説明

配線基板、配線基板の製造方法および配線材

【課題】1回の露光により露光される範囲による制限を緩和し、長尺の配線材を安価で簡便に得る。
【解決手段】絶縁基板10の個片化領域内に、個片化領域の1つの縁部から他の縁部側へと延び、他の縁部には至らない少なくとも1つの切れ込み部50と、配線パターン30pの一部をなし、切れ込み部50を取り囲むように形成された配線31と、を有し、個片化された配線材2を切れ込み部50の所定位置を起点に折り曲げることにより、絶縁基板10上に形成された配線31の一部を個片化領域外へと突出させることが可能なように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板、配線基板の製造方法および配線基板が配線パターンごとに個片化された配線材に関する。
【背景技術】
【0002】
配線材等に用いられる配線基板には、柔軟性を有する絶縁基板に銅箔等により配線パターンを形成した、TAB(Tape Automated Bonding)方式やTCP(Tape Carrier Package)方式の配線材用テープキャリア(以降、これらを代表してTABテープとも記す)がある。現在、TABテープは、例えば駆動用の半導体素子等を搭載する配線基板として活用され、量産されている。
【0003】
上述の配線基板の製造工程では、配線パターンの形成に例えば露光装置が用いられてきた。例えば特許文献1には、露光装置を用いて配線基板の銅箔の上に設けたドライフィルムに投影パターンを露光する手法が開示されている。その後、現像したドライフィルムをマスクとして銅箔をパターニングし、配線パターンを複数形成する。このように、ドライフィルムやフォトレジストが、例えば露光装置によって定められる露光範囲に見合った露光領域ごとに1回の露光で一括露光され、各配線パターンは、一括露光されたフォトレジストパターン等を用いて形成される。その後、露光領域と略一致する領域を個片化領域(製品領域)として個片化し、配線材等の製品として用いてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04−056864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記手法では、配線材の最大長は、個片化領域のサイズ、つまり、1回の露光で露光される範囲により制限を受けてしまう。この露光範囲を超える長さの配線材を得るには、例えば個片化した複数の配線材が有する配線パターンをハンダやコネクタを用いて繋ぎ合せなければならなかった。このため、工数が増えたり、工程が煩雑になったり、材料コストが増加したりしてしまう場合があった。
【0006】
本発明の目的は、1回の露光により露光される範囲による制限を緩和し、長尺の配線材が安価で簡便に得られる配線基板、配線基板の製造方法、および配線材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、絶縁基板と、前記絶縁基板上に複数形成された配線パターンと、を有し、前記配線パターンごとに個片化されて配線材となる配線基板であって、前記絶縁基板の個片化領域内に、前記個片化領域の1つの縁部から他の縁部側へと延び、前記他の縁部には至らない少なくとも1つの切れ込み部と、前記配線パターンの一部をなし、前記切れ込み部を取り囲むように形成された配線と、を有し、個片化された前記配線材を前記切れ込み部の所定位置を起点に折り曲げることにより、前記絶縁基板上に形成された前記配線の一部を前記個片化領域外へと突出させることが可能なように構成される配線基板が提供される。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、前記配線パターンには、電子部品を搭載する接続パッド
が金属メッキを施されて形成され、前記接続パッドは、個片化された前記配線材の折り曲げ位置及び重なり位置から外れる位置に配置される第1の態様に記載の配線基板が提供される。
【0009】
本発明の第3の態様によれば、前記接続パッドに電子部品が搭載されている第2の態様に記載の配線基板が提供される。
【0010】
本発明の第4の態様によれば、配線パターンごとに個片化されて配線材となるよう、絶縁基板上に前記配線パターンを複数形成する配線基板の製造方法であって、前記絶縁基板の個片化領域内に、前記個片化領域の1つの縁部から他の縁部側へと延び、前記他の縁部には至らない切れ込み部を少なくとも1つ形成する切れ込み部形成工程と、前記切れ込み部を取り囲む配線を有するよう前記配線パターンを形成する配線パターン形成工程と、を有し、個片化した前記配線材を前記切れ込み部の所定位置を起点に折り曲げる折り曲げ工程を行うことにより、前記絶縁基板上に形成された前記配線の一部を前記個片化領域外へと突出させることが可能なように構成する配線基板の製造方法が提供される。
【0011】
本発明の第5の態様によれば、個片化された後に前記配線材を構成する前記各配線パターンは、一括して露光したフォトレジストパターンを用いてそれぞれ形成され、前記個片化領域は、一括して露光した領域と略一致する第4の態様に記載の配線基板の製造方法が提供される。
【0012】
本発明の第6の態様によれば、絶縁基板と、前記絶縁基板上に形成された配線パターンと、を有する配線材であって、前記絶縁基板は、互いに対向する第1の辺および第3の辺と、互いに対向する第2の辺および第4の辺と、を有する矩形状であり、前記第1の辺から前記第3の辺に延び、前記第3の辺までに至らない長さに形成された切れ込み部と、前記切れ込み部を挟んで配置される2つの帯状部と、を有し、前記配線パターンは、前記切れ込み部を回り込み、一方の前記帯状部から他方の前記帯状部へと連続的に連なる配線を有し、2つの前記帯状部は、一方が折り曲げられて互いが略直線状に並ぶように構成される配線材が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、1回の露光により露光される範囲による制限を緩和し、長尺の配線材が安価で簡便に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る配線基板の一部を示す図であって、(a)は配線基板の上面図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る配線材を示す図であって、(a)は配線材の上面図であり、(b)は配線材を折り曲げる様子を示す図であり、(c)は折り曲げられた配線材の上面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法の各工程を、図1(a)のA−A断面と同方向側の断面図で示す工程図である。
【図4】従来例に係る配線基板の一部を示す図であって、(a)は配線基板の上面図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明の一実施形態に係る配線基板について説明する。
【0016】
(1)配線基板の構造
まずは、本発明の一実施形態に係る配線基板の構造について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る配線基板1の一部を示す図であって、(a)は配線基板1の上面図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。
【0017】
図1に示すように、配線基板1は、例えば絶縁基板10と絶縁基板10上に複数形成された配線パターン30pとを有する。配線基板1は、例えば配線パターン30pごとに個片化され、後述する配線材2(図2参照)等の製品として用いられるよう構成される。このとき、例えば個片化領域(製品領域)を、配線パターン30pを形成する際に用いられる露光装置により一括して露光される露光領域Eと略一致させたり、或いは、露光領域E内に個片化領域を複数含むこととしたりする場合がある。図1に例示する個片化領域は、露光領域Eと2本のスリット線S,Sとに囲まれた、露光領域Eと略一致する領域であり、露光領域Eと略同サイズとなっている。
【0018】
絶縁基板10は、例えば可撓性を有するポリイミド(PI)等の樹脂から構成される。絶縁基板10の幅方向の両端付近には、スプロケットホール40が長尺方向に配列形成されている。後述する配線基板1の製造工程等では、スプロケットホール40を用いて絶縁基板10の搬送や位置決めが行われる。スプロケットホール40は、配線基板1が個片化される際、スリット線S,Sで切り落とされる(スリットされる)ように構成される。
【0019】
絶縁基板10の個片化領域内には、個片化領域の1つの縁部から他の縁部側へと延び、他の縁部には至らない少なくとも1つの切れ込み部50が形成されている。切れ込み部50は、後述する配線材2の折り曲げの際、充分な強度が得られる幅を残したうえで、他の縁部の近傍まで形成されていることが望ましい。また、切れ込み部50の線幅は、配線基板1の強度や配線パターン30pの密集度等に基づき、適宜選択することができる。
【0020】
具体的には、個片化領域は4辺の縁部を有する矩形形状となっている。各4辺は、それぞれ、絶縁基板10の長尺方向で互いに対向し、露光領域Eの外周縁の一部と一致する第1の辺11および第3の辺13、長尺方向に対して垂直方向で互いに対向し、スリット線S,Sの一部と一致する第2の辺12と第4の辺14である。図1の例では、絶縁基板10は、1つの縁部としての第1の辺11から他の縁部としての第3の辺13側へと延びる切れ込み部51と、1つの縁部としての第3の辺13から他の縁部としての第1の辺11側へと延びる切れ込み部52と、の2つを有する。
【0021】
このように構成された絶縁基板10上には、例えば接着剤20を介して配線パターン30pが形成されている。配線パターン30pが形成された絶縁基板10の個片化領域内には、配線パターン30pの一部をなし、切れ込み部51,52をそれぞれ取り囲むように配線31が形成されている。
【0022】
また、配線パターン30pの一部は、配線パターン30pを保護するソルダーレジスト等の絶縁樹脂60に覆われている。図1(a)において、絶縁樹脂60は一点鎖線で示し、絶縁樹脂60の下の配線パターン30pも示した。
【0023】
配線パターン30pの露出部分には、例えば金(Au)、金(Au)/ニッケル(Ni)、錫(Sn)等のメッキ70(いわゆる、機能メッキ)が施され、各種の電子部品と接合されるように構成される。例えば個片化領域の略中央に設けられ、接続パッド等から構成される搭載部32には、LEDや駆動ICなどの半導体素子、LCD、コンデンサ、及び抵抗等の電子部品(いずれも図示せず)が搭載されるように構成される。半導体素子は、例えばフリップチップ接続やワイヤーボンディング接続等により搭載され、コンデンサや抵抗等は、例えばハンダ接続等により搭載される。また、例えば切れ込み部51,52が接する第1の辺11及び第3の辺13の近傍にそれぞれ配置される配線31の端部は、
コネクタへと差し込まれる差し込み部33となっている。差し込み部33は、図示しない補強板等で補強されていてもよい。
【0024】
以上のように、配線基板1を構成することで、1回の露光により露光される範囲による制限を緩和し、長尺の配線材2が安価で簡便に得られる。
【0025】
図4に示すように、絶縁基板510と絶縁基板510上に複数形成された配線パターン530pとを有する従来の配線基板5においては、1つの個片化領域(露光領域E5とスリット線S5,S5とで囲まれた領域)における配線材の最大長は、個片化領域のサイズ、つまり、露光領域E5に依存していた。露光領域E5を超える長さの配線材を得るには、個片化した複数の配線材が有する配線パターン530pの配線1つ1つをハンダやコネクタを用いて繋ぎ合せなければならなかった。このため、ハンダ等による接続作業が必要となって工数が増えたり、所定長さの配線材を得るための工程が煩雑になったり、コネクタ等の部品点数が増えて材料コストが増加したりしてしまう場合があった。露光領域E5内に複数の個片化領域を含むこととした場合には、配線材1つあたりの最大長は更に小さくなってしまっていた。
【0026】
しかしながら、本実施形態では、上記のように配線基板1を構成することで、後述するように、個片化された配線材2(図2参照)を切れ込み部50の所定位置を起点に折り曲げることにより、絶縁基板10上に形成された配線31の一部を個片化領域外へと突出させることが可能となる。これにより、例えば個片化領域や一括して露光される露光領域Eの最大長よりも長い、長尺の配線材2を安価で簡便に得ることができる。
【0027】
(2)配線材の構造
次に、本発明の一実施形態に係る配線材2の構造について、主に図2を用いて説明する。図2は、本実施形態に係る配線材2を示す図であって、(a)は配線材2の上面図であり、(b)は配線材2を折り曲げる様子を示す図であり、(c)は折り曲げられた配線材2の上面図である。なお、説明の便宜上、図2及び以下の説明においては絶縁樹脂60及びメッキ70を省略した。
【0028】
図2に示す配線材2は、上述の配線基板1を配線パターン30pごとに個片化することで得られる。つまり、例えば個片化領域が、図1に示す露光装置により一括して露光される露光領域Eと略一致するよう、例えばパンチング等により露光領域Eとスリット線S,Sで囲まれた領域を打ち抜いて配線基板1を個片化することで、露光領域Eと略同サイズの配線材2が得られる。
【0029】
図2(a)に示すように、配線材2が有する絶縁基板10は、例えば互いに対向する第1の辺11および第3の辺13と、互いに対向する第2の辺12および第4の辺14と、を有する矩形状となっている。
【0030】
また、絶縁基板10は、1つの縁部から他の縁部側へと延び、他の縁部には至らない少なくとも1つの切れ込み部50を有する。すなわち、絶縁基板10は、第1の辺11から第3の辺13に延び、第3の辺13までに至らない長さに形成された切れ込み部51と、第3の辺13から第1の辺11に延び、第1の辺11までに至らない長さに形成された切れ込み部52と、を有する。
【0031】
また、絶縁基板10は、切れ込み部50を挟んで配置される少なくとも2つの帯状部15を有する。図1の例では、絶縁基板10は、切れ込み部51を挟んで配置される帯状部15a,15bと、切れ込み部52を挟んで配置される帯状部15a,15cと、の3つを有する。
【0032】
また、絶縁基板10は、配線パターン30pの一部をなし、切れ込み部50を取り囲むように形成された配線31を有する。すなわち、絶縁基板10は、切れ込み部51(52)を回り込み、一方の帯状部15aから他方の帯状部15b(15c)へと連続的に連なる配線31を有する。
【0033】
また、絶縁基板10は、2つの帯状部15a,15bが連結される部分、つまり、第2の辺12と第3の辺13とで囲まれた部分に、山折り部81bと谷折り部82bとを有する。一点鎖線で示す山折り部81bは、第3の辺13の近傍まで延びる切れ込み部51の端部を起点に、切れ込み部51に対して垂直に延び、第2の辺12に達している。点線で示す谷折り部82bは、切れ込み部51の端部を起点に、切れ込み部51に対して水平に延び、第3の辺13に達している。
【0034】
また、絶縁基板10は、2つの帯状部15a,15cが連結される部分、つまり、第1の辺11と第4の辺14とで囲まれた部分に、山折り部81cと谷折り部82cとを有する。一点鎖線で示す山折り部81cは、第1の辺11の近傍まで延びる切れ込み部52の端部を起点に、切れ込み部52に対して垂直に延び、第4の辺14に達している。点線で示す谷折り部82cは、切れ込み部52の端部を起点に、切れ込み部52に対して水平に延び、第1の辺11に達している。
【0035】
山折り部81b,81c、谷折り部82b,82cにより、折り曲げ部80が構成される。2つの帯状部15は、一方が折り曲げ部80で折り曲げられて、互いが略直線状に並ぶように構成される。
【0036】
図2(b)に、帯状部15bが、山折り部81bと谷折り部82bとでそれぞれ山折りと谷折りとに折り曲げられ、帯状部15cが、山折り部81cと谷折り部82cとでそれぞれ山折りと谷折りとに折り曲げられる様子を示す。帯状部15a,15b(15a,15c)の連結部分では、2つの帯状部15a,15b(15a,15c)がそれぞれ有する配線パターン30pが、谷折り部82b(82c)に対して線対象に配置されることにより、連結部分が内側に折り込まれる際、導通を保ったまま互いに重なり合い、また、隣り合う配線31同士が接触してショートしたりしないように構成される。
【0037】
図2(c)に、配線材2が折り曲げられて、2つの帯状部15a,15bおよび2つの帯状部15a,15cのそれぞれが、互いに略直線状に並んだ様子を示す。なお、折り曲げ部80は、接着用テープ等で固定されていてもよい。
【0038】
このように、個片化された配線材2を切れ込み部50の所定位置、例えば端部を起点に折り曲げることにより、絶縁基板10上に形成された配線31の一部が個片化領域外へと突出させられる。なお、折り曲げの起点となる所定位置は端部でなくともよく、配線31の一部を個片化領域外へと突出させるに充分な位置であれば、山折り部81b(81c)が第1の辺11(第3の辺13)寄りにあってもよい。但し、帯状部15を折り曲げた状態で搭載部32が隠れることのないよう、起点となる位置は、切れ込み部50の端部から搭載部32近傍までの所定位置とすることが好ましい。
【0039】
以上の構成により、本実施形態においては、1回の露光により露光される範囲による制限を緩和し、長尺の配線材2を安価で簡便に得ることができる。これにより、例えば自動車内のルーフ等で用いられるLED等の駆動用ケーブルを、1本の配線材2で代用することなどが可能である。
【0040】
(3)配線基板の製造方法
次に、本発明の一実施形態に係る配線基板としての配線基板1の製造方法について、図3を用いて説明する。図3は、本実施形態に係る配線基板1の製造方法の各工程を、図1(a)のA−A断面と同方向側の断面図で示す工程図である。
【0041】
(銅箔貼り合わせ工程)
まずは、図3(a)に示すように、例えば接着剤20を介して、絶縁基板10の少なくとも片面に、導電層としての銅箔30等をラミネート(貼り合わせ)する。次に、図3(b)に示すように、例えば金型によるパンチングを行って、スプロケットホール40を形成する。
【0042】
(露光工程)
続いて、図3(c)に示すように、例えば銅箔30の略全面に、フォトレジスト35を塗布する。次に、図3(d)に示すように、フォトレジスト35を露光する。
【0043】
露光装置には、フォトマスクと配線基板等の露光対象物とが接触する密着露光方式と、非接触の投影露光方式と、のいずれかの方式を用いたものがある。また、投影露光方式には、一括露光方式と分割露光方式とがある。これらの方式により、露光装置の価格、分解能、品質安定性などが異なるため、露光対象物の仕様等に応じて露光装置が選択される。例えば、投影露光方式は、フォトマスクが露光対象物に非接触であるため、フォトマスクに異物が付着し難く、品質が安定している。また、分割露光方式では分割されたパターンを重ね合わせて露光するため、パターンずれが発生し易いが、一括露光方式ではこのようなパターンずれを抑制することができる。以上の利点を活かし、TABテープ等の配線基板の製造工程では、投影方式で、かつ、一括露光方式の露光装置が主流である。
【0044】
また、1回の露光により露光できる範囲は露光装置ごとに決まっており、配線基板の製造工程においては、露光装置の価格や製造ライン幅等から鑑みて、例えば露光範囲がφ200mmの露光装置が選択される。上述の露光領域E(図1参照)は、一括露光により露光される領域であり、露光装置が有する露光範囲に見合った露光領域が得られるよう、フォトマスクの大きさを調整することで決定される。
【0045】
本実施形態に係る露光工程では、図3(d)に示すように、所定の大きさのフォトマスク35mを用い、所定の露光領域E(図1参照)が一括露光により露光されるよう、フォトレジスト35を露光する。
【0046】
(配線パターン形成工程)
次に、図3(e)に示すように、フォトレジスト35を現像して得られるフォトレジストパターン35pをエッチングマスクとして銅箔30をエッチングし、搭載部32や、後に形成される切れ込み部50を取り囲む配線31等を有するよう配線パターン30pを形成する。すなわち、切れ込み部51(52)を回り込み、後に形成される一方の帯状部15aから他方の帯状部15b(15c)へと連続的に連なる配線31を有するよう配線パターン30pを形成する。
【0047】
このように、個片化された後に配線材2を構成する各配線パターン30pは、一括して露光したフォトレジストパターン35pを用いてそれぞれ形成される。また、個片化の際には、個片化領域が、例えば一括して露光した領域、すなわち、図1における露光領域Eと略一致するように個片化する。配線パターン30pの形成後、フォトレジストパターン35pを剥離する。
【0048】
(切れ込み部形成工程)
続いて、図3(f)に示すように、例えば金型によるパンチングを行って、個片化領域
の1つの縁部から他の縁部側へと延び、他の縁部には至らない切れ込み部50を少なくとも1つ形成する。具体的には、図1に示す、第1の辺11から第3の辺13に延び、第3の辺13までに至らない長さに形成された切れ込み部51と、第3の辺13から第1の辺11に延び、第1の辺11までに至らない長さに形成された切れ込み部52と、を形成する。
【0049】
また、上記により、図1に示したように、切れ込み部51(52)を挟んで配置される2つの帯状部15a,15b(15a,15c)が形成される。
【0050】
(絶縁樹脂形成工程・メッキ工程)
次に、図3(g)に示すように、配線パターン30pの一部に、ソルダーレジスト等を例えば印刷方式により塗布して絶縁樹脂60を形成する。そして、図3(h)に示すように、配線パターン30pの露出した表面にメッキ70を施す。
【0051】
以上により、本実施形態に係る配線基板1が製造される。上述したように、この後、例えば金型によるパンチングを行って、配線パターン30pごとに配線基板1を個片化し、配線材2を製造する。具体的には、図1に示す、互いに対向する第1の辺11および第3の辺13と、互いに対向する第2の辺12および第4の辺14と、を有する矩形状に配線基板1を切り出して個片化する個片化工程を行って、配線材2を製造する。
【0052】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0053】
例えば、上述の実施形態においては、2つの切れ込み部51,52が形成され、配線パターン30pは略Z字の配線31を有することとしたが、切れ込み部や配線パターンの配置はこれに限られない。例えば2つの切れ込み部の配置を入れ替えて、製造工程における配線基板の走行方向に対し、配線パターンが略逆Z字の配線を有することとしてもよい。また、切れ込み部が第2の辺12や第4の辺14から延びることとし、走行方向に対して略N字や逆N字の配線としたり、さらには、切れ込み部を1つのみとし、略V字や逆V字、或いは横向きV字の配線としたりしてもよい。
【0054】
また、上述の実施形態においては、接続パッド等から構成される搭載部32は個片化領域の略中央に設けられ、差し込み部33は切れ込み部51,52が接する第1の辺11及び第3の辺13の近傍にそれぞれ配置される配線31の端部に設けられることとしたが、搭載部や差し込み部の位置はこれに限られず、個片化された配線材の折り曲げ位置及び重なり位置から外れる位置に配置されていればよい。
【0055】
また、上述の実施形態においては、配線材2は山折り部81b,81cと谷折り部82b,82cとを有することとしたが、谷折り部82b,82cを山折りにすることとして、帯状部15b,15cを巻き込むように折り曲げる構成としてもよい。
【0056】
また、上述の実施形態においては、切れ込み部形成工程は、配線パターン形成工程の後に行うこととしたが、絶縁樹脂形成工程の後に行ってもよい。また、パンチング等を行う他の工程、例えばスプロケットホールの形成時や、個片化工程等の中で、切れ込み部形成工程を行ってもよい。但し、スプロケットホールの形成時に切れ込み部を形成することで、絶縁基板の剛性が低下してその後の搬送性に影響するおそれのあるときは、補強テープ等で補強しておいてもよい。これにより、工程を増やすことなく上記構成を得ることができ、長尺の配線材がより安価で簡便に得られる。
【符号の説明】
【0057】
1 配線基板
10 絶縁基板
11 第1の辺
12 第2の辺
13 第3の辺
14 第4の辺
15(15a,15b,15c) 帯状部
30p 配線パターン
31 配線
50(51,52) 切れ込み部
80 折り曲げ部
81b,81c 山折り部
82b,82c 谷折り部
E 露光領域
S スリット線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、前記絶縁基板上に複数形成された配線パターンと、を有し、前記配線パターンごとに個片化されて配線材となる配線基板であって、
前記絶縁基板の個片化領域内に、
前記個片化領域の1つの縁部から他の縁部側へと延び、前記他の縁部には至らない少なくとも1つの切れ込み部と、
前記配線パターンの一部をなし、前記切れ込み部を取り囲むように形成された配線と、を有し、
個片化された前記配線材を前記切れ込み部の所定位置を起点に折り曲げることにより、前記絶縁基板上に形成された前記配線の一部を前記個片化領域外へと突出させることが可能なように構成される
ことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記配線パターンには、
電子部品を搭載する接続パッドが金属メッキを施されて形成され、
前記接続パッドは、個片化された前記配線材の折り曲げ位置及び重なり位置から外れる位置に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記接続パッドに電子部品が搭載されている
ことを特徴とする請求項2に記載の配線基板。
【請求項4】
配線パターンごとに個片化されて配線材となるよう、絶縁基板上に前記配線パターンを複数形成する配線基板の製造方法であって、
前記絶縁基板の個片化領域内に、
前記個片化領域の1つの縁部から他の縁部側へと延び、前記他の縁部には至らない切れ込み部を少なくとも1つ形成する切れ込み部形成工程と、
前記切れ込み部を取り囲む配線を有するよう前記配線パターンを形成する配線パターン形成工程と、を有し、
個片化した前記配線材を前記切れ込み部の所定位置を起点に折り曲げる折り曲げ工程を行うことにより、前記絶縁基板上に形成された前記配線の一部を前記個片化領域外へと突出させることが可能なように構成する
ことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項5】
個片化された後に前記配線材を構成する前記各配線パターンは、一括して露光したフォトレジストパターンを用いてそれぞれ形成され、
前記個片化領域は、一括して露光した領域と略一致する
ことを特徴とする請求項4に記載の配線基板の製造方法。
【請求項6】
絶縁基板と、前記絶縁基板上に形成された配線パターンと、を有する配線材であって、
前記絶縁基板は、
互いに対向する第1の辺および第3の辺と、互いに対向する第2の辺および第4の辺と、を有する矩形状であり、
前記第1の辺から前記第3の辺に延び、前記第3の辺までに至らない長さに形成された切れ込み部と、
前記切れ込み部を挟んで配置される2つの帯状部と、を有し、
前記配線パターンは、
前記切れ込み部を回り込み、一方の前記帯状部から他方の前記帯状部へと連続的に連なる配線を有し、
2つの前記帯状部は、
一方が折り曲げられて互いが略直線状に並ぶように構成される
ことを特徴とする配線材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−190904(P2012−190904A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51565(P2011−51565)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】