説明

配線基板の製造方法、配線基板及びアクチュエータ装置

【課題】配線パターンの引き回し領域を大きくする。
【解決手段】長尺なフィルムは、パターン形成部分と、パターン形成部分の幅方向両側に繋がった、送り用の送り部分とを有している。このフィルムのパターン形成部分及び送り部分に、配線基板の配線パターンを長手方向に複数並べて形成し、その後、フィルムの送り部分を使って、送り装置によりフィルムの切り出す部分を抜き型まで送る。そして、抜き型により、フィルムのパターン形成部分及び送り部分の少なくとも配線パターンが形成された部分をCOF50として一体的に切り出す。次に、COF50を圧電アクチュエータ32に接続して、折り返し部51bと送り部分80bからなる短絡部分58を圧電アクチュエータ32と反対側に折り返して、FPC60と接続し、短絡部分58に形成された配線パターンとFPC60に形成された配線パターンを短絡させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法、配線基板及びアクチュエータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、配線基板を製造する方法として、長尺なフィルムに配線基板の配線パターンが長手方向に複数並べて形成されており、このフィルムから配線基板を複数切り出しているものがある。このようなフィルムは、幅方向中央の配線パターンが形成されたパターン形成部分と、送り装置による送り動作に使用されるために幅方向両側の配線パターンが形成されていない送り部分とを有している。そして、送り装置により送り部分を使ってフィルムの切り出す部分を切断装置まで送り、切断装置の抜き型により、フィルムから送り部分を残してパターン形成部分の1つの配線パターンが形成された部分を切り出して、配線基板を製造している。
【0003】
このように、送り部分が形成されたフィルムとして、例えば、特許文献1には、長尺なフィルムの幅方向両側に、送り用のスプロケット孔が長手方向に沿って間隔をあけて複数形成されているものが開示されている。そして、このフィルムのスプロケット孔が形成された幅方向両側を除いた幅方向中央に複数の配線パターンが形成された後、送り部分を残して、配線パターンが形成された部分を1つずつ切り出している。このように、フィルムの送り部分は、送り装置による送り動作が終了するまで使用される部分であり、且つ、送り動作終了後には不要な部分なので、フィルムの複数の配線パターンが形成された部分を切り出す際に一緒に切り出さずに残されていた。
【0004】
【特許文献1】特開2006−80440号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、配線基板に形成される配線パターンは高密度化してきており、パターン形成部分における配線パターンの引き回しが困難になってきている。しかしながら、配線パターンの形成領域を大きくするためにより幅の広いフィルムを使うと、配線基板が大型化してしまうし、また、コストも増大してしまう。
【0006】
そこで、本発明の目的は、従来不要となっていた送り部分にも配線パターンの一部を形成することで、配線パターンの形成領域をより大きく確保する配線基板の製造方法、配線基板及びアクチュエータ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の配線基板の製造方法は、パターン形成部分と、前記パターン形成部分の幅方向両側に設けられ、送り装置で送る際に使用される送り部分とを有する、長尺なフィルムから、複数切り出される配線基板の製造方法であって、前記フィルムの前記パターン形成部分及び前記送り部分に、前記配線基板の配線パターンを長手方向に複数並べて形成するパターン形成工程と、前記フィルムの前記送り部分を使って、前記送り装置により前記幅方向と交差する送り方向に沿って、前記フィルムの切り出す部分を切断装置まで送る送り工程と、前記切断装置により、前記フィルムの前記パターン形成部分と前記送り部分の少なくとも前記配線パターンが形成された部分とを一体的に切り出す切り出し工程と、を備えている。
【0008】
本発明の配線基板の製造方法によると、パターン形成部分に加えて、送り装置でフィルムを送る際に使用され、送り動作終了後には不要なので切り出さずに残されていた送り部分にも配線パターンの一部を形成することで、配線パターンの形成領域を大きく確保することができる。
【0009】
また、前記パターン形成工程において、前記送り部分に電源パターンまたはグランドパターンを形成することが好ましい。
【0010】
電源パターンやグランドパターンには、基準電位が付与されるため、電位変動は好ましくなく、比較的太い幅となっている。これによると、送り部分には、送り装置によりフィルムを送るときに力が加わるため、パターン形成部分に比べて、配線パターンの剥がれや摩耗が生じやすいが、この送り部分に、信号などを供給する精細なパターンよりも、幅の太い電源パターンやグランドパターンを形成することで、多少の配線パターンの剥がれや磨耗が生じても、電位に対する影響が少ない。また、パターン形成部分における配線パターンの形成領域を大きく確保することができる。
【0011】
さらに、前記配線基板の前記パターン形成部分は、アクチュエータの複数の駆動接点が形成された一表面に接続される複数の接続端子が形成された接続面を有しており、前記複数の接続端子は、電源端子またはグランド端子を含んでおり、前記配線基板は、前記アクチュエータと前記接続面を挟んで間隔をあけて対向する接続基板と接続されるものであり、前記パターン形成工程において、前記パターン形成部分の前記接続面と繋がる前記送り部分に前記電源端子またはグランド端子と接続される電源パターンまたはグランドパターンを形成し、前記切り出し工程で切り出された前記送り部分を前記接続基板に向かって折り返して、前記送り部分に形成された電源パターンまたはグランドパターンを前記接続基板の電源パターンまたはグランドパターンと短絡させる短絡工程をさらに備えていることが好ましい。
【0012】
これによると、パターン形成部分の接続面に形成された電源端子またはグランド端子を、送り部分を介して接続基板の電源パターンまたはグランドパターンと短絡させることで、配線長さを短くして、配線抵抗を小さくすることができる。また、パターン形成部分の、接続面と接続基板の間のスペースに電源パターンまたはグランドパターンを形成する必要がなくなり、他の配線パターンの形成領域を大きく確保することができる。
【0013】
また、前記配線基板の前記パターン形成部分は、アクチュエータの複数の駆動接点が形成された一表面に接続される複数の接続端子が形成された接続面と、前記接続面を挟んで間隔をあけて前記アクチュエータと対向する折り返し面と、を有しており、前記複数の接続端子は、電源端子またはグランド端子を含んでおり、前記パターン形成工程において、前記パターン形成部分の前記接続面と繋がる前記送り部分に前記電源端子またはグランド端子と接続される電源パターンまたはグランドパターンを形成し、前記切り出し工程で切り出された前記送り部分を前記接続基板に向かって折り返して、前記送り部分に形成された電源パターンまたはグランドパターンを前記折り返し面の電源パターンまたはグランドパターンと短絡させる短絡工程をさらに備えていてもよい。
【0014】
これによると、パターン形成部分の接続面に形成された電源端子またはグランド端子を、送り部分を介して折り返し面の電源パターンまたはグランドパターンと短絡させることで、配線長さを短くして、配線抵抗を小さくすることができる。また、パターン形成部分の、接続面と折り返し面の間のスペースに電源パターンまたはグランドパターンを形成する必要がなくなり、他の配線パターンの形成領域を大きく確保することができる。
【0015】
また、前記フィルムの前記送り部分には、前記長手方向に沿って所定間隔で複数の送り用のスプロケット孔が形成されており、前記切り出し工程において、前記スプロケット孔を残して前記送り部分の少なくとも前記配線パターンが形成された部分を切り出し、前記短絡工程において、前記切り出し工程で切り出された前記送り部分に残された前記スプロケット孔に治具を引っかけて、前記アクチュエータと反対側に折り返すことが好ましい。
【0016】
これによると、送り用のスプロケット孔を利用することで、送り部分に形成された配線パターンを傷つけずに、送り部分を折り返すことができる。
【0017】
本発明の配線基板は、パターン形成部分と、前記パターン形成部分の幅方向両側に繋がって設けられ、送り装置で前記幅方向と交差する送り方向に送る際に使用される送り部分とを有する、長尺なフィルムから、複数切り出される配線基板であって、前記パターン形成部分と前記送り部分の少なくとも一部とが一体的に繋がっており、前記パターン形成部分には、一部の配線パターンが形成されており、前記送り部分の少なくとも一部には、残りの配線パターンが形成されている。
【0018】
本発明の配線基板によると、パターン形成部分に加えて、送り装置でフィルムを送る際に使用され、送り動作終了後には不要なので切り出さずに残されていた送り部分にも配線パターンの一部を形成することで、配線パターンの形成領域を大きく確保することができ、配線パターン間を広くしてショートを防止することができる。
【0019】
また、前記送り部分に形成された前記残りの配線パターンは、電源パターンまたはグランドパターンであることが好ましい。
【0020】
電源パターンやグランドパターンには、基準電位が付与されるため、電位変動は好ましくなく、比較的太い幅となっている。これによると、送り部分には、送り装置によりフィルムを送るときに力が加わるため、パターン形成部分に比べて、配線パターンの剥がれや摩耗が生じやすいが、この送り部分に、信号などを供給する精細なパターンよりも、幅の太い電源パターンやグランドパターンを形成することで、多少の配線パターンの剥がれや磨耗が生じても、電位に対する影響が少ない。また、パターン形成部分における配線パターンの形成領域を大きく確保することができる。
【0021】
本発明のアクチュエータ装置は、上述した配線基板と、前記配線基板と接続される、複数の駆動接点が形成された一表面を有するアクチュエータと、前記アクチュエータの前記一表面と間隔をあけて対向し、前記配線基板と接続される接続基板と、を備えており、前記配線基板の前記パターン形成部分は、前記アクチュエータの前記一表面に形成された前記複数の駆動接点と接続される複数の接続端子が形成された接続面を有しており、前記配線基板の前記送り部分が前記配線基板に向かって折り返されて、前記残りの配線パターンが前記接続基板の配線パターンと短絡している。
【0022】
本発明のアクチュエータ装置によると、パターン形成部分の接続面に形成された接続端子を、送り部分を介して接続基板の配線パターンと短絡させることで、配線長さを短くして、配線抵抗を小さくすることができる。また、パターン形成部分の、接続面と接続基板の間のスペースに形成する配線パターンが減り、他の配線パターンの形成領域を大きく確保することができる。
【0023】
さらに、前記接続基板は、前記アクチュエータと対向して前記幅方向の一方側に引き出されており、前記送り部分は、前記幅方向の他方側に引き出されて前記接続基板と接続されていることが好ましい。
【0024】
これによると、接続基板と送り部分とが逆方向に引き出されているため、送り部分を折り返したときに接続基板に干渉せず、送り部分を接続基板に接続させやすい。
【0025】
また、別の観点では、本発明のアクチュエータ装置は、上述した配線基板と、前記配線基板と接続される、複数の駆動接点が形成された一表面を有するアクチュエータと、を備えており、前記配線基板の前記パターン形成部分は、前記アクチュエータの前記一表面に形成された前記複数の駆動接点と接続される複数の接続端子が形成された接続面と、前記接続面を挟んで間隔をあけて前記アクチュエータと対向する折り返し面と、を有しており、前記配線基板の前記送り部分が前記配線基板に向かって折り返されて、前記残りの配線パターンが前記折り返し面の配線パターンと短絡している。
【0026】
本発明のアクチュエータ装置によると、パターン形成部分の接続面に形成された接続端子を、送り部分を介して折り返し面の配線パターンと短絡させることで、配線長さを短くして、配線抵抗を小さくすることができる。また、パターン形成部分の、接続面と接続基板の間のスペースに形成する配線パターンが減り、他の配線パターンの形成領域を大きく確保することができる。
【0027】
また、前記複数の接続端子は、電源端子またはグランド端子を含んでおり、前記送り部分に形成された前記残りの配線パターンは、前記電源端子またはグランド端子と接続される電源パターンまたはグランドパターンであることが好ましい。
【0028】
電源パターンやグランドパターンには、基準電位が付与されるため、電位変動は好ましくなく、比較的太い幅となっている。これによると、送り部分には、送り装置によりフィルムを送るときに力が加わるため、パターン形成部分に比べて、配線パターンの剥がれや摩耗が生じやすいが、この送り部分に、信号などを供給する精細なパターンよりも、幅の太い電源パターンやグランドパターンを形成することで、多少の配線パターンの剥がれや磨耗が生じても、電位に対する影響が少ない。また、パターン形成部分における配線パターンの形成領域を大きく確保することができる。
【発明の効果】
【0029】
パターン形成部分に加えて、送り装置でフィルムを送る際に使用され、送り動作終了後には不要なので切り出さずに残されていた送り部分にも配線パターンの一部を形成することで、配線パターンの形成領域を大きく確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態に係るインクジェットプリンタの概略平面図である。
【図2】インクジェットヘッドの斜視図である。
【図3】図2のX方向から見たインクジェットヘッドの側面図である。
【図4】インクジェットヘッドの平面図である。
【図5】(a)は図4のA部の部分拡大図であり、(b)は(a)のB−B線断面図であり、(c)は(a)のC−C線断面図である。
【図6】駆動ICを含むCOFとFPCの接続部近傍を上方から見た図である。
【図7】(a)は型抜き装置の概略斜視図であり、(b)は短絡工程におけるインクジェットヘッドの斜視図である。
【図8】変形例におけるインクジェットヘッドの斜視図である。
【図9】変形例における圧電アクチュエータの断面図である。
【図10】変形例におけるCOFの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明の実施形態について説明する。本実施形態は、記録用紙に対してインクを噴射するインクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタに本発明を適用した一例である。
【0032】
まず、本実施形態のインクジェットプリンタの概略構成について説明する。図1は、本実施形態のインクジェットプリンタの概略平面図である。図1に示すように、プリンタ1は、所定の走査方向(図1の左右方向)に沿って往復移動可能に構成されたキャリッジ2と、このキャリッジ2に搭載されたインクジェットヘッド3と、記録用紙Pを、走査方向と直交する搬送方向(図1の下方)に搬送する搬送機構4などを有している。
【0033】
キャリッジ2は、走査方向に平行に延びる2本のガイド軸17に沿って往復移動可能に構成されている。また、キャリッジ2には、無端ベルト18が連結されており、キャリッジ駆動モータ19によって無端ベルト18が走行駆動されたときに、キャリッジ2は、無端ベルト18の走行にともなって走査方向に移動するようになっている。
【0034】
なお、プリンタ1には、走査方向に間隔を空けて配列された多数の透光部(スリット)を有するリニアエンコーダ10が設けられている。一方、キャリッジ2には、発光素子と受光素子とを有する透過型のフォトセンサ11が設けられている。そして、プリンタ1は、キャリッジ2の移動中にフォトセンサ11が検出したリニアエンコーダ10の透光部の計数値(検出回数)から、キャリッジ2の走査方向に関する現在位置を認識できるようになっている。
【0035】
このキャリッジ2には、インクジェットヘッド3が搭載されている。インクジェットヘッド3は、その下面(図1の紙面向こう側の面)に多数のノズル30(図4、図5参照)を有している。このインクジェットヘッド3は、搬送機構4により図1の下方(搬送方向)に搬送される記録用紙Pに対して、図示しないインクカートリッジから供給されたインクを多数のノズル30から噴射するように構成されている。
【0036】
搬送機構4は、インクジェットヘッド3よりも搬送方向上流側に配置された給紙ローラ12と、インクジェットヘッド3よりも搬送方向下流側に配置された排紙ローラ13とを有している。給紙ローラ12と排紙ローラ13は、それぞれ、給紙モータ14と排紙モータ15により回転駆動される。そして、この搬送機構4は、給紙ローラ12により、記録用紙Pを図1の上方からインクジェットヘッド3へ搬送するとともに、排紙ローラ13により、インクジェットヘッド3によって画像や文字などが記録された記録用紙Pを図1の下方へ排出する。
【0037】
次に、インクジェットヘッド3について説明する。図2は、インクジェットヘッドの斜視図である。図3は、図2のX方向から見たインクジェットヘッドの側面図である。図4は、インクジェットヘッド本体の平面図である。図5(a)は図4のA部の部分拡大図であり、(b)は(a)のB−B線断面図であり、(c)は(a)のC−C線断面図である。
【0038】
図2〜図5に示すように、インクジェットヘッド3は、ノズル30を含むインク流路が形成された流路ユニット31と、流路ユニット31の上面に配置された圧電アクチュエータ32と、圧電アクチュエータ32の上面に接続されたCOF50及びFPC60を含む配線基板ユニット9とを有している。なお、図4においては、図2及び図3に示される、圧電アクチュエータ32の上方に位置するCOF50を二点鎖線で示し、FPC60の図示を省略している。なお、本実施形態における圧電アクチュエータ32と配線基板ユニット9が、本発明におけるアクチュエータ装置に相当する。
【0039】
まず、流路ユニット31について説明する。図2、図4に示すように、流路ユニット31の上面には、インクジェットヘッド3で使用される4色のインク(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)がそれぞれ供給される4つのインク供給口28が設けられている。そして、流路ユニット31内には、インク供給口28に接続されたインク流路が形成されている。
【0040】
図5に示すように、流路ユニット31は、互いに積層された4枚のプレート21〜24で構成されている。4枚のプレート21〜24の材質は特に限定されないが、例えば、上の3枚のプレート21〜23はステンレス鋼などからなる金属プレートとし、一番下のノズル30が形成されるプレート24は合成樹脂材料で形成されたプレートとすることができる。この流路ユニット31には、インク供給口28に接続されたマニホールド26と、マニホールド26に連通した複数の圧力室20と、複数の圧力室20にそれぞれ連通する複数のノズル30が形成されている。
【0041】
図5(b)に示されるマニホールド26は、インク供給口28から搬送方向(図5(b)の紙面垂直方向)に延在している。図4、図5(a)に示すように、複数の圧力室20は、それぞれ、走査方向を長手方向とする略楕円形の平面形状を有する。また、複数の圧力室20は、紙送り方向に延在するマニホールド26に沿って配列されることで、1つの圧力室列8を構成している。さらに、走査方向に隣接する2つの圧力室列8によって1つの圧力室群7を構成し、流路ユニット31には、合計5つの圧力室群7が設けられている。
【0042】
なお、5つの圧力室群7のうち、図4中右側に位置する2つの圧力室群7は、インク供給口28からブラックインクが供給される、ブラック用の圧力室群7である。また、図4中左側に位置する3つの圧力室群7は、3つのインク供給口28からそれぞれ3色のカラーインク(イエロー、マゼンタ、シアン)が供給される、カラー用の圧力室群7である。
【0043】
複数の圧力室20にそれぞれ連通する複数のノズル30は、流路ユニット31の下面(最下層に位置するプレート24の下面)に開口している。また、図示は省略するが、これら複数のノズル30も、複数の圧力室20と同様に配列されており、図4中右側には、2つの圧力室群7にそれぞれ対応した、ブラックインクを噴射する2つのノズル群が配置され、図4中左側には、3つの圧力室群7にそれぞれ対応した、3色のカラーインク用を噴射する3つのノズル群が配置されている。
【0044】
そして、図5(b)に示すように、流路ユニット31内には、インク供給口28に接続されたマニホールド26から分岐して、圧力室20を経てノズル30に至る個別インク流路27が複数形成されている。
【0045】
次に、圧電アクチュエータ32について説明する。図5に示すように、圧電アクチュエータ32は、振動板33、3枚の圧電層(第1圧電層40、第2圧電層41、第3圧電層42)、複数の個別電極43、第1共通電極44、及び、第2共通電極45を有している。
【0046】
振動板33は、例えば、ステンレス鋼などの鉄系合金、銅系合金、ニッケル系合金、あるいは、チタン系合金などからなる。この振動板33は、流路ユニット31の最上層のプレート21の上面に複数の圧力室20を覆うように配設された状態で、プレート21に接合されている。
【0047】
3枚の圧電層40〜42は、それぞれ、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との混晶であるチタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする強誘電性の圧電材料によって形成されており、互いに積層された状態で、複数の圧力室20を覆うように振動板33の上面に接合されている。また、3枚の圧電層40〜42は、例えば、未焼成の3枚のグリーンシートに後述の電極をそれぞれ形成した後に積層し、高温で焼成することによって得られる。なお、3枚の圧電層40〜42は、金属製の振動板33によって圧力室20と隔てられており、振動板33によって圧電層42の下面が保護されるとともに、圧力室20内のインクの圧電層40〜42への浸入が振動板33により防止される。
【0048】
複数の個別電極43は、最上層の第1圧電層40の上面における、複数の圧力室20とそれぞれ対向する領域に設けられている。図5に示すように、各個別電極43は、圧力室20とほぼ同じ平面形状を有し、最上層の圧電層40の上面の、1つの圧力室20と対向する領域全体に設けられている。また、各個別電極43からは、圧力室20と対向しない領域へ、個別電極43を、後述する駆動IC52を実装するCOF50(図2、図3参照)と接続するための接点部43aが引き出されている。そして、個別電極43には、駆動IC52から所定の駆動電位(例えば、20V)とグランド電位のいずれかの電位が選択的に付与される。なお、COF50について詳しくは後述する。
【0049】
第1共通電極44は、第1圧電層40と中間層の第2圧電層41との間に配置されている。この第1共通電極44は、複数の圧力室20の短手方向(図5(c)における左右方向)に関する中央部とそれぞれ対向する、複数の対向電極部44aを有し、これら複数の対向電極部44aは互いに導通している。そして、第1共通電極44は、駆動IC52に接続され、常に上記駆動電位に保持される。
【0050】
第2共通電極45は、第2圧電層41と最下層の第3圧電層42との間に配置されている。この第2共通電極45は、複数の圧力室20の短手方向端部とそれぞれ対向する、複数の対向電極部45aを有し、これら複数の対向電極部45aは互いに導通している。そして、第2共通電極45は、駆動IC52に接続され、常にグランド電位に保持される。
【0051】
また、第1圧電層40の、個別電極43と第1共通電極44の対向電極部44aとに挟まれた圧電層部分(図5(c)における圧力室20の中央部と対向する部分:第1活性部35という)は、あらかじめ、その厚み方向に分極されている。また、第1圧電層40及び第2圧電層41の、個別電極43と第2共通電極45の対向電極部45aとに挟まれた圧電層部分(図5(c)における圧力室20の左右両端部と対向する部分:第2活性部36という)も、あらかじめ、その厚み方向に分極されている。
【0052】
以上説明した圧電アクチュエータ32の、インク噴射時における動作について述べる。インクを噴射しない待機状態においては、複数の個別電極43にはそれぞれグランド電位が付与されている。また、第1共通電極44は常に駆動電位に保持されるとともに、第2共通電極45は常にグランド電位に保持されている。したがって、待機状態では、個別電極43と第1共通電極44の間に電圧が印加されることになり、電極43、44の間に挟まれる第1圧電層40の第1活性部35に厚み方向の電界が作用する。この電界の方向は第1活性部35の分極方向と平行であるから、この第1活性部35は厚み方向と直交する面方向に収縮する。これにより、圧電層40、41の圧力室20と対向する部分が、圧力室20側(図5(b)における下側)に凸となるように変形した状態となっている。このとき、圧力室20は、圧電層40が変形していない状態と比較して、その容積が小さくなっている。
【0053】
この状態から、ある個別電極43の電位がグランド電位から駆動電位に切り換えられると、この個別電極43と第1共通電極44の間に電圧が印加されなくなり、変形していた第1活性部35が元に戻る。同時に、個別電極43と第2共通電極45との間には電圧が印加されることになるため、電極43、45の間に挟まれる第1圧電層40の第2活性部36に厚み方向の電界が作用する。この電界の方向は第2活性部36の分極方向と平行であるから、第2活性部36は厚み方向と直交する面方向に収縮する。これにより、圧電層40、41の圧力室20の略中央部と対向する部分が上方に引っ張られることとなり、圧電層40、41の圧力室20と対向する部分は全体として圧力室20と反対側(図5(b)における上側)に凸となるように変形して、圧力室20の容積が増加する。
【0054】
その後、個別電極43の電位が再びグランド電位に戻されると、個別電極43と第2共通電極45の間に電圧が印加されなくなり、第2活性部36の変形が元に戻る。同時に、第1活性部35が再び面方向に収縮して、圧電層40、41の圧力室20と対向する部分が全体として圧力室20側に凸となる。このときに、圧力室20の容積が大きく減少するため、圧力室20内のインクの圧力が増加して、圧力室20に連通するノズル30からインクが噴射される。
【0055】
次に、配線基板ユニット9について説明する。図6は、駆動ICを含むCOFとFPCの接続部近傍を上方から見た図である。図2、図3に示すように、配線基板ユニット9は、圧電アクチュエータ32を駆動する2つの駆動IC52が実装されたCOF50(配線基板)と、COF50を支持する基板支持部材57と、プリンタ1の電源を含むメイン制御基板(図示省略)と接続され、さらにCOF50と接続されたFPC60(接続基板)とを有している。
【0056】
図2、図3、図6に示すように、COF50は、ポリイミドなどの可撓性を有する合成樹脂フィルムからなる帯状の基材51を有している。そして、基材51の長さ方向両端部には入力端子53がそれぞれ設けられ、さらに、基材51の入力端子53の近傍部表面には、入力端子53と配線パターン55(図6参照)によって接続された駆動IC52が実装されている。また、基材51の両端部に設けられた2つの入力端子53にはFPC60が接続されている。
【0057】
基材51の長さ方向中央部には、駆動IC52と配線パターン56(図6参照)によって接続された複数の出力端子54(接続端子)が形成された接続部51aが設けられている。複数の出力端子54が設けられた接続部51aは、圧電アクチュエータ32の上面を覆うように配置されて、圧電アクチュエータ32の個別電極43と接続された接点部43a(駆動接点)と接続される。なお、実際には、接続部51aには多数の出力端子54が設けられているのであるが、図3では、図面の簡単のため、一部の出力端子54と、それに接続される接点部43aのみを図示している。
【0058】
また、基材51の、前記接続部51aに連なり、且つ、駆動IC52が実装された両端部は、圧電アクチュエータ32と反対側(上方)に折り返されて、接続部51aから離間した状態で、接続部51aを挟んで圧電アクチュエータ32の上面と対向する(以下、基材51の両端部を折り返し部51bとも称す)。これにより、図2、図3に示すように、COF50は、ほぼリング状(上方に向けて開口したC字状)に構成されている。なお、本実施形態における折り返し部51bの、圧電アクチュエータ32と対向している面が、本発明における折り返し面に相当する。
【0059】
さらに、基材51の長さ方向と直交する幅方向両側には、後述するフィルム80(図8(a)参照)から基材51を切り出す時に、複数の基材51が繋がったフィルム80を送るのに使用された送り部分80bの一部である短絡部分58a、58bが一体的に繋がって切り出されて、それぞれ接続部51aから幅方向外側に突出して設けられている。2つの短絡部分58a、58bは、基材51の長さ方向にずれて設けられており、後述する送り用のスプロケット孔81を有している。この短絡部分58の突出長さは、リング状のCOF50の上下間隔よりも長くなっている。本実施形態においては、短絡部分58の突出長さは約3mmであり、リング状のCOF50の上下間隔は約2mmである。
【0060】
そして、一方の短絡部分58aには、接続部51aにおいて第1共通電極44と接続された接点から引き回された配線パターン59a(図6参照)が形成されている。また、他方の短絡部分58bには、接続部51aにおいて第2共通電極45と接続された接点から引き回された配線パターン59b(図6参照)が形成されている。そして、2つの短絡部分58a、58bは、圧電アクチュエータ32と反対側(上方)に折り返されている。
【0061】
そして、ほぼリング状に形成されたCOF50の内側には基板支持部材57が設置されている。図2、図3に示すように、基板支持部材57は、圧電アクチュエータ32の上面に平行な姿勢で、COF50の折り返し部51bの下面に接触し、圧電アクチュエータ32の複数の活性部35、36を跨ぐように配置されている。そして、基板支持部材57は、COF50の折り返し部51b(基材51の両端部)を、接続部51aから離間させた状態で下方から支持する。
【0062】
FPC60は、COF50の2つの折り返し部51bに共通に重ねられ、その裏面に設けられた端子(図示省略)が、各々の折り返し部51bに設けられた入力端子53と接続される。そして、図6に示すように、前記複数の端子にはFPC60に形成された配線パターン62がそれぞれ接続されている。また、FPC60の上面には、COF50の2つの短絡部分58a、58bが共通に重ねられ、その表面に設けられた配線パターン63a、63bが、各々の短絡部分58a、58bに設けられた配線パターン59a、59bとそれぞれハンダで接続されている。
【0063】
このFPC60はCOF50から水平方向(走査方向)に引き出されて図示しないメイン制御基板と接続されており、メイン制御基板からの制御信号は、FPC60の配線パターン62を介して、COF50の駆動IC52へ入力される。そして、この制御信号に基づいて駆動IC52は上記駆動電位とグランド電位からなる駆動パルス信号を生成し、配線パターン56を介して、圧電アクチュエータ32の複数の個別電極43に接続された接点部43aに供給する。
【0064】
また、メイン制御基板から上記駆動電位が、FPC60の配線パターン63aを介して、COF50の短絡部分58aの配線パターン59a及び駆動IC52に入力される。そして、第1共通電極44は、常に上記駆動電位に保持される。さらに、メイン制御基板からグランド電位が、FPC60の配線パターン63bを介して、COF50の短絡部分58bの配線パターン59b及び駆動IC52に入力される。そして、第2共通電極45は、常にグランド電位に保持される。
【0065】
本実施形態のCOF50によると、接続部51aや折り返し部51bに加えて、後述する送り装置90で送る際に使用され、送り動作終了後には不要なので切り出さずに残されていた送り部分80b(図8(a)参照)を短絡部分58として、この短絡部分58にも配線パターンの一部を形成することで、配線パターンの形成領域を大きく確保することができる。これにより、配線パターン間を広くしてショートを防止することができたり、配線パターンの幅を太くすることができる。
【0066】
また、第1共通電極44や第2共通電極45は、いわゆるベタ電極であり、ノズル30からのインク噴射特性を安定させるのに安定した一定電位(基準電位)を保持する必要があり、電位変動は好ましく、これらの電極44、45に接続される配線パターン63a、63bは比較的太くする必要がある。また、この第1共通電極44や第2共通電極45に付与される電位は、駆動パルス信号とは異なり、駆動IC52を介する必要がない。そこで、本実施形態においては、FPC60に形成された太い幅の配線パターン63a、63bを、短絡部分58a、58bの配線パターン59a、59bを介して圧電アクチュエータ32に短絡させているため、配線長さを短くして、配線抵抗を小さくすることができる。
【0067】
また、近年、活性部35、36の増加にともない、個別電極43及び個別電極43に接続される接点部43aの数が増大する傾向にある。そして、駆動IC52のOUTの数も増大し、駆動IC52が大型化する。すると、COF50の折り返し部51bにおいて、駆動IC52の横のあいたスペースが狭くなり、第1共通電極44や第2共通電極45に接続される配線パターンの引き回しが困難となる。また、たとえ引き回すことができたとしても配線パターンの幅が細くなってしまう。そこで、接続部51aに形成され、第1共通電極44や第2共通電極45に接続される配線パターンを引き回して短絡部分58に形成することで、配線パターンの幅を、折り返し部51bに形成する場合に比べて、他の配線パターンが形成されていない分だけ太くすることができ、配線抵抗をさらに小さくすることができ、安定した一定電位を保持することができる。また、折り返し部51bにおける配線パターンの形成領域を大きく確保することができる。
【0068】
次に、COF50の製造方法について説明する。図7(a)は型抜き装置の概略斜視図であり、(b)は短絡工程におけるインクジェットヘッドの斜視図である。なお、図7(a)においては、最も右方のCOF50のみ配線パターンを図示しており、その他のCOF50では簡単のため配線パターンの図示を省略している。
【0069】
まず、図7(a)に示すように、ポリイミドなどの可撓性を有する合成樹脂からなる長尺なフィルム80に配線パターン82を形成する(パターン形成工程)。なお、配線パターン82は、図6を用いて上述した配線パターン55、56、59a、59bを総称したものである。より具体的には、フィルム80は、パターン形成部分80aと、パターン形成部分80aの幅方向両側に長手方向に所定のピッチ間隔をあけて穿設された複数のスプロケット孔81が形成された送り部分80bとを有しており、パターン形成部分80aと送り部分80bに配線パターン82を形成する。送り部分80bには、第1共通電極44、第2共通電極45と接続される配線パターン59a、59bを形成する。その後、フィルム80に駆動IC52を実装する。
【0070】
次に、上記配線パターン82が形成されたフィルム80を送り装置90に取り付ける。送り装置90は、軸芯が平行に配置された2つのローラ91、92と、両ローラ91、92間に巻回された無端のベルト93と、支持台97とを有している。ローラ91は、図示しない駆動モータにより駆動されて回転する駆動ローラである。ローラ92は、ローラ19の回転にともない走行するベルト93に合わせて回転する従動ローラである。ベルト93の外周面には、フィルム80のスプロケット孔81に係合可能なスプロケット爪96がスプロケット孔81と同じピッチ間隔をあけて複数形成されており、フィルム80を滑ることなく精度よく送ることができる。
【0071】
なお、ローラ91の回転量は、図示しないエンコーダにより検出しており、この回転量からフィルム80の送り量及び現在位置を認識できるようになっている。また、フィルム80は、配線パターン82や駆動IC52が配置された面が外側を向くように、リール94に巻回されており、このリール94が、2つのローラ91、92と平行に配置され、回転自在な軸芯95に装着されている。支持台97は、平板状をしており、ベルト93によって送られたフィルム80の下方に配置されており、フィルム80の下面と接触することによって、フィルム80を下方から支持している。また、支持台97は、図示しない吸着機構を有しており、この吸着機構は、フィルム80の後述する送り工程時には駆動していないが、後述する切り出し工程時に、上面に載置されたフィルム80を下方から吸着させて、その姿勢を位置ずれしないように保持している。
【0072】
そして、ローラ91を所定量だけ回転させることでベルト93を走行させて、フィルム80の切り出す部分を支持台97まで送って、抜き型98(切断装置)と対向させる(送り工程)。抜き型98は、パターン形成部分80aと送り部分80bの配線パターン82が形成された部分を一体的に切り出すことができる形状となっている。
【0073】
次に、抜き型98を降下させて、フィルム80から、パターン形成部分80aと、送り部分80bの配線パターン82が形成され、スプロケット孔81を含んだ部分とが一体に繋がった状態で基材51を切り出す(切り出し工程)。そして、フィルム80から全ての基材51が切り出されるまで、上記送り工程と切り出し工程を繰り返す。なお、フィルム80から切り出されて支持台97に載置された基材51は、図示しない吸着アームで吸着してベルトコンベア上に移動させている。このように切り出された基材51が、配線パターン82が形成され、駆動IC52が実装されたCOF50である。
【0074】
そして、COF50の長さ方向中央部の接続部51aを圧電アクチュエータ32の上面に接続する。そして、COF50の長さ方向の両側の折り返し部51bを折り返して、FPC60と接続する。その後、図7(b)に示すように、COF50の送り部分80bを針状の治具99をスプロケット孔81に引っかけて折り返して、FPC60とハンダで接続する。これで、COF50の製造が完了する。
【0075】
本実施形態におけるCOF50の製造方法によると、上述したように、配線パターンの形成領域を大きく確保することができ、配線パターンの引き回しが容易になる。また、フィルム80の送り部分80bには送り装置90によりフィルム80を送るときの力が加わるため、パターン形成部分80aに比べて、配線パターンの剥がれや磨耗が生じやすいが、この送り部分80bに形成された配線パターンが、基準電位が付与されるために幅の太い電源パターンまたはグランドパターンであることで、多少の配線パターンの剥がれや磨耗が生じても、幅が太い分、電位に対する影響が少ない。
【0076】
次に、上述した実施形態に種々の変形を加えた変更形態について説明する。ただし、上述した実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0077】
本実施形態においては、フィルム80の送り部分80bの一部に配線パターンを形成して、折り返していたが、例えば、図8に示すように、パターン形成部分101aに加えて、送り部分101bの全域に配線パターン102を形成して、送り部分101bを折り返さずに引き出してもよい。
【0078】
また、本実施形態においては、圧電アクチュエータ32に第1共通電極44と第2共通電極45が設けられており、駆動IC52を介さない電源パターンとグランドパターンを短絡部分58を介して接続部51aに引き回していたが、例えば、図9に示すように、1枚の圧電層103からなり、その両側を駆動パルス信号が付与される個別電極104と1つの共通電極105で挟まれた、単純なユニモルフ型の圧電アクチュエータ106においては、駆動IC52を介さないグランドパターンだけを短絡部分58を介して接続部51aに引き回してもよい。
【0079】
また、本実施形態においては、フィルム80の送り部分80bには、送り用のスプロケット孔81が形成されていたが、送り部分80bがフィルム80の送り動作に使用される領域であれば、例えば、図10に示すように、送り部分107(図10の幅方向の鎖線よりも外側の部分)にスプロケット孔が形成されず、送り部分107を例えばチャックで把持して送ってもよい。チャックは、図7(a)に示すような無端のベルト93にスプロケット爪96の代わりに複数設けられており、フィルム80を把持して送る。このような場合に、上述したような送り部分の一部ではなく全域に配線パターンを形成するのが、送り部分に配線パターンを形成する構成としては好適である。
【0080】
また、本実施形態においては、ローラ91が駆動ローラとなっており、フィルム80を送っていたが、フィルム80を送る機構としては、ローラ92よりも送り方向の上流側に、フィルム80を上下から挟んで送るニップローラが設けられており、このニップローラでフィルム80を送ってもよい。このとき、ローラ91は従動ローラとすることが可能である。すなわち、本実施形態の送り装置90は、フィルム80を送る駆動力を有していなくても、ニップローラがあればフィルム80を送ることが可能である。
【0081】
また、本実施形態においては、COF50の幅方向両側の2つの送り部分をそれぞれ短絡部分58と一緒に切り出していたが、一方の送り部分だけを短絡部分58とし、この短絡部分58をFPC60の引き出されている方向の基端側端部と接続してもよい。このとき、1つの短絡部分158に、電源パターンとグランドパターンを形成する。これによると、FPC60と送り部分が逆方向に引き出されているため、送り部分を折り返したときにFPC60と干渉せず、送り部分をFPC60に接続させやすい。
【0082】
また、本実施形態においては、COF50の短絡部分58をFPC60の上面に接続していたが、FPC60の下面に接続してもよく、FPC60が片面配線であるか、両面配線であるかなどの配線パターンの引き回しされている面を考慮して適宜接続すればよい。また、たとえ、FPC60の配線パターンが引き回されていない面にCOF50の短絡部分58が接続されたとしても、FPC60にスルーホールが形成されていれば配線パターン同士を導通させることは可能である。
【0083】
また、本実施形態においては、駆動IC52が実装されたCOF50とFPC60の2枚の基板から配線基板ユニット9が構成されていたが、配線基板ユニット9は1枚の基板で構成されていてもよい。このとき、COFの送り部分からなる短絡部分は、COFの駆動ICよりも上流側(接続部から離れた側)に短絡すればよい。
【0084】
また、本実施形態においては、COF50の短絡部分58を折り返しやすくするように、スプロケット孔81が残されていたが、このスプロケット孔81は残されていなくてもよい。このとき、例えば、互いに隣接する2つのスプロケット孔81の間を短絡部分58とすれば、より太い配線パターンを形成することができ、配線抵抗をより小さくすることができる。
【0085】
また、本実施形態においては、フィルム80から1回の工程でCOF50を所望の形状に切り出していたが、まず、フィルム80から送り部分80bの全域を残すように、COF50をカッターやハサミなどで分断して、その後、COF50の送り部分80bの配線パターンが形成されていない不必要な部分を1枚ずつ切断してもよい。
【0086】
また、本実施形態においては、COF50の短絡部分58に電源パターンまたはグランドパターンを形成していたが、これに限らず、駆動パルス信号を送る配線パターンであってもよい。
【0087】
また、本実施形態においては、フィルム80の送り部分80bの配線パターンが形成された一部だけを残して、残りの送り部分80bを切断除去していたが、送り部分80bの配線パターンが形成されていない部分も含めた全域を切断せずに残してもよい。すなわち、フィルム80を長手方向に間隔をあけて分断するだけでもよい。
【0088】
また、本実施形態においては、COF50の長さ方向の両側に折り返し部51bを有していたが、片側に折り返し部51bを有していてもよい。
【0089】
本発明を適用可能なアクチュエータは圧電アクチュエータには限られるものではなく、他の駆動方式のアクチュエータに適用することも可能である。また、用途についても、インクジェットヘッド以外の装置を駆動するアクチュエータに対しても本発明を適用できる。また、本発明を適用可能な配線基板は、駆動ICが実装され、アクチュエータと接続されるCOFに限られるものではなく、駆動ICが実装されておらず、または、アクチュエータと接続されない配線基板に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0090】
50 COF
80 フィルム
80a パターン形成部分
80b 送り部分
90 送り装置
98 抜き型
55、56、59a、59b、82 配線パターン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン形成部分と、前記パターン形成部分の幅方向両側に繋がって設けられ、送り装置で送る際に使用される送り部分とを有する、長尺なフィルムから、複数切り出される配線基板の製造方法であって、
前記フィルムの前記パターン形成部分及び前記送り部分に、前記配線基板の配線パターンを長手方向に複数並べて形成するパターン形成工程と、
前記フィルムの前記送り部分を使って、前記送り装置により前記幅方向と交差する送り方向に沿って、前記フィルムの切り出す部分を切断装置まで送る送り工程と、
前記切断装置により、前記フィルムの前記パターン形成部分と前記送り部分の少なくとも前記配線パターンが形成された部分とを一体的に切り出す切り出し工程と、を備えていることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記パターン形成工程において、前記送り部分に電源パターンまたはグランドパターンを形成することを特徴とする請求項1に記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記配線基板の前記パターン形成部分は、アクチュエータの複数の駆動接点が形成された一表面に接続される複数の接続端子が形成された接続面を有しており、
前記複数の接続端子は、電源端子またはグランド端子を含んでおり、
前記配線基板は、
前記アクチュエータと前記接続面を挟んで間隔をあけて対向する接続基板と接続されるものであり、
前記パターン形成工程において、前記パターン形成部分の前記接続面と繋がる前記送り部分に前記電源端子またはグランド端子と接続される電源パターンまたはグランドパターンを形成し、
前記切り出し工程で切り出された前記送り部分を前記接続基板に向かって折り返して、前記送り部分に形成された電源パターンまたはグランドパターンを前記接続基板の電源パターンまたはグランドパターンと短絡させる短絡工程をさらに備えていることを特徴とする請求項2に記載の配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記配線基板の前記パターン形成部分は、アクチュエータの複数の駆動接点が形成された一表面に接続される複数の接続端子が形成された接続面と、前記接続面を挟んで間隔をあけて前記アクチュエータと対向する折り返し面と、を有しており、
前記複数の接続端子は、電源端子またはグランド端子を含んでおり、
前記パターン形成工程において、前記パターン形成部分の前記接続面と繋がる前記送り部分に前記電源端子またはグランド端子と接続される電源パターンまたはグランドパターンを形成し、
前記切り出し工程で切り出された前記送り部分を前記接続基板に向かって折り返して、前記送り部分に形成された電源パターンまたはグランドパターンを前記折り返し面の電源パターンまたはグランドパターンと短絡させる短絡工程をさらに備えていることを特徴とする請求項2に記載の配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記フィルムの前記送り部分には、前記長手方向に沿って所定間隔で複数の送り用のスプロケット孔が形成されており、
前記切り出し工程において、前記スプロケット孔を残して前記送り部分の少なくとも前記配線パターンが形成された部分を切り出し、
前記短絡工程において、前記切り出し工程で切り出された前記送り部分に残された前記スプロケット孔に治具を引っかけて、前記送り部分を折り返すことを特徴とする請求項3または4に記載の配線基板の製造方法。
【請求項6】
パターン形成部分と、前記パターン形成部分の幅方向両側に繋がって設けられ、送り装置で前記幅方向と交差する送り方向に送る際に使用される送り部分とを有する、長尺なフィルムから、複数切り出される配線基板であって、
前記パターン形成部分と前記送り部分の少なくとも一部とが一体的に繋がっており、
前記パターン形成部分には、一部の配線パターンが形成されており、
前記送り部分の少なくとも一部には、残りの配線パターンが形成されていることを特徴とする配線基板。
【請求項7】
前記送り部分に形成された前記残りの配線パターンは、電源パターンまたはグランドパターンであることを特徴とする請求項6に記載の配線基板。
【請求項8】
請求項6に記載の配線基板と、
前記配線基板と接続される、複数の駆動接点が形成された一表面を有するアクチュエータと、
前記アクチュエータの前記一表面と間隔をあけて対向し、前記配線基板と接続される接続基板と、を備えており、
前記配線基板の前記パターン形成部分は、前記アクチュエータの前記一表面に形成された前記複数の駆動接点と接続される複数の接続端子が形成された接続面を有しており、
前記配線基板の前記送り部分が前記配線基板に向かって折り返されて、前記残りの配線パターンが前記接続基板の配線パターンと短絡していることを特徴とするアクチュエータ装置。
【請求項9】
前記接続基板は、前記アクチュエータと対向して前記幅方向の一方側に引き出されており、
前記送り部分は、前記幅方向の他方側に引き出されて前記接続基板と接続されていることを特徴とする請求項8に記載のアクチュエータ装置。
【請求項10】
請求項6に記載の配線基板と、
前記配線基板と接続される、複数の駆動接点が形成された一表面を有するアクチュエータと、を備えており、
前記配線基板の前記パターン形成部分は、前記アクチュエータの前記一表面に形成された前記複数の駆動接点と接続される複数の接続端子が形成された接続面と、前記接続面を挟んで間隔をあけて前記アクチュエータと対向する折り返し面と、を有しており、
前記配線基板の前記送り部分が前記配線基板に向かって折り返されて、前記残りの配線パターンが前記折り返し面の配線パターンと短絡していることを特徴とするアクチュエータ装置。
【請求項11】
前記複数の接続端子は、電源端子またはグランド端子を含んでおり、
前記送り部分に形成された前記残りの配線パターンは、前記電源端子またはグランド端子と接続される電源パターンまたはグランドパターンであることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載のアクチュエータ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−119392(P2012−119392A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265546(P2010−265546)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】