説明

送風装置

【課題】扇風機のような広範囲にわたる送風が得られる涼風吹出しとサーキュレータのような撹拌力が得られる強風吹出しとを選択できる送風装置を提供する。
【解決手段】前面吸込口13と上面吹出口14と前面吹出口15とを有する筺体10内に、前面吸込口13と上面吹出口14および前面吹出口15を結ぶ空気通路16を形成し、前面吸込口13から吸込んだ空気を空気通路16に流通させる送風ファン20を設けた送風装置1であって、前面吹出口15は上面吹出口14よりも広い開口に形成されており、空気通路16に流通された空気を上面吹出口14または前面吹出口15のいずれか一方から吹出すように風向を切換える風向切換手段30を設けた構造となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扇風機のような涼風吹出しとサーキュレータのような強風吹出しとを選択できる送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、広範囲で近い距離内で柔らかな風を発生させて人に風を当てることで涼感を得るようにした扇風機や、狭い範囲で遠くまで届く直進性の高い風を発生させて室内の空気を循環するようにしたサーキュレータが知られている。
【0003】
扇風機の一例として、プロペラファンを正回転させた場合に扇風機として使用でき、プロペラファンを逆回転させた場合にサーキュレータとして使用できる扇風機がある(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この扇風機は、サーキュレータとして使用する場合にプロペラファンを逆回転させるため、発生する風が弱くなり、室内の空気を循環するに足りる十分な撹拌力が得られないという問題点がある。
【0004】
サーキュレータの一例として、本体ケーシング内に空気を循環させる送風機を備え、本体ケーシングの下面側と上面側に通風孔を設けたサーキュレータがある(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、このサーキュレータは、下面側または上面側に設けた通風孔が狭い範囲であるため、空気の十分な撹拌力が得られる送風が可能であるが、扇風機のような広範囲にわたる空気の送風ができず、扇風機として用いるには快適性が得られないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平7−32431号公報
【特許文献2】特開2002−61909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点に鑑み、扇風機のような広範囲にわたる送風が得られる涼風吹出しとサーキュレータのような撹拌力が得られる強風吹出しとを選択できる送風装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の送風装置は、吸込口と上面に備えた上面吹出口と前面に備えた前面吹出口とを有する筺体内に、吸込口と上面吹出口および前面吹出口を結ぶ空気通路を形成し、吸込口から吸込んだ空気を空気通路に流通させる送風ファンを設けている。この送風装置は、前面吹出口は上面吹出口よりも広い開口に形成されており、空気通路に流通された空気を上面吹出口または前面吹出口のいずれか一方から吹出すように風向を切換える風向切換手段を設けた構造になっている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の送風装置によれば、風向切換手段により上面吹出口または前面吹出口のいずれか一方から吹出すように風向を切換えることで、扇風機のような広範囲にわたる送風が得られる涼風吹出しとサーキュレータのような撹拌力が得られる強風吹出しとを選択できる送風装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による送風装置の正面図である。
【図2】本発明による送風装置の内部を示す前面断面図である。
【図3】図1のA−A断面図であり、風向切換手段が空気通路内に収容された場合の説明図である。
【図4】図1のA−A断面図であり、風向切換手段が空気通路外に引出された場合の説明図である。
【図5】風向切換手段が空気通路内に収容された送風装置を部屋の中で使用したときの吹出す風の流れを示す説明図である。
【図6】風向切換手段が空気通路外に引出された送風装置を部屋の中で使用したときの吹出す風の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。図1乃至図4は、本実施形態における送風装置である。図1および図2に示すように、この送風装置1は、縦長中空状の筺体10と、筺体10内の下部に備えた送風ファン20およびファン制御部40と、筺体10の上部に備えた風向切換手段30とが設けられている。
【0011】
筺体10は、前面下部に備えた前面吸込口13と上面に備えた上面吹出口14と前面上部に備えた前面吹出口15とを有している。筺体10内には、前面吸込口13と上面吹出口14および前面吹出口14を結ぶ空気通路16が形成され、前面吸込口13から吸込んだ空気を空気通路16に流通させる送風ファン20が設けられている。主に、筺体10は、導風ダクト部11と、送風ファン20とファン制御部40とを収容した収容部12とに分かれており、前面吸込口13は収容部12に設けられ、上面吹出口14および前面吹出口15は導風ダクト部11に設けられている。なお、吸込口は、収容部12の側面や背面に設けられていてもよい。
【0012】
導風ダクト部11は、上面に上面吹出口14を備えた筒形状になっており、前面吹出口15は上面吹出口14よりも広い開口に形成されている。導風ダクト部11に形成された上面吹出口14の前端部には、一対のストッパー受部17が形成されている。ストッパー受部17は後述する風向切換手段30の前方への回転範囲を規制するようになっている。
【0013】
送風ファン20は、図2および図3に示すように、吸込部22と吹出部23とを有するファンケーシング21内に、シロッコファン24と、シロッコファン24に連結されたファンモータ25とを備えている。送風ファン20は、ファンモータ25の回転によって、収容部12に設けられた前面吸込口13に対向する吸込部22より吸込んだ空気を吹出部23から導風ダクト部11による空気通路16に流通させるようになっている。
【0014】
風向切換手段30は、図1乃至図4に示すように、一対の左側板31、右側板32と複数の導風板33とを備えている。左側板31、右側板32はそれぞれ平行四辺形状に形成されている。複数の導風板33は、左側板31と右側板32とを連結するように上下方向に平行に一定間隔で配置されている。複数の導風板33のうち、最上方の導風板33には、上面側角部であって筺体10の背面側に一対のストッパー片35が形成されている。なお、複数の導風板33は、必ずしも上下方向に一定間隔でなくても良く、平行に配置されていればよい。
【0015】
風向切換手段30は、図3および図4に示すように、左側板31および右側板32の下端部の筺体10の前面側に回転軸34が形成され、回転軸34が筺体10に支持されている。風向切換手段30は、手動または図示しない駆動モータによって回転軸34を支点として前後方向に回転することで、前面吹出口15から空気通路16に収容されたり、空気通路16から引出されたりするため、空気通路16に流通された空気を上面吹出口14または前面吹出口15のいずれか一方から吹出すように風向を切換えることができる。
【0016】
次に、風向切換手段30が空気通路16に収容された場合の風の流れについて図3を用いて説明する。風向切換手段30が空気通路16に収容されると、複数の導風板33のうち、最上方の導風板33が筺体10の背面に当接する位置に配置され、その他の導風板33は、送風ファン20に近いほど筺体10の背面から離れる位置に配置される。
【0017】
このような各導風板33の配置状態で、ファン制御部40の指令により送風ファン20のファンモータ25を駆動してシロッコファン24を回転させると、送風装置1の前方の空気が黒矢印のように前面吸込口13から吸込まれ、送風ファン20の吹出部23から空気通路16に流通される。空気通路16に流通された空気は、風向切換手段30に備える各導風板33に当たって、上方に向いて流れていた空気が前方に吹出される空気に偏向される。この結果、送風装置1では、前面吸込口13から吸込まれた空気を各導風板33間から黒矢印のように筺体10の前方に吹出すことができる。
【0018】
次に、風向切換手段30が空気通路16から引出された場合の風の流れについて図4を用いて説明する。風向切換手段30が空気通路16から引出されると、複数の導風板33のうち、最上方の導風板33に形成された一対のストッパー片35が、一対のストッパー受部17に当接され、各導風板33が前面吹出口15よりも前方に配置された状態で前方への回転が規制される。
【0019】
このような各導風板33の配置状態で、ファン制御部40の指令により送風ファン20のファンモータ25を駆動してシロッコファン24を回転させると、送風装置1の前方の空気が黒矢印のように前面吸込口13から吸込まれ、送風ファン20の吹出部23から空気通路16に流通されて上面吹出口14まで導風される。この結果、送風装置1では、前面吸込口13から吸込まれた空気を上面吹出口14から黒矢印のように筺体10の上方に吹出すことができる。
【0020】
次に、風向切換手段30の具体的な形状およびその作用について図3を用いて説明する。風向切換手段30は、各導風板33の奥行方向の長さbが同一であり、左側板31および右側板32の奥行方向の長さaが各導風板33の奥行方向の長さbと等しく、左側板31および右側板32の高さdが導風ダクト部11の高さeと等しくなっている。風向切換手段30が空気通路16に収容された場合には、複数の導風板33のうち、最上方の導風板33が筺体10の背面に当接する位置に配置され、その他の導風板33は、送風ファン20に近いほど筺体10の背面から離れる位置に配置されて前面吹出口15よりも前方に突出される。この結果、風向切換手段30から前方に吹出す風として、吹出し風の高さ方向に一様な風を確保することができる。
【0021】
また、風向切換手段30は、左側板31および右側板32の奥行方向の長さaと、各導風板33の奥行方向の長さbが、上面吹出口14の奥行方向の長さcと等しくなっている。このため、左側板31および右側板32に形成された回転軸34の回転による風向切換手段30の回転範囲が小さく、風向切換手段30が小型化できる。さらに、風向切換手段30は、各導風板33の奥行方向の長さbと、上面吹出口14の奥行方向の長さcが同一であるので、風向切換手段30が空気通路16内に収容された場合、導風板33の前方への突出を最小限に抑えて上面吹出口14を塞ぐことができる。
【0022】
次に、風向切換手段30が空気通路16に収容された場合の空気通路16を流れる空気について図3を用いて具体的に説明する。送風ファン20から空気通路16に流通される空気は、前面吹出口14から空気通路16に収容された各導風板33の奥行方向の長さに応じて分配され、前面吹出口15全体から扇風機のような広範囲にわたる風が吹出されることで、送風装置1の前方に柔らかな風が得られるようになっている。
【0023】
空気通路16に流通される空気は、各導風板33の間から筺体10の前方に吹出す際に送風抵抗を受けることになる。この送風抵抗は、導風ダクト部11による管路抵抗と、導風ダクト部11と各導風板33による曲げ抵抗と、各導風板33による管路抵抗の合成抵抗となるが、それぞれの管路抵抗は曲げ抵抗と比較して無視できるほど小さくなる。そして、筺体10の背面側に対向する左側板31および右側板32の斜辺S上に、各導風板33の端部が配置されている。このため、各導風板33の間から前方に吹出す風は、概ね一様な風速分布となり、偏りなく広範囲に吹出すことができる。
【0024】
また、空気通路16に流通される空気は、送風ファン20がシロッコファン24を用いた遠心送風機であるため、送風ファン20を図2に示す前面から見た場合、吹出口23の左側に偏った風の分布になるが、左側板31側にある導風ダクト部11の側壁によって送風抵抗が働くため、空気流路16内で左から右に空気の移動が生じて左側に偏った風の分布が改善される。このため、各導風板33の間から前方に吹出す風は、概ね一様な風の分布となり、前面吹出口15から横幅のある風を吹出すことができる。
【0025】
次に、風向切換手段30が空気通路16から引出された場合の空気通路16を流れる空気について図4を用いて具体的に説明する。空気通路16に流通される空気は、風向切換手段30で遮られることなく上面吹出口14まで連通するため、縦長の導風ダクト部11内を上昇する気流となり、上面吹出口14からサーキュレータのような直進性の高い風が吹出されることで、送風装置1の上方に強い風が得られるようになっている。
【0026】
なお、空気通路16に流通される空気は、上面吹出口14から筺体10の上方に吹出す際に送風抵抗を受けるが、風向切換手段30が空気通路16に収容された場合とは異なり、導風ダクト部11と各導風板33による曲げ抵抗を受けることなく導風ダクト部11による管路抵抗のみになっているので、送風抵抗は十分小さくなる。このため、上面吹出口14から上方に吹出す風は、各導風板33の間から前方に漏れる風が殆んどなく、上方に損失なく吹出すことができる。
【0027】
また、空気通路16に流通される空気は、風向切換手段30が空気通路16に収容された場合と同様に、左側板31側にある導風ダクト部11の側壁によって送風抵抗が働くため、上面吹出口14から上方に吹出す風は、概ね一様な風の分布となる。
【0028】
ここで、前面吹出口15の開口は、上面吹出口14の開口より広く形成されている。従って、吹出部23から流通された風は、前面吹出口15からは扇風機のような広範囲にわたる涼風として、上面吹出口14からはサーキュレータのような撹拌力が得られる強風として吹出される。
【0029】
次に、風向切換手段30が空気通路16に収容された状態の送風装置1を部屋Rの中で使用したときの吹出す風の流れについて図5を用いて説明する。送風装置1を壁際に配置し、前面吸込口13から部屋Rの中の空気を白抜き矢印のように吸込んで、風向切換手段30から白抜き矢印のように部屋Rの前方へ吹出す風になる。このため、床面Fに平行に、筺体10の前面吹出口15の高さと同じに、高さ方向に幅のある風が吹出される。
【0030】
次に、風向切換手段30が空気通路16から引出された状態の送風装置1を部屋Rの中で使用したときの吹出す風の流れについて図6を用いて説明する。送風装置1を壁際に空気調和機Aと対向するように配置し、前面下部に備えた前面吸込口13から部屋Rの中の空気を白抜き矢印のように吸込んで、上面に備えた上面吹出口14から白抜き矢印のように部屋Rの上方へ吹出す風になる。このため、上方へ吹出された風は、白抜き矢印のように、壁Wに沿った上昇気流となり、その後、天井面C、壁W、床面Fに沿って流れ、再び前面吸込口13から吸込まれて循環し部屋Rの空気を効果的に撹拌することができる。送風装置1を空気調和機Aによる部屋Rの冷暖房時に使用すると、床面F付近に溜まり易い冷たい空気と、天井C付近に溜まり易い暖かい空気がそれぞれ撹拌されるので、部屋R内の空気の温度分布を一様にして過度な冷暖房を防ぎ、快適で省エネ性の高い空調を実現することができる。また、送風装置1を空気調和機Aによる部屋Rの冷暖房時に使用するときには、部屋Rの上方へ吹出す風になるため、吹出し風が人に直接当たって不快感を与えないようにすることができる。
【0031】
以上説明してきた本発明の送風装置1によれば、前面吹出口15は上面吹出口14よりも広い開口に形成され、空気通路16に流通された空気を上面吹出口14または前面吹出口15のいずれか一方から吹出すように風向を切換える風向切換手段30を設けた構造になっているため、扇風機のような広範囲にわたる送風が得られる涼風吹出しとサーキュレータのような撹拌力が得られる強風吹出しとを選択できる送風装置1を提供することができる。
【0032】
なお、本実施形態では、左側板31および右側板32に回転軸34を形成することで、風向切換手段30が前面吹出口15から空気通路16に収容可能に支持されるようにしたが、本発明はこれに限らず、風向切換手段30として、左側板31および右側板32にスライド部材を形成することで、前面吹出口15から空気通路16に収容可能に支持されてもよく、また、上面吹出口14と前面吹出口15のそれぞれに複数の連動するルーバを形成することで、上面吹出口14または前面吹出口15のいずれか一方の開口をルーバにより閉じてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 送風装置
10 筺体
11 導風ダクト部
12 収容部
13 前面吸込口
14 上面吹出口
15 前面吹出口
16 空気通路
17 ストッパー受部
20 送風ファン
21 ファンケース
22 吸込部
23 吹出部
24 シロッコファン
25 ファンモータ
30 風向切換手段
31 左側板
32 右側板
33 導風板
34 回転軸
35 ストッパー片
40 ファン制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口と上面に備えた上面吹出口と前面に備えた前面吹出口とを有する筺体内に、前記吸込口と前記上面吹出口および前記前面吹出口を結ぶ空気通路を形成し、前記吸込口から吸込んだ空気を前記空気通路に流通させる送風ファンを設けた送風装置であって、
前記前面吹出口は前記上面吹出口よりも広い開口に形成されており、
前記空気通路に流通された空気を前記上面吹出口または前記前面吹出口のいずれか一方から吹出すように風向を切換える風向切換手段を設けたことを特徴とする送風装置。
【請求項2】
前記風向切換手段は、上下方向に平行に複数の導風板を備え、前記前面吹出口から前記空気通路に収容可能に支持されており、
前記風向切換手段は、前記空気通路内に収容された場合には、前記複数の導風板間から吹出すように風向を切換え、前記空気通路外に引出された場合には、前記上面吹出口から吹出すように風向を切換えることを特徴とする請求項1記載の送風装置。
【請求項3】
前記風向切換手段は、前記空気通路内に収容された場合には、前記複数の導風板のうち、前記送風ファンに近い導風板ほど前記筺体の背面から離れる位置に配置されることを特徴とする請求項2記載の送風装置。
【請求項4】
前記風向切換手段は、前記空気通路内に収容された場合には、前記複数の導風板のうち、前記送風ファンに近い導風板ほど前記前面吹出口よりも前方に突出されることを特徴とする請求項3記載の送風装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−29260(P2013−29260A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166169(P2011−166169)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】