説明

通信装置及び通信方法、コンピューター・プログラム、並びに通信システム

【課題】NFCアンテナの内側に高速データ通信用アンテナを一括形成するシステムにおいて、NFCIP−1仕様に準拠しつつ高速データ通信を行なう。
【解決手段】小アンテナを用いた高速通信時においてもNFCIP−1プロトコルにおけるData Exchangeコマンド(DEP_REQ、DEP_RES)以外の処理を行なう際には、すべて既存のNFC方式を用いる。パッシブ型相互通信の際には各DEP_REQ/DEP_RESコマンド送出直後、アクティブ方相互通信の際には各DEP_REQ/DEP_RESコマンド送出直後からNFCキャリアを停止するまでの期間に、小アンテナを用いた高速通信を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、要求コマンドを送信するイニシエーターと応答コマンドを返信するターゲットの間で通信動作を行なう非接触の通信装置及び通信方法、コンピューター・プログラム、並びに通信システムに係り、特に、NFC(Near Field Communication)規格に基づく非接触の通信装置及び通信方法、コンピューター・プログラム、並びに通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自ら電波の発生源を持たない通信端末が無線で通信相手となる装置へデータを送信する通信システムとしてRFID(Radio Frequency IDentification)と呼ばれる非接触通信システムが知られている。RFIDの他の呼び方として、IDシステム、データ・キャリア・システムなどがあるが、世界的に共通なのがRFIDシステム、略してRFIDである。日本語に訳すると「高周波(無線)を使用した認識システム」となる。
【0003】
RFIDシステムは多くの非接触ICカードに適用されている。ICカード・システムは、トランスポンダとしてのIC(Integrated Circuit)カードと、ICカードからの情報の読み出しや、又はICカードへの情報の書込みを行なう装置(以下、「リーダライタ」と呼ぶ)から成る。かかるICカード・システムは、ICカードとリーダライタ間で非接触により情報の読み書きを行なうことから利便性が高い。
【0004】
リーダライタは、最初に電磁波を出力して相互通信を開始する(すなわち通信の主導権を握る)装置であり、「イニシエーター」とも呼ばれる。また、ICカードなどトランスポンダは、イニシエーターからのコマンド(相互通信開始要求)に対してレスポンス(相互通信開始応答)を返す「ターゲット」である。パッシブ・モードではキャリア信号の向きが常にイニシエーター→ターゲットであり、アクティブ・モードではキャリア信号の向きが交互に切り換わる。以下では、リーダライタからトランスポンダへの通信を「ダウンリンク」と呼び、トランスポンダからリーダライタへの通信を「アップリンク」と呼ぶことにする。
【0005】
RFIDに適用可能な非接触通信方法には、静電結合方式、電磁誘導方式、電波通信方式などが挙げられる。このうち電磁誘導方式は、リーダライタ側の1次コイルとカード(若しくはトランスポンダ)側の2次コイルで構成され、これら2つのコイルの磁気的な結合によってコイル経由でデータ通信が行なわれる。具体的には、リーダライタは、1次コイルで発生する磁界を振幅変調することによってデータを送信し、トランスポンダ側ではこれを検波する。また、トランスポンダは2次コイルの負荷切り替え(Load Switching:LS)により振幅変調などの変調処理を行なうことで、リーダライタへデータを送信することができる。トランスポンダ及びリーダライタの各コイルはLC共振回路として動作しており、一般には、これらコイルの共振周波数を、通信に用いるキャリアの周波数に調整して共振させることにより、トランスポンダとリーダライタ間の適当な通信距離を設定することができる。なお、以下では、トランスポンダ及びリーダライタの各コイルを「アンテナ」とも呼ぶ。
【0006】
また、RFIDシステムは、伝送距離に応じて、密着型(0〜2mm以下:Close coupled)、近接型(0〜10cm以下:Proximity)、近傍型(0〜70cm以下:Vicinity)の3種類に分類することができ、それぞれISO/IEC15693、ISO/IEC14443、ISO/IEC15693などの国際規格によって規定されている。このうち、ISO/IEC14443に準拠する非接触・近接型のICカード規格として、TypeA、TypeB、Felica(フェリカ)(登録商標)を挙げることができる。なお、TypeAはPhilips社のMifare(登録商標)に相当する。また、SmartCardとしてのカード、リーダライタはISO7816として規格化されている。
【0007】
さらに、ソニーとPhilips社が開発したNFC(Near Field Communicationは、主に、上記のTypeA、TypeB、Felicaの各ICカードと通信可能なNFC通信装置(リーダライタ)の仕様を規定したRFID規格であり、2003年12月にISO/IEC IS 18092として国際標準となった。NFC通信方式は、元々は非接触式ICカードとして広く普及しているソニーの「FeliCa」やPhilips社の「Mifare」を継承したものであり、13.56MHz帯を使い、電磁誘導方式により10cm程度の近接型の非接触双方向通信が可能である(NFCは、カードとリーダライタ間の通信の他に、リーダライタ同士のパッシブ型通信を規定している)。
【0008】
現在、NFCは、個人認証や電子マネー決済などに盛んに用いられている。例えば、パッシブ・モードの他にアクティブ・モードを備えたNFC通信装置について提案がなされている(例えば、特許文献1を参照のこと)。
【0009】
NFC IP−1(Interface and Protocol−1)規格における転送方向、通信モード毎の通信速度や変調方式、符号化方式を、以下の表1に示しておく。
【0010】
【表1】

【0011】
上記の表1に示すように、NFC IP−1規格で定められた通信速度は、最大値でも高々424kbpsであり、他の汎用の無線通信(WiFiやBluetoothなど)と比べると非常に低速である。このため、NFCを画像や音声、動画像などの大容量データ通信へ適用することは困難である。また、キャリア周波数などの物理的な制約からも、実現可能な最高通信速度は高々848kbpsまでであり、今後の飛躍的な高速化を期待することはできない。
【0012】
このことから、NFC通信の実際の使用用途は、電子マネーや、個人認証(IDカードやチケットなど)、汎用無線通信の接続確立補助(ハンドオーバ)、若しくは、安価なタグを利用したごく小容量のデータ送信(スマートポスタなど)のみに限定されている。
【0013】
【特許文献1】特開2005−168069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、要求コマンドを送信するイニシエーターと応答コマンドを返信するターゲットの間で高速データ転送を実現することができる、優れた非接触通信装置及び通信方法、コンピューター・プログラム、並びに通信システムを提供することにある。
【0015】
本発明のさらなる目的は、現在既に確立しているNFC通信システムとの完全な上位互換を持ちながら高速通信を実現することができる、優れた通信装置及び通信方法、コンピューター・プログラム、並びに通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願は、上記課題を参酌してなされたものであり、請求項1に記載の発明は、
イニシエーターからの要求コマンドを送信しターゲットから応答コマンドを受信する通信手順及び無線信号の衝突回避機能を規定した第1の通信プロトコルに従って第1のアンテナを用いて第1の周波数帯で無線通信動作を行なう第1の通信処理部と、
第2のアンテナを用いて第2の周波数帯で無線通信動作を行なう第2の通信処理部と、
前記第1及び第2の通信処理部の動作を制御する制御部と、
を具備し、
前記第1の通信プロトコルは、前記イニシエーターと前記ターゲット間で、データ交換を開始するための要求及び応答コマンド交換手順を行なうデータ交換開始準備フェーズと、データ交換を行なうためのデータ交換要求及び応答コマンド交換手順を行なうデータ交換フェーズを規定し、
前記制御部は、前記データ交換フェーズにおいて、前記データ交換要求及び応答コマンド交換手順を行なうように前記第1の通信処理部を制御するとともに、前記第2の通信処理部でデータ転送を行なうように制御する、
ことを特徴とする通信装置である。
【0017】
第1の通信プロトコルは、具体的には、本願の請求項2に記載の通り、ISO/IEC IS 18092で規定されるNFC(Near Field Communication) IP−1仕様に相当する。そして、本願の請求項9に記載の発明によれば、前記制御部は、DEPフェーズ以外の処理はすべて前記第1の通信処理部を用いてNFC IP−1通信にて行ない、DEPフェーズでは、前記第1の通信処理部を用いてDEP_REQ/DEP_RESコマンド・シーケンスを実行しながら、前記第2の通信処理部の間でデータ転送を行なうように制御する。
【0018】
NFC IP−1仕様の第1の通信プロトコルでは、前記イニシエーターによるデータ交換要求コマンド送信完了から前記ターゲットによるデータ交換応答コマンド送信開始までの時間、前記ターゲットによるデータ交換応答コマンド送信完了から前記イニシエーターによる次のデータ交換応答コマンド送信開始までの時間を明確に規定していない。
【0019】
これに対し、本願の請求項3に記載の発明によれば、前記制御部は、前記第1の通信処理部をパッシブ型相互通信におけるイニシエーターとして動作させ、 前記第1の通信プロトコルのデータ交換フェーズにおいて、前記第1の通信処理部がデータ交換要求コマンドを送出した直後に、前記第2の通信処理部によるデータ転送を開始するようになっている。
【0020】
また、本願の請求項4に記載の発明によれば、前記制御部は、 前記第1の通信処理部をパッシブ型相互通信におけるターゲットとして動作させ、 前記第1の通信プロトコルのデータ交換フェーズにおいて、前記第1の通信処理部がデータ交換応答コマンドを送出した直後に、前記第2の通信処理部によるデータ転送を開始するようになっている。
【0021】
また、NFC IP−1仕様の第1の通信プロトコルでは、前記イニシエーターによるデータ交換要求コマンド送信完了から前記ターゲットによるデータ交換応答コマンド送信開始までの時間、前記ターゲットによるデータ交換応答コマンド送信完了から前記イニシエーターによる次のデータ交換応答コマンド送信開始までの時間、アクティブ型相互通信におけるデータ交換要求及び応答コマンドでの送信データ変調完了から無線信号送出停止までの時間を明確に規定していない。
【0022】
これに対し、本願の請求項5に記載の発明によれば、前記制御部は、 前記第1の通信処理部をアクティブ型相互通信におけるイニシエーターとして動作させ、 前記第1の通信プロトコルのデータ交換フェーズにおいて、前記第1の通信処理部がデータ交換要求コマンドを送出してから無線信号の送出を停止するまでの期間において、前記第2の通信処理部によるデータ転送を実行するようになっている。
【0023】
また、本願の請求項6に記載の発明によれば、前記制御部は、 前記第1の通信処理部をアクティブ型相互通信におけるターゲットとして動作させ、 前記第1の通信プロトコルのデータ交換フェーズにおいて、前記第1の通信処理部がデータ交換応答コマンドを送出してから無線信号の送出を停止するまでの期間において、前記第2の通信処理部によるデータ転送を実行するようになっている。
【0024】
また、本願の請求項7に記載の発明によれば、前記第1の通信処理部がデータ交換要求コマンド内に当該送信直後に開始する前記第2の通信処理部による通信の形態を記載するようになっている。
【0025】
また、本願の請求項8に記載の発明によれば、前記第1の通信処理部がデータ交換応答コマンド内に、当該送信直後に開始する前記第2の通信処理部による通信の形態を記載するようになっている。
【0026】
また、NFC IP−1仕様の第1の通信プロトコルでは、前記イニシエーターによるデータ交換要求コマンド送信完了から前記ターゲットによるデータ交換応答コマンド送信開始までのタイムアウト時間が規定されている。
【0027】
これに対し、本願の請求項9に記載の発明によれば、前記制御部は、前記第1の通信処理部をイニシエーターとして動作させ、前記第1の通信処理部がデータ交換要求コマンドを送出した直後から前記第2の通信処理部によるデータ転送を継続して実行するとともに、データ交換応答コマンドを受信した後、さらに前記第2の通信処理部によるデータ転送を継続する場合には、前記第1の通信処理部から見せかけのデータ交換応答コマンドを送信するようになっている。
【0028】
また、本願の請求項10に記載の発明によれば、前記制御部は、前記第1の通信処理部をターゲットとして動作させ、前記第2の通信処理部がデータ転送を継続している間、データ交換要求コマンドを受信してから前記タイムアウト時間が消滅する前に、前記第1の通信処理部から見せかけのデータ交換応答コマンドを送信するようになっている。
【0029】
また、本願の請求項11に記載の発明は、イニシエーターからの要求コマンドを送信しターゲットから応答コマンドを受信する通信手順及び無線信号の衝突回避機能を規定した第1の通信プロトコルに従って第1のアンテナを用いて第1の周波数帯で無線通信動作を行なう第1の通信処理部と、第2のアンテナを用いて第2の周波数帯で無線通信動作を行なう第2の通信処理部を備えた通信装置の制御方法であって、
前記第1の通信プロトコルは、前記イニシエーターと前記ターゲット間で、データ交換を開始するための要求及び応答コマンド交換手順を行なうデータ交換開始準備フェーズと、データ交換を行なうためのデータ交換要求及び応答コマンド交換手順を行なうデータ交換フェーズを規定し、
前記第1の通信処理部がパッシブ型相互通信におけるイニシエーターとして動作する際に、前記第1の通信プロトコルのデータ交換フェーズにおいて、
前記第1の通信処理部からデータ交換要求コマンドを送出するステップと、
データ交換要求コマンドを送出した直後に、前記第2の通信処理部によるデータ転送を開始するステップと、
を有することを特徴とする通信方法である。
【0030】
また、本願の請求項12に記載の発明は、イニシエーターからの要求コマンドを送信しターゲットから応答コマンドを受信する通信手順及び無線信号の衝突回避機能を規定した第1の通信プロトコルに従って第1のアンテナを用いて第1の周波数帯で無線通信動作を行なう第1の通信処理部と、第2のアンテナを用いて第2の周波数帯で無線通信動作を行なう第2の通信処理部を備えた通信装置を制御するための処理をコンピューター上で実行するようにコンピューター可読形式で記述されたコンピューター・プログラムであって、
前記第1の通信プロトコルは、前記イニシエーターと前記ターゲット間で、データ交換を開始するための要求及び応答コマンド交換手順を行なうデータ交換開始準備フェーズと、データ交換を行なうためのデータ交換要求及び応答コマンド交換手順を行なうデータ交換フェーズを規定し、
前記第1の通信処理部がパッシブ型相互通信におけるイニシエーターとして動作する際に、前記第1の通信プロトコルのデータ交換フェーズにおいて、前記コンピューターに対し、
前記第1の通信処理部からデータ交換要求コマンドを送出するステップと、
データ交換要求コマンドを送出した直後に、前記第2の通信処理部によるデータ転送を開始するステップと、
を実行させるためのコンピューター・プログラムである。
【0031】
また、本願の請求項13に記載の発明は、イニシエーターからの要求コマンドを送信しターゲットから応答コマンドを受信する通信手順及び無線信号の衝突回避機能を規定した第1の通信プロトコルに従って第1のアンテナを用いて第1の周波数帯で無線通信動作を行なう第1の通信処理部と、第2のアンテナを用いて第2の周波数帯で無線通信動作を行なう第2の通信処理部を備えた通信装置を制御するための処理をコンピューター上で実行するようにコンピューター可読形式で記述されたコンピューター・プログラムであって、
前記第1の通信プロトコルは、前記イニシエーターと前記ターゲット間で、データ交換を開始するための要求及び応答コマンド交換手順を行なうデータ交換開始準備フェーズと、データ交換を行なうためのデータ交換要求及び応答コマンド交換手順を行なうデータ交換フェーズを規定し、
前記第1の通信処理部がパッシブ型相互通信におけるターゲットとして動作する際に、前記第1の通信プロトコルのデータ交換フェーズにおいて、前記コンピューターに対し、
前記第1の通信処理部からデータ交換応答コマンドを送出するステップと、
データ交換応答コマンドを送出した直後に、前記第2の通信処理部によるデータ転送を開始するステップと、
を実行させるためのコンピューター・プログラムである。
【0032】
また、本願の請求項14に記載の発明は、イニシエーターからの要求コマンドを送信しターゲットから応答コマンドを受信する通信手順及び無線信号の衝突回避機能を規定した第1の通信プロトコルに従って第1のアンテナを用いて第1の周波数帯で無線通信動作を行なう第1の通信処理部と、第2のアンテナを用いて第2の周波数帯で無線通信動作を行なう第2の通信処理部を備えた通信装置を制御するための処理をコンピューター上で実行するようにコンピューター可読形式で記述されたコンピューター・プログラムであって、
前記第1の通信プロトコルでは、前記イニシエーターによるデータ交換要求コマンド送信完了から前記ターゲットによるデータ交換応答コマンド送信開始までの時間、前記ターゲットによるデータ交換応答コマンド送信完了から前記イニシエーターによる次のデータ交換応答コマンド送信開始までの時間、アクティブ型相互通信におけるデータ交換要求及び応答コマンドでの送信データ変調完了から無線信号送出停止までの時間を明確に規定しておらず、
前記第1の通信処理部がアクティブ型相互通信におけるイニシエーターとして動作する際に、前記第1の通信プロトコルのデータ交換フェーズにおいて、前記コンピューターに対し、
前記第1の通信処理部がデータ交換要求コマンドを送出するステップと、
データ交換要求コマンドを送出してから無線信号の送出を停止するまでの期間において、前記第2の通信処理部によるデータ転送を実行するステップと、
を実行させるためのコンピューター・プログラムである。
【0033】
また、本願の請求項15に記載の発明は、イニシエーターからの要求コマンドを送信しターゲットから応答コマンドを受信する通信手順及び無線信号の衝突回避機能を規定した第1の通信プロトコルに従って第1のアンテナを用いて第1の周波数帯で無線通信動作を行なう第1の通信処理部と、第2のアンテナを用いて第2の周波数帯で無線通信動作を行なう第2の通信処理部を備えた通信装置を制御するための処理をコンピューター上で実行するようにコンピューター可読形式で記述されたコンピューター・プログラムであって、
前記第1の通信プロトコルでは、前記イニシエーターによるデータ交換要求コマンド送信完了から前記ターゲットによるデータ交換応答コマンド送信開始までの時間、前記ターゲットによるデータ交換応答コマンド送信完了から前記イニシエーターによる次のデータ交換応答コマンド送信開始までの時間、アクティブ型相互通信におけるデータ交換要求及び応答コマンドでの送信データ変調完了から無線信号送出停止までの時間を明確に規定しておらず、
前記第1の通信処理部がアクティブ型相互通信におけるターゲットとして動作する際に、前記第1の通信プロトコルのデータ交換フェーズにおいて、前記コンピューターに対し、
前記第1の通信処理部がデータ交換応答コマンドを送出するステップと、
データ交換応答コマンドを送出してから無線信号の送出を停止するまでの期間において、前記第2の通信処理部によるデータ転送を実行するステップと、
を実行させるためのコンピューター・プログラムである。
【0034】
本願の請求項12乃至15に係るコンピューター・プログラムは、コンピューター上で所定の処理を実現するようにコンピューター可読形式で記述されたコンピューター・プログラムを定義したものである。換言すれば、本願の請求項12乃至15に係るコンピューター・プログラムをコンピューターにインストールすることによって、コンピューター上では協働的作用が発揮され、本願の請求項1に係る通信装置と同様の作用効果を得ることができる。
【0035】
また、本願の請求項16に記載の発明は、
イニシエーターからの要求コマンドを送信しターゲットから応答コマンドを受信する通信手順及び無線信号の衝突回避機能を規定した第1の通信プロトコルに従って第1のアンテナを用いて第1の周波数帯で無線通信動作を行なう第1の通信処理部と、第2のアンテナを用いて第2の周波数帯で無線通信動作を行なう第2の通信処理部をそれぞれ備えた第1及び第2の通信装置を具備し、
前記第1の通信プロトコルは、前記イニシエーターと前記ターゲット間で、データ交換を開始するための要求及び応答コマンド交換手順を行なうデータ交換開始準備フェーズと、データ交換を行なうためのデータ交換要求及び応答コマンド交換手順を行なうデータ交換フェーズを規定し、
前記第1の通信装置が前記イニシエーターとして動作するとともに前記第2の通信装置が前記ターゲットとして動作して、前記データ交換フェーズにおいて、各々の前記第1の通信処理部を用いて前記データ交換要求及び応答コマンド交換手順を行なうとともに、各々の前記第2の通信処理部の間でデータ転送を行なう、
ことを特徴とする通信システムである。
【0036】
但し、ここで言う「システム」とは、複数の装置(又は特定の機能を実現する機能モジュール)が論理的に集合した物のことを言い、各装置や機能モジュールが単一の筐体内にあるか否かは特に問わない。
【0037】
また、第1の通信プロトコルは、具体的にはISO/IEC IS 18092で規定されるNFC(Near Field Communication) IP−1仕様に相当する。第2の通信処理部が適用する通信方式について、特許請求の範囲には直接の記載はないが、例えば反射波通信(Reflex)や、微弱UWB通信(Transfer JET)といった(後述)、NFC通信よりも高周波数帯を使用し高速データ通信が可能な近接通信方式を利用することができる。この場合、前記第1の通信装置が前記イニシエーターとして動作するとともに前記第2の通信装置が前記ターゲットとして動作して、DEP(Data Exchange Protocol)フェーズ以外の処理はすべて各々の前記第1の通信処理部を用いてNFC IP−1通信にて行ない、DEPフェーズでは、各々の前記第1の通信処理部を用いてDEP_REQ/DEP_RESコマンド・シーケンスを実行しながら、各々の前記第2の通信処理部の間でデータ転送を行なう。
【0038】
ここで、第1及び第2の通信装置各々の前記第1の通信処理部の間では、パッシブ型相互通信、並びにアクティブ型相互通信を行なうことができるものとする。そして、前記第1の通信プロトコルでは、前記イニシエーターによるデータ交換要求コマンド送信完了から前記ターゲットによるデータ交換応答コマンド送信開始までの時間、前記ターゲットによるデータ交換応答コマンド送信完了から前記イニシエーターによる次のデータ交換応答コマンド送信開始までの時間を明確に規定していないとする。
【0039】
このような場合、前記データ交換フェーズにおいて、前記第1の通信装置は、前記第1の通信処理部が前記イニシエーターとしてデータ交換要求コマンドを送出した直後に、前記第2の通信処理部によるデータ転送を開始することができる。また、前記第2の通信装置は、前記第1の通信処理部が前記ターゲットとしてデータ交換応答コマンドを送出した直後に、前記第2の通信処理部によるデータ転送を開始することができる。
【0040】
また、前記データ交換フェーズにおいて、前記第1の通信装置は、前記第1の通信処理部が前記イニシエーターとしてデータ交換要求コマンドを送出してから無線信号の送出を停止するまでの期間において、前記第2の通信処理部によるデータ転送を実行することができる。また、前記第2の通信装置は、前記第1の通信処理部が前記ターゲットとしてデータ交換応答コマンドを送出し手から無線信号の送出を停止するまでの期間において、前記第2の通信処理部によるデータ転送を実行することができる。
【0041】
また、前記第1及び第2の通信装置の間で、前記第2の通信処理部を用いた通信の形態を、当該通信開始前の前記第1の通信処理部を用いた前記データ交換要求及び応答コマンド交換手順を通じて決定するように構成するようにしてもよい。
【0042】
また、前記第1の通信装置は、前記第1の通信処理部が前記イニシエーターとして送信するデータ交換要求コマンド内に、当該送信直後に開始する前記第2の通信処理部による通信の形態を記載し、また、前記第2の通信装置は、前記第1の通信処理部が前記ターゲットとして送信するデータ交換応答コマンド内に、当該送信直後に開始する前記第2の通信処理部による通信の形態を記載するようにしてもよい。
【0043】
また、前記第1の通信装置は、前記第1の通信処理部が前記イニシエーターとしてデータ交換要求コマンドを送出した直後から、前記第2の通信処理部によるデータ転送を継続して実行するように構成してもよい。ここで、前記第1の通信装置の前記第2の通信処理部がデータ転送を継続している間、前記第2の通信装置は、前記第1の通信プロトコルで規定されているタイムアウト時間が消滅する前に、前記第1の通信処理部から見せかけのデータ交換応答コマンドを送信するようになっている。そして、前記第1の通信装置は、前記見せかけのデータ交換応答コマンドを受信した後、さらに前記第2の通信処理部によるデータ転送を継続する場合には、前記第1の通信処理部から見せかけのデータ交換応答コマンドを送信する。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、現在既に確立しているNFC通信システムとの完全な上位互換を持ちながら高速通信を実現することができる、優れた通信装置及び通信方法、コンピューター・プログラム、並びに通信システムを提供することができる。
【0045】
また、本発明によれば、NFC通信用の大アンテナの内側に高速通信用の小アンテナを装備し、従来のNFC規格と完全な互換性を持ちながら高速通信を実現することができる、優れた通信装置及び通信方法、コンピューター・プログラム、並びに通信システムを提供することができる。
【0046】
本願の請求項1、16に記載の発明によれば、第1のアンテナ(若しくは第1の周波数帯)を用いた通信路上では、第1及び第2の通信装置の間では第1の通信プロトコルを完全に満たした要求及び応答コマンド交換手順が実施されることから、第1のアンテナの通信可能範囲に、同様に第2のアンテナ(若しくは第2の周波数帯)を用いる他の通信システムや、第1の通信プロトコルに従う他の通信システムが存在しても、第1の通信プロトコルに関しては問題なく動作することができる。また、本願の請求項2に記載の発明によれば、第1及び第2の通信システム間のNFC通信路上では、NFC IP−1仕様を完全に満たしたコマンド・シーケンスが実施されることから、第1のアンテナの通信可能範囲に、同様に第2のアンテナ(若しくは第2の周波数帯)を用いるが通信方式が異なる他の通信システムや、旧来のNFC通信装置が複数存在しても、NFC IP−1通信に関しては問題なく動作することができる。
【0047】
また、本願の請求項2に記載の発明によれば、DEPフェーズ以外の処理はすべてNFC IP−1通信にて行なうので、第2の通信処理部による高速通信を実現する際に、Data Exchange以外の部分については独自プロトコル体系を新たに構築する必要がない。
【0048】
また、本願の請求項2に記載の発明によれば、各通信装置において第1及び第2の通信処理部の直近上位層として実装するプログラム(ファームウェア)において、Data Exchange以外の部分については既存のNFC IP−1通信用のモジュールをそのまま利用することができる。例えば、第1並びに第2の通信装置に接続されるホスト機器で実装するアプリケーションのプログラムを、高速通信の物理的方式に応じて変更する必要はほとんどない。逆に、アプリケーション層からの視点で言及するならば、下位の通信路の物理的特性を意識することなく構築することができ、既存のNFC通信用のアプリケーションをほぼそのまま使用することが可能である。下位の通信路の差異は、アプリケーション層には影響せず、通信速度などの性能として現れる。
【0049】
また、本願の請求項2に記載の発明によれば、各通信装置の第2の通信処理部を用いて高速データ転送を実施する際に、既存のNFC IP−1通信との仕様は矛盾せず、且つ、既存のNFC IP−1通信との連続性を保つことができる。
【0050】
本願の請求項3、4、5、6、11乃至16に記載の発明によれば、第1のアンテナ(若しくは第1の周波数帯)を用いた通信路上では、第1の通信プロトコルに完全に準拠したデータ交換要求及び応答コマンドが行き来し、第2のアンテナ(若しくは第2の周波数帯)を用いた通信路上では、このデータ交換要求及び応答コマンドの送受信タイミングに同期して、実際の転送データを伝送することができる。また、データ交換要求又は応答コマンドを送信した直後に、第2のアンテナ(若しくは第2の周波数帯)を用いた通信路上で通信を行なうことにより、当該高速通信を開始する時点でのイニシエーターとターゲットの1対1対応を保証することができる。また、第1のアンテナ(若しくは第1の周波数帯)を用いた通信路上では、第1の通信プロトコルに完全に準拠したコマンド・シーケンスが実施されることから、第1のアンテナの通信可能範囲に、同様に第2のアンテナ(若しくは第2の周波数帯)を用いるが通信方式が異なる他の通信システムや、旧来のNFC通信装置が複数存在しても、NFC IP−1通信に関しては問題なく動作することができる。
【0051】
また、本願の請求項7、8に記載の発明によれば、通信相手となった通信装置の間で、前記第2の通信処理部を用いた通信の形態を、毎回の通信で決定し変更することができる。
【0052】
また、本願の請求項9、10に記載の発明によれば、通信相手となった通信装置の間では、各々の第1の通信処理部を用いて見せかけのデータ交換要求及び応答コマンド・シーケンスを繰り返すことで、第1の通信プロトコルで規定されるタイムアウトを回避しながら、各々の第2の通信処理部を用いてストリーミングなど長時間にわたるデータ通信を行なうことができる。
【0053】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳解する。
【0055】
まず、既存のNFC IP−1仕様におけるNFC R/W(リーダ/ライタ)間相互通信(Data Exchange)の概要について説明する(詳細については、ISO/IEC IS 18092を参照されたい)。
【0056】
NFC通信装置(R/W)は、パッシブ・モードとアクティブ・モードという2つの通信モードを持つ。パッシブ・モードでは、通信相手が発生する電磁波(に対するキャリア)に負荷変調をかけることによってデータを送信する。一方のアクティブ・モードでは、自身が発生する電磁波(に対するキャリア)を変調することによってデータを送信する。また、最初に電磁波を出力して相互通信を開始する(すなわち通信の主導権を握る)装置のことを「イニシエーター」と呼び、イニシエーターからのコマンド(相互通信開始要求)に対してレスポンス(相互通信開始応答)を返す通信相手のことを「ターゲット」と呼ぶ。パッシブ・モードではキャリア信号の向きが常にイニシエーター→ターゲットであり、アクティブ・モードではキャリア信号の向きが交互に切り換わる。
【0057】
図12には、NFC IP−1に準拠したパッシブ型相互通信システムの構成例を模式的に示している。
【0058】
イニシエーターは、リーダライタ・モードで動作するNFC通信装置である。このNFC通信装置は、UART(Univeral Asynchronous Receiver−Transmitter:万能非同期送受信機)若しくはその他のホスト・インターフェースを介してホスト機器に接続されている。ホスト機器は、パーソナル・コンピュータ(PC)やR/W内部の組み込みCPU(Central Processing Unit)に相当する。
【0059】
また、ターゲットは、カード・モードで動作するNFC通信装置であり、UART若しくはその他のホスト・インターフェースを介してホスト機器に接続されている。ホスト機器は、PCやR/W内部の組み込みCPUに相当する(ターゲットは、NFC対応カードなどのトランスポンダであることもあるが、本実施形態では想定していない)。
【0060】
パッシブ型相互通信では、イニシエーターは、自らの発する13.56MHzのキャリア信号をASK(Amplitude Shift Keying)変調することによって送信データを重畳して、ターゲットに伝える。これに対し、ターゲットは、イニシエーターの送出する13.56MHzのむ変調キャリアに負荷変調を加えることによって、送信データをイニシエーターへ伝える。なお、アクティブ型相互通信では、イニシエーターもターゲットも自らの発する13.56MHzのキャリア信号をASK変調することによって送信データを重畳して、通信相手に伝える。
【0061】
イニシエーターは、ホスト機器から通信開始コマンドを受けると(図12中の(1))、まずキャリア電波を送出する。その後、イニシエーターは、通信可能空間にターゲットが存在するかどうかを確認するため、規格に定められた方法(キャリア周波数、データ変調速度、データ内容)により、応答要求信号を送信する(図12中の(2))。
【0062】
これに対し、ターゲットは、まずイニシエーターが送出するキャリアの誘導起電力によって電力を供給されて起動し受信可能状態となり、その後、イニシエーターから送られてくる応答要求信号を受信する。そして、ターゲットは、受信した応答要求信号が自らのタイプに合致する信号であれば、規格に定められた方法(データ変調速度、返信タイミング、データ内容)で自らの識別情報を含む応答信号を、イニシエーターからの無変調キャリアへ負荷変調をかけることによって応答する(図12中の(3))。
【0063】
そして、イニシエーターは、ターゲットからの応答信号を受信すると、その情報をホスト機器に伝達する(図12中の(4))。ホスト機器は、通信可能空間に存在するターゲットの個数及び各々の識別情報を認識すると、動作プログラム(ファームウェア)に従って特定のターゲットとの通信フェーズへ移行する。これによって、パッシブ型相互通信が確立する。通信が確立した後は、イニシエーターは必要な通信が終了するまで常にキャリア電波を出し続け、ターゲットに対し必要な電力を送る。
【0064】
上述した応答要求動作と同様、データ通信時にも、イニシエーターからターゲットへキャリア電波の強度変調、ターゲットからイニシエーターヘ無変調キャリアの負荷変調によってデータ伝送を行なう。但し、符号化方式は通信モードに応じて異なるので、前述した表1を参照されたい。
【0065】
以下の表2には、NFC IP−1プロトコルにおけるコマンド・セットを示している。NFCIP−1コマンドはパッシブ型及びアクティブ型相互通信で共通であり、内容も同一である。
【0066】
【表2】

【0067】
表2に記載されている各コマンドは必ずイニシエーターより発行され(***_REQ)、ターゲットはコマンドに対応した適切な処理を行ない、適切なデータ内容を載せてレスポンスを返す(***_RES)。但し、“***”には鼓膜止め異が記載される。ターゲット側からコマンドを発行することはできない。NFCIP−1プロトコルより下層の物理仕様によりパケット長を示すLEN(1バイト)が規定されており、NFCIP−1パケットの長さは1〜255バイトに制限されている。
【0068】
図13には、パッシブ型相互通信のコマンド状態遷移図を示している。
【0069】
まず、NFC通信装置は、初期の無線信号(RF)の衝突回避(CA:Collision Avoidance)を行なう(ステップS1)。
【0070】
次いで、NFC通信装置は、パッシブ型通信のイニシエーターに切り換わると(ステップS2)、初期化、並びに、通信相手を特定するためのSDD(Single Device Detection)ループ処理を実行する(ステップS3)。
【0071】
次いで、このイニシエーターは、特定された通信相手が同様にパッシブ型NFC通信装置で動作するターゲットであり、属性(Attribute)を要求するか否かを判別する(ステップS4)。ここで、ターゲットに属性を要求しないときには(ステップS4のNo)、独自仕様のプロトコル(Proprietary protocol)で通信を行ない(ステップS6)、これが終了すると、ステップS3に戻ってSDDループを再び行ない、新たな通信相手を探索する。
【0072】
他方、ターゲットに属性を要求するときには、イニシエーターは、ターゲットに対し属性要求(ATR_REQ)コマンドを送信して(ステップS6)、タイムアウト時間を設定するとともに、ターゲットから属性応答(ATR_RES)コマンドを受信して(ステップS7)、最高通信速度を確認する。また、通信パラメーターを変更するときには(ステップS8のYes)、イニシエーターは、通信相手にパラメーター選択要求(PSL_REQ)コマンドを送信し(ステップS9)、ターゲットからパラメーター選択応答(PSL_RES)コマンドを受信して(ステップS10)、通信パラメーターを変更する(ステップS11)。
【0073】
このようにして、イニシエーターは、ターゲットとの間でDEP(Data Exchange Protocol)と呼ばれるステートに移行して、パッシブ型相互通信によるデータ交換が行なわれる(ステップS12)。
【0074】
その後、イニシエーターは、通信相手を切り替えたいときには、ターゲットに対し選択解除要求(DSL_REQ)コマンドを送信し(ステップS13)、ターゲットから選択解除応答(DSL_RES)コマンドを受信すると(ステップS14)、ターゲットの選択が解除される。その後、ステップS3に戻ってSDDループを再び行ない、新たな通信相手を探索する。
【0075】
また、イニシエーターは、パッシブ型相互通信のイニシエーターとしての無線通信動作自体を解除したいときには、ターゲットに対し解除要求(RLS_REQ)コマンドを送信し(ステップS15)、ターゲットから解除応答(RLS_RES)コマンドを受信すると(ステップS16)、当該通信状態を解除する。その後、このNFC通信装置は、ステップS1に戻り、初期の無線信号の衝突回避(RFCA)を行なう。
【0076】
図14A〜図14Bには、パッシブ型NFC相互通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を図解している。
【0077】
まず、イニシエーターは、NFCキャリアを送出し(図14Aを参照)、所定のガード時間経過後に、DEP_REQコマンドをASK変調信号で送信する(図14Bを参照)。
【0078】
これに対し、ターゲットは、イニシエーターからのDEP_REQコマンドの正常受信を確認した後、イニシエーターから送出される無変調NFCキャリアを負荷変調して、DEP_RESコマンドを送信する(図14Cを参照)。その後、通信システムは、図14Aに示した状態に戻る。
【0079】
また、図15には、アクティブ型相互通信のコマンド状態遷移図を示している。
【0080】
まず、NFC通信装置は、初期の無線信号の衝突回避(RFCA)を行なう(ステップS21)。
【0081】
次いで、NFC通信装置は、アクティブ型通信のイニシエーターに切り換わると(ステップS22)、ターゲットに対し属性要求(ATR_REQ)コマンドを送信して(ステップS23)、タイムアウト時間を設定するとともに、ターゲットから属性応答(ATR_RES)コマンドを受信して(ステップS24)、最高通信速度を確認する。
【0082】
また、イニシエーターは、通信パラメーターを変更するときには(ステップS25のYes)、イニシエーターは、通信相手にパラメーター選択要求(PSL_REQ)コマンドを送信し(ステップS26)、ターゲットからパラメーター選択応答(PSL_RES)コマンドを受信して(ステップS27)、通信パラメーターを変更する(ステップS28)。
【0083】
このようにして、イニシエーターは、ターゲットとの間でDEP(Data Exchange Protocol)と呼ばれるステートに移行して、パッシブ型相互通信によるデータ交換が行なわれる(ステップS29)。
【0084】
その後、イニシエーターは、通信相手を切り替えたいときには、ターゲットに対し選択解除要求(DSL_REQ)コマンドを送信し(ステップS30)、ターゲットから選択解除応答(DSL_RES)コマンドを受信すると(ステップS31)、ターゲットの選択が解除される。次いで、イニシエーターは、新しい通信相手となるターゲットに起動要求(WUP_REQ)を送信し(ステップS32)、ターゲットから起動応答(WUP_RES)コマンドを受信する(ステップS33)。また、新しい通信相手と通信パラメーターを変更するときには(ステップS25のYes)、同様にステップS26〜S28を実行する。
【0085】
また、イニシエーターは、アクティブ型相互通信のイニシエーターとしての無線通信動作自体を解除したいときには、ターゲットに対し解除要求(RLS_REQ)コマンドを送信し(ステップS34)、ターゲットから解除応答(RLS_RES)コマンドを受信すると(ステップS35)、当該通信状態を解除する。その後、このNFC通信装置は、ステップS21に戻り、初期の無線信号の衝突回避(RFCA)を行なう。
【0086】
図16A〜図16Gには、アクティブ型NFC相互通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を図解している。
【0087】
まず、イニシエーターは、NFCキャリアを送出し(図16Aを参照)、所定のガード時間経過後に、DEP_REQコマンドをASK変調信号で送信する(図16Bを参照)。そして、イニシエーターは、DEP_REQコマンドの送信を完了した後、NFCキャリアの出力を停止する(図16Cを参照)。
【0088】
続いて、NFC IP−1で規定するアクティブ型相互通信の仕様に従い、今度は、ターゲット側からイニシエーターに対し、NFCキャリアを送出する(図16Dを参照)。
【0089】
ターゲットは、イニシエーターからのDEP_REQコマンドの正常受信を確認した後、イニシエーターに対するDEP_REQコマンドをASK変調信号で送信する(図16Eを参照)。そして、ターゲットは、DEP_REQコマンドの送信を完了した後、NFCキャリアの出力を停止する(図16Fを参照)。
【0090】
続いて、NFC IP−1で規定するアクティブ型相互通信の仕様に従い、イニシエーターは、NFCキャリアを送出し(図16Gを参照)、通信システムは図16Aに示した状態に戻る。
【0091】
パッシブ型並びにアクティブ型のいずれのNFC IP−1相互通信においても、イニシエーターからのATR_REQコマンド送信により開始し、Data Exchange Protocol(DEP)と記載されたステートにおいて、イニシエーターとターゲット間でデータ交換が行なわれる。
【0092】
データ交換には、コマンド・セット内のDEP_REQ/DEP_RESコマンドが使われ、DEP_REQコマンドではイニシエーター→ターゲット向きの転送データ(Transport Data)送信が、DEP_RESコマンドではターゲット→イニシエーター向きの転送データ送信ができる。
【0093】
また、複数のターゲットが存在した場合に特定のターゲットを選択するためにDSL_REQ/DSL_RESコマンドが使われ、通信速度を変更するためにPSL_REQ/PSL_RESコマンドが使われる。
【0094】
図17には、データ交換に使われるDEP_REQ/DEP_RESコマンドのパケット構造を示している。
【0095】
DEP_REQ/DEP_RESはともに対称なパケット構造をしており、コマンドコードを示すCMD0(1バイト)、CMD1(1バイト)の後にそのデータ転送内容を指示するPFBバイトが続き、その後、オプショナルな機能としてDID(1バイト)、NAD(1バイト)、最後に実際に転送するデータ(Transport Data Bytes)が続く。
【0096】
なお、DIDバイト、NADバイト、Transport Data Bytesの存在は任意である(なくても良い)。また、Transport Data Bytesの長さは、コマンド・パケット長が255バイトを超えない限り任意である。
【0097】
次に、NFC IP−1相互通信におけるイニシエーターとターゲットの1対1対応について説明する。
【0098】
パッシブ型相互通信においては、基本的にイニシエーターは送出キャリアをオフすることはない。外部に13.56MHzのキャリアが存在する場合、他のNFC通信装置(イニシエーター)は自らのキャリアを送出することができない仕様なので、複数のNFC通信装置(イニシエーター)が存在する場合においてもあるイニシエーターの通信中に他のイニシエーターが割り込むことはできない。
【0099】
他方、アクティブ型相互通信においては、イニシエーターとターゲットが交互に送出キャリアをオン/オフすることになるが、パッシブ型相互通信と同様に外部キャリア存在時に自らのキャリアを送出できないことに加え、送出キャリアのオン/オフのタイミングについてもマイクロ秒オーダーで詳細に規定されている。アクティベーション(Protocol Activation and Parameter Selection)期間における衝突回避シーケンスを図18に示しておく。同図中、TADTは、イニシエーター/ターゲットとターゲット/イニシエーター間でRFオフする間のアクティブ遅延時間、検出時間である(但し、768/fc≦TADT≦2559fcとする。fcはキャリア周波数)。また、TRFWは無線待機時間である(512/fc)。また、nは、TRFWとしてランダムに生成した時間区間の個数である(但し、0≦n≦3)。また、TARFGは、RFフィールドをスイッチ・オンしてからコマンドを送信開始するまでのアクティブ・ガード時間である(但し、TARFG>1024/fcとする)。但し、TADT+n×TRFW+TARFGの長さが規定されているのに対して、データ変調終了後から送出キャリア・オフまでの時間は規定されていない。同図により、複数のNFC通信装置(イニシエーター)が存在する場合においても、あるイニシエーターの通信中に他のイニシエーターが割り込むことはできないことを理解できよう。
【0100】
また、パッシブ型相互通信及びアクティブ型相互通信の双方において、複数のNFC通信装置(ターゲット)が存在する場合においても、イニシエーターは、前述の制御コマンドにより、特定のターゲットを選択して通信することができる。
【0101】
以上により、複数のNFC通信装置が存在する場合においても、図13、図15に示したNFC IP−1相互通信手順を正常に行なう限り、イニシエーターとターゲットの1対1対応が保証される、ということを理解できよう。
【0102】
次に、上位アプリケーションの制御によるイニシエーターとターゲット間のデータ交換手順について説明する。図19には、アクティブ型相互通信におけるイニシエーターとターゲットの動作シーケンスを模式的に示している。
【0103】
(S1)イニシエーターは、まず、時間TIDTにわたり初期RF衝突回避動作を行なう。
(S2)そして、イニシエーターは、無線通信動作をオンにし、さらにRF待機時間TRFWが経過してから、要求コマンドを送信し、その後、無線通信動作をオフにする。
(S3)ターゲットは、イニシエーターから到来する無線信号を検出すると、要求コマンドの受信処理を行なう。
(S4)そして、ターゲットは、アクティブ遅延時間TADTにわたり、RF衝突回避動作を行なう。
(S5)ターゲットは、さらにアクティブ・ガード時間TARFGが経過してから、要求コマンドに対するレスポンスを返し、その後、無線通信動作をオフにする。
(S6)イニシエーターは、ターゲットから到来する無線信号を検出すると、レスポンスの受信処理を行なう。
(S7)そして、ターゲットは、アクティブ遅延時間TADTにわたり、RF衝突回避動作を行ない、さらにアクティブ・ガード時間TARFGが経過してから、コマンドを送信し、その後、無線通信動作をオフにする。
(S8)ターゲットは、イニシエーターからのコマンドの受信処理を行なう。
【0104】
イニシエーター並びにターゲットを制御する上位アプリケーションにより、以下のような転送動作が行なわれる。
【0105】
(T1)イニシエーター⇒ターゲット向きにデータを伝達したい場合:
イニシエーターからターゲットへ、Transport Data Bytesを付加したDEP_REQコマンドが送信され、ターゲットからイニシエーターへ、Transport Data BytesなしのDEP_RESコマンドが返信される。
(T2)ターゲット⇒イニシエーター向きにデータを伝達したい場合:
イニシエーターからターゲットへ、Transport Data BytesなしのDEP_REQコマンドが送信され、ターゲットからイニシエーターへ、Transport Data Bytesを付加したDEP_RESコマンドが返信される。
(T3)イニシエーター⇔ターゲット双方向にデータを伝達したい場合:
イニシエーターからターゲットへ、Transport Data Bytesを付加したDEP_REQコマンドが送信され、ターゲットからイニシエーターへ、Transport Data Bytesを付加したDEP_RESコマンドが返信される。
【0106】
データ伝達の向きの決定は、上位アプリケーションに委ねられ、NFC IP−1仕様は関知しない。なお、255バイトを超える一続きのデータを伝達したいときのため、上記の(T1)、(T2)を複数回連続して行なう「チューニング」機能もある。
【0107】
上述したように、NFC IP−1規格で定められた通信速度は、最大値でも高々424kbpsであり(表1を参照のこと)、他の汎用の無線通信(WiFi(登録商標)やBluetooth(登録商標)通信など)と比べると非常に低速である。このため、NFCを画像や音声、動画像などの大容量データ通信へ適用することは困難である。また、キャリア周波数(13.56MHz)などの物理的な制約からも、実現可能な最高通信速度はせいぜい848kbpsまでであり、今後の飛躍的な高速化を期待することはできない。
【0108】
このことから、これまでのNFC通信の実際の使用用途は、電子マネーや、個人認証(IDカードやチケットなど)、汎用無線通信の接続確立補助(ハンドオーバー)、若しくは、安価なタグを利用したごく小容量のデータ送信(スマートポスターなど)のみに限定されている。
【0109】
これに対し、本出願に既に譲渡されている特願2007−319567号明細書には、NFC対応のリーダライタ又はトランスポンダに相当する大アンテナ及び第1の無線処理手段の他に、従来型の大アンテナの内側に1以上の小アンテナ並びに第2の無線処理手段を備えた通信装置について開示されている。この通信装置は、個々の小アンテナの対によって高速通信を行ない、システム全体での通信速度の向上を図ることができる。また、大アンテナは従来のNFC規格と完全な互換性を持ち、小アンテナ同士の通信(以下、マルチ通信)を用いない場合は従来のNFC通信を行なう能力を持つ。一方、小アンテナは、データ通信のみを担当する。したがって、リーダライタからカードへの電力供給もこの大アンテナが行なう。
【0110】
上記の小アンテナを用いた高速通信にも適用可能な、近距離高速無線通信技術として、「バックスキャッタ」とも呼ばれる反射波通信方式(Reflex)や(例えば、特許第4020096号公報を参照のこと)、UWB(Ultra Wide Band)のローバンド(4GHz帯)を用いた微弱UWB方式(Transfer Jet)(例えば、特開2008−99236号公報、www.transferjet.org/en/index.htmlを参照のこと)を挙げることができる。NFC、バックスキャッタ方式、微弱UWB方式の比較を以下の表に示す。
【0111】
【表3】

【0112】
小アンテナを用いた高速通信にも適用可能な、バックスキャッタ方式、並びに微弱UWB方式はいずれも、プロトコル体系が独自規格であることから、汎用性には難がある。一方、NFC IP−1規格では、通信速度、符号化方式、転送パケット長の上限などの物理的仕様及びプロトコル・フォーマットが詳細に規定されている(表1を参照のこと)。このため、NFC IP−1規格を、物理的仕様が大きく異なるバックスキャッタ方式や微弱UWB方式にそのまま適用することは困難である。
【0113】
よって、NFC通信用の大アンテナの内側に高速通信用の小アンテナを装備した通信装置からなる通信システムには、以下に示すような問題があると思料される。
【0114】
(K1)既存のNFC方式と高速通信方式の間で動作モードを遷移させる際の通信動作の継続性を保つことが困難である。
(K2)各高速通信専用の新たなプロトコル体系を構築する必要がある。
(K3)プロトコル層を司る制御プログラム(ファームウェア)に、既存のNFC方式の他に各高速通信専用独自プロトコル体系を新たに実装する必要がある。
(K4)既存のNFC方式を用いるものの他に、各高速通信専用の新たなアプリケーションを作成する必要がある。
【0115】
また、バックスキャッタ方式や微弱UWB方式のような近距離高速無線通信技術がNFC IP−1規格に組み込まれた形で標準化が行なわれるには、多くの使用実績と長期の仕様策定期間を要する。
【0116】
ここで、上述したNFC IP−1規格に基づくプロトコル体系をそのまま小アンテナにおける高速通信にも適用した場合の問題点を、以下に列挙する。
【0117】
(P1)NFC IP−1仕様により各DEP_REQ/DEP_RESの最大パケット長が255バイトに制限されており、高速なデータ通信を行なう上では非効率である(データレートが上がらない)。
(P2)NFC IP−1制御コマンド(PSL_REQ/PSL_RES)において転送データレートを変更できるが、データレートを指定するビット数は有限であり、且つ、指定ビットに対応するデータレートはNFC IP−1仕様で定められているため、多様な通信方式、及びデータレートの高速通信に対応できない。
(P3)大アンテナ、小アンテナという独立した複数通信路にまたがってNFC IP−1プロトコル体系を適用すると、NFC方式から高速通信方式へ、若しくはその逆の切り替え時にステートの不整合が起こり易い(連続性を保ち難い)。
(P4)NFC IP−1プロトコルコマンド内の未使用(RFU)ビットや新設コマンドを使って高速通信を適応させたとしても、結局独自仕様となってしまい、さらに高速通信方式に対する制限や既存のNFC通信への悪影響が起こり易い。
【0118】
そこで、以下では、NFC通信用の大アンテナの内側に高速通信用の小アンテナを装備したNFC通信装置からなり既存のNFC IP−1規格に従う通信システムにおいて、上記(P1)〜(P4)のような問題を解消しつつ、小アンテナによる高速通信を実現する方法について提案する。
【0119】
図1には、NFC通信用の大アンテナの内側に高速通信用の小アンテナを装備したNFC通信装置からなる、本発明の一実施形態に係る通信システムの構成例を示している。一方のNFC通信装置100Aはイニシエーターとして動作し、他方のNFC通信装置100Bはターゲットとして動作する。
【0120】
各NFC通信装置100は、R/W制御部110と、大アンテナ121を接続するNFC通信処理部120と、メモリー・インターフェース122を介してNFC通信処理部120に接続されるNFC通信用小容量バッファー130と、小アンテナ141を接続する高速通信処理部140と、高速メモリー・インターフェース142を介して高速通信処理部140に接続される高速通信用大容量バッファー150を備え、ホスト・インターフェース161を介してホスト機器160に接続されている。以下、各部について説明する。
【0121】
大アンテナ121は、NFC通信アナログ・インターフェース(図示しない)を介してNFC通信処理部120に接続され、NFC通信キャリアの送出、及びNFC通信の送受信を行なう。
【0122】
NFC通信処理部120は、NFC通信における物理層並びにデータリンク層の処理を行なう。具体的には、図13に示した処理手順に従い、パッシブ型相互通信、並びに、図15に示した処理手順に従い、アクティブ型相互通信を行なうことができる。NFC通信処理部120は、内部バス111を介してR/W制御部110に接続されるとともに、メモリー・インターフェース121を介してNFC通信用小容量バッファー130を接続している。
【0123】
NFC通信用小容量バッファー130は、字義通り、NFC通信用の小容量バッファーであり、例えばSRAM(Static Random Access Memory)やレジスタで構成される。NFC通信用小容量バッファー130は、内部バス111を介してR/W制御部110に接続されるとともに、メモリー・インターフェース122を介してNFC通信処理部120に接続されている。送信時には、NFC通信用小容量バッファー130は、R/W制御部110により書き込まれたNFC通信送信パケット・データ(〜255バイト)を、NFC通信処理部120からの要求によりNFC通信処理部120へ転送する。また、受信時には、NFC通信用小容量バッファー130は、NFC通信処理部120から送られてくるNFC通信受信パケット・データ(〜255バイト)を保存し、R/W制御部110からの要求によりR/W制御部110へ転送する。
【0124】
小アンテナ141は、高速通信アナログ・インターフェース(図示しない)を介して高速通信処理部140に接続され、高速通信キャリアの送出、及び高速通信の送受信を行なう。
【0125】
高速通信処理部140は、Mbpsレベルの高速通信における物理層並びにデータリンク層の処理を行なう。高速通信処理部140は、内部バス111を介してR/W制御部110に接続されるとともに、高速メモリー・インターフェース141を介して高速通信用小容量バッファー150を接続している。
【0126】
高速通信処理部140は、例えば、反射波通信方式(Reflex)や微弱UWB方式(Transfer Jet)などの通信方式(表3を参照のこと)を適用する。反射波通信方式によれば、キャリア送出と転送データの方向が逆向きとなる。これに対し、微弱UWB方式によれば、キャリア送出と転送データの方向が同じ向き、すなわち、アクティブ型の高速通信となる。但し、本発明の要旨は、小アンテナ141を用いた高速通信として上記の2方式に限定されるものではない。
【0127】
高速通信用大容量バッファー150は、字義通り、Mbpsレベルの高速通信用の大容量バッファーであり、例えばフラッシュ・メモリーやDRAM(Dynamic RAM)で構成される(但し、読み出しのみの場合はROM(Read Only Memory)でもよい)。高速通信用大容量バッファー150は、内部バス111を介してR/W制御部110に接続されるとともに、高速メモリー・インターフェース142を介して高速通信処理部140に接続されている。送信時には、高速通信用大容量バッファー150は、R/W制御部110により書き込まれた高速通信送信バースト・データを、高速通信処理部140からの要求により高速通信処理部140へバースト転送する。また、受信時には、高速通信用大容量バッファー150は、高速通信処理部140から送られてくる高速通信受信バースト・データを保存し、R/W制御部110からの要求によりR/W制御部110へ転送する。
【0128】
R/W制御部110は、図1に示す通信システムにおけるネットワーク層からプレゼンテーション層に至るまでの上位層の処理を担い、NFC通信と高速通信の協調を取り、高速データ通信を実現する。R/W制御部110は、例えば、ハードウェア・ロジックのマイクロプログラムや組み込みCPUのROMプログラムという形態で実装されるが、システム構成によってはアプリケーション層も含んだ形で組み込みCPUに実装される場合もある。R/W制御部110には、内部バス111を介して、上述した各物理層処理部を接続するとともに、ホスト・インターフェース161を介してホスト機器160に接続される。
【0129】
ホスト機器160は、図1に示す通信システムにおいて、アプリケーション層の処理を担い、高速データ通信を用いてユーザの求める機能を提供する。ホスト機器160は、例えば、PCや組み込みCPUで構成される。
【0130】
ホスト機器160がPC(Personal Computer)の場合は、ホスト・インターフェース161としてUSB、UARTなどが用いられ、組み込みCPUの場合には、ホスト・インターフェース161としてAMBA、AHBバス、I2Cシリアル・インターフェースなどが用いられる。
【0131】
図1に示す通信システムでは、大アンテナ121を用いてNFC通信を行なうとともに、小アンテナ141を用いて高速通信を行なう。既に述べたように、大アンテナ121を用いたNFC通信には、パッシブ型相互通信とアクティブ型相互通信の2通りがある。また、小アンテナ121を用いた高速通信には、反射波通信方式(Reflex)、微弱UWB方式(Transfer Jet)の2通りを挙げることができる。したがって、通信システムの構成方法として、以下の4通りを挙げることができる(但し、本発明の要旨は、小アンテナ141を用いた高速通信として上記の2方式に限定されるものではない)。
【0132】
(C1)パッシブ型NFC相互通信+アクティブ型高速通信(Transfer Jet)
(C2)アクティブ型NFC相互通信+アクティブ型高速通信(Transfer Jet)
(C3)パッシブ型NFC相互通信+反射型高速通信
(C4)アクティブ型NFC相互通信+反射型高速通信
【0133】
本実施形態に係る通信システムでは、図13に示したパッシブ型相互通信、並びに、図15に示したアクティブ型相互通信のいずれにおいて、小アンテナ141を用いた高速通信を行なう場合であっても、実際にデータ交換を行なうDEPフェーズ(ステップS12、S29)以外の処理はすべてNFC IP−1通信にて行なう。すなわち、大アンテナ121を用いたNFC通信処理では、図13に示したパッシブ型相互通信又は図15に示したアクティブ型相互通信のいずれかを行ない、コマンド状態を遷移させながら、NFC通信においてDEPステートに移行した時点において、大アンテナ121を用いたNFC通信に代えて、小アンテナ141を用いた高速・大容量通信によりデータ交換を行なう。
【0134】
このように、高速通信部140を用いた高速データ伝送を行なうのに並行して、NFC通信処理部120において通常のNFC通信動作が実施されていることから、仮に通信範囲内に旧来の(高速通信機能を搭載していない)NFC通信装置が存在したとしてもNFCで規定するRFCA機能により衝突を回避することができる。言い換えれば、既存のNFC通信システムとの互換性を保証することができる訳である。本実施形態に係る通信システムのメリットを以下にまとめておく。
【0135】
(M1)小アンテナ141を用いた高速通信において、Data Exchange以外の部分については独自プロトコル体系を新たに構築する必要がない。
(M2)R/W制御部110に実装するプログラム(ファームウェア)において、Data Exchange以外の部分については既存のNFC IP−1通信用のモジュールをそのまま利用することができる。
(M3)既存のNFC IP−1通信との仕様矛盾が起こらない。
(M4)既存のNFC IP−1通信との連続性を保つことができる。
【0136】
NFC通信におけるDEPステートでは、上記の表2に示したコマンド・セットのうちDEP_REQ/DEP_RESコマンドが使われる。そして、DEP_REQコマンドでは、イニシエーター→ターゲット向きの転送データ送信が行なわれ、DEP_RESコマンドでは、ターゲット→イニシエーター向きの転送データ送信が行なわれる。ここで、NFC IP−1仕様では、以下に示す各区間については、明確な時間が規定されていない。
【0137】
(I1)DEP_REQコマンド送信完了からDEP_RESコマンド送信開始
(I2)DEP_RESコマンド送信完了から次のDEP_REQコマンド送信開始
(I3)アクティブ型相互通信におけるDEP_REQ/DEP_RESコマンドでの送信データ変調完了から送出RFオフまで(図18中の、Send ResponseからRFオフまで)
【0138】
そこで、本実施形態に係る通信システムでは、上記の区間(I1)〜(I3)に着目して、DEPステートにおける以下の区間を利用して、小アンテナ121を用いた高速通信を行なうようにしている。
【0139】
(F1)パッシブ型相互通信時(上記の(C1)並びに(C3))において、各DEP_REQ/DEP_RESコマンドの送出直後
(F2)アクティブ型相互通信時(上記の(C2)並びに(C4))において、各DEP_REQ/DEP_RESコマンドの送出直後からRFオフまで
【0140】
本実施形態に係る通信システムでは、高速通信を行なうDEPフェーズでは、NFC通信路及び高速通信路はそれぞれ以下のような眺望となる。
【0141】
(V1)大アンテナ121を用いた従来のNFC通信路では、NFC IP−1仕様に完全に準拠した、短い(〜10バイト程度)DEP_REQ/DEP_RESコマンドが行き来する。
(V2)小アンテナ141を用いた高速通信路では、大アンテナ121を用いたNFC通信におけるDEP_REQ/DEP_RESコマンドの送受信タイミングに同期して、実際の転送データが高速に伝送される。
【0142】
このように、NFC IP−1仕様に準拠したDEP_REQ/DEP_RESコマンドを送信した直後に高速通信を行なうことにより、高速通信を開始する時点において、NFC通信を通じて確立したイニシエーターとターゲットの1対1対応を保証することができる。
【0143】
また、大アンテナ121を用いたNFC通信路上では、NFC IP−1仕様を完全に満たしたコマンド・シーケンスが実施されることから、大アンテナ121の通信可能範囲に、小アンテナ141を用いる高速通信方式が異なる他の通信装置100や、旧来のNFC通信装置(R/W、カード)が複数存在しても、NFC IP−1通信に関しては問題なく動作することができる(図10を参照のこと)。
【0144】
ここで、NFC通信では、ATR_REQ/ATR_RESコマンドを用いて通信相手と最高通信速度などの通信形態を確認し、PSL_REQ/PSL_RESコマンドを用いて通信パラメーターを変更することができる(前述、並びに、図13、図15を参照のこと)。これに対し、小アンテナ141を用いた高速通信の形態(物理的方式、データレート、パケット長など)は、以下のいずれかの方法で決定するようにしてもよい。
【0145】
(D1)通信システムにおいて、高速通信形態をあらかじめ決定(固定)しておく。
(D2)大アンテナ121によるNFC IP−1 DEP通信によりネゴシエーションを行ない、小アンテナ141による高速通信開始前に、その形態を決定する。
(D3)小アンテナ141による高速通信開始前に形態を決定しない、若しくは毎回の高速通信で形態を変更する。
【0146】
上記(D3)の方法により高速通信形態を決定する場合には、NFC通信のDEP_REQ/DEP_RESコマンド・パケット内のTransport Data Bytes(図17を参照のこと)部分に、直後に行なわれる高速通信形態を指定する情報などを記載するようにしてもよい。他方、上記(D1)、又は(D2)の方法により高速通信形態を決定する場合には、NFC通信のDEP_REQ/DEP_RESコマンド・パケット内のTransport Data Bytesを空にすることができる。
【0147】
上記(D3)の方法により、NFC通信のDEP_REQ/DEP_RESコマンド・パケット内のTransport Data Bytes部分に、その直後に行なわれる高速通信形態を指定する情報などを記載する場合、DEP_REQ/DEP_RESコマンドのパケット長がNFC IP−1規格で制限される255バイトを超えない限り、その記載内容や使用は、通信システムの設計者に任せるようにしてもよい。これにより、バックスキャッタ方式や微弱UWB方式以外の小アンテナ141を用いた高速通信方式を利用することができ、大アンテナ121を用いたNFC通信と組み合わせてさまざまなマルチ通信システムを実現することができる。
【0148】
本実施形態に係る通信システムにおいて、小アンテナ141を用いる高速通信において適用する物理的方式の差異は、R/W制御部110のファームウェア層までで吸収することができる。したがって、NFC通信装置に接続されるホスト機器160で実装するアプリケーションのプログラムを、高速通信の物理的方式に応じて変更する必要はほとんどない。逆に、アプリケーション層からの視点で言及するならば、下位の通信路の物理的特性を意識することなく構築することができ、既存のNFC通信用のアプリケーションをほぼそのまま使用することが可能である。下位の通信路の差異は、アプリケーション層には影響せず、通信速度などの性能として現れる。
【0149】
通信システムの構成方法として、(C1)〜(C4)の4通りが挙げられることは既に述べた。以下では、各システム構成におけるDEPフェーズの通信動作についてそれぞれ詳解する。
【0150】
図2には、パッシブ型NFC相互通信とアクティブ型高速通信(Transfer Jet)を組み合わせた通信システム(C1)における、DEPフェーズでのイニシエーター及びターゲットの大アンテナ121及び小アンテナ141の送出キャリア強度を示している。
【0151】
イニシエーター100A側では、まず、大アンテナ121AからNFCキャリアを送出してから所定のガード時間の経過後にNFC送信を開始し、続いてDEP_REQコマンドをASK変調信号で送信する。このとき、DEP_REQコマンド・パケット内のTransport Data Bytes部分に、直後に行なわれる高速通信形態を指定する情報などを記載するようにしてもよい。
【0152】
イニシエーター100Aは、Transport Dataの送信が完了するまでは、大アンテナ121AからNFCキャリアを送出し続ける。これによって、大アンテナ121Aの通信可能範囲に存在する他のNFC通信装置は、RFCA機能により、この期間にわたりNFC通信を開始することはない。
【0153】
そして、イニシエーター100Aは、大アンテナ121AからDEP_REQコマンドを送出した直後に、小アンテナ141Aを用いてターゲット100Bに向けた高速データ送信を開始する。
【0154】
イニシエーター100Aは、この高速送信動作が完了すると、大アンテナ121Aを用いたNFC受信動作を開始する。また、ターゲット100B側で、高速送信されたデータを小アンテナ121Bで受信完了すると、その受信データ処理を行なう。ここで、イニシエーター100A側からの高速データ送信と、ターゲット100B側での高速受信データ処理は、イニシエーター100Aのタイムアウト時間内(NFC IP−1規格では最大302秒)に終了するものとする。
【0155】
その後、イニシエーター100Aは、ターゲット100Bの大アンテナ121Bから負荷変調信号として送出されるDEP_RESコマンドを受信する。このとき、DEP_RESコマンド・パケット内のTransport Data Bytes部分に、直後に行なわれる高速通信形態を指定する情報などを記載するようにしてもよい。
【0156】
ターゲット100Bは、大アンテナ121BからDEP_RESコマンドを送出した直後に、小アンテナを141B用いてターゲット100Bに向けた高速データ送信を開始する。
【0157】
ターゲット100Bは、この高速送信動作が完了すると、大アンテナ121Bを用いたNFC受信動作を開始する。また、イニシエーター100A側で、高速送信されたデータを小アンテナ121Aで受信完了すると、その受信データ処理を行なう。
【0158】
図2に示したようなDEPフェーズでの、イニシエーター100A及びターゲット100Bの各アンテナからのキャリア送出動作は、各々のR/W制御部110A/Bにおけるファームウェア制御によって実現することができる。図3A〜図3Iには、パッシブ型NFC相互通信とアクティブ型高速通信(Transfer Jet)を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を図解している。
【0159】
まず、イニシエーター100A側の大アンテナ121Aから、NFCキャリアを送出する(図3Aを参照)。以後、すべてのTransport Dataの送信を完了するまでの全期間にわたって、イニシエーター100Aは、大アンテナ121AからNFCキャリアを送出し続ける。
【0160】
イニシエーター100Aは、NFCキャリアを送出してから所定のガード時間経過後に、大アンテナ121AからDEP_REQコマンドをASK変調信号で送信する(図3Bを参照)。
【0161】
イニシエーター100Aは、ターゲット100Bに向けた高速通信を行なわない場合には、通信システムは図3F(後述)に示す状態に移行する。
【0162】
他方、イニシエーター100Aは、ターゲット100Bに向けて高速通信を行なう場合には、DEP_REQコマンドを送信した直後に、小アンテナ141Aで、外部に4.48GHz帯の高速通信キャリアが存在しないことを確認してから、ターゲット100Bへの4.48GHzの高速通信キャリアを送出する(図3Cを参照)。
【0163】
その後、イニシエーター100Aは、ターゲット100B側の高速通信処理部140B内の受信機が安定する時間を待って、小アンテナ141Aから高速転送データを送信する(図3Dを参照)。そして、すべての高速転送データ送信を完了すると、イニシエーター100Aは、4.48GHzの高速通信キャリアの送出を停止する(図3Eを参照)。
【0164】
次いで、ターゲット100Bは、イニシエーター100AからのDEP_REQコマンド、及び、すべてのTransport Dataの正常受信を確認した後、イニシエーター100Aの大アンテナ121Aから送出される無変調NFCキャリアを負荷変調して、DEP_RESコマンドを送信する(図3Fを参照)。
【0165】
ターゲット100Bは、イニシエーター100Aに向けた高速通信を行なわない場合には、通信システムは図3Aに示した状態に戻る。
【0166】
他方、ターゲット100Bは、イニシエーター100Aに向けて高速通信を行なう場合には、DEP_RESコマンドを送信した直後に、小アンテナ141Aで、外部に4.48GHz帯の高速通信キャリアが存在しないことを確認してから、イニシエーター100Aへの4.48GHzの高速通信キャリアを送出する(図3Gを参照)。
【0167】
その後、ターゲット100Bは、イニシエーター100A側の高速通信処理部140A内の受信機が安定する時間を待って、小アンテナ141Aから高速転送データを送信する(図3Hを参照)。
【0168】
そして、すべてのTransport Dataの送信を完了すると、ターゲット100Bは、4.48GHzの高速通信キャリアの送出を停止し(図3Iを参照)、通信システムは図3Aに示した状態に戻る。
【0169】
また、図4には、アクティブ型NFC相互通信とアクティブ型高速(Transfer Jet)を組み合わせた通信システム(C2)における、DEPフェーズでのイニシエーター及びターゲットの大アンテナ121及び小アンテナ141の送出キャリア強度を示している。
【0170】
イニシエーター100A側では、まず、大アンテナ121AからNFCキャリアを送出し、所定のガード時間経過後にNFC送信を開始し、DEP_REQコマンドをASK変調信号で送信する。このとき、DEP_REQコマンド・パケット内のTransport Data Bytes部分に、直後に行なわれる高速通信形態を指定する情報などを記載するようにしてもよい。
【0171】
そして、イニシエーター100Aは、DEP_REQコマンドでの送信データの変調処理を完了した後から、NFCキャリアの送出を停止するまでの期間を利用して、小アンテナ141Aからターゲット100Bに向けた高速データ送信を開始する。NFCキャリアの送出を停止するまでの期間はタイムアウト時間内であり、このタイムアウト時間はNFC IP−1規格では最大302秒と規定されている。イニシエーター100Aは、高速データ送信が完了するまでは、大アンテナ121AからNFCキャリアを送出し続けることになる。したがって、大アンテナ121Aの通信可能範囲に存在する他のNFC通信装置は、RFCA機能により、イニシエーター100Aが高速データ送信を行なっている期間にわたりNFC通信を開始することはない。
【0172】
イニシエーター100Aは、小アンテナ141Aからの高速データ送信が完了すると、大アンテナ121AからのNFCキャリア送出、及び、小アンテナ121Aからの高速通信キャリア送出をともに停止する。
【0173】
ターゲット101Bは、イニシエーター100AからのNFCキャリア送出が停止したことを検出すると、大アンテナ121BからNFCキャリアを送出し、所定のガード時間の経過後にNFC送信を開始し、DEP_RESコマンドをASK変調信号で送信する。このとき、DEP_RESコマンド・パケット内のTransport Data Bytes部分に、直後に行なわれる高速通信形態を指定する情報などを記載するようにしてもよい。
【0174】
ターゲット100Bは、DEP_RESコマンドでの送信データの変調処理を完了した後から、NFCキャリアの送出を停止するまでの期間を利用して、小アンテナ141Bからイニシエーター100Aに向けた高速データ送信を開始する。NFCキャリアの送出を停止するまでの期間はタイムアウト時間内であり、このタイムアウト時間はNFC IP−1規格では最大302秒と規定されている。ターゲット100Bは、高速データ送信が完了するまでは、大アンテナ121BからNFCキャリアを送出し続けることになる。したがって、大アンテナ121Bの通信可能範囲に存在する他のNFC通信装置は、RFCA機能により、ターゲット100Bが高速データ送信を行なっている期間にわたりNFC通信を開始することはない。
【0175】
ターゲット100Bは、小アンテナ141Bからの高速データ送信が完了すると、大アンテナ121BからのNFCキャリア送出、及び、小アンテナ121Bからの高速通信キャリア送出をともに停止する。
【0176】
イニシエーター100Aは、ターゲット101BからのNFCキャリア送出が停止したことを検出すると、大アンテナ121AからNFCキャリアを送出し、以降は上述と同様の動作が繰り返される。
【0177】
図4に示したようなDEPフェーズでの、イニシエーター100A及びターゲット100Bの各アンテナからのキャリア送出動作は、各々のR/W制御部110A/Bにおけるファームウェア制御によって実現することができる。図5A〜図5Kには、アクティブ型NFC相互通信とアクティブ型高速通信(Transfer Jet)を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を図解している。
【0178】
まず、イニシエーター100Aは、大アンテナ121Aから13.56MHzのNFCキャリアの送出する(図5Aを参照)。そして、イニシエーター100Aは、NFCキャリアを送出してから所定のガード時間の経過後に、大アンテナ121AからDEP_REQコマンドをASK変調信号で送信する(図5Bを参照)。
【0179】
イニシエーター100Aは、ターゲット100Bに向けた高速通信を行なわない場合には、通信システムは図5E(後述)に示す状態に移行する。
【0180】
他方、イニシエーター100Aは、ターゲット100Bに向けて高速通信を行なう場合には、DEP_REQコマンドを送信した後、小アンテナ141Aで、外部に4.48GHz帯の高速通信キャリアが存在しないことを確認してから、ターゲット100Bへの4.48GHzの高速通信キャリアを送出する(図5Cを参照)。
【0181】
その後、イニシエーター100Aは、ターゲット100B側の高速通信処理部140B内の受信機が安定する時間を待って、小アンテナ141Aから高速転送データを送信する(図5Dを参照)。そして、すべての高速転送データ送信を完了すると、イニシエーター100Aは、13.56MHzのNFCキャリア及び4.48GHzの高速通信キャリアの送出をともに停止する(図5Eを参照)。
【0182】
次いで、NFC IP−1規格で規定するアクティブ型通信の仕様に従い、ターゲット100Bは、イニシエーター100Aに対して、13.56MHzのNFCキャリアを大アンテナ121Bから送出する(図5Fを参照)。
【0183】
そして、ターゲット100Bは、イニシエーター100AからのDEP_REQコマンド、及び、すべてのTransport Dataの正常受信を確認した後、大アンテナ121BからDEP_RESコマンドをASK変調信号で送信する(図5Gを参照)。
【0184】
ここで、ターゲット100Bがイニシエーター100Aに向けた高速通信を行なわない場合には、通信システムは図5J(後述)に示す状態に移行する。
【0185】
他方、ターゲット100Bは、イニシエーター100Aに向けて高速通信を行なう場合には、DEP_RESコマンドを送信した後に、小アンテナ141Aで、外部に4.48GHz帯の高速通信キャリアが存在しないことを確認してから、イニシエーター100Aへの4.48GHzの高速通信キャリアを送出する(図5Hを参照)。
【0186】
その後、ターゲット100Bは、イニシエーター100A側の高速通信処理部140A内の受信機が安定する時間を待って、小アンテナ141Bから高速転送データを送信する(図5Iを参照)。そして、すべての高速転送データ送信を完了すると、ターゲット100Bは、13.56MHzのNFCキャリア及び4.48GHzの高速通信キャリアの送出をともに停止する(図5Jを参照)。
【0187】
次いで、NFC IP−1規格で規定するアクティブ型通信の仕様に従い、イニシエーター100Aは、ターゲット100Bに対して、13.56MHzのNFCキャリアを大アンテナ121Aから送出し(図5Kを参照)、通信システムは図5Aに示した状態に戻る。
【0188】
また、図6には、パッシブ型NFC相互通信と反射型高速通信を組み合わせた通信システム(C3)における、DEPフェーズでのイニシエーター及びターゲットの大アンテナ121及び小アンテナ141の送出キャリア強度を示している。
【0189】
イニシエーター100A側では、まず、大アンテナ121AからNFCキャリアを送出してから所定のガード時間経過後にNFC送信を開始し、DEP_REQコマンドをASK変調信号で送信する。このとき、DEP_REQコマンド・パケット内のTransport Data Bytes部分に、直後に行なわれる高速通信形態を指定する情報などを記載するようにしてもよい。
【0190】
イニシエーター100Aは、Transport Dataの送信が完了するまでは、大アンテナ121AからNFCキャリアを送出し続ける。これによって、大アンテナ121Aの通信可能範囲に存在する他のNFC通信装置は、RFCA機能により、この期間にわたりNFC通信を開始することはない。
【0191】
ターゲット100Bは、イニシエーター100AからのDEP_REQコマンドを大アンテナ121Bで受信し、その受信データ処理を完了すると、小アンテナ141Bから2.4GHzの高速通信キャリアの送出を開始して、イニシエーター100Aからの高速データ送信に備える。
【0192】
そして、イニシエーター100Aは、ターゲット100Bからの高速通信キャリアを検出すると、小アンテナ141Aからの変調反射波信号として高速データ転送を行なう。
【0193】
ターゲット100B側では、この変調反射波信号を小アンテナ141Bで受信完了し、さらにその受信データ処理を完了すると、小アンテナ141Bからの2.4GHzの高速通信キャリアの送出を停止し、大アンテナ121Bから負荷変調信号として送出されるDEP_RESコマンドを送信する。
【0194】
イニシエーター100Aは、ターゲット100Bから負荷変調信号として送出されるDEP_RESコマンドを大アンテナ121Aで受信し、その受信データ処理を完了すると、小アンテナ141Aから2.4GHzの高速通信キャリアの送出を開始して、ターゲット100Bからの高速データ送信に備える。
【0195】
そして、ターゲット100Bは、イニシエーター100Aからの高速通信キャリアを検出すると、小アンテナ141Bからの変調反射波信号として高速データ転送を行なう。
【0196】
イニシエーター100Aは、この変調反射波信号を小アンテナ141Aで受信完了し、さらにその受信データ処理を完了すると、小アンテナ141Aからの2.4GHzの高速通信キャリアの送出を停止する。また、ターゲットBは、高速データ送信を完了すると、続いて大アンテナ121BでのNFC受信を開始する。
【0197】
図6に示したようなDEPフェーズでの、イニシエーター100A及びターゲット100Bの各アンテナからのキャリア送出動作は、各々のR/W制御部110A/Bにおけるファームウェア制御によって実現することができる。図7A〜図7Iには、パッシブ型NFC相互通信と反射型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を図解している。
【0198】
まず、イニシエーター100A側の大アンテナ121Aから、NFCキャリアを送出する(図7Aを参照)。以後、すべてのTransport Dataの送信を完了するまでの全期間にわたって、イニシエーター100Aは、大アンテナ121AからNFCキャリアを送出し続ける。
【0199】
イニシエーター100Aは、NFCキャリアを送出してから所定のガード時間経過後に、大アンテナ121AからDEP_REQコマンドをASK変調信号で送信する(図7Bを参照)。
【0200】
イニシエーター100Aは、ターゲット100Bに向けた高速通信を行なわない場合には、通信システムは図7F(後述)に示す状態に移行する。
【0201】
他方、イニシエーター100Aからターゲット100Bに向けて高速通信を行なう場合には、ターゲット100BはDEP_REQコマンドの正常受信を確認した後、小アンテナ141Bで、外部に2.4GHz帯の高速通信キャリアが存在しないことを確認してから2.4GHzの無変調高速通信キャリアを送出する(図7Cを参照)。
【0202】
イニシエーター100Aは、小アンテナ141Aで、外部に2.4GHzの高速通信キャリアが存在することを確認すると、その反射波に対して送信データに応じた変調をかけて、高速転送データを送信する(図7Dを参照)。そして、イニシエーター100A側ですべての高速転送データ送信を完了し、ターゲット100Bが高速転送データの受信を完了すると、小アンテナ100Bからの2.4GHzの無変調高速通信キャリアの送出を停止する(図7Eを参照)。
【0203】
次いで、ターゲット100Bは、イニシエーター100Aの大アンテナ121Aから送出される無変調NFCキャリアを負荷変調して、DEP_RESコマンドを送信する(図7Fを参照)。
【0204】
ターゲット100Bは、イニシエーター100Aに向けた高速通信を行なわない場合には、通信システムは図7Aに示した状態に戻る。
【0205】
他方、ターゲット100Bは、イニシエーター100Aに向けて高速通信を行なう場合には、イニシエーター100Aは、DEP_REQコマンドの正常受信を確認した後、小アンテナ141Aで、外部に2.4GHz帯の高速通信キャリアが存在しないことを確認してから2.4GHzの無変調高速通信キャリアを送出する(図7Gを参照)。
【0206】
ターゲット100Bは、小アンテナ141Bで、外部に2.4GHzの高速通信キャリアが存在することを確認すると、その反射波に対して送信データに応じた変調をかけて、高速転送データを送信する(図7Hを参照)。
【0207】
そして、ターゲット100B側ですべての高速転送データ送信を完了し、イニシエーター100Aが高速転送データの受信を完了すると、小アンテナ100Aからの2.4GHzの無変調高速通信キャリアの送出を停止し(図7Iを参照)、通信システムは図7Aに示した状態に戻る。
【0208】
また、図8には、アクティブ型NFC相互通信と反射型高速を組み合わせた通信システム(C4)における、DEPフェーズでのイニシエーター及びターゲットの大アンテナ121及び小アンテナ141の送出キャリア強度を示している。
【0209】
イニシエーター100A側では、まず、大アンテナ121AからNFCキャリアを送出し、所定のガード時間の経過後にNFC送信を開始し、DEP_REQコマンドをASK変調信号で送信する。このとき、DEP_REQコマンド・パケット内のTransport Data Bytes部分に、直後に行なわれる高速通信形態を指定する情報などを記載するようにしてもよい。
【0210】
ターゲット100Bは、イニシエーター100Aからの負荷変調信号として送出されるDEP_REQコマンドを大アンテナ121Bで受信し、その受信データ処理を完了すると、小アンテナ141Bから2.4GHzの高速通信キャリアの送出を開始して、イニシエーター100Aからの高速データ送信に備える。
【0211】
そして、イニシエーター100Aは、ターゲット100Bからの高速通信キャリアを検出すると、小アンテナ141Aで受信した高速通信キャリアの反射波に対して送信データに応じて変調をかけて、高速データ送信を行なう。
【0212】
イニシエーター100Aは、高速データ送信を完了すると、続いて大アンテナ121AでのNFC受信を開始する。また、ターゲット100Bは、イニシエーター100Aからの高速データの受信を完了すると、小アンテナ141Bからの2.4GHzの高速通信キャリアの送出を停止して高速受信データの処理を行なう。そして、イニシエーター100Aは、ターゲット100B側で高速通信キャリアの送出が停止したことを検出すると、NFCキャリアの送出を停止する。
【0213】
高速データ伝送はイニシエーター100AがNFCキャリアの送出を停止するまでの期間を利用して行なわれる。NFCキャリアの送出を停止するまでの期間はタイムアウト時間内であり、このタイムアウト時間はNFC IP−1規格では最大302秒と規定されている。イニシエーター100Aは、ターゲット100Bからの高速通信キャリアが停止するまで、大アンテナ121AからNFCキャリアを送出し続けることになる。これによって、大アンテナ121Aの通信可能範囲に存在する他のNFC通信装置は、RFCA機能により、イニシエーター100Aが高速データ送信を行なっている期間にわたりNFC通信を開始することはない。
【0214】
続いて、ターゲット100Bは、イニシエーター100AからのNFCキャリアの送出が停止したことを検出すると、大アンテナ100BからNFCキャリアの送出を開始し、所定のガード時間経過後にNFC送信を開始し、DEP_RESコマンドをASK変調信号で送信する。このとき、DEP_RESコマンド・パケット内のTransport Data Bytes部分に、直後に行なわれる高速通信形態を指定する情報などを記載するようにしてもよい。
【0215】
イニシエーター100Aは、ターゲット100Bから負荷変調信号として送出されるDEP_RESコマンドを大アンテナ121Aで受信し、その受信データ処理を完了すると、小アンテナ141Aから2.4GHzの高速通信キャリアの送出を開始して、ターゲット100Bからの高速データ送信に備える。
【0216】
そして、ターゲット100Bは、イニシエーター100Aからの高速通信キャリアを検出すると、小アンテナ141Bで受信した高速通信キャリアの反射波に対して送信データに応じて変調をかけて、高速データ通信を行なう。
【0217】
ターゲット100Bは、高速データ送信を完了すると、続いて大アンテナ121BでのNFC受信を開始する。また、イニシエーター100Aは、ターゲット100Bからの高速データの受信を完了すると、小アンテナ141Aからの2.4GHzの高速通信キャリアの送出を停止して高速受信データの処理を行なう。そして、ターゲット100Bは、イニシエーター100A側で高速通信キャリアの送出が停止したことを検出すると、NFCキャリアの送出を停止する。
【0218】
高速データ伝送はターゲット100BがNFCキャリアの送出を停止するまでの期間を利用して行なわれる。NFCキャリアの送出を停止するまでの期間はタイムアウト時間内であり、このタイムアウト時間はNFC IP−1規格では最大302秒と規定されている。ターゲット100Bは、イニシエーター100Aからの高速通信キャリアが停止するまで、大アンテナ121BからNFCキャリアを送出し続けることになる。これによって、大アンテナ121Bの通信可能範囲に存在する他のNFC通信装置は、RFCA機能により、イニシエーター100Aが高速データ送信を行なっている期間にわたりNFC通信を開始することはない。
【0219】
イニシエーター100Aは、ターゲット101BからのNFCキャリア送出が停止したことを検出すると、大アンテナ121AからNFCキャリアを送出し、以降は上述と同様の動作が繰り返される。
【0220】
図8に示したようなDEPフェーズでの、イニシエーター100A及びターゲット100Bの各アンテナからのキャリア送出動作は、各々のR/W制御部110A/Bにおけるファームウェア制御によって実現することができる。図9A〜図9Mには、アクティブ型NFC相互通信と反射型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を図解している。
【0221】
まず、イニシエーター100Aは、大アンテナ121Aから13.56MHzのNFCキャリアの送出する(図9Aを参照)。そして、イニシエーター100Aは、NFCキャリアを送出してから所定のガード時間の経過後に、大アンテナ121AからDEP_REQコマンドをASK変調信号で送信する(図9Bを参照)。
【0222】
イニシエーター100Aからターゲット100Bに向けた高速通信を行なわない場合には、通信システムは図9F(後述)に示す状態に移行する。
【0223】
他方、イニシエーター100Aからターゲット100Bに向けた高速通信を行なう場合には、ターゲット100Bは、DEP_REQコマンドの正常受信を確認した後、小アンテナ141Bで、外部に2.4GHz帯のキャリアが存在しないことを確認してから、イニシエーター100Aへの2.4GHzの無変調高速通信キャリアを送出する(図9Cを参照)。
【0224】
イニシエーター100Aは、小アンテナ141Aで、外部に2.4GHzの高速通信キャリアが存在することを確認すると、その反射波に対して送信データに応じた変調をかけて、高速転送データを送信する(図9Dを参照)。そして、イニシエーター100A側ですべての高速転送データ送信を完了し、ターゲット100Bが高速転送データの受信を完了すると、ターゲット100Bは、2.4GHzの無変調高速通信キャリアの送出をともに停止する(図9Eを参照)。また、イニシエーター100Aは、小アンテナ141Aで、外部に2.4GHzのキャリアが存在しないことを確認すると、大アンテナ121Aからの13.56MHzのNFCキャリアの送出を停止する(図9Fを参照)。
【0225】
次いで、NFC IP−1規格で規定するアクティブ型通信の仕様に従い、ターゲット100Bは、イニシエーター100Aに対して、13.56MHzのNFCキャリアを大アンテナ121Bから送出する(図9Gを参照)。そして、ターゲット100Bは、大アンテナ121BからDEP_RESコマンドをASK変調信号で送信する(図9Hを参照)。
【0226】
ここで、ターゲット100Bからイニシエーター100Aに向けた高速通信を行なわない場合には、通信システムは図9L(後述)に示す状態に移行する。
【0227】
他方、ターゲット100Bからイニシエーター100Aに向けた高速通信を行なう場合には、イニシエーター100Aは、DEP_REQコマンドの正常受信を確認した後、小アンテナ141Aで、外部に2.4GHz帯の高速通信キャリアが存在しないことを確認してから2.4GHzの無変調高速通信キャリアを送出する(図9Iを参照)。
【0228】
ターゲット100Bは、小アンテナ141Bで、外部に2.4GHzの高速通信キャリアが存在することを確認すると、その反射波に対して送信データに応じた変調をかけて、高速転送データを送信する(図9Jを参照)。
【0229】
そして、ターゲット100B側ですべてのTrandport Dataの送信を完了し、イニシエーター100AがTrandport Dataの正常受信を完了すると、小アンテナ100Aからの2.4GHzの無変調高速通信キャリアの送出を停止する(図9Kを参照)。
【0230】
ターゲット100Bは、小アンテナ141Bで、外部に2.4GHzのキャリアが存在しないことを確認すると、大アンテナ121Bからの13.56MHzのNFCキャリアの送出を停止する(図9Lを参照)。
【0231】
次いで、NFC IP−1規格で規定するアクティブ型通信の仕様に従い、イニシエーター100Aは、ターゲット100Bに対して、13.56MHzのNFCキャリアを大アンテナ121Bから送出し(図9Mを参照)、通信システムは図9Aに示した状態に戻る。
【0232】
図2、図4、図6、図8のいずれに示した通信手順においても、NFC通信路上においてはNFC IP−1仕様を完全に満たすことを主眼としている。いずれの場合も、DEPフェーズにおいて高速通信路を用いて高速データ転送を行なっている期間中にわたり、(高速通信には直接必要とはならない)NFCキャリアを絶えず送出し続ける必要がある。この点では、NFC通信装置100のNFC通信処理部120における不要電力の消費が懸念される。
【0233】
ここで、高速データ転送期間にNFCキャリアを送信し続けるのは、他のNFC通信システムとの衝突を回避するために、大アンテナ121の通信可能範囲に存在する、小アンテナ141を用いる高速通信方式が異なる他の通信装置100や、旧来のNFC通信装置(R/W、カード)を正常に動作させるためである(前述:図10を参照のこと)。したがって、大アンテナ121の通信可能な範囲に、高速通信方式が異なる他の通信装置100、旧来のNFC通信装置(R/W、カード)のいずれも存在しないことがあらかじめ分かっている場合や、あるいは、NFC IP−1仕様を完全に満たす必要がない通信システムの場合には、高速データ転送期間中に不必要なNFCキャリア送出を停止するようにしてもよい。
【0234】
また、NFC IP−1仕様では、イニシエーターがDEP_REQコマンドを送信完了してからDEP_RESコマンドの受信を開始するまでのタイマアウト時間が規定されている。図2、図4、図6、図8にも示したように、このタイムアウト時間を利用して高速データ転送が行なわれる。
【0235】
NFC IP−1仕様によれば、このタイムアウト時間(RWT:Response Waiting Time)は、ターゲットが送信するATR_RESコマンド・パケット内のTOバイトで指定され、さらに、ターゲットがイニシエーターからの受信データを処理するのにRWTよりも長い時間を必要とする場合にためにタイムアウト拡張(Timeout Extension)機能が備えられている。TOバイトによる指定に、さらにタイムアウト拡張機能を利用することで、タイムアウト時間すなわち高速データ転送期間を、300マイクロ秒から302秒の範囲で幅広く変更することができる。
【0236】
通常の高速通信の用途であれば302秒は十分な長さの通信期間と考えられるが、イニシエーターからターゲットへストリーミングを行なう通信用となどの場合には302秒でもなおも時間が不足することも想定される。タイムアウト時間が経過してもさらに高速データ転送を継続したい場合には、タイムアウトを回避するために、空のDER_REQ/DEP_RESコマンドの送受信を組み込んで、NFC通信路上では正常な動作を見せかける必要がある。
【0237】
図11には、アクティブ型NFC相互通信とアクティブ型高速(Transfer Jet)を組み合わせた通信システムにおいて、DEPフェーズを利用してイニシエーター100Aからターゲット100Bへストリーミング(若しくはタイムアウト時間を越えた高速データ転送)を行なう際の、イニシエーター及びターゲットの大アンテナ121及び小アンテナ141の送出キャリア強度を示している。
【0238】
イニシエーター100A側では、まず、大アンテナ121AからNFCキャリアを送出し、所定のガード時間経過後にNFC送信を開始し、DEP_REQコマンドをASK変調信号で送信する。このとき、DEP_REQコマンド・パケット内のTransport Data Bytes部分に、直後に行なわれる高速通信形態を指定する情報などを記載するようにしてもよい。
【0239】
そして、イニシエーター100Aは、DEP_REQコマンドでの送信データの変調処理を完了すると、小アンテナ141Aからターゲット100Bに向けた高速データ送信を開始する。NFC IP−1規格ではタイムアウト時間は最大302秒であるが、イニシエーター100Aは、タイムアウト時間が経過した後も、高速データ転送を継続して行なう。
【0240】
また、イニシエーター100Aは、タイムアウト時間内に、大アンテナ121AからのNFCキャリア送出を停止する。これに対し、ターゲット100Bは、イニシエーター100AからのNFCキャリア送出が停止したことを検出すると、大アンテナ121BからNFCキャリアを送出し、所定のガード時間経過後にNFC送信を開始し、DEP_RESコマンドをASK変調信号で送信する。但し、DEP_RESコマンドはタイムアウト回避のための空の(見せかけの)DEP_RESコマンドであることから、当該コマンド・パケット内のTransport Data Bytes部分は空である(直後に行なわれる高速通信形態を指定する情報などを記載する必要はない)。
【0241】
その後、ターゲット100Bが大アンテナ121BからのNFCキャリア送出を停止する。イニシエーター100Aは、まだ高速データ転送(ストリーミング)を継続させる必要がある場合には、ターゲット100BからのNFCキャリア送出が停止したことを検出すると、大アンテナ121AからNFCキャリアを送出し、所定のガード時間経過後にNFC送信を開始し、DEP_REQコマンドをASK変調信号で送信する。但し、ここで送信されるDEP_REQコマンドは高速データ転送を継続させるための空の(見せかけの)DEP_REQコマンドであることから、当該コマンド・パケット内のTransport Data Bytes部分は空である(直後に行なわれる高速通信形態を指定する情報などを記載する必要はない)。
【産業上の利用可能性】
【0242】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0243】
本明細書では、小アンテナを用いた高速通信として、反射波通信方式(Reflex)、微弱UWB方式(Transfer Jet)の2例を挙げたが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、NFC通信と同様の非接触通信範囲において高速通信を実現するその他の任意の通信方式を適用することができる。
【0244】
要するに、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0245】
【図1】図1は、NFC通信用の大アンテナの内側に高速通信用の小アンテナを装備したNFC通信装置からなる通信システムの構成例を示した図である。
【図2】図2は、パッシブ型NFC相互通信とアクティブ型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのイニシエーター及びターゲットの大アンテナ121及び小アンテナ141の送出キャリア強度を示したチャートである。
【図3A】図3Aは、パッシブ型NFC相互通信とアクティブ型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図3B】図3Bは、パッシブ型NFC相互通信とアクティブ型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図3C】図3Cは、パッシブ型NFC相互通信とアクティブ型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図3D】図3Dは、パッシブ型NFC相互通信とアクティブ型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図3E】図3Eは、パッシブ型NFC相互通信とアクティブ型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図3F】図3Fは、パッシブ型NFC相互通信とアクティブ型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図3G】図3Gは、パッシブ型NFC相互通信とアクティブ型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図3H】図3Hは、パッシブ型NFC相互通信とアクティブ型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図3I】図3Iは、パッシブ型NFC相互通信とアクティブ型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図4】図4は、アクティブ型NFC相互通信とアクティブ型高速を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのイニシエーター及びターゲットの大アンテナ121及び小アンテナ141の送出キャリア強度を示したチャートである。
【図5A】図5Aは、アクティブ型NFC相互通信とアクティブ型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図5B】図5Bは、アクティブ型NFC相互通信とアクティブ型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図5C】図5Cは、アクティブ型NFC相互通信とアクティブ型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図5D】図5Dは、アクティブ型NFC相互通信とアクティブ型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図5E】図5Eは、アクティブ型NFC相互通信とアクティブ型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図5F】図5Fは、アクティブ型NFC相互通信とアクティブ型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図5G】図5Gは、アクティブ型NFC相互通信とアクティブ型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図5H】図5Hは、アクティブ型NFC相互通信とアクティブ型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図5I】図5Iは、アクティブ型NFC相互通信とアクティブ型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図5J】図5Jは、アクティブ型NFC相互通信とアクティブ型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図5K】図5Kは、アクティブ型NFC相互通信とアクティブ型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図6】図6は、パッシブ型NFC相互通信と反射型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのイニシエーター及びターゲットの大アンテナ121及び小アンテナ141の送出キャリア強度を示したチャートである。
【図7A】図7Aは、パッシブ型NFC相互通信と反射型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図7B】図7Bは、パッシブ型NFC相互通信と反射型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図7C】図7Cは、パッシブ型NFC相互通信と反射型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図7D】図7Dは、パッシブ型NFC相互通信と反射型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図7E】図7Eは、パッシブ型NFC相互通信と反射型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図7F】図7Fは、パッシブ型NFC相互通信と反射型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図7G】図7Gは、パッシブ型NFC相互通信と反射型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図7H】図7Hは、パッシブ型NFC相互通信と反射型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図7I】図7Iは、パッシブ型NFC相互通信と反射型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。ムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図8】図8は、アクティブ型NFC相互通信と反射型高速を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのイニシエーター及びターゲットの大アンテナ121及び小アンテナ141の送出キャリア強度を示したチャートである。
【図9A】図9Aは、アクティブ型NFC相互通信と反射型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図9B】図9Bは、アクティブ型NFC相互通信と反射型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図9C】図9Cは、アクティブ型NFC相互通信と反射型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図9D】図9Dは、アクティブ型NFC相互通信と反射型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図9E】図9Eは、アクティブ型NFC相互通信と反射型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図9F】図9Fは、アクティブ型NFC相互通信と反射型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図9G】図9Gは、アクティブ型NFC相互通信と反射型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図9H】図9Hは、アクティブ型NFC相互通信と反射型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図9I】図9Iは、アクティブ型NFC相互通信と反射型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図9J】図9Jは、アクティブ型NFC相互通信と反射型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図9K】図9Kは、アクティブ型NFC相互通信と反射型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図9L】図9Lは、アクティブ型NFC相互通信と反射型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図9M】図9Mは、アクティブ型NFC相互通信と反射型高速通信を組み合わせた通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図10】図10は、本発明の係るNFC通信装置の大アンテナの通信可能範囲で、他の通信システムが正常に動作する様子を示した図である。
【図11】図11は、アクティブ型NFC相互通信とアクティブ型高速を組み合わせた通信システムにおいて、DEPフェーズを利用してタイムアウト時間を越えた高速データ転送を行なう際の、イニシエーター及びターゲットの大アンテナ121及び小アンテナ141の送出キャリア強度を示したチャートである。
【図12】図12は、NFC IP−1に準拠したパッシブ型相互通信システムの構成例を模式的に示した図である。
【図13】図13は、パッシブ型相互通信のコマンド状態遷移図である。
【図14A】図14Aは、パッシブ型NFC相互通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図14B】図14Bは、パッシブ型NFC相互通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図14C】図14Cは、パッシブ型NFC相互通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図15】図15は、アクティブ型相互通信のコマンド状態遷移図である。
【図16A】図16Aは、アクティブ型NFC相互通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図16B】図16Bは、アクティブ型NFC相互通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図16C】図16Cは、アクティブ型NFC相互通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図16D】図16Dは、アクティブ型NFC相互通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図16E】図16Eは、アクティブ型NFC相互通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図16F】図16Fは、アクティブ型NFC相互通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図16G】図16Gは、アクティブ型NFC相互通信システムにおける、DEPフェーズでのファームウェア制御手順を説明するための図である。
【図17】図17は、データ交換に使われるDEP_REQ/DEP_RESコマンドのパケット構造を示した図である。
【図18】図18は、アクティブ型相互通信における衝突回避シーケンスを示した図である。
【図19】図19は、アクティブ型相互通信におけるイニシエーターとターゲットの動作シーケンスを模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0246】
100…NFC通信装置
110…R/W制御部
111…内部バス
120…NFC通信処理部
121…大アンテナ
122…メモリー・インターフェース
130…NFC通信用小容量メモリー
140…高速通信処理部
141…小アンテナ
142…高速メモリー・インターフェース
150…高速通信用大容量バッファー
160…ホスト機器
161…ホスト・インターフェース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イニシエーターからの要求コマンドを送信しターゲットから応答コマンドを受信する通信手順及び無線信号の衝突回避機能を規定した第1の通信プロトコルに従って第1のアンテナを用いて第1の周波数帯で無線通信動作を行なう第1の通信処理部と、
第2のアンテナを用いて第2の周波数帯で無線通信動作を行なう第2の通信処理部と、
前記第1及び第2の通信処理部の動作を制御する制御部と、
を具備し、
前記第1の通信プロトコルは、前記イニシエーターと前記ターゲット間で、データ交換を開始するための要求及び応答コマンド交換手順を行なうデータ交換開始準備フェーズと、データ交換を行なうためのデータ交換要求及び応答コマンド交換手順を行なうデータ交換フェーズを規定し、
前記制御部は、前記データ交換フェーズにおいて、前記データ交換要求及び応答コマンド交換手順を行なうように前記第1の通信処理部を制御するとともに、前記第2の通信処理部でデータ転送を行なうように制御する、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記第1の通信プロトコルは、ISO/IEC IS 18092で規定されるNFCIP−1仕様に従い、
前記制御部は、DEPフェーズ以外の処理はすべて前記第1の通信処理部を用いてNFC IP−1通信にて行ない、DEPフェーズでは、前記第1の通信処理部を用いてDEP_REQ/DEP_RESコマンド・シーケンスを実行しながら、前記第2の通信処理部の間でデータ転送を行なうように制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記第1の通信プロトコルでは、前記イニシエーターによるデータ交換要求コマンド送信完了から前記ターゲットによるデータ交換応答コマンド送信開始までの時間、前記ターゲットによるデータ交換応答コマンド送信完了から前記イニシエーターによる次のデータ交換応答コマンド送信開始までの時間を明確に規定しておらず、
前記制御部は、
前記第1の通信処理部をパッシブ型相互通信におけるイニシエーターとして動作させ、
前記第1の通信プロトコルのデータ交換フェーズにおいて、前記第1の通信処理部がデータ交換要求コマンドを送出した直後に、前記第2の通信処理部によるデータ転送を開始する、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記第1の通信プロトコルでは、前記イニシエーターによるデータ交換要求コマンド送信完了から前記ターゲットによるデータ交換応答コマンド送信開始までの時間、前記ターゲットによるデータ交換応答コマンド送信完了から前記イニシエーターによる次のデータ交換応答コマンド送信開始までの時間を明確に規定しておらず、
前記制御部は、
前記第1の通信処理部をパッシブ型相互通信におけるターゲットとして動作させ、
前記第1の通信プロトコルのデータ交換フェーズにおいて、前記第1の通信処理部がデータ交換応答コマンドを送出した直後に、前記第2の通信処理部によるデータ転送を開始する、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項5】
前記第1の通信プロトコルでは、前記イニシエーターによるデータ交換要求コマンド送信完了から前記ターゲットによるデータ交換応答コマンド送信開始までの時間、前記ターゲットによるデータ交換応答コマンド送信完了から前記イニシエーターによる次のデータ交換応答コマンド送信開始までの時間、アクティブ型相互通信におけるデータ交換要求及び応答コマンドでの送信データ変調完了から無線信号送出停止までの時間を明確に規定しておらず、
前記制御部は、
前記第1の通信処理部をアクティブ型相互通信におけるイニシエーターとして動作させ、
前記第1の通信プロトコルのデータ交換フェーズにおいて、前記第1の通信処理部がデータ交換要求コマンドを送出してから無線信号の送出を停止するまでの期間において、前記第2の通信処理部によるデータ転送を実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項6】
前記第1の通信プロトコルでは、前記イニシエーターによるデータ交換要求コマンド送信完了から前記ターゲットによるデータ交換応答コマンド送信開始までの時間、前記ターゲットによるデータ交換応答コマンド送信完了から前記イニシエーターによる次のデータ交換応答コマンド送信開始までの時間、アクティブ型相互通信におけるデータ交換要求及び応答コマンドでの送信データ変調完了から無線信号送出停止までの時間を明確に規定しておらず、
前記制御部は、
前記第1の通信処理部をアクティブ型相互通信におけるターゲットとして動作させ、
前記第1の通信プロトコルのデータ交換フェーズにおいて、前記第1の通信処理部がデータ交換応答コマンドを送出してから無線信号の送出を停止するまでの期間において、前記第2の通信処理部によるデータ転送を実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項7】
前記第1の通信処理部がデータ交換要求コマンド内に当該送信直後に開始する前記第2の通信処理部による通信の形態を記載する、
ことを特徴とする3又は5のいずれかに記載の通信装置。
【請求項8】
前記第1の通信処理部がデータ交換応答コマンド内に、当該送信直後に開始する前記第2の通信処理部による通信の形態を記載する、
ことを特徴とする4又は6のいずれかに記載の通信装置。
【請求項9】
前記第1の通信プロトコルでは、前記イニシエーターによるデータ交換要求コマンド送信完了から前記ターゲットによるデータ交換応答コマンド送信開始までのタイムアウト時間が規定されており、
前記制御部は、前記第1の通信処理部をイニシエーターとして動作させ、前記第1の通信処理部がデータ交換要求コマンドを送出した直後から前記第2の通信処理部によるデータ転送を継続して実行するとともに、データ交換応答コマンドを受信した後、さらに前記第2の通信処理部によるデータ転送を継続する場合には、前記第1の通信処理部から見せかけのデータ交換応答コマンドを送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項10】
前記第1の通信プロトコルでは、前記イニシエーターによるデータ交換要求コマンド送信完了から前記ターゲットによるデータ交換応答コマンド送信開始までのタイムアウト時間が規定されており、
前記制御部は、前記第1の通信処理部をターゲットとして動作させ、前記第2の通信処理部がデータ転送を継続している間、データ交換要求コマンドを受信してから前記タイムアウト時間が消滅する前に、前記第1の通信処理部から見せかけのデータ交換応答コマンドを送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項11】
イニシエーターからの要求コマンドを送信しターゲットから応答コマンドを受信する通信手順及び無線信号の衝突回避機能を規定した第1の通信プロトコルに従って第1のアンテナを用いて第1の周波数帯で無線通信動作を行なう第1の通信処理部と、第2のアンテナを用いて第2の周波数帯で無線通信動作を行なう第2の通信処理部を備えた通信装置の制御方法であって、
前記第1の通信プロトコルは、前記イニシエーターと前記ターゲット間で、データ交換を開始するための要求及び応答コマンド交換手順を行なうデータ交換開始準備フェーズと、データ交換を行なうためのデータ交換要求及び応答コマンド交換手順を行なうデータ交換フェーズを規定し、
前記第1の通信処理部がパッシブ型相互通信におけるイニシエーターとして動作する際に、前記第1の通信プロトコルのデータ交換フェーズにおいて、
前記第1の通信処理部からデータ交換要求コマンドを送出するステップと、
データ交換要求コマンドを送出した直後に、前記第2の通信処理部によるデータ転送を開始するステップと、
を有することを特徴とする通信方法。
【請求項12】
イニシエーターからの要求コマンドを送信しターゲットから応答コマンドを受信する通信手順及び無線信号の衝突回避機能を規定した第1の通信プロトコルに従って第1のアンテナを用いて第1の周波数帯で無線通信動作を行なう第1の通信処理部と、第2のアンテナを用いて第2の周波数帯で無線通信動作を行なう第2の通信処理部を備えた通信装置を制御するための処理をコンピューター上で実行するようにコンピューター可読形式で記述されたコンピューター・プログラムであって、
前記第1の通信プロトコルは、前記イニシエーターと前記ターゲット間で、データ交換を開始するための要求及び応答コマンド交換手順を行なうデータ交換開始準備フェーズと、データ交換を行なうためのデータ交換要求及び応答コマンド交換手順を行なうデータ交換フェーズを規定し、
前記第1の通信処理部がパッシブ型相互通信におけるイニシエーターとして動作する際に、前記第1の通信プロトコルのデータ交換フェーズにおいて、前記コンピューターに対し、
前記第1の通信処理部からデータ交換要求コマンドを送出するステップと、
データ交換要求コマンドを送出した直後に、前記第2の通信処理部によるデータ転送を開始するステップと、
を実行させるためのコンピューター・プログラム。
【請求項13】
イニシエーターからの要求コマンドを送信しターゲットから応答コマンドを受信する通信手順及び無線信号の衝突回避機能を規定した第1の通信プロトコルに従って第1のアンテナを用いて第1の周波数帯で無線通信動作を行なう第1の通信処理部と、第2のアンテナを用いて第2の周波数帯で無線通信動作を行なう第2の通信処理部を備えた通信装置を制御するための処理をコンピューター上で実行するようにコンピューター可読形式で記述されたコンピューター・プログラムであって、
前記第1の通信プロトコルは、前記イニシエーターと前記ターゲット間で、データ交換を開始するための要求及び応答コマンド交換手順を行なうデータ交換開始準備フェーズと、データ交換を行なうためのデータ交換要求及び応答コマンド交換手順を行なうデータ交換フェーズを規定し、
前記第1の通信処理部がパッシブ型相互通信におけるターゲットとして動作する際に、前記第1の通信プロトコルのデータ交換フェーズにおいて、前記コンピューターに対し、
前記第1の通信処理部からデータ交換応答コマンドを送出するステップと、
データ交換応答コマンドを送出した直後に、前記第2の通信処理部によるデータ転送を開始するステップと、
を実行させるためのコンピューター・プログラム。
【請求項14】
イニシエーターからの要求コマンドを送信しターゲットから応答コマンドを受信する通信手順及び無線信号の衝突回避機能を規定した第1の通信プロトコルに従って第1のアンテナを用いて第1の周波数帯で無線通信動作を行なう第1の通信処理部と、第2のアンテナを用いて第2の周波数帯で無線通信動作を行なう第2の通信処理部を備えた通信装置を制御するための処理をコンピューター上で実行するようにコンピューター可読形式で記述されたコンピューター・プログラムであって、
前記第1の通信プロトコルでは、前記イニシエーターによるデータ交換要求コマンド送信完了から前記ターゲットによるデータ交換応答コマンド送信開始までの時間、前記ターゲットによるデータ交換応答コマンド送信完了から前記イニシエーターによる次のデータ交換応答コマンド送信開始までの時間、アクティブ型相互通信におけるデータ交換要求及び応答コマンドでの送信データ変調完了から無線信号送出停止までの時間を明確に規定しておらず、
前記第1の通信処理部がアクティブ型相互通信におけるイニシエーターとして動作する際に、前記第1の通信プロトコルのデータ交換フェーズにおいて、前記コンピューターに対し、
前記第1の通信処理部がデータ交換要求コマンドを送出するステップと、
データ交換要求コマンドを送出してから無線信号の送出を停止するまでの期間において、前記第2の通信処理部によるデータ転送を実行するステップと、
を実行させるためのコンピューター・プログラム。
【請求項15】
イニシエーターからの要求コマンドを送信しターゲットから応答コマンドを受信する通信手順及び無線信号の衝突回避機能を規定した第1の通信プロトコルに従って第1のアンテナを用いて第1の周波数帯で無線通信動作を行なう第1の通信処理部と、第2のアンテナを用いて第2の周波数帯で無線通信動作を行なう第2の通信処理部を備えた通信装置を制御するための処理をコンピューター上で実行するようにコンピューター可読形式で記述されたコンピューター・プログラムであって、
前記第1の通信プロトコルでは、前記イニシエーターによるデータ交換要求コマンド送信完了から前記ターゲットによるデータ交換応答コマンド送信開始までの時間、前記ターゲットによるデータ交換応答コマンド送信完了から前記イニシエーターによる次のデータ交換応答コマンド送信開始までの時間、アクティブ型相互通信におけるデータ交換要求及び応答コマンドでの送信データ変調完了から無線信号送出停止までの時間を明確に規定しておらず、
前記第1の通信処理部がアクティブ型相互通信におけるターゲットとして動作する際に、前記第1の通信プロトコルのデータ交換フェーズにおいて、前記コンピューターに対し、
前記第1の通信処理部がデータ交換応答コマンドを送出するステップと、
データ交換応答コマンドを送出してから無線信号の送出を停止するまでの期間において、前記第2の通信処理部によるデータ転送を実行するステップと、
を実行させるためのコンピューター・プログラム。
【請求項16】
イニシエーターからの要求コマンドを送信しターゲットから応答コマンドを受信する通信手順及び無線信号の衝突回避機能を規定した第1の通信プロトコルに従って第1のアンテナを用いて第1の周波数帯で無線通信動作を行なう第1の通信処理部と、第2のアンテナを用いて第2の周波数帯で無線通信動作を行なう第2の通信処理部をそれぞれ備えた第1及び第2の通信装置を具備し、
前記第1の通信プロトコルは、前記イニシエーターと前記ターゲット間で、データ交換を開始するための要求及び応答コマンド交換手順を行なうデータ交換開始準備フェーズと、データ交換を行なうためのデータ交換要求及び応答コマンド交換手順を行なうデータ交換フェーズを規定し、
前記第1の通信装置が前記イニシエーターとして動作するとともに前記第2の通信装置が前記ターゲットとして動作して、前記データ交換フェーズにおいて、各々の前記第1の通信処理部を用いて前記データ交換要求及び応答コマンド交換手順を行なうとともに、各々の前記第2の通信処理部の間でデータ転送を行なう、
ことを特徴とする通信システム。


【図1】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【図3I】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図5H】
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【図5I】
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【図5J】
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【図5K】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【図7H】
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【図7I】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図9G】
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【図9H】
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【図9I】
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【図9J】
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【図9K】
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【図9L】
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【図9M】
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【図11】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図16E】
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【図16F】
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【図16G】
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【公開番号】特開2010−130242(P2010−130242A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301698(P2008−301698)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】