通気性靴
【課題】外観良好で、足裏面の湿気を足側面に対応する部分から外部へ排出する通気性靴を提供する。
【解決手段】通気性靴10は、甲皮部材5の少なくとも第一中足骨骨頭を被覆する部分や甲皮部材5の少なくとも第五中足骨骨頭を被覆する部分の一方又は両方が、内部に通気経路を有する立体構造の通気性部材6で構成され、これらの中足骨骨頭を被覆する部分の甲皮部材が、足裏面の第一中足骨骨頭に接する部分や足裏面の第一中足骨骨頭に接する部分の一方又は両方に向けて延出している。
【解決手段】通気性靴10は、甲皮部材5の少なくとも第一中足骨骨頭を被覆する部分や甲皮部材5の少なくとも第五中足骨骨頭を被覆する部分の一方又は両方が、内部に通気経路を有する立体構造の通気性部材6で構成され、これらの中足骨骨頭を被覆する部分の甲皮部材が、足裏面の第一中足骨骨頭に接する部分や足裏面の第一中足骨骨頭に接する部分の一方又は両方に向けて延出している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足裏面の湿気を、足側面に対応する部分から外部へ排出する靴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、靴のタイプの一つとして、図10の垂直端面図に示すように、足裏形状の中底部材4の周縁に、オーバーロックミシン等で甲皮部材5の下周縁を縁かがり縫いで縫合して袋形状の靴本体3を作製し、この靴本体部の下面に、射出により靴底2を形成するか、または別途作製の靴底部材2を接着したものが知られている。また、靴本体に関しては、図11の垂直端面図に示すように、足裏形状の中底部材4の周縁に、甲皮部材5の下周縁を接着剤で接合して靴本体3を作製することが知られている。以上のような靴において、耐久性向上や足蒸れ防止を考慮して、靴底2はゴムや合成樹脂材などの耐磨耗性の材料で構成し、中底部材4はパルプ材や生地などの吸放湿性や通気性の部材で構成し、甲皮部材は皮や生地などの吸放湿性や通気性の部材で構成することが通常行われている。
【0003】
また、靴内での足蒸れを抑制するために、例えば、甲皮部材5として、ダブルラッセル布と呼ばれる生地を使用することが知られており(特許文献1)、同様に、中底部材4として、ダブルラッセル布と呼ばれる生地を使用することが知られている(特許文献2)。
ダブルラッセル布のような通気性部材は、厚さ方向の中間の気孔容積率が高く、そこに通気経路を形成するので、特に足裏面の湿気を外部に排出するのに有効である。
【特許文献1】実開昭63−25004号公報
【特許文献2】実開平3−13802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、中底部材4として通気性部材を用いても、図10に示すように、中底部材4と甲皮部材5とをミシンで縫合してしまうと、その縫合部分が潰れて通気経路が断たれてしまい足裏面の湿気を外部に良好に排出できないという問題が知見された。同様に、図11に示すように、中底部材4と甲皮部材5とを接着剤で接合してしまうと、接着剤で通気経路が断たれてしまい足裏面の湿気を外部に良好に排出できないという問題が知見された。
【0005】
このような問題を解決するために、中底部材4と甲皮部材5とを上記のような通気性部材で構成して、両者を端面突き合わせで端面部分が潰れないようにゆるく縫合することが考えられるが、靴の耐久性が不足する。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、足裏面の湿気を足側面に対応する部分から外部へ排出する通気性靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の通気性靴は、甲皮部材と中底部材とからなる靴本体に、靴底が設けられた通気性靴において、甲皮部材の少なくとも第一中足骨骨頭を被覆する部分や甲皮部材の少なくとも第五中足骨骨頭を被覆する部分の一方又は両方が、内部に通気経路を有する立体構造の通気性部材で構成され、これらの中足骨骨頭を被覆する部分の甲皮部材が、足裏面の第一中足骨骨頭に接する部分や足裏面の第一中足骨骨頭に接する部分の一方又は両方に向けて延出していることを特徴とする。
【0008】
本発明の好ましい態様の通気性靴は、中底部材が、甲皮部材の足裏面への延出部分に相当する分だけ切り欠かれた形状とされ、甲皮部材の足裏面への延出部分と中底部材とが両者の端面を突き合わせて縫合されている。また、甲皮部材の延出部分が、足裏面の全ての中足骨骨頭に接するようにされている。さらに、甲皮部材の中足骨骨頭を被覆する部分の少なくとも下方部分に、靴底の縁部の上方に向けて隆起した隆起部又は靴底の側面に接合した側面テープが、接合している。
【0009】
また、本発明の通気性靴の靴底において、甲皮部材の足裏面への延出部分に相当する部分の靴底上面に、少なくとも1本の凹溝を有し、靴底の側周壁には、凹溝と連通する通気口を有することで通気性をさらに向上させることができ好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の通気性靴は、甲皮部材の少なくとも第一中足骨骨頭を被覆する部分や甲皮部材の少なくとも第五中足骨骨頭を被覆する部分のいずれか一方又は両方が、内部に通気経路を有する立体構造の通気性部材で構成され、これらの中足骨骨頭を被覆する部分の甲皮部材が、足裏面の第一中足骨骨頭に接する部分や足裏面の第一中足骨骨頭に接する部分の一方又は両方に向けて延出しているので、足裏面の湿気は、この通気性部材の内部の通気路を通って足側面から外部へ排出される。
【0011】
また、好ましい態様の通気性靴は、中底部材が、甲皮部材の延出部分に相当する分だけ切り欠かれた形状とされ、甲皮部材の延出部分と中底部材とが、両者の端面を突き合わせて縫合されているので、両者の間の段差は極めて小さいものであり、履き心地が良好である。また、甲皮部材の延出部分が、足裏面の全ての中足骨骨頭に接するようにされているので、足裏面の湿気を取り込む面積が大きく足裏面の湿気排出性が高い。さらに、甲皮部材の中足骨骨頭を被覆する部分の少なくとも下方部分に、靴底の縁部の上方に向けて隆起した隆起部又は靴底の側面に接合した側面テープが接合しているので、歩行等の屈曲で負
荷のかかる甲皮部材の中足骨骨頭を被覆する部分が補強されて、通気性靴の耐久性が良い。
【0012】
さらに、本発明の通気性靴の靴底において、甲皮部材の足裏裏面への延出部分に対応する部分の靴底上面に、少なくとも1本の凹溝があるために、延出部分に体重が掛かり、通気性部材の通気路が狭められても、凹溝によって通気路が狭められることを防止することができ、足裏面の湿気は、足側面から外部へより効率的に排出される。また、凹溝が連通する通気口を側周壁に有しているために、この部分からも足裏面の湿気は排出することが可能となり、通気性靴としての性能を向上させることができる。また、凹溝を設けた部分が靴としての屈曲部分に対応するため、靴としての屈曲性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。図1、図5、図6、図7には実施態様の通気性靴の一部を切り欠いた説明図である。また、図2は、図1の通気性靴の靴底の斜視図であり、図3は、図1の通気性靴のA−A線端面図であり、図4は、図1の通気性靴のB−B線端面図である。なお、各図に示した通気性靴はすべて右足用の靴であり、同一符号で付したところは同じ機能の箇所を示す。
【0014】
まず、本発明の実施形態の通気性靴10、11、12、13ついて、これらの通気性靴に共通するところを図1に基づいて説明する。本発明の通気性靴は、甲皮部材5と中底部材4とからなる靴本体3の下面に、靴底2が接合された通気性靴である。甲皮部材5の少なくとも第一中足骨骨頭を被覆する部分と甲皮部材5の少なくとも第五中足骨骨頭を被覆する部分が、内部に通気経路を有する立体構造の通気性部材6で構成されている。
【0015】
そして、中足骨骨頭を被覆する部分のこれらの甲皮部材5(通気性部材6で構成されている部分)がそれぞれ、足裏面の第一中足骨骨頭に接する部分や足裏面の第一中足骨骨頭に接する部分にまで、潰されない状態で靴の幅方向に向けて延出している。なお、図1に示すものでは、甲皮部材5を部分的に構成する通気性部材6が、第一中足骨骨頭と第五中足骨骨頭との両方の部分を被覆して且つ足裏面に延出するようにされているが、本発明においては、いずれか一方で良い。
【0016】
ここで、甲皮部材5の少なくとも第一中足骨骨頭(又は第五中足骨骨頭)を被覆する部分とは、表現を変えれば、通気性靴を着用した足の第一中足骨骨頭(又は第五中足骨骨頭)の足側面側に対峙する箇所を少なくとも含む甲皮部材5の部分のことである。また、足裏面の第一中足骨骨頭(又は第五中足骨骨頭)に接する部分とは、表現を変えれば、通気性靴を着用した足の第一中足骨骨頭(又は第五中足骨骨頭)の足裏面側に対峙する部分のことである。
【0017】
本発明において、靴本体3が構成されたときの通気性部材6は、延出部分から外側面に露出する部分に向けて湿気を通す通気経路を内部に有していればよいので、このような条件を満たせば、複数枚の通気性部材を縫合等で連結するなどして形成しても良いが、縫合による連結では通気経路が狭められるので一枚物の通気性部材を用いることが好ましい。
また、通気性部材6には延出方向に湿気を通すことを不可能とするような潰れがあってはならないが、延出方向に湿気を通すことが可能な、例えば延出方向と平行の筋状の潰れならば存在してもよい。
【0018】
また、靴本体3を構成したときの通気性部材6は、湿気を外部へ排出するものであるから、その足側面部分の外側面は少なくとも一部が露出している。通気性部材の外側面が露出するとは、その外側面に湿気の流れを遮断するような部材が接合されていないことをいう。
【0019】
通気性部材6で構成された中足骨骨頭を被覆する部分においては、その下方部分は、歩行等による屈曲で大きな負荷がかかることから、この部分を補強するために、この部分の外側面に比較的強度のある補強部材(不図示)を縫合や接着により接合してもよい。また、通気性部材6の足側面部分において、その下縁部分の外側面を露出させれば足裏面の湿気排出性が高まるので好ましいが、その場合、靴の耐久性が悪くなることがある。
【0020】
なお、通気性部材6に補強部材を接合する場合は、剥がれが生じないように縫合による接合が良いが、通気性部材が潰れて通気経路が断たれないようにすることが大切である。
【0021】
次に、本発明の通気性靴の一例を説明する。図1の通気性靴10は、袋形状の靴本体3の下面に靴底2が接着(接着剤)により接合されている。靴底2は周縁に隆起部7を有している。靴本体3は、甲皮部材5と中底部材4との縫合により袋形状に形作られている。
図1や図3に示すように、甲皮部材5の第一中足骨骨頭や第五中足骨骨頭を被覆する部分には、それぞれの部分に一枚物の通気性部材6がそれぞれ用いられている。
【0022】
図3に示すように、甲皮部材5の第一中足骨骨頭や第五中足骨骨頭を被覆する部分を構成する通気性部材6は、縫い目がなく潰されない状態で、足裏面の中足骨骨頭に接する部分にまで延出しており、中底部材4と端面が突き合わされて縫合されている。また、この通気性部材6の上方部分は、靴底2に接合しておらず外側面が露出している。したがって、足裏面の湿気は、この通気性部材6の内部の通気経路を通ってこの露出した部分から外部へ排出される。なお、上記の端面突き合わせによる縫合は、ジグザグ縫いなどが用いられる。
【0023】
甲皮部材5の足裏面への延出部分以外の部分は、足裏面に延出しておらず、足裏面に対峙する部分(足裏面部分)と足側面に対峙する部分(足側面部分)の境界で中底部材4と縁かがり縫い9にて強固に縫合されている。そして、この甲皮部材5の延出部分の幅は、足裏面部分と足側面部分の境界において、靴の足長サイズの10〜35%であることが好ましい。この幅が小さいと足裏面の湿気排出性が劣る傾向にあり、大きいと、靴形状は三次元形状であるため、甲皮部材5の延出部分等に皺が入りやすくなり、皺の発生を防ぐために延出部分に切り込みが必要になるなどの製造工程数が増加する。また、この甲皮部材5の延出部分の長さは、足裏面の湿気を取り込むために10mm以上であることが好ましい。甲皮部材の延出部分の形状は、中底部材4との縫合が行いやすくするために、曲線で形成される山形形状であることが好ましい。
【0024】
次に、通気性靴10の構造を少し変更した通気性靴の例を図5に示す。図5の通気性靴11は、通気性靴10とほぼ同じ構造であるが、相違する点は、甲皮部材5の第一中足骨骨頭を被覆する部分からの延出部分と甲皮部材5の第五中足骨骨頭を被覆する部分からの延出部分とが、足裏面に対応する部分の中間辺りで端面突き合わせにより縫合されている点である。これにより、足裏面の湿気を甲皮部材5(通気性部材6)に取り込む面積が増加して足裏面の湿気排出性が高まる。
【0025】
通気性靴10、11の靴底2は、その周縁に上方へ向けて隆起した隆起部7を有している。すなわち、この隆起部7が、靴本体3の甲皮部材5の足側面部分の下方部分に接着剤により接合している。これにより、甲皮部材5の中足骨骨頭を被覆する部分は、歩行等の屈曲で負荷がかかって損傷しやすい傾向にあるが、その下方部分が隆起部7で補強されることになり通気性靴の耐久性が良くなっている。隆起部7の隆起高さは、通気性部材6と
接合している部分においては2〜20mmであることが好ましい。
【0026】
本発明の他の通気性靴の例を図6に示す。図6の通気性靴12は、通気性靴10の隆起部7が側面テープ8に置き換わったような構造の靴であるので、通気性靴10と同様な構成の部分は説明を省略し、通気性靴10と相違する部分を以下に説明する。
【0027】
通気性靴12においては、側面テープ8が、靴底の側面と靴本体3の甲皮部材5の足側面部分の下方部分に跨るように接合している。これにより、甲皮部材5の中足骨骨頭を被覆する部分は、歩行等の屈曲で負荷がかかって損傷しやすい傾向にあるが、その下方部分が側面テープ8で補強されることになり通気性靴の耐久性が良くなっている。なお、通気性靴12の靴底2は、その周縁に隆起部7を有していてもよいし有していなくてもよい。
側面テープ8は、ゴム材、軟質塩化ビニル、発泡EVAなどの合成樹脂材によって成形されたものが好適に用いられる。
【0028】
本発明のさらに他の通気性靴の例を図7に示す。また、図7の通気性靴13の靴本体3を底面側から見た斜視説明図を図8に示す。通気性靴13は、基本的な部分は通気性靴10と同じであるので、通気性靴10と相違する部分を以下に説明する。
【0029】
通気性靴13においては、靴本体3は、中底部材4と甲皮部材5とが接着剤により接合されて袋形状に形作られている。すなわち、図8に示すように、甲皮部材5の下縁部分が、足裏面の中足骨骨頭に向けて延出する部分を除いて、足裏形状の中底部材4の下面周縁部分に接着剤により接合され、図7に示すように、中足骨骨頭に向けて延出する部分は、中底部材4の上面に延出するとともに接着剤により中底部材4に接合している。
【0030】
なお、通気性靴13においては、通気性部材6が足裏形状の中底部材4の上面に延出しているが、中底部材4を通気性部材6の延出部分に相当する分だけ切り欠いておいて、延出部分の端面と中底部4を構成する部材の端面とを突き合わせて、両者を縫合等で接合することもできる。
【0031】
通気性靴10、11、12、13において、中底部材4は、足裏面を支える部分であり、パルプ材、生地、発泡EVAなどの合成樹脂からなる部材を単独または組み合わせて構成することができるが、内部に通気経路を有する通気性部材で構成することが好ましい。
通気性靴10、11,12において、中底部材4を通気性部材6と同機能の通気性部材で構成して、この通気性部材の端面と、甲皮部材5を構成する通気性部材6の延出部分の端面とを突き合わせ且つ端面が完全に潰れてしまわないようにジグザグ縫い等で縫合すれば、甲皮部材5の延出部分以外の部分の足裏面の湿気も排出できるようになる。
【0032】
なお、このような甲皮部材5の延出部分の中底部材4への縫合は、ゆるく縫合しても、延出部分は靴底との接合面積が十分あることから、靴の耐久性にはほとんど影響しない。
ただし、縫合部分が履き心地に影響するので、通気性を有する中敷きが装着されることが好ましい。
【0033】
甲皮部材5の通気性部材6以外の部材は、生地、合成皮革、人工皮革、皮を組み合わせて構成することができるが、通気性部材6と同機能の通気性部材で構成することが好ましい。
【0034】
本発明に用いられる好ましい通気性部材6は、内部に通気経路を有する立体構造のもので、具体的には、中間層63の両面に表皮層61、62が設けられたような構造のシートである(図9)。中間層63は、厚さ、幅及び長さ方向に通気性を有して通気経路を形成する層であり、表皮層61、62は、少なくとも厚さ方向に通気性を有する層である。
【0035】
通気性部材6としては、表地61と裏地62とを連結糸63で結んだダブルラッセル布が好ましいが、三次元網目構造を有するポリウレタンフォームの裁断シート63の両面に布地61、62を積層したシートも良好に使用できる。また、ポリウレタンフォームの裁断シートの部分を合成樹脂ワタなどの繊維材63に代えたものでもよい。ポリウレタンフォームを使用する際には爆発法等によりセル膜の除去処理したものが好ましい。中間層の気孔容積は、通気経路の通気性を高めるために、JIS−L1096に準拠した値で90〜99%であることが好ましい。
【0036】
表皮層の構造としては、足裏面の湿気を通気性部材の内部に取り入れやすくし、また足側面に対応する部分から外部へ排出しやすくするために、表皮層61、62は、網目構造を有するものや、穴64が多数形成されているものが好ましい。表皮層61、62としては、通気性が、JIS−L1096に規定する通気性(フラジール形法)で100〜1000cm3/cm2・Sのものが好適に使用できる。
【0037】
通気性部材6の厚さは特に限定されるものではないが、良好な通気経路を形成するためにダブルラッセル布の場合は、連結糸で結んでいる表地61と裏地62の内面間の距離が0.5mm〜5.0mmとされたものが好ましく、ポリウレタンフォームの裁断シートや繊維材の両面に布地を積層したシートの場合においては、裁断シートや繊維材の厚さが0.5mm〜5.0mmとされたものが好ましい。内面間の距離や裁断シート等の厚さが0.5mm未満であると湿気の排出が不十分になりやすく、5.0mmを超えても湿気の排出の向上は見られず、材料のコスト高になる。また、通気性部材を二枚重ねして使用することもできる。
【0038】
通気性靴10、11、12、13に用いられる靴底2は、射出成形により靴本体3と一体的に形成されるものでもよいし、別途作製したものを靴本体3に接着剤により接合してもよい。靴底2を構成する材料は、特に限定されるものではなく、EVA、軟質ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ゴムなどの非発泡又は発泡材料が好適に用いられる。
【0039】
本発明の別の実施態様として、図12及び13に示すように、靴底2において、甲皮部材5の足裏面への延出部分に設けられる少なくとも1本の凹溝9が設けられることが通気性向上のため好ましい。この溝の本数としては、1本でも効果を得ることができるが2〜4本設けられることが好ましく、溝幅としては、2〜6mm程度で、2mm以下であると通気性向上効果が少なく、6mmを超えると、通気性は向上するが、余り広いと通気性部材の通気路が狭められる可能性が効果を低減してしまう。溝の深さとしては、靴底2の本来の厚さにより適宜設定されるが、2〜6mm程度である。凹溝9の断面形状としては、半円形状でも、矩形であってもよい。
【0040】
靴底2の側周壁に設けられる凹溝が連通する通気口91は、一方のみでもよいが両端に設けた方が好ましい。また、通気口の大きさとしては、凹溝の幅と同程度の矩形か、円形のものである。
【実施例】
【0041】
(実施例1)図1に示すような構造の通気性靴10を以下のようにして作製した。甲皮部材5の第一中足骨骨頭を被覆する部分を構成する部材として、一枚物の通気性部材6を用い、同様に甲皮部材5の第二中足骨骨頭を被覆する部分を構成する部材として、一枚物の通気性部材6を用い、これらの通気性部材6のそれぞれが、足裏面の第一中足骨骨頭と第五中足骨骨頭に接する部分に延出可能となるように甲皮部材5を構成する他の部材に縫合したのち、これに中底部材4を端面突き合わせにより縫合して、袋形状の靴本体3を作製した。なお、これら二枚の通気性部材6は、ダブルラッセル布6で構成した。このダブルラッセル布6は、表地と裏地の内面間の距離が1.0mmで、表地(甲皮部の外面となる側)として3.0mm2の円形の穴が全面積の10%の面積を占めて均一に分散している編組織のものを用い、裏地(甲皮部の内面となる側)として、網目構造の組織のものを用いた。
【0042】
靴底2は、発泡EVAのシートを熱圧縮成形によりその周縁に隆起部7を形成したミッドソールに、ゴム系のアウトソールを接着して作製した。そして、袋形状の靴本体3を足型モールドに装着し、この靴本体3の足裏面側に靴底2を接着剤により接合して実施例1の通気性靴10を得た。
(実施例2)図6に示すような構造の通気性靴12を以下のようにして作製した。甲皮部材5の第一中足骨骨頭を被覆する部分を構成する部材として、一枚物の通気性部材6を用い、同様に甲皮部5の第二中足骨骨頭を被覆する部分を構成する部材として、一枚物の通気性部材6を用い、これらの通気性部材6のそれぞれが、足裏面の第一中足骨骨頭と第五中足骨骨頭に接する部分に延出可能となるように甲皮部材5を構成する他の部材に縫合したのち、これに中底部材4を縫合して袋形状の靴本体3を作製した。なお、これら二枚の通気性部材6は、セル膜を除去処理した1.5mm厚のポリウレタンフォーム裁断シートの両面に網目構造を有する編布を積層したシートを用いた。
【0043】
靴底2は、軟質ポリ塩化ビニルの射出成形にて作製した。そして、袋形状の靴本体部3を足型モールドに装着し、この靴本体3の足裏面側に靴底2を接着したのち、靴底2と靴本体3との接合部に側面テープ8を接着剤により接合して実施例2の通気性靴12を得た。
【0044】
なお、実施例1及び実施例2の通気性靴10、12において、上記の靴本体3の作製にあたっては、甲皮部材5のうち通気性部材6以外の部材と中底部材4とは、縁かがり縫い9にて強固に縫合し、この通気性部材6の足裏面に延出する部分と中底部材4を構成する部材との縫合は、両者の端面(裁断面)を突き合わせてジグザグ縫いで端面が潰れないようにゆるく縫合した。中底部材4は、実施例1及び実施例2とも、それぞれの実施例で用いた通気性部材6と同じ材料で作製した。したがって、本実施例の通気性靴10、12は、このような中底部材4と通気性部材6との端面が突き合わせにより構成されているので
、甲皮部材5の延出部分以外の部分(中底部材4の部分)の足裏面の湿気も外部へ排出できるものである。
【0045】
以上、本発明の実施の形態等を図面に基づいて説明したが、本発明の通気性靴は図示したものに限定されるものでなく、足裏面に中敷きを装着するタイプの靴であっても良く、靴の緊締のタイプとしては、紐靴、バンド靴、スリッポン靴などのどのようなタイプであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施態様の通気性靴10の一部切り欠き斜視説明図。
【図2】通気性靴10の靴底の斜視説明図。
【図3】通気性靴10のA−A線端面図。
【図4】通気性靴10のB−B線端面図。
【図5】実施態様の通気性靴11の一部切り欠き斜視説明図。
【図6】実施態様の通気性靴12の一部切り欠き斜視説明図。
【図7】実施態様の通気性靴13の一部切り欠き斜視説明図。
【図8】通気性靴13における靴本体部の説明図。
【図9】通気性部材の斜視説明図。
【図10】従来技術の説明図。
【図11】従来技術の説明図。
【図12】別の実施態様の通気性靴10の一部切り欠き斜視説明図。
【図13】別の実施態様の通気性靴10の靴底の斜視説明図。
【符号の説明】
【0047】
2・・靴底、3・・靴本体、4・・中底部材、5・・甲皮部材、6・・通気性部材、7・・隆起部、8・・側面テープ、10・・通気性靴、11・・通気性靴、12・・通気性靴、13・・通気性靴、61・・表皮材(布地、表地)、62・・(布地、裏地)、63・・通気層(連結糸、ポリウレタンフォーム、繊維材)、64・・穴、9・・凹溝、91・・通気口
【技術分野】
【0001】
本発明は、足裏面の湿気を、足側面に対応する部分から外部へ排出する靴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、靴のタイプの一つとして、図10の垂直端面図に示すように、足裏形状の中底部材4の周縁に、オーバーロックミシン等で甲皮部材5の下周縁を縁かがり縫いで縫合して袋形状の靴本体3を作製し、この靴本体部の下面に、射出により靴底2を形成するか、または別途作製の靴底部材2を接着したものが知られている。また、靴本体に関しては、図11の垂直端面図に示すように、足裏形状の中底部材4の周縁に、甲皮部材5の下周縁を接着剤で接合して靴本体3を作製することが知られている。以上のような靴において、耐久性向上や足蒸れ防止を考慮して、靴底2はゴムや合成樹脂材などの耐磨耗性の材料で構成し、中底部材4はパルプ材や生地などの吸放湿性や通気性の部材で構成し、甲皮部材は皮や生地などの吸放湿性や通気性の部材で構成することが通常行われている。
【0003】
また、靴内での足蒸れを抑制するために、例えば、甲皮部材5として、ダブルラッセル布と呼ばれる生地を使用することが知られており(特許文献1)、同様に、中底部材4として、ダブルラッセル布と呼ばれる生地を使用することが知られている(特許文献2)。
ダブルラッセル布のような通気性部材は、厚さ方向の中間の気孔容積率が高く、そこに通気経路を形成するので、特に足裏面の湿気を外部に排出するのに有効である。
【特許文献1】実開昭63−25004号公報
【特許文献2】実開平3−13802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、中底部材4として通気性部材を用いても、図10に示すように、中底部材4と甲皮部材5とをミシンで縫合してしまうと、その縫合部分が潰れて通気経路が断たれてしまい足裏面の湿気を外部に良好に排出できないという問題が知見された。同様に、図11に示すように、中底部材4と甲皮部材5とを接着剤で接合してしまうと、接着剤で通気経路が断たれてしまい足裏面の湿気を外部に良好に排出できないという問題が知見された。
【0005】
このような問題を解決するために、中底部材4と甲皮部材5とを上記のような通気性部材で構成して、両者を端面突き合わせで端面部分が潰れないようにゆるく縫合することが考えられるが、靴の耐久性が不足する。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、足裏面の湿気を足側面に対応する部分から外部へ排出する通気性靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の通気性靴は、甲皮部材と中底部材とからなる靴本体に、靴底が設けられた通気性靴において、甲皮部材の少なくとも第一中足骨骨頭を被覆する部分や甲皮部材の少なくとも第五中足骨骨頭を被覆する部分の一方又は両方が、内部に通気経路を有する立体構造の通気性部材で構成され、これらの中足骨骨頭を被覆する部分の甲皮部材が、足裏面の第一中足骨骨頭に接する部分や足裏面の第一中足骨骨頭に接する部分の一方又は両方に向けて延出していることを特徴とする。
【0008】
本発明の好ましい態様の通気性靴は、中底部材が、甲皮部材の足裏面への延出部分に相当する分だけ切り欠かれた形状とされ、甲皮部材の足裏面への延出部分と中底部材とが両者の端面を突き合わせて縫合されている。また、甲皮部材の延出部分が、足裏面の全ての中足骨骨頭に接するようにされている。さらに、甲皮部材の中足骨骨頭を被覆する部分の少なくとも下方部分に、靴底の縁部の上方に向けて隆起した隆起部又は靴底の側面に接合した側面テープが、接合している。
【0009】
また、本発明の通気性靴の靴底において、甲皮部材の足裏面への延出部分に相当する部分の靴底上面に、少なくとも1本の凹溝を有し、靴底の側周壁には、凹溝と連通する通気口を有することで通気性をさらに向上させることができ好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の通気性靴は、甲皮部材の少なくとも第一中足骨骨頭を被覆する部分や甲皮部材の少なくとも第五中足骨骨頭を被覆する部分のいずれか一方又は両方が、内部に通気経路を有する立体構造の通気性部材で構成され、これらの中足骨骨頭を被覆する部分の甲皮部材が、足裏面の第一中足骨骨頭に接する部分や足裏面の第一中足骨骨頭に接する部分の一方又は両方に向けて延出しているので、足裏面の湿気は、この通気性部材の内部の通気路を通って足側面から外部へ排出される。
【0011】
また、好ましい態様の通気性靴は、中底部材が、甲皮部材の延出部分に相当する分だけ切り欠かれた形状とされ、甲皮部材の延出部分と中底部材とが、両者の端面を突き合わせて縫合されているので、両者の間の段差は極めて小さいものであり、履き心地が良好である。また、甲皮部材の延出部分が、足裏面の全ての中足骨骨頭に接するようにされているので、足裏面の湿気を取り込む面積が大きく足裏面の湿気排出性が高い。さらに、甲皮部材の中足骨骨頭を被覆する部分の少なくとも下方部分に、靴底の縁部の上方に向けて隆起した隆起部又は靴底の側面に接合した側面テープが接合しているので、歩行等の屈曲で負
荷のかかる甲皮部材の中足骨骨頭を被覆する部分が補強されて、通気性靴の耐久性が良い。
【0012】
さらに、本発明の通気性靴の靴底において、甲皮部材の足裏裏面への延出部分に対応する部分の靴底上面に、少なくとも1本の凹溝があるために、延出部分に体重が掛かり、通気性部材の通気路が狭められても、凹溝によって通気路が狭められることを防止することができ、足裏面の湿気は、足側面から外部へより効率的に排出される。また、凹溝が連通する通気口を側周壁に有しているために、この部分からも足裏面の湿気は排出することが可能となり、通気性靴としての性能を向上させることができる。また、凹溝を設けた部分が靴としての屈曲部分に対応するため、靴としての屈曲性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。図1、図5、図6、図7には実施態様の通気性靴の一部を切り欠いた説明図である。また、図2は、図1の通気性靴の靴底の斜視図であり、図3は、図1の通気性靴のA−A線端面図であり、図4は、図1の通気性靴のB−B線端面図である。なお、各図に示した通気性靴はすべて右足用の靴であり、同一符号で付したところは同じ機能の箇所を示す。
【0014】
まず、本発明の実施形態の通気性靴10、11、12、13ついて、これらの通気性靴に共通するところを図1に基づいて説明する。本発明の通気性靴は、甲皮部材5と中底部材4とからなる靴本体3の下面に、靴底2が接合された通気性靴である。甲皮部材5の少なくとも第一中足骨骨頭を被覆する部分と甲皮部材5の少なくとも第五中足骨骨頭を被覆する部分が、内部に通気経路を有する立体構造の通気性部材6で構成されている。
【0015】
そして、中足骨骨頭を被覆する部分のこれらの甲皮部材5(通気性部材6で構成されている部分)がそれぞれ、足裏面の第一中足骨骨頭に接する部分や足裏面の第一中足骨骨頭に接する部分にまで、潰されない状態で靴の幅方向に向けて延出している。なお、図1に示すものでは、甲皮部材5を部分的に構成する通気性部材6が、第一中足骨骨頭と第五中足骨骨頭との両方の部分を被覆して且つ足裏面に延出するようにされているが、本発明においては、いずれか一方で良い。
【0016】
ここで、甲皮部材5の少なくとも第一中足骨骨頭(又は第五中足骨骨頭)を被覆する部分とは、表現を変えれば、通気性靴を着用した足の第一中足骨骨頭(又は第五中足骨骨頭)の足側面側に対峙する箇所を少なくとも含む甲皮部材5の部分のことである。また、足裏面の第一中足骨骨頭(又は第五中足骨骨頭)に接する部分とは、表現を変えれば、通気性靴を着用した足の第一中足骨骨頭(又は第五中足骨骨頭)の足裏面側に対峙する部分のことである。
【0017】
本発明において、靴本体3が構成されたときの通気性部材6は、延出部分から外側面に露出する部分に向けて湿気を通す通気経路を内部に有していればよいので、このような条件を満たせば、複数枚の通気性部材を縫合等で連結するなどして形成しても良いが、縫合による連結では通気経路が狭められるので一枚物の通気性部材を用いることが好ましい。
また、通気性部材6には延出方向に湿気を通すことを不可能とするような潰れがあってはならないが、延出方向に湿気を通すことが可能な、例えば延出方向と平行の筋状の潰れならば存在してもよい。
【0018】
また、靴本体3を構成したときの通気性部材6は、湿気を外部へ排出するものであるから、その足側面部分の外側面は少なくとも一部が露出している。通気性部材の外側面が露出するとは、その外側面に湿気の流れを遮断するような部材が接合されていないことをいう。
【0019】
通気性部材6で構成された中足骨骨頭を被覆する部分においては、その下方部分は、歩行等による屈曲で大きな負荷がかかることから、この部分を補強するために、この部分の外側面に比較的強度のある補強部材(不図示)を縫合や接着により接合してもよい。また、通気性部材6の足側面部分において、その下縁部分の外側面を露出させれば足裏面の湿気排出性が高まるので好ましいが、その場合、靴の耐久性が悪くなることがある。
【0020】
なお、通気性部材6に補強部材を接合する場合は、剥がれが生じないように縫合による接合が良いが、通気性部材が潰れて通気経路が断たれないようにすることが大切である。
【0021】
次に、本発明の通気性靴の一例を説明する。図1の通気性靴10は、袋形状の靴本体3の下面に靴底2が接着(接着剤)により接合されている。靴底2は周縁に隆起部7を有している。靴本体3は、甲皮部材5と中底部材4との縫合により袋形状に形作られている。
図1や図3に示すように、甲皮部材5の第一中足骨骨頭や第五中足骨骨頭を被覆する部分には、それぞれの部分に一枚物の通気性部材6がそれぞれ用いられている。
【0022】
図3に示すように、甲皮部材5の第一中足骨骨頭や第五中足骨骨頭を被覆する部分を構成する通気性部材6は、縫い目がなく潰されない状態で、足裏面の中足骨骨頭に接する部分にまで延出しており、中底部材4と端面が突き合わされて縫合されている。また、この通気性部材6の上方部分は、靴底2に接合しておらず外側面が露出している。したがって、足裏面の湿気は、この通気性部材6の内部の通気経路を通ってこの露出した部分から外部へ排出される。なお、上記の端面突き合わせによる縫合は、ジグザグ縫いなどが用いられる。
【0023】
甲皮部材5の足裏面への延出部分以外の部分は、足裏面に延出しておらず、足裏面に対峙する部分(足裏面部分)と足側面に対峙する部分(足側面部分)の境界で中底部材4と縁かがり縫い9にて強固に縫合されている。そして、この甲皮部材5の延出部分の幅は、足裏面部分と足側面部分の境界において、靴の足長サイズの10〜35%であることが好ましい。この幅が小さいと足裏面の湿気排出性が劣る傾向にあり、大きいと、靴形状は三次元形状であるため、甲皮部材5の延出部分等に皺が入りやすくなり、皺の発生を防ぐために延出部分に切り込みが必要になるなどの製造工程数が増加する。また、この甲皮部材5の延出部分の長さは、足裏面の湿気を取り込むために10mm以上であることが好ましい。甲皮部材の延出部分の形状は、中底部材4との縫合が行いやすくするために、曲線で形成される山形形状であることが好ましい。
【0024】
次に、通気性靴10の構造を少し変更した通気性靴の例を図5に示す。図5の通気性靴11は、通気性靴10とほぼ同じ構造であるが、相違する点は、甲皮部材5の第一中足骨骨頭を被覆する部分からの延出部分と甲皮部材5の第五中足骨骨頭を被覆する部分からの延出部分とが、足裏面に対応する部分の中間辺りで端面突き合わせにより縫合されている点である。これにより、足裏面の湿気を甲皮部材5(通気性部材6)に取り込む面積が増加して足裏面の湿気排出性が高まる。
【0025】
通気性靴10、11の靴底2は、その周縁に上方へ向けて隆起した隆起部7を有している。すなわち、この隆起部7が、靴本体3の甲皮部材5の足側面部分の下方部分に接着剤により接合している。これにより、甲皮部材5の中足骨骨頭を被覆する部分は、歩行等の屈曲で負荷がかかって損傷しやすい傾向にあるが、その下方部分が隆起部7で補強されることになり通気性靴の耐久性が良くなっている。隆起部7の隆起高さは、通気性部材6と
接合している部分においては2〜20mmであることが好ましい。
【0026】
本発明の他の通気性靴の例を図6に示す。図6の通気性靴12は、通気性靴10の隆起部7が側面テープ8に置き換わったような構造の靴であるので、通気性靴10と同様な構成の部分は説明を省略し、通気性靴10と相違する部分を以下に説明する。
【0027】
通気性靴12においては、側面テープ8が、靴底の側面と靴本体3の甲皮部材5の足側面部分の下方部分に跨るように接合している。これにより、甲皮部材5の中足骨骨頭を被覆する部分は、歩行等の屈曲で負荷がかかって損傷しやすい傾向にあるが、その下方部分が側面テープ8で補強されることになり通気性靴の耐久性が良くなっている。なお、通気性靴12の靴底2は、その周縁に隆起部7を有していてもよいし有していなくてもよい。
側面テープ8は、ゴム材、軟質塩化ビニル、発泡EVAなどの合成樹脂材によって成形されたものが好適に用いられる。
【0028】
本発明のさらに他の通気性靴の例を図7に示す。また、図7の通気性靴13の靴本体3を底面側から見た斜視説明図を図8に示す。通気性靴13は、基本的な部分は通気性靴10と同じであるので、通気性靴10と相違する部分を以下に説明する。
【0029】
通気性靴13においては、靴本体3は、中底部材4と甲皮部材5とが接着剤により接合されて袋形状に形作られている。すなわち、図8に示すように、甲皮部材5の下縁部分が、足裏面の中足骨骨頭に向けて延出する部分を除いて、足裏形状の中底部材4の下面周縁部分に接着剤により接合され、図7に示すように、中足骨骨頭に向けて延出する部分は、中底部材4の上面に延出するとともに接着剤により中底部材4に接合している。
【0030】
なお、通気性靴13においては、通気性部材6が足裏形状の中底部材4の上面に延出しているが、中底部材4を通気性部材6の延出部分に相当する分だけ切り欠いておいて、延出部分の端面と中底部4を構成する部材の端面とを突き合わせて、両者を縫合等で接合することもできる。
【0031】
通気性靴10、11、12、13において、中底部材4は、足裏面を支える部分であり、パルプ材、生地、発泡EVAなどの合成樹脂からなる部材を単独または組み合わせて構成することができるが、内部に通気経路を有する通気性部材で構成することが好ましい。
通気性靴10、11,12において、中底部材4を通気性部材6と同機能の通気性部材で構成して、この通気性部材の端面と、甲皮部材5を構成する通気性部材6の延出部分の端面とを突き合わせ且つ端面が完全に潰れてしまわないようにジグザグ縫い等で縫合すれば、甲皮部材5の延出部分以外の部分の足裏面の湿気も排出できるようになる。
【0032】
なお、このような甲皮部材5の延出部分の中底部材4への縫合は、ゆるく縫合しても、延出部分は靴底との接合面積が十分あることから、靴の耐久性にはほとんど影響しない。
ただし、縫合部分が履き心地に影響するので、通気性を有する中敷きが装着されることが好ましい。
【0033】
甲皮部材5の通気性部材6以外の部材は、生地、合成皮革、人工皮革、皮を組み合わせて構成することができるが、通気性部材6と同機能の通気性部材で構成することが好ましい。
【0034】
本発明に用いられる好ましい通気性部材6は、内部に通気経路を有する立体構造のもので、具体的には、中間層63の両面に表皮層61、62が設けられたような構造のシートである(図9)。中間層63は、厚さ、幅及び長さ方向に通気性を有して通気経路を形成する層であり、表皮層61、62は、少なくとも厚さ方向に通気性を有する層である。
【0035】
通気性部材6としては、表地61と裏地62とを連結糸63で結んだダブルラッセル布が好ましいが、三次元網目構造を有するポリウレタンフォームの裁断シート63の両面に布地61、62を積層したシートも良好に使用できる。また、ポリウレタンフォームの裁断シートの部分を合成樹脂ワタなどの繊維材63に代えたものでもよい。ポリウレタンフォームを使用する際には爆発法等によりセル膜の除去処理したものが好ましい。中間層の気孔容積は、通気経路の通気性を高めるために、JIS−L1096に準拠した値で90〜99%であることが好ましい。
【0036】
表皮層の構造としては、足裏面の湿気を通気性部材の内部に取り入れやすくし、また足側面に対応する部分から外部へ排出しやすくするために、表皮層61、62は、網目構造を有するものや、穴64が多数形成されているものが好ましい。表皮層61、62としては、通気性が、JIS−L1096に規定する通気性(フラジール形法)で100〜1000cm3/cm2・Sのものが好適に使用できる。
【0037】
通気性部材6の厚さは特に限定されるものではないが、良好な通気経路を形成するためにダブルラッセル布の場合は、連結糸で結んでいる表地61と裏地62の内面間の距離が0.5mm〜5.0mmとされたものが好ましく、ポリウレタンフォームの裁断シートや繊維材の両面に布地を積層したシートの場合においては、裁断シートや繊維材の厚さが0.5mm〜5.0mmとされたものが好ましい。内面間の距離や裁断シート等の厚さが0.5mm未満であると湿気の排出が不十分になりやすく、5.0mmを超えても湿気の排出の向上は見られず、材料のコスト高になる。また、通気性部材を二枚重ねして使用することもできる。
【0038】
通気性靴10、11、12、13に用いられる靴底2は、射出成形により靴本体3と一体的に形成されるものでもよいし、別途作製したものを靴本体3に接着剤により接合してもよい。靴底2を構成する材料は、特に限定されるものではなく、EVA、軟質ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ゴムなどの非発泡又は発泡材料が好適に用いられる。
【0039】
本発明の別の実施態様として、図12及び13に示すように、靴底2において、甲皮部材5の足裏面への延出部分に設けられる少なくとも1本の凹溝9が設けられることが通気性向上のため好ましい。この溝の本数としては、1本でも効果を得ることができるが2〜4本設けられることが好ましく、溝幅としては、2〜6mm程度で、2mm以下であると通気性向上効果が少なく、6mmを超えると、通気性は向上するが、余り広いと通気性部材の通気路が狭められる可能性が効果を低減してしまう。溝の深さとしては、靴底2の本来の厚さにより適宜設定されるが、2〜6mm程度である。凹溝9の断面形状としては、半円形状でも、矩形であってもよい。
【0040】
靴底2の側周壁に設けられる凹溝が連通する通気口91は、一方のみでもよいが両端に設けた方が好ましい。また、通気口の大きさとしては、凹溝の幅と同程度の矩形か、円形のものである。
【実施例】
【0041】
(実施例1)図1に示すような構造の通気性靴10を以下のようにして作製した。甲皮部材5の第一中足骨骨頭を被覆する部分を構成する部材として、一枚物の通気性部材6を用い、同様に甲皮部材5の第二中足骨骨頭を被覆する部分を構成する部材として、一枚物の通気性部材6を用い、これらの通気性部材6のそれぞれが、足裏面の第一中足骨骨頭と第五中足骨骨頭に接する部分に延出可能となるように甲皮部材5を構成する他の部材に縫合したのち、これに中底部材4を端面突き合わせにより縫合して、袋形状の靴本体3を作製した。なお、これら二枚の通気性部材6は、ダブルラッセル布6で構成した。このダブルラッセル布6は、表地と裏地の内面間の距離が1.0mmで、表地(甲皮部の外面となる側)として3.0mm2の円形の穴が全面積の10%の面積を占めて均一に分散している編組織のものを用い、裏地(甲皮部の内面となる側)として、網目構造の組織のものを用いた。
【0042】
靴底2は、発泡EVAのシートを熱圧縮成形によりその周縁に隆起部7を形成したミッドソールに、ゴム系のアウトソールを接着して作製した。そして、袋形状の靴本体3を足型モールドに装着し、この靴本体3の足裏面側に靴底2を接着剤により接合して実施例1の通気性靴10を得た。
(実施例2)図6に示すような構造の通気性靴12を以下のようにして作製した。甲皮部材5の第一中足骨骨頭を被覆する部分を構成する部材として、一枚物の通気性部材6を用い、同様に甲皮部5の第二中足骨骨頭を被覆する部分を構成する部材として、一枚物の通気性部材6を用い、これらの通気性部材6のそれぞれが、足裏面の第一中足骨骨頭と第五中足骨骨頭に接する部分に延出可能となるように甲皮部材5を構成する他の部材に縫合したのち、これに中底部材4を縫合して袋形状の靴本体3を作製した。なお、これら二枚の通気性部材6は、セル膜を除去処理した1.5mm厚のポリウレタンフォーム裁断シートの両面に網目構造を有する編布を積層したシートを用いた。
【0043】
靴底2は、軟質ポリ塩化ビニルの射出成形にて作製した。そして、袋形状の靴本体部3を足型モールドに装着し、この靴本体3の足裏面側に靴底2を接着したのち、靴底2と靴本体3との接合部に側面テープ8を接着剤により接合して実施例2の通気性靴12を得た。
【0044】
なお、実施例1及び実施例2の通気性靴10、12において、上記の靴本体3の作製にあたっては、甲皮部材5のうち通気性部材6以外の部材と中底部材4とは、縁かがり縫い9にて強固に縫合し、この通気性部材6の足裏面に延出する部分と中底部材4を構成する部材との縫合は、両者の端面(裁断面)を突き合わせてジグザグ縫いで端面が潰れないようにゆるく縫合した。中底部材4は、実施例1及び実施例2とも、それぞれの実施例で用いた通気性部材6と同じ材料で作製した。したがって、本実施例の通気性靴10、12は、このような中底部材4と通気性部材6との端面が突き合わせにより構成されているので
、甲皮部材5の延出部分以外の部分(中底部材4の部分)の足裏面の湿気も外部へ排出できるものである。
【0045】
以上、本発明の実施の形態等を図面に基づいて説明したが、本発明の通気性靴は図示したものに限定されるものでなく、足裏面に中敷きを装着するタイプの靴であっても良く、靴の緊締のタイプとしては、紐靴、バンド靴、スリッポン靴などのどのようなタイプであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施態様の通気性靴10の一部切り欠き斜視説明図。
【図2】通気性靴10の靴底の斜視説明図。
【図3】通気性靴10のA−A線端面図。
【図4】通気性靴10のB−B線端面図。
【図5】実施態様の通気性靴11の一部切り欠き斜視説明図。
【図6】実施態様の通気性靴12の一部切り欠き斜視説明図。
【図7】実施態様の通気性靴13の一部切り欠き斜視説明図。
【図8】通気性靴13における靴本体部の説明図。
【図9】通気性部材の斜視説明図。
【図10】従来技術の説明図。
【図11】従来技術の説明図。
【図12】別の実施態様の通気性靴10の一部切り欠き斜視説明図。
【図13】別の実施態様の通気性靴10の靴底の斜視説明図。
【符号の説明】
【0047】
2・・靴底、3・・靴本体、4・・中底部材、5・・甲皮部材、6・・通気性部材、7・・隆起部、8・・側面テープ、10・・通気性靴、11・・通気性靴、12・・通気性靴、13・・通気性靴、61・・表皮材(布地、表地)、62・・(布地、裏地)、63・・通気層(連結糸、ポリウレタンフォーム、繊維材)、64・・穴、9・・凹溝、91・・通気口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
甲皮部材と中底部材とからなる靴本体に、靴底が設けられた通気性靴において、
甲皮部材の少なくとも第一中足骨骨頭を被覆する部分や甲皮部材の少なくとも第五中足骨骨頭を被覆する部分の一方又は両方が、内部に通気経路を有する立体構造の通気性部材で構成され、
これらの中足骨骨頭を被覆する部分の甲皮部材が、足裏面の第一中足骨骨頭に接する部分や足裏面の第一中足骨骨頭に接する部分の一方又は両方に向けて延出していることを特徴とする通気性靴。
【請求項2】
中底部材が、甲皮部材の足裏面への延出部分に相当する分だけ切り欠かれた形状とされ
、甲皮部材の延出部分と中底部材とが、両者の端面を突き合わせて縫合されていることを特徴とする請求項1に記載の通気性靴。
【請求項3】
甲皮部材の足裏面への延出部分が、足裏面の全ての中足骨骨頭に接するようにされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の通気性靴。
【請求項4】
甲皮部材の中足骨骨頭を被覆する部分の少なくとも下方部分に、靴底の縁部の上方に向けて隆起した隆起部又は靴底の側面に接合した側面テープが、接合していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の通気性靴。
【請求項5】
甲皮部材の足裏面への延出部分に相当する部分の靴底上面に、少なくとも1本の凹溝を有し、靴底の側周壁には、凹溝と連通する通気口を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の通気性靴。
【請求項1】
甲皮部材と中底部材とからなる靴本体に、靴底が設けられた通気性靴において、
甲皮部材の少なくとも第一中足骨骨頭を被覆する部分や甲皮部材の少なくとも第五中足骨骨頭を被覆する部分の一方又は両方が、内部に通気経路を有する立体構造の通気性部材で構成され、
これらの中足骨骨頭を被覆する部分の甲皮部材が、足裏面の第一中足骨骨頭に接する部分や足裏面の第一中足骨骨頭に接する部分の一方又は両方に向けて延出していることを特徴とする通気性靴。
【請求項2】
中底部材が、甲皮部材の足裏面への延出部分に相当する分だけ切り欠かれた形状とされ
、甲皮部材の延出部分と中底部材とが、両者の端面を突き合わせて縫合されていることを特徴とする請求項1に記載の通気性靴。
【請求項3】
甲皮部材の足裏面への延出部分が、足裏面の全ての中足骨骨頭に接するようにされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の通気性靴。
【請求項4】
甲皮部材の中足骨骨頭を被覆する部分の少なくとも下方部分に、靴底の縁部の上方に向けて隆起した隆起部又は靴底の側面に接合した側面テープが、接合していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の通気性靴。
【請求項5】
甲皮部材の足裏面への延出部分に相当する部分の靴底上面に、少なくとも1本の凹溝を有し、靴底の側周壁には、凹溝と連通する通気口を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の通気性靴。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−39518(P2009−39518A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179817(P2008−179817)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】
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