説明

運動学的特異点補償システムおよび方法

処理通路における運動学的特異点を処理するシステムおよび方法が開示されている。1実施例では数値制御(NC)処理システムは、 予め定められた処理通路に沿ってリンクの先端部を位置させるように動作する多軸運動リンクを有する材料処理装置を含んでいる。システムはまた、処理通路における特異点を検出するように動作し、特異点の近くにおける先端部の位置の正確度を改善するように動作する補償システムを有するプロセッサを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に多自由度の機械加工および位置設定処理に関し、特に、処理通路にソフトウエア位置補償を適用するとき運動学的特異点を処理するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、多数の機械加工およびフォーミング処理が数値制御(NC)により動作する機械加工工具を使用して行われている。典型的なNC機械装置では、1組のプログラムされた命令が機械加工工具装置(MTU)により処理され、その工具装置は機械加工工具装置に結合されたサーボ機構に運動制御信号を供給する。機械加工工具装置により保持されているワークピースは処理された命令にしたがって仕上げられた部品中に形成される。命令は典型的に機械加工工具プログラムにより処理され、それは仕上げられた部品に対して利用可能な幾何学的情報にもとづいた命令を生成し、それは一般的に紙または電子的形態のいずれかによるその部品の図面を含んでいる。機械加工工具プログラムはまた典型的に処理に関する命令を含んでおり、それはワークピースの供給割合およびドリル、エンドミルその他のNC装置によって駆動される成形工具のような1以上の成形工具の選択を含んでいてもよい。プログラムされた命令は通常穿孔テープ、磁気テープまたはディスク、光ディスク、或いはフラッシュメモリ装置のような半導体メモリ装置であってもよい種々の移動可能なメモリ装置で符号化される。プログラムされた命令はその後、移動可能なメモリ装置を読取るように構成された読取装置を使用して移動可能なメモリ装置からMTUに与えられる。
【0003】
機械加工工具装置は予め定められた1組の座標軸に関して機械加工工具を移動させるように動作する関節連結機構を含んでいる。その関節連結機構は通常複数の相互接続された運動接続部を含み、それは通常プリズム形または回転可能のいずれかであり、座標的にワークピースに関して機械加工工具の位置を共同して設定する。関節連結機構の複雑性は機構が有する座標軸の数(すなわち、自由度)で表されるような機構の位置設定能力に依存している。例えばよく知られている5軸機械加工工具装置では、関節連結機構は3つの互いに直交する方向に変位可能であり、また、2つの回転軸を中心に回転可能にされる。
【0004】
しかしながら、ある運動状態では、1以上の運動学的接続部に与えられる運動はワークピースに関する機械加工工具の所望の運動を生じることができないことがあり、そのため関節連結機構中に存在する自由度が減少する。したがって、1組の接続位置が特異点において機械加工工具を位置させている。例えば、機械加工工具がエンドミルであれば、そのエンドミルは運動学的接続部とほぼ整列し、その運動学的接続部は回転可能であり、回転接続部に与えられる運動なしにエンドミルの位置を変更することができるある例では、機械加工工具の比較的大きい移動が特異点軸に沿って生じる可能性があり、一方機械加工工具は特異点に接近していて、それはワークピースおよび、または機械加工工具装置に損傷を与える可能性がある。
【0005】
機械加工処理中に1以上の特異点と遭遇することを避けるために、処理ステップは機械加工プログラマによってほぼ逐次的に計画され、それによって機械加工工具が特異点と遭遇しないようにされる。これは有効な技術であるが、既知の特異点は機械加工工具装置および、またはワークピース形態に応じて避けることはできない可能性がある。さらに、特異点が避けられる場合にも、シーケンスの計画が過大な時間を消費してその結果ワークピースの生産コストが増加する可能性がある。
【0006】
機械は意図された処理または作業が適切に実行されるために必要な特定のボリュームの正確度が得られるように特定され、構成される。例えば機械加工される部品は表面位置の公差が±0.010 インチである可能性がある。そのためには機械は加工ボリューム内で±0.010 インチより正確に工具の先端部を位置させる必要がある。これを行うために2つの方法がある。
【0007】
1つの方法は、機械を駆動するプログラム命令は機械が完全であると仮定して十分な正確さで機械を構成することである。この場合に機械の位置の誤差は実際の機械がどれ程正確に接近できるかに依存している。所要の公差に合致するように十分正確に機械を位置させることを確実にするために、機械の製作にかなりの時間と費用が費やされる。しばしばより廉価で正確な部品が要求され、構成および設置中に幾つかの測定および機械的調節が必要である。
【0008】
別の方法は、正確に完全に近接させようとはしないで機械を製作することである。その後、レーザ干渉計の追跡のような標準的な測定技術を使用して、機械の構成状態を測定する。製作された機械と完全な機械との差がプログラム命令を変更するために使用され、それにより機械は特定の公差内に工具を位置させる。これは機械が完全な機械から大きい偏差で製作されることを許容するため、機械の製作および設置のための時間および費用を大幅に減少させる。この方法の正確度の改善はソフトウエア補償または命令更新と呼ばれている。
【0009】
しかしながら、機械が特異点またはその近くにあるときには、特異軸に大きな移動を生じさせることなく工具先端部の正確な配置を改善するプログラム命令の更新命令を計算することが困難または不可能である。これは大きな軸移動は移動に割当てられた時間に達成されない可能性があり、さらに部品または機械に損傷を与える恐れがあるからである。この方法は、プログラム命令に小さい変化を与えるため正確度をある程度犠牲にする。
【0010】
1つの既知の方法では、ソフトウエアベースの最適プログラムが使用され、それは正確度と接続位置との妥協で行われ、それ故、正確度は小さい接続部の運動を維持するために妥協される。この方法の欠点は、正確度の妥協が機械加工工具が特異点に近接しないときでさえも生じる可能性があることである。別の欠点は、この方法は計算が繁雑であり、そのため過大な計算時間が必要されることである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来のシステムの欠点を克服し、計算の負担が少いソフトウエア補償を使用する材料処理システムにおける特異点を処理するシステムおよび方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、処理通路におけるソフトウエア補償中に運動学的特異点を処理するシステムおよび方法を含む。1特徴において、数値制御(NC)処理システムは、予め定められた処理通路に沿ってリンクの先端部を位置させるように動作する多軸運動学的リンクを有する材料処理装置を備えている。そのシステムはまた、処理通路における特異点を検出して特異点の近くにおける先端部の位置および方向の配置を改善するように動作する補償システムを有するプロセッサを具備している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を添付図面を参照にして、以下詳細に説明する。
本発明は処理通路中の運動学的特異点を補償するシステムおよび方法に関する。図1乃至5を参照にして以下説明されている本発明のある実施形態の多くの特定の詳細は、そのような実施形態を十分に理解させるために記載されたものである。しかしながら、当業者は、本発明の付加的な実施形態が可能であり、本発明は以下に記載されている1以上の詳細部分なしに実行できることを理解するであろう。
【0014】
図1は本発明の1実施形態による数値制御(NC)処理システム10のブロック図である。システム10は1以上の材料処理装置12を備えている。以下の説明において、“材料処理装置”とは装置により保持されているワークピースについて処理を行うことのできる装置を意味しているものと理解すべきである。したがって材料処理装置は、ワークピースに対して多軸機械加工作業を行うように構成された機械加工工具装置を含んでいる。その代わりに、材料処理装置はまた数値制御アセンブリロボットのような部品の設置のできる他の多軸装置を含んでいてもよい。
【0015】
本発明の特定の実施形態では、各材料処理装置12は、ワークピースにミーリング、穿孔、成形、または配置動作を行うように動作する多軸コンピュータ数値制御(CNC)機械工具装置を有している。したがって、各材料処理装置12は予め定められた処理通路に沿って先端部を位置させ制御するように動作可能である。例えば、先端部はスピンドル機構(図1には示されていない)であってもよく、それは種々の切断工具を移動可能に保持するように構成される。各材料処理装置12はワークピースを支持する一般的な可動テーブル(図1には示されていない)を含むこともできる。
【0016】
簡単に説明すると、一般的に、多軸装置は典型的に素子またはリンクのシーケンスを有するオープン運動チェーンを含み、それらは移動運動において回転および直線運動の1つを行う運動継手によって結合されている。装置の素子は電気モータまたは他の類似装置のような適当な駆動装置により対応するガイドに沿って駆動される。素子が駆動されるとき、駆動素子に結合された他の運動リンクに影響する可能性がある。典型的に多軸CNC機械工具装置は“5軸”の機械加工工具装置であり、それは3つの移動軸に沿って、2つの回転軸を中心に回転するスピンドル機構を移動させるように動作する。適切な5軸CNC装置の1例はT−30CNCマシニングセンターであり、オハイオ州のシンシナティのCincinnati Milacron 社から販売されているが、他の装置もしようできる。
【0017】
図1にさらに示されているように、NC処理システム10はまた1以上処理データ転送装置14を備えている。この処理データ転送装置14は通信システム16から受信された機械加工工具命令を受取り、予め定められた動作が行なわれるワークピース上の特徴部分の位置を記述する。特定の実施形態ではプロセスデータ転送装置(PDTU)14は5軸機械加工工具装置に結合された機械加工工具データ転送装置(MIDTU)である。通信システム16は地上ベースの電話ラインのような光通信リンク、金属線通信リンク、またはケーブルモデムを使用する同軸ケーブルリンクまたはその他の適当な装置を含んでいてもよい。別の実施形態では、通信システム16はデジタル加入者ライン(DSL)或いは集積サービスデジタルネットワーク(ISDN)を含んでいてもよい。代わりに、通信システム16は少なくとも部分的に無線システムであってもよく、その無線システムは物理的に離れている無線トランシーバを含んでいてもよい。いずれの場合にも、通信システム16はまた構内網 (LAN)、広域ネットワーク(WAN)或いはインターネットのような他の通信システムまたはネットワークに結合されることもできる。
【0018】
さらに図1を参照すると、NC処理システム10はさらに、プロセッサ18を備え、それはプロセッサ18に与えられる1以上のコンピュータプログラムを実行するように動作する汎用コンピュータシステムを含んでいてもよく、そのプロセッサ18は材料処理装置12の動作を監視し、制御するように一般的に動作するソフトウエアモジュールを含み、さらに以下詳細に説明するように、特異点に近接したワークピースに対して材料処理装置12が動作しているとき材料処理装置12の位置を補償するように調節するように動作する。1以上のソフトウエアモジュールはプロセッサ18にインストールされているオペレーティングシステム(OS)の制御下で実行されることができ、1以上のソフトウエアモジュールにより要求されるとき種々のタスクを行うように構成されている。特定の実施形態では、OSは1以上のソフトウエアモジュールの選択された部分の実行をスケジュールする多数の捩子製作動作を同時に行うことができる。したがってOSはウインドウズのNTオペレーティングシステムであってもよく、ワシントン州レドモンドのマイクロソフト社から購入することができるが、他にも適当な装置は存在する。例えばOSはまたUNIX(登録商標)オペレーティングシステムまたはAIXオペレーティングシステムを含むこともできる。他の選択された実施形態では例えばカリホルニア州サンタクララのサン・マイクロシステム社から購入可能なSOLSRISオペレーティングシステム或いはノースカロライナ州レーレーのレッド・ハット社から購入可能なLINUX(登録商標)オペレーティングシステムも使用できる。
【0019】
1以上のソフトウエアモジュールはC,C++,BASIC,PASCALその他のプログラム言語のような高レベル言語または他のプログラム言語で書かれた命令が含まれてもよく、それはプロセッサ18により実行するための実行セグメントを形成するためにコンパイルされ、リンクされる。1以上のソフトウエアモジュールのコンパイルされた部分は、プロセッサ18により実行される前に1以上のランダムアクセスメモリ(RAM)モジュールに記憶されてもよい。入力/出力装置20はプロセッサ18に結合されてユーザとプロセッサ18との間で通信が行なわれることを可能にする。したがって、入力/出力装置20は観察するためにプロセッサ18により情報が発生されることを可能にする可視ディスプレイ端末を含んでいてもよく、またキーボード、タッチスクリーン装置、マウス、音声認識装置、その他の類似装置により情報がプロセッサ18に転送されることができるようにしてもよい。入力/出力装置20はまたプロセッサ18と通信システム16との間の通信を可能にする通信ポートを含み、それにより処理された情報がプロセッサ18とPDTU14との間で交換されるようにしてもよい。
【0020】
プロセッサ18はまた1以上の記憶装置22に結合され、その記憶装置22はデータおよび/またはプログラムされた命令を記憶するように構成されることができる。大容量記憶装置22はプロセッサ18から遠隔の位置にある磁気ディスクドライブを含んでいてもよい。その代わりに、大容量記憶装置22はプロセッサ18内に位置された磁気ディスクドライブを含んでいてもよい。別の特定の実施形態では、大容量記憶装置22はプロセッサ18内か、プロセッサ18から遠隔の位置かのいずれかに配置された磁気ディスクドライブを有していてもよい。
【0021】
図2は図1のNC処理システム10の動作を示すために使用される運動アセンブリ30を示す斜視図である。示されているように、アセンブリ30は3つの直線軸(すなわち図2に示されたX、Y、Z軸)および2つの回転方向(すなわち図2に示されたAおよびC方向)に関する先端部32の運動とは無関係に移動できるように構成されている5軸運動アセンブリである。先端部32は、C回転方向におけるアセンブリの先端部32の回転が先端部32の位置を変化させることができないから、特異点34に現在位置している。したがって、図2に示された5軸運動アセンブリは、先端部32が特異点34に位置されるときには1つの自由度を失う。
【0022】
一般的に、先端部32のデカルト座標の位置および角度方向は関数f()のセットによりリンク位置ベクトルQに関連しているベクトルXにより表される。それ故、X=f(Q)である。ジャコビアン関数セットf()は次の式で規定され、
【数1】

【0023】
先端部32のデカルト座標位置および方位についてのそれぞれの影響に対する接続接合部の差運動をマップする。前述のものが線形であれば(近似)JΔQ=ΔXであり、それ故、先端部32のデカルト座標位置Xの変化はリンク位置Qの変化に関連する。先端部32が特異点に近付くように移動するとき、ジャコビアンJ(Q)は漸進的に悪い状態になり、先端部32が特異点に位置するときジャコビアンJ(Q)はランク欠陥となる。
【0024】
以下図3を参照にして詳細に説明するように、先端部32が特異点34の近くにあるとき、バーチャル軸36が生成され、それは少なくとも軸CおよびAにほぼ垂直であり、それ故、ジャコビアンJ(Q)は特異点ではなくなる。
【0025】
図4は、本発明の別の実施形態による多軸材料処理装置中の運動学的特異点を処理する方法40のフローチャートである。準備事項として、以下の説明において“順方向運動学的計算”とは、運動学的アセンブリを含むリンク間の角度および距離が知られているとき、運動アセンブリの位置の決定を必要とすることを意味している。したがって運動アセンブリの位置は、リンクに対する幾何学的情報もまた知られているから直接計算されることができる。対照的に、“逆方向運動学的計算”は、運動アセンブリのエンド部分が選択された空間的位置に位置されるときアセンブリの運動学的リンク間の角度および距離を決定することを必要とするものと理解される。逆方向運動学的問題は典型的に複数の可能な解を有し、それは一般的に既知の方法を使用して反復的に決定されなければならない。
【0026】
ブロック41においては、位置情報は以下さらに詳細に説明される軌道プランナから受信される。ブロック42では、ジャコビアンJ(Q)が計算される。ブロック44において、先端部32が特異点34(図2および3に示されている)の近くにあるか否かが決定される。その決定は既知の特異点の位置に基づいてもよい。その代わりに、ジャコビアンJ(Q)の状態が既知の方法を使用して検査されてもよい。先端部32が特異点34に近接している場合には、バーチャル軸36(図3に示されている)が生成され、それはブロック46に示されるように特異点を消去する。バーチャル軸36は、例えば回転軸AおよびCに沿って延在するベクトル間のベクトル積を形成することにより、或いは、ジャコビアンに対するベースを完成させることにより、またはその他の既知の手段により生成されることができる。ブロック48で新しいジャコビアンマトリックスJ(Q)が生成される。バーチャル軸36はブロック42のジャコビアンマトリックスJ(Q)中のランク欠陥行(列)が置換されることを許容する。
【0027】
図4をさらに参照すると、ブロック50で最初のQi ベクトルが公式の逆方向運動学的計算を使用して計算される。ブロック52で、実際の先端部位置ベクトルXが形成されている順方向運動学的計算を使用し、最初のQi ベクトルを使用して計算される。ΔXベクトルはその後、所望の先端部位置ベクトルと実際の先端部位置ベクトルとの差を形成することにより、ブロック54に示されるように計算されることができる。ブロック56でΔQベクトルがブロック48で計算されたジャコビアンマトリックスJ(Q)を使用して計算される。ブロック56で計算されたΔQベクトルを使用し、またブロック50で計算された最初のQi ベクトルを使用して新しいQi+1 ベクトルがブロック58で計算される。ブロック60でコンバージェンスがQi+1 ベクトルとQi ベクトルとの絶対差を形成することによってテストされて、絶対差が予め定められたコンバージェンス基準値ε以下であるか否かが決定される。方法40がブロック60でまだコンバージェンスしていないならば、方法40はブロック50に戻り、50乃至60により示される前述の動作が繰返される。コンバージェンスが得られたならば、方法40は終了する。さらに、方法40が特異点に十分に近くないならば、方法40はブロック44でブロック50に分岐する。
【0028】
図5は本発明の別の実施形態によるそふと補償されたNC処理システムにおいて特異点を処理するように構成されたソフトウエアプロダクト70のブロック図である。ソフトウエアプロダクト70は、先端部32が(図2,3に示されるように)予め定められた通路に沿って移動するとは機械が実行する運動接続位置のベクトルを計算する軌道プランナを含んでいる。一般的に、ベクトルは機械のすでに形成された運動と比較される。先端部32の実際の位置および方向と、先端部32の理想的な位置との差が計算されそれは先端部32の位置と関連するエラーベクトルを表している。先端部32に対して補正された位置ベクトルは接続部のオフセットベクトルを減少させるように計算される。生成された補正された各位置に対して、ジャコビアンマトリックスJ(Q)を計算するジャコビアン発生モジュール74を呼び出すことによりジャコビアンマトリックスJ(Q)が計算される。
【0029】
ジャコビアンマトリックスJ(Q)の状態は状態テストモジュール76において決定される。ジャコビアンマトリックスJ(Q)が良好な状態(すなわちランク欠陥でない)であるならば、ソフトウエアプロダクト70はジャコビアンマトリックスJ(Q)を受取り、運学的動素子の運動を制御する。ジャコビアンマトリックスJ(Q)が悪い状態であるならば、バーチャル軸発生モジュール78が特異点を避けるバーチャル軸を構成し、新しいジャコビアンマトリックスJ(Q)がジャコビアン発生モジュール74を呼出す琴似より計算され、それによりジャコビアンマトリックスJ(Q)中に欠陥のある行または列を含まない新しいジャコビアンマトリックスJ(Q)が計算される。逆方向運動発生モジュール80は最初のQ1 ベクトルを生成する。順方向運動学的発生モジュール82は最初のQ1 ベクトルに対応する実際の先端部位置ベクトルXを計算する。差発生モジュール84はそれから所望の先端部位置ベクトルと実際の先端部位置ベクトルとの差を形成することによってΔXを計算する。ソルバモジュール89はジャコビアン発生モジュール74で計算されたジャコビアンマトリックスJ(Q)を使用してΔQベクトルを生成するように動作して新しいQi+1 を生成する。1実施形態では、ニュートン・ラフソンアルゴリズムが使用される。比較モジュール88はプロダクト70がコンバージェンスを達成したか否かを決定する。差が予め定められた基準値ε以下であることを比較モジュール88が決定した場合には、プロダクト70はコンバージェンスを達成している。差が予め定められた基準値ε以上であることをモジュール88が決定した場合には、プロダクト70は値Qi+1 を戻す。コンバージェンスが得られていなければプロダクトは逆方向運動発生器80へ戻る。
【0030】
以上、本発明の好ましい実施形態および別の実施形態が示され、説明されたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく多くの変形、変更が可能であろう。したがって本発明の技術的範囲は開示された好ましい実施形態および別の実施形態によって限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項によって限定されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の1実施形態による数値制御(NC)処理システムのブロック図。
【図2】特異点の近くの運動学的装置の概略的な斜視図。
【図3】バーチャル軸を有する運動学的装置の概略的な斜視図。
【図4】多軸材料処理装置i6:.運動学的特異点を処理する方法を示すために使用されるフローチャート。
【図5】本発明の別の実施形態によるソフトウエア補償システムの特異点を処理するように構成されたソフトウエアプロダクトのブロック図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数値制御(NC)処理システムにおいて、
予め定められた処理通路に沿ってリンクの先端部を位置させるように動作する多軸運動学的リンクを有する材料処理装置と、
処理通路における特異点を検出してその特異点の近くにおける先端部の位置の正確度を改善するように動作する補償システムを含むプロセッサとを具備している数値制御処理システム。
【請求項2】
前記材料処理装置は5軸材料処理装置を含んでいる請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記5軸材料処理装置はさらに前記先端部に位置された切断工具を取外し可能に保持するように構成されているスピンドルアセンブリを有している請求項2記載のシステム。
【請求項4】
さらに、前記プロセッサと前記材料処理装置との間に配置されて前記プロセッサと前記材料処理装置との間で情報を転送するヨウニ動作する通信システムを有している請求項1記載のシステム。
【請求項5】
さらに、前記通信システムと前記材料処理装置との間に配置されて前記プロセッサから機械加工工具に対する命令を受信して前記材料処理装置に転送される高レベル命令を発生する処理データ伝送装置を具備している請求項4記載のシステム。
【請求項6】
さらに、少くとも1つの大容量記憶装置と前記プロセッサに結合された入力,出力装置とを具備している請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記入力,出力装置はさらに、可視表示装置端末と、キーボードと、タッチスクリーン装置と、音声認識装置と、通信ポートの少くとも1つとを具備している請求項6記載のシステム。
【請求項8】
前記補償システムはソフトウエアベースの補償システムである請求項1記載のシステム。
【請求項9】
多軸材料処理装置中における運動学的特異点を処理する方法において、
前記多軸材料処理装置の先端部に対する材料処理通路を描く位置情報を受信し、
特異軸を識別することにより処理通路中の特異点に前記先端部が近接しているか否かを決定し、
先端部が近接している場合には、前記特異軸に対してほぼ垂直なバーチャルを生成する運動学的特異点を処理する方法。
【請求項10】
前記位置情報の受信はさらに、軌道プランナからの情報の受信を含んでいる請求項9記載の方法。
【請求項11】
先端部が特異点に近接しているか否かの前記決定において、さらに、ジャコビアンマトリックスを生成し、そのジャコビアンマトリックスが比較的悪い状態であるか否かを決定する請求項9記載の方法。
【請求項12】
バーチャルの生成はさらに、比較的良好な状態であるジャコビアンマトリックスの生成を含んでいる請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記比較的良好な状態のジャコビアンマトリックスの生成は、さらに、逆方向運動学的計算を使用する最初のリンク位置を含むベクトルの計算を含んでいる請求項12記載の方法。
【請求項14】
逆運動計算を使用する最初のリンク位置を含むベクトルの計算はさらに、前の運動計算と最初のリンク位置を含むベクトルを使用する実際の先端部位置のベクトルの計算を含んでいる請求項13記載の方法。
【請求項15】
実際の先端部位置のベクトルの計算はさらに、所望の先端部位置と実際の先端部位置のベクトルとに基づいた位置差ベクトルを生成し、リンク位置の差を含むベクトルを生成する処理を含んでいる請求項14記載の方法。
【請求項16】
所望の先端部位置と実際の先端部位置のベクトルに基づいた位置差ベクトルを生成し、リンク位置差を含むベクトルを生成する処理はさらに、リンク位置の差を含むベクトルと最初のリンク位置を含むベクトルとを使用して新しいリンク位置を含むベクトルを計算する処理を含んでいる請求項15記載の方法。
【請求項17】
新しいリンク位置を含むベクトルと最初のリンク位置を含むベクトルとの間の絶対差を生成し、その絶対差を予め定められたコンバージェンス基準値と比較する処理を含んでいる請求項16記載の方法。
【請求項18】
ソフトウエア補償された数値制御処理システム中の特異点を処理するように構成されたソフトウエアプロダクトにおいて、
システムの先端部が予め定められた処理通路に沿って移動するように数値制御システムが実行する運動学的リンク位置を含むベクトルを計算するように動作する軌道プランナモジュールと、
運動学的接続位置を有するベクトルに対応するジャコビアンマトリックスを生成するように動作するジャコビアン発生モジュールと、
ジャコビアンマトリックスを受取ってジャコビアンマトリックスの状態を決定するように動作するマトリックス状態試験モジュールと、
検出された特異点位置軸にほぼ垂直なバーチャル軸を生成するように動作するバーチャル軸発生モジュールし、
先端部が選択された空間的位置に位置されているときシステムの運動学的リンク間の角度位置を決定するように動作する逆方向運動発生装置と、
リンクの間の角度位置が知られているときシステムの運動学的リンクの位置をを決定するように動作する順方向運動発生装置と、
ジャコビアンマトリックスと、接続部位置差ベクトルを発生する先端部位置差ベクトルを受信するように動作するシステムソルバモジュールとを有しているソフトウエアプロダクト。
【請求項19】
マトリックス状態試験モジュールは、ジャコビアンマトリックスが比較的よい状態のマトリックスと比較的悪い状態のマトリックスとのいずれか一方であることを決定するように構成されている請求項18記載のシステム。
【請求項20】
システムソルバモジュールはさらに、ニュートン・ラフソンアルゴリズムを含んでいる請求項18記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−546099(P2008−546099A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514800(P2008−514800)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/021081
【国際公開番号】WO2006/130664
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】