説明

配線構造体

【課題】
金属と樹脂からなる混合層がパターン状に形成されている配線構造体について、絶縁基板に対する配線の密着力を確保して剥離を防止すること。
【解決手段】
配線構造として、配線と基板の間に混合層を設けることであり、このことにより、金属結合による配線と混合層の密着力を強化するとともに、混合層の樹脂と基板との相溶性により良好な密着力を確保することができる。また従来のように密着力を確保するために基板表面を粗面化する必要はないので微細パターンに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配線パターンの導電配線を絶縁基板に密着させた配線構造体に関するものであり、絶縁基板の射出成形を利用して機能性を有する導電配線のパターン構造を転写する配線基板の製造方法に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板またはこれに類似する配線基板による配線構造体に関連するものとして、次の第1の従来技術、第2の従来技術がある。
【0003】
1.第1の従来技術
(1)特許3528924号公報(特許文献1)
特許文献1に記載されているものは、内層回路40A,40B上に設けた絶縁層47のブラインドバイアホール45を介して、内層回路40A,40Bと絶縁層47上の外層回路61A,61Bとを接続するに際し、絶縁層47上に銅ペースト層52を塗布し、この銅ペースト層上に電気銅メッキ51を施し、外層回路61A,61Bを形成した多層プリント配線板であり、製造の工数が少なくて低コスト化が可能であると共に、無電解メッキを省略できる点でも更に工程の簡略化、材料費等の低減を図れ、回路パターンの被着強度を向上させることができるものである。
但し、この段落における符号は、特許文献1における符号である(以下、この項において同じ)。
【0004】
(2)特開2006−222408号公報(特許文献2)
特許文献2に記載されているものは、煩雑な工数や種々の不具合を伴う特別な加工や処理を必要とせずに、プラスチック基材と導体配線との密着性を高めるために、導体配線パターンのベースとなる触媒がプラスチック基材と強固に接着できる導体配線構造体及びその製造方法を提供するものであり、プラスチック基材2表面に連続的な導体配線パターン3が形成された導体配線構造体において、プラスチック基材内部に埋没した埋設状態、或いは/及び、該プラスチック基材表面に一部が露出した埋設状態にて所定のパターン状に形成された触媒粒子群4と、該触媒粒子群に一体化された導体配線パターンとを備えているものである。
【0005】
2.第2の従来技術
第2の従来技術として次の公知文献(3)〜(6)のものがある。
(3)特開2005−244039号公報(特許文献3)
特許文献3に記載されているものは、導体回路に剥離が生じないプリント配線板を提供するものであり、導体回路が2種類以上の金属層部からなり、かつ少なくとも外層側の第1金属部の幅より内層側の第2金属部の幅の方が大きくなっているプリント配線板である。そして転写法によりプリント基板を製造する方法において、メタルキャリア上に、めっき処理により2種類以上の金属層部を形成させた後、前記金属層部の少なくとも外層側の第1金属部の幅が、内層側の第2金属部の幅よりも小さくなるように当該金属部をエッチングして導体回路を形成するものである。
【0006】
(4)特開2002−4077号公報(特許文献4)
特許文献4に記載されているものは、高密度,高精度を要求される樹脂層転写タイプの電鋳製品及びその製造方法を提供することを目的とするものであり、所定のパターンからなる電鋳基体1を、樹脂層3にて被覆して、樹脂層3から電鋳基体1の裏面を露出させてなる電鋳製品において、上記電鋳基体1の上端周縁に断面庇状の突部2を一体に形成したことを特徴とする電鋳製品であり、また、母型4の主面に、レジストパターン層7を形成する工程と、上記母型4のレジストパターン層7で規定された露出面に、電鋳金属をレジストパターン層7の厚みを超えて電着させることで、上端周縁に断面庇状の突部2が一体に形成された形態の所定のパターンからなる電鋳基体1を形成する工程と、上記母型4上においてレジストパターン層7を除去した後、電鋳基体1を樹脂層3にて被覆する工程と、上記母型4を除去して、樹脂層3から電鋳基体1の裏面を露出させてなる工程を有する電鋳製品の製造方法である(なお、この段落における符号は、公知文献4における符号)。
【0007】
(5)特開平11−17314号公報(特許文献5)
特許文献5に記載されているものは、立体的形状を有する絶縁基板の凹部に、高精度かつ高密度な導体配線パターンであって、導体配線の脱落に対する信頼性が高く、しかも大電流容量化が可能なものを形成することができるものであり、仮基板(1)上に光硬化性樹脂を塗布し、露光、現像して導体配線パターンとは逆の反転パターンを形成した後、反転パターンのすき間に形成された電路(3・・・)に電気メッキ法により導体配線(4・・・)を形成し、次いで、得られた仮基板を金型内に収めて配線パターンの形成面に絶縁性基板を成型した後、仮基板(1)を成形体から取り除き、導体配線パターンとともに絶縁性マスク(2)をも成型体表面に転写するようにしたものである。
【0008】
(6)特開2005−322834号公報(特許文献6)
特許文献6に記載されているものは、パターンが支持部材に対して良好な密着性を有することができるパターン形状体を構成し、またこのようなパターン形状体を安価で比較的簡単に製作することができるようにしたものであり、粒状の集合体にて構成されたパターンと、該パターンを支持している支持部材とを備え、該支持部材とパターンとが接触している界面において、該パターンを構成している粒状の集合体と該支持部材との混合層が形成されているパターン形状体を前提として、該パターン中の混合層を除く部分に存在する粒子の大きさを、該混合層に存在する粒子に比べて大きくしたものである。
【特許文献1】特許第3528924号公報
【特許文献2】特開2006−222408号公報
【特許文献3】特開2005−244039号公報
【特許文献4】特開2002−4077号公報
【特許文献5】特開平11−17314号公報
【特許文献6】特開2005−322834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
〔従来技術の問題点〕
機能部品や機能モジュールの小型化を図る方法として、ボードレスによる配線形成、実装が挙げられる。代表的なものではMID(Molded Interconnect Device)と呼ばれる、配線を成形体表面に構成し、部品実装することにより、基板をなくすことで小型化を図ることができる。配線が微細化するに従って、配線密着力の確保が課題になる。
【0010】
(1)第1の従来技術の問題点
特許第3528924号公報(特許文献1)の従来技術では、内層回路40A,40B上に設けた絶縁層47のブラインドバイアホール45を介して、内層回路40A,40Bと絶縁層47上の外層回路61A,61Bとを接続するに際し、絶縁層47上に銅ペースト層52を塗布し、この銅ペースト層上に電気銅メッキ51を施し、外層回路61A,61Bを形成した多層プリント配線板がある。このような構造では、スクリーン印刷等にてパターンを形成しているので印刷形状のだれやにじみ等が発生し、このために10μm幅以下の微細パターンに適用するのは困難である。
【0011】
また、特開2006−222408号公報(特許文献2)の従来技術では、プラスチック基材2の表面に連続的な導体配線パターン3が形成された導体配線構造体において、プラスチック基材内部に埋没した状態、或いは/及び、該プラスチック基材表面に一部が露出した埋設状態にて所定のパターン状に形成された触媒粒子群4と、該触媒粒子群に一体化された導体配線パターンとを備えていることにより密着力を確保している。しかし触媒機能を発揮するためには触媒が樹脂に覆われている部分を除去する必要があり、また、密着力はアンカー効果による分子間力の弱い結合力によるため、強い配線密着力を形成するのは困難である。
【0012】
(2)第2の従来技術の問題点
特開2005−244039号公報(特許文献3)の従来技術では、導体回路が2種類以上の金属層部からなり、かつ少なくとも外層側の第1金属部の幅より内層側の第2金属部の幅の方が大きくなっているプリント配線基板を転写法によりプリント配線板を製造する方法において、メタルキャリア上に、めっき処理により2種類以上の金属層部を形成した後、前記金属層部の少なくとも外層側の第1金属部の幅が、内層側の第2金属部の幅よりも小さくなるように当該金属部をエッチングして導体回路を形成している。このような構造では、微細配線を形成する場合内装側の配線幅によって配線ピッチが制限されてしまい、配線幅が狭くなってしまうという問題がある。また、接続端子パッドのような箇所では有効面積が小さくなる問題がある。
【0013】
また、特開2002−4077号公報(特許文献4)のものは、所定のパターンからなる電鋳基体1を、樹脂層3にて被覆して、樹脂層3から電鋳基体1の裏面を露出させてなる電鋳製品において、上記電鋳基体1の上端周縁に断面庇状の突部2を一体に形成したことを特徴とする電鋳製品であり、また、母型4の主面に、レジストパターン層7を形成する工程と、上記母型4のレジストパターン層7で規定された露出面に、電鋳金属をレジストパターン層7の厚みを超えて電着させることで、上端周縁に断面庇状の突部2が一体に形成された形態の所定のパターンからなる電鋳基体1を形成する工程と、上記母型4上においてレジストパターン層7を除去した後、電鋳基体1を樹脂層3にて被覆する工程と、上記母型4を除去して、樹脂層3から電鋳基体1の裏面を露出させてなる工程を有する電鋳製品の製造方法である。
この方式においても、微細配線時における配線幅が狭くなる問題やパッド面積が減少する問題は同様に生じる。
【0014】
また、特開平11−17314号公報(特許文献5)のものは、仮基板上に光硬化性樹脂を塗布し、露光、現像して導体配線パターンとは逆の反転パターンを形成した後、反転パターンのすき間に形成された電路に電気メッキ法により導体配線を形成し、次いで、得られた仮基板を金型内に収めて配線パターンの形成面に絶縁性基板を成型した後、仮基板を成形体から取り除き、導体配線パターンとともに絶縁性マスクをも成型体表面に転写するようにしたことで、配線密着力を確保している。しかし、前述同様に配線幅及びパッド面積に関しては、有効に面積が得られない問題がある。
【0015】
〔課題〕
以上の従来技術の問題点を踏まえて、本発明は金属と樹脂からなる混合層がパターン状に形成されている配線構造体について、絶縁基板に対する配線の密着力を確保して剥離を防止することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
〔第1の手段〕
上記課題を解決するための第1の手段は、配線構造として、配線と基板の間に混合層を設けることであり、このことにより、金属結合による配線と混合層の密着力を強化するとともに、混合層の樹脂と基板との相溶性により良好な密着力を確保することができる。また従来のように密着力を確保するために基板表面を粗面化する必要はないので微細パターンに適している。
【0017】
〔第2の手段〕
上記課題を解決するための第2の手段は、配線構造として、絶縁基板に一部埋設することであり、このことにより、密着力の確保が達成される。特に様々な配線幅、長さを有し、微細なパターンを有する配線に対して、本発明は個々の配線に対し密着力を制御することが可能である。
【発明の効果】
【0018】
各請求項に係る発明の効果は、次のとおりである。
1.第1の発明(請求項1〜8)
(1)請求項1に係る発明
混合層は金属配線に含まれる材料と金属結合を形成し、かつ樹脂基板とは成形時の樹脂浸透により結合されるため、配線密着力が極めて高いので、配線が基板から剥離することが防止される。
【0019】
(2)請求項2に係る発明
混合層が導電性を有するので、電解めっきにてパターン状に配線を形成することができる。
【0020】
(3)請求項3に係る発明
強固な金属結合が得られるので、配線密着力が極めて高い。
【0021】
(4)請求項4に係る発明
樹脂間の良好な結合が得られ、したがって、配線密着力が高い。
【0022】
(5)請求項5に係る発明
良好な密着力を有する熱硬化樹脂のみならず、本発明では高い密着力が得られるため、熱可塑性樹脂を適応することも可能であり、材料選択性に富む。
【0023】
(6)請求項6に係る発明
簡便な方法で配線密着力に優れた混合層を形成することができる。
【0024】
(7)請求項7に係る発明
側面部も樹脂と接着するので、優れた配線密着力を得ることができる。
【0025】
(8)請求項8に係る発明
機能部品を構造体に内在させることにより小型化が図れる。
【0026】
2.第2の発明(請求項9〜14)
(1)請求項9に係る発明
絶縁基板に埋め込まれた配線部が存在するので配線密着力が高く、したがって、配線が基板から剥離することは防止される。
【0027】
(2)請求項10に係る発明
配線が絶縁基板と同一面になっているので、電極などの接続部における接続高さを確保することができる。また基板上にある配線と別な配線(又は機能部品)とを結線させるための配線を印刷によって形成する場合、段差がないため、基板上の配線と樹脂境界部でのクラック発生を抑制することができる。
【0028】
(3)請求項11に係る発明
配線の剥離しやすい端部を基板表面に埋設させたことにより、強い配線密着力を確保することができる。
【0029】
(4)請求項12に係る発明
導電配線の端子間をつなぐ微細配線を埋設させたことにより、当該微細配線の外傷による断線を確実に防止することができる。
【0030】
(5)請求項13に係る発明
転写版を用いることによって、導電配線を埋設した配線基板を安価に形成することができる。
【0031】
(6)請求項14に係る発明
機能部品を構造体に内在させたことにより、小型化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
1.第1の発明についての実施例1〜実施例3を説明する。
【実施例1】
【0033】
実施例1を図1に模式的に示している(なお、実施例1は請求項1〜請求項6に対応)。
SUS304の転写版10にポリイミドを塗工してポリイミド層11を形成した後に、エキシマレーザにてパターニングを行った(図1(a))。このポリイミド層11の膜厚は平均10μmである。その後、全体にフッ素コートを行ってから電解硫酸銅めっきにて平均5μm厚となる銅の導電配線12を形成する(図1(b))。そしてその後に、銅とエポキシ樹脂の共析めっきによる厚さ5μmほどの混合層13の膜を形成する(図1(c))。その後、この転写版10を金型14にセットし、熱硬化型エポキシ樹脂15を充填して絶縁基板16を成形する(図1(d))。そして、冷却してから金型14を離型して転写版10を剥離させると、配線構造体1が得られる(図1(e))。
【0034】
この実施例1において、導電配線12を形成した後に混合層13を形成しているが、転写版10に銅とエポキシ樹脂の共析めっきをし、樹脂成形した後に、電解硫酸銅めっきをして銅配線を形成することも可能である。
この実施例1は混合層13自体が導電性を有するが、これが導電性を有しない場合についてもプロセスとしては同様に行うことができ、無電解共析めっきによる方法でも可能である。
【0035】
一般的に金属と樹脂を接着させるときは、金属表面を粗面化することでアンカー効果によりその密着力を向上させることが可能であるが、この場合は結合が弱いため、微細なパターンや配線膜厚が小さい場合に十分な密着力を得ることは困難である。これに対して、この実施例1では、配線が銅によるものであり、混合層13の共析めっきでも銅を用いることで、導電配線12の銅に直接めっき析出するため、導電配線12と混合層13とが金属結合して強固に結合する。
また、混合層及び絶縁基板16をエポキシ樹脂で成形しているので、両者はその相溶性により互いに強く結合され、従来のアンカー効果(金属表面の粗面化によるアンカー効果)によって配線と樹脂を結合する場合に比して、強固に結合される。
【0036】
従来、熱可塑性樹脂では基板成形時に配線を転写させることは困難であったが、この発明のように混合層13を銅線の上に設けることで、熱可塑性樹脂との接着機構が発現され、このことによって配線転写が可能となり、これを利用することができる。
この実施例では、混合層の製造方法として電解共析めっきによる方法を用いているが、この方式によるものに限られることはなく、導電性接着剤のように金属と樹脂が混合されているものでもよい。
導電性接着剤の供給方式としては、平面への供給ではスクリーン印刷による供給方式が一般的であり、立体形状のような場合にはディスペンサによる供給方式でも初期の目的を達成することができる。
【実施例2】
【0037】
実施例2を図2に模式的に示している(なお、実施例2は請求項7に対応)。
SUS304による転写版10にフォトレジストOFPR−800(東京応化工業株式会社製)を塗工し、厚さ3μmのレジスト層21を形成した。
その後スルファミン酸ニッケル電解めっきにて平均3μm厚となるニッケルの導電配線22を形成した後に、銅とエポキシの共析めっきにて膜厚3μmほどの混合層23を形成する。
レジスト層21を除去してから、金型14に転写版10をセットし、熱可塑性樹脂として液晶ポリマー25を充填して絶縁基板26を成形し、冷却した後、金型14を離型し、転写版10を剥離する。これにより絶縁基板26による配線構造体2が得られる(図2(f))。
このようにすると、樹脂が配線側面まで浸透し、これによって配線と樹脂の接触表面積が増大し、配線密着力が強くなる。
【実施例3】
【0038】
実施例3が図3に模式的に示されている(なお、実施例3は請求項8に対応)。
実施例1と同様にしてパターン状に電解めっきにて銅配線32を形成した後に、接続端子部34にエポキシ系導電性接着剤をディスペンスにて供給し、その後、機能部品(例えば半導体チップ)35を銅配線32に接続する方法として、導電性接着剤を介して金型上に形成した配線パターンと接続し、150℃1時間の冷却速度で接着剤を冷却させ、硬化させる。その後、実施例1と同様に絶縁基板36を樹脂成形し、金型を離型することで、機能部品35が絶縁基板(成形体)36内に封入され、表面にパターン状の銅配線が露出した成形体3が形成される。
【0039】
実施例3では接続材料をディスペンスにて供給したが、はんだをめっきにて配線上や機能部品上に供給する方法や、はんだバンプを搭載した機能部品を搭載する方法などの他の方法で対応することもできる。
【0040】
2.次いで、第2の発明についての実施例4〜実施例7を説明する。
【実施例4】
【0041】
実施例4が模式的に図4に示されている(なお、実施例4は請求項9〜請求項11に対応)。図4(a)は、互いに平行な多数の所定長さの導電配線が絶縁基板に配置されている状態を示しており、図4(b)は各導電配線の絶縁基板に対する埋設状態を示している。
導電配線41は絶縁基板46に対して密着しているが、全体として絶縁基板に埋め込まれており、その一部が表面に露出している。このような構造を採用することで、導電配線41の絶縁基板46に対する密着力が高められる。この埋め込み形態は、導電配線41の両端部が斜めに押し下げられた状態で絶縁基板46の中に完全に埋設された形態である。 上記の導電配線41はその両端部から剥離が始まりこれが中央部に拡大するが、この実施例4のように、両端部が完全に埋め込まれているので、両端部が剥離することはなく、したがって、図4に示しているように接着構造は、全体として剥離に対して強く、導電配線の微細化で密着力の確保が困難な場合に有効である。
【実施例5】
【0042】
実施例5が模式的に図5に示されている(なお、実施例5は請求項12に対応)。この実施例の導電配線は全体としては実施例4の導電配線と同様な形態をしている。
導電配線51が広めの左右の端部51aと、両端部を接続する細めの接続部51eを有するものである場合、実施例4とは異なり、端部51aは面積が大きいため配線密着力が確保されやすい。一方微細配線部51bは特に配線が長い場合や複雑な這い回しとなる場合には、コーナー部(角部)や配線と短資境界のように不連続な特異部から剥離しやすいが、この実施例5の導電配線は、微細配線部51bを絶縁基板56に埋設した構造であり、微細配線部の樹脂との接触面積を大きくすることができるため、これにより微細配線の剥離を防ぐことが出来る。
【0043】
また、プリント基板に用いられているソルダーレジストの場合は表層に存在する配線部分にはんだが濡れ広がらないように、ある程度の厚みを有するコート層によって覆っているが、この実施例5の構造とは絶縁基板56との平坦性を確保している点で全く異なり、特に機能部品(例えば、図3の機能部品35参照)を配線基板(絶縁基板56)に実装する場合において、ソルダーレジストがあるためにはんだの実効接続高さがソルダーレジストの厚み分だけ減少するため、熱応力に対する応力緩和が十分に得られず、機能部品の信頼性を十分に確保できない場合がある。しかし、この実施例でははんだの端子高さが、実効的な高さとなるため応力緩和機構がよりすぐれたものになる。
【実施例6】
【0044】
実施例6が図6に模式的に示されている(なお、実施例6は請求項13に対応)。
SUS304による転写版60上にフォトレジストOFPR−800(東京応化工業株式会社製)を塗工し、パターンを形成してレジスト層を形成し、その後に、スルファミン酸Niめっきにより1μm厚の密着層68を形成する。その後、フォトレジストを除去し、またフォトレジストPMER−P−LA900PM(東京応化工業株式会社製)を塗工し、露光現像してレジスト層61を形成した後に導電配線62のパターンを形成する。その後、硫酸銅めっきにてSUS304及びNiめっき(密着層68)の露出面に対してCuを15μm厚となるようにめっきして(図6(b))、その後レジスト層61を剥離する(図6(c))。このめっき工程にてNiとCuは良好に密着する一方、SUS304とCuの密着力は小さいため、レジスト除去に対する洗浄工程にてSUS304/Cu界面での剥離が生じる。
【0045】
次に転写版60を成形装置の金型64にセットし、その後にエポキシ樹脂G770−L(株式会社住友ベークライト製)65を充填し、トランスファ成形にて硬化させる。そして金型64を離型させると絶縁基板66が形成される。このとき絶縁基板66は主にNiめっきによる密着層68が表層に露出し、剥離部分は成形樹脂65の浸透によりその内部に埋め込まれる構造となる。
また、この方式の場合、密着力は密着した材料相互の相対的なものであるので、転写版60の導電配線62に対する密着力が優れた材料を採用した場合には、転写版60の表面に離形層を設け配線密着力を低下させればよく、このようにすることで同様の結果が得られる。また密着層68のように異なる材料は層構成である必要は必ずしもなく、例えば表面粗さの差を設けることによっても同様の作用を奏する。
この実施例6は成形体としての絶縁基板66の製造方法の例であるが、加熱や圧力の印加によって流動性を生じる絶縁構造体に対して転写版60を押し付けて転写版60に対して密着力の小さい配線剥離部に絶縁材料を浸透させて硬化させた後に離型することによって配線基板を形成することも可能である。
【実施例7】
【0046】
実施例7が図7に模式的に示されている(実施例7は請求項14に対応)。
これは実施例6と同様にパターン状に電解めっきにて導電配線72を形成した後に、接続端子部79にエポキシ系の導電性接着剤をディスペンサにて供給し、その後、機能部品(例えば半導体チップ)75に対して上記導電性接着剤を介して金型上の導電配線72(配線パターン)と接続し、150℃1時間の加熱で上記接着剤を硬化させる。その後、実施例6と同様に、エポキシ樹脂G770−L(株式会社住友ベークライト製)を充填し、トランスファ成形で成形し硬化させ、金型を離型することで、機能部品75が成形体内に封入され、表面にはパターン状の導電配線72が露出した絶縁基板76が得られる。
この実施例7では接続材料をディスペンスにて供給したが、その他にもはんだをめっきにて導電配線上や機能部品上に供給する方法やはんだバンプを搭載した機能部品を搭載する方法によることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】は、実施例1の模式図
【図2】は、実施例2の模式図
【図3】は、実施例3の模式図
【図4】(a)は、実施例4の模式的な平面図、(b)は、図(a)におけるB−B断面図
【図5】(a)は、実施例5の模式的な平面図、(b)は、図(a)におけるB−B断面図
【図6】は、実施例6の模式図
【図7】は、実施例7の模式図
【符号の説明】
【0048】
1,2:配線構造体
10:転写版
11:ポリイミド層
12:導電配線
13:混合層
14:金型
15:熱硬化型エポキシ樹脂
16:絶縁基板
21:レジスト層
22:導電配線
23:混合層
25:液晶ポリマー
26:絶縁基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属と樹脂からなる混合層がパターン状に形成されており、その混合層が配線と絶縁基板の間に存在することを特徴とする配線構造体。
【請求項2】
請求項1の配線構造体において、混合層自体が導電性を有することを特徴とする配線構造体。
【請求項3】
請求項1の配線構造体において、混合層に含まれる金属が配線に用いられている金属と同一であることを特徴とする配線構造体。
【請求項4】
請求項1の配線構造体において、混合層に含まれる樹脂が絶縁基板に用いられている樹脂と同一であることを特徴とする配線構造体。
【請求項5】
請求項4の配線構造体において、樹脂が熱可塑性樹脂であることを特徴とする配線構造体。
【請求項6】
請求項1の配線構造体において、その混合層が共析めっきによって形成されていることを特徴とする配線構造体。
【請求項7】
請求項1の配線構造体において、その配線表層が構造体を構成する樹脂表面と同一面を形成していることを特徴とする配線構造体。
【請求項8】
請求項1の配線構造体において、その内部に機能部品が実装されていることを特徴とする配線構造体。
【請求項9】
絶縁基板上の導電性パターンにおいて、その導電配線の一部が完全に絶縁基板に埋設されていることを特徴とする配線構造体。
【請求項10】
請求項9の配線構造体において、その導電配線が絶縁基板表層と同一面を形成していることを特徴とする配線構造体。
【請求項11】
請求項9の配線構造体において、導電配線の端部が埋設されていることを特徴とする配線構造体。
【請求項12】
請求項9の配線構造体において、その導電配線の間部が埋設されていることを特徴とする配線構造体。
【請求項13】
転写版上に導電性パターンが形成されており、導電性パターンと転写版との密着部が導電配線に対して2種類以上の異なる領域で構成されていることを特徴とする配線転写版。
【請求項14】
請求項9の配線構造体であって、その内部に機能部品を有することを特徴とする配線構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−32798(P2009−32798A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193430(P2007−193430)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】