運転支援装置
【課題】目標走行パターンを用いた運転支援において運転者の受ける違和感を抑制する運転支援装置を提供することを課題とする。
【解決手段】走行予定経路の先読み情報に基づいて走行予定経路における目標走行パターンを設定し、当該目標走行パターンに追従するように運転支援を行う運転支援装置1であって、運転者の運転操作の履歴に基づいて運転支援を行うことを特徴とし、運転者の運転操作の履歴に基づいて運転支援制御のON/OFFを切り替えたり、あるいは、運転者の運転操作の履歴に基づいて目標走行パターンを設定する。
【解決手段】走行予定経路の先読み情報に基づいて走行予定経路における目標走行パターンを設定し、当該目標走行パターンに追従するように運転支援を行う運転支援装置1であって、運転者の運転操作の履歴に基づいて運転支援を行うことを特徴とし、運転者の運転操作の履歴に基づいて運転支援制御のON/OFFを切り替えたり、あるいは、運転者の運転操作の履歴に基づいて目標走行パターンを設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転支援装置には、走行予定経路の車速や加速度などの目標パターンを設定し、その目標パターンに従って走行するように運転支援制御を行うものがある。特に、燃費を重視した目標パターンには、加速と惰性走行を組み入れたパターンがある。例えば、特許文献1には、ハイブリッド車両に適用され、走行予定経路に対して無回生無加速走行パターンと加速走行パターンを組み入れた目標走行速度パターンを生成し、その目標走行速度パターンに基づいて車両の走行速度を制御することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−74337号公報
【特許文献2】特開2009−149286号公報
【特許文献3】特開2002−370560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように目標走行パターンに追従するように自動運転制御でなく、目標走行パターンを用いて運転者による操作に対して支援制御を行う場合、基本的には、運転者自らの操作によって目標走行速度パターンになるように速度調整を行う。しかし、運転者の運転操作特性と目標走行速度パターンとの乖離が大きい場合、支援制御によって運転者の運転感覚とは乖離した加速制限や加速アシストが行われるため、運転者が支援制御に対して違和感を受ける虞がある。例えば、燃費を重視した目標走行パターンにおける惰性走行区間において、運転者がコーナの立ち上がりで加速操作を行っても、その加速が支援制御によって制限されてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、目標走行パターンを用いた運転支援において運転者の受ける違和感を抑制する運転支援装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る運転支援装置は、走行予定経路の先読み情報に基づいて走行予定経路における目標走行パターンを設定し、当該目標走行パターンに追従するように運転支援を行う運転支援装置であって、運転者の運転操作の履歴に基づいて運転支援を行うことを特徴とする。
【0007】
この運転支援装置では、走行予定経路の先読み情報に基づいて、その走行予定経路を走行するための目標走行パターンを設定し、その目標走行パターンに追従するように運転支援を行う。特に、運転支援装置では、運転者の運転操作の履歴に基づいて運転支援を行う。これによって、通常設定される目標走行パターンに合わないような運転操作特性を持つ運転者に対しても、その運転者の運転操作特性が考慮された適切な運転支援を行うことができる。このように、運転支援装置では、運転者の運転操作の履歴を考慮して目標走行パターンを用いた運転支援を行うことにより、その運転支援によって運転者が受ける違和感を抑制することができる。
【0008】
なお、運転者の運転操作の履歴としては、過去に走行したときに収集された運転操作を蓄積したものでもよいし、走行中に収集される直前の運転操作でもよい。運転者の運転操作としては、例えば、ブレーキペダル操作、アクセスペダル操作、ハンドル操作がある。目標走行パターンとしては、例えば、目標速度パターン、目標加速度パターン、目標操舵パターンがある。先読み情報としては、例えば、走行予定経路の道路線形情報、道路勾配情報、路面μ情報、道路半径情報がある。
【0009】
本発明の上記運転支援装置では、運転者の運転操作の履歴に基づいて運転支援制御のON/OFFを切り替える構成としてもよい。
【0010】
この運転支援装置では、運転者の運転操作の履歴から運転者の運転操作傾向を認識し、その運転操作傾向に応じて、目標走行パターンに追従するために通常行う運転支援制御をそのまま行ったりあるいは止めたりする。このように、運転支援装置では、目標走行パターンを再設定するのでなく、運転者の運転操作の履歴に基づいて運転支援制御のON/OFFを切り替えるだけなので、目標走行パターンを再設定することによる演算負荷の増大を抑えつつ運転者が受ける違和感を抑制することができる。
【0011】
本発明の上記運転支援装置では、運転者の運転操作の履歴に基づいて目標走行パターンを設定する構成としてもよい。
【0012】
この運転支援装置では、運転者の運転操作の履歴から運転者の運転操作傾向を認識し、その運転操作傾向を考慮して目標走行パターンを設定(再設定)する。このように、運転支援装置では、運転者の運転操作の履歴に基づいて目標走行パターンを設定することにより、目標走行パターンに最初から運転者の運転操作傾向が考慮されているので、その目標走行パターンに追従するように運転支援を行うことによって運転者が受ける違和感を抑制できる。そのため、最初から最後まで目標走行パターンに従って走行できるので、目標走行パターンを設定するときの低燃費などの評価条件を達成することができる。
【0013】
本発明の上記運転支援装置では、運転者のブレーキペダル操作の履歴に基づいて運転支援を変更する構成としてもよい。特に、本発明の上記運転支援装置では、運転者のブレーキペダル操作の履歴に基づいて目標走行パターンを設定する際のパラメータを変更し、その変更したパラメータを用いて目標走行パターンを設定する。
【0014】
この運転支援装置では、運転者のブレーキ操作の履歴から運転者のブレーキ操作傾向を認識し、そのブレーキ操作傾向に応じて運転支援を変更する。このように、運転支援装置では、運転者のブレーキ操作傾向に応じて目標走行パターンを用いた運転支援を変更することにより、通常設定される目標走行パターンの目標速度が運転者の運転感覚を超えるような速度の場合でも運転者の運転感覚に合うような速度での運転支援が可能となる。さらに、この運転支援装置では、運転者のブレーキ操作傾向に応じてパラメータを変更し、その変更したパラメータを用いて目標走行パターンを設定し、その目標走行パターンに追従するように運転支援を行う。この目標走行パターンでは目標速度が運転者の運転感覚に合うような速度となっており、この目標走行パターンに基づく運転支援中に運転者がブレーキ操作を行うことを極力抑制できる。
【0015】
本発明の上記運転支援装置では、運転者のアクセルペダル操作の履歴に基づいて運転支援を変更する構成としてもよい。特に、本発明の上記運転支援装置では、運転者のアクセルペダル操作の履歴に基づいて目標走行パターンを設定する際のパラメータを変更し、その変更したパラメータを用いて目標走行パターンを設定する。
【0016】
この運転支援装置では、運転者のアクセル操作の履歴から運転者のアクセル操作傾向を認識し、そのアクセル操作傾向に応じて運転支援を変更する。このように、運転支援装置では、運転者のアクセル操作傾向に応じて目標走行パターンを用いた運転支援を変更することにより、通常設定される目標走行パターンの目標速度が運転者の運転感覚に合わないような速度の場合でも運転者の運転感覚に合うような速度での運転支援が可能となる。さらに、この運転支援装置では、運転者のアクセル操作傾向に応じてパラメータを変更し、その変更したパラメータを用いて目標走行パターンを設定し、その目標走行パターンに追従するように運転支援を行う。この目標走行パターンでは目標速度が運転者の運転感覚に合うような速度となっており、この目標走行パターンに基づく運転支援中に運転者がアクセル操作を行うことを極力抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、運転者の運転操作の履歴を考慮して目標走行パターンを用いた運転支援を行うことにより、その運転支援によって運転者が受ける違和感を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施の形態に係る運転支援装置の構成図である。
【図2】理想の目標速度パターンの一例である。
【図3】図2の目標速度パターンに従って区間分けした走行予定経路の一例である。
【図4】第1の実施の形態に係る運転者の運転操作特性を考慮した目標速度パターンの一例である。
【図5】目標パターンの各区間に応じた支援制御を示す表である。
【図6】第1の実施の形態に係るECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】第2の実施の形態に係るECUにおける協調支援制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】惰性走行区間における運転者のアクセル入力傾向の一例であり、(a)が運転者のアクセル操作に応じた入力要求加速度と実際の加速度の時間変化の一例であり、(b)が運転者のアクセル開度の時間変化の一例である。
【図9】第3の実施の形態に係るECUにおける操作特性抽出処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】運転者のブレーキの踏み込み量、速度、横Gの時間変化の一例である。
【図11】第4の実施の形態に係るECUにおける操作特性抽出処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る運転支援装置の実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
本実施の形態では、本発明に係る運転支援装置を、ハイブリッド車両に搭載され、運転者の操作入力から車両の出力までを電気的に制御するバイワイヤ方式で支援制御を行う運転支援装置に適用する。本実施の形態では、運転者が燃費重視を選択しており、低燃費を実現する目標パターンに基づいて運転者による操作と車両制御との協調制御での運転支援に適用する。本実施の形態に係る運転支援装置では、走行予定経路における低燃費の目標パターン(目標軌跡、目標速度パターン、目標加速度パターンなど)を生成し、運転者のアクセル操作又はブレーキ操作中に対して目標速度パターンで走行できるようにエンジン、モータ及びブレーキを制御する。本実施の形態には、目標速度パターンに用いた運転支援において運転者の運転操作特性を反映させる方法が異なる4つの実施の形態がある。
【0021】
図1〜図5を参照して、第1の実施の形態に係る運転支援装置1について説明する。図1は、本実施の形態に係る運転支援装置の構成図である。図2は、理想の目標速度パターンの一例である。図3は、図2の目標速度パターンに従って区間分けした走行予定経路の一例である。図4は、第1の実施の形態に係る運転者の運転操作特性を考慮した目標速度パターンの一例である。図5は、目標パターンの各区間に応じた支援制御を示す表である。
【0022】
運転支援装置1では、運転者によって目標タスク(目的地、到達時間、走行モードとして燃費重視など)が与えられると、目標パターンを生成する。そして、運転支援装置1では、運転者による運転操作で入力される要求加速度に応じて、目標パターンに追従するように速度制御を行う。特に、運転支援装置1では、運転者の操作入力履歴から運転者の操作特性を抽出し、その操作特性に反映させて目標パターン(特に、目標速度パターン)を生成/再生成する。
【0023】
運転支援装置1は、アクセルペダルセンサ10、ブレーキペダルセンサ11、車速センサ12、ナビゲーション装置13、地図データベース14、操作入力履歴データベース15、スロットルアクチュエータ20、ブレーキアクチュエータ21、インバータ22及びECU[Electronic Control Unit]31を備えている。
【0024】
アクセルペダルセンサ10は、アクセルペダル(図示せず)のアクセル開度(踏み込み量)を検出するセンサである。アクセルペダルセンサ10では、一定時間毎に、アクセル開度を検出し、その検出したアクセル開度をアクセルペダル信号としてECU31に送信する。
【0025】
ブレーキペダルセンサ11は、ブレーキペダル(図示せず)の踏み込み量を検出するセンサである。ブレーキペダルセンサ11では、一定時間毎に、ブレーキペダルの踏み込み量を検出し、その検出した踏み込み量をブレーキペダル信号としてECU31に送信する。
【0026】
車速センサ12は、自車両の速度を検出するためのセンサである。車速センサ12では、一定時間毎に、車速を検出し、その検出した車速を車速信号としてECU31に送信する。
【0027】
ナビゲーション装置13は、自車両の現在位置や進行方向を計算し、現在位置や進行方向を地図上に表示するとともに、目的地までの経路に従って案内を行う装置である。特に、ナビゲーション装置13では、現在位置などを含むナビ情報信号をECU31に送信する。なお、ナビゲーション装置が搭載されていない車両の場合、GPS受信装置などを利用して現在位置を取得する。
【0028】
地図データベース14は、道路地図情報を格納するデータベースである。道路地図情報としては、道路線形情報、道路勾配情報、道路曲率半径情報、路面μ情報などがある。この地図データベース14は、ナビゲーション装置13と共有されるデータベースとしてもよい。なお、道路地図情報を取得するための方法としては、地図データベース14以外にも、路車間通信を利用してインフラ情報から取得、車車間通信を利用して他車両から情報を取得するなどの方法がある。
【0029】
操作入力履歴データベース15は、運転者のアクセルペダル操作とブレーキペダル操作の入力履歴や操作入力傾向などを格納するデータベースである。操作入力履歴としては、走行コース毎に設けられ、コースの各位置でのアクセル開度とブレーキ踏み込み量が少なくとも含まれ、その他にも通過速度、横G、曲率半径などの情報も含まれる。同じ走行コースを複数回走行している場合、その複数回分の履歴が格納される。なお、同じ車両で複数の運転者が使用する場合、運転者を識別し、運転者毎に格納される。
【0030】
スロットルアクチュエータ20は、駆動源の一つであるエンジンのスロットルバルブの開度を調整するバイワイヤ方式のアクチュエータである。スロットルアクチュエータ20では、ECU31からのエンジン制御信号を受信すると、エンジン制御信号に示される目標開度に応じて作動し、スロットルバルブの開度を調整する。
【0031】
ブレーキアクチュエータ21は、各車輪のホイールシリンダのブレーキ油圧を調整するバイワイヤ方式のアクチュエータである。ブレーキアクチュエータ21では、ECU31からのブレーキ制御信号を受信すると、ブレーキ制御信号に示される目標ブレーキ油圧に応じて作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。
【0032】
インバータ22は、駆動源の1つであるモータの駆動と回生発電を電気的に制御するインバータである。インバータ22では、ECU31からのモータ駆動制御信号を受信すると、モータ駆動制御信号に示されるモータ駆動目標トルクに応じて、バッテリ(図示せず)に充電されている電力を直流から交流に変換し、その交流電力をモータに供給する。また、インバータ22では、ECU31からのモータ回生制御信号を受信すると、モータ回生制御信号に示されるモータ回生目標トルクに応じて、モータの回生発電による電力を交流から直流に変換し、その直流電力をバッテリに充電する。ちなみに、モータ駆動制御信号のモータ駆動トルク目標が0かつモータ回生制御信号のモータ回生トルク目標が0の場合、インバータ22では、モータを停止させる(駆動も回生を行わない状態)。
【0033】
ECU31は、CPU[CentralProcessing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]等からなる電子制御ユニットであり、運転支援装置1を統括制御する。ECU31では、一定時間毎に各センサ10〜12及びナビゲーション装置13からの各信号を受信するとともに、各データベース14,15から必要な情報を抽出する。そして、ECU31では、目標パターン生成処理、協調支援制御処理などを行い、必要に応じてスロットルアクチュエータ20、ブレーキアクチュエータ21、インバータ22に制御信号を送信する。
【0034】
目標パターン生成処理について説明する。ECU31では、現在位置から目的地までの各種道路情報(道路線形情報、道路勾配情報、道路曲率半径情報、路面μ情報など)を地図データベース14から取得する。そして、ECU31では、各種道路情報、目標パターンを生成するための各種パラメータ(拘束条件であり、コーナや直線路での上限速度、コーナでの上限横Gなど)に基づいて、目標タスクを達成するための最適な目標パターンを生成する。この目標パターンを生成方法としては、従来の方法を適用する。目標パターンは、目的地までの全域について生成してもよいし、あるいは、数分や数10分毎、数km毎あるいはコーナや赤信号までなどの所定の範囲毎に生成してもよい。なお、この目標タスクを達成するための最適な目標パターンは、理想の目標パターンである。
【0035】
生成される目標パターンは、位置(走行軌跡)、速度パターン、加速度パターン、ヨー角、ヨーレートなどの操舵パターンなどで構成される。本実施の形態では目標タスクにおいて燃費重視の走行モードとしているので、可能な限り燃費を向上させるために不必要な減速を避ける速度パターンとする必要がある(そもそも無駄な加速をしない)。そこで、目標パターンとして、加速と惰性走行(エンジン及びモータを停止し、エンジンブレーキも使用しないで、ころがり抵抗のみで減速する走行)からなるパターンとしている。図2には、あるコーナでの目標速度パターンの一例を示しており、コーナに進入するまでは加速するパターンAPであり、コーナ進入後からコーナ脱出後の直線路にかけて惰性走行で減速するパターンRPである。
【0036】
目標パターンを生成すると、ECU31では、その目標パターンを走行状態に応じて区間分けを行う。走行状態としては、加速、減速、惰性走行、定常走行などがある。本実施の形態では上記したように加速と惰性走行から目標パターンとしているので、加速区間(速度を上げる区間)と惰性走行区間(実質的にころがり抵抗のみで惰性走行する区間)に分ける。図3に示す例の場合、図2に示す目標パターンに基づいて、コーナに進入するまでの加速区間とコーナ進入後からの惰性走行区間に分けられる。
【0037】
特に、ECU31では、運転者の操作特性を考慮して、目標パターンを生成あるいは理想の目標パターンから再生成する。ここでは、上記で説明したように理想の目標パターンを生成した後に運転者の操作特性を考慮した目標パターンを再生成する場合と最初から運転者の操作特性を考慮した目標パターンを生成する場合がある。
【0038】
具体的には、ECU31では、操作入力履歴データベース15から、これから走行する同じコースあるいはそのコースに類似するコースでのその運転者についてのアクセルペダル操作とブレーキペダル操作の入力履歴を取得する。その同じコースや類似するコースについて複数回分の操作入力履歴がある場合、その全ての操作入力履歴が取得される。
【0039】
そして、ECU31では、その抽出した操作入力履歴において、理想の目標パターンに追従するための支援制御に反する操作を行っている部分があるか否かを判定し、反操作を行っている部分がある場合にはその位置情報などを抽出する。例えば、図3に示すように、惰性走行区間において、エンジン及びモータ共に停止であるが、運転者がコーナの立ち上がりの位置P1でアクセル操作(加速要求)を行っている場合にはそのアクセル操作が反操作となる。理想の目標パターンの場合、上記したようにコーナ進入後は惰性走行であるが、運転者によってはコーナから立ち上がるときにアクセルを踏んで加速する人がいる。そのとき、協調支援制御によってその加速を制限すると運転者が違和感を受けるので、そのような運転者個々の運転特性を考慮して支援を行わなければならない。
【0040】
ECU31では、その抽出した反操作情報に基づいて、反操作の頻度(反操作がどれだけあったか?)と共通性(いつも同じ位置で反操作を行っているか?)を抽出する。そして、ECU31では、その反操作の頻度と共通性から運転者の操作特性を認識する。例えば、運転者はあるコーナの立ち上がりの同じ位置でアクセル操作する傾向があると認識する。
【0041】
そして、ECU31では、その認識した運転者の操作特性を考慮して(拘束条件の一つとして)、目標タスクを極力達成できる範囲内で目標パターンを生成あるいは再生成する。本実施の形態では走行モードで燃費重視なので、燃費効果を妨げない最小限の範囲において(例えば、理想の目標パターンから平均速度を殆ど変えないという条件下で)、目標パターンを生成する。例えば、図3に示すように惰性走行区間において運転者がコーナの立ち上がりの位置P1でアクセル操作を必ず行うという操作特性を認識した場合、図4に示すように、理想の目標速度パターンにおいて惰性走行で減速するパターンRPに対して、コーナの立ち上がりの位置P1で加速するパターンAP2を入れる。したがって、この運転者の操作特性を考慮した目標速度パターンでは、加速区間では加速するパターンAP1であり、惰性走行区間では惰性走行で減速するパターンRP1の後に加速するパターンAP2があり、その後に惰性走行で減速するパターンRP2があり、理想の目標速度パターンと比較すると最高速度を抑えて平均速度が同じなるようになっている。
【0042】
協調支援制御処理について説明する。走行中、ECU31では、一定時間毎に、アクセルペダル信号に示されるアクセル開度、ブレーキペダル信号に示されるブレーキ踏み込み量、車速信号に示される車速を取得する。そして、ECU31では、アクセル開度又はブレーキ踏み込み量と車速に基づいて運転者の入力要求加速度を推定する。また、ECU31では、一定時間毎に、ナビ情報信号から自車両の現在位置を取得する。これらの情報を取得する毎に、ECU31では、走行コース別に、現在位置に対応付けてアクセル開度、ブレーキ踏み込み量、車速などの情報を操作入力履歴データベース15に格納する。
【0043】
ECU31では、一定時間毎に、現在位置が加速区間かあるいは惰性走行区間かを判定する。この加速区間かあるいは惰性走行区間かによって、図5に示すように、支援制御を切り替える。
【0044】
加速区間の場合、ECU31では、一定時間毎に、目標パターンでの目標加速度が運転者の入力要求加速度より大きいか否かを判定する。目標加速度が入力要求加速度より大きい場合、その小さい入力要求加速度に応じて加速すると運転者が設定した目標タスクを達成することが困難になるので、安全性を十分に確保しかつ運転者が違和感を受けない範囲で運転者の入力要求加速度に対して嵩上げする加速アシストを行う。具体例として、ECU31では、アクセル開度−要求加速度マップのゲインを上げ、運転者によって入力されたアクセル開度に対して通常よりも大きな要求加速度を設定し、その要求加速度を達成するために必要なモータ駆動目標トルク及びスロットルバルブの目標開度を設定し、モータ駆動制御信号をインバータ22に送信するとともにエンジン制御信号をスロットルアクチュエータ20に送信する。なお、モータのみで要求加速度を達成できる場合にはモータ駆動目標トルクのみを設定しかつスロットルバルブの目標開度に0を設定し(エンジン停止)、モータのみで要求加速度を達成できない場合にはモータ駆動目標トルクを最大に設定しかつその残りの要求加速度に必要なスロットルバルブの目標開度を設定する。
【0045】
一方、目標加速度が入力要求加速度以下の場合、その大きい入力要求加速度に応じて加速すると運転者が設定した目標タスクを達成することが困難になるので、安全性を十分に確保しかつ運転者が違和感を受けない範囲で運転者の入力要求加速度に対して制限(又は抑制)するムダ加速制限(抑制)を行う。具体例として、ECU31では、アクセル開度−要求加速度マップのゲインを下げ、運転者によって入力されたアクセル開度に対して通常よりも小さい要求加速度を設定し、その要求加速度を達成するために必要なモータ駆動目標トルク及びスロットルバルブの目標開度を設定し、モータ駆動制御信号をインバータ22に送信するとともにエンジン制御信号をスロットルアクチュエータ20に送信する。
【0046】
惰性走行区間の場合、ECU31では、一定時間毎に、アクセルペダル信号に示されるアクセル開度に基づいて、運転者がアクセルをONしているか否かを判定する。アクセルをONしている場合、基本的には惰性走行区間においては加速する必要がないので(加速しなくても十分に設定した目標タスクを達成することができるので)、運転者の入力要求加速度に対して積極的に制限(抑制)する加速制限(抑制)を行う。具体例として、ECU31では、アクセル開度−要求加速度マップのゲインを大幅に下げ、運転者によって入力されたアクセル開度に対して通常よりも大幅に小さい要求加速度を設定し、その要求加速度を達成するために必要なモータ駆動目標トルク及びスロットルバルブの目標開度を設定し、モータ駆動制御信号をインバータ22に送信するとともにエンジン制御信号をスロットルアクチュエータ20に送信する。
【0047】
但し、運転者の操作特性を考慮して惰性走行区間に加速パターンが挿入されている場合があるので、その加速パターンがある区間で運転者がアクセルをONしているときには、上記の加速区間と同様の支援制御を行う。
【0048】
一方、アクセルをOFFしている場合、惰性走行支援を行う。具体的には、ECU31では、モータ駆動目標トルクとして0(モータ停止)及びスロットルバルブの目標開度として0(エンジン停止)を設定し、モータ駆動制御信号をインバータ22に送信するとともにエンジン制御信号をスロットルアクチュエータ20に送信する。
【0049】
上記の支援制御において加速制限(抑制)を行う場合、燃費を向上させるために、モータ走行での上限加速度に基づいて、極力モータのみで加速できる範囲内で加速制限を行う。
【0050】
なお、この目標パターンを用いた協調支援制御については、上記の方法以外にも様々な方法が適用可能である。また、惰性走行時やモータのみの走行時には、上記のようにエンジン停止でもよいし、あるいは、変速をニュートラルにしてエンジンと駆動輪との接続を切ってもよい。
【0051】
図1を参照して、運転支援装置1における動作について説明する。特に、ECU31における処理については図6のフローチャートに沿って説明する。図6は、第1の実施の形態に係るECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。なお、運転者は、走行前に、目的地、到着時間、燃費重視などの目標タスクを入力している。
【0052】
アクセルペダルセンサ10では、一定時間毎に、アクセル開度を検出し、アクセルペダル信号をECU31に送信している。ブレーキペダルセンサ11では、一定時間毎に、ブレーキペダルの踏み込み量を検出し、ブレーキペダル信号をECU31に送信している。車速センサ12では、一定時間毎に、車速を検出し、車速信号をECU31に送信している。ナビゲーション装置13では、一定時間毎に、現在位置などを計算し、ナビ情報信号をECU31に送信している。ECU31では、その各信号を受信し、各情報を取得している。そして、ECU31では、走行コース別に、現在位置に対応付けてアクセル開度、ブレーキ踏み込み量、車速などの情報を操作入力履歴データベース15に格納する。
【0053】
目的地に至る過程での所定範囲毎に、ECU31では、操作入力履歴データベース15からその所定範囲における運転者の操作入力履歴を取得するとともに(S10)、地図データベース14からその所定範囲における道路地図情報を取得する。そして、ECU31では、その操作入力履歴から理想の目標パターンによる支援制御に対する反操作を抽出し、その抽出結果から導出した反操作の頻度と共通性に基づいて運転者の操作特性を認識する(S11)。さらに、ECU31では、その認識した運転者の操作特性を考慮して、取得して道路地図情報に基づいて目標タスクを達成するための目標パターンを生成あるいは再生成する(S12)。そして、ECU31では、その目標パターンに基づいて区間分けする。
【0054】
運転支援装置1では、この生成した目標パターンや区間分けなどを運転者に対して情報提供する。運転者は、基本的には、この目標パターンに追従するように運転操作を行う。
【0055】
走行中、一定時間毎に、ECU31では、アクセル開度又はブレーキ踏み込み量と車速に基づいて運転者の入力要求加速度を推定する。また、ECU31では、現在位置が加速区間か否かを判定する。加速区間と判定した場合、ECU31では、目標パターンにおける現在位置での目標加速度が運転者の入力要求加速度よりも大きいか否かを判定する。目標加速度が入力要求加速度よりも大きいと判定した場合、ECU31では、加速アシストにより運転者のアクセル開度に対して通常よりも大きな要求加速度を設定し、その要求加速度に基づいてモータ駆動目標トルクとスロットルバルブの目標開度を設定し、モータ駆動制御信号をインバータ22に送信するとともにエンジン制御信号をスロットルアクチュエータ20に送信する(S13)。一方、目標加速度が入力要求加速度以下と判定した場合、ECU31では、ムダ加速制限により運転者のアクセル開度に対して通常よりも小さな要求加速度を設定し、その要求加速度に基づいてモータ駆動目標トルクとスロットルバルブの目標開度を設定し、モータ駆動制御信号をインバータ22に送信するとともにエンジン制御信号をスロットルアクチュエータ20に送信する(S13)。
【0056】
惰性走行区間と判定した場合、ECU31では、アクセルペダル信号に基づいて、アクセルONか否かを判定する。アクセルONと判定した場合、ECU31では、加速制限により運転者のアクセル開度に対して通常よりも大幅に大きな要求加速度を設定し、その要求加速度に基づいてモータ駆動目標トルクとスロットルバルブの目標開度を設定し、モータ駆動制御信号をインバータ22に送信するとともにエンジン制御信号をスロットルアクチュエータ20に送信する(S13)。この際、惰性走行区間にもかかわらず目標車速パターンに加速パターンが設定されている場合、ECU31では、上記の加速区間と同様の支援制御を行う(S13)。アクセルOFFと判定した場合、ECU31では、惰性走行支援によりモータ駆動目標トルクとスロットルバルブの目標開度を共に0に設定し、モータ駆動制御信号をインバータ22に送信するとともにエンジン制御信号をスロットルアクチュエータ20に送信する(S13)。
【0057】
スロットルアクチュエータ20では、エンジン制御信号を受信すると、エンジン制御信号に示される目標開度に応じて作動し、スロットルバルブの開度を調整する。これに応じて、エンジンが駆動し、車両が加速(あるいは、定速走行)する。但し、惰性走行やモータのみで走行する場合、エンジンは停止する。ブレーキアクチュエータ21では、ブレーキ制御信号を受信すると、ブレーキ制御信号に示される目標ブレーキ油圧に応じて作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。これによって、各輪のブレーキが作動し、車両が減速する。インバータ22では、モータ駆動制御信号を受信すると、モータ駆動制御信号に示されるモータ駆動目標トルクに応じて交流電力をモータに供給する。これによって、モータが駆動し、車両が加速(あるいは、定速走行)する。但し、惰性走行する場合、モータは停止し、減速する。
【0058】
この運転支援装置1によれば、運転者の操作特性(操作入力の履歴)を考慮して目標パターンを生成(再生成)することにより、その目標パターンを用いた支援によって運転者が受ける違和感を抑制することができる。理想の目標パターンに合わないような操作特性を持つ運転者に対しても、運転者の操作特性を反映した目標パターンを用いることにより、その運転者の操作特性にできるだけ合うような適切な協調支援制御を行うことができる。目標パターンに中に運転者の操作特性が反映されているので、最初から最後まで目標パターンに従って走行できるので、目標パターンを設定するときの目標タスクの低燃費などの走行条件を極力達成することができる。
【0059】
図1〜図3を参照して、第2の実施の形態に係る運転支援装置2について説明する。運転支援装置2は、第1の実施の形態に係る運転支援装置1と比較すると、運転者の操作特性を考慮して目標パターンを生成(再生成)するのではなく、理想の目標パターンを用いて協調支援制御を行う際に運転者の操作特性を考慮して支援制御を切り替える点が異なる。ここでは、第1の実施の形態に係る運転支援装置1のECU31と処理が異なるECU32についてのみ説明する。
【0060】
ECU32は、CPU、ROM、RAM等からなる電子制御ユニットであり、運転支援装置2を統括制御する。ECU32では、第1の実施の形態に係るECU31と比較すると、目標パターン生成処理と協調支援制御処理の一部の処理が異なるので、その各処理について説明する。
【0061】
目標パターン生成処理について説明する。ECU32では、ECU31で説明した同様の処理により、理想の目標パターンを生成し、その目標パターンに基づいて区間分けする。したがって、この目標パターン生成処理では、ECU31で行った運転者の操作入力履歴の取得、操作特性の認識、操作特性を考慮した目標パターンの生成(再生成)は行われない。
【0062】
協調支援制御処理について説明する。走行中、ECU32では、一定時間毎に、ECU31と同様の処理により、アクセル開度、ブレーキ踏み込み量、車速及び現在位置を取得し、アクセル開度又はブレーキ踏み込み量と車速に基づいて運転者の入力要求加速度(基準値)を推定する。また、ECU32では、一定時間毎に、ECU31と同様の処理により、走行コース別に、現在位置に対応付けてアクセル開度、ブレーキ踏み込み量、車速などの情報を操作入力履歴データベース15に格納する。
【0063】
また、ECU32では、操作入力履歴データベース15から、これから走行する同じコースあるいはそのコースに類似するコースでのその運転者についてのアクセルペダル操作とブレーキペダル操作の入力履歴を取得する。
【0064】
ECU32では、一定時間毎に、ECU31と同様の処理により、現在位置が加速区間かあるいは惰性走行区間かを判定する。
【0065】
加速区間の場合、ECU32では、一定時間毎に、実際の運転者のブレーキ踏み込み量やブレーキペダル操作の入力履歴に基づいて、ブレーキ入力傾向があるか否かを判定する。このブレーキ入力傾向の判定では、実際に運転者がブレーキONした場合が最優先で入力傾向があると判定し、実際にブレーキONでない場合でもブレーキペダル操作の入力履歴に基づいてその位置でのブレーキONの頻度などに基づいてブレーキ入力傾向を判定する。
【0066】
ブレーキ入力傾向がある場合、ECU32では、加速アシストをOFFし、そのときのブレーキ踏み込み量に応じて要求減速度を設定し、その要求減速度に基づいて目標ブレーキ油圧を設定し、ブレーキ制御信号をブレーキアクチュエータ21に送信する。
【0067】
ブレーキ入力傾向がない場合、ECU32では、ECU31での加速区間での支援制御と同様に、目標加速度が入力要求加速度よりも大きい場合には加速アシスト制御を行い、目標加速度が入力要求加速度以下の場合にはムダ加速制限を行う。
【0068】
惰性走行区間の場合、ECU32では、一定時間毎に、上記と同様に、実際の運転者のブレーキ踏み込み量やブレーキペダル操作の入力履歴に基づいて、ブレーキ入力傾向があるか否かを判定する。
【0069】
ブレーキ入力傾向がある場合、ECU32では、惰性走行支援をOFFし、そのときのブレーキ踏み込み量に応じて要求減速度を設定し、その要求減速度に基づいて目標ブレーキ油圧を設定し、ブレーキ制御信号をブレーキアクチュエータ21に送信する。
【0070】
ブレーキ入力傾向がない場合、ECU32では、実際の運転者のアクセル開度やアクセルペダル操作の入力履歴に基づいて、アクセル入力傾向があるか否かを判定する。このアクセル入力傾向の判定では、実際に運転者がアクセルONした場合が最優先で入力傾向があると判定し、実際にアクセルONでない場合でもアクセルペダル操作の入力履歴に基づいてその位置でのアクセルONの頻度などに基づいてアクセル入力傾向を判定する。
【0071】
アクセル入力傾向がある場合、ECU32では、加速制限をOFFし、そのときのアクセル開度に応じて要求加速度を設定し、その要求加速度を達成するために必要なモータ駆動目標トルク及びスロットルバルブの目標開度を設定し、モータ駆動制御信号をインバータ22に送信するとともにエンジン制御信号をスロットルアクチュエータ20に送信する。
【0072】
アクセル入力傾向がない場合、ECU32では、ECU31での惰性走行区間での支援制御と同様に、惰性走行支援を行う。
【0073】
図1を参照して、運転支援装置2における協調支援制御時の動作について説明する。特に、ECU32における処理については図7のフローチャートに沿って説明する。図7は、第2の実施の形態に係るECUにおける協調支援制御処理の流れを示すフローチャートである。なお、運転者は、走行前に、目的地、到着時間、燃費重視などの目標タスクを入力している。
【0074】
各センサ10,11,12及びナビゲーション装置13では、第1の実施の形態に係る運転支援装置1で説明した同様の動作をしている。ECU32では、その各信号を受信し、各情報を取得している。そして、ECU32では、走行コース別に、現在位置に対応付けてアクセル開度、ブレーキ踏み込み量、車速などの情報を操作入力履歴データベース15に格納する。
【0075】
目的地に至る過程での所定範囲毎に、ECU32では、地図データベース14からその所定範囲に必要な道路情報を取得する。そして、ECU32では、取得して道路情報に基づいて目標タスクを達成するための最適な理想の目標パターンを生成し、その目標パターンに基づいて区間分けする。
【0076】
走行中、一定時間毎に、ECU32では、アクセル開度又はブレーキ踏み込み量と車速に基づいて運転者の入力要求加速度(基準値)を推定する。また、ECU32では、操作入力履歴データベース15から所定範囲での運転者の操作入力履歴を取得する。
【0077】
そして、ECU32では、現在位置が加速区間か否かを判定する(S20)。S20にて加速区間と判定した場合、ECU32では、実際のブレーキ踏み込み量やブレーキ操作の入力履歴に基づいて、運転者にブレーキ入力傾向があるか否かを判定する(S21)。S21にてブレーキ入力傾向があると判定した場合、ECU32では、加速アシストをOFFし、そのブレーキ入力傾向におけるブレーキ踏み込み量に応じて要求減速度を設定し、その要求減速度に基づいて目標ブレーキ油圧を設定し、ブレーキ制御信号をブレーキアクチュエータ21に送信する(S22)。
【0078】
S21にてブレーキ入力傾向がないと判定した場合、ECU32では、目標パターンにおける現在位置での目標加速度が運転者の入力要求加速度よりも大きいか否かを判定する(S23)。S23にて目標加速度が入力要求加速度よりも大きいと判定した場合、ECU32では、加速アシストにより運転者のアクセル開度に対して通常よりも大きな要求加速度を設定し、その要求加速度に基づいてモータ駆動目標トルクとスロットルバルブの目標開度を設定し、モータ駆動制御信号をインバータ22に送信するとともにエンジン制御信号をスロットルアクチュエータ20に送信する(S24)。目標加速度が入力要求加速度以下と判定した場合、ECU32では、ムダ加速制限により運転者のアクセル開度に対して通常よりも小さな要求加速度を設定し、その要求加速度に基づいてモータ駆動目標トルクとスロットルバルブの目標開度を設定し、モータ駆動制御信号をインバータ22に送信するとともにエンジン制御信号をスロットルアクチュエータ20に送信する(S25)。
【0079】
S20にて加速区間でないと判定した場合、ECU32では、現在位置が惰性走行区間か否かを判定する(S26)。S26にて惰性走行区間と判定した場合、ECU32では、実際のブレーキ踏み込み量やブレーキ操作の入力履歴に基づいて、運転者のブレーキ入力傾向があるか否かを判定する(S27)。S27にてブレーキ入力傾向があると判定した場合、ECU32では、惰性走行支援をOFFし、そのブレーキ入力傾向におけるブレーキ踏み込み量に応じて要求減速度を設定し、その要求減速度に基づいて目標ブレーキ油圧を設定し、ブレーキ制御信号をブレーキアクチュエータ21に送信する(S28)。
【0080】
S27にてブレーキ入力傾向がないと判定した場合、ECU32では、実際のアクセル開度やアクセル操作の入力履歴に基づいて、運転者のアクセル入力傾向があるか否かを判定する(S29)。S29にてアクセル入力傾向があると判定した場合、ECU32では、加速制限をOFFし、そのアクセル入力傾向におけるアクセル開度に応じて要求加速度を設定し、その要求加速度を達成するために必要なモータ駆動目標トルク及びスロットルバルブの目標開度を設定し、モータ駆動制御信号をインバータ22に送信するとともにエンジン制御信号をスロットルアクチュエータ20に送信する(S30)。
【0081】
S30にてアクセル入力傾向がないと判定した場合、ECU32では、惰性走行支援によりモータ駆動目標トルクとスロットルバルブの目標開度を共に0に設定し、モータ駆動制御信号をインバータ22に送信するとともにエンジン制御信号をスロットルアクチュエータ20に送信する(S31)。
【0082】
スロットルアクチュエータ20、ブレーキアクチュエータ21及びインバータ22では、第1の実施の形態に係る運転支援装置1で説明した同様の動作を行う。
【0083】
この運転支援装置2によれば、運転者の操作傾向に基づいて目標パターンを用いた協調支援制御のON/OFFを切り替えることにより、その目標パターンを用いた支援によって運転者が受ける違和感を抑制することができる。特に、運転者の運転特性を考慮するために目標パターンを再生成しないので、演算負荷の増大を抑制することができる。
【0084】
なお、上記のように、理想の目標パターンを用いて協調支援制御を行い、運転者の操作特性(アクセルの入力傾向、ブレーキの入力傾向など)に応じて制御を切り替えてもなおも運転者が反操作を行う場合には、第1の実施の形態で説明した運転者の操作特性を考慮して目標パターンを再生成するようにすればよい。このように構成することにより、運転者の違和感の抑制、演算負荷の抑制及び燃費の抑制において最も理想的な構成となる。
【0085】
図1、図3及び図8を参照して、第3の実施の形態に係る運転支援装置3について説明する。図8は、惰性走行区間における運転者のアクセル入力傾向の一例であり、(a)が運転者のアクセル操作に応じた要求加速度と実際の加速度の時間変化の一例であり、(b)が運転者のアクセル開度の時間変化の一例である。
【0086】
運転支援装置3は、第1の実施の形態に係る運転支援装置1や第2の実施の形態に係る運転支援装置2と比較すると、目標パターンを生成するときに利用する場合や協調支援制御において制御を切り替える場合に利用する運転者の操作特性の抽出方法が異なる。ここでは、第1の実施の形態に係る運転支援装置1のECU31や第2の実施の形態に係る運転支援装置2のECU32と処理が異なるECU33についてのみ説明する。
【0087】
ECU33は、CPU、ROM、RAM等からなる電子制御ユニットであり、運転支援装置3を統括制御する。ECU33では、第1の実施の形態に係るECU31や第2の実施の形態に係るECU32と比較すると、目標パターン生成処理と協調支援制御処理の一部の処理及び操作特性抽出処理が異なるので、その各処理について説明する。
【0088】
操作特性抽出処理について説明する。ここでは、図3に示すような惰性走行区間において、運転者がコーナの立ち上がりの位置P1などでアクセル操作(加速意志)を行うアクセル操作特性を抽出する場合である。
【0089】
ECU33では、まず、惰性走行区間における運転者のアクセル入力傾向の各要素を抽出する。惰性走行区間では、運転者がアクセル操作を行うと加速制限がかかるので、それに対するアクセルの入力傾向を抽出する。
【0090】
具体的には、ECU33では、惰性走行中、実際の加速度から、加速制限(モータの上限加速度の範囲内での加速に制限)をかけている時間を抽出する。自車両の実際の加速度は、車速センサ12で検出される車速を時間微分してもよいし、あるいは、加速度センサを搭載する構成としてもよい。さらに、ECU33では、アクセルペダル信号から得られるアクセル開度から、加速制限をかけている間に運転者がアクセルを踏み増している時間とアクセルを踏み増した回数を抽出する。また、ECU33では、実際の加速度と運転者による入力要求加速度から、加速制限をかけている間における実加速度と入力要求加速度との乖離度(積算値と最大値)を抽出する。この各要素の抽出では、次回の目標パターンを生成する際に操作特性を反映させる場合には一つの惰性走行区間の全てのアクセル入力データから各要素を抽出し、協調支援制御中に瞬時的に操作特性を反映させる場合には協調支援制御中の惰性走行区間で入力される一つ一つのアクセル入力で各要素を抽出する。
【0091】
図8に示す例では、ある惰性走行区間における運転者のアクセル入力傾向の一例を示しており、(a)図における実線RAが運転者の入力要求加速度の時間変化であり、一点鎖線PAが加速制限された実際の加速度の時間変化であり、(b)図における実線ADが運転者によるアクセル開度の時間変化である。この例の場合、時間T1,T2,T3で示す区間が加速制限をかけている時間である。また、アクセル開度の時間変化ADにおいて、加速制限されているときの山の個数がアクセルを踏み増した回数であり、その各山の上り区間がアクセルを踏み増している時間である。また、入力要求加速度の時間変化RAと実際の加速度の時間変化PAにおいて、加速制限されているときの入力要求加速度と実際の加速度との差の最大値MXや入力要求加速度と実際の加速度との間の差の積算値AU(斜線で示す領域)が実加速度と入力要求加速度との乖離度である。
【0092】
次に、ECU33では、抽出したアクセル入力傾向の各要素を用いて、運転者のアクセル操作特性(加速意思の有無)を判断する。具体的には、ECU33では、要素毎に最大値や平均値を計算する。この各要素の最大値や平均値から、運転者のおおよその操作特性を判断することが可能であるが、運転者の操作特性は個人によって異なり、これだけでは正確な判断ができない場合がある。そこで、ECU33では、各要素の相関値を計算する。相関値としては、例えば、加速制限をかけている間にアクセルを踏み増している時間を加速制限をかけている時間で除算した相関値があり、この相関値を利用することにより加速制限をかけている間に運転者がアクセルを踏み増している割合も判断できる。
【0093】
ECU33では、各要素の最大値や平均値、要素間の相関値を、運転者が加速意志とみなすための判定値である閾値や範囲でそれぞれ比較する。この加速意志の判断基準である閾値や範囲については、実車実験やシミュレーションなどによって予め設定しておく。さらに、これらの閾値や範囲については、運転者毎に学習し、学習結果で更新するようにしてもよい。
【0094】
ECU33では、各要素の最大値や平均値、要素間の相関値が閾値より大きい場合や範囲外の場合には運転者の加速意志ありと判定し、閾値以下の場合や範囲内の場合には運転者の加速意志なしと判定する。そして、ECU33では、走行コース別に、現在位置に対応付けてアクセル開度、ブレーキ踏み込み量などの情報を操作入力履歴データベース15に格納するときにその判定結果も対応付けて操作入力履歴データベース15に格納する。また、ECU33では、協調支援制御中に瞬時的にその操作特性を利用する場合には、その判定結果を協調支援制御中の入力傾向の判定に用いる。なお、各要素の最大値や平均値及び要素間の相関値の全てが閾値より大きい場合や範囲外の場合に加速意志ありと判断してもよいし、各要素の最大値や平均値及び要素間の相関値の中で優先度を設け、優先度の高いものが閾値より大きい場合や範囲外の場合に加速意志ありと判断してもよい。
【0095】
目標パターン生成処理について説明する。ECU33では、ECU31で説明した同様の処理により、理想の目標パターンを生成する。あるいは、ECU33では、運転者のアクセル操作特性を考慮して、目標パターンを生成又は再生成する。この際、過去の走行において操作特性抽出処理で抽出したアクセル操作特性を利用する。例えば、惰性走行区間で「加速意思あり」と判定されている位置では「加速制限」を外すたりあるいは惰性走行区間から加速区間に替えるなどする。そのために、ECU33では、目標パターンを生成するときに、操作入力履歴データベース15から、これから走行する同じコースあるいはそのコースに類似するコースの各位置での操作特性(加速意志あり、加速意志なし)を取得する。
【0096】
協調支援制御処理について説明する。ECU33では、ECU31で説明した同様の処理により、運転者のアクセル操作特性を考慮した目標パターンを用いて協調支援制御を行う。あるいは、ECU33では、ECU32で説明した同様の処理により、理想の目標パターンを用いて協調支援制御を行う際に運転者の操作特性を考慮して支援制御を切り替える。この際、ECU32で説明した処理によって運転者のアクセル入力傾向を判定するのでなく、瞬時的に操作特性抽出処理で抽出した操作特性(加速意志あり、加速意志なし)を利用してアクセル入力傾向を判定する。例えば、惰性走行区間で「加速意志あり」と判定した場合、その瞬間に「加速制限」を外す。
【0097】
図1を参照して、運転支援装置3における操作特性抽出時の動作について説明する。ここでは、ECU33における操作特性抽出処理についてのみ詳細に説明する。ECU33における操作特性抽出処理については図9のフローチャートに沿って説明する。図9は、第3の実施の形態に係るECUにおける操作特性抽出処理の流れを示すフローチャートである。
【0098】
惰性走行区間において、ECU33では、アクセル開度及び実際の加速度や運転者の入力要求加速度から、運転者のアクセル入力傾向の各要素(加速制限をかけている時間、加速制限をかけている間のアクセルの踏み増している時間、踏み増し回数や実加速度と入力要求加速度との乖離度など)を抽出する(S40)。そして、ECU33では、その抽出したアクセル入力傾向の各要素についての最大値、平均値や相関値を計算する(S41)。
【0099】
さらに、ECU33では、その計算した各要素についての最大値、平均値や相関値が閾値を超えるかを判定する(S42)。S42には閾値を超えると判定した場合、ECU33では、運転者に加速意志があると判定する(S43)。一方、S42には閾値以下と判定した場合、ECU33では、運転者に加速意志がなしと判定する(S44)。
【0100】
そして、ECU33では、この判定結果を現在位置に対応付けて操作入力履歴データベース15に格納したり(次回以降の目標パターンの生成に利用)、あるいは、協調支援制御の惰性走行区間でのアクセル入力傾向の判定に用いる。
【0101】
この運転支援装置3によれば、実際の車両の走行状態と運転者の入力操作から運転者のアクセル入力傾向の各要素を抽出して運転者のアクセル操作特性を判断することにより、運転者のアクセル操作特性を高精度に抽出することができる。この抽出した運転者の操作特性を用いて目標パターンを生成したりあるいは協調支援制御を行うことにより、その目標パターンを用いた支援によって運転者が受ける違和感を抑制することができる。
【0102】
図1、図3及び図10を参照して、第4の実施の形態に係る運転支援装置4について説明する。図10は、運転者のブレーキの踏み込み量、速度、横Gの時間変化の一例である。
【0103】
運転支援装置4は、第1の実施の形態に係る運転支援装置1や第2の実施の形態に係る運転支援装置2と比較すると、目標パターンを生成する場合に利用する運転者の操作特性の抽出方法が異なる。ここでは、第1の実施の形態に係る運転支援装置1のECU31や第2の実施の形態に係る運転支援装置2のECU32と処理が異なるECU34についてのみ説明する。
【0104】
ECU34は、CPU、ROM、RAM等からなる電子制御ユニットであり、運転支援装置4を統括制御する。ECU34では、第1の実施の形態に係るECU31や第2の実施の形態に係るECU32と比較すると、目標パターン生成処理の一部の処理及び操作特性抽出処理が異なるので、その処理についてのみ説明する。
【0105】
操作特性抽出処理について説明する。ここでは、図3に示すような惰性走行区間において、運転者がコーナに進入する手前の位置P2などでブレーキ操作(減速意志)を行うブレーキ操作特性を抽出する場合である。理想の目標パターンの場合、運転者によってはコーナに進入するときの速度が高すぎるために、ブレーキを踏んで減速する人がいる。しかし、燃費走行を考えた場合、理想の目標パターンでの走行に誘導した結果、運転者にブレーキを踏まれて減速されてしまっては、そこに至る加速自体が無駄になり、燃費が悪化してしまう(例えば、惰性走行区間で減速したので、図3のgoalに到達するためには惰性走行区間での加速が必要となる)。したがって、そのような運転者に対しては、コーナ手前でブレーキを踏まないように、コーナ手前での速度が低くなるような目標パターンとする必要がある。例えば、コーナ手前で運転者が強めにブレーキを踏み込んだ場合、理想の目標パターンは運転者の感覚とはかなり乖離があり、積極的に目標パターンを変える必要がある。また、コーナ手前で単純に運転者が浅くブレーキを踏んだ場合、運転者に恐怖感を与えない程度に目標パターンを変える。
【0106】
ECU34では、まず、惰性走行区間における運転者のブレーキ入力時の各要素を抽出する。具体的には、ECU34では、ブレーキペダル信号から得られるブレーキ踏み込み量に基づいて、ブレーキがONか否かを判定する。ブレーキONの場合、ECU34では、そのときのブレーキ踏み込み量を抽出する。さらに、ブレーキONの場合、ECU34では、ナビ情報信号から得られる現在位置を抽出するとともに、車速信号から得られる車速(通過速度)を抽出する。さらに、ブレーキONの場合、ECU34では、必要に応じて、横Gや曲率半径などを抽出する。
【0107】
図10には、図3の位置P2で運転者がブレーキ操作した場合の各要素の時間変化を示している。実線BCでブレーキ踏み込み量の時間変化を示しており、一点鎖線VCで通過速度の時間変化を示しており、破線GCで横Gあるいは曲率半径などの時間変化を示している。
【0108】
そして、ECU34では、その抽出したブレーキ入力時の各要素を用いて、運転者のブレーキ操作特性を判断する。具体的には、ECU34では、まず、ブレーキ踏み込み量から、そのときのブレーキの重要度(目標パターン生成用のパラメータに対する係数など)を計算する。ここでは、運転者のブレーキの踏み込み状況から、目標パターンをどの程度変える必要があるかを重要度として抽出する。具体的な計算方法としては、例えば、パラメータに対する係数Aの場合、係数A=α×ブレーキ踏み込み量の最大値+β×ブレーキ踏み込み量の積算値で計算する。この係数Aは、0〜1の範囲で、最大が1になるような値に設定する。α、βは、係数Aがそのような値になるように、実験やシミュレーションなどによって調整される。図10に示す例の場合、ブレーキ踏み込み量の変化BCにおける最大値MXや斜線の領域AUで示す踏み込み量の積算値を用いて重要度を計算する。なお、重要度の計算方法については、上記の計算式以外にも適用可能であり、例えば、ブレーキ踏み込み量の最大値や積算値の他にも踏み込み速度や踏み込み加速度などの他の値も用いた計算式とする。
【0109】
そして、ECU34では、重要度を用いて、目標パターンを生成するときの拘束条件となるパラメータ(コーナでの上限速度、上限横Gなど)を再設定し、その再設定したパラメータを走行コーナ別に拘束条件として登録しておく。例えば、上限横Gを再設定する場合について説明する。今の目標パターンを生成したときの上限横GをG1、運転者がブレーキ入力したときに抽出した実際の横GをG2とし、再設定される上限横GをG1’とする。G1’=G1+係数A×(G2−G1)で計算される。
【0110】
なお、上記の説明では、運転者のブレーキ入力時の各要素から重要度を計算し、目標パラメータ生成用のパラメータを再設定することにより運転者のブレーキ操作特性を抽出したが、運転者のブレーキ入力時の各要素を用いて上記の方法以外の方法で運転者のブレーキ操作特性を抽出してもよい。例えば、第3の実施の形態のように、運転者の減速意志のある位置を抽出してもよく、その減速意志の中でも強い減速意思や弱い減速意志などを設定してもよい。また、コーナだけでなく、狭い道路や見通しの悪い道路などにおいて運転者のブレーキ入力が予測される場所にも適用できる。
【0111】
目標パターン生成処理について説明する。ECU34では、運転者のブレーキ操作特性を考慮して、目標パターンを生成又は再生成する。この際、過去の走行において操作特性抽出処理で再設定したパラメータを拘束条件として利用する。例えば、コーナで上限通過速度や上限横Gが低く値に再設定されている場合、その再設定された上限通過速度や上限横Gを拘束条件として用いることにより、コーナ手前での速度が低くなるような目標パターンを設定する。
【0112】
図1を参照して、運転支援装置4における操作特性抽出処理時の動作について説明する。特に、ECU34における処理については図11のフローチャートに沿って説明する。図11は、第4の実施の形態に係るECUにおける操作特性抽出処理の流れを示すフローチャートである。
【0113】
惰性走行区間において、ECU34では、一定時間毎に、実際のブレーキペダル踏み込み量から、運転者のブレーキ入力があるか否かを判定する(S50)。S50にてブレーキ入力がないと判定した場合、ECU34では、一定時間後に、再度、ブレーキ入力があるか否かを判定する(S50)。
【0114】
S50にてブレーキ入力があると判定した場合、ECU34では、運転者のブレーキ入力時の各要素(ブレーキ踏み込み量、位置、通過速度、横G、曲率半径など)を抽出する(S51)。そして、ECU34では、ブレーキ踏み込み量からブレーキの重要度を計算する(S52)。さらに、ECU34では、その重要度に応じて、目標パターン生成用のパラメータ(上限通過速度、上限横Gなど)を再設定し、その再設定したパラメータを登録する(S53)。
【0115】
そして、この再設定したパラメータは、次回同じコース又は類似のコースを走行するときの目標パターンの生成(再生成)に利用される。
【0116】
この運転支援装置4によれば、運転者のブレーキ入力時の各要素を抽出して運転者のブレーキ操作特性を反映した目標パターン生成用のパラメータを再設定することにより、運転者のブレーキ操作特性を高精度に抽出することができ、そのパラメータを利用することによって運転者の違和感を抑制した目標パターンを生成(再生成)することができる。この再設定したパラメータを用いて生成した目標パターンによって、運転者が普段のブレーキポイントでの通過速度が低下しており、惰性走行区間における運転者のブレーキ操作を抑制(防止)できるとともに、無駄な加速を抑制できる。
【0117】
なお、この第4の実施の形態に係る運転支援装置4で抽出される惰性走行区間でのブレーキ操作特性に加えて、第3の実施の形態に係る運転支援装置3で抽出される惰性走行区間でのアクセル操作特性も反映させて、目標パターンを生成(再生成)すると更に運転者の違和感を抑制した目標パターンによる支援制御が可能となる。
【0118】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0119】
例えば、本実施の形態では目標走行パターンを生成し、その目標走行パターンを用いて運転者の運転操作に対して支援する協調制御を行う運転支援装置に適用したが、目標走行パターンを生成する生成装置、目標走行パターンを生成し、その目標走行パターンを運転者に提供する情報提供装置などにも適用可能である。
【0120】
また、本実施の形態では動力源としてエンジンとモータを備えるハイブリッド車両に適用したが、動力源としてエンジンだけなど他の車両にも適用可能である。
【0121】
また、本実施の形態では目標速度パターンに追従するように協調支援制御を行う構成としたが、目標加速度パターンや目標操舵パターンなどの他の目標走行パターンに追従するように運転支援制御を行ってもよい。
【0122】
また、本実施の形態では目標パターンに基づいて走行状態を区間分けして協調支援制御を行う構成としたが、このような区間分け行わずに協調支援制御を行ってもよい。
【0123】
また、第4の実施の形態では運転者のブレーキ入力時の各要素を抽出して運転者のブレーキ操作特性を反映した目標パターン生成用のパラメータを再設定する構成としたが、同様にアクセル操作について、運転者のアクセル入力時の各要素を抽出して運転者のアクセル操作特性を反映した目標パターン生成用のパラメータを再設定することにより、運転者のアクセル操作特性を高精度に抽出でき、そのパラメータを利用することによって運転者の違和感を抑制した目標パターンを生成(再生成)することができる。
【符号の説明】
【0124】
1,2,3,4…運転支援装置、10…アクセルペダルセンサ、11…ブレーキペダルセンサ、12…車速センサ、13…ナビゲーション装置、14…地図データベース、15…操作入力履歴データベース、20…スロットルアクチュエータ、21…ブレーキアクチュエータ、22…インバータ、31,32,33,34…ECU。
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転支援装置には、走行予定経路の車速や加速度などの目標パターンを設定し、その目標パターンに従って走行するように運転支援制御を行うものがある。特に、燃費を重視した目標パターンには、加速と惰性走行を組み入れたパターンがある。例えば、特許文献1には、ハイブリッド車両に適用され、走行予定経路に対して無回生無加速走行パターンと加速走行パターンを組み入れた目標走行速度パターンを生成し、その目標走行速度パターンに基づいて車両の走行速度を制御することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−74337号公報
【特許文献2】特開2009−149286号公報
【特許文献3】特開2002−370560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように目標走行パターンに追従するように自動運転制御でなく、目標走行パターンを用いて運転者による操作に対して支援制御を行う場合、基本的には、運転者自らの操作によって目標走行速度パターンになるように速度調整を行う。しかし、運転者の運転操作特性と目標走行速度パターンとの乖離が大きい場合、支援制御によって運転者の運転感覚とは乖離した加速制限や加速アシストが行われるため、運転者が支援制御に対して違和感を受ける虞がある。例えば、燃費を重視した目標走行パターンにおける惰性走行区間において、運転者がコーナの立ち上がりで加速操作を行っても、その加速が支援制御によって制限されてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、目標走行パターンを用いた運転支援において運転者の受ける違和感を抑制する運転支援装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る運転支援装置は、走行予定経路の先読み情報に基づいて走行予定経路における目標走行パターンを設定し、当該目標走行パターンに追従するように運転支援を行う運転支援装置であって、運転者の運転操作の履歴に基づいて運転支援を行うことを特徴とする。
【0007】
この運転支援装置では、走行予定経路の先読み情報に基づいて、その走行予定経路を走行するための目標走行パターンを設定し、その目標走行パターンに追従するように運転支援を行う。特に、運転支援装置では、運転者の運転操作の履歴に基づいて運転支援を行う。これによって、通常設定される目標走行パターンに合わないような運転操作特性を持つ運転者に対しても、その運転者の運転操作特性が考慮された適切な運転支援を行うことができる。このように、運転支援装置では、運転者の運転操作の履歴を考慮して目標走行パターンを用いた運転支援を行うことにより、その運転支援によって運転者が受ける違和感を抑制することができる。
【0008】
なお、運転者の運転操作の履歴としては、過去に走行したときに収集された運転操作を蓄積したものでもよいし、走行中に収集される直前の運転操作でもよい。運転者の運転操作としては、例えば、ブレーキペダル操作、アクセスペダル操作、ハンドル操作がある。目標走行パターンとしては、例えば、目標速度パターン、目標加速度パターン、目標操舵パターンがある。先読み情報としては、例えば、走行予定経路の道路線形情報、道路勾配情報、路面μ情報、道路半径情報がある。
【0009】
本発明の上記運転支援装置では、運転者の運転操作の履歴に基づいて運転支援制御のON/OFFを切り替える構成としてもよい。
【0010】
この運転支援装置では、運転者の運転操作の履歴から運転者の運転操作傾向を認識し、その運転操作傾向に応じて、目標走行パターンに追従するために通常行う運転支援制御をそのまま行ったりあるいは止めたりする。このように、運転支援装置では、目標走行パターンを再設定するのでなく、運転者の運転操作の履歴に基づいて運転支援制御のON/OFFを切り替えるだけなので、目標走行パターンを再設定することによる演算負荷の増大を抑えつつ運転者が受ける違和感を抑制することができる。
【0011】
本発明の上記運転支援装置では、運転者の運転操作の履歴に基づいて目標走行パターンを設定する構成としてもよい。
【0012】
この運転支援装置では、運転者の運転操作の履歴から運転者の運転操作傾向を認識し、その運転操作傾向を考慮して目標走行パターンを設定(再設定)する。このように、運転支援装置では、運転者の運転操作の履歴に基づいて目標走行パターンを設定することにより、目標走行パターンに最初から運転者の運転操作傾向が考慮されているので、その目標走行パターンに追従するように運転支援を行うことによって運転者が受ける違和感を抑制できる。そのため、最初から最後まで目標走行パターンに従って走行できるので、目標走行パターンを設定するときの低燃費などの評価条件を達成することができる。
【0013】
本発明の上記運転支援装置では、運転者のブレーキペダル操作の履歴に基づいて運転支援を変更する構成としてもよい。特に、本発明の上記運転支援装置では、運転者のブレーキペダル操作の履歴に基づいて目標走行パターンを設定する際のパラメータを変更し、その変更したパラメータを用いて目標走行パターンを設定する。
【0014】
この運転支援装置では、運転者のブレーキ操作の履歴から運転者のブレーキ操作傾向を認識し、そのブレーキ操作傾向に応じて運転支援を変更する。このように、運転支援装置では、運転者のブレーキ操作傾向に応じて目標走行パターンを用いた運転支援を変更することにより、通常設定される目標走行パターンの目標速度が運転者の運転感覚を超えるような速度の場合でも運転者の運転感覚に合うような速度での運転支援が可能となる。さらに、この運転支援装置では、運転者のブレーキ操作傾向に応じてパラメータを変更し、その変更したパラメータを用いて目標走行パターンを設定し、その目標走行パターンに追従するように運転支援を行う。この目標走行パターンでは目標速度が運転者の運転感覚に合うような速度となっており、この目標走行パターンに基づく運転支援中に運転者がブレーキ操作を行うことを極力抑制できる。
【0015】
本発明の上記運転支援装置では、運転者のアクセルペダル操作の履歴に基づいて運転支援を変更する構成としてもよい。特に、本発明の上記運転支援装置では、運転者のアクセルペダル操作の履歴に基づいて目標走行パターンを設定する際のパラメータを変更し、その変更したパラメータを用いて目標走行パターンを設定する。
【0016】
この運転支援装置では、運転者のアクセル操作の履歴から運転者のアクセル操作傾向を認識し、そのアクセル操作傾向に応じて運転支援を変更する。このように、運転支援装置では、運転者のアクセル操作傾向に応じて目標走行パターンを用いた運転支援を変更することにより、通常設定される目標走行パターンの目標速度が運転者の運転感覚に合わないような速度の場合でも運転者の運転感覚に合うような速度での運転支援が可能となる。さらに、この運転支援装置では、運転者のアクセル操作傾向に応じてパラメータを変更し、その変更したパラメータを用いて目標走行パターンを設定し、その目標走行パターンに追従するように運転支援を行う。この目標走行パターンでは目標速度が運転者の運転感覚に合うような速度となっており、この目標走行パターンに基づく運転支援中に運転者がアクセル操作を行うことを極力抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、運転者の運転操作の履歴を考慮して目標走行パターンを用いた運転支援を行うことにより、その運転支援によって運転者が受ける違和感を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施の形態に係る運転支援装置の構成図である。
【図2】理想の目標速度パターンの一例である。
【図3】図2の目標速度パターンに従って区間分けした走行予定経路の一例である。
【図4】第1の実施の形態に係る運転者の運転操作特性を考慮した目標速度パターンの一例である。
【図5】目標パターンの各区間に応じた支援制御を示す表である。
【図6】第1の実施の形態に係るECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】第2の実施の形態に係るECUにおける協調支援制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】惰性走行区間における運転者のアクセル入力傾向の一例であり、(a)が運転者のアクセル操作に応じた入力要求加速度と実際の加速度の時間変化の一例であり、(b)が運転者のアクセル開度の時間変化の一例である。
【図9】第3の実施の形態に係るECUにおける操作特性抽出処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】運転者のブレーキの踏み込み量、速度、横Gの時間変化の一例である。
【図11】第4の実施の形態に係るECUにおける操作特性抽出処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る運転支援装置の実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
本実施の形態では、本発明に係る運転支援装置を、ハイブリッド車両に搭載され、運転者の操作入力から車両の出力までを電気的に制御するバイワイヤ方式で支援制御を行う運転支援装置に適用する。本実施の形態では、運転者が燃費重視を選択しており、低燃費を実現する目標パターンに基づいて運転者による操作と車両制御との協調制御での運転支援に適用する。本実施の形態に係る運転支援装置では、走行予定経路における低燃費の目標パターン(目標軌跡、目標速度パターン、目標加速度パターンなど)を生成し、運転者のアクセル操作又はブレーキ操作中に対して目標速度パターンで走行できるようにエンジン、モータ及びブレーキを制御する。本実施の形態には、目標速度パターンに用いた運転支援において運転者の運転操作特性を反映させる方法が異なる4つの実施の形態がある。
【0021】
図1〜図5を参照して、第1の実施の形態に係る運転支援装置1について説明する。図1は、本実施の形態に係る運転支援装置の構成図である。図2は、理想の目標速度パターンの一例である。図3は、図2の目標速度パターンに従って区間分けした走行予定経路の一例である。図4は、第1の実施の形態に係る運転者の運転操作特性を考慮した目標速度パターンの一例である。図5は、目標パターンの各区間に応じた支援制御を示す表である。
【0022】
運転支援装置1では、運転者によって目標タスク(目的地、到達時間、走行モードとして燃費重視など)が与えられると、目標パターンを生成する。そして、運転支援装置1では、運転者による運転操作で入力される要求加速度に応じて、目標パターンに追従するように速度制御を行う。特に、運転支援装置1では、運転者の操作入力履歴から運転者の操作特性を抽出し、その操作特性に反映させて目標パターン(特に、目標速度パターン)を生成/再生成する。
【0023】
運転支援装置1は、アクセルペダルセンサ10、ブレーキペダルセンサ11、車速センサ12、ナビゲーション装置13、地図データベース14、操作入力履歴データベース15、スロットルアクチュエータ20、ブレーキアクチュエータ21、インバータ22及びECU[Electronic Control Unit]31を備えている。
【0024】
アクセルペダルセンサ10は、アクセルペダル(図示せず)のアクセル開度(踏み込み量)を検出するセンサである。アクセルペダルセンサ10では、一定時間毎に、アクセル開度を検出し、その検出したアクセル開度をアクセルペダル信号としてECU31に送信する。
【0025】
ブレーキペダルセンサ11は、ブレーキペダル(図示せず)の踏み込み量を検出するセンサである。ブレーキペダルセンサ11では、一定時間毎に、ブレーキペダルの踏み込み量を検出し、その検出した踏み込み量をブレーキペダル信号としてECU31に送信する。
【0026】
車速センサ12は、自車両の速度を検出するためのセンサである。車速センサ12では、一定時間毎に、車速を検出し、その検出した車速を車速信号としてECU31に送信する。
【0027】
ナビゲーション装置13は、自車両の現在位置や進行方向を計算し、現在位置や進行方向を地図上に表示するとともに、目的地までの経路に従って案内を行う装置である。特に、ナビゲーション装置13では、現在位置などを含むナビ情報信号をECU31に送信する。なお、ナビゲーション装置が搭載されていない車両の場合、GPS受信装置などを利用して現在位置を取得する。
【0028】
地図データベース14は、道路地図情報を格納するデータベースである。道路地図情報としては、道路線形情報、道路勾配情報、道路曲率半径情報、路面μ情報などがある。この地図データベース14は、ナビゲーション装置13と共有されるデータベースとしてもよい。なお、道路地図情報を取得するための方法としては、地図データベース14以外にも、路車間通信を利用してインフラ情報から取得、車車間通信を利用して他車両から情報を取得するなどの方法がある。
【0029】
操作入力履歴データベース15は、運転者のアクセルペダル操作とブレーキペダル操作の入力履歴や操作入力傾向などを格納するデータベースである。操作入力履歴としては、走行コース毎に設けられ、コースの各位置でのアクセル開度とブレーキ踏み込み量が少なくとも含まれ、その他にも通過速度、横G、曲率半径などの情報も含まれる。同じ走行コースを複数回走行している場合、その複数回分の履歴が格納される。なお、同じ車両で複数の運転者が使用する場合、運転者を識別し、運転者毎に格納される。
【0030】
スロットルアクチュエータ20は、駆動源の一つであるエンジンのスロットルバルブの開度を調整するバイワイヤ方式のアクチュエータである。スロットルアクチュエータ20では、ECU31からのエンジン制御信号を受信すると、エンジン制御信号に示される目標開度に応じて作動し、スロットルバルブの開度を調整する。
【0031】
ブレーキアクチュエータ21は、各車輪のホイールシリンダのブレーキ油圧を調整するバイワイヤ方式のアクチュエータである。ブレーキアクチュエータ21では、ECU31からのブレーキ制御信号を受信すると、ブレーキ制御信号に示される目標ブレーキ油圧に応じて作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。
【0032】
インバータ22は、駆動源の1つであるモータの駆動と回生発電を電気的に制御するインバータである。インバータ22では、ECU31からのモータ駆動制御信号を受信すると、モータ駆動制御信号に示されるモータ駆動目標トルクに応じて、バッテリ(図示せず)に充電されている電力を直流から交流に変換し、その交流電力をモータに供給する。また、インバータ22では、ECU31からのモータ回生制御信号を受信すると、モータ回生制御信号に示されるモータ回生目標トルクに応じて、モータの回生発電による電力を交流から直流に変換し、その直流電力をバッテリに充電する。ちなみに、モータ駆動制御信号のモータ駆動トルク目標が0かつモータ回生制御信号のモータ回生トルク目標が0の場合、インバータ22では、モータを停止させる(駆動も回生を行わない状態)。
【0033】
ECU31は、CPU[CentralProcessing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]等からなる電子制御ユニットであり、運転支援装置1を統括制御する。ECU31では、一定時間毎に各センサ10〜12及びナビゲーション装置13からの各信号を受信するとともに、各データベース14,15から必要な情報を抽出する。そして、ECU31では、目標パターン生成処理、協調支援制御処理などを行い、必要に応じてスロットルアクチュエータ20、ブレーキアクチュエータ21、インバータ22に制御信号を送信する。
【0034】
目標パターン生成処理について説明する。ECU31では、現在位置から目的地までの各種道路情報(道路線形情報、道路勾配情報、道路曲率半径情報、路面μ情報など)を地図データベース14から取得する。そして、ECU31では、各種道路情報、目標パターンを生成するための各種パラメータ(拘束条件であり、コーナや直線路での上限速度、コーナでの上限横Gなど)に基づいて、目標タスクを達成するための最適な目標パターンを生成する。この目標パターンを生成方法としては、従来の方法を適用する。目標パターンは、目的地までの全域について生成してもよいし、あるいは、数分や数10分毎、数km毎あるいはコーナや赤信号までなどの所定の範囲毎に生成してもよい。なお、この目標タスクを達成するための最適な目標パターンは、理想の目標パターンである。
【0035】
生成される目標パターンは、位置(走行軌跡)、速度パターン、加速度パターン、ヨー角、ヨーレートなどの操舵パターンなどで構成される。本実施の形態では目標タスクにおいて燃費重視の走行モードとしているので、可能な限り燃費を向上させるために不必要な減速を避ける速度パターンとする必要がある(そもそも無駄な加速をしない)。そこで、目標パターンとして、加速と惰性走行(エンジン及びモータを停止し、エンジンブレーキも使用しないで、ころがり抵抗のみで減速する走行)からなるパターンとしている。図2には、あるコーナでの目標速度パターンの一例を示しており、コーナに進入するまでは加速するパターンAPであり、コーナ進入後からコーナ脱出後の直線路にかけて惰性走行で減速するパターンRPである。
【0036】
目標パターンを生成すると、ECU31では、その目標パターンを走行状態に応じて区間分けを行う。走行状態としては、加速、減速、惰性走行、定常走行などがある。本実施の形態では上記したように加速と惰性走行から目標パターンとしているので、加速区間(速度を上げる区間)と惰性走行区間(実質的にころがり抵抗のみで惰性走行する区間)に分ける。図3に示す例の場合、図2に示す目標パターンに基づいて、コーナに進入するまでの加速区間とコーナ進入後からの惰性走行区間に分けられる。
【0037】
特に、ECU31では、運転者の操作特性を考慮して、目標パターンを生成あるいは理想の目標パターンから再生成する。ここでは、上記で説明したように理想の目標パターンを生成した後に運転者の操作特性を考慮した目標パターンを再生成する場合と最初から運転者の操作特性を考慮した目標パターンを生成する場合がある。
【0038】
具体的には、ECU31では、操作入力履歴データベース15から、これから走行する同じコースあるいはそのコースに類似するコースでのその運転者についてのアクセルペダル操作とブレーキペダル操作の入力履歴を取得する。その同じコースや類似するコースについて複数回分の操作入力履歴がある場合、その全ての操作入力履歴が取得される。
【0039】
そして、ECU31では、その抽出した操作入力履歴において、理想の目標パターンに追従するための支援制御に反する操作を行っている部分があるか否かを判定し、反操作を行っている部分がある場合にはその位置情報などを抽出する。例えば、図3に示すように、惰性走行区間において、エンジン及びモータ共に停止であるが、運転者がコーナの立ち上がりの位置P1でアクセル操作(加速要求)を行っている場合にはそのアクセル操作が反操作となる。理想の目標パターンの場合、上記したようにコーナ進入後は惰性走行であるが、運転者によってはコーナから立ち上がるときにアクセルを踏んで加速する人がいる。そのとき、協調支援制御によってその加速を制限すると運転者が違和感を受けるので、そのような運転者個々の運転特性を考慮して支援を行わなければならない。
【0040】
ECU31では、その抽出した反操作情報に基づいて、反操作の頻度(反操作がどれだけあったか?)と共通性(いつも同じ位置で反操作を行っているか?)を抽出する。そして、ECU31では、その反操作の頻度と共通性から運転者の操作特性を認識する。例えば、運転者はあるコーナの立ち上がりの同じ位置でアクセル操作する傾向があると認識する。
【0041】
そして、ECU31では、その認識した運転者の操作特性を考慮して(拘束条件の一つとして)、目標タスクを極力達成できる範囲内で目標パターンを生成あるいは再生成する。本実施の形態では走行モードで燃費重視なので、燃費効果を妨げない最小限の範囲において(例えば、理想の目標パターンから平均速度を殆ど変えないという条件下で)、目標パターンを生成する。例えば、図3に示すように惰性走行区間において運転者がコーナの立ち上がりの位置P1でアクセル操作を必ず行うという操作特性を認識した場合、図4に示すように、理想の目標速度パターンにおいて惰性走行で減速するパターンRPに対して、コーナの立ち上がりの位置P1で加速するパターンAP2を入れる。したがって、この運転者の操作特性を考慮した目標速度パターンでは、加速区間では加速するパターンAP1であり、惰性走行区間では惰性走行で減速するパターンRP1の後に加速するパターンAP2があり、その後に惰性走行で減速するパターンRP2があり、理想の目標速度パターンと比較すると最高速度を抑えて平均速度が同じなるようになっている。
【0042】
協調支援制御処理について説明する。走行中、ECU31では、一定時間毎に、アクセルペダル信号に示されるアクセル開度、ブレーキペダル信号に示されるブレーキ踏み込み量、車速信号に示される車速を取得する。そして、ECU31では、アクセル開度又はブレーキ踏み込み量と車速に基づいて運転者の入力要求加速度を推定する。また、ECU31では、一定時間毎に、ナビ情報信号から自車両の現在位置を取得する。これらの情報を取得する毎に、ECU31では、走行コース別に、現在位置に対応付けてアクセル開度、ブレーキ踏み込み量、車速などの情報を操作入力履歴データベース15に格納する。
【0043】
ECU31では、一定時間毎に、現在位置が加速区間かあるいは惰性走行区間かを判定する。この加速区間かあるいは惰性走行区間かによって、図5に示すように、支援制御を切り替える。
【0044】
加速区間の場合、ECU31では、一定時間毎に、目標パターンでの目標加速度が運転者の入力要求加速度より大きいか否かを判定する。目標加速度が入力要求加速度より大きい場合、その小さい入力要求加速度に応じて加速すると運転者が設定した目標タスクを達成することが困難になるので、安全性を十分に確保しかつ運転者が違和感を受けない範囲で運転者の入力要求加速度に対して嵩上げする加速アシストを行う。具体例として、ECU31では、アクセル開度−要求加速度マップのゲインを上げ、運転者によって入力されたアクセル開度に対して通常よりも大きな要求加速度を設定し、その要求加速度を達成するために必要なモータ駆動目標トルク及びスロットルバルブの目標開度を設定し、モータ駆動制御信号をインバータ22に送信するとともにエンジン制御信号をスロットルアクチュエータ20に送信する。なお、モータのみで要求加速度を達成できる場合にはモータ駆動目標トルクのみを設定しかつスロットルバルブの目標開度に0を設定し(エンジン停止)、モータのみで要求加速度を達成できない場合にはモータ駆動目標トルクを最大に設定しかつその残りの要求加速度に必要なスロットルバルブの目標開度を設定する。
【0045】
一方、目標加速度が入力要求加速度以下の場合、その大きい入力要求加速度に応じて加速すると運転者が設定した目標タスクを達成することが困難になるので、安全性を十分に確保しかつ運転者が違和感を受けない範囲で運転者の入力要求加速度に対して制限(又は抑制)するムダ加速制限(抑制)を行う。具体例として、ECU31では、アクセル開度−要求加速度マップのゲインを下げ、運転者によって入力されたアクセル開度に対して通常よりも小さい要求加速度を設定し、その要求加速度を達成するために必要なモータ駆動目標トルク及びスロットルバルブの目標開度を設定し、モータ駆動制御信号をインバータ22に送信するとともにエンジン制御信号をスロットルアクチュエータ20に送信する。
【0046】
惰性走行区間の場合、ECU31では、一定時間毎に、アクセルペダル信号に示されるアクセル開度に基づいて、運転者がアクセルをONしているか否かを判定する。アクセルをONしている場合、基本的には惰性走行区間においては加速する必要がないので(加速しなくても十分に設定した目標タスクを達成することができるので)、運転者の入力要求加速度に対して積極的に制限(抑制)する加速制限(抑制)を行う。具体例として、ECU31では、アクセル開度−要求加速度マップのゲインを大幅に下げ、運転者によって入力されたアクセル開度に対して通常よりも大幅に小さい要求加速度を設定し、その要求加速度を達成するために必要なモータ駆動目標トルク及びスロットルバルブの目標開度を設定し、モータ駆動制御信号をインバータ22に送信するとともにエンジン制御信号をスロットルアクチュエータ20に送信する。
【0047】
但し、運転者の操作特性を考慮して惰性走行区間に加速パターンが挿入されている場合があるので、その加速パターンがある区間で運転者がアクセルをONしているときには、上記の加速区間と同様の支援制御を行う。
【0048】
一方、アクセルをOFFしている場合、惰性走行支援を行う。具体的には、ECU31では、モータ駆動目標トルクとして0(モータ停止)及びスロットルバルブの目標開度として0(エンジン停止)を設定し、モータ駆動制御信号をインバータ22に送信するとともにエンジン制御信号をスロットルアクチュエータ20に送信する。
【0049】
上記の支援制御において加速制限(抑制)を行う場合、燃費を向上させるために、モータ走行での上限加速度に基づいて、極力モータのみで加速できる範囲内で加速制限を行う。
【0050】
なお、この目標パターンを用いた協調支援制御については、上記の方法以外にも様々な方法が適用可能である。また、惰性走行時やモータのみの走行時には、上記のようにエンジン停止でもよいし、あるいは、変速をニュートラルにしてエンジンと駆動輪との接続を切ってもよい。
【0051】
図1を参照して、運転支援装置1における動作について説明する。特に、ECU31における処理については図6のフローチャートに沿って説明する。図6は、第1の実施の形態に係るECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。なお、運転者は、走行前に、目的地、到着時間、燃費重視などの目標タスクを入力している。
【0052】
アクセルペダルセンサ10では、一定時間毎に、アクセル開度を検出し、アクセルペダル信号をECU31に送信している。ブレーキペダルセンサ11では、一定時間毎に、ブレーキペダルの踏み込み量を検出し、ブレーキペダル信号をECU31に送信している。車速センサ12では、一定時間毎に、車速を検出し、車速信号をECU31に送信している。ナビゲーション装置13では、一定時間毎に、現在位置などを計算し、ナビ情報信号をECU31に送信している。ECU31では、その各信号を受信し、各情報を取得している。そして、ECU31では、走行コース別に、現在位置に対応付けてアクセル開度、ブレーキ踏み込み量、車速などの情報を操作入力履歴データベース15に格納する。
【0053】
目的地に至る過程での所定範囲毎に、ECU31では、操作入力履歴データベース15からその所定範囲における運転者の操作入力履歴を取得するとともに(S10)、地図データベース14からその所定範囲における道路地図情報を取得する。そして、ECU31では、その操作入力履歴から理想の目標パターンによる支援制御に対する反操作を抽出し、その抽出結果から導出した反操作の頻度と共通性に基づいて運転者の操作特性を認識する(S11)。さらに、ECU31では、その認識した運転者の操作特性を考慮して、取得して道路地図情報に基づいて目標タスクを達成するための目標パターンを生成あるいは再生成する(S12)。そして、ECU31では、その目標パターンに基づいて区間分けする。
【0054】
運転支援装置1では、この生成した目標パターンや区間分けなどを運転者に対して情報提供する。運転者は、基本的には、この目標パターンに追従するように運転操作を行う。
【0055】
走行中、一定時間毎に、ECU31では、アクセル開度又はブレーキ踏み込み量と車速に基づいて運転者の入力要求加速度を推定する。また、ECU31では、現在位置が加速区間か否かを判定する。加速区間と判定した場合、ECU31では、目標パターンにおける現在位置での目標加速度が運転者の入力要求加速度よりも大きいか否かを判定する。目標加速度が入力要求加速度よりも大きいと判定した場合、ECU31では、加速アシストにより運転者のアクセル開度に対して通常よりも大きな要求加速度を設定し、その要求加速度に基づいてモータ駆動目標トルクとスロットルバルブの目標開度を設定し、モータ駆動制御信号をインバータ22に送信するとともにエンジン制御信号をスロットルアクチュエータ20に送信する(S13)。一方、目標加速度が入力要求加速度以下と判定した場合、ECU31では、ムダ加速制限により運転者のアクセル開度に対して通常よりも小さな要求加速度を設定し、その要求加速度に基づいてモータ駆動目標トルクとスロットルバルブの目標開度を設定し、モータ駆動制御信号をインバータ22に送信するとともにエンジン制御信号をスロットルアクチュエータ20に送信する(S13)。
【0056】
惰性走行区間と判定した場合、ECU31では、アクセルペダル信号に基づいて、アクセルONか否かを判定する。アクセルONと判定した場合、ECU31では、加速制限により運転者のアクセル開度に対して通常よりも大幅に大きな要求加速度を設定し、その要求加速度に基づいてモータ駆動目標トルクとスロットルバルブの目標開度を設定し、モータ駆動制御信号をインバータ22に送信するとともにエンジン制御信号をスロットルアクチュエータ20に送信する(S13)。この際、惰性走行区間にもかかわらず目標車速パターンに加速パターンが設定されている場合、ECU31では、上記の加速区間と同様の支援制御を行う(S13)。アクセルOFFと判定した場合、ECU31では、惰性走行支援によりモータ駆動目標トルクとスロットルバルブの目標開度を共に0に設定し、モータ駆動制御信号をインバータ22に送信するとともにエンジン制御信号をスロットルアクチュエータ20に送信する(S13)。
【0057】
スロットルアクチュエータ20では、エンジン制御信号を受信すると、エンジン制御信号に示される目標開度に応じて作動し、スロットルバルブの開度を調整する。これに応じて、エンジンが駆動し、車両が加速(あるいは、定速走行)する。但し、惰性走行やモータのみで走行する場合、エンジンは停止する。ブレーキアクチュエータ21では、ブレーキ制御信号を受信すると、ブレーキ制御信号に示される目標ブレーキ油圧に応じて作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。これによって、各輪のブレーキが作動し、車両が減速する。インバータ22では、モータ駆動制御信号を受信すると、モータ駆動制御信号に示されるモータ駆動目標トルクに応じて交流電力をモータに供給する。これによって、モータが駆動し、車両が加速(あるいは、定速走行)する。但し、惰性走行する場合、モータは停止し、減速する。
【0058】
この運転支援装置1によれば、運転者の操作特性(操作入力の履歴)を考慮して目標パターンを生成(再生成)することにより、その目標パターンを用いた支援によって運転者が受ける違和感を抑制することができる。理想の目標パターンに合わないような操作特性を持つ運転者に対しても、運転者の操作特性を反映した目標パターンを用いることにより、その運転者の操作特性にできるだけ合うような適切な協調支援制御を行うことができる。目標パターンに中に運転者の操作特性が反映されているので、最初から最後まで目標パターンに従って走行できるので、目標パターンを設定するときの目標タスクの低燃費などの走行条件を極力達成することができる。
【0059】
図1〜図3を参照して、第2の実施の形態に係る運転支援装置2について説明する。運転支援装置2は、第1の実施の形態に係る運転支援装置1と比較すると、運転者の操作特性を考慮して目標パターンを生成(再生成)するのではなく、理想の目標パターンを用いて協調支援制御を行う際に運転者の操作特性を考慮して支援制御を切り替える点が異なる。ここでは、第1の実施の形態に係る運転支援装置1のECU31と処理が異なるECU32についてのみ説明する。
【0060】
ECU32は、CPU、ROM、RAM等からなる電子制御ユニットであり、運転支援装置2を統括制御する。ECU32では、第1の実施の形態に係るECU31と比較すると、目標パターン生成処理と協調支援制御処理の一部の処理が異なるので、その各処理について説明する。
【0061】
目標パターン生成処理について説明する。ECU32では、ECU31で説明した同様の処理により、理想の目標パターンを生成し、その目標パターンに基づいて区間分けする。したがって、この目標パターン生成処理では、ECU31で行った運転者の操作入力履歴の取得、操作特性の認識、操作特性を考慮した目標パターンの生成(再生成)は行われない。
【0062】
協調支援制御処理について説明する。走行中、ECU32では、一定時間毎に、ECU31と同様の処理により、アクセル開度、ブレーキ踏み込み量、車速及び現在位置を取得し、アクセル開度又はブレーキ踏み込み量と車速に基づいて運転者の入力要求加速度(基準値)を推定する。また、ECU32では、一定時間毎に、ECU31と同様の処理により、走行コース別に、現在位置に対応付けてアクセル開度、ブレーキ踏み込み量、車速などの情報を操作入力履歴データベース15に格納する。
【0063】
また、ECU32では、操作入力履歴データベース15から、これから走行する同じコースあるいはそのコースに類似するコースでのその運転者についてのアクセルペダル操作とブレーキペダル操作の入力履歴を取得する。
【0064】
ECU32では、一定時間毎に、ECU31と同様の処理により、現在位置が加速区間かあるいは惰性走行区間かを判定する。
【0065】
加速区間の場合、ECU32では、一定時間毎に、実際の運転者のブレーキ踏み込み量やブレーキペダル操作の入力履歴に基づいて、ブレーキ入力傾向があるか否かを判定する。このブレーキ入力傾向の判定では、実際に運転者がブレーキONした場合が最優先で入力傾向があると判定し、実際にブレーキONでない場合でもブレーキペダル操作の入力履歴に基づいてその位置でのブレーキONの頻度などに基づいてブレーキ入力傾向を判定する。
【0066】
ブレーキ入力傾向がある場合、ECU32では、加速アシストをOFFし、そのときのブレーキ踏み込み量に応じて要求減速度を設定し、その要求減速度に基づいて目標ブレーキ油圧を設定し、ブレーキ制御信号をブレーキアクチュエータ21に送信する。
【0067】
ブレーキ入力傾向がない場合、ECU32では、ECU31での加速区間での支援制御と同様に、目標加速度が入力要求加速度よりも大きい場合には加速アシスト制御を行い、目標加速度が入力要求加速度以下の場合にはムダ加速制限を行う。
【0068】
惰性走行区間の場合、ECU32では、一定時間毎に、上記と同様に、実際の運転者のブレーキ踏み込み量やブレーキペダル操作の入力履歴に基づいて、ブレーキ入力傾向があるか否かを判定する。
【0069】
ブレーキ入力傾向がある場合、ECU32では、惰性走行支援をOFFし、そのときのブレーキ踏み込み量に応じて要求減速度を設定し、その要求減速度に基づいて目標ブレーキ油圧を設定し、ブレーキ制御信号をブレーキアクチュエータ21に送信する。
【0070】
ブレーキ入力傾向がない場合、ECU32では、実際の運転者のアクセル開度やアクセルペダル操作の入力履歴に基づいて、アクセル入力傾向があるか否かを判定する。このアクセル入力傾向の判定では、実際に運転者がアクセルONした場合が最優先で入力傾向があると判定し、実際にアクセルONでない場合でもアクセルペダル操作の入力履歴に基づいてその位置でのアクセルONの頻度などに基づいてアクセル入力傾向を判定する。
【0071】
アクセル入力傾向がある場合、ECU32では、加速制限をOFFし、そのときのアクセル開度に応じて要求加速度を設定し、その要求加速度を達成するために必要なモータ駆動目標トルク及びスロットルバルブの目標開度を設定し、モータ駆動制御信号をインバータ22に送信するとともにエンジン制御信号をスロットルアクチュエータ20に送信する。
【0072】
アクセル入力傾向がない場合、ECU32では、ECU31での惰性走行区間での支援制御と同様に、惰性走行支援を行う。
【0073】
図1を参照して、運転支援装置2における協調支援制御時の動作について説明する。特に、ECU32における処理については図7のフローチャートに沿って説明する。図7は、第2の実施の形態に係るECUにおける協調支援制御処理の流れを示すフローチャートである。なお、運転者は、走行前に、目的地、到着時間、燃費重視などの目標タスクを入力している。
【0074】
各センサ10,11,12及びナビゲーション装置13では、第1の実施の形態に係る運転支援装置1で説明した同様の動作をしている。ECU32では、その各信号を受信し、各情報を取得している。そして、ECU32では、走行コース別に、現在位置に対応付けてアクセル開度、ブレーキ踏み込み量、車速などの情報を操作入力履歴データベース15に格納する。
【0075】
目的地に至る過程での所定範囲毎に、ECU32では、地図データベース14からその所定範囲に必要な道路情報を取得する。そして、ECU32では、取得して道路情報に基づいて目標タスクを達成するための最適な理想の目標パターンを生成し、その目標パターンに基づいて区間分けする。
【0076】
走行中、一定時間毎に、ECU32では、アクセル開度又はブレーキ踏み込み量と車速に基づいて運転者の入力要求加速度(基準値)を推定する。また、ECU32では、操作入力履歴データベース15から所定範囲での運転者の操作入力履歴を取得する。
【0077】
そして、ECU32では、現在位置が加速区間か否かを判定する(S20)。S20にて加速区間と判定した場合、ECU32では、実際のブレーキ踏み込み量やブレーキ操作の入力履歴に基づいて、運転者にブレーキ入力傾向があるか否かを判定する(S21)。S21にてブレーキ入力傾向があると判定した場合、ECU32では、加速アシストをOFFし、そのブレーキ入力傾向におけるブレーキ踏み込み量に応じて要求減速度を設定し、その要求減速度に基づいて目標ブレーキ油圧を設定し、ブレーキ制御信号をブレーキアクチュエータ21に送信する(S22)。
【0078】
S21にてブレーキ入力傾向がないと判定した場合、ECU32では、目標パターンにおける現在位置での目標加速度が運転者の入力要求加速度よりも大きいか否かを判定する(S23)。S23にて目標加速度が入力要求加速度よりも大きいと判定した場合、ECU32では、加速アシストにより運転者のアクセル開度に対して通常よりも大きな要求加速度を設定し、その要求加速度に基づいてモータ駆動目標トルクとスロットルバルブの目標開度を設定し、モータ駆動制御信号をインバータ22に送信するとともにエンジン制御信号をスロットルアクチュエータ20に送信する(S24)。目標加速度が入力要求加速度以下と判定した場合、ECU32では、ムダ加速制限により運転者のアクセル開度に対して通常よりも小さな要求加速度を設定し、その要求加速度に基づいてモータ駆動目標トルクとスロットルバルブの目標開度を設定し、モータ駆動制御信号をインバータ22に送信するとともにエンジン制御信号をスロットルアクチュエータ20に送信する(S25)。
【0079】
S20にて加速区間でないと判定した場合、ECU32では、現在位置が惰性走行区間か否かを判定する(S26)。S26にて惰性走行区間と判定した場合、ECU32では、実際のブレーキ踏み込み量やブレーキ操作の入力履歴に基づいて、運転者のブレーキ入力傾向があるか否かを判定する(S27)。S27にてブレーキ入力傾向があると判定した場合、ECU32では、惰性走行支援をOFFし、そのブレーキ入力傾向におけるブレーキ踏み込み量に応じて要求減速度を設定し、その要求減速度に基づいて目標ブレーキ油圧を設定し、ブレーキ制御信号をブレーキアクチュエータ21に送信する(S28)。
【0080】
S27にてブレーキ入力傾向がないと判定した場合、ECU32では、実際のアクセル開度やアクセル操作の入力履歴に基づいて、運転者のアクセル入力傾向があるか否かを判定する(S29)。S29にてアクセル入力傾向があると判定した場合、ECU32では、加速制限をOFFし、そのアクセル入力傾向におけるアクセル開度に応じて要求加速度を設定し、その要求加速度を達成するために必要なモータ駆動目標トルク及びスロットルバルブの目標開度を設定し、モータ駆動制御信号をインバータ22に送信するとともにエンジン制御信号をスロットルアクチュエータ20に送信する(S30)。
【0081】
S30にてアクセル入力傾向がないと判定した場合、ECU32では、惰性走行支援によりモータ駆動目標トルクとスロットルバルブの目標開度を共に0に設定し、モータ駆動制御信号をインバータ22に送信するとともにエンジン制御信号をスロットルアクチュエータ20に送信する(S31)。
【0082】
スロットルアクチュエータ20、ブレーキアクチュエータ21及びインバータ22では、第1の実施の形態に係る運転支援装置1で説明した同様の動作を行う。
【0083】
この運転支援装置2によれば、運転者の操作傾向に基づいて目標パターンを用いた協調支援制御のON/OFFを切り替えることにより、その目標パターンを用いた支援によって運転者が受ける違和感を抑制することができる。特に、運転者の運転特性を考慮するために目標パターンを再生成しないので、演算負荷の増大を抑制することができる。
【0084】
なお、上記のように、理想の目標パターンを用いて協調支援制御を行い、運転者の操作特性(アクセルの入力傾向、ブレーキの入力傾向など)に応じて制御を切り替えてもなおも運転者が反操作を行う場合には、第1の実施の形態で説明した運転者の操作特性を考慮して目標パターンを再生成するようにすればよい。このように構成することにより、運転者の違和感の抑制、演算負荷の抑制及び燃費の抑制において最も理想的な構成となる。
【0085】
図1、図3及び図8を参照して、第3の実施の形態に係る運転支援装置3について説明する。図8は、惰性走行区間における運転者のアクセル入力傾向の一例であり、(a)が運転者のアクセル操作に応じた要求加速度と実際の加速度の時間変化の一例であり、(b)が運転者のアクセル開度の時間変化の一例である。
【0086】
運転支援装置3は、第1の実施の形態に係る運転支援装置1や第2の実施の形態に係る運転支援装置2と比較すると、目標パターンを生成するときに利用する場合や協調支援制御において制御を切り替える場合に利用する運転者の操作特性の抽出方法が異なる。ここでは、第1の実施の形態に係る運転支援装置1のECU31や第2の実施の形態に係る運転支援装置2のECU32と処理が異なるECU33についてのみ説明する。
【0087】
ECU33は、CPU、ROM、RAM等からなる電子制御ユニットであり、運転支援装置3を統括制御する。ECU33では、第1の実施の形態に係るECU31や第2の実施の形態に係るECU32と比較すると、目標パターン生成処理と協調支援制御処理の一部の処理及び操作特性抽出処理が異なるので、その各処理について説明する。
【0088】
操作特性抽出処理について説明する。ここでは、図3に示すような惰性走行区間において、運転者がコーナの立ち上がりの位置P1などでアクセル操作(加速意志)を行うアクセル操作特性を抽出する場合である。
【0089】
ECU33では、まず、惰性走行区間における運転者のアクセル入力傾向の各要素を抽出する。惰性走行区間では、運転者がアクセル操作を行うと加速制限がかかるので、それに対するアクセルの入力傾向を抽出する。
【0090】
具体的には、ECU33では、惰性走行中、実際の加速度から、加速制限(モータの上限加速度の範囲内での加速に制限)をかけている時間を抽出する。自車両の実際の加速度は、車速センサ12で検出される車速を時間微分してもよいし、あるいは、加速度センサを搭載する構成としてもよい。さらに、ECU33では、アクセルペダル信号から得られるアクセル開度から、加速制限をかけている間に運転者がアクセルを踏み増している時間とアクセルを踏み増した回数を抽出する。また、ECU33では、実際の加速度と運転者による入力要求加速度から、加速制限をかけている間における実加速度と入力要求加速度との乖離度(積算値と最大値)を抽出する。この各要素の抽出では、次回の目標パターンを生成する際に操作特性を反映させる場合には一つの惰性走行区間の全てのアクセル入力データから各要素を抽出し、協調支援制御中に瞬時的に操作特性を反映させる場合には協調支援制御中の惰性走行区間で入力される一つ一つのアクセル入力で各要素を抽出する。
【0091】
図8に示す例では、ある惰性走行区間における運転者のアクセル入力傾向の一例を示しており、(a)図における実線RAが運転者の入力要求加速度の時間変化であり、一点鎖線PAが加速制限された実際の加速度の時間変化であり、(b)図における実線ADが運転者によるアクセル開度の時間変化である。この例の場合、時間T1,T2,T3で示す区間が加速制限をかけている時間である。また、アクセル開度の時間変化ADにおいて、加速制限されているときの山の個数がアクセルを踏み増した回数であり、その各山の上り区間がアクセルを踏み増している時間である。また、入力要求加速度の時間変化RAと実際の加速度の時間変化PAにおいて、加速制限されているときの入力要求加速度と実際の加速度との差の最大値MXや入力要求加速度と実際の加速度との間の差の積算値AU(斜線で示す領域)が実加速度と入力要求加速度との乖離度である。
【0092】
次に、ECU33では、抽出したアクセル入力傾向の各要素を用いて、運転者のアクセル操作特性(加速意思の有無)を判断する。具体的には、ECU33では、要素毎に最大値や平均値を計算する。この各要素の最大値や平均値から、運転者のおおよその操作特性を判断することが可能であるが、運転者の操作特性は個人によって異なり、これだけでは正確な判断ができない場合がある。そこで、ECU33では、各要素の相関値を計算する。相関値としては、例えば、加速制限をかけている間にアクセルを踏み増している時間を加速制限をかけている時間で除算した相関値があり、この相関値を利用することにより加速制限をかけている間に運転者がアクセルを踏み増している割合も判断できる。
【0093】
ECU33では、各要素の最大値や平均値、要素間の相関値を、運転者が加速意志とみなすための判定値である閾値や範囲でそれぞれ比較する。この加速意志の判断基準である閾値や範囲については、実車実験やシミュレーションなどによって予め設定しておく。さらに、これらの閾値や範囲については、運転者毎に学習し、学習結果で更新するようにしてもよい。
【0094】
ECU33では、各要素の最大値や平均値、要素間の相関値が閾値より大きい場合や範囲外の場合には運転者の加速意志ありと判定し、閾値以下の場合や範囲内の場合には運転者の加速意志なしと判定する。そして、ECU33では、走行コース別に、現在位置に対応付けてアクセル開度、ブレーキ踏み込み量などの情報を操作入力履歴データベース15に格納するときにその判定結果も対応付けて操作入力履歴データベース15に格納する。また、ECU33では、協調支援制御中に瞬時的にその操作特性を利用する場合には、その判定結果を協調支援制御中の入力傾向の判定に用いる。なお、各要素の最大値や平均値及び要素間の相関値の全てが閾値より大きい場合や範囲外の場合に加速意志ありと判断してもよいし、各要素の最大値や平均値及び要素間の相関値の中で優先度を設け、優先度の高いものが閾値より大きい場合や範囲外の場合に加速意志ありと判断してもよい。
【0095】
目標パターン生成処理について説明する。ECU33では、ECU31で説明した同様の処理により、理想の目標パターンを生成する。あるいは、ECU33では、運転者のアクセル操作特性を考慮して、目標パターンを生成又は再生成する。この際、過去の走行において操作特性抽出処理で抽出したアクセル操作特性を利用する。例えば、惰性走行区間で「加速意思あり」と判定されている位置では「加速制限」を外すたりあるいは惰性走行区間から加速区間に替えるなどする。そのために、ECU33では、目標パターンを生成するときに、操作入力履歴データベース15から、これから走行する同じコースあるいはそのコースに類似するコースの各位置での操作特性(加速意志あり、加速意志なし)を取得する。
【0096】
協調支援制御処理について説明する。ECU33では、ECU31で説明した同様の処理により、運転者のアクセル操作特性を考慮した目標パターンを用いて協調支援制御を行う。あるいは、ECU33では、ECU32で説明した同様の処理により、理想の目標パターンを用いて協調支援制御を行う際に運転者の操作特性を考慮して支援制御を切り替える。この際、ECU32で説明した処理によって運転者のアクセル入力傾向を判定するのでなく、瞬時的に操作特性抽出処理で抽出した操作特性(加速意志あり、加速意志なし)を利用してアクセル入力傾向を判定する。例えば、惰性走行区間で「加速意志あり」と判定した場合、その瞬間に「加速制限」を外す。
【0097】
図1を参照して、運転支援装置3における操作特性抽出時の動作について説明する。ここでは、ECU33における操作特性抽出処理についてのみ詳細に説明する。ECU33における操作特性抽出処理については図9のフローチャートに沿って説明する。図9は、第3の実施の形態に係るECUにおける操作特性抽出処理の流れを示すフローチャートである。
【0098】
惰性走行区間において、ECU33では、アクセル開度及び実際の加速度や運転者の入力要求加速度から、運転者のアクセル入力傾向の各要素(加速制限をかけている時間、加速制限をかけている間のアクセルの踏み増している時間、踏み増し回数や実加速度と入力要求加速度との乖離度など)を抽出する(S40)。そして、ECU33では、その抽出したアクセル入力傾向の各要素についての最大値、平均値や相関値を計算する(S41)。
【0099】
さらに、ECU33では、その計算した各要素についての最大値、平均値や相関値が閾値を超えるかを判定する(S42)。S42には閾値を超えると判定した場合、ECU33では、運転者に加速意志があると判定する(S43)。一方、S42には閾値以下と判定した場合、ECU33では、運転者に加速意志がなしと判定する(S44)。
【0100】
そして、ECU33では、この判定結果を現在位置に対応付けて操作入力履歴データベース15に格納したり(次回以降の目標パターンの生成に利用)、あるいは、協調支援制御の惰性走行区間でのアクセル入力傾向の判定に用いる。
【0101】
この運転支援装置3によれば、実際の車両の走行状態と運転者の入力操作から運転者のアクセル入力傾向の各要素を抽出して運転者のアクセル操作特性を判断することにより、運転者のアクセル操作特性を高精度に抽出することができる。この抽出した運転者の操作特性を用いて目標パターンを生成したりあるいは協調支援制御を行うことにより、その目標パターンを用いた支援によって運転者が受ける違和感を抑制することができる。
【0102】
図1、図3及び図10を参照して、第4の実施の形態に係る運転支援装置4について説明する。図10は、運転者のブレーキの踏み込み量、速度、横Gの時間変化の一例である。
【0103】
運転支援装置4は、第1の実施の形態に係る運転支援装置1や第2の実施の形態に係る運転支援装置2と比較すると、目標パターンを生成する場合に利用する運転者の操作特性の抽出方法が異なる。ここでは、第1の実施の形態に係る運転支援装置1のECU31や第2の実施の形態に係る運転支援装置2のECU32と処理が異なるECU34についてのみ説明する。
【0104】
ECU34は、CPU、ROM、RAM等からなる電子制御ユニットであり、運転支援装置4を統括制御する。ECU34では、第1の実施の形態に係るECU31や第2の実施の形態に係るECU32と比較すると、目標パターン生成処理の一部の処理及び操作特性抽出処理が異なるので、その処理についてのみ説明する。
【0105】
操作特性抽出処理について説明する。ここでは、図3に示すような惰性走行区間において、運転者がコーナに進入する手前の位置P2などでブレーキ操作(減速意志)を行うブレーキ操作特性を抽出する場合である。理想の目標パターンの場合、運転者によってはコーナに進入するときの速度が高すぎるために、ブレーキを踏んで減速する人がいる。しかし、燃費走行を考えた場合、理想の目標パターンでの走行に誘導した結果、運転者にブレーキを踏まれて減速されてしまっては、そこに至る加速自体が無駄になり、燃費が悪化してしまう(例えば、惰性走行区間で減速したので、図3のgoalに到達するためには惰性走行区間での加速が必要となる)。したがって、そのような運転者に対しては、コーナ手前でブレーキを踏まないように、コーナ手前での速度が低くなるような目標パターンとする必要がある。例えば、コーナ手前で運転者が強めにブレーキを踏み込んだ場合、理想の目標パターンは運転者の感覚とはかなり乖離があり、積極的に目標パターンを変える必要がある。また、コーナ手前で単純に運転者が浅くブレーキを踏んだ場合、運転者に恐怖感を与えない程度に目標パターンを変える。
【0106】
ECU34では、まず、惰性走行区間における運転者のブレーキ入力時の各要素を抽出する。具体的には、ECU34では、ブレーキペダル信号から得られるブレーキ踏み込み量に基づいて、ブレーキがONか否かを判定する。ブレーキONの場合、ECU34では、そのときのブレーキ踏み込み量を抽出する。さらに、ブレーキONの場合、ECU34では、ナビ情報信号から得られる現在位置を抽出するとともに、車速信号から得られる車速(通過速度)を抽出する。さらに、ブレーキONの場合、ECU34では、必要に応じて、横Gや曲率半径などを抽出する。
【0107】
図10には、図3の位置P2で運転者がブレーキ操作した場合の各要素の時間変化を示している。実線BCでブレーキ踏み込み量の時間変化を示しており、一点鎖線VCで通過速度の時間変化を示しており、破線GCで横Gあるいは曲率半径などの時間変化を示している。
【0108】
そして、ECU34では、その抽出したブレーキ入力時の各要素を用いて、運転者のブレーキ操作特性を判断する。具体的には、ECU34では、まず、ブレーキ踏み込み量から、そのときのブレーキの重要度(目標パターン生成用のパラメータに対する係数など)を計算する。ここでは、運転者のブレーキの踏み込み状況から、目標パターンをどの程度変える必要があるかを重要度として抽出する。具体的な計算方法としては、例えば、パラメータに対する係数Aの場合、係数A=α×ブレーキ踏み込み量の最大値+β×ブレーキ踏み込み量の積算値で計算する。この係数Aは、0〜1の範囲で、最大が1になるような値に設定する。α、βは、係数Aがそのような値になるように、実験やシミュレーションなどによって調整される。図10に示す例の場合、ブレーキ踏み込み量の変化BCにおける最大値MXや斜線の領域AUで示す踏み込み量の積算値を用いて重要度を計算する。なお、重要度の計算方法については、上記の計算式以外にも適用可能であり、例えば、ブレーキ踏み込み量の最大値や積算値の他にも踏み込み速度や踏み込み加速度などの他の値も用いた計算式とする。
【0109】
そして、ECU34では、重要度を用いて、目標パターンを生成するときの拘束条件となるパラメータ(コーナでの上限速度、上限横Gなど)を再設定し、その再設定したパラメータを走行コーナ別に拘束条件として登録しておく。例えば、上限横Gを再設定する場合について説明する。今の目標パターンを生成したときの上限横GをG1、運転者がブレーキ入力したときに抽出した実際の横GをG2とし、再設定される上限横GをG1’とする。G1’=G1+係数A×(G2−G1)で計算される。
【0110】
なお、上記の説明では、運転者のブレーキ入力時の各要素から重要度を計算し、目標パラメータ生成用のパラメータを再設定することにより運転者のブレーキ操作特性を抽出したが、運転者のブレーキ入力時の各要素を用いて上記の方法以外の方法で運転者のブレーキ操作特性を抽出してもよい。例えば、第3の実施の形態のように、運転者の減速意志のある位置を抽出してもよく、その減速意志の中でも強い減速意思や弱い減速意志などを設定してもよい。また、コーナだけでなく、狭い道路や見通しの悪い道路などにおいて運転者のブレーキ入力が予測される場所にも適用できる。
【0111】
目標パターン生成処理について説明する。ECU34では、運転者のブレーキ操作特性を考慮して、目標パターンを生成又は再生成する。この際、過去の走行において操作特性抽出処理で再設定したパラメータを拘束条件として利用する。例えば、コーナで上限通過速度や上限横Gが低く値に再設定されている場合、その再設定された上限通過速度や上限横Gを拘束条件として用いることにより、コーナ手前での速度が低くなるような目標パターンを設定する。
【0112】
図1を参照して、運転支援装置4における操作特性抽出処理時の動作について説明する。特に、ECU34における処理については図11のフローチャートに沿って説明する。図11は、第4の実施の形態に係るECUにおける操作特性抽出処理の流れを示すフローチャートである。
【0113】
惰性走行区間において、ECU34では、一定時間毎に、実際のブレーキペダル踏み込み量から、運転者のブレーキ入力があるか否かを判定する(S50)。S50にてブレーキ入力がないと判定した場合、ECU34では、一定時間後に、再度、ブレーキ入力があるか否かを判定する(S50)。
【0114】
S50にてブレーキ入力があると判定した場合、ECU34では、運転者のブレーキ入力時の各要素(ブレーキ踏み込み量、位置、通過速度、横G、曲率半径など)を抽出する(S51)。そして、ECU34では、ブレーキ踏み込み量からブレーキの重要度を計算する(S52)。さらに、ECU34では、その重要度に応じて、目標パターン生成用のパラメータ(上限通過速度、上限横Gなど)を再設定し、その再設定したパラメータを登録する(S53)。
【0115】
そして、この再設定したパラメータは、次回同じコース又は類似のコースを走行するときの目標パターンの生成(再生成)に利用される。
【0116】
この運転支援装置4によれば、運転者のブレーキ入力時の各要素を抽出して運転者のブレーキ操作特性を反映した目標パターン生成用のパラメータを再設定することにより、運転者のブレーキ操作特性を高精度に抽出することができ、そのパラメータを利用することによって運転者の違和感を抑制した目標パターンを生成(再生成)することができる。この再設定したパラメータを用いて生成した目標パターンによって、運転者が普段のブレーキポイントでの通過速度が低下しており、惰性走行区間における運転者のブレーキ操作を抑制(防止)できるとともに、無駄な加速を抑制できる。
【0117】
なお、この第4の実施の形態に係る運転支援装置4で抽出される惰性走行区間でのブレーキ操作特性に加えて、第3の実施の形態に係る運転支援装置3で抽出される惰性走行区間でのアクセル操作特性も反映させて、目標パターンを生成(再生成)すると更に運転者の違和感を抑制した目標パターンによる支援制御が可能となる。
【0118】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0119】
例えば、本実施の形態では目標走行パターンを生成し、その目標走行パターンを用いて運転者の運転操作に対して支援する協調制御を行う運転支援装置に適用したが、目標走行パターンを生成する生成装置、目標走行パターンを生成し、その目標走行パターンを運転者に提供する情報提供装置などにも適用可能である。
【0120】
また、本実施の形態では動力源としてエンジンとモータを備えるハイブリッド車両に適用したが、動力源としてエンジンだけなど他の車両にも適用可能である。
【0121】
また、本実施の形態では目標速度パターンに追従するように協調支援制御を行う構成としたが、目標加速度パターンや目標操舵パターンなどの他の目標走行パターンに追従するように運転支援制御を行ってもよい。
【0122】
また、本実施の形態では目標パターンに基づいて走行状態を区間分けして協調支援制御を行う構成としたが、このような区間分け行わずに協調支援制御を行ってもよい。
【0123】
また、第4の実施の形態では運転者のブレーキ入力時の各要素を抽出して運転者のブレーキ操作特性を反映した目標パターン生成用のパラメータを再設定する構成としたが、同様にアクセル操作について、運転者のアクセル入力時の各要素を抽出して運転者のアクセル操作特性を反映した目標パターン生成用のパラメータを再設定することにより、運転者のアクセル操作特性を高精度に抽出でき、そのパラメータを利用することによって運転者の違和感を抑制した目標パターンを生成(再生成)することができる。
【符号の説明】
【0124】
1,2,3,4…運転支援装置、10…アクセルペダルセンサ、11…ブレーキペダルセンサ、12…車速センサ、13…ナビゲーション装置、14…地図データベース、15…操作入力履歴データベース、20…スロットルアクチュエータ、21…ブレーキアクチュエータ、22…インバータ、31,32,33,34…ECU。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行予定経路の先読み情報に基づいて走行予定経路における目標走行パターンを設定し、当該目標走行パターンに追従するように運転支援を行う運転支援装置であって、
運転者の運転操作の履歴に基づいて運転支援を行うことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
運転者の運転操作の履歴に基づいて運転支援制御のON/OFFを切り替えることを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
運転者の運転操作の履歴に基づいて目標走行パターンを設定することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項4】
運転者のブレーキペダル操作の履歴に基づいて運転支援を変更することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項5】
運転者のブレーキペダル操作の履歴に基づいて目標走行パターンを設定する際のパラメータを変更し、その変更したパラメータを用いて目標走行パターンを設定することを特徴とする請求項4に記載の運転支援装置。
【請求項6】
運転者のアクセルペダル操作の履歴に基づいて運転支援を変更することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項7】
運転者のアクセルペダル操作の履歴に基づいて目標走行パターンを設定する際のパラメータを変更し、その変更したパラメータを用いて目標走行パターンを設定することを特徴とする請求項6に記載の運転支援装置。
【請求項1】
走行予定経路の先読み情報に基づいて走行予定経路における目標走行パターンを設定し、当該目標走行パターンに追従するように運転支援を行う運転支援装置であって、
運転者の運転操作の履歴に基づいて運転支援を行うことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
運転者の運転操作の履歴に基づいて運転支援制御のON/OFFを切り替えることを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
運転者の運転操作の履歴に基づいて目標走行パターンを設定することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項4】
運転者のブレーキペダル操作の履歴に基づいて運転支援を変更することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項5】
運転者のブレーキペダル操作の履歴に基づいて目標走行パターンを設定する際のパラメータを変更し、その変更したパラメータを用いて目標走行パターンを設定することを特徴とする請求項4に記載の運転支援装置。
【請求項6】
運転者のアクセルペダル操作の履歴に基づいて運転支援を変更することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項7】
運転者のアクセルペダル操作の履歴に基づいて目標走行パターンを設定する際のパラメータを変更し、その変更したパラメータを用いて目標走行パターンを設定することを特徴とする請求項6に記載の運転支援装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−184013(P2011−184013A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54440(P2010−54440)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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