説明

過電流検出装置

【課題】装置を大型化することなく且つ半導体スイッチの電圧のばらつきの影響を軽減して過電流を検出することが可能な過電流検出装置を提供する。
【解決手段】FET(T1)のドレインと、EEPROM12との間に、抵抗R1,R2の直列接続回路を含む分圧回路15を設ける。従って、EEPROM12には、FET(T1)のドレイン電圧V1を抵抗R1とR2で分圧した電圧が供給され、この電圧が判定電圧VMの嵩上げ電圧となる。その結果、FET(T1)のドレイン・ソース間電圧Vdsが大きく、判定電圧VMがEEPROM12の設定電圧の上限を超える場合であってもこの嵩上げ電圧が存在することにより、この電圧Vdsに応じた判定電圧VMを設定することができ、過電流の発生を高精度に検出することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷駆動回路に流れる過電流を検出する技術に係り、特に、オン、オフを切り替えるための半導体スイッチのオン抵抗が大きい場合でも高精度に過電流を検出する過電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両に搭載されるランプやモータ等の負荷は、バッテリ(直流電源)と各負荷との間にFET(半導体スイッチ)を設け、各FETのオン、オフを切り替えることにより、各負荷の駆動、停止を制御している。このような負荷駆動回路では、短絡事故等に起因して過電流が流れた場合には、いち早くFETを遮断して、該半導体スイッチ、負荷、及びこれらを接続する電線を過熱から保護する必要がある。
【0003】
そこで、従来よりFETの両端の電圧であるドレイン・ソース間電圧Vds(以下、「電圧Vds」という)と、予め設定した過電流の判定電圧を比較器(コンパレータ)で比較し、電圧Vdsが判定電圧を上回った場合には、過電流が発生したものと判断して、FETを遮断するようにした過電流検出装置が知られている。
【0004】
また、負荷毎に遮断電流を調整するために、例えば、特開2006−197768号公報(特許文献1)に記載されているように、IC回路の外部に設けた抵抗の抵抗値を調整することにより、負荷電流に合わせたFETのオン抵抗Ronに応じて過電流の判定電圧を設定可能とした過電流検出装置が提案されている。
【0005】
更に、過電流の判定電圧を任意の値に設定可能な電圧設定回路(例えば、レジスタやEEPROM)を用いることにより、FETのオン抵抗Ron、及び比較器のオフセット電圧にばらつきが存在する場合でも、電圧設定回路に設定する判定電圧を調整することにより、所望の過電流判定値で負荷駆動回路を遮断するようにした過電流検出装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−197768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した電圧設定回路を用いて判定電圧を設定する方式では、設定可能な判定電圧に上限値が存在し、FETのドレイン・ソース間電圧Vdsがこの上限値を上回る場合には、この電圧Vdsを検出することができなくなる。このため、電圧Vdsが小さい半導体スイッチを使用しなければならず、電圧Vdsが小さい半導体スイッチは素子が大型化し、且つコスト的に高価となるので、装置の大規模化、高コスト化を招くという欠点があった。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、装置が大型化することなく、且つ半導体スイッチの電圧のばらつきの影響を軽減して過電流を検出することが可能な過電流検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、直流電源と負荷を接続する回路に半導体スイッチを設け、該半導体スイッチのオン、オフを切り替えることにより、前記負荷の駆動、停止を制御する負荷駆動回路の、過電流を検出する過電流検出装置において、前記半導体スイッチの、前記直流電源側に接続される第1端子と前記負荷側に接続される第2端子との間に生じる両端電圧(Vds)と、予め設定した判定電圧(VM)とを比較し、前記両端電圧(Vds)が前記判定電圧(VM)を上回った場合に、過電流判定信号を出力する比較手段と、駆動指令に応じて、前記半導体スイッチのオン、オフを制御すると共に、前記過電流判定信号が出力された際に、前記半導体スイッチをオフとする制御手段と、前記半導体スイッチの前記第1端子に生じる電圧(V1)を所定の分圧比で分圧した嵩上げ電圧を生成する分圧手段(例えば、分圧回路15)と、前記嵩上げ電圧に基づいて前記判定電圧を設定し、この判定電圧を前記比較手段に出力する判定電圧設定手段(EEPROM)と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記分圧手段は、前記半導体スイッチの第1端子とグランドとの間に接続される第1の抵抗(R1)と第2の抵抗(R2)との直列接続回路と、前記第1の抵抗に対して並列に接続されるコンデンサ(C1)を備え、前記第1の抵抗と第2の抵抗との接続点に生じる電圧を前記嵩上げ電圧とすることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記判定電圧設定手段は、前記負荷に過電流が流れたときに生じる前記両端電圧に基づいて、前記判定電圧を設定することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3において、前記比較手段、前記制御手段、及び前記判定電圧設定手段は集積回路の内部に設けられ、前記分圧手段は、前記集積回路の外部に設けられることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、半導体スイッチと負荷を含む複数の駆動回路を一つの直流電源に接続し、前記各駆動回路毎に前記半導体スイッチのオン、オフを切り替えることにより、前記各負荷の駆動、停止を制御する負荷駆動回路群の、前記各駆動回路に生じる過電流を検出する過電流検出装置において、前記各半導体スイッチの、前記直流電源に接続される点に生じる電圧(V1)を所定の分圧比で分圧した嵩上げ電圧を生成する分圧手段を備え、前記各駆動回路は、前記半導体スイッチの、前記直流電源側に接続される第1端子と前記負荷側に接続される第2端子との間に生じる両端電圧(Vds)と、予め設定した判定電圧(VM)とを比較し、前記両端電圧(Vds)が前記判定電圧(VM)を上回った場合に、過電流判定信号を出力する比較手段と、駆動指令に応じて、前記半導体スイッチのオン、オフを制御すると共に、前記過電流判定信号が出力された際に、前記半導体スイッチをオフとする制御手段と、前記嵩上げ電圧に基づいて前記判定電圧を設定し、この判定電圧を前記比較手段に出力する判定電圧設定手段(例えば、EEPROM)と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項5において、前記各分圧手段は、前記半導体スイッチの第1端子とグランドとの間に接続される第1の抵抗(R1)と第2の抵抗(R2)との直列接続回路と、前記第1の抵抗に対して並列に接続されるコンデンサ(C1)を備え、前記第1の抵抗と第2の抵抗との接続点に生じる電圧を前記嵩上げ電圧とすることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項5または6において、前記判定電圧設定手段は、前記負荷に過電流が流れたときに生じる前記両端電圧に基づいて、前記判定電圧を設定することを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項5〜7において、前記比較手段、前記制御手段、及び前記判定電圧設定手段は集積回路の内部に設けられ、前記分圧手段は、前記集積回路の外部に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る過電流検出装置では、半導体スイッチの第1端子に生じる電圧(V1)を所定の分圧比で分圧する分圧手段を備え、この分圧手段で生成される嵩上げ電圧に基づいて、負荷電流が過電流であるか否かを判定するための判定電圧を設定する。従って、半導体スイッチの両端電圧(例えば、ドレイン・ソース間電圧Vds)が大きい場合であっても、嵩上げ電圧が存在することにより、適切な判定電圧を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る過電流検出装置の構成を示す回路図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る過電流検出装置の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
[第1実施形態の説明]
図1は、本発明の第1実施形態に係る過電流検出装置が搭載された負荷駆動回路の構成を示す回路図である。図1に示すように、負荷駆動回路は、バッテリ(直流電源)VBと、FET(T1;半導体スイッチ)、及びランプ、モータ等の負荷RLを備えており、FET(T1)のオン、オフを切り替えることにより、負荷RLの駆動、停止を制御することができる。即ち、バッテリVBのプラス端子はFET(T1)のドレイン(第1端子)に接続され、該FET(T1)のソース(第2端子)は、負荷RLの一端に接続され、負荷RLの他端はグランドに接地されている。また、過電流検出装置は、IC(集積回路)11、チャージポンプ14、及び分圧回路15を備えている。
【0021】
分圧回路(分圧手段)15は、抵抗R1(第1の抵抗)と抵抗R2(第2の抵抗)との直列接続回路を有し、抵抗R1の一端はFET(T1)のドレインに接続され、抵抗R2の一端はグランドに接地されている。また、抵抗R1に対して並列にコンデンサC1が設けられている。更に、抵抗R1とR2の接続点は、IC11内に設けられるEEPROM12(判定電圧設定手段)に接続されている。従って、FET(T1)のドレイン電圧V1を、抵抗R1とR2で分圧した電圧がEEPROM12に供給されることになる。
【0022】
IC11は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-only Memory)12と、比較器CMP1と、ドライバ回路13、及び抵抗R3,R4、スイッチSW1を有している。比較器CMP1は、マイナス側入力端子がFET(T1)のソース(電圧V2)に接続され、プラス側入力端子がEEPROM12に接続されている。そして、FET(T1)のドレイン・ソース間電圧Vdsが増加し、この電圧VdsがEEPROM12にて設定されている判定電圧VMを上回ると(即ち、V2<(V1−VM)となると)、比較器CMP1の出力信号が「L」から「H」(過電流判定信号)に反転する。即ち、比較器CMP1の出力信号に基づいて、過電流が発生しているか否かを判定することができる。
【0023】
ドライバ回路(制御手段)13は、抵抗R4を介してバッテリVBに接続され、更に、スイッチSW1を介してグランドに接地されている。また、該ドライバ回路13は、IC11の外部に設けられるチャージポンプ14と接続されている。そして、スイッチSW1がオンとされた場合には、チャージポンプ14より出力される電圧を抵抗R3を経由してFET(T1)のゲートに印加し、該FET(T1)をオンとする。また、比較器CMP1より「H」レベルの信号(過電流判定信号)が出力された場合には、FET(T1)のゲートへの電圧供給を停止し、FET(T1)をオフとする。
【0024】
EEPROM12は、任意に設定される過電流の判定電圧VMを記憶し、電圧V1から判定電圧VMを減じた電圧(V1−VM)を比較器CMP1のプラス側入力端子に出力する。該EEPROM12は操作者により予め設定された電圧の範囲内で、任意の判定電圧VMを設定することが可能である。
【0025】
次に、上述のように構成された本実施形態に係る過電流検出装置の作用について説明する。操作者がスイッチSW1をオンとすると、ドライバ回路13に供給される信号が「H」から「L」に切り替わるので、ドライバ回路13はチャージポンプ14より出力される電圧を駆動信号として出力する。この駆動信号は、抵抗R3を介してFET(T1)のゲートに印加されるので、該FET(T1)がオンとなり、バッテリVBの出力電圧が負荷RLに供給され、該負荷RLが駆動する。
【0026】
EEPROM12には判定電圧VMが設定されており、該EEPROM12より比較器CMP1のプラス側入力端子に(V1−VM)が供給される。また、比較器CMP1のマイナス側入力端子にはFET(T1)のソース電圧V2(=V1−Vds)が供給される。そして、負荷RLが通常に駆動している場合には、負荷電流I1は通常値であるから、FET(T1)のオン抵抗Ronと負荷電流I1の積で示されるドレイン・ソース間電圧Vds(両端電圧)は判定電圧VMを下回り、V2>(V1−VM)となるので、比較器CMP1の出力信号は「L」となって過電流は検出されない。
【0027】
また、負荷駆動回路に短絡故障等が発生して負荷電流I1が過電流となった場合には、電圧Vdsが増大するので電圧V2は低下し、V2<(V1−VM)となるので、比較器CMP1の出力信号は「H」となって過電流が検出される。上記の内容から、FET(T1)のドレイン・ソース間電圧Vdsが判定電圧VMを上回った場合に、比較器CMP1の出力信号が「L」から「H」に反転して、過電流を検出することとなる。
【0028】
つまり、下記(1)式が成立する場合には過電流は検出されず、下記(2)式が成立する場合には過電流が検出されることになる。
VM>Vds …(1)
VM<Vds …(2)
【0029】
ここで、FET(T1)のオン抵抗Ronにはばらつきが存在するので、ドレイン・ソース間電圧Vds(=Ron*I1)についてもばらつきが発生する。従って、バッテリVB、FET(T1)、負荷RLからなる負荷駆動回路では、実際にFET(T1)をオンとし、過電流が流れたときの電圧VdsでFET(T1)をオフとするための判定電圧VMを設定し、この判定電圧VMをEEPROM12に記憶することにより、FET(T1)のオン抵抗Ronのばらつきによる誤動作を防止している。即ち、電圧Vdsにばらつきが存在している場合であっても、スイッチとして使用するFET(T1)に実際に過電流を流し、このときの電圧Vdsに基づいて、判定電圧VMを設定すれば、FET(T1)の電圧Vdsのばらつきによる誤動作を防止できることになる。
【0030】
更に、FET(T1)として低価格の素子を用いる場合には、一般的にオン抵抗Ronの値が大きく、ひいてはドレイン・ソース間電圧Vdsも大きくなる傾向がある。この場合には、電圧Vdsに合わせて判定電圧VMを大きい値に設定する必要があり、設定値がEEPROM12の設定上限値を超える場合には、判定電圧VMを設定できなくなることがあり得る。
【0031】
そこで、本実施形態では分圧回路15を設けることにより、判定電圧VMを決めるための設定電圧VM’を嵩上げして、電圧Vdsが大きい値となった場合でも、この電圧Vdsに応じた判定電圧VMを設定できるようにしている。以下、詳細に説明する。
【0032】
図1に示すように、分圧回路15は、抵抗R1とR2の直列接続回路を用いて、FET(T1)のドレイン電圧V1を分圧している。従って、抵抗R1(第1の抵抗)の両端には、V1*R1/(R1+R2)で示される電圧降下が発生することになる。
【0033】
従って、設定電圧VM’は、下記(3)式で示されることになる。
VM’=Vds−{V1*R1/(R1+R2)} …(3)
そして、(3)式より、下記(4)式が得られる。
【0034】
Vds=VM’+{V1*R1/(R1+R2)}=VM …(4)
(4)式より、判定電圧VMは、設定電圧VM’と、{V1*R1/(R1+R2)}(以下、これを「嵩上げ電圧」という)とを加算した電圧となり、この判定電圧VMと、電圧Vdsとの比較により、過電流が判定されることになる。つまり、(4)式においてVds<VMの場合には過電流は検出されず、Vds>VMの場合には過電流が検出されることになる。従って、EEPROM12の設定電圧VM’に上限が存在する場合であっても、分圧回路15を設けて嵩上げ電圧を設定することにより、大きい値の電圧Vdsに対応する判定電圧VMをEEPROM12に設定することができることになる。
【0035】
また、抵抗R1,R2の大きさを適宜設定することにより、嵩上げ電圧を0〜V1の任意の電圧値に設定することができ、EEPROM12にて設定可能な判定電圧の上限値に応じた好適な嵩上げ電圧を設定することができる。
【0036】
このようにして、第1実施形態に係る過電流検出装置では、分圧回路15を設けることにより、FET(T1)のドレイン電圧V1を分圧した電圧をEEPROM12に供給しEEPROM12は、この分圧した電圧に基づいて判定電圧VMを設定するので、判定電圧VMの上限値を嵩上げすることができる。従って、FET(T1)のドレイン・ソース間電圧Vdsが大きい値であっても、この電圧Vdsに対応する判定電圧VMを設定することができる。
【0037】
その結果、半導体スイッチとしてドレイン・ソース間電圧Vdsの大きいFET(例えば、安価なFET)を用いた場合であっても、高精度な過電流検出が可能となり、過電流検出装置の小型化、低コスト化を図ることができる。
[第2実施形態の説明]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図2は、本発明の第2実施形態に係る過電流検出装置が搭載された負荷駆動回路の構成を示す回路図である。図2に示すように、第2実施形態では、複数チャンネル(図では3チャンネル)の負荷駆動回路S1,S2,S3を、一つのIC11aを用いて制御する例について示している。
【0038】
即ち、FET(T1)と負荷RL1からなる負荷駆動回路S1、FET(T2)と負荷RL2からなる負荷駆動回路S2、及びFET(T3)と負荷RL3からなる負荷駆動回路S3の3チャンネルを備え、各FET(T1〜T3)のドレインは、バッテリVBに接続され、各FET(T1〜T3)のオン、オフを切り替えることにより、各負荷RL1〜RL3の駆動、停止を制御する。
【0039】
また、IC11a(集積回路)は、3チャンネルの各負荷駆動回路S1〜S3毎に、EEPROM12a〜12c、及び比較器CMP11〜CMP13を備えている。なお、IC11aは、図1に示したIC11と同様に、各負荷駆動回路S1〜S3毎に、ドライバ回路、スイッチ、抵抗等を備えているが、図2では記載を省略している。
【0040】
更に、各負荷駆動回路S1〜S3に設けられたFET(T1〜T3)のドレインは、分圧回路15aを介してIC11aに接続され、各EEPROM12a〜12cに接続されている。分圧回路15aは、図1に示した分圧回路15と同様に、抵抗R1(第1の抵抗)と抵抗R2(第2の抵抗)との直列接続回路、及び抵抗R1に対して並列に接続されたコンデンサC1を備え、抵抗R1とR2の接続点に生じる電圧を、各EEPROM12a〜12cに出力する。
【0041】
次に、第2実施形態に係る過電流検出装置の作用について説明する。まず、前述した第1実施形態と同様に、各負荷駆動回路S1〜S3毎に、過電流が流れたときの判定電圧VM1,VM2,VM3を求め、それぞれのEEPROM12a,12b,12cに設定する。従って、各チャンネルの負荷駆動回路S1〜S3に対して、それぞれFET(T1)〜(T3)のオン抵抗Ron(ドレイン・ソース間電圧Vds)に応じた判定電圧VM1〜VM3を設定することができる。
【0042】
また、分圧回路15aで分圧した電圧が各EEPROM12a〜12cに出力されるので、前述した第1実施形態と同様に、嵩上げした判定電圧VM1〜VM3を得ることができる。従って、各負荷駆動回路S1〜S3に設けられるFET(T1)〜(T3)のオン抵抗にばらつきが存在する場合であっても、過電流判定値を一定の値に設定することが可能となり、且つ、各FET(T1)〜(T3)のドレイン・ソース間電圧Vdsが大きい値であっても、この電圧Vdsに対応する判定電圧VM1〜VM3を設定することができる。その結果、半導体スイッチとしてドレイン・ソース間電圧Vdsの大きいFET(例えば、安価なFET)を用いた場合であっても、高精度な過電流検出が可能となる。
【0043】
更に、複数チャンネルの各負荷駆動回路S1〜S3に対して、一つの分圧回路15aを備えることで、嵩上げした判定電圧VM1〜VM3を生成するので、多くの部品を用いることなく、嵩上げした判定電圧VM1〜VM3を得ることができる。即ち、第2実施形態では、3チャンネルの負荷駆動回路S1〜S3を設ける例について示したが、これが4チャンネル以上となった場合でも、一つの分圧回路15aを設ければ良く、部品点数を削減することができる。その結果、装置規模の小型化、低コスト化を図ることができる。
【0044】
以上、本発明の過電流検出装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、負荷駆動回路に設けられるFET(T1)のオン抵抗Ronにばらつきが存在する場合でも、過電流を高精度に検出する上で極めて有用である。
【符号の説明】
【0046】
11 IC(集積回路)
11a IC(集積回路)
12 EEPROM(判定電圧設定手段)
12a〜12c EEPROM(判定電圧設定手段)
13 ドライバ回路(制御手段)
14 チャージポンプ
15,15a 分圧回路(分圧手段)
T1〜T3 FET(半導体スイッチ)
RL 負荷
RL1〜RL3 負荷
R1 抵抗(第1の抵抗)
R2 抵抗(第2の抵抗)
C1 コンデンサ
CMP1 比較器(比較手段)
CMP11〜CMP13 比較器(比較手段)
VB バッテリ(直流電源)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と負荷を接続する回路に半導体スイッチを設け、該半導体スイッチのオン、オフを切り替えることにより、前記負荷の駆動、停止を制御する負荷駆動回路の、過電流を検出する過電流検出装置において、
前記半導体スイッチの、前記直流電源側に接続される第1端子と前記負荷側に接続される第2端子との間に生じる両端電圧と、予め設定した判定電圧とを比較し、前記両端電圧が前記判定電圧を上回った場合に、過電流判定信号を出力する比較手段と、
駆動指令に応じて、前記半導体スイッチのオン、オフを制御すると共に、前記過電流判定信号が出力された際に、前記半導体スイッチをオフとする制御手段と、
前記半導体スイッチの前記第1端子に生じる電圧を所定の分圧比で分圧した嵩上げ電圧を生成する分圧手段と、
前記嵩上げ電圧に基づいて前記判定電圧を設定し、この判定電圧を前記比較手段に出力する判定電圧設定手段と、
を備えたことを特徴とする過電流検出装置。
【請求項2】
前記分圧手段は、前記半導体スイッチの第1端子とグランドとの間に接続される第1の抵抗と第2の抵抗との直列接続回路と、前記第1の抵抗に対して並列に接続されるコンデンサを備え、前記第1の抵抗と第2の抵抗との接続点に生じる電圧を前記嵩上げ電圧とすることを特徴とする請求項1に記載の過電流検出装置。
【請求項3】
前記判定電圧設定手段は、前記負荷に過電流が流れたときに生じる前記両端電圧に基づいて、前記判定電圧を設定することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の過電流検出装置。
【請求項4】
前記比較手段、前記制御手段、及び前記判定電圧設定手段は集積回路の内部に設けられ、前記分圧手段は、前記集積回路の外部に設けられることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の過電流検出装置。
【請求項5】
半導体スイッチと負荷を含む複数の駆動回路を一つの直流電源に接続し、前記各駆動回路毎に前記半導体スイッチのオン、オフを切り替えることにより、前記各負荷の駆動、停止を制御する負荷駆動回路群の、前記各駆動回路に生じる過電流を検出する過電流検出装置において、
前記各半導体スイッチの、前記直流電源に接続される点に生じる電圧を所定の分圧比で分圧した嵩上げ電圧を生成する分圧手段を備え、
前記各駆動回路は、
前記半導体スイッチの、前記直流電源側に接続される第1端子と前記負荷側に接続される第2端子との間に生じる両端電圧と、予め設定した判定電圧とを比較し、前記両端電圧が前記判定電圧を上回った場合に、過電流判定信号を出力する比較手段と、
駆動指令に応じて、前記半導体スイッチのオン、オフを制御すると共に、前記過電流判定信号が出力された際に、前記半導体スイッチをオフとする制御手段と、
前記嵩上げ電圧に基づいて前記判定電圧を設定し、この判定電圧を前記比較手段に出力する判定電圧設定手段と、
を備えたことを特徴とする過電流検出装置。
【請求項6】
前記各分圧手段は、前記半導体スイッチの第1端子とグランドとの間に接続される第1の抵抗と第2の抵抗との直列接続回路と、前記第1の抵抗に対して並列に接続されるコンデンサを備え、前記第1の抵抗と第2の抵抗との接続点に生じる電圧を前記嵩上げ電圧とすることを特徴とする請求項5に記載の過電流検出装置。
【請求項7】
前記判定電圧設定手段は、前記負荷に過電流が流れたときに生じる前記両端電圧に基づいて、前記判定電圧を設定することを特徴とする請求項5または請求項6のいずれかに記載の過電流検出装置。
【請求項8】
前記比較手段、前記制御手段、及び前記判定電圧設定手段は集積回路の内部に設けられ、前記分圧手段は、前記集積回路の外部に設けられることを特徴とする請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載の過電流検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−49664(P2012−49664A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187980(P2010−187980)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】