説明

通信システム、リーダライタ、非接触ICカード、通信方法

【課題】通信に使用する非接触インタフェースを物理レベルレイヤで判断する。
【解決手段】本発明に係る通信システムは、リーダライタ10及び非接触ICカード20を含む通信システムであって、リーダライタ10は、非接触ICカード20にポーリングコマンドを送信する際、ポーリングコマンドをASK変調してキャリアに載せ、かつ、トーン周波数によりキャリアを振幅変調し、非接触ICカード20は、リーダライタ10からのキャリアを検波し、当該キャリアの振幅変調の周波数を判定し、振幅変調の周波数に対応した非接触インタフェースにより、リーダライタ10との通信を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通信システム、リーダライタ、非接触ICカード、及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、ISO/IEC14443に規定されているように、リーダライタでサポートする非接触インタフェース毎に専用の非接触ICカードが必要であった(例えば、非特許文献1、2参照)。例えば、ISO/IEC14443タイプAでは、タバコカードのようにタイプAのリーダライタとタイプAカードが、ISO/IEC14443タイプBでは、住基カードのようにタイプBのリーダライタとタイプBカードが、鉄道改札やバス運賃箱のような交通系カードでも特定の仕様のリーダライタと対応する非接触ICカードが必要であった。
【0003】
また、複数の非接触インタフェースをサポートする非接触ICカードも存在するが(例えば、非特許文献3参照)、その非接触ICカードにおいても、初期設定でいずれかの非接触インタフェースに決定する必要があり、動的に非接触インタフェースを切り替えることはできなかった。以降の説明では、上記の非接触インタフェース種別を、非接触インタフェース種別甲、乙、丙と表記する。
【0004】
複数の非接触インタフェースをサポートする非接触ICカードにおいて、非接触インタフェースを自動的に切り替える方式に関する従来特許としては、例えば特許文献1に記載の方式がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「JIS 外部端子なしICカード 近接型 第2部:電力伝送及び信号インタフェース」、日本規格協会、平成13年4月20日
【非特許文献2】「JIS 外部端子なしICカード 近接型 第3部:初期化及び衝突防止」、日本規格協会、平成13年9月20日
【非特許文献3】"AE−4シリーズ"、ルネサスエレクトロニクス、[online]、[平成23年2月14日検索]、インターネット〈http://japan.renesas.com/products/iccard/ae4/ae4_root.jsp〉
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3819783号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術は、非接触ICカード側において、リーダライタからの変調信号を受信した時にその反復性を利用して変調方式、符号化方式を探索して決定するものであり、探索のための時間がかかる問題点や、非接触ICカードチップの回路が複雑になるという問題点があった。
【0008】
したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、非接触インタフェースで通信するリーダライタと、複数の非接触インタフェースに対応した非接触ICカードとの間で、非接触ICカードが、通信に使用する非接触インタフェースを物理レベルレイヤで判断して高速に切替えることが可能な通信システム、リーダライタ、非接触ICカード、及び通信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る通信システムは、リーダライタ及び非接触ICカードを含む通信システムであって、前記リーダライタは、キャリアを変調する変調部と、使用する非接触インタフェースに対応するトーン周波数を発振するトーン発振部と、前記トーン発振部を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記非接触インタフェースにより前記非接触ICカードにポーリングコマンドを送信する際、前記トーン発振部に前記非接触インタフェースに対応する前記トーン周波数を発振させ、前記変調部は、前記ポーリングコマンドをASK変調して前記キャリアに載せ、かつ、前記トーン周波数により前記キャリアを振幅変調し、前記非接触ICカードは、複数の非接触インタフェースに対応した送受信部と、前記リーダライタからの前記キャリアを検波し、当該キャリアの振幅変調の周波数を判定するトーン信号受信部と、を備え、記送受信部は、前記振幅変調の周波数に対応した非接触インタフェースにより、前記リーダライタとの通信を行うものである。
【0010】
また、本発明に係るリーダライタは、非接触インタフェースによる通信を行うリーダライタであって、キャリアを変調する変調部と、前記非接触インタフェースに対応するトーン周波数を発振するトーン発振部と、前記トーン発振部を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記非接触インタフェースにより非接触ICカードにポーリングコマンドを送信する際、前記トーン発振部に前記非接触インタフェースに対応する前記トーン周波数を発振させ、前記変調部は、前記ポーリングコマンドをASK変調して前記キャリアに載せ、かつ、前記トーン周波数により前記キャリアを振幅変調するものである。
【0011】
また、本発明に係る非接触ICカードは、複数の非接触インタフェースに対応した非接触ICカードであって、前記複数の非接触インタフェースに対応した送受信部と、リーダライタからのキャリアを検波し、当該キャリアの振幅変調の周波数を判定するトーン信号受信部と、を備え、前記送受信部は、前記振幅変調の周波数に対応した非接触インタフェースにより、前記リーダライタとの通信を行うものである。
【0012】
また、本発明に係る通信方法は、リーダライタ及び非接触ICカード間の通信方法であって、前記リーダライタの処理手順は、使用する非接触インタフェースにより前記非接触ICカードにポーリングコマンドを送信する際、前記非接触インタフェースに対応するトーン周波数を発振するステップと、前記ポーリングコマンドをASK変調してキャリアに載せ、かつ、前記トーン周波数により前記キャリアを振幅変調するステップと、を含み、前記非接触ICカードの処理手順は、前記リーダライタからの前記キャリアを検波するステップと、当該キャリアの振幅変調の周波数を判定するステップと、前記振幅変調の周波数に対応した非接触インタフェースにより、前記リーダライタとの通信を行うステップと、を含むものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る通信システム、リーダライタ、非接触ICカード、通信方法によれば、非接触インタフェースで通信するリーダライタと、複数の非接触インタフェースに対応した非接触ICカードとの間で、非接触ICカードが、通信に使用する非接触インタフェースを物理レベルレイヤで判断して高速に切替えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかる通信システムの概略を示す図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態にかかるリーダライタの機能ブロックを示す図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態にかかるリーダライタによる振幅変調の一例を示す図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態にかかる非接触ICカードの機能ブロックを示す図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態にかかる非接触ICカードの実装例を示す図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態にかかるリーダライタの動作フローチャートである。
【図7】図7は、本発明の一実施形態にかかる非接触ICカードの動作フローチャートである。
【図8】図8は、本発明の一実施形態にかかる通信システムの動作シーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以降、諸図面を参照しながら、本発明の実施態様を詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施形態にかかる通信システムの運用イメージを示す図である。従来、自動販売機、行政サービス、鉄道改札等の非接触ICカードを利用した各種サービスにおいては、非接触インタフェース種別甲、乙、丙等の異なる非接触インタフェースを利用しているため、各種サービス毎に非接触インタフェースに特化したリーダライタと非接触ICカードが必要であった。本発明によると、1枚の非接触ICカード20で、異なる非接触インタフェースのリーダライタ10(10A、10B、10C)と通信可能となる。これにより、非接触ICカード20に各種サービスの非接触インタフェースに応じたアプリケーションを搭載すれば、1枚で各種サービスを受けられる非接触ICカードを実現することができる。
【0017】
図2に本発明の一実施形態にかかるリーダライタの概略構成を示す。リーダライタ10は、キャリア発振部11と、変調部12と、出力部13と、コントローラ14と、データ送信部15と、トーン発振部16と、復調部17と、アンテナ部18とを備える。リーダライタ10は、サポートする非接触インタフェース種別を非接触ICカード20に伝達する方法として、アンテナ部18から発生する交流磁界(キャリア)に低周波のトーン信号を載せる。リーダライタ10は、非接触インタフェース種別に応じて、トーン信号の周波数(以下、トーン周波数という。)をあらかじめ決めておく。例えば、非接触インタフェース種別甲の場合はトーン周波数を1KHzとし、乙の場合はトーン周波数を3KHzとし、丙の場合はトーン周波数を5KHz等と決定できる。
【0018】
図2に示すように、リーダライタ10はトーン発振部16を持ち、トーン発振部16の発振のON(開始)とOFF(停止)の切り替え及び発振周波数は、コントローラ14から制御できる。例えば、リーダライタ10が非接触インタフェース種別乙により動作するときは、コントローラ14は、トーン発振部16に3KHzのトーン周波数で発振するよう指示を出す。また、非接触ICカード20を捕捉するポーリング時には、コントローラ14は、トーン発振部16に対して発振をONとするように指示を出す。
【0019】
図3(a)は、トーン発振部16の発振がONである時にアンテナ部18から発生する磁界波形を示すものである。トーン発振部16の発振がONである場合、変調部12は、トーン発振部からのトーン信号(トーン周波数)に応じて、キャリアをAM(Amplitude Modulation)変調(振幅変調)する。コントローラ14は、非接触ICカード20へのポーリング信号送信時にトーン発振部16の発振をONとし、この場合、キャリアには例えば3KHzのトーン信号(トーン周波数)がAM変調された形で載り、さらに、106Kbpsのポーリング信号がASK(Amplitude Shift Keying)変調された形で載ることになる。なお、AM変調の変調度は、電力伝送やポーリング信号伝送に影響のない程度に小さくすることが好ましい。また、トーン信号の周波数はポーリング信号伝送に影響のない程度に低くすることが好ましい。
【0020】
リーダライタ10が非接触ICカード20から所定の非接触インタフェース種別のポーリング応答を受信すると、復調部17はポーリング応答を復調してコントローラ14に出力する。コントローラ14は、非接触ICカード20からのポーリング応答を確認すると、トーン発振部16の発振の動作を停止する(発振OFF)。
【0021】
図3(b)は、トーン発振部16の発振がOFFである時にアンテナ部18から発生する磁界波形を示すものである。トーン発振部16の発振がOFFである場合、変調部12は、キャリア発振部12からのキャリアをASK変調してデータ送信部15からのデータをキャリアに載せるが、トーン信号によるAM変調は行わない。変調されたキャリアは、出力部13で増幅され、アンテナ部18より非接触ICカード20に送信される。この場合、アンテナ部18の発する磁界波形は、図3(b)に示すように、トーン信号によるAM変調が行われない従来の磁界波形となる。
【0022】
図4に本発明の一実施形態にかかる非接触ICカードの概略構成を示す。非接触ICカード20は、アンテナ部21と、切り替えスイッチ22及び26と、各種非接触インタフェースに対応した送受信部(通信IF種別甲送受信部23、通信IF種別乙送受信部24、通信IF種別丙送受信部25)と、アプリケーション処理部27と、を備える。さらに、非接触ICカード20は、リーダライタ10からのトーン信号を復調するトーン信号受信部30を備える。トーン信号受信部30は、キャリアにAM変調されたトーン信号を検波するトーン検波部31と、検波されたトーン信号をコンパレータでレベル判定できるまでに増幅するアンプ部32と、レベル判定するコンパレータ部33と、コンパレータでディジタル化されたトーン信号の周波数をカウントするカウンタ部34と、カウンタ部のカウント結果からトーン周波数を決定するトーン周波数判定部35とを含んで構成される。トーン周波数判定部35は、トーン周波数の判定結果に基づいて、切り替えスイッチ22及び26が該当する送受信部(23、24、25)を接続するように制御する。切り替えスイッチ22及び26によって所定の非接触インタフェースに対応した送受信部(23、24、25)が接続されると、所定の非接触インタフェースによるデータ送受信が可能になり、アプリケーション処理部27は、所定の処理を実行することが可能になる。
【0023】
図5は、図4に示す非接触ICカード20の実装例を示す。図5に示す非接触ICカード20の各機能部は、ハードウェアH及びファームウェアFに大別され、ハードウェアH及びファームウェアFは、それぞれ、トーン信号受信部30、受信部40、及び送信部50の各機能部を含むものである。また、ハードウェアHは、送信用クロックを生成するクロック再生部61と、サブキャリアを生成するサブキャリア生成部62と、リーダライタ10からのキャリアを整流して電源を得る電源部63とを備える。また、ファームウェアFは、所定のアプリケーション処理を行うアプリケーション処理部71を備える。
【0024】
トーン信号受信部30は、トーン信号の復調系である。まず、アンテナ部21からとりこんだ受信信号をトーン検波部31で検波する。トーン検波部31は単にダイオード、およびキャパシタ(C)、抵抗(R)によるローパスフィルタにより構成される。トーン検波部31のC、Rによる時定数は、数KHzのトーン信号の復調に適するように、受信部40(データ復調系)のコマンド検波部41に比べて時定数が数十倍〜数百倍程度に長くなるように選択される。アンプ部32は検波後のトーン信号をコンパレータ33でディジタル化可能なように数十〜数百ミリボルト程度まで増幅するものであり、ゲインは数十倍程度である。コンパレータ33によりディジタル化されたトーン信号は、コントローラ上のファームウェアFにより実現されるトーン周波数判定部35によってゲート制御されるカウンタ34でカウントされ、トーン周波数が特定される。ファームウェアFによるトーン周波数判定部35は、トーン周波数の判定結果を、受信処理部48及び送信処理部51に伝達する。受信処理部48及び送信処理部51は、それぞれ、変調部(53、54、55)及び復調部(44、45、46)切り替え信号をハードウェアHに対して発することにより、ハードウェアHを切り替えるとともに、非接触インタフェース種別に応じた送受信処理を行う。
【0025】
具体的には、送信部50では、送信処理部51は、トーン周波数の判定結果に応じて切り替えスイッチ52及び56を切り替え、所定の非接触インタフェースに応じた変調部(通信IF種別甲変調部53、通信IF種別乙変調部54、通信IF種別丙変調部55)を接続する。例えば、トーン周波数が3KHzの場合、送信処理部51は、通信IF種別乙変調部54を接続するように、切り替えスイッチ52及び56を切り替える。変調部(53、54、55)は、サブキャリア生成部62からのサブキャリアを変調し、負荷変調部57を通じてアンテナ部21よりリーダライタ10にポーリング応答を送信する。
【0026】
受信部40では、受信処理部48がトーン周波数の判定結果に応じて切り替えスイッチ43及び47を切り替え、所定の非接触インタフェースに応じた復調部(通信IF種別甲復調部44、通信IF種別乙復調部45、通信IF種別丙復調部46)を接続する。例えば、トーン周波数が3KHzの場合、受信処理部48は、通信IF種別乙復調部45を接続するように、切り替えスイッチ43及び47を切り替える。復調部(44、45、46)は、コマンド検波部41及びアンプ部42を通じた受信信号を復調し、受信処理部48は、復調された受信信号をアプリケーション処理部71に供給する。
【0027】
図6は、リーダライタ10の処理フローである。リーダライタ10は起動するとまず、外部からの設定等により、対応可能な通信インタフェース種別である甲、乙、丙等の非接触インタフェースの中から一の非接触インタフェースを決定する(ステップS101)。次に、キャリア発振部11はキャリアの発生を開始し(ステップS102)、コントローラ14は、トーン発振部16の発振をONにするとともに、決定した非接触インタフェースに従いトーン発振部16の発振周波数(トーン周波数)を設定する(ステップS103)。変調部12は、トーン発振部16からのトーン周波数に応じたAM変調を開始する(ステップS104、S108、S112)。例えば、変調部12は、非接触インタフェース種別が甲である場合、1KHzのトーン周波数でキャリアをAM変調し、非接触インタフェース種別が乙である場合、3KHzのトーン周波数でキャリアをAM変調し、非接触インタフェース種別が丙である場合、5KHzのトーン周波数でキャリアをAM変調する。次に、変調部12は、データ送信部15からのポーリングコマンドのASK変調を開始する(ステップS105、S109、S113)。以上の処理は瞬時に行われ、運用上この処理期間に非接触ICカード20がかざされても問題はない。カードリーダ10は、この状態で非接触ICカード20からのポーリング応答を待ち受ける(ステップS106、S110、S114)。
【0028】
リーダライタ10に非接触ICカード20がかざされると、後述する図7の処理フローにより非接触ICカード20側で適応する非接触インタフェースが選択され、決定した非接触インタフェースに従ったポーリング応答が送信されてくる。リーダライタ10では、非接触ICカード20からの応答を受信すると、コントローラ14は、トーン信号によるAM変調を停止するため、トーン発振部16の発振をOFFにする指示を出す(ステップS107、S111、S115)。以降、リーダライタ10は、データの送受信が終了するまで、従来の非接触ICカードの規格通りの通信を行う(ステップS116、S117)。
【0029】
図7は、非接触ICカード20の処理フローである。非接触ICカード20は、ポーリングの受信処理に入る前に、トーン信号の検出を試みる。リーダライタ10からのキャリアを受けて非接触ICカード20に電源が供給されると、トーン信号受信部30が動作を開始し、キャリアをAM検波することによりトーン信号を取得する(ステップS201)。次に、トーン信号受信部30は、ディジタル化されたトーン信号のカウントを開始する。具体的には、トーン信号受信部30は、あらかじめ定められたゲート期間によりカウンタでディジタル化されたトーン信号のパルスをカウントし、カウント数からトーン周波数を計測する(ステップS202)。
【0030】
トーン信号受信部30は、トーン信号の周波数を判定すると、切り替えスイッチ22及び26の接続を、対応する非接触インタフェースの送受信部(23、24、25)に切り替える(ステップS203、S206、S209)。具体的には、トーン信号受信部30は、トーン周波数が1KHzの場合、非接触インタフェースを甲に切り替え、トーン周波数が3KHzの場合、非接触インタフェースを乙に切り替え、トーン周波数が5KHzの場合、非接触インタフェースを丙に切り替える。なお、各種非接触インタフェースに対応する送受信部(23、24、25)の処理は、従来の非接触ICカードの規格に沿ったものである。非接触ICカード20は、接続された送受信部(23、24、25)を通じてリーダライタ10からのポーリングを受信し、ポーリング応答をリーダライタ10に送信する(ステップS204、S207、S210)。その後、非接触ICカード20は、トーン周波数により判定した非接触インタフェースによって、リーダライタ10との間で通信を行う(ステップS205、S208、S211)。
【0031】
図8は、リーダライタ10と、非接触ICカード20と、上位機器80とを含む通信システムの処理フローである。なお、上位機器80とは、改札機やPOSシステムなど、リーダライタ10を備え、リーダライタ10に対して各種制御を行うものである。
【0032】
上位機器80は、電源投入後リーダライタ10の初期設定を行う(ステップS301)。初期設定の中には、サービスで利用する非接触インタフェース種別の設定が含まれる。リーダライタ10は、上位機器80から初期設定コマンドを受けると、非接触インタフェース種別を決定し、上位機器80に非接触インタフェースを決定した旨の初期設定応答を返す(ステップS302)。その後、リーダライタ10は、上位機器80からのコマンドを待ち受ける。
【0033】
上位機器80は、リーダライタ10から初期設定応答を受信すると、非接触ICカードを探索するため、カード探索コマンドをリーダライタ10に送信する(ステップS303)。上位機器80がカード探索コマンドを発すると、リーダライタ10は、磁界によるキャリア送信を開始する(ステップS304)。また、リーダライタ10は、ほぼ同時に非接触インタフェース種別に応じたトーン信号によるAM変調と、非接触ICカードに対するポーリングコマンドによるASK変調とを開始する(ステップS305、S306)。このとき、図3(a)のように、磁界によるキャリアにトーン信号が数KHzでAM変調され、さらに数10バイトのポーリングコマンドが数百Kbpsの通信速度により数10m秒間隔でASK変調されている状態となる。
【0034】
ここで、非接触インタフェース切り替え機能付きの非接触ICカード20がリーダライタ10の磁界に入ってきたとき、非接触ICカード20は、キャリアを整流して電源を得て動作を開始する(ステップS307)。まず、非接触ICカード20は、キャリアをAM検波しトーン信号を取得する(ステップS308)。トーン信号受信部30によりトーン信号の周波数が判別すると、非接触ICカード20は、トーン周波数に応じた非接触インタフェースを選択する(ステップS309)。非接触ICカード20は、選択が完了すると、選択した非接触インタフェースによりキャリアを検波し、ポーリングコマンドを受信する(ステップS310)。
【0035】
非接触ICカード20は、ポーリングコマンドを処理し、選択した非接触インタフェースに従ったポーリング応答をリーダライタに送信する(ステップS311)。リーダライタ10は、非接触インタフェースが一意に選択されたポーリング応答を受信すると、カードを検出したことを上位機器80に伝えるとともに、トーン信号によるAM変調を停止する(ステップS312)。これ以降は、従来の非接触ICカードの通信と同様にデータ転送が行われる。上位機器80は、所定のアプリケーション処理に応じたデータ転送コマンドをリーダライタ10に送信する(ステップS313)。リーダライタ10は、当該データ転送コマンドを非接触ICカード20に転送する(ステップS314)。この際の磁界波形は図3(b)の状態となる。非接触ICカード20は、所定のアプリケーション処理を行い(ステップS315)、リーダライタ10及び上位機器80にデータ転送応答を送信する。その後、各装置の処理は終了する(ステップS316、S317、S318)。
【0036】
このように、本実施形態によれば、リーダライタ10において、コントローラ14は、非接触ICカードにポーリングコマンドを送信する際、トーン発振部16に使用する非接触インタフェースに対応するトーン周波数を発振させ、変調部12は、ポーリングコマンドをASK変調してキャリアに載せ、かつ、トーン周波数によりキャリアを振幅変調する。これにより、リーダライタ10は、自らが使用する非接触インタフェースの種別を、非接触ICカード20に物理レベルレイヤで伝えることが可能になる。
【0037】
また、非接触ICカード20は、リーダライタ10からのキャリアを検波して当該キャリアの振幅変調の周波数を判定し、振幅変調の周波数に対応した非接触インタフェースにより、リーダライタ10との通信を行う。これにより、非接触ICカード20は、リーダライタ10が使用する非接触インタフェースを物理レベルレイヤで判定することが可能になる。
【0038】
即ち、本実施形態によるリーダライタ10及び非接触ICカード20を含む通信システムにおいては、非接触ICカード20において、リーダライタ10がサポートする非接触インタフェース種別を物理レイヤレベルで判断して、非接触インタフェースを切り替え可能であるので、ユーザに利用する非接触インタフェースの種類と、インタフェースの切り替え時間を感じさせない高速なサービスを提供可能となる。
【0039】
また、非接触ICカード20は、ポーリングコマンドへの応答をリーダライタ10に送信し、リーダライタ10のコントローラ14は、ポーリングコマンドへの応答を受信すると、トーン発振部16の動作を停止する。これにより、非接触ICカード20が非接触インタフェースの種別を判定した後は、従来の規格通りの通信を行うことが可能になる。
【0040】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各部材、各手段、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0041】
10 リーダライタ
11 キャリア発信部
12 変調部
13 出力部
14 コントローラ
15 データ送信部
16 トーン発信部
17 復調部
18 アンテナ部
20 非接触ICカード
21 アンテナ部
22 切り替えスイッチ
23 通信IF種別甲送受信部
24 通信IF種別乙送受信部
25 通信IF種別丙送受信部
26 切り替えスイッチ
27 アプリケーション処理部
30 トーン信号受信部
31 トーン検波部
32 アンプ部
33 コンパレータ
34 カウンタ
35 トーン周波数判定部
40 受信部
41 包落線検波部
42 アンプ部
43 切り替えスイッチ
44 通信IF種別甲復調部
45 通信IF種別乙復調部
46 通信IF種別丙復調部
47 切り替えスイッチ
48 受信処理部
50 送信部
51 送信処理部
52 切り替えスイッチ
53 通信IF種別甲変調部
54 通信IF種別乙変調部
55 通信IF種別丙変調部
56 切り替えスイッチ
57 負荷変調部
60 電源部
61 クロック再生部
62 サブキャリア生成部
71 アプリケーション処理部
H ハードウェア
F ファームウェア



【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダライタ及び非接触ICカードを含む通信システムであって、
前記リーダライタは、
キャリアを変調する変調部と、
使用する非接触インタフェースに対応するトーン周波数を発振するトーン発振部と、
前記トーン発振部を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記非接触インタフェースにより前記非接触ICカードにポーリングコマンドを送信する際、前記トーン発振部に前記非接触インタフェースに対応する前記トーン周波数を発振させ、
前記変調部は、前記ポーリングコマンドをASK変調して前記キャリアに載せ、かつ、前記トーン周波数により前記キャリアを振幅変調し、
前記非接触ICカードは、
複数の非接触インタフェースに対応した送受信部と、
前記リーダライタからの前記キャリアを検波し、当該キャリアの振幅変調の周波数を判定するトーン信号受信部と、を備え、
前記送受信部は、前記振幅変調の周波数に対応した非接触インタフェースにより、前記リーダライタとの通信を行う、通信システム。
【請求項2】
前記非接触ICカードの前記送受信部は、前記判定した非接触インタフェースにより、前記ポーリングコマンドへの応答を前記リーダライタに送信し、
前記リーダライタの前記コントローラは、前記ポーリングコマンドへの応答を受信すると、前記トーン発振部の動作を停止する、請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
非接触インタフェースによる通信を行うリーダライタであって、
キャリアを変調する変調部と、
前記非接触インタフェースに対応するトーン周波数を発振するトーン発振部と、
前記トーン発振部を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記非接触インタフェースにより非接触ICカードにポーリングコマンドを送信する際、前記トーン発振部に前記非接触インタフェースに対応する前記トーン周波数を発振させ、
前記変調部は、前記ポーリングコマンドをASK変調して前記キャリアに載せ、かつ、前記トーン周波数により前記キャリアを振幅変調する、リーダライタ。
【請求項4】
前記制御部は、前記非接触カードから前記ポーリングコマンドへの応答を受信すると、前記トーン発振部の動作を停止する、請求項3に記載のリーダライタ。
【請求項5】
複数の非接触インタフェースに対応した非接触ICカードであって、
前記複数の非接触インタフェースに対応した送受信部と、
リーダライタからのキャリアを検波し、当該キャリアの振幅変調の周波数を判定するトーン信号受信部と、を備え、
前記送受信部は、前記振幅変調の周波数に対応した非接触インタフェースにより、前記リーダライタとの通信を行う、非接触ICカード。
【請求項6】
リーダライタ及び非接触ICカード間の通信方法であって
前記リーダライタの処理手順は、
使用する非接触インタフェースにより前記非接触ICカードにポーリングコマンドを送信する際、前記非接触インタフェースに対応するトーン周波数を発振するステップと、
前記ポーリングコマンドをASK変調してキャリアに載せ、かつ、前記トーン周波数により前記キャリアを振幅変調するステップと、を含み、
前記非接触ICカードの処理手順は、
前記リーダライタからの前記キャリアを検波するステップと、
当該キャリアの振幅変調の周波数を判定するステップと、
前記振幅変調の周波数に対応した非接触インタフェースにより、前記リーダライタとの通信を行うステップと、を含む通信方法。
【請求項7】
前記リーダライタの処理手順は、前記非接触カードから前記ポーリングコマンドへの応答を受信すると、前記トーン発振部の動作を停止するステップを含む、請求項6に記載の通信方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−168809(P2012−168809A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30161(P2011−30161)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】