説明

通信装置、通信システム及びプログラム

【課題】コンベンショナル方式の通信システムにおいて、好適に通信を行う。
【解決手段】PC無線通信装置は、相手先IDが記憶部に記憶される通話情報テーブルに登録済みであるか否かを判別する(ステップS103)。相手先IDが通話情報テーブルに登録済みであれば(ステップS103;Yes)、受信拒否フラグをONにして相手先IDを登録する(ステップS104)。相手先IDが通話情報テーブルに登録済みでなければ(ステップS103;No)、受信拒否フラグをOFFにして相手先IDを登録する(ステップS105)。PC無線通信装置は、受信拒否フラグをOFFの相手先と通話を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、通信システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信には、いわゆるレピータを経由して無線通信装置どうしの通信を行う方法がある。さらに、複数のレピータをネットワークで接続して、複数のレピータのカバーエリアからなる無線通信システムの通信エリアを構成することができる。
【0003】
このような無線通信システムにおいて、1つの無線通信装置の電波が届く範囲に、複数のレピータが存在する可能性があり、複数のレピータ間の競合により、通信パケットが重複する問題が生じるおそれがある。
【0004】
このような問題を解決するため、複数のレピータが無線通信装置の電波を同時に受信する場合に、通信するレピータを自動的に選択し、正常に通信を行う無線通信システムが提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−182547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の無線通信システムでは、ネットワーク上にサーバを設けて、そのサーバにより、無線通信装置間の通信を管理していた。従って、特許文献1に記載の技術は、ネットワーク上に無線通信装置間の通信を管理するサーバを設けないコンベンショナル方式の通信システムには適用できなかった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、コンベンショナル方式の通信システムにおいて、好適に通信を行う通信装置、通信システム及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点に係る通信装置は、
通信機からの信号を中継する中継装置と当該中継装置が接続されるネットワークを介して当該通信機と通信可能な通信装置であって、
前記中継装置と前記ネットワークとを介して前記通信機からの前記接続要求を受信する受信手段と、
前記受信手段が複数の前記中継装置から同一の前記通信機の前記接続要求を受信した場合、前記受信手段が最先に受信した前記接続要求を送信した通信装置との通信を開始する通信手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記中継装置のうち一の中継装置を介して行っていた前記通信機との通信が切断したときに、当該一の中継装置とは異なる他の中継装置が当該通信機の通信を中継している場合、当該他の中継装置を介して当該通信機と通信を継続する手段をさらに備えるように構成されてもよい。
【0010】
また、前記中継装置のうち一の中継装置が通信を中継する前記通信機が一の通信機から当該一の通信機とは異なる他の通信機に切り替わったときに、当該一の中継装置とは異なる他の中継装置が当該一の通信機の通信を中継している場合、当該他の中継装置を介して当該一の通信機と通信を継続する手段をさらに備えるように構成されてもよい。
【0011】
本発明の第2の観点に係る通信システムは、
通信装置と、
複数の通信機と、
前記通信装置とネットワークを介して接続され、前記通信機と無線通信により通信して前記通信装置と前記通信機との通信を中継する複数の中継装置と、
から構成される通信システムであって、
前記通信機は、
前記通信装置に対する接続要求を、前記複数の中継装置のいずれかに送信する接続要求送信手段を備え、
前記通信装置は、
前記中継装置と前記ネットワークとを介して前記通信機からの前記接続要求を受信する受信手段と、
前記受信手段が複数の前記中継装置から同一の前記通信機の前記接続要求を受信した場合、前記受信手段が最先に受信した前記接続要求を送信した通信装置との通信を開始する通信手段と、を備える
ことを特徴とする。
【0012】
本発明の第3の観点に係るプログラムは、
コンピュータと、
複数の通信機と、
前記コンピュータとネットワークを介して接続され、前記通信機と無線通信により通信して前記コンピュータと前記通信機との通信を中継する複数の中継装置と、
から構成される通信システムにおいて、
前記コンピュータを、
前記中継装置と前記ネットワークとを介して前記通信機からの接続要求を受信する受信手段、
前記受信手段が複数の前記中継装置から同一の前記通信機の前記接続要求を受信した場合、前記受信手段が最先に受信した前記接続要求を送信した通信装置との通信を開始する通信手段、
として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コンベンショナル方式の通信システムにおいて、好適に通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る通信システムの構成例を示す図である。
【図2】無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【図3】PC無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【図4】PC無線通信装置が実行する受信処理の動作を示すフローチャートである。
【図5】接続要求時テーブル更新処理の動作を示すフローチャートである。
【図6】通話情報テーブルの具体例を示す図である。
【図7】切断要求時テーブル更新処理の動作を示すフローチャートである。
【図8】通話情報テーブルの具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る通信システム100の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る通信システム100の構成例を示す。
【0016】
通信システム100は、図1に示すように、複数の無線通信装置10(図中では10A、10B、10C)と、複数のレピータ20(図中では20A、20B)と、PC無線通信装置30と、から構成される。複数のレピータ20A、20Bと、PC無線通信装置30と、はネットワーク40を介して接続される。
【0017】
無線通信装置10は、無線通信により直接他の無線通信装置10と通信して音声通話を行うことができる。また、無線通信装置10は、レピータ20を介して他の無線通信装置10と通信し、音声通話を行うことができる。この実施の形態では、無線通信装置10は、レピータ20を介してネットワーク40に接続し、ネットワーク40を介して他の無線通信装置10やPC無線通信装置30と通信を行うこともできる。図1では、3台の無線通信装置10A、10B、10Cが示されているが、少なくとも2台以上であればこの数は任意である。なお、無線通信装置10は、ネットワーク40を介してPC無線通信装置30とデータ通信を行うこともできる。
【0018】
レピータ20は、カバーエリア内の無線通信装置10から他の無線通信装置10やPC無線通信装置30への通信フレームを受信し、他の無線通信装置10やPC無線通信装置30への通信を中継する。また、ネットワーク40からカバーエリア内の無線通信装置10に対する通信フレームを受信し、その無線通信装置10に対する通信を中継する。レピータ20は、通信フレームを中継する際に、自己の識別情報を付加する。図1では、2台のレピータ10A、10Bが示されているが、少なくとも2台以上であればこの数は任意である。
【0019】
PC無線通信装置30は、パーソナルコンピュータなどのコンピュータにプログラムを読み込ませることによって、無線通信装置10と同様の機能を実現させたものである。PC無線通信装置30は、ネットワーク40やレピータ20を介して、無線通信装置10と通信する。また、ネットワーク40上に他のPC無線通信装置を設けて、他のPC無線通信装置と通信可能にしてもよい。
【0020】
ネットワーク40は、例えば、インターネットである。ネットワーク40は、その他、LAN(Local Area Network)、回線交換網、パケット交換網、専用線網であってもよい。また、ネットワーク40は有線に限らず、例えば無線LANなどの無線通信網でもよい。
【0021】
図2は、無線通信装置10の構成を示すブロック図である。図2に示すように、無線通信装置10は、アンテナ1と、送受信切替部2と、送信部3と、受信部4と、音声A/D・D/A(アナログ/デジタル・デジタル/アナログ)変換部5と、コントローラ6と、増幅器7と、マイク8と、スピーカ9と、表示部11と、操作部12と、を備える。
【0022】
アンテナ1は、通信相手となる他の無線通信装置10やPC無線通信装置30から送信され、レピータ20で中継された信号波を受信する。また、アンテナ1は、他の無線通信装置10から直接送信された信号波を受信する。アンテナ1は、通信相手となる他の無線通信装置10やPC無線通信装置30に信号波を中継するレピータ20に向けて信号波を送信する。また、アンテナ1は、他の無線通信装置10に向けて信号波を直接送信する。
【0023】
送受信切替部2は、送信部3から入力された送信用の信号波をアンテナ1に出力する。また、送受信切替部2は、アンテナ1で受信された信号波を入力し、この信号波を受信部4に出力する。
【0024】
送信部3は、4値FSK(Frequency Shift Keying)変調方式に基づいて、入力された音声信号およびデータ信号を変調し、送受信切替部2に出力する。なお、音声信号は、音声A/D・D/A変換部5から供給され、データ信号は、コントローラ6から供給される。
【0025】
受信部4は、特定の周波数(通信チャンネル)の信号を選択して受信するチューニング機能を備え、コントローラ6の制御に基づいて、受信する無線信号の周波数が設定される。また、受信部4は、入力された受信信号を復調する復調機能を備える。ここでは、受信部4は、4値FSK変調方式に基づいて復調を行う。
【0026】
音声A/D・D/A変換部5は、音声信号をアナログ信号とデジタル信号間で信号変換を行うアナログ−デジタル変換機能を備える。
【0027】
コントローラ6は、この無線通信装置10の動作の制御を行う。コントローラ6は、CPU(中央処理装置)6a、ROM(読み出し専用メモリ)6b、RAM(読み書き可能メモリ)6cを備える。
【0028】
ROM6bは、コントローラ6が無線通信装置10の動作を制御するための制御プログラムを格納する。CPU6aは、この制御プログラムに基づいて、無線通信装置10が送信機および受信機として機能するよう制御する。RAM6cは、CPU6aのワークエリアとして機能する。
【0029】
コントローラ6は、送信部3が、音声信号を含む通信フレームを通信相手へ送信するとき、自己の無線通信装置10を識別するためのIDや送信先に関する情報を付加する。この通信フレームには、通信相手への接続要求が含まれる。
【0030】
増幅器7は、マイク8から供給された音声信号を増幅し、音声A/D・D/A変換部5に供給する。また、増幅器7は、音声A/D・D/A変換部5から供給された音声信号を増幅して、スピーカ9に供給する。
【0031】
マイク8は、ユーザの通話音を取得し、音声信号として増幅器7に供給する。
【0032】
スピーカ9は、増幅器7から供給された音声信号に基づき、通信相手の通話音を出力する。
【0033】
表示部11は、液晶ディスプレイ等からなるモニタ画面を備えて構成される。モニタ画面には、ユーザに対する無線通信装置10の動作状態の報知や、ユーザに対する操作部12による入力を促すメッセージ等が表示される。
【0034】
操作部12は、無線通信装置10の動作に関する条件情報を入力するための装置である。操作部12には各種の操作キーが設けられており、ユーザが操作キーを操作して各種の入力を行うことにより、その入力に基づく動作を無線通信装置10に行わせることができる。操作部12に対する操作の内容は、コントローラ6により検出される。即ち、コントローラ6は、操作された操作キーの種類や、操作キーに対する操作の内容を検出する。そして、コントローラ6は、操作キーによって入力された内容を判別し、入力された内容に応じた動作を行うように、無線通信装置10を制御する。
【0035】
図3は、PC無線通信装置30の構成を示すブロック図である。図3に示すように、PC無線通信装置30は、制御部31と、表示部32と、操作部33と、通信部34と、記憶部35と、音声処理部36と、マイク37と、スピーカ38と、を備える。PC無線通信装置30の各部は、バスを介して接続される。この実施の形態のPC無線通信装置30は、コンピュータを、ネットワークを介して無線通信装置10と通信可能なPC無線通信装置30として機能させるプログラムを格納した汎用のコンピュータである。なお、PC無線通信装置30は、専用の装置であってもよい。
【0036】
制御部31はCPU(Central Processing Unit)等から構成され、記憶部35に格納されるプログラムに従って、PC無線通信装置30全体の動作を制御する。例えば、レピータ20及びネットワーク40を介して受信した、無線通信装置10からの接続要求に対して、無線通信装置10と音声通話を行うための処理を実行する。
【0037】
表示部32は、LCD(Liquid Crystal Display)などから構成され、制御部31の制御のもと、各種画面を表示する。例えば、無線通信装置10と通信するためのアプリケーションのGUI(Graphical User Interface)を表示する。
【0038】
操作部33は、キーボード及びマウス等から構成され、ユーザの操作を受け付ける。操作部33は、キーボード及びマウス等の操作を検出すると操作に対応した信号を制御部31に入力する。
【0039】
通信部34は、PC無線通信装置30をネットワーク40に接続するためのインタフェースである。PC無線通信装置30は、通信部34を介して無線通信装置10と通信する。
【0040】
記憶部35は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクや、その他の記憶媒体から構成される。RAMは、制御部31のワークエリアとして機能する。記憶部35は、コンピュータをPC無線通信装置30として機能させるためのプログラムを記憶する。制御部31は、このプログラムを読み込むことで本発明に必要な機能を実現する。また、記憶部35は、無線通信装置10との通信を管理するための通話情報テーブルを記憶する。
【0041】
音声処理部36は、無線通信装置10から受信したデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換するD/A変換器や、マイク37から入力されるアナログ音声信号をデジタル音声信号に変換するA/D変換器などから構成される。音声処理部36は、アナログ変換した音声をスピーカ38から出力する。また、音声処理部36は、デジタル変換した音声信号を制御部31に入力する。
【0042】
続いて、通信システム100において、無線通信装置10と、PC無線通信装置30と、が通信して音声通話を行う際の動作について説明する。例えば、図1において、無線通信装置10Aのユーザが、操作部12を操作することで、PC無線通信装置30対して接続要求を含む通信フレームを送信した場合について説明する。この場合、無線通信装置10Aの所在地がレピータ20Aのカバーエリアにあれば、レピータ20Aは無線通信装置10Aから通信フレームを受信し、その通信フレームをネットワーク40を介してPC無線通信装置30に送信する。
【0043】
PC無線通信装置30は、無線通信装置10Aからの通信フレームを受信すると、無線通信装置10Aの情報を記憶部35の通話情報テーブルに登録して、無線通信装置10Aとの通話を開始する。この通話中においては、無線通信装置10Aの操作部12のPTT(Push To Talk)スイッチが押下されているときは、無線通信装置10Aのマイク8から入力される音声がPC無線通信装置30のスピーカ38から出力される。また、無線通信装置10Aの操作部12のPTTスイッチが押下されていないときは、PC無線通信装置30のマイク37から入力される音声が無線通信装置10Aのスピーカ9から出力される。この通話中において、無線通信装置10Aの操作部12、またはPC無線通信装置30の操作部33において所定の切断操作がされると通話が終了する。
【0044】
また、例えば、図1において、無線通信装置10Bのユーザが、操作部12を操作することで、PC無線通信装置30対して接続要求を含む通信フレームを送信した場合について説明する。無線通信装置10Bの所在地がレピータ20Aのカバーエリアにあれば、レピータ20Aは無線通信装置10Bから通信フレームを受信し、その通信フレームをネットワーク40を介してPC無線通信装置30に送信する。また、このとき無線通信装置10Bの所在地がレピータ20Bのカバーエリア内でもあれば、レピータ20Bも無線通信装置10Bから通信フレームを受信し、その通信フレームをネットワーク40を介してPC無線通信装置30に送信する。
【0045】
この場合、PC無線通信装置30は、レピータ20A及びレピータ20Bから無線通信装置10Bの通信フレームを受信してしまう。この実施の形態のPC無線通信装置30は、このように通信フレームを重複して受信した場合には、最先に受信した通信フレームのみに対して通話を行うための処理(音声データのデコードや出力)をする。
【0046】
以下、PC無線通信装置30の詳細な動作について説明する。図4は、PC無線通信装置30が実行する受信処理の動作を示すフローチャートである。PC無線通信装置30を構成するコンピュータにおいて、無線通信装置10と通信を行うためのアプリケーションが起動されるなど、PC無線通信装置30が起動すると、制御部31が記憶部35に格納されるプログラムを読み込むことで、図4に示す受信処理を実行する。受信処置では、制御部31は、接続要求時テーブル更新処理(ステップS10)、切断要求時テーブル更新処理(ステップS20)、通話処理(ステップS30)、を順次実行する。
【0047】
ステップS10の接続要求時テーブル更新処理は、無線通信装置10からの通信フレームに含まれる接続要求を受信したときに、記憶部35に記憶される通話情報テーブルを更新するための処理である。
【0048】
ステップS20の切断要求時テーブル更新処理は、無線通信装置10から切断要求を受信したときなどに、記憶部35に記憶される通話情報テーブルを更新するための処理である。
【0049】
ステップS30の通話処理は、ステップS10の接続要求時テーブル更新処理や、ステップS20の切断要求時テーブル更新処理により、更新された通話情報テーブルにより示される相手先の無線通信装置10と通話を行うための処理である。具体的には、通話情報テーブルにおける受信拒否フラグがOFFである相手先の無線通信装置10と通話を行う。ここでは、相手先の無線通信装置10から受信した音声データをスピーカ38から出力したり、マイク37から入力された音声データを相手先の無線通信装置10に送信したり、操作部33により検出した操作に対応した通話動作を実行するなど、一般的な無線通信の通話処理が実行される。なお、通話情報テーブルに相手先の無線通信装置10が登録されていても、受信拒否フラグがONであれば、その無線通信装置10との通話処理は実行しない。
【0050】
図5は、接続要求時テーブル更新処理の動作を示すフローチャートである。接続要求時テーブル更新処理では、制御部31は、先ず、無線通信装置10からの通信フレームに含まれる接続要求を受信したか否かを判別する(ステップS101)。ここで、無線通信装置10からの接続要求を受信していなければ(ステップS101;No)、接続要求時テーブル更新処理を終了する。
【0051】
無線通信装置10からの接続要求を受信していれば(ステップS101;Yes)、制御部31は、通信フレームに含まれる無線通信装置10の識別情報である相手先IDと、この通信フレームを中継したレピータ20の識別情報であるレピータIDと、を取得する(ステップS102)。そして、制御部31は、その相手先IDが記憶部35に記憶される通話情報テーブルに登録済みであるか否かを判別する(ステップS103)。
【0052】
相手先IDが通話情報テーブルに登録済みであれば(ステップS103;Yes)、制御部31は、ステップS102で特定したレピータIDに対応する相手先IDとして、ステップS102で特定した相手先IDを登録する(ステップS104)。このとき、受信拒否フラグをONにして登録する。
【0053】
相手先IDが通話情報テーブルに登録済みでなければ(ステップS103;No)、制御部31は、ステップS102で特定したレピータIDに対応する相手先IDとして、ステップS102で特定した相手先IDを登録する(ステップS105)。このとき、受信拒否フラグをOFFにして登録する。
【0054】
通話情報テーブルは、図6(A)に示すように、レピータIDと、相手先IDと、受信拒否フラグと、を対応付けたテーブルである。図6(A)は、相手先IDが1つも登録されていない状態を示している。なお、受信拒否フラグは初期段階ではOFFとなっている。
【0055】
例えば、図6(A)のように、通話情報テーブルに相手先IDが登録されていない状態で、相手先IDが無線通信装置10Bである通信フレームをレピータ20Aから受信した場合は(ステップS103;No)、図6(B)に示すように、受信拒否フラグがOFFで通話情報テーブルに登録される。
【0056】
また、図6(B)のように、無線通信装置10Bが登録されている状態で、相手先IDが無線通信装置10Bである通信フレームをレピータ20Bから受信した場合は(ステップS103;Yes)、図6(C)に示すように、受信拒否フラグをONにして通話情報テーブルに登録される。
【0057】
通話情報テーブルが図6(B)に示す状態であれば、PC無線通信装置30と無線通信装置10Bとの間では、ステップS30の通話処理により、レピータ20Aが中継する音声データに基づき音声通話が実行される。一方、通話情報テーブルが図6(C)に示す状態であれば、PC無線通信装置30と無線通信装置10Bとの間では、レピータ20Aが中継する音声データに基づき音声通話が実行されるが、レピータ20Bが中継する音声データに基づく音声通話が実行されない(受信拒否される)。
【0058】
ステップS104またはS105の処理の後、制御部31は、通話情報テーブルにおいてレピータIDに今まで登録されていた相手先IDが今回登録された相手先IDと異なり、さらに今までの受信拒否フラグがOFFであったか否かを判別する(ステップS106)。そのような相手先IDが今まで登録されていなければ(ステップS106;No)、接続要求時テーブル更新処理を終了する。
【0059】
そのような相手先IDが登録されていれば(ステップS106;Yes)、制御部31は、今まで登録されていた相手先IDが他のレピータの相手先IDに登録されているか否かを判別する(ステップS107)。他のレピータの相手先IDに登録されていなければ(ステップS107;No)、接続要求時テーブル更新処理を終了する。
【0060】
他のレピータの相手先IDに登録されていれば(ステップS107;Yes)、制御部31は、その他のレピータの受信拒否フラグをOFFにして(ステップS108)、接続要求時テーブル更新処理を終了する。
【0061】
ステップS106〜S108の処理は、レピータ20が信号を中継する相手の無線通信装置10が切り替わった場合の処理である。具体的には、通話情報テーブルが図6(C)に示す状態であるときに、相手先IDが無線通信装置10Aである通信フレームをレピータ20Aから受信した場合、通話情報テーブルは、ステップS105の処理により図6(D)に示すように更新される。
【0062】
このような場合、無線通信装置10Bからの信号はレピータ20Bから中継されているので(ステップS106及びステップS107;Yes)、この信号を受信するために、図6(E)に示すように、レピータ20Bの受信拒否フラグをOFFに更新する(ステップS108)。これにより、無線通信装置10Bとの通信(通話)を継続できるようになる。なお、図6(D)では、相手先IDが無線通信装置10Bであって受信拒否フラグがONであるレピータ20は1つ(レピータ20B)であったが、複数である場合(例えばレピータ20B及び20C)が想定される。この場合は、いずれか1つ(例えば通話情報テーブルにおける降順に選択した1つ)のレピータ20の受信拒否フラグがOFFにするようにすればよい。
【0063】
続いて、切断要求時テーブル更新処理について説明する。図7は、切断要求時テーブル更新処理の動作を示すフローチャートである。切断要求時テーブル更新処理では、制御部31は、先ず、通話中の無線通信装置10からの通話の切断を要求する切断要求を受信したか否かを判別する(ステップS201)。ここで、無線通信装置10からの切断要求を受信していなければ(ステップS201;No)、制御部31は、通話中の無線通信装置10から所定期間通信データを受信しているか否かを判別する(ステップS202)。所定期間中に通信データを受信していれば(ステップS202;No)、切断要求時テーブル更新処理を終了する。ステップS202では、無線通信装置10がレピータ20のカバーエリア外に移動したなど、電波不良により通話を継続することができない状態であるか否かを判別している。
【0064】
通話中の無線通信装置10からの切断要求を受信した場合(ステップS201;Yes)、または、所定期間無線通信装置10から通信データを受信していないと判別した場合(ステップS202;Yes)、制御部31は、相手先IDを特定する(ステップS203)。
【0065】
そして、制御部31は、通話情報テーブルにおいて、ステップS203で特定した相手先IDの受信拒否フラグがONであるか否かを判別する(ステップS204)。
【0066】
受信拒否フラグがOFFであれば(ステップS204;No)、制御部31は、通話情報テーブルにおいて、他のレピータにステップS203で特定した相手先IDと同一の相手先IDがあるか否かを判別する(ステップS205)。
【0067】
ステップS204で受信拒否フラグがONであると判別した場合(ステップS204;Yes)、または、ステップS205で他のレピータにステップS203で特定した相手先IDと同一の相手先IDがないと判別した場合(ステップS205;No)、制御部31は、通話情報テーブルにおける受信拒否フラグをOFFにして相手先IDを削除する(ステップS207)。そして、切断要求時テーブル更新処理を終了する。これにより、無線通信装置10との通話が終了する。なお、通話情報テーブルから相手先IDをただちに削除するのではなく、所定の待ち時間経過後に削除するようにしてもよい。この場合、待ち時間を任意に設定できるようにしてもよい。
【0068】
ステップS205で他のレピータ20にステップS203で特定した相手先IDと同一の相手先IDがあると判別した場合(ステップS205;Yes)、制御部31は、相手先IDが同一であったレピータ20の受信拒否フラグをOFFにする(ステップS206)。その後、制御部31は、通話情報テーブルにおける切断要求があったレピータ20の受信拒否フラグをOFFにして相手先IDを削除する(ステップS207)。
【0069】
ステップS204〜S206の処理は、通話中の無線通信装置10の信号をレピータ20が中継できなくなった場合に、他のレピータ20により信号を中継できれば、そのレピータ20による中継に切り替えるための処理である。具体的には、通話情報テーブルが図8(A)に示す状態であるときに、即ち、PC無線通信装置30がレピータ20Aを介して無線通信装置10Bと通話を行っているときに、所定期間無線通信装置10Bからの通信データを受信していないと判別すると(ステップS202;Yes)、相手先IDが同一のレピータ20Bがあるため(ステップS205;Yes)、図8(B)に示すようにレピータ20Bの受信拒否フラグをOFFにして(ステップS206)、レピータ20Bを介した通話に切り替える。これにより、無線通信装置10Bとの通信(通話)を継続できるようになる。なお、図8(A)では、相手先IDが無線通信装置10Bであって受信拒否フラグがONであるレピータ20は1つ(レピータ20B)であったが、複数である場合(例えばレピータ20B及び20C)が想定される。この場合は、いずれか1つ(例えば通話情報テーブルにおける降順に選択した1つ)のレピータ20の受信拒否フラグをOFFにするようにすればよい。
【0070】
以上説明したように、本発明の通信システム100によれば、無線通信装置10からの通信フレームを複数のレピータ20で受信した場合であっても、PC無線通信装置30が接続要求を制限し、また、状況に応じて接続先を切り替えるので、好適に通話を行うことができる。
【0071】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変形や応用が可能である。例えば、無線通信装置10が信号を送受信するための信号の変調方式として4値FSK変調方式を採用する例を説明したが、他の変調方式を採用してもよい。例えば、信号の変調方式として、GMSK(Gaussian filtered Minimum Shift Keying)変調方式やQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調方式やその他の変調方式を採用してもよい。
【0072】
また、上記実施の形態では、無線通信装置10とPC無線通信装置30における音声通話について説明したが、無線通信装置10とPC無線通信装置30におけるデータ通信についても本発明を適用可能である。データ通信の場合は、PC無線通信装置30は無線通信装置10から受信したデータに対応した画面を表示部32に表示する。
【0073】
また、上記実施の形態では、通話情報テーブルはPC無線通信装置30の記憶部35に記憶されるものとして説明したが、PC無線通信装置30がアクセス可能なところに通話情報テーブルを記憶するようにしてもよい。例えば、ネットワーク40に接続された記憶装置に通話情報テーブルを記憶しておき、PC無線通信装置30がネットワーク40を介して通話情報テーブルにアクセスするようにしてもよい。
【0074】
また、上記実施の形態では、PC無線通信装置30が無線通信装置10からの接続要求や切断要求を受信する場合について説明したが、PC無線通信装置30から無線通信装置10に接続要求や切断要求を送信して通話や切断を行うこともできる。
【0075】
また、図1には、無線通信装置10として、端末型の無線通信装置10A、10B、10Cが示されているが、固定式(据置型)の無線通信装置10であってもよい。
【0076】
また、コンピュータをPC無線通信装置30として機能させるプログラムは、記憶部35に記憶されるものとして説明したが、このプログラムを記録媒体に格納して配布したり、ネットワークを通じて配布するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0077】
10A、10B、10C 無線通信装置
20A、20B レピータ
30 PC無線通信装置
40 ネットワーク
100 通信システム
1 アンテナ
2 送受信切替部
3 送信部
4 受信部
5 音声A/D・D/A変換部
6 コントローラ
7 増幅器
8 マイク
9 スピーカ
11 表示部
12 操作部
31 制御部
32 表示部
33 操作部
34 通信部
35 記憶部
36 音声処理部
37 マイク
38 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信機からの信号を中継する中継装置と当該中継装置が接続されるネットワークを介して当該通信機と通信可能な通信装置であって、
前記中継装置と前記ネットワークとを介して前記通信機からの前記接続要求を受信する受信手段と、
前記受信手段が複数の前記中継装置から同一の前記通信機の前記接続要求を受信した場合、前記受信手段が最先に受信した前記接続要求を送信した通信装置との通信を開始する通信手段と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記中継装置のうち一の中継装置を介して行っていた前記通信機との通信が切断したときに、当該一の中継装置とは異なる他の中継装置が当該通信機の通信を中継している場合、当該他の中継装置を介して当該通信機と通信を継続する手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記中継装置のうち一の中継装置が通信を中継する前記通信機が一の通信機から当該一の通信機とは異なる他の通信機に切り替わったときに、当該一の中継装置とは異なる他の中継装置が当該一の通信機の通信を中継している場合、当該他の中継装置を介して当該一の通信機と通信を継続する手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
通信装置と、
複数の通信機と、
前記通信装置とネットワークを介して接続され、前記通信機と無線通信により通信して前記通信装置と前記通信機との通信を中継する複数の中継装置と、
から構成される通信システムであって、
前記通信機は、
前記通信装置に対する接続要求を、前記複数の中継装置のいずれかに送信する接続要求送信手段を備え、
前記通信装置は、
前記中継装置と前記ネットワークとを介して前記通信機からの前記接続要求を受信する受信手段と、
前記受信手段が複数の前記中継装置から同一の前記通信機の前記接続要求を受信した場合、前記受信手段が最先に受信した前記接続要求を送信した通信装置との通信を開始する通信手段と、を備える
ことを特徴とする通信システム。
【請求項5】
コンピュータと、
複数の通信機と、
前記コンピュータとネットワークを介して接続され、前記通信機と無線通信により通信して前記コンピュータと前記通信機との通信を中継する複数の中継装置と、
から構成される通信システムにおいて、
前記コンピュータを、
前記中継装置と前記ネットワークとを介して前記通信機からの接続要求を受信する受信手段、
前記受信手段が複数の前記中継装置から同一の前記通信機の前記接続要求を受信した場合、前記受信手段が最先に受信した前記接続要求を送信した通信装置との通信を開始する通信手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−35496(P2011−35496A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177377(P2009−177377)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】