしまうと、かみ込みによって生じたシャッタの自由端部と排出口の下部との隙間から農用粒状物が流出したり、シャッタの開閉機構に無理な負荷が生じたりするおそれがあるので、この点において改良の余地があった。
【0005】
本発明は以上の問題に鑑みてなされたもので、貯留部に農用粒状物が残留している状態でシャッタを閉じても、シャッタによる農用粒状物のかみ込みを抑制する農用粒状物供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る農用粒状物供給装置の第1特徴構成は、農用粒状物を貯留する貯留部と、前記貯留部の下部に備えられる繰出しケースと、前記繰出しケースに内装されて前記貯留部の農用粒状物を繰り出す繰出し体と、前記繰出し体の上方近傍に形成され、前記貯留部の農用粒状物を排出する排出口と、前記排出口の上部に設けた横軸心周りに回動する回動端部と前記回動端部とは反対側の自由端部とを有するシャッタと、を備え、前記シャッタは、前記自由端部が前記排出口の下部に接触する閉状態と、前記自由端部が前記排出口の下部から外側の上方に離れた開状態とに切換可能に構成され、前記回動端部と前記自由端部との間の部分に、前記回動端部と前記自由端部とを結ぶ仮想線よりも前記開状態から前記閉状態への回動方向に突出した突出部が備えられる点にある。
【0007】
第1特徴構成によれば、シャッタの回動端部と自由端部とを結ぶ仮想線よりも開状態から閉状態への回動方向に突出した突出部が存在しているため、シャッタが開状態から閉状態に回動する際に、突出部が自由端部に対して傘のように機能したり、自由端部に先行して農用粒状物を押し退けるように機能したりすることにより、自由端部と排出口の下部との間に農用粒状物が直接流れ込むのを抑えることができる。その結果、貯留部に農用粒状物が残留している状態でシャッタを閉じても、シャッタによる農用粒状物のかみ込みを抑制することができる。また、突出部の存在により、農用粒状物が排出口に勢いよく流れ込むのを抑制するため、シャッタを平板状に構成した場合と比べて、シャッタを閉じる際の抵抗が小さくなる。
【0008】
第2特徴構成は、前記シャッタの全幅に亘って前記突出部を備えてある点にある。
【0009】
第2特徴構成によれば、第1特徴構成による効果をシャッタの全幅に亘って享受することができるので、農用粒状物のかみ込み抑制やシャッタを閉じるときの抵抗低減といった効果が増大する。
【0010】
第3特徴構成は、前記横軸心に沿った方向に亘って、前記自由端部が前記排出口の下部に線接触することにより、前記シャッタが前記閉状態となるように構成してある点にある。
【0011】
第3特徴構成によれば、シャッタの自由端部と排出口の下部が線接触するため、シャッタを閉じる際に農用粒状物をかみ込む可能性を、面接触の場合と比べて低減することができる。また、仮に農用粒状物をかみ込んだとしても、線接触であればかみ込まれた農用粒状物が解放されやすいという効果を得られる。
【0012】
第4特徴構成は、前記排出口の下部が、第1底部と、前記第1底部よりも低く且つ外側に位置する第2底部と、前記第1底部と前記第2底部とに亘って形成された縦壁部とを備え、前記自由端部が前記第2底部の側から前記縦壁部に接触することにより、前記シャッタが前記閉状態となるように構成してある点にある。
【0013】
シャッタの自由端部は回動し排出口の下部と接触して閉状態となるため、閉状態となる直前においては概ね水平方向に移動していることになる。したがって、第4特徴構成のごとく、シャッタの自由端部が縦壁部に接触するように構成すれば、シャッタを確実且つ容易に閉状態とすることができる。
【0014】
第5特徴構成は、前記第1底部及び前記第2底部を外側ほど低くなる傾斜面とし、前記第1底部の傾斜よりも前記第2底部の傾斜が急になるように構成してある点にある。
【0015】
第5特徴構成のごとく、第1底部よりも外側にある第2底部の傾斜面を急に構成すれば、内側よりも外側で農用粒状物の排出速度が大きくなるので、農用粒状物の排出が円滑となり、排出口におけるつまりを抑制できる。
【0016】
第6特徴構成は、前記排出口の上部から内側に突出して、前記回動端部を上側から覆う覆い部を備えてある点にある。
【0017】
第6特徴構成によれば、回動端部に農用粒状物が衝突することを回避できるので、シャッタの回動時にシャッタと排出口上部の間に農用粒状物が挟まれるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る田植機の全体側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る田植機の全体平面図である。
【図3】施肥装置を示す正面図である。
【図4】作業状態における搬送風の流れを示す概略図である。
【図5】回収状態における搬送風の流れを示す概略図である。
【図6】繰出し機構の詳細を示す断面図である。
【図7】シャッタの開閉を行う操作レバーの動作を示す側面図である。
【図8】シャッタが開状態のときの排出口を示す平面図である。
【図9】シャッタの形状を示す斜視図である。
【図10】連結ダクトに設けた連結シャッタの動作を示す拡大平面図である。
【図11】図10のXI−XIにおける断面図である。
【図12】送風ダクトに設けた分岐シャッタの動作を示す拡大平面図である。
【図13】使用状態の載置台を示す正面図である。
【図14】折り畳み状態の載置台を示す拡大側面図である。
【図15】折り畳み状態の載置台を示す拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る農用粒状物供給装置の実施形態の一例として、田植機の施肥装置について説明する。
【0020】
〔全体構成〕
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る田植機は、機体1の運転部ステップ18上にステアリングハンドル10等を装備した操縦部11と運転席12とを備える。機体1は操向操作自在な左右一対の前輪14及び後輪15を備えており、車体フレーム13の前部側にエンジン16及びミッションケース17が配設される。ミッションケース17の後方には燃料タンク61が設けられ、給油口61aから燃料が補給できるように構成されている。
【0021】
運転部ステップ18の両外側には、運転部ステップ18と連続的なステップ面をなす前部補助ステップ19が設けられ、さらにその両外側に予備苗のせ台22が設置される。また、後部が高くなるよう構成されている後部補助ステップ20が、前部補助ステップ19の後方に配設される。前部補助ステップ19及び後部補助ステップ20は、ステップ支持フレーム23によって支持される。
【0022】
肥料(農用粒状物)を供給する施肥装置2(農用粒状物供給装置)は、運転席12の後方且つ後部補助ステップ20の上方に配設される。機体1の背面にはリフトシリンダ21aを備えたリンク機構21を昇降操作自在に連結してあり、このリンク機構21の後端側に苗植付装置3が装着される。施肥装置2の繰出し機構32から繰り出された肥料は、ホース82を通って苗植付装置3の作溝器81から田面に供給される。
【0023】
〔苗植付装置〕
図1及び図2に示すように、本実施形態においては、苗植付装置3は8条植えに構成されている。4個の植付伝動ケース83、植付伝動ケース83の左右両側に回転駆動自在に支持される回転ケース84、回転ケース84の両端に配備される植付爪85、5個の接地フロート86、及び苗のせ台87等によって構成してある。各植付爪85による苗植付け箇所の横側付近には、接地フロート86に取付けた作溝器81が1個ずつ配置され、その上端部にはホース82が接続されている。繰出し機構32から繰り出された肥料は、ホース82を通って作溝器81より田面に供給される。
【0024】
〔施肥装置〕
図3に示すように、施肥装置2は肥料を貯留する貯留部31と、貯留部31の下側に配置された4つの繰出し機構32とからなる。貯留部31は肥料を貯留するための透明樹脂製の容器であり、支持フレーム33に固定されている。貯留部31の上部に開閉可能な蓋31aが設けられ、肥料を貯留部31に上部から投入できるように構成されている。貯留部31は機体1の幅方向に沿った長辺を有するほぼ直方体形状となっており、内部は4つの部屋に仕切られている。これらの各部屋に対応する位置に繰出し機構32が4箇所に配設され、貯留部31から繰出し機構32に肥料が送られる。
【0025】
図6に示すように、繰出し機構32は繰出しケース34及び繰出し体37を備える。繰出しケース34は分割可能に構成された上部繰出しケース35と下部繰出しケース36とからなり、これらの境界部に繰出し体37が配置される。上部繰出しケース35と下部繰出しケース36とは、上部繰出しケース35に形成した係合孔35fと下部繰出しケース36に形成した係合片36cとが係合して連結し、この係合部を中心に下部繰出しケース36の前側(図6の右側)が下がるように開く。繰出しケース34を開状態とするには、下部繰出しケース36に回動自在に取り付けられている開閉レバー49(図7参照)を操作し、開閉レバー49の係合凹部49aと上部繰出しケース35の係合凸部35gとの係合を解除すればよい。
【0026】
図6に示すように、上部繰出しケース35は貯留部31の下部に連結されており、貯留部31に貯留されている肥料が上部繰出しケース35に流入可能に構成されている。繰出し体37の外周には肥料入り込み用の凹部37aが周方向に沿って複数形成されており、繰出し軸65が図6の時計回りに回転すると、凹部37a内にある肥料が下部繰出しケース36に送られる。このとき、凹部37aからはみ出している肥料は、ブラシ38ですり切られ下部繰出しケース36に送られないため、凹部37aに入り込んでいる一定量の肥料が繰り出し可能となる。なお、繰出しケース34は樹脂製の透明な材料から作製されており、外部から内部を視認することができる。
【0027】
下部繰出しケース36の下端部の前側(図6の右側)に設けられた送風部36aは、後述する送風ダクト101と連結され、送風ダクト101からの搬送風を下部繰出しケース36に送る。また、下部繰出しケース36の下端部の後側(図6の左側)に設けられた搬送部36bは、肥料を苗植付装置3の作溝器81に搬送するためのホース82と連結される。このように構成することにより、上部繰出しケース35から繰出し体37を介して下部繰出しケース36に送られた肥料は、送風ダクト101からの搬送風によって滞りなくホース82に送られ、作溝器81から田面に供給される。
【0028】
繰出し機構32の送風部36aと送風ダクト101とを接続する箇所に、導入部材108を取り付けてある。導入部材108は、送風ダクト101内に突出する椀状の導入部108aを備えている(図4、図5参照)。導入部108aは送風ダクト101の上流側に開口部を向けるように配置され、搬送風が送風ダクト101から送風部36aに流入しやすくなるよう構成されている。
【0029】
上部繰出しケース35の後側(図6の左側)には排出口35aが設けられ、シャッタ39が横軸40(横軸心)周りに揺動可能に取り付けられている。排出口35aは、排出ダクト102の接続部102aと連結される。通常の田植作業時には、シャッタ39は図6の実線で示す閉状態で維持されており、肥料は排出ダクト102に排出されず、繰出し体37を経て下部繰出しケース36に繰り出される。一方、田植作業の終了後等に肥料を貯留部31から回収する場合、シャッタ39を図6の点線で示す開状態に操作すると、貯留部31に残留している肥料が排出口35aから排出ダクト102に排出される。このとき、排出ダクト102の側が低くなるよう接続部102aに形成された段部102bにより、肥料が排出されやすくなるとともに、搬送風によって肥料が排出ダクト102から上部繰出しケース35に逆流するのを防止する。送風ダクト101及び排出ダクト102の平面配置やシャッタ39の切り換え操作については後述する。
【0030】
図6に示すように、シャッタ39は横軸40を有する回動端部39aと、回動端部39aと反対側の端部である自由端部39bとを有する。回動端部39aの上部には、上部繰出しケース35の一部を突出させて回動端部39aを覆うように覆い部35eが形成される。覆い部35eにより、貯留部31より流れてくる肥料が回動端部39aに衝突することを回避できるので、シャッタ39の回動時に回動端部39aと覆い部35eとの隙間に肥料が挟み込まれて、シャッタ39が動作不良となるのを防止できる。
【0031】
排出口35aの下部には、第1底部35b、第2底部35c及び縦壁部35dが形成される。第2底部35cは第1底部35bよりも低く且つ外側に位置しており、第1底部35bと第2底部35cとに亘って縦壁部35dが形成される。シャッタ39の自由端部39bが第2底部35cの側(図6の左側)から縦壁部35dに接触することにより、シャッタ39が閉状態となるように構成されている。シャッタ39の自由端部39bは閉状態となる直前においては概ね水平方向に移動しているので、自由端部39bの移動方向と縦壁部35dとはほぼ直交することとなり、シャッタ39を確実且つ容易に閉状態とすることができる。さらに、第1底部35b及び第2底部35cを外側ほど低くなる傾斜面とし、第1底部35bの傾斜よりも第2底部35cの傾斜が急になるように構成している。したがって、上部繰出しケース35から排出ダクト102に向かって肥料が排出される際に、排出ダクト102の側ほど肥料の排出速度が大きくなるので、肥料がつまることなく円滑な排出が可能となる。
【0032】
図6及び図9に示すように、回動端部39aと自由端部39bとを結ぶ仮想線よりも開状態から閉状態への回動方向に突出した突出部39cがシャッタ39に形成される。突出部39cにより、シャッタ39が開状態から閉状態に回動する際に、突出部上面39dが自由端部39bに対して傘のように機能したり、突出部39cが自由端部39bに先行して肥料を押し退けるように機能したりすることにより、自由端部39bと第1底部35b、第2底部35cあるいは縦壁部35dとの間に肥料が直接流れ込むのを防止することができる。その結果、貯留部31に肥料が残留している状態でシャッタ39を閉じても、シャッタ39による肥料のかみ込みを抑制することができる。また、突出部39cの存在により、肥料が排出口35aに勢いよく流れ込むのを抑制するため、シャッタ39を例えば平板状に構成した場合と比べて、シャッタ39を閉じる際の抵抗が小さくなる。
【0033】
図9に示すように、突出部39cはシャッタ39の全幅に亘って形成されているので、肥料のかみ込み抑制やシャッタを閉じるときの抵抗低減といった効果をシャッタ39全体に亘って得ることができる。また、自由端部39bを鋭角的に形成し、自由端部39bと縦壁部35dとが線接触の状態で閉状態となるように構成すれば、シャッタ39を閉じる際に肥料をかみ込む可能性を低減することができる。また、仮に肥料をかみ込んだとしても、線接触であればかみ込まれた肥料が解放されやすいという効果を得られる。
【0034】
回動端部39aの内部には横軸40を挿入するための矩形孔39eを備えており、矩形孔39eの一部に開口部39f,39g,39hが形成される。このうち、開口部39f,39hはシャッタ39の幅方向の両端部に形成されており、横軸40を矩形孔39eに挿入する際に、開口部39fあるいは39hを利用すれば挿入が容易となる。また、開口部39f,39g,39hにより横軸40と矩形孔39eとの接触面積が減少するので、挿入時の摩擦力が低減し挿入しやすくなる。
【0035】
〔駆動・伝達機構〕
繰出し機構32に動力を伝達して駆動する駆動・伝達機構について説明する。繰出し機構32を操作する動力は、図1に示すミッションケース17から後方に延出された伝動軸51から伝達される。図3に示すように、伝動軸51及び回転アーム52は機体1の左右中央に配置されて、左右の車体フレーム13の間に配置されている。伝動軸51に回転アーム52が連結され、回転アーム52の偏芯位置に連係ロッド53が上方に延出するように連結される。このような構成により、伝動軸51の回転により回転アーム52が回転駆動すると、連係ロッド53が上下往復運動を行う。不図示の連係軸等を介して、連係ロッド53の上下往復運動は、繰出し機構32における肥料の繰出し量の調整を行う調節機構70に入力される。調整機構70を経た動力は、駆動ロッド59、駆動軸62、不図示の伝達ギア等を介して繰出し軸65(図6参照)に伝達され、繰出し機構32を駆動させる。
【0036】
〔起風・搬送手段〕
肥料の供給あるいは回収の際に利用される搬送風の起風手段及び搬送手段について説明する。図1に示すように、起風手段である電動ブロア104は、運転席12の下後方に配設される。また、図2に示すように、外気を導入する導入ダクト105の吸気口105aは、エンジン16の近傍且つマフラー25の後方に配設されている。このように配設すれば、エンジン16からの熱気やマフラー25からの排熱を吸引して搬送風の温度が上昇するため、搬送風により肥料が乾燥しやすくなる。その結果、肥料の搬送を促進する効果が期待できる。
【0037】
図4及び図5に示すように、導入ダクト105から導入された搬送風は、電動ブロア104により送風ダクト101に搬送される。送風ダクト101は右側送風ダクト101a、左側送風ダクト101b及び分岐ダクト101cから構成され、繰出し機構32の前側(図4,5の下側)に配設される。分岐ダクト101cには右側送風ダクト101aと左側送風ダクト101bがそれぞれ連結され、右側送風ダクト101a及び左側送風ダクト101bには各繰出し機構32が連結される。分岐ダクト101cには、分岐ダクト101cから右側送風ダクト101aへの搬送風の流入の許容及び遮断が切り換え可能な分岐シャッタ106が設けられている。
【0038】
肥料回収時に利用される排出ダクト102は、繰出し機構32の後側(図4,5の上側)に配設され、各繰出し機構32と連結される。排出ダクト102の右端(図4,5の左側)には、肥料を回収するための回収口102cが設けられている。送風ダクト101と排出ダクト102とは、それぞれのダクトの左端(図4,5の右側)にて、平面視でコ字状の連結ダクト103により連結される。連結ダクト103には連結シャッタ107が設けられ、搬送風の流入の許容及び遮断を切り換えることができる。
【0039】
図4及び図5に示すように、切換レバー26は切換軸27の右端(図4,5の左側)に設けられており、切換レバー26と回収口102cとの位置が近いので、作業者が肥料の回収状況を確認しながら切換レバー26の操作を行うことができる。切換軸27には4つの切換アーム28、回動アーム41,45が固定されており、切換レバー26を操作して切換軸27を回動させることにより、4つのシャッタ39、分岐シャッタ106及び連結シャッタ107の開閉を同時に切り換えられるよう構成してある。
【0040】
図7に示すように、切換レバー26の一端には切換アーム28が固定されており、切換レバー26と支持フレーム33との間にはスプリング24が設けられ、切換アーム28と切換部材30との間にはスプリングロッド29が設けられている。切換レバー26を実線で示す作業位置から点線で示す回収位置に操作すると、切換アーム28が点線で示す位置に回動し、切換アーム28に連結されたスプリングロッド29が押し込まれて切換部材30を回動させる。
【0041】
図8に示すように、シャッタ39の回動軸となる横軸40は切換部材30に固定されているので、切換部材30の上記回動と連動してシャッタ39が開状態となる。切換レバー26にはスプリング24による付勢力が常時作用しており、切換レバー26が回収位置と作業位置との間にある場合には、上記付勢力により回収位置か作業位置のいずれかが択一的に選択されるよう構成されている。
【0042】
次に、図10に基づいて連結シャッタ107の動作を説明する。上記切換レバー26を作業位置に操作すると、切換軸27の回転によって回動アーム45が回動し、回動アーム45に連結されている操作ロッド46が実線から点線に示す位置に移動する。すると、操作ロッド46に連結されている操作アーム47が回動軸47aを中心に回動し、回動軸47aに固定された連結シャッタ107が点線で示す閉状態となる。
【0043】
同様に、図12に基づいて分岐シャッタ106の動作を説明する。上記切換レバー26を回収位置に操作すると、切換軸27の回転によって回動アーム41が回動し、回動アーム41に連結されている操作ロッド42が実線から点線に示す位置に移動する。すると、操作ロッド42に連結されている操作アーム43が回動軸43aを中心に回動し、回動軸43aに固定された分岐シャッタ106が点線で示す閉状態となる。
【0044】
田植作業時(作業状態)には、切換レバー26を作業位置に維持して、図4に示すように、シャッタ39を閉状態、分岐シャッタ106を開状態、そして連結シャッタ107を閉状態とする。すると、電動ブロア104からの搬送風は、右側送風ダクト101a及び左側送風ダクト101bに送られるが、連結シャッタ107により排出ダクト102には送られない。このため、搬送風は送風ダクト101から繰出し機構32に送られ、田面への肥料供給を促進するために利用されることになる。
【0045】
一方、肥料回収時(回収状態)には、切換レバー26を開位置に維持して、図5に示すように、シャッタ39を開状態、分岐シャッタ106を閉状態、そして連結シャッタ107を開状態とする。すると、電動ブロア104からの搬送風は右側送風ダクト101aには送られず、左側送風ダクト101bにのみ送られる。連結シャッタ107が開いているため、左側送風ダクト101bに送られた搬送風は、連結ダクト103を経て排出ダクト102に送られる。また、シャッタ39が開いているため、肥料は繰出し機構32から排出ダクト102に排出される。その結果、排出ダクト102に排出された肥料が、搬送風によって肥料回収口102cへと運ばれ、肥料回収を簡単に行うことができる。
【0046】
図8に示すように、排出ダクト102を上部繰出しケース35と接続している接続部102aに、平面視で三角形状の突起部102dを形成している。この突起部102dは、搬送風の流れにおいて下流側となる接続部102aの側面に形成されており、搬送風が上部繰出しケース35に流れ込んだり、接続部102aで搬送風が拡散して渦を作ったりするのを防止する。
【0047】
図11に示すように、連結ダクト103の断面は台形状に形成されている。断面が台形状となるように連結ダクト103を構成すると、連結ダクト103の内部を流れる搬送風の風圧分布が、断面外側(図11の右側)付近で大きくなる分布となる。このため、回収状態における連結ダクト103及び連結ダクト103近傍の排出ダクト102における搬送風は、図5あるいは図10の矢印で示すように断面外側付近で優勢となる。このため、排出ダクト102内の搬送風が繰出し機構39の側に流れ込みにくくなり、排出口35aからの肥料の排出を円滑にする。なお、図11に示したような台形状の断面に限らず、半円形状の断面となるように構成してもよい。
【0048】
〔載置台〕
図1及び図2に示すように、機体1の右側方には支持フレーム91に支持され、折り畳み式に構成された載置台90が設けられる。載置台90は燃料タンク61の給油口61aと排出ダクト102の回収口102cとの間に位置するので、燃料タンク61に燃料を補給する際に燃料容器を一時的に置く場所として、あるいは、排出ダクト102から肥料を回収する際に回収用の容器や袋を置く場所として利用することができる。
【0049】
載置台90の取付構造の詳細を図13〜図15に示す。2枚の対向する板状の部材からなるブラケット93がステップ支持フレーム23の下側に延出するように固定され、ブラケット93の間に止め部材93a,93b及び軸部材94aが亘るように配設される。載置台90を支持する支持フレーム91は回動部材94に固定され、回動部材94は軸部材94aによりブラケット93に対して回動可能に取り付けられる。支持フレーム91とブラケット93との間にはバネ92が設けられる。以上の構成により、載置台90は、支持フレーム91及び回動部材94と一体的に回動する。
【0050】
図13に示すように、載置台90を使用状態すなわち開いた状態とすると、回動部材94が止め部材93aに当接する。このように、使用状態のときに回動部材94が止め部材93aに当接することにより、載置台90を使用状態で保持することができる。一方、載置台90を折り畳むときには、支持フレーム91が止め部材93bに当接する。このように構成することにより、折り畳みの際に載置台90や支持フレーム91が、後部補助ステップ20やステップ支持フレーム23に接触するのを防止することができる。バネ92の引張力により、載置台90は図13の開いた状態と図15の閉じた状態とのいずれかの状態において安定的に保持されるよう構成されている。
【0051】
〔他の実施形態〕
上記の実施形態においては、排出口35aを上部繰出しケース35に形成したが、排出口35aを貯留部31に形成してもよいし、貯留部31と繰出しケース34とを一体的に構成してもよい。また、シャッタ39の突出部39cの形状は断面視で三角状となるものに限らず、自由端部39bに対して傘の機能を果たすのであれば、断面視で円弧状等の他の形状であってもよい。また、自由端部39bを鋭角的に形成する代わりに、縦壁部35dに先端が鋭角的に形成された突起部を設けて、自由端部39bと縦壁部35dとが線接触するように構成してもよい。さらに、突出部39cを別部材として設け、これをシャッタ39に取り付ける構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、田植機の施肥装置に限らず、薬剤や種苗等の農用粒状物を田面に供給する他の農用粒状物供給装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
2 施肥装置(農用粒状物供給装置)
31 貯留部
34 繰出しケース
35a 排出口
35b 第1底部
35c 第2底部
35d 縦壁部
35e 覆い部
37 繰出し体
39 シャッタ
39a 回動端部
39b 自由端部
39c 突出部
40 横軸(横軸心)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農用粒状物を貯留する貯留部と、
前記貯留部の下部に備えられる繰出しケースと、
前記繰出しケースに内装されて前記貯留部の農用粒状物を繰り出す繰出し体と、
前記繰出し体の上方近傍に形成され、前記貯留部の農用粒状物を排出する排出口と、
前記排出口の上部に設けた横軸心周りに回動する回動端部と前記回動端部とは反対側の自由端部とを有するシャッタと、を備え、
前記シャッタは、前記自由端部が前記排出口の下部に接触する閉状態と、前記自由端部が前記排出口の下部から外側の上方に離れた開状態とに切換可能に構成され、前記回動端部と前記自由端部との間の部分に、前記回動端部と前記自由端部とを結ぶ仮想線よりも前記開状態から前記閉状態への回動方向に突出した突出部が備えられることを特徴とする農用粒状物供給装置。
【請求項2】
前記シャッタの全幅に亘って前記突出部を備えてある請求項1に記載の農用粒状物供給装置。
【請求項3】
前記横軸心に沿った方向に亘って、前記自由端部が前記排出口の下部に線接触することにより、前記シャッタが前記閉状態となるように構成してある請求項1又は2に記載の農用粒状物供給装置。
【請求項4】
前記排出口の下部が、第1底部と、前記第1底部よりも低く且つ外側に位置する第2底部と、前記第1底部と前記第2底部とに亘って形成された縦壁部とを備え、
前記自由端部が前記第2底部の側から前記縦壁部に接触することにより、前記シャッタが前記閉状態となるように構成してある請求項1〜3のいずれか一項に記載の農用粒状物供給装置。
【請求項5】
前記第1底部及び前記第2底部を外側ほど低くなる傾斜面とし、前記第1底部の傾斜よりも前記第2底部の傾斜が急になるように構成してある請求項4に記載の農用粒状物供給装置。
【請求項6】
前記排出口の上部から内側に突出して、前記回動端部を上側から覆う覆い部を備えてある請求項1〜5のいずれか一項に記載の農用粒状物供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−188822(P2011−188822A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58147(P2010−58147)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】