説明

通信帯域調整装置及び方法、無線アクセス装置、および、無線ネットワーク

【課題】無線ネットワークを構成する無線装置上で、従来よりも早くかつデータの送信先に応じて的確に、安定的な通信帯域の確保ができるようにする。
【解決手段】かかる課題を解決するために、本発明の通信帯域調整装置は、無線ネットワークを構成する複数の無線装置のそれぞれが搭載する通信帯域調整装置において、無線装置から到来した信号を受信する受信手段と、受信手段が受信した受信信号の送信元別の信号量を求める信号量算出手段と、信号量算出手段が求めた送信元別の信号量に応じて、各送信元からの信号受信量を調整する受信量調整手段とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信帯域調整装置及び方法、無線アクセス装置、および、無線ネットワークに関し、例えば、無線ネットワークにおいて通信信号の通信帯域を調整する通信帯域調整装置、この通信帯域調整装置を有する無線アクセス装置、及び無線アクセス装置を有して構成する無線ネットワークに適用可能である。
【背景技術】
【0002】
近年、無線ネットワークにおいて、複数のアクセスポイント間を網の目(メッシュ)状に配置し、アクセスポイントとアクセスポイントとの間を無線接続する無線メッシュネットワークがある。この無線メッシュネットワークによれば、有線ネットワーク部分を最小限にし、ネットワークの拡大を図り得る。
【0003】
図2は、従来のアクセスポイントの内部構成を示すブロック図であり、図3は、複数のアクセスポイントを有して構成される無線メッシュネットワーク1の構成イメージ図である。
【0004】
このようなネットワーク1構成で通信を行なう場合、アクセスポイント間の通信速度と、アクセスポイントとクライアントとの間の通信速度が等しいとき、ネットワークが高負荷状態となるため、マルチホップ時に実際に割り当てられる帯域は、あるアクセスポイントから見た場合、ホップして再ホップし外部に向かうデータに対するものと、そのアクセスポイントに直接接続されているクライアントのデータに対するものとが対等となる。そのため、ゲートウェイ(アクセスポイント兼ゲートウェイ)から遠くにあるアクセスポイント又はクライアントほど、データの競合が生じる確率が高くなり、使用できる帯域が狭くなる。よって、例えば、VoIP(Voice Over IP)など一定以上帯域を確保する必要がある通信において、帯域の確保が困難であるという問題があった。
【0005】
このような問題を解決するために、例えば、非特許文献に示すようなパケットスケジューリング手法がある。
【0006】
非特許文献1に開示される従来技術は、無線ノードが、自ノードから発生したパケットを保持するためのキュー(OT−Q)と、転送されてきたパケットを保持するキュー(FT−Q)との2つのキューを有し、キューからパケットを出力する際に、スケジューラが、OT−Q及びFT−Qのキューイング状況と端末リストの登録状況とに応じてスケジューリングするものであり、これにより各無線ノード間のスループットの差異を改善するものである。
【非特許文献1】泉川晴紀、石川博康、杉山敬三「マルチホップ無線ネットワークにおけるユーザ間の公平性を考慮したスケジュール手法」、2004年9月、電子情報通信学会ソサイエティ大会、B-5-183
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1に示すパケットスケジューリング技術には次のような問題があった。
【0008】
1つ目は、非特許文献1に示すパケットスケジューリング手法は通信が始まって実際にデータがネットワーク上に流れてから、スケジューリングを行なうので、スケジューリングが安定して動作する状態になるまで時間を要していた。
【0009】
2つ目は、非特許文献1では、スケジューラがOT−Q及びFT−Qの2種類のキューを備えるものとしたが、スケジューリングの際に、パケットの送信先に応じたスケジューリングが考慮されていない。
【0010】
3つ目は、非特許文献1では、キューからパケット出力後に、スケジューラが送信元を端末リストに登録することとしているが、無線メッシュネットワークに非特許文献1をそのまま適用すると、無線メッシュネットワークでは、ネットワークのエリアは全ノード数により画定されるから、ノードリストの登録数が多くなり、キューのスケジューリングが困難である。
【0011】
そのため、無線ネットワークを構成する無線装置上で、従来よりも早くかつデータの送信先に応じて的確に、安定的な通信帯域の確保ができる通信帯域調整装置及び方法、無線アクセス装置、および、無線ネットワークが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる課題を解決するために、第1の本発明の通信帯域調整装置は、無線ネットワークを構成する複数の無線装置のそれぞれが搭載する通信帯域調整装置において、無線装置から到来した信号を受信する受信手段と、受信手段が受信した受信信号の送信元別の信号量を求める信号量算出手段と、信号量算出手段が求めた送信元別の信号量に応じて、各送信元からの信号受信量を調整する受信量調整手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
第2の本発明の通信帯域調整装置は、無線ネットワークを構成する複数の無線装置のそれぞれが搭載する通信帯域調整装置において、各無線装置に送信する送信信号の送信先別の信号量を求める信号量算出手段と、信号量算出手段が求めた送信先別の信号量に応じて、各送信先に送信する信号送信量を調整する送信量調整手段と、送信量調整手段が調整した送信量に応じた送信信号を送信する送信手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
第3の本発明の通信帯域調整方法は、第1の本発明の通信帯域調整装置に対応するものである。具体的には、無線ネットワークを構成する複数の無線装置のそれぞれが搭載する通信帯域調整方法において、無線装置から到来した信号を受信する受信工程と、受信工程で受信した受信信号の送信元別の信号量を求める信号量算出工程と、信号量算出工程で求めた送信元別の信号量に応じて、各送信元からの信号受信量を調整する受信量調整工程とを有することを特徴とする。
【0015】
第4の本発明の通信帯域調整方法は、第2の本発明の通信帯域調整装置に対応するものである。具体的には、無線ネットワークを構成する複数の無線装置のそれぞれが搭載する通信帯域調整方法において、各無線装置に送信する送信信号の送信先別の信号量を求める信号量算出工程と、信号量算出工程が求めた送信先別の信号量に応じて、各送信先に送信する信号送信量を調整する送信量調整工程と、送信量調整工程が調整した送信量に応じた送信信号を送信する送信工程とを有することを特徴とする。
【0016】
第5の本発明の無線アクセス装置は、第1の本発明の通信帯域調整装置を備えることを特徴とする。
【0017】
第6の本発明の無線アクセス装置は、第2の本発明の通信帯域調整装置を備えることを特徴とする。
【0018】
第7の本発明の無線アクセス装置は、第1の本発明の通信帯域調整装置を備えると共に、第2の本発明の通信帯域調整装置も備えることを特徴とする。
【0019】
第8の本発明の無線ネットワークは、無線端末と接続可能な無線アクセス装置を複数有して構成される無線ネットワークにおいて、各無線アクセス装置が、第5〜第7の本発明の無線アクセス装置に対応することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の通信帯域調整装置及び方法、無線アクセス装置、および、無線ネットワークによれば、通信ルートの確率と同時にパケットスケジューリングを決めることができ、送信先を考慮したスケジューリングを行なうことができ、隣接する無線装置に関する情報のみでスケジューリングを行なうため、ノード情報が増えないという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(A)実施形態
以下、本発明の通信帯域調整装置及び方法、無線アクセス装置、および、無線ネットワークの実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
本実施形態は、無線メッシュネットワーク上に存在する無線アクセスポイント装置(以下、アクセスポイント)に、本発明の無線アクセス装置を適用した場合について説明する。
【0023】
(A−1)実施形態の構成
図4は、本実施形態の無線メッシュネットワークの全体構成のイメージを示す構成図である。図4に示すように、本実施形態の無線メッシュネットワークは、複数(図4では7台)のアクセスポイント500(500−1〜500−7)を有して構成するものである。以下、すべてのアクセスポイントに共通する構成及び動作を説明する場合には便宜的にアクセスポイント500と示して説明する。
【0024】
各アクセスポイント500は、それぞれの無線電波到達範囲内に存在するものであって通信可能な他のアクセスセスポイント(以下、これを隣接アクセスポイントという)と無線通信するものである。これにより、アクセスポイント500は、他のアクセスポイントとメッシュネットワークを構成するために必要な情報(例えば、データ、経路情報、トポロジー情報等)を通信し合うことができる。
【0025】
また、各アクセスポイント500は、所定周期でビーコン信号を発信しており、そのビーコン信号を受信したクライアント端末(図示しない)がアクセスポイント500に対して発信した信号を受信することで、接続可能なクライアント端末の存在を検知し、そのクライアント端末のアクセス制御をするものである。これにより、クライアント端末を含めた無線メッシュネットワーク上でのデータ通信を実現することができる。
【0026】
ここで、アクセスポイント500−1は、ゲートウェイ(図示しない)と接続するものである。従って、他の外部ネットワークと接続する場合、アクセスポイント500−1からゲートウェイ(図示しない)を介して外部ネットワークに接続する。なお、アクセスポイント500−1自体が、ゲートウェイ機能を有するものとしてもよい。
【0027】
図1は、本実施形態のアクセスポイント500の内部構成を示すブロック図である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態のアクセスポイント500は、メッシュネットワーク側無線部501、コントローラー502、クライアント側無線部503、メッシュ受信キュー504、メッシュ送信キュー505、クライアント受信キュー506を少なくとも有する。
【0029】
メッシュネットワーク側無線部501は、所定の通信方式により、他のアクセスポイントが送信した通信データを受信し、その受信した通信データをコントローラー502に与えるものである。また、メッシュネットワーク側無線部501は、コントローラー502から通信データを受け取り、所定の通信方式により通信データを送信するものである。
【0030】
クライアント側無線部503は、所定の通信方式により、クライアント端末が送信した通信データを受信し、コントローラー502の制御の下、受信した通信データをクライアント受信キュー506に与えるものである。また、クライアント側無線部503は、コントローラー501から通信データを受け取り、所定の通信方式により通信データを送受信するものである。ここで、クライアント側無線部503の無線通信方式は、特に限定されないが、例えば、IEEE802.11(IEEE802.11a、802.11b、802.11g等)に規定される通信方式を適用できる。
【0031】
本実施形態のアクセスポイント500は、メッシュ受信キュー504、メッシュ送信キュー505、クライアント受信キュー506の3種類のキューを有する。
【0032】
メッシュ受信キュー504は、後述するようにコントローラー502により、隣接アクセスポイント500毎に割り当てられたキューを有するものである。また、メッシュ受信キュー504は、コントローラー502の制御の下、メッシュネットワーク側無線部501が受信した通信データを受け取り、受信した通信データを保持するものである。また、メッシュ受信キュー504は、コントローラー502の制御の下、保持している通信データの送信先に応じて、メッシュ送信キュー505又はクライアント側無線部503に与えるものである。
【0033】
クライアント受信キュー506は、クライアント側無線部503が受信した通信データを受け取り、保持するものである。また、クライアント受信キュー506は、コントローラー502の制御の下、保持している通信データをメッシュ送信キュー505に与えるものである。
【0034】
メッシュ送信キュー505は、後述するようにコントローラー502により、隣接アクセスポイント500毎に割り当てられたキューを有するものである。また、メッシュ送信キュー505は、メッシュ受信キュー504とクライアント受信キュー506とから送信データを受け取り、通信データを保持するものである。また、メッシュ送信キュー505は、コントローラー502の制御の下、保持している通信データをメッシュネットワーク側無線部501に与えるものである。
【0035】
コントローラー502は、アクセスポイント500が実現する機能を制御するものであり、例えば、CPU、RAM、ROM等を有する制御手段が該当する。そして、後述するアクセスポイント500の機能を実現するために、CPU等がRAM、ROM等に格納されている処理プログラム及び処理に必要なデータを用いて実行する。これにより、アクセスポイント500の機能を実現できる。
【0036】
本実施形態のコントローラー502が実行する主な機能は、図5に示すように、無線メッシュネットワークを構成するアクセスポイント500間の経路情報を作成するルーティング情報作成部502a、ルーティング情報に基づいて隣接アクセスポイント数及び隣接アクセスポイントを経由してデータ転送されるアクセスポイント数を求める転送アクセスポイント数計算部502b、隣接アクセスポイント毎のメッシュ受信キュー504及びメッシュ送信キュー505を割り当てるキュー割り当て部502b、隣接アクセスポイントを経由してデータ転送されるアクセスポイント数に応じて通信データの受信量を制御する受信量制御部502d、隣接アクセスポイントを経由してデータ転送されるアクセスポイント数に応じて通信データの送信量を制御する送信量制御部502eを少なくとも有する。
【0037】
以下、コントローラー502により実行される機能の詳細について説明する。まず、ルーティング情報作成部502aは、メッシュネットワーク無線部501を通じて隣接アクセスポイント500から受信した情報に基づいて、無線メッシュネットワーク100のアクセスポイント500間を結ぶ通信経路情報を作成するものである。
【0038】
ここで、ルーティング情報は、少なくとも、自装置500の隣接アクセスポイント500及び各隣接アクセスポイント500を経由して通信できる他のアクセスポイント(すなわち、隣接アクセスポイント500の先でマルチホップ転送されるアクセスポイントに関する情報)を含むものである。
【0039】
また、ルーティング情報作成部502aは、各アクセスポイント500内で独自にルーティング情報(例えば、ルーティングテーブル等)を作成することができる。また、各アクセスポイント500におけるルーティング情報の作成方法は、特に限定されないが、例えば、OLSR(Optimized Link Stage Routing)プロトコルを用いた方法が考えられる。なお、アクセスポイント500で用いる方法は、各アクセスポイントごとに異なるものであってもよい。
【0040】
転送アクセスポイント数計算部502bは、ルーティング情報を参照して、自装置500の隣接アクセスポイント500の数、及び隣接アクセスポイント500毎に、隣接アクセスポイント500を経由して通信することができる他のアクセスポイント500の数を計算するものである。
【0041】
例えば、図4のようなネットワーク構成の場合、アクセスポイント500−2において、ルーティング情報を参照し、隣接アクセスポイントが、アクセスポイント500−1、アクセスポイント500−3、及びアクセスポイント500−4の3台であることを求める。
【0042】
次に、例えば、ゲートウェイから遠い側についての隣接アクセスポイント500−3を経由して通信できる他のアクセスポイントは、隣接アクセスポイント500−3自身も含み、アクセスポイント500−5、500−6、及び500−7の4台であることを求める。同様にして、隣接アクセスポイント500−4については1台であることを求める。
【0043】
これにより、自装置500から見て、ゲートウェイ側から遠い側の隣接アクセスポイント500から先にデータ転送(マルチホップ転送)され得る他のアクセスポイントの数を、隣接アクセスポイント毎に把握することができる。
【0044】
キュー割り当て部502cは、メッシュ受信キュー504及びメッシュ送信キュー505について、隣接アクセスポイント500数に応じた数のキューを用意し、隣接アクセスポイント500毎のメッシュ受信キュー504及びメッシュ送信キュー505として割り当てるものである。
【0045】
受信量制御部502dは、各隣接アクセスポイント500経由の通信できるアクセスポイント数に基づいて、クライアント受信キュー506及びメッシュ受信キュー504から単位時間内に通信データを取り出す比率を求めて、通信帯域に対する各比率に相当するデータ量を、クライアント受信キュー506及びメッシュ受信キュー504から取り出すものである。
【0046】
送信量制御部502eは、各隣接アクセスポイント500経由の通信できるアクセスポイント数に基づいて、メッシュ送信キュー505から単位時間内に通信データを取り出す比率を求めて、通信帯域に対する各比率に相当するデータ量を、メッシュ送信キュー505から取り出すものである。
【0047】
(A−2)実施形態の動作
次に、本実施形態のアクセスポイント500における動作について図面を参照して説明する。
【0048】
図6は、アクセスポイント500における動作の全体の流れを示すフローチャートである。
【0049】
まず、アクセスポイント500は、他のアクセスポイント500と無線通信を行ない、無線メッシュネットワーク100の所定のルーティング情報を作成する(S1)。
【0050】
アクセスポイント500において所定のルーティング情報が作成されると、コントローラー502により、ルーティング情報が参照され、自装置500の隣接アクセスポイント500の数が算出される(S2)。また、コントローラー502により、各隣接アクセスポイント500毎に、隣接アクセスポイント500を経由してマルチホップで通信することができる他のアクセスポイントの数が算出される(S3)。
【0051】
ここで、一般的に説明すると、例えば隣接アクセスポイント500の数をn(nは自然数)とした場合、隣接アクセスポイントをAP1、AP2、…、APnとする。また、隣接アクセスポイントAP1、AP2、…、APnを経由してマルチホップで通信することができる他のアクセスポイントの数をN1、N2、…、Nnとする。
【0052】
例えば、図4に示すネットワーク構成の場合、アクセスポイント500−2を例に挙げて説明すると、隣接アクセスポイントの数は3台(n=3)である。そして、隣接アクセスポイントAP1をアクセスポイント500−1とし、隣接アクセスポイントAP1をアクセスポイント500−3とし、隣接アクセスポイントAP2をアクセスポイント500−4とする。このとき、隣接アクセスポイントAP3であるアクセスポイント500−1はゲートウェイにデータ転送する経路アクセスポイントとする。
【0053】
そうすると、N1はアクセスポイント500−1のみの1(N1=1)であり、N2はアクセスポイント500−3、500−5、500−6及び500−7の4(N2=4)である。
【0054】
S2及びS3において、隣接アクセスポイント500の数及び隣接アクセスポイント500を経由してマルチキャストで通信できる他のアクセスポイント500の数が求められると、コントローラー502により、メッシュ受信キュー504及びメッシュ送信キュー505は、隣接アクセスポイント500の数であるn個用意される(S4)。
【0055】
ここで、メッシュ受信キュー504において、隣接アクセスポイント500毎のメッシュ受信キューをRQ1、RQ2、…RQnと示し、メッシュ送信キュー505において、隣接アクセスポイント500毎のメッシュ送信キューをSQ1、SQ2、…、SQnと示して説明する。
【0056】
そして、メッシュ受信キュー504及びメッシュ送信キュー505の割り当てが終了すると、各アクセスポイント500における所定の送信タイミングに、以下のようにして求めた割り合いのデータ量で通信データが送受信される(S5)。
【0057】
図7は、メッシュ受信キュー504及びクライアント受信キュー506から通信データを取り出す動作を示すフローチャートである。
【0058】
図7において、アクセスポイント500はデータの受信を受け付け(S101)、クライアント側無線部503がクライアント端末(図示しない)から受信した通信データは、クライアント受信キュー506に与えられる(S102)。
【0059】
また、メッシュネットワーク側無線部501が受信した通信データは、その通信データに含まれているAP情報に基づいて送信元を特定し、その送信元のアクセスポイントAPk(k=1,2,…,n)に割り当てたメッシュ受信キューRQkに与えられる(S103)。
【0060】
次に、メッシュ受信キュー504及びクライアント受信キュー506から単位時間内に取り出す通信データ量の比率を求める(S104)。
【0061】
ここで、受信キュー504及び506から通信データを取り出す量の比率は、次のような関係式から求める。
【0062】
クライアント受信キューをRQ0とし、クライアント受信キュー506から単位時間内に通信データを取り出す量をVRQ0とする。また、各メッシュ受信キューRQ1、RQ2、…、RQnから単位時間内に通信データを取り出す量をVRQ1、VRQ2、…、VRQnとする。
【数1】

【0063】
上記式(1)では、クライアント受信キュー506及び各メッシュ受信キュー504の各受信キューRQ0、RQ1、RQ2、…、RQnから単位時間内に通信データを取り出す量VRQ0、VRQ1、VRQ2、…、VRQnは、隣接アクセスポイント500を経由してマルチキャストで通信することができるアクセスポイントの数に比例するようにする。
【0064】
このとき、クライアント側の受信も確保すべく、クライアント受信キューRQ0からデータを取り出す量VRQ0に対応する比率を「1」とした。すなわち、自装置500が、1つの隣接アクセスポイントと通信する通信量に相当する帯域を確保するものとする。
【0065】
また、各メッシュ受信キューRQ1、RQ2、…、RQn−1からデータを取り出す量は、各隣接アクセスポイントAP1、AP2、…、APn−1を経由して通信することができる他のアクセスポイント数N1、N2、…、Nn−1に対応させるものとする。
【0066】
さらに、ゲートウェイへの経路アクセスポイントのメッシュ受信キューRQnについては、N1〜Nn−1の和に、クライアント側の受信のために設けた「1」を足したものとする。
【0067】
図8は、図4のアクセスポイント500−2における各受信キュー504及び506からのデータ取り出し量と、他のアクセスポイント数との関係を説明する説明図である。
【0068】
図8に示すように、アクセスポイント500−2において、クライアント受信キューの取り出し量VRQ0の割り合いは「1」であり、隣接アクセスポイント500−3のメッシュ受信キューの取り出し量VRQ1の割り合いは「4」であり、隣接アクセスポイント500−4のメッシュ受信キューの取り出し量VRQ2は「1」であり、ゲートウェイへの経路アクセスポイント500−1のメッシュ受信キューの取り出し量VRQ3は「1{=(4+1)+1}」である。
【0069】
そして、アクセスポイント500において所定の単位時間が経過すると(S105)、アクセスポイント500の通信帯域に対するS104で求めた比率のデータ量が各受信キュー504及び506から取り出される(S106)。
【0070】
各受信キュー504及び506から通信データが取り出されると、各通信データの送信元が判断される(S107)。
【0071】
そして、送信元が自装置500のクライアント側無線503に接続されているクライアントである場合、通信データはクライアント側無線部503に与えられ(S108)、クライアント側無線部503から送信される(S109)。
【0072】
一方、送信元がメッシュネットワークのアクセスポイント500を介して送信されるものである場合、通信データは次の転送先のアクセスポイントのメッシュ送信キューに与えられ(S110)、以下のような送信処理により送信される(S111)。
【0073】
図9は、メッシュ送信キュー505から通信データを取り出す動作を示すフローチャートである。
【0074】
図9において、アクセスポイント500において、メッシュネットワーク側に送信する通信データのメッシュ送信キュー505のへ受け入れを受け付ける(S201)。
【0075】
そして、メッシュ受信キュー504若しくはクライアント受信キュー506から通信データが、次の転送先のアクセスポイントに応じてメッシュ送信キュー505に入れられる(S202)。
【0076】
次に、メッシュ送信キュー505から単位時間内に取り出す通信データ量の比率を求める(S203)。
【0077】
ここで、メッシュ送信キュー505から通信データを取り出す量の比率は、次のような関係式から求める。
【0078】
各メッシュ受信キューSQ1、SQ2、…、SQnから単位時間内に通信データを取り出す量をVRQ1、VRQ2、…、VRQnとする。
【数2】

【0079】
上記式(2)では、メッシュ送信キュー505の各受信キューSQ1、SQ2、…、SQnから単位時間内に通信データを取り出す量VSQ1、VSQ2、…、VSQnは、隣接アクセスポイント500を経由してマルチキャストで通信することができるアクセスポイントの数に比例するようにする。
【0080】
このとき、各メッシュ送信キューSQ1、SQ2、…、SQn−1からデータを取り出す量は、各隣接アクセスポイントAP1、AP2、…、APn−1を経由して通信することができる他のアクセスポイント数N1、N2、…、Nn−1に対応させるものとする。
【0081】
また、ゲートウェイへの経路アクセスポイントのメッシュ受信キューRQnについては、N1〜Nn−1の和とした。
【0082】
図10は、図4のアクセスポイント500−2における各メッシュ送信キュー505からのデータ取り出し量と、他のアクセスポイント数との関係を説明する説明図である。
【0083】
図10に示すように、アクセスポイント500−2において、隣接アクセスポイント500−3のメッシュ送信キューの取り出し量VSQ1の割り合いは「4」であり、隣接アクセスポイント500−4のメッシュ送信キューの取り出し量VSQ2は「1」であり、ゲートウェイへの経路アクセスポイント500−1のメッシュ送信キューの取り出し量VSQ3は「1(=4+1)」である。
【0084】
なお、上記式(2)は、メッシュ送信キュー505のデータ取り出し量の比率を求めるものであるから、クライアント側への送信量を考慮する必要がないので、上記式(1)のように「1」を設けない。
【0085】
そして、アクセスポイント500において所定の単位時間が経過すると(S204)、アクセスポイント500の通信帯域に対するS204で求めた比率のデータ量がメッシュ送信キュー505から取り出される(S205)。
【0086】
そして、メッシュ送信キュー505から取り出された通信データは、メッシュネットワーク側無線部501に与えられ(S206)、メッシュネットワーク側無線部501から送信される(S207)。
【0087】
(A−3)実施形態の効果
以上、本実施形態によれば、ある1つのアクセスポイントを経由し、別のアクセスポイントへ到達するデータの量を均一化し、ゲートウェイからネットワーク的に遠方のアクセスポイントからの帯域を、より近いアクセスポイントとのアクセスと同等のネットワーク帯域を割り当てることが可能である。
【0088】
これにより、通信ルートの確率と同時にパケットスケジューリングを決めることができ、送信先を考慮したスケジューリングを行なうことができ、隣接アクセスポイント情報のみでスケジューリングを行なうため、ノード情報が増えないという効果が得られる。
【0089】
(B)他の実施形態
(B−1)上述した実施形態では、無線メッシュネットワークからなる無線LANに適用した場合であり、実施形態の説明の中で通信プロトコルや設定や規格などの例を挙げて説明したが、すべての無線アクセス装置が無線ネットワーク装置の接続状態を管理する情報を共通に有することができれば、通信プロトコルや設定や規格などは限定されず適用することができる。
【0090】
(B−2)上述した実施形態のアクセスポイント500の構成について、メッシュネットワーク側無線部501とクライアント無線部503とを別の構成として説明したが、これらは同じ構成であってもよい。これにより、アクセスポイントの構成規模を少なくすることができる。
【0091】
(B−3)上述した実施形態では、アクセスポイント間の通信を無線通信する無線メッシュネットワークとして説明したが、アクセスポイント間を有線通信するネットワーク又は有線通信を一部に含むネットワークにも適用できる。
【0092】
(B−4)上述した実施形態において、各受信キュー504及び506、およびメッシュ送信キュー505からデータを取り出す量の比率を求めるための式は、式(1)及び(2)に限定されない。例えば、式(1)及び(2)に対して重み付けを付与するなどしてもよい。これにより、特定のアクセスポイントに対するデータの送信量又は受信量を優先させることができる。
【0093】
(B−5)本発明の無線アクセス装置は、アクセスポイントに限定されず、無線メッシュネットワークにおいてデータ転送機能を有する無線装置(無線端末も含む)であれば広く適用できる。
【0094】
(B−6)上述した実施形態において、アクセスポイント500の機能について、説明便宜上、ハードウェア的な構成として説明したが、実際はソフトウェア的に実行することで実現されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本実施形態のアクセスポイントの内部構成を示すブロック図である。
【図2】従来のアクセスポイントの内部構成を示すブロック図である。
【図3】従来の無線メッシュネットワークの全体構成図である。
【図4】本実施形態の無線メッシュネットワークの全体構成図である。
【図5】本実施形態のアクセスポイントが実現する主な機能ブロック図である。
【図6】本実施形態のアクセスポイントにおける動作の全体の流れを示すフローチャートである。
【図7】本実施形態のアクセスポイントにおける各受信キューからデータを取り出す動作を説明するフローチャートである。
【図8】本実施形態の各受信キューからのデータ取り出し量と他のアクセスポイントとの関係を説明する説明図である。
【図9】本実施形態のアクセスポイントにおけるメッシュ送信キューからデータを取り出す動作を説明するフローチャートである。
【図10】本実施形態のメッシュ送信キューからのデータ取り出し量と他のアクセスポイントとの関係を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0096】
100…無線メッシュネットワーク、500(500−1〜500−7)…アクセスポイント、501…メッシュネットワーク側無線部、502…コントローラー、503…クライアント側無線部、504…メッシュ受信キュー、505…メッシュ送信キュー、506…クライアント受信キュー、502a…ルーティング情報作成部、502b…転送アクセスポイント数計算部、502c…キュー割り当て部、502d…受信量制御部、502e…送信量制御部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線ネットワークを構成する複数の無線装置のそれぞれが搭載する通信帯域調整装置において、
上記無線装置から到来した信号を受信する受信手段と、
上記受信手段が受信した受信信号の送信元別の信号量を求める信号量算出手段と、
上記信号量算出手段が求めた上記送信元別の信号量に応じて、各送信元からの信号受信量を調整する受信量調整手段と
を備えることを特徴とする通信帯域調整装置。
【請求項2】
上記信号量算出手段は、送信元となる上記各無線装置を経由して通信することができる他の無線装置の数を上記送信元別の信号量として求めることを特徴とする請求項1に記載の通信帯域調整装置。
【請求項3】
上記信号量算出手段は、他のネットワークと接続する中継装置を経由して受信した信号の信号量については、それ以外の送信元別の信号量の総和に応じた量とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の通信帯域調整装置。
【請求項4】
上記信号量算出手段は、無線端末から受信した信号については、1つの送信元に割り当てる単位信号量とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の通信帯域調整装置。
【請求項5】
無線ネットワークを構成する複数の無線装置のそれぞれが搭載する通信帯域調整装置において、
上記各無線装置に送信する送信信号の送信先別の信号量を求める信号量算出手段と、
上記信号量算出手段が求めた上記送信先別の信号量に応じて、各送信先に送信する信号送信量を調整する送信量調整手段と、
上記送信量調整手段が調整した送信量に応じた送信信号を送信する送信手段と
を備えることを特徴とする通信帯域調整装置。
【請求項6】
上記信号量算出手段は、送信元となる上記各無線装置を経由して通信することができる他の無線装置の数を上記送信先別の信号量として求めることを特徴とする請求項5に記載の通信帯域調整装置。
【請求項7】
上記信号量算出手段は、他のネットワークと接続する中継装置に向けて送信する信号の信号量については、それ以外の送信先別の信号量の総和に応じた量とすることを特徴とする請求項5又は6に記載の通信帯域調整装置。
【請求項8】
無線ネットワークを構成する複数の無線装置のそれぞれが搭載する通信帯域調整方法において、
上記無線装置から到来した信号を受信する受信工程と、
上記受信工程で受信した受信信号の送信元別の信号量を求める信号量算出工程と、
上記信号量算出工程で求めた上記送信元別の信号量に応じて、各送信元からの信号受信量を調整する受信量調整工程と
を有することを特徴とする通信帯域調整方法。
【請求項9】
無線ネットワークを構成する複数の無線装置のそれぞれが搭載する通信帯域調整方法において、
上記各無線装置に送信する送信信号の送信先別の信号量を求める信号量算出工程と、
上記信号量算出工程が求めた上記送信先別の信号量に応じて、各送信先に送信する信号送信量を調整する送信量調整工程と、
上記送信量調整工程が調整した送信量に応じた送信信号を送信する送信工程と
を有することを特徴とする通信帯域調整方法。
【請求項10】
無線ネットワークを構成する無線アクセス装置が、請求項1〜4のいずれかに記載の通信帯域調整装置を備えることを特徴とする無線アクセス装置。
【請求項11】
無線ネットワークを構成する無線アクセス装置が、請求項5〜7のいずれかに記載の通信帯域調整装置を備えることを特徴とする無線アクセス装置。
【請求項12】
無線ネットワークを構成する無線アクセス装置が、請求項1〜4のいずれかに記載の通信帯域調整装置を備えると共に、請求項5〜7のいずれかに記載の通信帯域調整装置も備えることを特徴とする無線アクセス装置。
【請求項13】
無線端末と接続可能な無線アクセス装置を複数有して構成される無線ネットワークにおいて、上記各無線アクセス装置が、請求項10〜12のいずれかに記載の無線アクセス装置に対応することを特徴とする無線ネットワーク。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−238031(P2006−238031A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−49378(P2005−49378)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】