説明

重合性組成物及びそれを用いた平版印刷版原版

【課題】感度変動が少なく、過酷な保存状況下でも安定であり、且つ、高感度な重合性組成物、及び、該重合性組成物を記録層として用いた経時安定に優れた平版印刷版原版を提供する。
【解決手段】分子内に電子供与性基を電子供与性基を少なくとも3つ有するジアリールヨードニウム塩と、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物と、下記一般式(I)で表されるメルカプト化合物と、を含有することを特徴とする重合性組成物。一般式(I)中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、AはN=C−N部分と共に炭素原子を有する5員環又は6員環のヘテロ環を形成する原子団を表し、Aはさらに置換基を有していてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重合性組成物及び該重合性組成物を記録層として用いた平版印刷版原版に関し、より詳細には、コンピュータ等のデジタル信号から赤外線レーザを用いて直接製版できる、所謂ダイレクト製版が可能なネガ型平版印刷版原版の記録層として好適に用いられる重合性化合物、及びそれを用いた平版印刷版原版に関する。
【背景技術】
【0002】
近年におけるレーザーの発展は目ざましく、特に、近赤外線から赤外線領域に発光領域を持つ固体レーザーや半導体レーザーでは、高出力・小型化が進んでいる。したがって、コンピュータ等のディジタルデータから直接製版する際の露光光源として、これらのレーザーは非常に有用である。
上記のような赤外線領域に発光領域を持つ赤外線レーザーを露光光源として使用する赤外線レーザ用ネガ型平版印刷版原版は、例えば、光重合性組成物等をその記録層に用いることにより画像形成を行っている。
【0003】
従来、光重合性組成物を用いて露光により画像形成を行う方法としては、例えば、エチレン性不飽和化合物と光重合開始剤とを含む光重合性組成物を用いた記録層を支持体表面に形成し、画像露光して露光部のエチレン性不飽和化合物を重合、硬化させた後、非露光部を溶解除去することにより硬化レリーフ画像を形成する方法、露光により光重合性組成物層(記録層)の支持体への接着強度に変化を起こさせた後、支持体を剥離することにより画像を形成する方法、及び、光重合性組成物層の光によるトナー付着性の変化を利用した画像形成方法等の各種の方法が知られている。これらの方法に用いられる光重合開始剤としては、いずれも、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルケタール、ベンゾフェノン、アントラキノン、ベンジルケトン、又はミヒラーケトン等の、400nm以下の紫外線領域を中心とした短波長の光に対して感応し得るものが用いられていた。
【0004】
一方、近年、画像形成技術の発展に伴い、可視領域の光に対して高感度を示す感光性材料が強く要請され、例えば、アルゴンイオンレーザーの488nmの発振ビームを用いたレーザー製版方式に対応して500nm前後迄感度域を拡げた光重合性組成物が多数提案されている。更に、He−Neレーザーや半導体レーザーを用いたレーザー製版方式や、フルカラー画像の複製技法に対応して600nmを越える長波長領域の光に対する光重合性組成物の研究も活発化している。
【0005】
光重合性組成物として、エチレン性不飽和化合物と、光重合開始系を含有し、光重合開始系が、複素環がモノ、トリ、ペンタ又はヘプタメチン鎖で連結し、かつ特定構造を有するシアニン色素と、特定構造のs−トリアジン誘導体を含有する技術が知られている。(例えば、特許文献1、2参照。)また、重合開始剤系が特定構造のスクアリリウム化合物と特定のs−トリアジン化合物からなる光重合性組成物が提案されている。(例えば、特許文献3参照。)
【0006】
しかしながら、通常、光重合開始剤の活性ラジカル発生能力は、500nm以上の波長の光、特に600nmを越える波長の光に対しては、光励起エネルギーの低下に伴って急激に感応性が減少することが知られており、このような長波長領域の光に対して前記の如き、従来より提案されている光重合性組成物は、いずれも感度的に満足できるものではなく、さらに白色蛍光灯下における取扱時に光重合反応が進行するといった問題もあり、安定した品質のものを得難いのが現状である。
【0007】
上述のような光重合性組成物における、高感度化、白灯下での取り扱い性向上に関する問題を解決すべく、エチレン性不飽和化合物、特定の色素、及び光重合開始剤(トリアジン化合物等)を含有する光重合性組成物等が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら、このような組成物を記録層に用いた平版印刷版は、印刷版保存時の安定性が低く、実用的に満足し得る安定性を維持しながら、高感度化を達成することが熱望されている。
【0008】
また、上述のような光重合性組成物における重合開始剤として、既存のアルキル置換されたヨードニウム塩、モノアルコキシ置換されたヨードニウム塩を用いる技術も提案されている。しかしながら、このような組成物を記録層に用いた平版印刷版は、高感度ではあるが、経時後の現像で残色が酷くなるという問題があり、かかる重合開始剤は使用が難しかった。
【特許文献1】特開昭58−29803号公報
【特許文献2】特開平4−31863号公報
【特許文献3】特開平4−106548号公報
【特許文献4】特開2000−131837公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明の目的は、感度変動が少なく、過酷な保存状況下でも安定であり、且つ、高感度な重合性組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、本発明の重合性組成物を記録層として用いた経時安定に優れた平版印刷版原版を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討の結果、ヨードニウム塩及び特定のメルカプト化合物を用いることで前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
即ち、本発明のる重合性組成物は、電子供与性基を少なくとも3つ有するジアリールヨードニウム塩と、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物と、下記一般式(I)で表されるメルカプト化合物と、を含有することを特徴とする重合性組成物である。
【0012】
【化1】

【0013】
一般式(I)中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、AはN=C−N部分と共に炭素原子を有する5員環又は6員環のヘテロ環を形成する原子団を表し、Aはさらに置換基を有していてもよい。
【0014】
前記一般式(I)で表されるメルカプト化合物としては、下記一般式(II)で表されるメルカプト化合物及び一般式(III)で表されるメルカプト化合物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
【化2】

【0016】
一般式(II)又は一般式(III)中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、Xは、ハロゲン基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。
【0017】
前記ジアリールヨードニウム塩が有する電子供与性基としては、アルコキシ基であることが好ましい。
【0018】
より具体的には、前記ジアリールヨードニウム塩は、下記一般式(IV)で表される部分構造を有することが好ましい。
【0019】
【化3】

【0020】
一般式(IV)中、R、R及びRは、各々独立に、アルキル基又はアリール基を表す。
【0021】
さらに、本発明の平版印刷版原版は、本発明の重合性組成物を含有する記録層を有することを特徴とする。
本発明の平版印刷版原版としては、前記記録層上に、保護層をさらに有することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、感度変動が少なく、過酷な保存状況下でも安定であり、且つ、高感度な重合性組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、本発明の重合性組成物を記録層として用いた経時安定に優れた平版印刷版原版を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の重合性組成物及びそれを用いた平版印刷版原版について、より詳細に説明する。
[重合性組成物]
本発明の重合性組成物は、分子内に電子供与性基を少なくとも3つ有するジアリールヨードニウム塩と、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物と、下記一般式(I)で表されるメルカプト化合物と、を含有することを特徴とする。
【0024】
【化4】

【0025】
一般式(I)中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、AはN=C−N部分と共に炭素原子を有する5員環又は6員環のヘテロ環を形成する原子団を表し、Aはさらに置換基を有していてもよい。
本発明の作用は未だ明確ではないが、以下のように推測される。
重合開始剤として優れた機能を有するヨードニウム塩は重合感度に優れるものの、安定性に問題があり、使用方法が困難であった。
本発明の重合性組成物においては、ヨードニウム塩を重合開始剤として含有する場合であっても、メルカプト化合物を添加したことによってヨードニウム塩の連鎖的な熱分解反応が抑制されたものと思われる。さらに、重合開始剤として、ジアリールヨードニウム塩に3以上の電子供与性基を導入したものを用いることで、ヨードニウム塩化合物の経時での水や求核剤による分解や、色素などの組み合わせ時に熱による電子移動が抑制され、結果として、感度を維持しながら重合性組成物の安定性が向上したものと思われる。
また、一般にメルカプト化合物は、特有の臭気を伴うだけでなく、揮発性であり、感光性組成物にいると長期保存時にこのチオール化合物が蒸発又は分解して、感光性組成物中において有効に機能する量が減少する問題があった。本発明においては、特定構造のメルカプト化合物を使用したことによって、長期に亘ってヨードニウム塩の分解が抑制できたものと推測される。
【0026】
本発明の重合性組成物は、平版印刷版原版の記録層として好適に用いることができる。
以下、本発明の重合性組成物における各成分について順次説明する。まず、本発明における特徴的な成分である「一般式(I)で表されるメルカプト化合物」及び「分子内に電子供与性基を少なくとも3つ有するジアリールヨードニウム塩」びについて詳細に説明する。
【0027】
<一般式(I)で表されるメルカプト化合物>
本発明の重合性組成物は、下記一般式(I)で表されるメルカプト化合物(以下、適宜「特定メルカプト化合物」と称する。)を含有する。
【0028】
【化5】

【0029】
一般式(I)中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、AはN=C−N部分と共に炭素原子を有する5員環又は6員環のヘテロ環を形成する原子団を表し、Aはさらに置換基を有していてもよい。
【0030】
一般式(I)について詳細に説明する。
一般式(I)中、Rで表されるアルキル基としては、炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4)のアルキル基が好ましい。
Rで表されるアルキル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アリール基、アリーロキシ基、スルホ基、チオアルコキシ基、ウレア基、ウレタン基などが挙げられる。
【0031】
一般式(I)中、Rで表されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基が特に好ましい。
Rで表されるアリール基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アリール基、アリーロキシ基、スルホ基、チオアルコキシ基、ウレア基、ウレタン基などが挙げられる。
【0032】
一般式(I)中、AはN=C−N部分と共に炭素原子を有する5員環又は6員環のヘテロ環を形成する原子団を表す。
【0033】
本発明における特定メルカプト化合物としては、下記一般式(II)で表されるメルカプト化合物及び一般式(III)で表されるメルカプト化合物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0034】
【化6】

【0035】
一般式(II)又は一般式(III)中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表し、Xは、ハロゲン基、アルコキシ基、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。
【0036】
一般式(II)又は一般式(III)中、Rで表される、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基は、前記一般式(I)におけるRと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0037】
一般式(II)又は一般式(III)中、Xで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられる。
【0038】
一般式(II)又は一般式(III)中、Xで表されるアルコキシ基としては、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、特にメトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0039】
一般式(II)又は一般式(III)中、Xで表されるアルキル基としては、炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4)のアルキル基が好ましい。該アルキル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アリール基、アリーロキシ基、スルホ基、チオアルコキシ基、ウレア基、ウレタン基などが挙げられる。
【0040】
一般式(II)又は一般式(III)中、Xで表されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基が特に好ましい。該アリール基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アリール基、アリーロキシ基、スルホ基、チオアルコキシ基、ウレア基、ウレタン基などが挙げられる。
【0041】
以下に、本発明における特定メルカプト化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
【化7】

【0043】
【化8】

【0044】
【化9】

【0045】
【化10】

【0046】
【化11】

【0047】
本発明の重合性組成物中における特定メルカプト化合物の含有量としては、重合性組成物を構成する全固形分の質量に対し、0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜15質量%より好ましく、1.0〜10質量%さらに好ましい。
【0048】
<電子供与性基を電子供与性基を少なくとも3つ有するジアリールヨードニウム塩>
本発明の重合性組成物は、分子内に電子供与性基を少なくとも3つ有するジアリールヨードニウム塩(以下、適宜「特定ヨードニウム塩」と称する。)を含有する。
【0049】
本発明において、特定ヨードニウム塩は重合開始剤として含有される。この特定ヨードニウム塩は、ジアリールヨードニウム骨格を有し、該骨格に電子強制基を少なくとも3つ以上有することを特徴とし、反応性、安定性に優れた化合物である。
【0050】
特定ヨードニウム塩が有する電子供与性基とは、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ウレア基、アルコキシアルキル基、アシロキシアミノ基、シクロアルキル基、アリル基などが挙げられ、これらの基は、電子供与性を失わない範囲でアルキル基、アルケニル基、アリール基、水酸基、アルコキシ基、チオール基、チオアルコキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等の置換基を有するものであってもよい。
好ましい電子供与性基としては、アルキル基、アルコキシ基が好ましく、最も好ましい電子供与性基はアルコキシ基である。
【0051】
アリール骨格に対する電子供与性基の好ましい置換位置としては、パラ位、オルト位が好ましい。
【0052】
導入される電子供与性基の置換数は少なくとも3置換であることを要し、好ましくは4置換されている態様である。
電子供与性基と置換数の好ましい組み合わせとしては、電子供与性基としてアルコキシ基を有し、該アルコキシ基を3置換以上、より好ましくは4置換以上有するものが挙げられる。
【0053】
電子供与性基導入に際しての物性値としては、アリール骨格に導入される置換基のハメット値の総和が、−0.28以下であることが好ましく、−0.56以下であることがより好ましく、−0.84以下であることが最も好ましい。
なお、ハメット値はジアリールヨードニウム塩構造における置換基の電子吸引性の程度を表すものであり、本発明におけるハメット値としては、日本化学会 編、化学便覧 基礎編II(1984年、丸善(株)発行)に記載の数値を参照することができる。
ハメット値は通常、置換位置がm位、p位の値で計算される。本発明においては、電子的な効果としてo位の値はp位の値と同値として計算する。
【0054】
本発明に用いることのできる好適な特定ヨードニウム塩としては、分子内に下記一般式(IV)で表される部分構造を有するヨードニウム塩が挙げられる。
【0055】
【化12】

【0056】
一般式(IV)中、R、R及びRは、各々独立に、アルキル基又はアリール基を表す。
【0057】
、R及びRは、各々さらに置換基を有するものであってもよく、ここで導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アリール基、アリーロキシ基、スルホ基、チオアルコキシ基、ウレア基、ウレタン基などが挙げられる。安定性の観点からはアルキル基が好ましい。
【0058】
一般式(IV)における芳香環は、電子供与性基の効果を失わない範囲で、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アミド基などの他の置換基で置換されてもよい。
【0059】
一般式(IV)で表される部分構造において、さらに好ましい構造として、下記一般式(IV−ii)で表される部分構造が挙げられる。
【0060】
【化13】

【0061】
一般式(IV−ii)におけるR、R及びRは、一般式(IV)におけるR、R及びRと同義である。Rもまた、一般式(IV)におけるR、R及びRと同義である。
【0062】
本発明における特定ヨードニウム塩のカウンターアニオンに関しては、アニオン構造を有するものであれば制限無く用いることが可能である。
使用可能なカウンターアニオンとしては、カルボン酸アニオン、スルホン酸アニオン、スルホンアミドアニオン、ボレートアニオン、燐酸アニオン、スルフィン酸アニオン、硫酸アニオン、PF、BF、SbF、ハロゲンアニオンなどが挙げられる。これらの中で、安定性、感度の観点から、スルホン酸基を有するアニオンが安定性、感度のバランスから好ましい。
【0063】
本発明に好適に用いることのできる特定ヨードニウム塩の具体例〔例示化合物(IV−1)〜(IV−28)〕を以下に例示するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0064】
【化14】

【0065】
【化15】

【0066】
【化16】

【0067】
【化17】

【0068】
【化18】

【0069】
重合性組成物における特定ヨードニウム塩は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0070】
特定ヨードニウム塩は、重合性組成物を構成する全固形分に対し0.1〜40質量%、好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%の割合で用いることができる。特定ヨードニウム塩の含有量がこの範囲であると、より良好な硬化感度と安定性が得られる。
【0071】
また、本発明の重合性組成物を平版印刷版原版の記録層として用いた場合には、良好な記録感度が達成され、その安定性に起因して印刷時の非画像部の良好な汚れ難さが得られる。
【0072】
本発明の重合性組成物には、特定ヨードニウム塩に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で公知の他の重合開始剤を併用することが可能である。
併用可能な他の重合開始剤としては、ロフィンダイマー化合物、ジスルホン化合物、アゾ化合物、過酸化物化合物、オキシムエステル化合物、ハロアルキル化合物、トリアジン化合物、ボレート化合物、スルホニウム塩化合物、ヨードニウム塩化合物、ジアゾニウム塩化合物、ピリジニウム塩化合物などを併用することができる。
【0073】
本発明の重合性組成物において、特定ヨードニウム塩と他の重合開始剤とを併用する場合における重合開始剤の総量は、重合性組成物を構成する全固形分に対し0.1〜40質量%、好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%の割合で用いることができる。
また、併用可能な他の重合開始剤の添加量としては、全重合開始剤の50質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが最も好ましい。
【0074】
本発明の重合性組成物を後述する平版印刷版原版の記録層として用いる場合には、特定ヨードニウム塩を含む重合開始剤は必ずしも記録層中に含有されなくてもよく、記録層に隣接する別の層を設けそこへ添加しても同様の効果を奏する。
本発明の平版印刷版原版の記録層に、重合開始剤として好ましい、高安定の特定ヨードニウム塩重合開始剤を用いる場合、ラジカル重合反応が効果的に進行し、形成された画像部の強度が非常に高いものとなる。従って、高い画像部強度を有する平版印刷版を作製することができ、その結果、耐刷性が一層向上する。また、特定ヨードニウム塩は電子供与性基の影響によりそれ自体が経時安定性に優れていることから、作製された平版印刷版原版を保存した際にも、所望されない重合反応の発生が効果的に抑制されるという利点をも有することになる。
【0075】
−併用可能な他の重合開始剤−
本発明に併用可能な他の重合開始剤について、より詳細に説明する。
本発明に併用可能な他の重合開始剤としては、前記した特定ヨードニウム塩以外の重合開始剤であって、光、熱或いはその両方のエネルギーによりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を開始、促進する化合物が用いられる。このようなラジカルを発生する化合物(ラジカル発生剤)としては、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを使用することができる。なお、本発明においては、ラジカルを発生する化合物とは、熱エネルギーによりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を、開始、促進させる化合物を指す。本発明に係る熱ラジカル発生剤としては、公知の重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物などを、適宜、選択して用いることとができる。また、ラジカルを発生する化合物は、単独又は2種以上を併用して用いることができる。
【0076】
本発明において重合開始剤として併用可能な、ラジカルを発生する化合物としては、例えば、有機ハロゲン化化合物、カルボニル化合物、有機過酸化化合物、アゾ系重合開始剤(アゾ化合物)、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン酸化合物、オキシムエステル化合物、特定ヨードニウム塩以外のオニウム塩化合物、が挙げられる。
【0077】
有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、若林等、「Bull Chem.Soc Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、特開昭55−32070号、特開昭60−239736号、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号、M.P.Hutt“Jurnal of Heterocyclic Chemistry”1(No3),(1970)」筆に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物:S−トリアジン化合物が挙げられる。
【0078】
より好適には、すくなくとも一つのモノ、ジ、又はトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体、具体的には、例えば、2,4,6−トリス(モノクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2―n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4−エポキシフェニル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔1−(p−メトキシフェニル)−2,4−ブタジエニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−i−プロピルオキシスチリル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ナトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ベンジルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロモメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0079】
カルボニル化合物としては、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドトキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル−(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチルー(4’−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン等のアセトフェノン誘導体、チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体等を挙げることができる。
【0080】
アゾ化合物としては例えば、特開平8−108621に記載のアゾ化合物等を使用することができる。
【0081】
有機過酸化化合物としては、例えば、トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−オキサノイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシオクタノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、ターシルカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等が挙げられる。
【0082】
アジド化合物としては、米国特許第2848328号明細書、米国特許第2852379号明細書ならびに米国特許第2940853号明細書に記載の有機アジド化合物、2,6−ビス(4−アジドベンジリデン)−4−エチルシクロヘキサノン(BAC−E)等が挙げられる。
【0083】
メタロセン化合物としては、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特開昭63−41484号公報、特開平2−249号公報、特開平2−4705号公報、特開平5−83588号公報記載の種々のチタノセン化合物、例えば、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報記載の鉄−アレーン錯体等が挙げられる。
【0084】
ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号、米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号、同第4,622,286号等の各公報記載の種々の化合物、具体的には、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル))4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイジダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0085】
有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特開昭62−143044号、特開昭62−150242号、特開平9−188685号、特開平9−188686号、特開平9−188710号、特開2000−131837、、特開2002−107916、特許第2764769号、特願2000−310808号、等の各公報、及び、Kunz,Martin“Rad Tech’98.Proceeding April 19−22,1998,Chicago”等に記載される有機ホウ酸塩、特開平6−157623号公報、特開平6−175564号公報、特開平6−175561号公報に記載の有機ホウ素スルホニウム錯体或いは有機ホウ素オキソスルホニウム錯体、特開平6−175554号公報、特開平6−175553号公報に記載の有機ホウ素ヨードニウム錯体、特開平9−188710号公報に記載の有機ホウ素ホスホニウム錯体、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられる。
【0086】
ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号、特願2001−132318公報等記載される化合物が挙げられる。
【0087】
オキシムエステル化合物としては、J.C.S. Perkin II (1979 )1653−1660)、J.C.S. Perkin II (1979)156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202−232、特開2000−66385記載の化合物、特開2000−80068記載の化合物が挙げられ、具体的には、以下に示す化合物が挙げられる。
【0088】
【化19】

【0089】
【化20】

【0090】
本発明において併用可能なオニウム塩化合物としては、以下に挙げるオニウム塩化合物の中、特定ヨードニウム塩以外のオニウム塩化合物が挙げられる。
例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、特開平4−365049号等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号、米国特許第339,049号、同第410,201号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号、に記載のヨードニウム塩、欧州特許第370,693号、同390,214号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同161,811号、同410,201号、同339,049号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩等が挙げられる。
【0091】
本発明におい併用されるオニウム塩としては、下記一般式(RI−I)〜(RI−III)で表されるオニウム塩が挙げられる。但し、一般式(RI−II)で表されるオニウムについては、上記特定ヨードニウム塩構造をとるものを除く。
【0092】
【化21】

【0093】
一般式(RI−I)中、Ar11は置換基を1〜6有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。Z11は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオンが好ましい。
【0094】
一般式(RI−II)中、Ar21、Ar22は各々独立に置換基を1〜6有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。Z21−は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性、反応性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。
但し、一般式(RI−II)で表されるオニウムとしては、上記特定ヨードニウム塩構造をとるものを除く。
【0095】
一般式(RI−III)中、R31、R32、R33は各々独立に置換基を1〜6有していても良い炭素数20以下のアリール基又はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、好ましくは反応性、安定性の面から、アリール基であることが望ましい。好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。Z31−は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性、反応性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。特に、特開2001−343742号公報に記載されるカルボン酸イオン、特開2002−148790号公報に記載されるカルボン酸イオンが好ましく、特開2002−148790号公報に記載されるカルボン酸イオンが更に好ましい。
【0096】
以下に、本発明の重合性組成物において、併用可能な重合開始剤として好適に用いられるオニウム塩の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0097】
【化22】

【0098】
【化23】

【0099】
【化24】

【0100】
【化25】

【0101】
【化26】

【0102】
【化27】

【0103】
【化28】

【0104】
本発明に併用しうる重合開始剤としては、特に反応性、安定性の面から、オキシムエステル化合物、ジアゾニウム塩、特定ヨードニウム塩以外のヨードニウム塩、スルホニウム塩が挙げられる。これらの中でも、感度、熱安定性の観点から、スルホニウム塩がより好ましい。
なお、本発明において、これらのオニウム塩は酸発生剤ではなく、イオン性のラジカル重合開始剤として機能する。
【0105】
<エチレン性不飽和二重結合を有する化合物>
本発明の重合性組成物は、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物を含有する。該エチレン性不飽和二重結合を有する化合物(以下、適宜「重合性化合物」とも称する。)としては、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であることがこのましく、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物群から選ばれることが好ましい。
この様な化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、またはそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類あるいはエポキシ類との付加反応物、及び単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、さらにハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0106】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0107】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0108】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
【0109】
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
【0110】
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
【0111】
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0112】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926号公報、特公昭51−47334号公報、特開昭57−196231号公報記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号公報、特開昭59−5241号公報、特開平2−226149号公報記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。さらに、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
【0113】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0114】
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726号公報記載のシクロへキシレン構造を有すものをあげる事ができる。
【0115】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(i)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0116】
CH=C(R51)COOCHCH(R52)OH (i)
(ただし、一般式(i)中、R51及びR52は、HまたはCHを示す。)
【0117】
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。
【0118】
さらに、特開昭63−277653号公報、特開昭63−260909号公報、特開平1−105238号公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
【0119】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号公報、特公平1−40337号公報、特公平1−40336号記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。さらに日本接着協会誌 vol. 20、No. 7、30
0〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0120】
これらのエチレン性不飽和二重結合を有する化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な重合性組成物の性能設計にあわせて任意に設定できる。
例えば、本発明の重合性組成物を、ネガ型平版印刷版原版の記録層として用いる場合には、次のような観点から選択される。感光スピードの点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、さらに、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感光性と強度の両方を調節する方法も有効である。大きな分子量の化合物や疎水性の高い化合物は、感光スピードや膜強度に優れる反面、現像スピードや現像液中での析出といった点で好ましくない場合がある。また、感光層中の他の成分(例えば、バインダーポリマー、重合開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。
【0121】
また、本発明における重合性組成物を平版印刷版原版の記録層として適用した場合は、かかる平版印刷版原版の支持体や後述の保護層等の密着性を向上させる目的で、特定の構造を選択することもあり得る。記録層中のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の配合比に関しては、多い方が感度的に有利であるが、多すぎる場合には、好ましくない相分離が生じ、記録層粘着性による製造工程上の問題(例えば、記録層成分の転写、粘着に由来する製造不良)や、現像液からの析出が生じる等の問題を生じうる。
【0122】
これらの観点からは、本発明の重合性組成物における重合性化合物の含有量は、該重合性組成物を平版印刷版原版の記録層に適用する場合も同様に、組成物又は記録層を構成する不揮発性成分に対して、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは25〜75質量%の範囲で使用される。また、本発明に係る重合性化合物は単独で用いても2種以上併用してもよい。そのほか、本発明に係る重合性化合物は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量に応じて任意に選択できる。さらに、平版印刷版原版に関しては、後述する下塗り層等の層構成・塗布方法にも用いることができる。
【0123】
<赤外線吸収剤>
本発明の重合性組成物、又は、該重合性組成物を記録層に適用した平版印刷版原版を、760〜1200nmの赤外線を発するレーザーを光源により露光・硬化させる場合には、通常、赤外線吸収剤を用いることが好ましい。
【0124】
赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能と赤外線により励起して、前記した重合開始剤(特定ヨードニウム塩、併用可能な他の重合開始剤)に電子移動/エネルギー移動する機能を有する。本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760〜1200nmに吸収極大を有する染料又は顔料である。
【0125】
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0126】
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
また、本発明の赤外線吸収色素の好ましい他の例としては、以下に例示するような特願2001−6326、特願2001−237840記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
【0127】
【化29】

【0128】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。さらに、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい一つの例として下記一般式(a)で示されるシアニン色素が挙げられる。
【0129】
【化30】

【0130】
一般式(a)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1又は以下に示す基を表す。ここで、Xは酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。Xa−は後述するZ1−と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0131】
【化31】

【0132】
一般式(a)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の保存安定性から、R及びRは、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、RとRとは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0133】
一般式(a)中、Ar、Arは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられ、炭素原子数12個以下の炭化水素基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が最も好ましい。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R、Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられ、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が最も好ましい。R、R、R及びRは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za−は、対アニオンを示す。ただし、一般式(i)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa−は必要ない。好ましいZa−は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0134】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969公報の段落番号[0017]から[0019]に記載されたものを挙げることができる。
また、特に好ましい他の例としてさらに、前記した特願平2001−6326、特願平2001−237840明細書に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
【0135】
本発明において使用しうる顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0136】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0137】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0138】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。この範囲で、顔料分散物の画像記録層塗布液中での良好な安定性と画像記録層の良好な均一性が得られる。
【0139】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0140】
本発明の重合性組成物を記録層として適用した平版印刷版原版(本発明の平版印刷版原版)においては、平版印刷版原版を作製した際に、記録層の波長760nm〜1200nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が、反射測定法で0.3〜1.2の範囲にあるように添加する。好ましくは、0.4〜1.1の範囲である。この範囲で、記録層の深さ方向での均一な重合反応が進行し、良好な画像部の膜強度と支持体に対する密着性が得られる。なお、平版印刷版原版においては、赤外線吸収剤は、記録層以外の別の層を設けそこへ添加してもよい。記録層の吸光度は、記録層に添加する赤外線吸収剤の量と記録層の厚みにより調整することができる。吸光度の測定は常法により行うことができる。測定方法としては、例えば、アルミニウム等の反射性の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの画像記録層を形成し、反射濃度を光学濃度計で測定する方法、積分球を用いた反射法により分光光度計で測定する方法等が挙げられる。
【0141】
<バインダーポリマー>
本発明の重合性組成物を、その好ましい実施形態である平版印刷版用原版の記録層への適用するに際しては、前記した特定ヨードニウム塩を含む重合開始剤及びエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の他にさらにバインダーポリマーを使用することが好ましい。
【0142】
本発明の重合性組成物が含有しうるバインダーポリマーは、記録層の皮膜形成剤として機能するポリマーであり、線状有機高分子重合体を含有させることが好ましい。このような「線状有機高分子重合体」としては、どれを使用しても構わない。
このようなバインダーポリマーの例としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂から選ばれる高分子が好ましい。なかでも、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0143】
さらに、バインダーポリマーは、画像部の皮膜強度を向上するために、架橋性をもたせることができる。
バインダーポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の主鎖中または側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよいし、高分子反応によって導入してもよい。
【0144】
ここで架橋性基とは、平版印刷版原版を露光した際に記録層中で起こるラジカル重合反応の過程で高分子バインダーを架橋させる基のことである。このような機能の基であれば特に限定されないが、例えば、付加重合反応し得る官能基としてエチレン性不飽和結合基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。また光照射によりラジカルになり得る官能基であってもよく、そのような架橋性基としては、例えば、チオール基、ハロゲン基、オニウム塩構造等が挙げられる。なかでも、エチレン性不飽和結合基が好ましく、下記一般式(1)〜(3)で表される官能基が特に好ましい。
【0145】
【化32】

【0146】
一般式(1)において、R〜Rはそれぞれ独立に、1価の有機基を表すが、Rとしては、好ましくは、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、メチル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。また、R
、Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、カルボキシル基、アル
コキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
【0147】
Xは、酸素原子、硫黄原子、またはN(R12)−を表し、R12は、水素原子、または1価の有機基を表す。ここで、R12は、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
【0148】
ここで、導入し得る置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基などが挙げられる。
【0149】
【化33】

【0150】
一般式(2)において、R〜Rは、それぞれ独立に1価の有機基を表すが、R
〜Rは、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カル
ボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基が好ましい。
【0151】
導入し得る置換基としては、一般式(1)と同様のものが例示される。また、Yは、酸素原子、硫黄原子、またはN(R12)−を表す。R12は、一般式(1)のR12の場合と同義であり、好ましい例も同様である。
【0152】
【化34】

【0153】
一般式(3)において、Rとしては、好ましくは、水素原子または置換基を有し
てもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、メチル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。R10、R11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
【0154】
ここで、導入し得る置換基としては、一般式(1)と同様のものが例示される。また、Zは、酸素原子、硫黄原子、−N(R13)−、または置換基を有してもよいフェニレン基を表す。R13としては、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、メチル基、エチル基、イソプロピル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
上記の中でも、側鎖に架橋性基を有する(メタ)アクリル酸共重合体およびポリウレタンがより好ましい。
【0155】
架橋性を有するバインダーポリマーは、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカルまたは重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接にまたは重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。または、ポリマー中の原子(例えば、官能性架橋基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。
【0156】
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。
【0157】
−アルカリ可溶性バインダーポリマー−
本発明の平版印刷版原版に施される現像処理が、アルカリ現像液を用いて行われる態様においては、バインダーポリマーはアルカリ現像液に溶解する必要があるため、アルカリ水に可溶性または膨潤性である有機高分子重合体が好ましく使用される。特にpHが10以上のアルカリ現像液を用いる場合には、アルカリ可溶性バインダーが好適に用いられる。アルカリ水に可溶性である為に、アルカリ可溶性基を有することが好ましい。アルカリ可溶性は酸基であることが好ましく、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基などが挙げられる。これらのうち、被膜性・対刷性・現像性の両立という観点から、カルボキシル基を有するバインダーポリマーが特に好ましい。
【0158】
さらに、アルカリ可溶性バインダーポリマーは、画像部の皮膜強度を向上するために、上記のように架橋性をもたせることができる。バインダーポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の主鎖中または側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよいし、高分子反応によって導入してもよい。
【0159】
アルカリ可溶性バインダーポリマーの重量平均分子量は、平版印刷版原版における画像形成性や耐刷性の観点から適宜決定される。好ましい重量平均分子量としては、2,000〜1,000,000、より好ましくは5,000〜500,000、更に好ましくは10,000〜200,000の範囲である。また、数平均分子量が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であるのが好ましい。
【0160】
アルカリ可溶性バインダーポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよいが、ランダムポリマーであるのが好ましい。
アルカリ可溶性バインダーポリマーは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
アルカリ可溶性バインダーポリマーの含有量は、記録層の全固形分に対して、通常5〜90質量%であり、10〜70質量%であるのが好ましく、10〜60質量%であるのがより好ましい。この範囲内で、良好な画像部の強度と画像形成性が得られる。
【0161】
また、本発明において好適なアルカリ可溶性バインダーポリマーとしては、下記一般式(4)で表される繰り返し単位を有するバインダーポリマーである。以下、一般式(4)で表される繰り返し単位を有するバインダーポリマーを、適宜、特定バインダーポリマーと称し、詳細に説明する。
【0162】
【化35】

【0163】
一般式(4)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される2以上の原子を含み構成され、その総原子数が2〜82である連結基を表す。Aは酸素原子又は−NR−を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜10の一価の炭化水素基を表す。nは1〜5の整数を表す。
【0164】
一般式(4)におけるRは、水素原子又はメチル基を表し、特にメチル基が好ましい

一般式(4)におけるRで表される連結基は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素
原子、及び硫黄原子からなる群より選択される2以上の原子を含み構成され、その総原子数が2〜82であり、好ましくは2〜50であり、より好ましくは2〜30である。ここで示す総原子数は、当該連結基が置換基を有する場合には、その置換基を含めた原子数を指す。より具体的には、Rで表される連結基の主骨格を構成する原子数が、1〜30で
あることが好ましく、3〜25であることがより好ましく、4〜20であることが更に好ましく、5〜10であることが最も好ましい。なお、本発明における「連結基の主骨格」とは、一般式(4)におけるAと末端COOHとを連結するためのみに使用される原子又は原子団を指し、特に、連結経路が複数ある場合には、使用される原子数が最も少ない経路を構成する原子又は原子団を指す。したがって、連結基内に環構造を有する場合、その連結部位(例えば、o−、m−、p−など)により算入されるべき原子数が異なる。
【0165】
また、より具体的には、アルキレン、置換アルキレン、アリーレン、置換アリーレンなどが挙げられ、これらの2価の基がアミド結合やエステル結合で複数連結された構造を有していてもよい。
鎖状構造の連結基としては、エチレン、プロピレン等が挙げられる。また、これらのアルキレンがエステル結合を介して連結されている構造もまた好ましいものとして例示することができる。
【0166】
この中でも、一般式(4)におけるRで表される連結基は、炭素原子数3から30ま
での脂肪族環状構造を有する(n+1)価の炭化水素基であることが好ましい。より具体的には、任意の置換基によって一個以上置換されていてもよいシクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、ジシクロヘキシル、ターシクロヘキシル、ノルボルナン等の脂肪族環状構造を有する化合物を構成する任意の炭素原子上の水素原子を(n+1)個除き、(n+1)価の炭化水素基としたものを挙げることができる。また、Rは、置換基を含めて炭素数3から30であることが好ましい。
【0167】
脂肪族環状構造を構成する化合物の任意の炭素原子は、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子から選ばれるヘテロ原子で、一個以上置き換えられていてもよい。耐刷性の点で、Rは縮合多環脂肪族炭化水素、橋架け環脂肪族炭化水素、スピロ脂肪族炭化水素、脂肪族
炭化水素環集合(複数の環が結合又は連結基でつながったもの)等、2個以上の環を含有してなる炭素原子数5から30までの置換基を有していてもよい脂肪族環状構造を有する(n+1)価の炭化水素基であることが好ましい。この場合も炭素数は置換基が有する炭素原子を含めてのものである。
【0168】
で表される連結基としては、特に、連結基の主骨格を構成する原子数が5〜10の
ものが好ましく、構造的には、鎖状構造であって、その構造中にエステル結合を有するものや、前記の如き環状構造を有するものが好ましい。
で表される連結基に導入可能な置換基としては、水素を除く1価の非金属原子団を
挙げることができ、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基及びその共役塩基基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)及びその共役塩基基、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、N−アシルスルファモイル基及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルスルファモイル基(−SONHSO(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルスルファモイル基(−SONHSO(aryl))及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルカルバモイル基(−CONHSO(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルカルバモイル基(−CONHSO(aryl))及びその共役塩基基、アルコキシシリル基(−Si(Oalkyl))、アリーロキシシリル基(−Si(Oaryl))、ヒドロキシシリル基(−Si(OH))及びその共役塩基基、ホスホノ基(−PO)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスホノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスホノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−POH(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノ基(−POH(aryl))及びその共役塩基基、ホスホノオキシ基(−OPO)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPOH(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノオキシ基(−OPOH(aryl))及びその共役塩基基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルボリル基(−B(alkyl))、ジアリールボリル基(−B(aryl))、アルキルアリールボリル基(−B(alkyl)(aryl))、ジヒドロキシボリル基(−B(OH))及びその共役塩基基、アルキルヒドロキシボリル基(−B(alkyl)(OH))及びその共役塩基基、アリールヒドロキシボリル基(−B(aryl)(OH))及びその共役塩基基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0169】
本発明の重合性組成物が平版印刷版原版の記録層に適用される場合、該記録層の設計にもよるが、水素結合可能な水素原子を有する置換基や、特に、カルボン酸よりも酸解離定数(pKa)が小さい酸性を有する置換基は、耐刷性を下げる傾向にあるので好ましくない。一方、ハロゲン原子や、炭化水素基(アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基)、アルコキシ基、アリーロキシ基などの疎水性置換基は、耐刷を向上する傾向にあるのでより好ましく、特に、環状構造がシクロペンタンやシクロヘキサン等の6員環以下の単環脂肪族炭化水素である場合には、このような疎水性の置換基を有していることが好ましい。これら置換基は可能であるならば、置換基同士、又は置換している炭化水素基と結合して環を形成してもよく、置換基は更に置換されていてもよい。
【0170】
一般式(4)におけるAがNR−である場合のRは、水素原子又は炭素数1〜10の一価の炭化水素基を表す。このRで表される炭素数1〜10までの一価の炭化水素基と
しては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0171】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−ノルボルニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基が挙げられる。
【0172】
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、インデニル基等の炭素数1〜10までのアリール基、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1個含有する炭素数1〜10までのヘテロアリール基、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基等が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、又は環状のアルケニル基が挙げられる。
【0173】
アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−オクチニル基等の炭素数1〜10までのアルキニル基が挙げられる。Rが有してもよ
い置換基としては、Rが導入し得る置換基として挙げたものと同様である。但し、Rの炭素数は、置換基の炭素数を含めて1〜10である。
一般式(4)におけるAは、合成が容易であることから、酸素原子又は−NH−であることが好ましい。
【0174】
一般式(4)におけるnは、1〜5の整数を表し、耐刷の点で好ましくは1である。
以下に、一般式(4)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0175】
【化36】

【0176】
【化37】

【0177】
【化38】

【0178】
【化39】

【0179】
【化40】

【0180】
【化41】

【0181】
【化42】

【0182】
【化43】

【0183】
【化44】

【0184】
【化45】

【0185】
【化46】

【0186】
【化47】

【0187】
【化48】

【0188】
一般式(4)で表される繰り返し単位は、バインダーポリマー中に1種類だけであってもよいし、2種類以上含有していてもよい。本発明における特定バインダーポリマーは、一般式(4)で表される繰り返し単位だけからなるポリマーであってもよいが、通常、他の共重合成分と組み合わされ、コポリマーとして使用される。コポリマーにおける一般式(4)で表される繰り返し単位の総含有量は、その構造や、重合性組成物の設計等によって適宜決められるが、好ましくはポリマー成分の総モル量に対し、1〜99モル%、より好ましくは5〜40モル%、更に好ましくは5〜20モル%の範囲で含有される。
【0189】
コポリマーとして用いる場合の共重合成分としては、ラジカル重合可能なモノマーであれば従来公知のものを制限なく使用できる。具体的には、「高分子データハンドブック−基礎編−(高分子学会編、培風館、1986)」記載のモノマー類が挙げられる。このような共重合成分は1種類であってもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0190】
本発明おいて用いられるバインダーポリマーは、特定バインダーポリマー単独であってもよいし、他のバインダーポリマーを1種以上併用して、混合物として用いてもよい。併用されるバインダーポリマーは、バインダーポリマー成分の総質量に対し1〜80質量%、好ましくは1〜40質量%、更に好ましくは1〜20質量%の範囲で用いられる。併用できるバインダーポリマーとしては、従来公知のものを制限なく使用でき、具体的には、本業界においてよく使用されるアクリル主鎖バインダーや、ウレタンバインダー等が好ましく用いられる。さらには、本業界においてよく使用される重合性基を有するものが好ましく、また、酸性基を有するものが好ましい。
【0191】
重合性組成物中での特定バインダーポリマー及び併用してもよいバインダーポリマーの合計量は、適宜決めることができるが、感光層組成物中の不揮発性成分の総質量に対し、通常、10〜90質量%であり、好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは30〜70質量%の範囲である。
また、このようなバインダーポリマーの酸価(meq/g)としては、2.00〜3.60の範囲であることが好ましい。
【0192】
<その他の成分>
本発明の重合性組成物には、更にその用途、製造方法等に適したその他の成分を適宜添加することができる。以下、好ましい添加剤について説明する。
(1)共増感剤
重合性組成物にある種の添加剤を用いることで、感度を更に向上させることができる。このような化合物を以後、共増感剤という。これらの作用機構は、明確ではないが、多くは次のような化学プロセスに基づくものと考えられる。即ち、熱重合開始剤により開始される光反応、と、それに引き続く付加重合反応の過程で生じる様々な中間活性種(ラジカル、カチオン)と、共増感剤が反応し、新たな活性ラジカルを生成するものと推定される。これらは、大きくは、(i)還元されて活性ラジカルを生成し得るもの、(ii)酸化されて活性ラジカルを生成し得るもの、(iii)活性の低いラジカルと反応し、より活性の高いラジカルに変換するか、もしくは連鎖移動剤として作用するもの、に分類できるが、個々の化合物がこれらのどれに属するかに関しては、通説がない場合も多い。
【0193】
(i)還元されて活性ラジカルを生成する化合物
炭素−ハロゲン結合結合を有する化合物:還元的に炭素−ハロゲン結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には、例えば、トリハロメチル−s−トリアジン類や、トリハロメチルオキサジアゾール類等が好適に使用できる。
窒素−窒素結合を有する化合物:還元的に窒素−窒素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的にはヘキサアリールビイミダゾール類等が好適に使用される。
酸素一酸素結合を有する化合物:還元的に酸素−酸素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には、例えば、有機過酸化物類等が好適に使用される。
オニウム化合物:還元的に炭素−ヘテロ結合や、酸素−窒素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には、例えば、ジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類、N−アルコキシピリジニウム(アジニウム)塩類等が好適に使用される。
フエロセン、鉄アレーン錯体類:還元的に活性ラジカルを生成し得る。
【0194】
(ii)酸化されて活性ラジカルを生成する化合物
アルキルアート錯体:酸化的に炭素−ヘテロ結合が解裂し、活性ラジカルを生成すると考えられる。具体的には、例えば、トリアリールアルキルボレート類が好適に使用される。
アルキルアミン化合物:酸化により窒素に隣接した炭素上のC−X結合が解裂し、活性ラジカルを生成するものと考えられる。Xとしては、水素原子、カルボキシル基、トリメチルシリル基、ベンジル基等が好適である。具体的には、例えば、エタノールアミン類、N−フェニルグリシン類、、N−フェニルイミノジ酢酸及びその誘導体、N−トリメチルシリルメチルアニリン類等が挙げられる。
含硫黄、含錫化合物:上述のアミン類の窒素原子を硫黄原子、錫原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。また、S−S結合を有する化合物もS−S解裂による増感が知られる。
【0195】
α−置換メチルカルボニル化合物:酸化により、カルボニル−α炭素間の結合解裂により、活性ラジカルを生成し得る。また、カルボニルをオキシムエーテルに変換したものも同様の作用を示す。具体的には、2−アルキル−1−[4−(アルキルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロノン−1類、並びに、これらと、ヒドロキシアミン類とを反応したのち、N−OHをエーテル化したオキシムエーテル類を挙げることができる。
スルフィン酸塩類:還元的に活性ラジカルを生成し得る。具体的は、アリール
スルフィン駿ナトリウム等を挙げることができる。
【0196】
(iii)ラジカルと反応し高活性ラジカルに変換、もしくは連鎖移動剤として作用する化合物:例えば、分子内にSH、PH、SiH、GeHを有する化合物群が用いられる。これらは、低活性のラジカル種に水素供与して、ラジカルを生成するか、もしくは、酸化された後、脱プロトンすることによりラジカルを生成し得る。具体的には、例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール類等が挙げられる。
【0197】
また、感度向上及び/又は現像性向上の目的で、芳香環又はヘテロ芳香環構造を有し、それに直接、又は、2価の連結基を介して少なくとも2つのカルボキシル基が結合してなるポリカルボン酸化合物を含有することも好ましい態様である。このようなポリカルボン酸化合物としては、具体的には例えば、(p−アセトアミドフェニルイミド)二酢酸、3−(ビス(カルボキシメチル)アミノ)安息香酸、4−(ビス(カルボキシメチル)アミノ)安息香酸、2−[(カルボキシメチル)フェニルアミノ]安息香酸、2−[(カルボキシメチル)フェニルアミノ]−5−メトキシ安息香酸、3−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]−2−ナフタレンカルボン酸、N−(4−アミノフェニル)−N−(カルボキシメチル)グリシン、N,N’−1,3−フェニレンビスグリシン、N,N’−1,3−フェニレンビス[N−(カルボキシメチル)]グリシン、N,N’−1,2−フェニレンビス[N−(カルボキシメチル)]グリシン、N−(カルボキシメチル)−N−(4−メトキシフェニル)グリシン、N−(カルボキシメチル)−N−(3−メトキシフェニル)グリシン、N−(カルボキシメチル)−N−(3−ヒドロキシフェニル)グリシン、N−(カルボキシメチル)−N−(3−クロロフェニル)グリシン、N−(カルボキシメチル)−N−(4−ブロモフェニル)グリシン、N−(カルボキシメチル)−N−(4−クロロフェニル)グリシン、N−(カルボキシメチル)−N−(2−クロロフェニル)グリシン、N−(カルボキシメチル)−N−(4−エチルフェニル)グリシン、N−(カルボキシメチル)−N−(2,3−ジメチルフェニル)グリシン、N−(カルボキシメチル)−N−(3,4−ジメチルフェニル)グリシン、N−(カルボキシメチル)−N−(3,5−ジメチルフェニル)グリシン、N−(カルボキシメチル)−N−(2,4−ジメチルフェニル)グリシン、N−(カルボキシメチル)−N−(2,6−ジメチルフェニル)グリシン、N−(カルボキシメチル)−N−(4−ホルミルフェニル)グリシン、N−(カルボキシメチル)−N−エチルアントラニル酸、N−(カルボキシメチル)−N−プロピルアントラニル酸、5−ブロモ−N−(カルボキシメチル)アントラニル酸、N−(2−カルボキシフェニル)グリシン、o−ジアニシジン−N,N,N’,N’−四酢酸、N,N’−[1,2−エタンジイルビス(オキシ−2,1−フェニレン)]ビス[N−(カルボキシメチル)グリシン]、4−カルボキシフェノキシ酢酸、カテコール−O,O’−二酢酸、4−メチルカテコール−O,O’−二酢酸、レゾルシノール−O,O’−二酢酸、ヒドロキノン−O,O’−二酢酸、α−カルボキシ−o−アニス酸、4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ酢酸、2,2’−(ジベンゾフラン−2,8−ジイルジオキシ)二酢酸、2−(カルボキシメチルチオ)安息香酸、5−アミノ−2−(カルボキシメチルチオ安息香酸、3−[(カルボキシメチル)チオ]−2−ナフタレンカルボン酸、などが挙げられる。
なかでも、下記一般式(A)で表されるN−アリールポリカルボン酸又は一般式(B)で表される化合物が好ましい。
【0198】
【化49】

【0199】
一般式(A)中、Arは、モノ−、ポリ−または未置換のアリール基を表し、mは1から5の整数を表す。ここで、アリール基に導入可能な置換基としては、炭素原子数1〜3のアルキル基、炭素原子数1〜3のアルコキシ基、炭素原子数1〜3のチオアルキル基及びハロゲン原子が挙げられる。このアリール基は、1つ乃至3つの、同一または異なる置換基を有するものが好ましい。mは好ましくは1であり、また、Arは好ましくはフェニル基を表す。
【0200】
【化50】

【0201】
一般式(B)中、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、n及びpは、それぞれ1から5の整数を表す。nは1であることが好ましく、Rは水素原子が好ましい。最も好ましいポリカルボン酸はアニリノ二酢酸である。
【0202】
その他、感度向上及び/又は現像性向上に好ましい化合物としては、カルボン酸基及びスルホン酸基のいずれか或いは双方を2官能以上有する化合物であり、具体的には5−アミノイソフタル酸、5−ニトロイソフタル酸、4−メチルフタル酸、テレフタル酸、2−ブロモテレフタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニック酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、N−ベンジルイミノジ酢酸、N−(2−カルボキシフェニルグリシン)、N−フェニルイミノジ酢酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、5−スルホサリチル酸、2−スルホ安息香酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、4−スルホフタル酸などが挙げられる。また、上記化合物は、更にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、アルコキシ基、アミノ基、アミド基、チオール基、チオアルコキシ基、スルホニル基で置換されてもよい。
これらのうち、最も好ましいのは、一般式(A)又は一般式(B)で表される化合物である。
このようなポリ(カルボン酸/スルホン酸)化合物の添加量は、重合性組成物前固形分中、0.5〜15質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがさらに好ましく、3〜8質量%であることが特に好ましい。
【0203】
これらの共増感剤のより具体的な例は、例えば、特開昭9−236913号公報中に、感度向上を目的とした添加剤として、多く記載されており、それらを本発明においても適用することができる。
これらの共増感剤は、単独で又は2種以上併用して用いることができる。使用量は、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物100質量部に対し0.05〜100質量部、好ましくは1〜80質量部、更に好ましくは3〜50質量部の範囲が適当である。
【0204】
(2)重合禁止剤
また、本発明においては以上の基本成分の他に、記録層に用いる組成物の製造中又は保存中において重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために、少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t―ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t―ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。熱重合防止剤の添加量は、全組成物の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、平版印刷版原版とする場合、支持体等への塗布後の乾燥の過程でその記録層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
【0205】
(3)着色剤等
更に、本発明の重合性組成物に、着色を目的として染料もしくは顔料を添加してもよい。これにより、本発明の重合性組成物を平版印刷版原版の記録層に適用した場合であれば、印刷版としての、製版後の視認性や、画像濃度測定機適性といったいわゆる検版性を向上させることができる。
着色剤としては、多くの染料は光重合系記録層の感度の低下を生じるので、着色剤としては、特に顔料の使用が好ましい。具体例としては、例えば、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料などの染料がある。染料及び顔料の添加量は全組成物の約0.5質量%〜約5質量%が好ましい。
【0206】
(4)その他の添加剤
更に、本発明の重合性組成物を平版印刷版原版の記録層に適用する場合においては、硬化皮膜の物性を改良するための無機充填剤や、その他、可塑剤、記録層表面のインク着肉性を向上させうる感脂化剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
【0207】
上記可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等があり、結合剤を使用した場合、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物と結合剤との合計質量に対し10質量%以下添加することができる。
【0208】
また、平版印刷版原版における膜強度(耐刷性)向上を目的として、現像後の加熱・露光の効果を強化するための、UV開始剤や、熱架橋剤等の添加もできる。
その他、記録層と支持体との密着性向上や、未露光記録層の現像除去性を高めるための添加剤、中間層を設けることが可能である。例えば、ジアゾニウム構造を有する化合物や、ホスホン化合物、等、基板と比較的強い相互作用を有する化合物の添加や下塗りにより、密着性が向上し、耐刷性を高めることが可能であり、一方ポリアクリル酸や、ポリスルホン酸のような親水性ポリマーの添加や下塗りにより、非画像部の現像性が向上し、汚れ性の向上が可能となる。
【0209】
[平版印刷版原版]
本発明の平版印刷版原版は、本発明の重合性組成物を含有する記録層を有することを特徴とする。以下、本発明の平版印刷版原版の層構成等について説明する。
【0210】
<記録層>
本発明の平版印刷版原版における記録層は、記録層を構成する成分を溶媒に溶かした記録層塗布液(本発明の重合性組成物)を調製し、該記録層塗布液を適当な支持体上に塗布することにより形成することができる。
ここで使用しるう溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N―ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ―ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどがある。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。そして、塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50質量%が適当である。
【0211】
記録層の支持体への塗布量は、記録層の感度、現像性、露光膜の強度・耐刷性等の影響を考慮し、用途に応じ適宜選択することが望ましい。塗布量が少なすぎる場合には、耐刷性が十分でなくなる。一方多すぎる場合には、感度が下がり、露光に時間がかかる上、現像処理にもより長い時間を要するため好ましくない。本発明の平版印刷版原版における塗布量は、一般的には、乾燥後の質量で約0.l〜約10g/mの範囲が適当である。よ
り好ましくは0.5〜5g/mである。
【0212】
<保護層>
本発明の平版印刷版原版は、前記記録層上に、保護層をさらに有することが好ましい。以下、保護層について詳述する。
保護層は、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、記録層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることが望ましい。このような保護層に関する工夫は従来、種々なされており、例えば、米国特許第3,458,311号明細書および特開昭55−49729号公報に詳しく記載されている。このような保護層を本発明の平版印刷版原版にも適用することができる。
【0213】
また、本発明における平版印刷版原版は、重合型の記録層を有していることから、露光時において大気中の酸素を遮断して重合阻害作用を呈する酸素遮断能を有することが望ましい。一方で、保存時の安定性或いはセーフライト適性の観点で暗重合防止作用を呈する程度の酸素透過能を有することも望ましく、両機能を有する程度において、低酸素遮断性を有する保護層とすることが望ましい。
【0214】
−水溶性高分子化合物−
保護層に主成分として用いられる材料としては、比較的、結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることが好ましく、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸などのような水溶性ポリマーが当業界でよく知られている。これらの中で、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性に最も良好な結果を与える。保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要とされる酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、およびアセタールで置換されていてもよい。また、同様に一部が他の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。
【0215】
水溶性高分子化合物として、具体的には、(株)クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられる。上記の共重合体としては、88〜100%加水分解されたポリビニルアセテートクロロアセテートまたはプロピオネート、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタールおよびそれらの共重合体が挙げられる。その他有用な水溶性高分子化合物としてはポリビニルピロリドン、ゼラチンおよびアラビアゴム等が挙げられ、これらは単独または併用して用いてもよい。
【0216】
好適に用いられるポリビニルアルコールとしては、ケン化度が71〜100%、分子量が200〜2400の範囲のものを挙げることができる。良好な酸素遮断性、優れた被膜形成性と低接着性表面を有するという観点で、ケン化度が91モル%以上のポリビニルアルコールを用いることが、より好ましい。
【0217】
ポリビニルアルコールとしては市販品を用いることもできる。市販のポリビニルアルコールとしては、具体的には、株式会社クラレ製の、PVA−102、PVA−103、PVA−104、PVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−120、PVA−124、PVA−117H、PVA−135H、PVA−HC、PVA−617、PVA−624、PVA−706、PVA−613、PVA−CS、PVA−CST、日本合成化学工業株式会社製の、ゴーセノールNL−05、NM−11、NM−14、AL−06、P−610、C−500、A−300、AH−17、日本酢ビ・ポバール株式会社製の、JF−04、JF−05、JF−10、JF−17、JF−17L、JM−05、JM−10、JM−17、JM−17L、JT−05、JT−13、JT−15等が挙げられる。
【0218】
さらに、ポリビニルアルコールを酸変性したものも好適に用いられる。具体的には、イタコン酸やマレイン酸変性のカルボキシ変性ポリビニルアルコールやスルホン酸変性ポリビニルアルコールが好適なものとして挙げられる。これら酸変性ポリビニルアルコールもケン化度が91モル%以上のものが、より好ましく使用できる。
具体的な酸変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、株式会社クラレ製の、KL−118、KM−618、KM−118、SK−5102、MP−102、R−2105、日本合成化学工業株式会社製の、ゴーセナールCKS−50、T−HS−1、T−215、T−350、T−330、T−330H、日本酢ビ・ポバール株式会社製の、AF−17、AT−17等が挙げられる。
【0219】
水溶性高分子化合物は、得られる平版印刷原版の感度や、平版印刷版原版を積層した場合における平版印刷版原版同士の接着の抑制などを考慮すると、保護層中の全固形分量に対して、45〜95質量%の範囲で含有されることが好ましく、50〜90質量%の範囲で含有されることがより好ましい。
【0220】
また、水溶性高分子化合物は、保護層中に、少なくとも1種を用いればよく、複数種を併用してもよい。複数種の水溶性高分子化合物を併用した場合でも、その合計の量が上記の質量範囲であることが好ましい。
【0221】
一方で、保護層においては、記録層の画像部との密着性や、皮膜の均一性も版の取り扱い上極めて重要である。即ち、水溶性ポリマーからなる親水性の層を親油性の記録層に積層すると、接着力不足による膜剥離が発生しやすく、剥離部分が酸素の重合阻害により膜硬化不良などの欠陥を引き起こす。これに対し、これら2層間の接着性を改善すべく種々の提案がなされている。例えば、米国特許出願番号第292,501号、米国特許出願番号第44,563号には、主にポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系エマルジョン又は水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体などを20〜60質量%混合し、記録層の上に積層することにより、充分な接着性が得られることが記載されている。これらの公知の技術をいずれも適用することはもちろん可能である。
【0222】
記録層との接着力、感度、不要なカブリの発生性の観点から、保護層にポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとを併用してもよい。この場合の添加量比(質量比)は、ケン化度が91モル%以上のポリビニルアルコール/ポリビニルピロリドンが、3/1以下であることが好ましい。また、ポリビニルピロリドンの他にも、比較的結晶性に優れている、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸、及びこれらの共重合体なども、ポリビニルアルコールと併用することができる。
【0223】
−フィラー−
本発明に係る保護層には、前記水溶性高分子化合物に加え、フィラーを含有することが好ましい。フィラーを含有することによって、記録層表面の耐キズ性の向上が図れ、さらには、平版印刷版原版を、合紙を介することなく積層した場合に生じる隣接する平版印刷版原版との接着が抑制され、平版印刷版原版同士の剥離性を優れたものとしうるため、ハンドリング性が向上するという利点をも有することになる。かかるフィラーとしては、有機フィラー、無機フィラー、無機−有機複合フィラー等のいずれでもよく、またこれらのうち、2種以上を混合して用いてもよい。好ましくは無機フィラーと有機フィラーの併用である。
【0224】
フィラーの形状は、目的に応じて適宜選択されるが、例えば、繊維状、針状、板状、球状、粒状(なお、ここで「粒状」とは「不定形状の粒子」を指し、以下、本明細書において同じ意味で用いる。)、テトラポット状およびバルーン状等が挙げられる。これらのうち、好ましいものは板状、球状、粒状である。
【0225】
有機フィラーとしては、例えば、合成樹脂粒子、天然高分子粒子等が挙げられ、好ましくはアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、カルボキシメチルセルロールス、ゼラチン、デンプン、キチン、キトサン等の樹脂粒子であり、より好ましくはアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の樹脂粒子が挙げられる。
【0226】
保護層に添加する有機フィラーに好適な市販のフィラーとしては、具体的には、三井化学製の、ケミパールW100、W200、W300、W308、W310、W400、W401、W4005、W410、W500、WF640、W700、W800、W900、W950、WP100、綜研化学製の、MX−150、MX−180、MX−300、MX−500、MX−1000、MX−1500H、MX−2000、MR−2HG、MR−7HG、MR−10HG、MR−3GSN、MR−5GSN、MR−2G、MR−7G、MR−10G、MR−20G、MR−5C、MR−7GC、SX−130H、SX−350H、SX−500H、SGP−50C、SGP−70C、積水化成品工業製の、MBX−5、MBX−8、MBX−12、MBX−15、MBX−20、MB20X−5、MB30X−5、MB30X−8、MB30X−20、SBX−6、SBX−8、SBX−12、SBX−17等が挙げられる。
【0227】
粒子サイズ分布は、単分散でも多分散でもよいが、単分散が好ましい。フィラーの大きさは、平均粒子径が1〜20μmであることが好ましく、より好ましくは、平均粒子径が2〜15μm、更に好ましくは、平均粒子径が3〜10μmである。これらの範囲内とすることにより、上記本発明の効果がより有効に発現される。
【0228】
有機フィラーの含有量は、保護層の全固形分量に対し、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは、2〜10質量%である。
【0229】
無機フィラーとしては、金属及び金属化合物、例えば、酸化物、複合酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、窒化物、炭化物、硫化物及びこれらの少なくとも2種以上の複合化物等が挙げられ、具体的には、雲母化合物、硝子、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ジルコン、酸化錫、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、硼酸アルミニウム、酸化マグネシウム、硼酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化チタン、塩基性硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、窒化珪素、窒化チタン、窒化アルミ、炭化珪素、炭化チタン、硫化亜鉛及びこれらの少なくとも2種以上の複合化物等が挙げられる。
好ましくは、雲母化合物、硝子、アルミナ、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、硼酸アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。
これらのうち、保護層に特に好適なものとして、雲母化合物が挙げられる。この雲母に代表される無機質の層状化合物について以下に詳述する。
【0230】
−無機質の層状化合物−
本発明に係る保護層は、無機質の層状化合物を含有することが好ましい。無機質の層状化合物を併用することにより、酸素遮断性はさらに高まり、また、保護層の膜強度が一層向上して耐キズ性が向上する他、保護層にマット性を付与することができる。
その結果、保護層は、上記の酸素等の遮断性に加え、変形などによる劣化やキズの発生を抑制することが可能となる。さらに、保護層にマット性を付与することによって、平版印刷版原版を積層した場合には、平版印刷版原版の保護層表面と隣接する平版印刷版原版の支持体裏面との接着を抑制することが可能となる。
【0231】
無機質の層状化合物としては、例えば、一般式:A(B,C)−5D10(OH,F,O)〔ただし、Aは、K,Na,Caの何れか、B及びCは、Fe(II),Fe(III),Mn,Al,Mg,Vの何れかであり、Dは、Si又はAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母化合物などが挙げられる。
【0232】
上記雲母化合物においては、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。また、合成雲母としては、フッ素金雲母KMg(AlSi10)F、カリ四ケイ素雲母KMg2.5(Si10)F等の非膨潤性雲母、及びNaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si10)F、Na又はLiテニオライト(Na,Li)MgLi(Si10)F、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si10)F等の膨潤性雲母等が挙げられる。更に、合成スメクタイトも有用である。
【0233】
上記の雲母化合物の中でも、フッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。即ち、この膨潤性合成雲母は、10〜15Å程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘度鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にNa、Ca2+、Mg2+等の陽イオンを吸着している。こ
れらの層間に介在している陽イオンは交換性陽イオンと呼ばれ、いろいろな陽イオンと交換する。特に、層間の陽イオンがLi、Naの場合、イオン半径が小さいため層状結晶格子間の結合が弱く、水により大きく膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。膨潤性合成雲母はこの傾向が強く、本実施の形態において有用であり、特に、膨潤性合成雲母が好ましく用いられる。
【0234】
雲母化合物の形状としては、拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きいほどよい。従って、アスペクト比は20以上であり、好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。なお、アスペクト比は粒子の長径に対する厚さの比であり、例えば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
【0235】
雲母化合物の粒子径は、その平均長径が0.3〜20μm、好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは1〜5μmである。また、該粒子の平均の厚さは、0.1μm以下、好ましくは、0.05μm以下、特に好ましくは、0.01μm以下である。具体的には、例えば、代表的化合物である膨潤性合成雲母のサイズは、厚さが1〜50nm、面サイズ(長径)が1〜20μm程度である。
【0236】
無機質の層状化合物の保護層に含有される量は、積層した場合の平版印刷版原版同士の接着の抑制やキズ発生の抑制、レーザ露光時の遮断による感度低下、低酸素透過性などの観点から、保護層の全固形分量に対し、5〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜40質量%の範囲が特に好ましい。複数種の無機質の層状化合物を併用した場合でも、これらの無機質の層状化合物の合計の量が上記の質量であることが好ましい。
無機質の層状化合物以外の無機フィラーの保護層に含有される量も同様に、保護層の全固形分量に対し、5〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜40質量%の範囲が特に好ましい。
【0237】
保護層中には、有機フィラーと無機フィラーとを混合して使用することも可能であり、混合比率は重量比で、1:1〜1:5の範囲が好適である。この場合の保護層への含有量としては、保護層の全固形分量に対し、無機フィラー有機フィラーの合計量で5〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜40質量%の範囲がより好ましい。
また、無機−有機複合フィラーを用いることもできる。無機−有機複合フィラーとしては、例えば、上記有機フィラーと無機フィラーの複合化物が挙げられ、複合化に用いられる無機フィラーとしては、金属粉体、金属化合物(例えば、酸化物、窒化物、硫化物、炭化物及びこれらの複合化物等)の粒子が挙げられ、好ましくは酸化物及び硫化物等であり、より好ましくはガラス、SiO 、ZnO、Fe 、ZrO 、SnO 、ZnS、CuS等の粒子が挙げられる。無機−有機複合フィラーの保護層への含有量としては、保護層の全固形分量に対し、5〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜40質量%の範囲がより好ましい。
【0238】
保護層の成分(ポリビニルアルコールや無機質の層状化合物の選択、添加剤の使用)、塗布量等は、酸素遮断性・現像除去性の他、カブリ性や密着性・耐傷性を考慮して選択される。
本発明において、保護層は単層に限らず、互いに異なる組成を有する複数の保護層を重層構造で設けることも可能である。重層構造の保護層の好ましい態様としては、記録層に近接して無機質の層状化合物を含有する保護層を下部保護層として設け、その表面にフィラーを含有する保護層を上部保護層として、これらを順次積層する態様が挙げられる。
このような積層構造の保護層を設けることによって、最上層の保護層において、フィラーに起因する耐傷性、耐接着性の利点を十分に生かしながら、下部保護層の優れた酸素遮断性と相俟って、傷の発生及び所望されない酸素透過のいずれに起因する画像欠損も効果的に防止することができる。
本発明における保護層は、25℃−1気圧における酸素透過度が、0.5ml/m
day以上100ml/m・day以下であることが好ましく、このような酸素透過度
を達成するように、塗布量を調整することが好ましい。
【0239】
なお、保護層には、記録層を露光する際に用いる光の透過性に優れ、かつ、露光に関わらない波長の光を効率よく吸収しうる、着色剤(水溶性染料)を添加してもよい。これにより、感度を低下させることなく、セーフライト適性を高めることができる。
【0240】
−保護層の形成−
保護層の塗布方法は、特に制限されるものではなく、上記成分を含む水性保護層用塗布液を、記録層上に塗布することで実施される。例えば、米国特許第3,458,311号又は特開昭55−49729号に記載されている方法も適用することができる。
【0241】
以下、雲母化合物等の無機質の層状化合物とポリビニルアルコール等の水溶性高分子化合物とを含有する保護層の塗布方法について詳述する。雲母化合物等の無機質の層状化合物が分散する分散液を調製し、その分散液と、上記のポリビニルアルコール等の水溶性高分子化合物(又は、水溶性高分子化合物を溶解した水溶液)とを混合してなる保護層用塗布液を、記録層上に塗布することで保護層が形成される。
【0242】
保護層に用いる雲母化合物等の無機質の層状化合物の分散方法の例について述べる。まず、水100質量部に先に雲母化合物の好ましいものとして挙げた膨潤性雲母化合物を5〜10質量部添加し、充分水になじませ、膨潤させた後、分散機にかけて分散する。ここで用いる分散機としては、機械的に直接力を加えて分散する各種ミル、大きな剪断力を有する高速攪拌型分散機、高強度の超音波エネルギーを与える分散機等が挙げられる。具体的には、ボールミル、サンドグラインダーミル、ビスコミル、コロイドミル、ホモジナイザー、ティゾルバー、ポリトロン、ホモミキサー、ホモブレンダー、ケディミル、ジェットアジター、毛細管式乳化装置、液体サイレン、電磁歪式超音波発生機、ポールマン笛を有する乳化装置等が挙げられる。一般には、上記の方法で分散した雲母化合物の2〜15質量%の分散物は高粘度或いはゲル状であり、保存安定性は極めて良好である。この分散物を用いて保護層用塗布液を調製する際には、水で希釈し、充分攪拌した後、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子化合物(又は、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子化合物を溶解した水溶液)と配合して調製するのが好ましい。
【0243】
この保護層用塗布液には、塗布性を向上させための界面活性剤や、得られる被膜の物性改良のための水溶性可塑剤など、公知の添加剤を加えることができる。水溶性の可塑剤としては、例えば、プロピオンアミド、シクロヘキサンジオール、グリセリン、ソルビトール等が挙げられる。また、水溶性の(メタ)アクリル系ポリマーを加えることもできる。更に、この塗布液には、記録層との密着性、塗布液の経時安定性を向上するための公知の添加剤を加えてもよい。
【0244】
保護層の塗布量は、得られる保護層の膜強度や耐キズ性、画質の維持、セーフライト適性を付与するための適切な酸素透過性を維持する観点で、0.1g/m〜4.0g/mが好ましく、0.3g/m〜3.0g/mがより好ましい。
【0245】
また、保護層は単層でも重層構造であってもよい。重層構造の保護層を設ける場合の塗布方法には特に制限はなく、同時重層塗布を行う方法、逐次塗布して重層する方法のいずれも適用することができる。
重層塗布を行う場合の、無機質の層状化合物を含有する下部保護層とフィラーを含有する上部保護層との塗布量は、下部保護層が0.1g/m〜1.5g/mが好ましく、0.2g/m〜1.0g/mがより好ましく、上部保護層が0.1g/m〜4.0g/mが好ましく、0.2g/m〜3.0g/mがより好ましい。両者のバランスとしては、1:1〜1:5であることが好ましい。
【0246】
<下塗り層>
本発明の平版印刷版原版においては、必要に応じて、記録層と支持体との間にアルカリ可溶性高分子からなる下塗り層(中間層とも言う)を設けることができる。
【0247】
下塗り層を有することで、記録層が露光面又はその近傍に設けられることで赤外線レーザ等に対する感度が良好となるとともに、支持体と該記録層との間にこの下塗り層が存在し、断熱層として機能することで、赤外線レーザの露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率良く使用されることからの高感度化が図れる。
また、露光部においては、アルカリ現像液に対して非浸透性となった感光層(記録層)がこの下塗り層の保護層として機能するために、現像安定性が良好になるとともにディスクリミネーションに優れた画像が形成され、且つ、経時的な安定性も確保されるものと考えられ、未露光部においては、未硬化のバインダー成分が速やかに現像液に溶解、分散し、さらには、支持体に隣接して存在するこの下塗り層がアルカリ可溶性高分子からなるものであるため、現像液に対する溶解性が良好で、例えば、活性の低下した現像液などを用いた場合でも、残膜などが発生することなく速やかに溶解するため、現像性に優れるものと考えられる。
【0248】
<支持体>
本発明における支持体としては、後述のような親水化処理が施されたものが用いられことが好ましい。このような支持体としては、紙、ポリエステルフィルムまたはアルミニウム板が挙げられ、その中でも、寸法安定性がよく、比較的安価であり、必要に応じた表面処理により親水性や強度にすぐれた表面を提供できるアルミニウム板は更に好ましい。また、特公昭48−18327号公報に記載されているようなポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミニウムシートが結合された複合体シートも好ましい。
【0249】
本発明において最も好適な支持体としてのアルミニウム板は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属板であり、純アルミニウム板の他、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、またはアルミニウム(合金)がラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルムまたは紙の中から選ばれる。以下の説明において、上記に挙げたアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる支持体をアルミニウム支持体と総称して用いる。
【0250】
前記アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがあり、合金中の異元素の含有量は10質量%以下である。本発明では純アルミニウム板が好適であるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のもの、例えば、JIS A 1050、JIS A 1100、JIS A 3103、JIS A 3005などを適宜利用することができる。
【0251】
また、本発明に用いられるアルミニウム支持体の厚みは、およそ0.1mm〜0.6mm程度である。この厚みは印刷機の大きさ、印刷版の大きさおよびユーザーの希望により適宜変更することができる。
このようなアルミニウム支持体には、後述の表面処理が施され、親水化される。
【0252】
−粗面化処理−
粗面化処理方法は、特開昭56−28893号公報に開示されているような機械的粗面化、化学的エッチング、電解グレインなどがある。更に塩酸または硝酸電解液中で電気化学的に粗面化する電気化学的粗面化方法、およびアルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立でするポールグレイン法、ナイロンブラシと研磨剤で表面を粗面化するブラシグレイン法のような機械的粗面化法を用いることができ、上記粗面化方法を単独或いは組み合わせて用いることもできる。その中でも粗面化に有用に使用される方法は塩酸または硝酸電解液中で化学的に粗面化する電気化学的方法であり、適する陽極時電気量は50C/dm〜400C/
dmの範囲である。更に具体的には、0.1〜50%の塩酸または硝酸を含む電解液中
、温度20〜80℃、時間1秒〜30分、電流密度100C/dm〜400C/dmの条件で交流および/または直流電解を行うことが好ましい。
【0253】
このように粗面化処理したアルミニウム支持体は、酸またはアルカリにより化学的にエッチングされてもよい。好適に用いられるエッチング剤は、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、リン酸ソーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウム等であり、濃度と温度の好ましい範囲はそれぞれ1〜50%、20〜100℃である。エッチングのあと表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗いが行われる。用いられる酸は硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ酸、ホウフッ化水素酸等が用いられる。特に電気化学的粗面化処理後のスマット除去処理方法としては、好ましくは特開昭53−12739号公報に記載されているような50〜90℃の温度の15〜65質量%の硫酸と接触させる方法および特公昭48−28123号公報に記載されているアルカリエッチングする方法が挙げられる。以上のように処理された後、処理面の表面粗さRaが0.2〜0.5μm程度であれば、特に、方法、条件は限定しない。
【0254】
−陽極酸化処理−
以上のようにして処理され酸化物層を形成したアルミニウム支持体には、その後に陽極酸化処理がなされる。
陽極酸化処理は硫酸、燐酸、シュウ酸若しくは硼酸/硼酸ナトリウムの水溶液が単独若しくは複数種類組み合わせて電解浴の主成分として用いられる。この際、電解液中に少なくともAl合金板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分はもちろん含まれても構わない。更には第2、第3成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、3成分とは、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオンやアンモニウムイオン等に陽イオンや、硝酸イオン、炭酸イオン、塩素イオン、リン酸イオン、フッ素イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、硼酸イオン等の陰イオンが挙げられ、その濃度としては0〜10000ppm程度含まれてもよい。陽極酸化処理の条件に特に限定はないが、好ましくは30〜500g/リットル、処理液温10〜70℃で、電流密度0.1〜40A/mの範囲で
直流または交流電解によって処理される。形成される陽極酸化皮膜の厚さは0.5〜1.5μmの範囲である。好ましくは0.5〜1.0μmの範囲である。以上の処理によって作製された支持体が、陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアのポア径が5〜10nm、ポア密度が8×1015〜2×1016個/mの範囲に入るように処理条件が選択されること
が好ましい。
【0255】
支持体表面の親水化処理としては、広く公知の方法が適用できる。特に好ましい処理としては、シリケートまたはポリビニルホスホン酸等による親水化処理が施される。皮膜はSi、またはP元素量として2〜40mg/m、より好ましくは4〜30mg/mで形成される。塗布量はケイ光X線分析法により測定できる。
【0256】
親水化処理は、アルカリ金属ケイ酸塩、またはポリビニルホスホン酸が1〜30質量%、好ましくは2〜15質量%であり、25℃のpHが10〜13である水溶液に、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム支持体を、例えば、15〜80℃で0.5〜120秒浸漬することにより実施される。
【0257】
親水化処理に用いられるアルカリ金属ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムなどが使用される。アルカリ金属ケイ酸塩水溶液のpHを高くするために使用される水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがある。なお、上記の処理液にアルカリ土類金属塩若しくは第IVB族金属塩を配合してもよい。アルカリ土類金属塩としては、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウムのような硝酸塩や、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩などの水溶性の塩が挙げられる。第IVB族金属塩としては、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムなどを挙げることができる。
【0258】
アルカリ土類金属塩若しくは、第IVB族金属塩は、単独または2種以上組み合わせて使用することができる。これらの金属塩の好ましい範囲は0.01〜10質量%であり、更に好ましい範囲は0.05〜5.0質量%である。また、米国特許第3,658,662号明細書に記載されているようなシリケート電着も有効である。特公昭46−27481号、特開昭52−58602号、特開昭52−30503号に開示されているような電解グレインを施した支持体と、上記陽極酸化処理および親水化処理を組合せた表面処理も有用である。
【0259】
−支持体の裏面処理−
本発明の平版印刷版原版には、耐傷性をより向上させる目的で、支持体裏面を修飾することが好ましい。支持体裏面の修飾方法としては、例えば、アルミニウム支持体を用いた場合には、その裏面に、記録層側と同じ様に全面に均一に陽極酸化皮膜を形成する方法や、バックコート層を形成する方法などが挙げられる。陽極酸化皮膜を形成する方法をとる場合の被膜形成量としては、0.6g/m以上であることが好ましく、0.7〜6g/mの範囲であることが好ましい。これらのうち、バックコート層を設ける方法がより有効であり好ましい。以下、これらの裏面処理方法について説明する。
【0260】
(1)裏面陽極酸化皮膜の形成方法
最初に、アルミニウム支持体裏面に、記録層側と同じ様に全面に均一に陽極酸化皮膜を0.6g/m以上形成する方法について記載する。陽極酸化皮膜の形成は、支持体表面処理において説明したのと同様の手段により行われる。支持体裏面に設けられる陽極酸化皮膜の厚みは、0.6g/m以上であれば有効であり、性能上の観点からはその上限には特に制限はないが、皮膜形成時の電力などのエネルギー、形成に要する時間などを考慮すれば6g/m程度であればよく、実用的な好ましい皮膜量は0.7g〜6g/mであり、より好ましい範囲としては1.0g〜3g/mである。
陽極酸化皮膜の量は、蛍光X線を用い、Alのピークを測定し、ピーク高さと被膜量の検量線により、換算することができる。
【0261】
本発明において、アルミニウム支持体の面に陽極酸化皮膜が全面に設けられ、その量が0.6g/m以上であることは、平版印刷版原版におけるアルミニウム支持体の記録層と反対側の陽極酸化皮膜を有する面の中央部と、その中央部を通り、処理方向(Machine Direction)に直交する方向(Transverse Direction)における両端から各々5cmの端部について、いずれもが陽極酸化皮膜量0.6g/m以上であることにより確認される。
【0262】
(2)バックコート層の形成方法
次に、アルミニウム支持体裏面にバックコート層を設ける方法について記載する。本発明におけるバックコート層としては、どのような組成のものを用いてもよいが、特に、以下に詳述する有機金属化合物又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物と、コロイダルシリカゾルとを含むバックコート層や有機樹脂被膜からなるバックコート層が好ましく挙げられる。
(2−1)金属酸化物とコロイダルシリカゾルとを含むバックコート層
本発明におけるバックコート層の好ましい第1の態様として、金属酸化物とコロイダルシリカゾルとを含むバックコート層が挙げられる。
より具体的には、有機金属化合物あるいは無機金属化合物を水および有機溶媒中で、酸、またはアルカリなどの触媒で加水分解、及び縮重合反応を起こさせたいわゆるゾル−ゲル反応液により形成されるバックコート層が好ましい。
バックコート層形成に用いる有機金属化合物あるいは無機金属化合物としては、例えば、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネート、金属酢酸塩、金属シュウ酸塩、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属オキシ塩化物、金属塩化物およびこれらを部分加水分解してオリゴマー化した縮合物が挙げられる。
金属アルコキシドはM(OR)の一般式で表される(Mは金属元素、Rはアルキル基、nは金属元素の酸化数を示す)。具体例としては、例えば、Si(OCH、Si(OC、Si(OC、Si(OC、Al(OCH、Al(OC、Al(OC、Al(OC、B(OCH、B(OC、B(OC、B(OC、Ti(OCH、Ti(OC、Ti(OC、Ti(OC、Zr(OCH、Zr(OC、Zr(OC、Zr(OCなどが挙げられ、その他にも、例えば、Ge、Li、Na、Fe、Ga、Mg、P、Sb、Sn、Ta、Vなどのアルコキシドが挙げられる。さらに、CHSi(OCH、CSi(OCH、CHSi(OC、CSi(OCなどのモノ置換珪素アルコキシドも用いられる。
【0263】
これらの有機金属化合物あるいは無機金属化合物は単独、または二つ以上のものを組み合わせて用いることができる。これらの有機金属化合物あるいは無機金属化合物のなかでは金属アルコキシドが反応性に富み、金属−酸素の結合からできた重合体を生成しやすく好ましい。それらのうち、Si(OCH、Si(OC、Si(OC、Si(OC、などの珪素のアルコキシド化合物が安価で入手し易く、それから得られる金属酸化物の被覆層が優れており特に好ましい。また、これらの珪素のアルコキシド化合物を部分加水分解して縮合したオリゴマーも好ましい。この例としては、約40質量%のSiOを含有する平均5量体のエチルシリケートオリゴマーが挙げられる。
【0264】
さらに、前記珪素のテトラアルコキシ化合物の一個または二個のアルコキシ基をアルキル基や反応性を持った基で置換したいわゆるシランカップリング剤を、これら金属アルコキシドと併用することも好ましい例として挙げられる。本発明におけるバックコート層に添加するシランカップリング剤としては、前記珪素のテトラアルコキシ化合物における一個または二個のアルコキシ基を炭素数4〜20の長鎖アルキル、フッ素置換アルキル基などの疎水性の置換基で置換したシランカップリング剤が挙げられ、特にフッ素置換アルキル基を有するシランカップリング剤が好ましい。この様なシランカップリング剤の具体例としては、CFCHCHSi(OCH、CFCFCHCHSi(OCH、CFCHCHSi(OCなどが挙げられ、市販品では、信越化学株式会社製LS−1090等が挙げられる。上記フッ素置換アルキル基で置換されたシランカップリング剤は、本発明における有機フッ素化合物に包含される。このようなシランカップリング剤の好ましい含有量は、バックコート層全固形分の5〜90質量%であり、より好ましく10〜80質量%の範囲である。
【0265】
バックコート層のゾル−ゲル塗布液を形成する際に有用な触媒としては、有機、無機の酸およびアルカリが用いられる。その例としては、塩酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、フッ素、リン酸、亜リン酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、グリコール酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、フロロ酢酸、ブロモ酢酸、メトキシ酢酸、オキサロ酢酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、アスコルビン酸、安息香酸、3,4−ジメトキシ安息香酸のような置換安息香酸、フェノキシ酢酸、フタル酸、ピクリン酸、ニコチン酸、ピコリン酸、ピラジン、ピラゾール、ジピコリン酸、アジピン酸、p−トルイル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキセン−2,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などの有機酸、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカリが挙げられる。
【0266】
他の好ましい触媒として、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、およびリン酸エステル類など、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニルなどの有機酸も使用できる。
【0267】
これらの触媒は単独または二種以上を組み合わせて用いることができる。触媒は原料の金属化合物に対して0.001〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜5質量%の範囲である。触媒量がこの範囲より少ないとゾル−ゲル反応の開始が遅くなり、この範囲より多いと反応が急速に進み、不均一なゾル−ゲル粒子ができるため、得られる被覆層は剥離しやすいものとなる。
【0268】
ゾル−ゲル反応を開始させるには更に適量の水が必要であり、その好ましい添加量は原料の金属化合物を完全に加水分解するのに必要な水の量の0.05〜50倍モルが好ましく、より好ましくは0.5〜30倍モルである。水の量がこの範囲より少ないと加水分解が進みにくく、この範囲より多いと原料が薄められるためか、やはり反応が進みにくくなる。
【0269】
ゾル−ゲル反応液には更に溶媒が添加される。溶媒は原料の金属化合物を溶解し、反応で生じたゾル−ゲル粒子を溶解または分散するものであればよく、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンなどのケトン類が用いられる。またバックコート層の塗布面質向上等の目的でエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコールおよびジプロピレングリコールなどのグリコール類のモノまたはジアルキルエーテルおよび酢酸エステルを用いることができる。これらの溶媒の中で水と混合可能な低級アルコール類が好ましい。ゾル−ゲル反応液は塗布するのに適した濃度に溶媒で調製されるが、溶媒の全量を最初から反応液に加えると原料が希釈されるためか加水分解反応が進みにくくなる。そこで溶媒の一部をゾル−ゲル反応液に加え、反応が進んだ時点で残りの溶媒を加える方法が好ましい。
このようにして形成された金属酸化物とコロイダルシリカゾルとを含むバックコート層の塗布量としては、0.01〜3.0g/mであることが好ましく、0.03〜1.0g/mであることがさらに好ましい。
【0270】
(2−2)有機樹脂被膜からなるバックコート層
本発明におけるバックコート層の他の好ましい例としては、支持体裏面に形成された有機樹脂被膜からなるバックコート層が挙げられる。
本態様においてバックコート層を形成しうる好ましい樹脂のとしては、例えば、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。なかでも、形成される層の物理的強度が高いという観点から、フェノール樹脂が好ましく、より具体的には、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,又はm−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂やピロガロールアセトン樹脂が好ましく挙げられる。
【0271】
また、フェノール樹脂としては、更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体が挙げられる。
フェノール樹脂としては、その重量平均分子量が500以上であることが画像形成性の点で好ましく、1,000〜700,000であることがより好ましい。また、その数平均分子量が500以上であることが好ましく、750〜650,000であることがより好ましい。分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1.1〜10であることが好ましい。
【0272】
また、これらのフェノール樹脂は単独で用いるのみならず、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。組み合わせる場合には、米国特許第4123279号明細書に記載されているような、t−ブチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体や、オクチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、本発明者らが先に提出した特開2000−241972号公報に記載の芳香環上に電子吸引性基を有するフェノール構造を有する有機樹脂などを併用してもよい。
【0273】
バックコート層には、塗布面状性の改良や表面物性制御の目的で、界面活性剤添加することができる。ここで用いられる界面活性剤としては、カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル及び燐酸エステルのいずれかを有するアニオン型の界面活性剤;脂肪族アミン、第4級アンモニウム塩のようなカチオン型の界面活性剤;ベタイン型の両性界面活性剤;又は、ポリオキシ化合物の脂肪酸エステル、ポリアルキンレンオキシド縮合型、ポリエチレンイミン縮合型の様なノニオン型界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられるが、特にフッ素系界面活性剤が好ましい。
界面活性剤の添加量は、目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、バックコート層中に0.1〜10.0質量%の範囲で添加することができる。
【0274】
フッ素系界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系の界面活性剤が特に好ましい。このようなフッ素系界面活性剤について詳細に述べる。
バックコート層に特に好適に使用しうるフッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどのアニオン型、パーフルオロアルキルベタインなどの両性型、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などのカチオン型及びパーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基含有ウレタンなどの非イオン型が挙げられる。更にこれらの中でも前記フルオロ脂肪族基が下記一般式(C)で表される基であることが好ましい。
【0275】
【化51】

【0276】
一般式(C)中、R及びRは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基を表し、Xは単結合もしくはアルキレン基、アリーレン基などから選択される2価の連結基を表し、mは0以上の整数、nは1以上の整数を表す。
ここで、Xが2価の連結基を表すとき、アルキレン基、アリーレン基等の連結基は、置換基を有するものであってもよく、また、その構造中に、エーテル基、エステル基、アミド基などから選ばれる連結基を有するものであってもよい。アルキレン基、アリーレン基に導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アリール基等が挙げられ、これらはさらに置換基を有するものであってもよい。これらのうち、Xとしては、アルキレン基、アリーレン基、又は、エーテル基、エステル基、アミド基などから選ばれる連結基を有するアルキレン基が好ましく、無置換のアルキレン基、無置換のアリーレン基、又は、内部にエーテル基或いはエステル基を有するアルキレン基がより好ましく、無置換のアルキレン基、又は、内部にエーテル基或いはエステル基を有するアルキレン基が最も好ましい。
このようなフッ素系界面活性剤をバックコート層中に0.5〜10質量%程度含むことが好ましい。
【0277】
有機樹脂被膜からなるバックコート層をアルミニウム支持体の裏面に被覆するには種々の方法が適用できる。バックコート層成分、具体的には、有機樹脂を主成分とする各原料に所望によりシリカゲル等の微粒子を添加した後、例えば適当な溶媒に溶解して、または乳化分散液にして塗布液を調製し、支持体裏面に塗布し、乾燥する方法や、予めフィルム状に成形した有機樹脂膜を接着剤を介して、或いは加熱により、アルミニウム支持体に貼り合わせる方法、溶融押し出し機で溶融皮膜を形成し、支持体に貼り合わせる方法等が挙げられる。なかでも、塗布量制御の容易性の観点から最も好ましいのは溶液にして塗布、乾燥する方法である。ここで使用される溶媒としては、特開昭62−251739号公報に記載されているような有機溶剤が単独あるいは混合して用いられる。
【0278】
バックコート層塗布液を支持体表面に塗布する手段としては、バーコーター、ロールコーター、グラビアコーター、あるいはカーテンコーター、エクストルーダ、スライドホッパー等公知の計量塗布装置を挙げることができるが、アルミニウム支持体裏面に傷を付け無い点からカーテンコーター、エクストルーダ、スライドホッパー等の非接触型定量コーターが特に好ましい。
【0279】
バックコート層の厚さは、金属酸化物とコロイダルシリカゾルとを含むバックコート層、有機樹脂からなるバックコート層のいずれにおいても、形成された膜厚が0.1〜8μmの範囲であることが好ましい。この厚さの範囲において、アルミ支持体裏面の表面滑り性が向上し、且つ、印刷中、印刷周辺で用いられる薬品によるバックコート層の溶解や膨潤による厚みの変動、及び、それに起因する印圧が変化による印刷特性の劣化を抑制することができる。
バックコート層として最も好ましいものは、有機樹脂からなるバックコート層である。
【0280】
<製版方法>
以下、本発明の平版印刷版原版の製版方法の例について説明する。
本発明の平版印刷版原版の製版方法としては、例えば、上述した本発明の平版印刷版原版を、保護層と支持体(以下の製版方法の説明においては、特にアルミニウム支持体を例に説明する)裏面とを直接接触させて複数枚積層してなる積層体を、プレートセッター内にセットし、該平版印刷版原版を1枚ずつ自動搬送した後に、750nm〜1400nmの波長で露光処理した後、実質的に加熱処理を経ることなく、搬送速度が1.25m/分以上の条件にて現像処理を行なう方法が挙げられる。
【0281】
本発明の平版印刷版原版は、中間に合紙を挟み込むことなく積層しても、平版印刷版原版の間の密着性や、保護層へのキズの発生が抑制されるため、上記のような製版方法に適用することができる。
また、上記のごとき製版方法によれば、平版印刷版原版を合紙を挟み込むことなく積層した積層体を用いることから、合紙の除去が不必要となり、製版工程における生産性が向上する。
【0282】
また、上記の平版印刷版の製版方法が適用される記録層(感光層)としては、pH10〜13.5のアルカリ現像液に対する未露光部の現像速度が80nm/sec以上、かつ、該アルカリ現像液の露光部での浸透速度が50nF/sec以下である物性を有することが好ましい。この記録層の未露光部の現像速度や硬化後の感光層に対するアルカリ現像液の浸透速度の測定方法は、本出願人が先に出願した特願2004−248535号明細書に記載された方法を用いることができる。記録層の未露光部の現像速度や硬化後の感光層に対するアルカリ現像液の浸透速度の制御は、常法により行うことができるが、代表的なものとしては、前記特定バインダーポリマーを使用する方法の他、未露光部の現像速度の向上には、親水性の化合物の添加が有用であり、露光部への現像液浸透抑制には、疎水性の化合物の添加手段が有用である。
【0283】
−露光−
本発明の平版印刷版原版に適用される露光処理に用いられる光源としては、750nm〜1400nmの波長で露光し得るものであれば、如何なるものでもよいが、赤外線レーザーが好適なものとして挙げられる。中でも、本発明においては、750nm〜1400nmの波長の赤外線を放射する固体レーザーおよび半導体レーザーにより画像露光されることが好ましい。レーザーの出力は100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。平版印刷版原版に照射されるエネルギーは10〜300mJ/cmであることが好ましい。露光のエネルギーが低すぎると感光層の硬化が十分に進行しない。また、露光のエネルギーが高すぎると感光層がレーザーアブレーションされ、画像が損傷することがある。
【0284】
露光処理では、光源の光ビームをオーバーラップさせて露光することができる。オーバーラップとは副走査ピッチ幅がビーム径より小さいことをいう。オーバーラップは、例えば、ビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表わしたとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明ではこのオーバーラップ係数が0.1以上であることが好ましい。
【0285】
本発明に使用する露光装置の光源の走査方式は特に限定はなく、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、円筒外面方式の場合にはマルチチャンネルが好ましく用いられる。
【0286】
本発明においては、上述のように、露光処理された平版印刷版原版は、特段の加熱処理および水洗処理を行なうことなく、現像処理に供される。この加熱処理を行なわないことで、加熱処理に起因する画像の不均一性を抑制することができる。また、加熱処理および水洗処理を行なわないことで、現像処理において安定な高速処理が可能となる。
【0287】
−現像−
本発明に適用される現像処理では、現像液を用いて、記録層の非画像部を除去する。
なお、本発明においては、上述のように、現像処理における処理速度、即ち、現像処理における平版印刷版原版の搬送速度(ライン速度)は、1.25m/分以上であることをが好ましく、より好ましくは、1.35m/分以上である。また、搬送速度の上限値には特に制限はないが、搬送の安定性の観点からは、3m/分以下であることが好ましい。
以下、本発明に用いられる現像液について説明する。
【0288】
<現像液>
本発明に用いられる現像液は、pH14以下のアルカリ水溶液であることが好ましく、また、芳香族アニオン界面活性剤を含有することが好ましい。
【0289】
−芳香族アニオン界面活性剤−
芳香族アニオン界面活性剤は、現像促進効果、重合性ネガ型の感光層成分および保護層成分の現像液中での分散安定化効果があり、現像処理安定化において好ましい。中でも、本発明に用いられる芳香族アニオン界面活性剤としては、下記一般式(D)または一般式(E)で表される化合物であることが好ましい。
【0290】
【化52】

【0291】
一般式(D)又は一般式(E)について詳述する。
、Rは、それぞれ独立に、直鎖または分岐鎖の炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等が挙げられ、中でも、エチレン基、プロピレン基が特に好ましい。
m、nは、それぞれ独立に、1〜100から選択される整数を表し、中でも、1〜30が好ましく、2〜20がより好ましい。また、mが2以上の場合、複数存在するRは同
一でも異なっていてもよい。同じく、nが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異
なっていてもよい。
t、uは、それぞれ独立に、0または1を表す。
【0292】
、Rは、それぞれ独立に、直鎖または分岐鎖の炭素数1〜20のアルキル基を表し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基等が挙げられ、中でも、メチル基、エチル基、iso−プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基が特に好ましい。
p、qはそれぞれ、0〜2から選択される整数を表す。Y、Yは、それぞれ単結合、または炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し、具体的には、単結合、メチレン基、エチレン基が好ましく、特に単結合が好ましい。
(Zr+、(Zs+は、それぞれ独立に、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、或いは、無置換またはアルキル基で置換されたアンモニウムイオンを表し、具体例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、アンモニウムイオン、炭素数1〜20の範囲の、アルキル基、アリール基、またはアラルキル基が置換した2級〜4級のアンモニウムイオンなどが挙げられ、特に、ナトリウムイオンが好ましい。r、sはそれぞれ、1または2を表す。
【0293】
以下に、芳香族アニオン界面活性剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0294】
【化53】

【0295】
【化54】

【0296】
これら芳香族アニオン界面活性剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。芳香族アニオン界面活性剤の添加量は、現像液中における芳香族アニオン界面活性剤の濃度が1.0〜10質量%の範囲とすることが好ましく、より好ましくは2〜10質量%の範囲とすることが効果的である。ここで、含有量が1.0質量%未満であると、現像性低下および感光層成分の溶解性低下を招くことがあり、含有量が10質量%を超えると、印刷版の耐刷性を低下させる懸念がある。
【0297】
現像液には、芳香族アニオン界面活性剤以外に、その他の界面活性剤を併用してもよい。その他の界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンステアレート等のポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタンアルキルエステル類、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレート等のモノグリセリドアルキルエステル類等のノニオン界面活性剤である。
これらその他の界面活性剤の現像液中における含有量は有効成分換算で、0.1から10質量%が好ましい。
【0298】
−2価金属に対するキレート剤−
現像液には、例えば、硬水に含まれるカルシウムイオンなどによる影響を抑制する目的で、2価金属に対するキレート剤を含有させることが好ましい。2価金属に対するキレート剤としては、例えば、Na、Na、Na、NaP(NaOP)PONa、カルゴン(ポリメタリン酸ナトリウム)などのポリリン酸塩、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、そのアミン塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、ナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのようなアミノポリカルボン酸類の他2−ホスホノブタントリカルボン酸−1,2,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;2−ホスホノブタノントリカルボン酸−2,3,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ホスホノエタントリカルボン酸−1,2、2、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類を挙げることができ、中でも、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、そのアミン塩;エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、そのアンモニウム塩、そのカリウム塩、;ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、そのアンモニウム塩、そのカリウム塩が好ましい。
このようなキレート剤の最適量は使用される硬水の硬度およびその使用量に応じて変化するが、一般的には、使用時の現像液中に0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%の範囲で含有させる。
【0299】
また、現像液には、現像調整剤として有機酸のアルカリ金属塩類、無機酸のアルカリ金属塩類を加えてもよい。例えば、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、クエン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウムなどを単独若しくは2種以上を組み合わせて混合して用いてもよい。
【0300】
−アルカリ剤−
現像液に用いられるアルカリ剤としては、例えば、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、硼酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、および同リチウムなどの無機アルカリ剤および、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの有機アルカリ剤等が挙げられる。本発明においては、これらを単独で用いてもよいし、若しくは2種以上を組み合わせて混合して用いてもよい。
【0301】
また、上記以外のアルカリ剤として、アルカリ珪酸塩を挙げることができる。アルカリ珪酸塩は塩基と組み合わせて使用してもよい。使用するアルカリ珪酸塩としては、水に溶解したときにアルカリ性を示すものであって、例えば珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸アンモニウムなどがある。これらのアルカリ珪酸塩は1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0302】
本発明に用いられる現像液は、支持体の親水化成分としての珪酸塩の成分である酸化ケイ素SiOと、アルカリ成分としてのアルカリ酸化物MO(Mはアルカリ金属またはアンモニウム基を表す)との混合比率、および濃度の調整により、最適な範囲に容易に調節することができる。酸化ケイ素SiOとアルカリ酸化物MOとの混合比率(SiO
Oのモル比)は、支持体の陽極酸化皮膜が過度に溶解(エッチング)されることに起
因する放置汚れや、溶解アルミニウムと珪酸塩との錯体形成に起因する不溶性ガスの発生を抑制するといった観点から、好ましくは0.75〜4.0の範囲であり、より好ましくは0.75〜3.5の範囲で使用される。
【0303】
また、現像液中のアルカリ珪酸塩の濃度としては、支持体の陽極酸化皮膜の溶解(エッチング)抑制効果、現像性、沈殿や結晶生成の抑制効果、及び廃液時における中和の際のゲル化防止効果などの観点から、現像液の質量に対して、SiO量として、0.01
〜1mol/Lが好ましく、より好ましくは0.05〜0.8mol/Lの範囲で使用される。
【0304】
現像液には、上記の成分の他に、必要に応じて以下のような成分を併用することができる。例えば、安息香酸、フタル酸、p−エチル安息香酸、p−n−プロピル安息香酸、p−イソプロピル安息香酸、p−n−ブチル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、p−2−ヒドロキシエチル安息香酸、デカン酸、サリチル酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等の有機カルボン酸;プロピレングリコール等の有機溶剤;この他、還元剤、染料、顔料、硬水軟化剤、防腐剤等が挙げられる。
【0305】
現像液は、25℃におけるpHが10〜12.5の範囲であることが好ましく、pH11〜12.5の範囲であることがより好ましい。現像液は、前記界面活性剤を含むため、このような低pHの現像液を用いても、非画像部において優れた現像性を発現する。このように、現像液のpHを比較的低い値とすることにより、現像時における画像部へのダメージを軽減するとともに、現像液の取扱い性にも優れる。
【0306】
また、現像液の導電率xは、2<x<30mS/cmであることが好ましく、5〜25mS/cmであることがより好ましい。
ここで、導電率を調整するための導電率調整剤として、有機酸のアルカリ金属塩類、無機酸のアルカリ金属塩類等を添加することが好ましい。
【0307】
現像液は、露光された平版印刷版原版の現像液及び現像補充液として用いることができ、自動現像機に適用することが好ましい。自動現像機を用いて現像する場合、処理量に応じて現像液が疲労してくるので、補充液または新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。本発明の製版方法においてもこの補充方式が好ましく適用される。
【0308】
更に、自動現像機を用いて、現像液の処理能力を回復させるためには、米国特許第4,882,246号に記載されている方法で補充することが好ましい。また、特開昭50−26601号、同58−54341号、特公昭56−39464号、同56−42860号、同57−7427号の各公報に記載されている現像液も好ましい。
【0309】
より好ましい現像補充液は、アルミニウムイオンと水溶性キレート化合物形成能を有するオキシカルボン酸キレート剤と、アルカリ金属の水酸化物と、界面活性剤とを含有し、ケイ酸塩を含有せず、pH11〜13.5の水溶液であることを特徴とする現像補充液である。このような現像補充液を使用することにより、優れた現像性と版材の画像部の強度を損なうことの無い特性を有し、現像液のアルカリによりアルミニウム支持体が溶出されて形成する水酸化アルミニウムの析出が効果的に抑制され、自動現像機の現像浴ローラー表面への水酸化アルミニウムを主成分とする汚れの付着や、引き続く水洗浴内への水酸化アルミニウム析出物の蓄積が低減され、長期間安定に処理することができる。
【0310】
このようにして現像処理された平版印刷版原版は、特開昭54−8002号、同55−115045号、同59−58431号等の各公報に記載されているように、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体等を含む不感脂化液で後処理される。本発明に係る平版印刷版原版の後処理にはこれらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0311】
本発明の平版印刷版原版の製版においては、画像強度・耐刷性の向上を目的として、現像後の画像に対し、全面後加熱若しくは、全面露光を行うこともできる。
現像後の加熱には非常に強い条件を利用することができる。通常は加熱温度が200〜500℃の範囲で実施される。現像後の加熱温度が低いと充分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じるおそれがある。
【0312】
以上の処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0313】
また、印刷時、版上の汚れ除去のため使用しうるプレートクリーナーとしては、従来より知られているPS版用プレートクリーナーが使用され、例えば、マルチクリーナー、CL−1、CL−2、CP、CN−4、CN、CG−1、PC−1、SR、IC(富士写真フイルム株式会社製)等が挙げられる。
【実施例】
【0314】
以下に本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、勿論本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、本願実施例においては、本発明の重合性組成物を平版印刷版原版の記録層に適用し、その平版印刷版原版について評価を行い、その評価結果を本発明の重合性組成物の評価結果とする。
【0315】
〔実施例1〜4、比較例1〜6〕
(支持体の作製)
厚さ0.30mm、幅1030mmのJIS A 1050アルミニウム板を用いて、以下に示す表面処理を行った。
【0316】
<表面処理>
表面処理は、以下の(a)〜(f)の各種処理を連続的に行った。なお、各処理及び水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
【0317】
(a)アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃の水溶液でエッチング処理を行い、アルミニウム板を5g/m溶解した
。その後水洗を行った。
【0318】
(b)温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオン0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後水洗した。
【0319】
(c)60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。この時の電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオン0.5質量%、アンモニウムイオン0.007質量%含む)、温度30℃であった。交流電源は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが2msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で25A/dm、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で250C/cmであった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後水洗を行った。
【0320】
(d)アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液でスプレーによるエッチング処理を35℃で行い、アルミニウム板を0.2g/m溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分の除去と、生成したピットのエッジ部分を溶解し、エッジ部分を滑らかにした。その後水洗した。
【0321】
(e)温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後スプレーによる水洗を行った。
【0322】
(f)硫酸濃度170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)の水溶液中、温度33℃、電流密度が5(A/dm)で、50秒間陽極酸化処理を行った。その後水洗を行った。この時の陽極酸化皮膜重量が2.7g/mであった。
このようにして得られたアルミニウム支持体の表面粗さRaは0.27(測定機器;東京精密(株)製サーフコム、蝕針先端径2ミクロンメーター)であった。。
【0323】
<バックコート層>
次に、このアルミニウム支持体裏面に下記下塗り層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、100℃10秒間乾燥した。塗布量は0.5g/mであった。
【0324】
−バックコート層用塗布液−
・PR55422 (住友ベークライト(株) 0.44g
(フェノール/m−クレゾール/p−クレゾール=5/3/2 平均分子量 5300)・フッ素系界面活性剤 0.002g
(メガファックF−780−F 大日本インキ化学工業(株)、
メチルイソブチルケトン(MIBK)30質量%溶液)
・メタノール 3.70g
・1−メトキシ−2−プロパノール 0.92g
【0325】
<下塗り層>
次に、このアルミニウム支持体表面に下記下塗り層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、100℃10秒間乾燥した。塗布量は10mg/mであった。
【0326】
−下塗り層用塗布液−
・下記構造の高分子化合物A(重量平均分子量:10,000) 0.05g
・メタノール 27g
・イオン交換水 3g
【0327】
【化55】

【0328】
(感光層の形成)
この上に、下記組成の高感度光重合性組成物を乾燥塗布質量が1.4g/mとなるように塗布し、125℃で34秒乾燥させ、感光層(記録層)を形成した。
【0329】
−光重合性組成物−
・赤外線吸収剤(IR−1) 0.038g
・重合開始剤A(S−1) 0.061g
・重合開始剤B(表1に記載の化合物) 0.094g
・メルカプト化合物(表1に記載の化合物) 0.015g
・重合性化合物(M−1)(新中村化学工業(株)製のA−BPE−4) 0.425g
・バインダーポリマーA(B−1) 0.311g
・バインダーポリマーB(B−2) 0.250g
・バインダーポリマーC(B−3) 0.062g
・添加剤(A−1) 0.079g
・重合禁止剤(Q−1) 0.0012g
・エチルバイオレット(EV−1) 0.021g
・フッ素系界面活性剤 0.0081g
(メガファックF−780−F 大日本インキ化学工業(株)、
メチルイソブチルケトン(MIBK)30質量%溶液)
・メチルエチルケトン 5.886g
・メタノール 2.733g
・1−メトキシ−2−プロパノール 5.886g
【0330】
実施例1〜4、比較例1〜6に用いられた、赤外線吸収剤、重合開始剤、特定メルカプト化合物、重合性化合物、バインダーポリマー、添加剤、エチルバイオレットの詳細は以下の通りである。
なお、重合開始剤(B)として用いた(I−1)は本発明に係る特定ヨードニウム塩である。また、メルカプト化合物として用いた(E−1)〜(E−5)は、本発明に係る特定メルカプト化合物である。
【0331】
【化56】

【0332】
【化57】

【0333】
【化58】

【0334】
【化59】

【0335】
<下部保護層>
記録層表面に、合成雲母(ソマシフMEB−3L、3.2%水分散液、コープケミカル(株)製)、ポリビニルアルコール(ゴーセランCKS−50:ケン化度99モル%、重合度300、スルホン酸変性ポリビニルアルコール日本合成化学工業株式会社製)界面活性剤A(日本エマルジョン社製、エマレックス710)及び界面活性剤B(アデカプルロニックP−84:旭電化工業株式会社製)の混合水溶液(保護層用塗布液)をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃で30秒間乾燥させた。
この混合水溶液(保護層用塗布液)中の合成雲母(固形分)/ポリビニルアルコール/界面活性剤A/界面活性剤Bの含有量割合は、7.5/89/2/1.5(質量%)であり、塗布量は(乾燥後の被覆量)は0.5g/mであった。
【0336】
<上部保護層>
下部保護層表面に、有機フィラー(アートパールJ−7P、根上工業(株)製)、合成雲母(ソマシフMEB−3L、3.2%水分散液、コープケミカル(株)製)、ポリビニルアルコール(L−3266:ケン化度87モル%、重合度300、スルホン酸変性ポリビニルアルコール日本合成化学工業株式会社製)、増粘剤(セロゲンFS−B、第一工業製薬(株)製)、高分子化合物A(前記構造)、及び界面活性剤(日本エマルジョン社製、エマレックス710)の混合水溶液(保護層用塗布液)をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃で30秒間乾燥させた。
この混合水溶液(保護層用塗布液)中の有機フィラー/合成雲母(固形分)/ポリビニルアルコール/増粘剤/高分子化合物A/界面活性剤の含有量割合は、4.7/2.8/67.4/18.6/2.3/4.2(質量%)であり、塗布量は(乾燥後の被覆量)は1.2g/mであった。
このようにして、保護層表面に下記表1に記載の如く保護層を形成して実施例1〜4、及び比較例1〜6の平版印刷版原版を得た。
【0337】
〔平版印刷版原版の評価〕
(1)感度の評価
得られた平版印刷版原版を、合紙を挟み込まない状態で積層し、NEC社製Amizsetterにセットし、1枚づつ自動搬送した後、解像度1200dpi、外面ドラム回転数160rpm、出力0〜19Wの範囲でlogEで0.15ずつ変化させて露光した。なお、露光は25℃50%RHの条件下で行った。露光後、加熱処理及びアルカリ現像前のプレ水洗処理は行わず、富士フイルム(株)社製自動現像機LP−1310Newsを用い搬送速度(ライン速度)2m/分、現像温度30℃で現像処理した。なお、現像液は富士フイルム(株)社製DH−Nの1:4水希釈液、現像補充液は富士フイルム(株)社製「FCT−421」の1:1.4水希釈液、フィニッシャーは富士フイルム(株)社製「GN−2K」の1:1水希釈液を用いた。
【0338】
現像して得られた平版印刷版の画像部濃度を、マクベス反射濃度計RD−918を使用し、濃度計に装備されている赤フィルターを用いてシアン濃度を測定した。測定した濃度が0.9を得るのに必要な露光量の逆数を感度の指標とした。実施例1で得られた平版印刷版の感度を100とし、他の平版印刷版の感度はその相対評価とした。値が大きいほど、感度が高いことになる。結果を表1に示す。
【0339】
(2)感度変動の評価
感度変動は、前記のようにして得られた各平版印刷版原版を、25℃65%RH環境下で梱包し、60℃、48時間保管後、感度の評価におけるのと同様にして露光、現像を行い、保管前の感度と保管後の感度との変動の差を表した。変動の差が小さいほど経時安定性に優れると評価し、変動が10%以内であれば実用上問題のない良好な安定性を示すものと評価する。結果を表1に示す。
【0340】
(3)残色の評価
(2)の感度変動の評価と同様に保管、経時した後、感度評価におけるのと同様の露光、現像を行い、非画像部をマクベス反射濃度計RD−918を使用し、濃度計に装備されている赤フィルターを用いてシアン濃度を測定し、経時させる前の版と経時後の版との変化を観察した。
経時前後における濃度変化無いものを○、濃度が濃くなるものを×と評価した。
【0341】
(4)強制経時後の開始剤残存率(%)
得られた平版印刷版原版25cmをメタノール20mlに浸漬し、得られた液を、Waters社製2690装置を用いて開始剤残存量をHPLCによって測定した。溶離液は酢酸0.1%、トリエチルアミン0.1%のメタノール、カラムは関東化学Mightysil RP−18,250*Φ4.6mm,5μmを使用した。経時させる前の開始剤量を100%として、(2)の感度変動の評価と同様に保管、経時した後の開始剤量の百分率を表1に示した。
【0342】
【表1】

【0343】
表1から明らかなように、本発明の重合性組成物を含有する記録層を有する実施例1〜4の平版印刷版原版は、高感度を維持しながら、保管による感度変動が抑制され、優れた保存安定性を示し、また、所望されない経時的な重合の進行に起因する非画像部における残色の発生が抑制されていることがわかる。
一方、公知のメルカプト化合物と特定ヨードニウム塩とを組み合わせて用いた比較例の平版印刷版原版、特定メルカプト化合物と本発明の範囲外の重合開始剤と組み合わせて用いた比較例の平版印刷版原版は、高感度で記録可能ではあるが経時安定性に劣る(比較例1、2、4、6)か、或いは、感度及び経時安定性の双方に劣っており(比較例3、5)、実用上問題のあるレベルの平版印刷版原版であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に電子供与性基を電子供与性基を少なくとも3つ有するジアリールヨードニウム塩と、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物と、下記一般式(I)で表されるメルカプト化合物と、を含有することを特徴とする重合性組成物。
【化1】

[一般式(I)中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、AはN=C−N部分と共に炭素原子を有する5員環又は6員環のヘテロ環を形成する原子団を表し、Aはさらに置換基を有していてもよい。]
【請求項2】
前記一般式(I)で表されるメルカプト化合物が、下記一般式(II)で表される化メルカプト化合物及び一般式(III)で表されるメルカプト化合物からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の重合性組成物。
【化2】

[一般式(II)又は一般式(III)中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、Xは、ハロゲン基、アルコキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。]
【請求項3】
更に、赤外線吸収剤、及び、バインダーポリマーを含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の重合性組成物。
【請求項4】
前記ジアリールヨードニウム塩が有する電子供与性基が、アルコキシ基であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【請求項5】
前記ジアリールヨードニウム塩が、下記一般式(IV)で表される部分構造を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【化3】

[一般式(IV)中、R、R及びRは、各々独立に、アルキル基又はアリール基を表す。]
【請求項6】
支持体上に、請求項1乃至請求5のいずれか1項に記載の重合性組成物を含有する記録層を有することを特徴とする平版印刷版原版。
【請求項7】
前記記録層上に、保護層をさらに有することを特徴とする請求項6に記載の平版印刷版原版。

【公開番号】特開2008−107758(P2008−107758A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342479(P2006−342479)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】