説明

金属膜パターン付き基体の製造方法、及びモールドの製造方法

【課題】パターン形状を良好に保ちつつ、モールドの表面に形成された凹凸パターンの凹部サイズよりもパターンサイズの小さい金属膜パターン付き基体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る金属膜パターン21の製造方法は、金属膜20、金属膜20上に光反応性接着層30、熱可塑性樹脂からなる疎水性高分子を主成分とするレジスト膜40がこの順に成膜され、モールド50の凹凸パターンをレジスト膜40に転写することによりレジスト膜パターン41を形成する。次いで、残渣処理後にレジスト膜パターン41を用いて、露出した金属膜20をウェットエッチングして金属膜パターンを形成する。そして、金属膜パターンのサイドエッチングを行うことによりモールド50の凹部のサイズよりも縮小されたパターンサイズの金属膜パターン21を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱ナノインプリントリソグラフィ法を利用した金属膜パターン付き基体の製造方法、及びモールドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高度情報化社会を支える半導体デバイスの発展は、微細加工技術、特にフォトリソグラフィ技術の進展によるところが大きい。今日のフォトリソグラフィ技術は、縮小投影露光装置に代表される露光装置技術や、ポリマーと感光剤からなるレジスト材料、プロセス開発の技術革新によって支えられてきた。しかしながら、パターンの微細化につれて露光装置やフォトマスクの価格が高価になるという問題が生じている。
【0003】
このような状況下、高価な光学材料を用いずにコスト性に優れ、微細加工も可能なナノインプリント技術が次世代のリソグラフィ技術として脚光を浴びている。ナノインプリント技術は、熱可塑性樹脂を被加工層として用いる熱ナノインプリントリソグラフィ法(非特許文献1、特許文献1)と、光硬化性樹脂を被加工層として用いる光ナノインプリントリソグラフィ法(非特許文献2)に大別できる。
【0004】
熱ナノインプリントリソグラフィ法を用いたパターンは、例えば、以下のような工程を経て形成される。まず、基体上に被加工層として熱可塑性樹脂膜を成膜し、次いで加温によりこれを軟化させ、鋳型となるモールドを押し付ける。これにより、被加工層が変形する。その後、冷却して被加工層を硬化させることにより、被加工層にモールドの凹凸を転写する。続いて、モールドを離型させ、リアクティブイオンエッチング処理、又はUV−O処理により被加工層の凹部に残る残膜を除去する。その後、被加工層をマスクとして乾式、若しくは湿式のエッチング工程で、基体にパターンを転写する。なお、エッチング工程に代えてめっき工程やスパッタリング等により、凹部に金属等を堆積させて微細パターンを形成してもよい。
【0005】
熱ナノインプリントリソグラフィ法に好適な材料として、先般、本発明者の中川の研究グループは、金属膜と熱可塑性樹脂の界面で、化学結合を介して強固に接着させることが可能な光反応性化合物を提案した(特許文献2)。また、導電性に優れ、金属配線パターンを形成可能な透明導電基板(特許文献3)や、ウェットエッチング工程におけるパターン不良を防止可能なウェットエッチング用基板を提案した(特許文献4)。また、熱ナノインプリント成形物の残膜測定や欠陥検査に適した熱ナノインプリント用蛍光レジスト組成物について提案した(特許文献5)。
【0006】
光ナノインプリントリソグラフィ法は、被加工層として光硬化性樹脂を用い、光により樹脂を硬化させるプロセスを有する点において熱ナノインプリントリソグラフィ法と相違するが、基本的なプロセスは、上述した熱ナノインプリントリソグラフィ法と同様である。
【0007】
ところで、ナノインプリント技術においては、前述したように鋳型のモールドが必要となる。モールドの製造は、通常、フォトリソグラフィ法、電子線描画法、レーザ描画法によりレジスト膜パターンの形成を行い、次いでRIEやめっき等により基体加工が行われる。特許文献6には、モールドとなる基体上にポジ型レジストを塗布し、電子線描画を行ってレジスト膜パターンを形成し、これをマスクとしてエッチングすることによりモールドを製造する方法が提案されている。特許文献7には、パターン領域にポジ型レジスト膜パターンを形成し、非パターン領域にはネガ型レジスト層を形成して電子線描画によりモールドを製造する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5772905号明細書
【特許文献2】特開2009−73809号公報
【特許文献3】特開2011−54345号公報
【特許文献4】特開2011−111636号公報
【特許文献5】特開2011−51153号公報
【特許文献6】特開2004−288845号公報
【特許文献7】特開2011−165980号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】S. Y. Chou, et al., Applied Physics Letters, (1995), 67, 3114-3116.
【非特許文献2】J. Haisma, et al., J. Vac. Sci. Technol. B, B14, 4124-4128 (1996).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
モールドの製造方法としてフォトリソグラフィ法を採用する場合、大型のモールドを作製することが容易ではないという問題があった。また、パターンサイズがマイクロメートル未満のモールドの製造は、縮小投影露光装置を使用してフォトマスクを製造する必要があり、モールドを大量生産する場合を除くと、モールドが高価になってしまうという問題もあった。
【0011】
電子線描画法によるモールド製造は、例えば、基体上にレジストを塗布し,そのレジストを電子ビームにより直接描画してパターニングし、ドライエッチング加工により行われる。電子線描画による方法は、4nmレベルの超微細構造の形成が可能であるものの、生産性が悪いという欠点がある。装置やパターン形状により異なるが、例えば、2インチサイズの円形モールドを作製するには約1週間の時間を要する。このため、特に、大型のモールドを製造するには不向きであった。
【0012】
一方、レーザ描画法によるモールド製造は、電子線描画に比して高速にパターン形成が可能である。このため、生産性において優れた方法といえる。しかしながら、数μm程度のパターンを得るのが限界であり、マイクロメートルサイズ未満の微細加工に不向きであるという問題があった。
【0013】
上記事情から、ナノインプリント技術は、パターンの微細化と生産性の両者において満足できるものではなく、実用化に向けて課題が残っていた。とりわけ、大型の基体に微細パターンを形成したい場合に、生産性の悪さが深刻な課題となっていた。
【0014】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、熱ナノインプリントリソグラフィ法を用いて、パターン形状を良好に保ちつつ、モールド表面にある凹凸パターンの凹部サイズよりも小さなパターンサイズの金属膜パターン付き基体の製造方法を提供することにある。また、第2の目的は、熱ナノインプリントリソグラフィ法を用いて、鋳型となるモールド表面にある凹凸パターンの凹部サイズよりも小さなパターンサイズの凹部、又は凸部のモールドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ね、以下の製造方法により本発明の目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明に係る金属膜パターン付き基体の製造方法は、金属膜を基体上に形成する工程と、前記金属膜上に光反応性接着層、熱可塑性樹脂からなる疎水性高分子を主成分とするレジスト膜をこの順に成膜し、かつ前記光反応性接着層の活性光線照射により、当該光反応性接着層と前記レジスト膜とを接着させる工程と、前記レジスト膜に対してモールドの表面に形成された凹凸パターンを転写することによりレジスト膜パターンを形成する工程と、前記レジスト膜パターンに形成された凹凸パターンの凹部において、前記レジスト膜が除去されるように残渣処理を行う工程と、前記レジスト膜パターンを用いて、露出した前記金属膜をウェットエッチングして金属膜パターンを形成する工程とを備える。前記金属膜パターンを形成する工程は、前記モールドの表面に形成された凹凸パターンの凹部サイズよりも平面視上、前記金属膜パターンが縮小サイズとなるように、前記モールドの凹凸パターンの凹部サイズと実質的に等倍の金属膜パターンを得るよりもウェットエッチング処理時間を長くし、当該金属膜パターンのサイドエッチングを行う工程が含まれている熱ナノインプリントリソグラフィー法によるものである。
【0016】
本発明に係る金属膜パターン付き基体の製造方法によれば、モールドの凹凸パターンの凹部サイズよりも、平面視上のサイズをダウンサイジングした金属膜パターンを高品質に得ることができる。従来、金属膜パターンを得る場合、モールドの凹凸パターンに対して実質的に1:1のパターンを転写していた。その主たる理由は、ウェットエッチングのプロセスにおいて、サイドエッチングを行うとレジスト膜が膨潤して金属膜のパターン形状不良が生じたり、金属膜パターンとレジスト膜の界面にウェットエッチングの薬液が侵入してレジスト膜が剥離して、金属膜の断線が生じたりするためである。本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、光反応性接着層を金属膜とレジスト膜の間に介在させ、かつ、レジスト膜として疎水性高分子を主成分に用いることによって、驚くべきことに、金属膜パターンのサイドエッチングを行っても、高品質なパターンが得られることがわかった。
【0017】
本発明に係るモールドの製造方法は、上記態様の金属膜パターン付き基体の製造方法によって金属膜パターン付き基体を得る工程と、前記金属膜パターン付き基体に形成された金属膜パターンをマスクにして、前記金属膜パターン付き基体を構成する基体に凹部、若しくは貫通穴を形成するように掘削処理する工程とを備えるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、熱ナノインプリントリソグラフィ法を用いて、パターン形状を良好に保ちつつ、モールド表面にある凹凸パターンの凹部サイズよりも小さなパターンサイズの金属膜パターンを有する金属膜パターン付き基体の製造方法を提供するこができるという優れた効果がある。また、熱ナノインプリントリソグラフィ法を用いて、鋳型となるモールド表面にある凹凸パターンの凹部サイズよりも小さなパターンサイズの凹部、又は凸部を有するモールドの製造方法を提供することができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係る金属膜パターン付き基体の模式的断面図。
【図2】第1実施形態に係る金属膜パターン付き基体の製造方法のフローチャート図。
【図3A】第1実施形態に係る金属膜パターン付き基体の製造工程断面図。
【図3B】第1実施形態に係る金属膜パターン付き基体の製造工程断面図。
【図3C】第1実施形態に係る金属膜パターン付き基体の製造工程断面図。
【図3D】第1実施形態に係る金属膜パターン付き基体の製造工程断面図。
【図3E】第1実施形態に係る金属膜パターン付き基体の製造工程断面図。
【図3F】第1実施形態に係る金属膜パターン付き基体の製造工程断面図。
【図3G】第1実施形態に係る金属膜パターン付き基体の製造工程断面図。
【図4】第2実施形態に係るモールドの模式的断面図。
【図5】第2実施形態に係るモールドの製造方法のフローチャート図。
【図6A】第2実施形態に係るモールドの製造工程断面図。
【図6B】第2実施形態に係るモールドの製造工程断面図。
【図7】第3実施形態に係るモールドの模式的断面図。
【図8A】実施例1に係るレジスト膜パターン付き基体のSEM像。
【図8B】実施例1に係る等倍−金属膜パターン付き基体のSEM像。
【図8C】実施例1に係る金属膜パターン付き基体のSEM像。
【図8D】実施例2に係る金属膜パターン付き基体のSEM像。
【図8E】実施例3に係る金属膜パターン付き基体のSEM像。
【図9A】実施例4に係るレジスト膜パターン付き基体のSEM像。
【図9B】実施例4に係る等倍−金属膜パターン付き基体のSEM像。
【図9C】実施例4に係る金属膜パターン付き基体のSEM像。
【図9D】実施例5に係る金属膜パターン付き基体のSEM像。
【図9E】実施例6に係る金属膜パターン付き基体のSEM像。
【図10A】実施例7に係るレジスト膜パターン付き基体のSEM像。
【図10B】実施例7に係る等倍−金属膜パターン付き基体のSEM像。
【図10C】実施例7に係る金属膜パターン付き基体のSEM像。
【図10D】実施例8に係る金属膜パターン付き基体のSEM像。
【図11A】実施例9に係るレジスト膜パターン付き基体のSEM像。
【図11B】実施例9に係る等倍−金属膜パターン付き基体のSEM像。
【図11C】実施例9に係る金属膜パターン付き基体のSEM像。
【図11D】実施例10に係る金属膜パターン付き基体のSEM像。
【図12A】実施例11に係る等倍−金属膜パターン付き基体の光学顕微鏡像。
【図12B】実施例11に係る金属膜パターン付き基体の光学顕微鏡像。
【図12C】実施例12に係る金属膜パターン付き基体の光学顕微鏡像。
【図13A】実施例13に係る等倍−金属膜パターン付き基体の光学顕微鏡像。
【図13B】実施例13に係る金属膜パターン付き基体の光学顕微鏡像。
【図14A】実施例13に係る金属膜パターン付き基体の光透過スペクトル。
【図14B】実施例11及び実施例12に係る金属膜パターン付き基体の光透過スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。また、以降の図における各部材のサイズや比率は、説明の便宜上のものであり、実際のものとは異なる。また、同一の要素には、同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0021】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る金属膜パターン付き基体の製造方法は、界面化学結合型の熱ナノインプリントリソグラフィ法により製造するものである。図1に、第1実施形態に係る金属膜パターン付き基体の製造方法により製造した金属膜パターン付き基体の模式的断面図を示す。金属膜パターン付き基体1は、基体10、金属膜パターン21を有する。
【0022】
金属膜パターン付き基体1の用途は、特に限定されず、種々の用途に制限なく利用することができる。例えば、ナノインプリント技術用等のモールドの製造に用いることができる。具体的には、金属膜パターン付き基体1の金属膜パターン21でマスクされていない場所をエッチング等により所定の凹凸構造を掘削し、金属膜パターンをウェットエッチングにより溶解除去して基体1の表面に凹凸構造を形成することによりモールドを製造する。詳細な例は、第2実施形態、第3実施形態において説明する。
【0023】
また、金属膜パターン付き基体1の他の用途として、エレクトロニクス用の配線基板、電磁波制御フィルター、フォトマスク、遮光層付き基板、帯電防止膜、ワイヤーグリッド、各種アンテナ等も挙げられる。より具体的には、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイに用いられる基板の共通電極や導電性遮光膜などに適用したり、太陽電池やタッチパネルの電極として利用したりできる。また、フラットパネルディスプレイ、太陽電池、各種タッチパネル等の電磁波制御フィルターなどに適用したり、フォトリソグラフィ等のフォトマスクとして利用できる。また、微細化された金属膜パターンを透明導電基板として利用してもよい。
【0024】
基体10の材料は、後述する加熱成型する熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有するものであれば、特に限定されない。一例として、シリコン、ガラス、石英、アルミナ、チタン酸バリウム等の無機物や無機酸化物、あるいはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂等の樹脂が挙げられる。基体10は、単層の他、同種、若しくは異種材料の積層体でもよく、また、2種以上の複合材からなる群より選択される材料でもよい。複合材としては、公知のものを制限なく利用できる。例えば、ガラス繊維をエポキシ樹脂で固めた複合材や、フェノールとホルムアルデヒドを原料としたフェノール樹脂(例えば、ベークライト(登録商標))を積層した複合材が挙げられる。
【0025】
金属膜パターン付き基体1がエレクトロニクス用の配線基板用途の場合、基体10は、平滑性、低膨張係数、絶縁性の点から、シリコン、ガラス、石英等の無機材や、ポリイミド等の耐熱性有機材料が一般的に用いられる。また、フレキシブル配線基板用途の場合、基体10は、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、あるいはガラス繊維とエポキシ樹脂の複合材等が一般的に用いられる。フォトマスクや光ナノインプリントモールド用途の場合、線膨張係数や紫外線透過率の点から、基体10として石英等が好適に用いられる。また、透明導電基板を得る場合には、可視光線の透過性の高いガラスやプラスチック、赤外線の透過性が高いシリコンウェハなどが好適に用いられる。透明導電基板に用いる場合の基体10は、可視光線領域の全光線透過率が50%以上のものが好ましい。
【0026】
基体10の形状は、板状の他、シート状、フィルム状であってもよく、また、平面状の他、曲面状でもよい。基体10の厚みは任意でよいが、各種の成膜やプロセスの熱履歴等によって基体の歪みが生じて、パターン転写の精度が低下することのないよう考慮する。
【0027】
金属膜パターン21の材料は、後述する光反応性接着層と接着可能な材料であれば特に限定されない。例えば、アルミニウム、銅、銀、金、白金、亜鉛、タンタル、チタン、モリブテン、クロム,ニッケル、パラジウム、ロジウム、鉄、スズ又はこれらの金属を主成分とする合金等が挙げられる。低抵抗用途には、金、銀、銅などが好ましい。金属膜パターン21の膜厚は、特に限定されず、用途に応じて、適宜選定可能である。例えば、10〜500nm程度である。金属膜パターン21は、単層でもよいし、同種あるいは異種材料の積層体でもよい。
【0028】
金属膜パターン21の形状や大きさは、限定されず、適宜設計可能である。金属膜パターン21間のピッチ幅も限定されない。例えば、金属膜パターンの線幅は、10nm〜2μmである。
【0029】
なお、金属膜パターン付き基体1は、基体10、金属膜パターン21以外の絶縁膜などの部材を任意に配設することができる。例えば、金属膜パターン21の上層に他の金属膜等の導電膜パターンや、半導体膜パターン、絶縁性保護膜等が形成されていてもよい。また、金属膜パターン21の下層に、基体10と金属膜パターン21間の相互拡散を防止するためのバリアメタル(例えば、TiN、WN、Ti、TaN、Taなど)を設けたり、密着性を確保するためにCr,Tiなどを設けたりしてもよい。基体10が半導体基板などの場合には、絶縁膜を設けることにより、金属膜パターン21と基体10の間に大きな寄生容量が生じるのを防止できる。絶縁膜としては、公知の材料を制限なく利用できるが、酸化シリコン、BPSG(Boron Phosphorus Silicon Glass)、誘電率の高いHigh−k材料、誘電率の低いLow−k材料などが挙げられる。絶縁膜は、単層であってもよいし、積層体であってもよい。
【0030】
次に、金属膜パターン付き基体の製造方法について説明する。図2に、第1実施形態に係る金属膜パターン付き基体の製造方法のフローチャート図を、図3A〜図3Gに、第1実施形態に係る金属膜パターン付き基体の製造工程断面図を示す。
【0031】
第1実施形態に係る金属膜パターン付き基体の製造方法は、図2に示すように、少なくとも以下のステップからなる。まず、基体10上に金属膜20を成膜する(ステップ1、図3A)。次いで、金属膜20の表面上に光反応性接着層30、疎水性のレジスト膜40をこの順に成膜し、かつ光反応性接着層30の活性光線照射によって光反応性接着層30の接着性を発現させる(ステップ2、図3B)。
【0032】
その後,凹凸パターンを有するモールド50を用いて加熱成型により、成膜したレジスト膜40に凹凸パターンを転写してレジスト膜パターン41を得る(ステップ3、図3C、図3D)。その後、レジスト膜40に形成された凹凸パターンの凹部において、金属膜表面を露出させるために、残渣除去(残膜除去)を行う(ステップ4、図3E)。次に、レジスト膜パターン41をマスクにしてウェットエッチング工程により金属膜のパターンを得る(ステップ5、図3G)。従来の方法によれば、レジスト膜40の凸部(若しくはモールド50の凹部)と実質的に同じパターンサイズの金属膜パターンを形成する。一方、本発明によれば、レジスト膜40と実質的に同じパターンサイズの金属膜パターンに対し、さらにウェットエッチング処理が続けられる。ここでは、説明の便宜上、モールド50の凹凸と実質的に同じサイズの金属膜のパターンを等倍−金属膜パターン22と称する(図3F参照)。
【0033】
等倍−金属膜パターン22に対して、本発明においては、さらにウェットエッチング工程を実施するので、等倍−金属膜パターン22がサイドエッチングされることになる。これにより、等倍−金属膜パターン22の側壁のダウンサイジングが生じる。換言すると、レジスト膜パターン41よりもその下層に配置される金属膜の平面視上のパターンサイズが小さくなり、微細化したパターンを得ることができる。これらの工程を経て、金属膜パターン21が得られる。
【0034】
なお、用途に応じて、レジスト膜パターン41と光反応性接着層31、又は/及びレジスト膜パターン41を残してもよいが、第1実施形態においては、その後、レジスト膜パターン41、光反応性接着層パターン31を除去することにより、図1に示す金属膜パターン付き基体1を得る。金属膜パターン21の表面に金属酸化物を有する場合、金属膜パターン21の低抵抗化を実現する等の目的により、光反応性接着層30と同時、若しくは順に金属酸化物を除去してもよい。以下、各ステップの詳細と、微細なパターン化が可能な理由について説明する。
【0035】
ステップ1において、基体10上に金属膜20を成膜する前に、通常、酸素反応性イオンエッチングや紫外線/オゾンなどの洗浄処理により基体10を洗浄して基体10の表面を清浄化する。金属膜20の成膜方法は特に限定されず、公知の方法を制限なく利用できる。例えば、スパッタリング法や真空蒸着法等の乾式めっき法、及び電解めっき法、スズやパラジウム等をめっき成長させる核として用い、めっきする金属を成長させる無電解めっき法等の湿式めっき法等が挙げられる。緻密な膜を形成し、高精度な微細パターンを得る観点からは、スパッタリング法や電子線蒸着法等が好ましい。
【0036】
金属膜20の材料は、前述したとおり、その表面に金属酸化物が形成されていてもよく、各種用途において好適に適用される金属を本発明においても好適に適用できる。ナノインプリント技術で用いるモールド用途に好適なクロムや金等を本発明に好適に適用できる。また、例えば、太陽電池やタッチパネル等の電極用途に好適に用いられる銀や、配線用途に好適に用いられる銅やアルミニウム、フォトマスクやフラットパネルディスプレイの遮光層に好適に用いられるクロム、電磁波制御フィルター用途に好適に適用できる銀、白金、金等を本発明においても好適に適用できる。
【0037】
金属膜20の膜厚は、用途に応じて適宜設計可能であり特に限定されない。膜厚の好適な範囲は、用いる材料や、パターンサイズにより変動し得るので一概には言えないが、エッチング時間を考慮すると1μm以下が好ましく、膜面の平滑性の観点からは5nm以上であることが好ましい。
【0038】
ステップ2において、光反応性接着層30は、金属膜20とレジスト膜40との間に配設され、これらと強固に接着する役割を担う。光反応性接着層30を形成する光反応性化合物は、以下の条件を満足するものであればよく、特に限定されない。すなわち、(1)金属膜20の金属表面または金属膜20の表面に形成された金属酸化物層に化学的に反応して良好な密着性を示し、(2)光反応性接着層30の活性光線を照射することによって、その上層のレジスト膜40と良好な密着性を有する化合物であれば制限なく用いることができる。光反応性接着層は、微細加工の点から分子サイズの薄膜であることが好ましく、吸着単分子膜であることが望ましい。光反応性化合物の活性光線の帯域は、特に限定されないが、光反応性接着層の密着効果の発現を短時間で行う点で、紫外光線帯域であることが好ましい。
【0039】
第1実施形態において、金属膜20上に光反応性接着層30を形成する方法は、液相法や気相法などの公知の方法を用いることができる。例えば、第1に金属膜20に対してUV/オゾン処理などを施し金属膜20の表面を洗浄する。次に、液相法では、光反応性化合物を溶媒に溶解させた溶液を、スピンコート法、浸漬法、スプレイコート法、フローコート法、ロールコート法、ダイコート法等により、金属膜上に成膜・反応後、更に送風下、加熱下、減圧下で溶剤である成分を蒸散させる方法が挙げられる。吸着単分子膜を形成させるには、前記反応後、清浄な溶剤で金属膜20の表面を洗浄後に溶剤を蒸散させることが望ましい。
【0040】
光反応性化合物含有溶液に用いる溶媒は、光反応性化合物を溶解させ、かつ光反応性化合物と反応しない溶媒であればよい。作業環境の点からエタノールやトルエンが好ましい。
光反応性化合物を溶媒に溶解させた溶液において、光反応性化合物の濃度は、通常0.0001〜0.1mol/dmの範囲である。濃度を0.001mol/dm以上とすることにより、光反応性化合物の層を均質に形成できる。また、濃度を0.1mol/dm以下とすることにより、十分な効果が得られ経済的である。
【0041】
気相法を用いる場合、例えば、金属膜20を有する基体10と光反応性化合物とを同一容器に入れ、窒素雰囲気下で密封し、加熱する方法が挙げられる。加熱温度は、光反応性化合物が揮発し、かつ分解しなければ問題なく、好ましくは140〜250℃である。加熱時間は、好ましくは5〜120分である。
【0042】
レジスト膜40は、金属膜パターン21を得るための被加工層でありマスクパターンとしての役割を担う。レジスト膜40は、光反応性接着層30の上層の少なくともパターン形成領域に塗膜することにより得られる。レジスト膜40は、微細パターンを可能にするために疎水性高分子であって、熱可塑性樹脂を主成分として用いる。
【0043】
好ましい光反応性接着層30に用いる光反応性化合物の一例として、下記化合物(1)のようなベンゾフェノン骨格を有するチオール化合物や下記化合物(2)のようなベンゾフェノン骨格を有するシラン化合物が挙げられる。
【化1】

式中のnは1〜20の整数を表す。
化合物(1)において、原料入手の容易さ、合成の容易さ、熱可塑性樹脂との光反応性及び金属膜への密着性の観点から、最も好ましいものは、n=10であり、具体的には、4−(10−メルカプトデシルオキシ)ベンゾフェノンを用いることが特に好ましい。
【0044】
【化2】

式中、R〜Rは、各々独立して、水素基、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、イソシアナト基又はクロロ基を示す。R〜Rのうち少なくとも一つは炭素数1〜3のアルコシキ基、イソシアナト基又はクロロ基である。nは1〜20の整数を表す。
上記式中の反応性シリル基(−SiR)は、トリメトキシシリル基、ジメトキシヒドロシリル基、ジメトキシメチルシリル基、トリクロロシリル基、ジクロロメチルシリル基、クロロジメチルシリル基、トリイソシアナト基であることが好ましく、トリメトキシシリル基であることが特に好ましい。
化合物(2)において、原料入手の容易さ、合成の容易さ、熱可塑性樹脂との光反応性及び金属膜への密着性の観点から、最も好ましいものは、n=3であり、R、R、Rがメトキシ基であり、具体的には、4−{[(3-トリメトキシシリル)プロピル]オキシ}ベンゾフェノンを用いることが特に好ましい。これらの光反応性化合物は特許文献2や特許文献4などに記載の公知の方法で製造できる。
【0045】
化合物(1)と(2)は、ベンゾフェノン骨格の2位の位置に置換基を有しない。そのため、ラジカルによる水素引き抜き反応を、分子内だけでなく分子間でも進行させることができる。より具体的には、紫外線照射によって、化合物(1)と(2)におけるベンゾフェノン骨格のカルボニル基が励起してビラジカルが発生する。ベンゾフェノン骨格の酸素原子上に発生するラジカルは、レジスト膜40を形成する疎水性高分子の炭化水素基から水素原子を速やかに引き抜いて、アルコールに変化する。一方、ベンゾフェノン骨格の炭素上に発生するラジカルは、レジスト膜を形成する樹脂の炭化水素上に生じたラジカルと再結合して共有結合を形成する。これにより、化合物(1)においては、チオール基が金属膜20に対して化学吸着するとともに、ベンゾフェノン基がレジスト膜40と界面で共有結合を形成できる。また、化合物(2)においては、反応性シリル基が水酸基で覆われた金属酸化膜を有する金属膜20に対して吸着して加水分解反応、後続の縮合反応を起こして化学吸着するとともに、ベンゾフェノン基がレジスト膜40と共有結合を形成できる。その結果、金属膜20とレジスト膜40が、光反応性接着層30を介して化学的に強固に接着する。
【0046】
金属膜20の表面には、成膜後に大気下で自然に形成される金属酸化物層が形成されていてもよい。金属膜20の表面に金属酸化物層がない場合(例えば、金)、特許文献2の特開2009−73809号公報と同様に、チオール基を含む光反応性化合物から光反応性接着層を形成させることが好ましい。金属膜20の表面に金属酸化物層がある場合(例えば、クロム、銅、銀)には、特許文献4の特開2011−111636号公報と同様に、トリメトキシシリル基等の反応性シリル基を含む光反応性化合物から光反応性密着層を形成させることが好ましい。なお、銀は、チオール基を含む光反応性化合物も好適に適用できる。前記チオール基を含む光反応性化合物から光反応性接着層を形成させる場合、気相法や液相法が好適であり、前記反応性シリル基であるメトキシ基などを用いる場合には、吸着単分子膜を形成しやすくなる観点から気相法の方が液相法より好適である。
なお、本発明の製造方法を経て得られる最終的な金属膜パターン21の表面は、金属酸化物の存在の有無を問わない。すなわち、最終的に得られる金属膜パターン21の表面には、金属酸化物が実質的に形成されていないものでもよい。
【0047】
疎水性高分子を形成する材料としては、(1)疎水性を有する常温固体のポリマーであり、(2)溶剤に可溶であり、(3)ウェットエッチングに用いる薬液に対して不溶なポリマーを用いる。一例として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリベンジルメタクリレート、ポリカーボネート、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、環状ポリオレフィン、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、AS(Acrylonitrile Styrene)樹脂などが挙げられる。これらは、単独で、若しくはブレンドして用いることができる。また、これらを主構造とする共重合体ポリマーも好適に用いることができる。
【0048】
安価で容易に入手できる観点からは、ポリスチレン系、ポリメチルメタクリレート系のポリマーが好ましい。前記「ポリスチレン系」とは、主構造にポリスチレン骨格を有するポリマー、主成分にポリスチレン骨格を有するポリマー、共重合体の主成分にポリスチレン骨格を有するポリマー、変性ポリスチレンを表す。また、ウェットエッチング時にレジスト膜パターンの耐薬液性が高い観点から、非極性ポリマーが好ましい。このようなポリマーとして、ポリスチレン系ポリマー、ポリビニルトルエン系、環状ポリオレフィン系のポリマーを挙げることができる。これら炭化水素基からなる熱可塑性樹脂を用いた場合、その吸水性の低さからウェットエッチング液がレジスト内へ浸入しにくくなるため、レジスト膜厚を薄くすることが可能であり、これにより熱ナノインプリント成型における成型時間を短縮すること、またウェットエッチング液の攪拌効率が向上し矩形性の良い金属膜パターンを作製することが可能となる。
【0049】
第1実施形態において、レジスト膜40の形成方法は、例えば、疎水性高分子を溶媒に溶解させた溶液を、スピンコート法、浸漬法、スプレイコート法、フローコート法、ロールコート法、ダイコート法等により成膜し、更に送風下、加熱下、減圧下で溶媒を蒸散させることによって行うことができる。
溶媒は、用いる疎水性高分子が溶解すれば良く、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノントルエン、キシレンなどが挙げられる。
また、レジスト膜40を形成するための組成物は、疎水性高分子、溶媒の他に、適宜、添加剤を加えてもよい。例えば、基体への塗布特性改善のために界面活性剤、レベリング剤等を添加することや、形状検査のための蛍光物質を添加してもよい。これらの界面活性剤、レべリング材の例としては、イオン系、またはノニオン系界面活性剤、あるいはシリコーン誘導体、フッ素誘導体が挙げられる。蛍光物質の例としては、アクリジン系蛍光物質、アントラセン系蛍光物質、ローダミン系蛍光物質、ピロメテン系蛍光物質、ペリレン系蛍光物質が挙げられる。
【0050】
疎水性高分子を溶媒に溶解させた溶液において、疎水性高分子の濃度は、通常0.1〜10質量%の範囲である。0.1質量%より低濃度の場合、疎水性高分子の膜厚が薄くなり過ぎ、レジストとしての機能を成さない可能性がある。10質量%より高濃度の場合、膜厚の均一性が保てなく恐れがある。
【0051】
レジスト膜40の主成分である疎水性高分子の重量平均分子量は、5,000〜1,000,000g/molであることが好ましく、20,000〜500,000g/molであることが特に好ましい。分子量が5,000g/mol未満であるとレジスト膜40が膜厚200nm程度である場合に、ウェットエッチングの薬液が浸透してマスクとしての機能が低下することがある。分子量が1,000,000g/mol以上であると、ガラス転移温度以上でも粘性が高く、加熱成型を高速に行うことが困難となる。
【0052】
レジスト膜の厚さは、後述するウェットエッチングに適用可能であればよく、その厚さは限定されないが、金属膜20の保護能力及び疎水性高分子を除去する際の除去容易さの観点から、0.05〜2μmが好ましく、0.1〜1.0μmがより好ましい。疎水性高分子は、2層以上であっても良く、例えば、後述するウェットエッチング用基体に紫外線を照射した後に、再度疎水性高分子層を形成してもよい。
【0053】
光反応性接着層30の接着性発現は、光反応性接着層の活性光線を照射することにより行われる。化合物(1)と(2)のようなベンゾフェノン系化合物の場合には、通常、波長200〜400nmの紫外線を照射することにより行うことが好ましい。この紫外線照射によって、金属膜20とレジスト膜40が光反応性接着層30を介して化学的に強固に接着される。
【0054】
紫外線照射の光源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、Hg−Xe灯、ハロゲンランプを用いることができ、疎水性高分子に用いる樹脂の吸収帯を考慮して、適宜、カットオフフィルター等を使用することができる。200nm以上の波長は、疎水性高分子に対する透過率が高く、使用する光源が安価であることから好ましい。400nm以下の波長とすることで、ベンゾフェノン構造由来の光誘起ラジカルを効率よく形成することができることから好ましい。比較的安価な光源である低圧水銀灯から放射される波長254nmの紫外線を照射することが特に好ましい。
【0055】
波長254nmの紫外線の露光量は、0.5〜5J/cmであることが好ましい。紫外線の照射エネルギーは、検出波長254nmにおいて通常0.1〜5J/cmである。0.1J/cm未満の紫外線の照射エネルギーでは、金属膜20とレジスト膜40が光反応性接着層30の化学的な接着が不十分になることがあり、熱ナノインプリントによるレジスト膜40の成型時に脱濡れによりレジスト膜のパターン欠陥が生じることがある。また、5J/cm以上の紫外線の照射エネルギーでは、レジスト膜を構成する疎水性高分子の解重合が起こり、分子量の低下に基づいてウェットエッチングに対するレジスト機能の低下を招いたり、疎水性高分子の架橋反応が起こり、分子量の増加に基づいて加熱成型が困難になったりすることがある。
【0056】
基体10の波長254nmに対する透過性が低い場合には、レジスト膜40を形成後、光反応性接着層30の活性光線をレジスト膜40側から光反応性接着層30に対して照射する。基体10の波長254nmに対する透過性が高い場合には、基体10側から光反応性接着層30に対して照射してもよい。また、レジスト膜40の活性光線の光透過性が良好でない場合には、活性光線の光透過が可能な膜厚のレジスト膜40を成膜した後に紫外線の照射を行い、再度疎水性高分子膜を成膜してレジスト機能を示すのに適した膜厚のレジスト膜40を成膜してもよい。
【0057】
ステップ3において、凹凸パターンを形成したモールド50を用いて加熱成型により、成膜したレジスト膜40に凹凸パターンを転写してレジスト膜パターン41を得る。加熱成型の方法としては公知の方法が利用可能であり、平行平板方式の1対1の転写、ロール・トゥー・ロール、シート・トゥー・シートなどの方法が挙げられる。図3Cに示すようなモールド50を用意する。次いでレジスト膜を構成する疎水性高分子のガラス転移温度以上での加温によりレジスト膜40を軟化させ、モールド50を押し付ける。これにより、被加工層であるレジスト膜40が変形する。その後、ガラス転移温度未満に冷却してレジスト膜40を固化させることにより、レジスト膜40にモールド50の凹凸を転写する。そして、モールド50を離型させる。これらの工程を経てレジスト膜パターン41を得る。
【0058】
モールド50は、表面に、酸化シリコン、合成シリカ、溶融シリカ、石英、ニッケル等の材料を有する平板の表面を、公知の半導体微細加工技術により加工することで、熱ナノインプリント用の凹凸パターンパターンを形成することで調製することができる。例えば、表面が平滑な酸化シリコン、合成シリカ、溶融シリカ、石英の場合は、ポジ型レジストを塗布し、レーザ描画装置によりレジストにレーザ描画する。その後、現像を行うと、レーザ照射部のレジストが除去され、平板上のレーザ未照射部のレジストが残存する。CHF/Oプラズマ等のドライエッチングにより、レジストのポジ像を、ドライエッチングのエッチングマスクに用いてSiOをエッチングする。その後、剥離液に浸漬してレジストのポジ像を除き、洗浄することにより、平板の表面に凹部を形成できる。レジストの離型性を促進する観点から、フルオロカーボン含有シランカップリング剤等の離型剤による処理を行ってもよい。
【0059】
レーザ描画法によれば、モールド作製時間を大幅に短縮させることができるので、モールドの大面積化用途に特に好適である。また、密着マスク方式のフォトリソグラフィ法なども好適に適用できる。また、電子線描画法を適用してもよい。いずれの方法においても、第1実施形態に係る製造方法を用いることにより、モールドの表面の凹凸パターンの凹部サイズよりも、微細なパターンサイズの金属膜パターンを得ることができる。これらのうちでも、マイクロメートルサイズの凹凸パターンを表面に有するモールド50をレーザ描画法により製造し、サブミクロンサイズの金属膜パターンを得る方法によれば、コスト性を含む生産性・微細加工性の観点において非常に優れている。
【0060】
このようにして製造されたモールド50は、そのままモールドとして用いることができるが、モールドの表面にニッケル等の金属膜を成膜した後、電鋳プロセス技術を用いてニッケル等の金属膜をさらに厚く被覆したモールドとすることもできる。また、上記平板の表面に、スパッタリング法によってニッケル等の金属膜を成膜した後、フォトレジストや電子線レジストを用いて画像形成を行ってもよい。そして、電鋳プロセス技術により金属膜をさらに厚くして、表面研磨及びレジスト除去を行うことにより、より安価なニッケル製のモールドを使用することもできる。
【0061】
熱ナノインプリント装置としては、公知の装置を用いることができる。例えば、加熱冷却部、加圧部、及び減圧部を備えるものを用いることができる。加熱冷却部は、ヒーターと水冷構造を内蔵するステージからなり、レジスト膜を有する基体をステージに設置し、加熱することにより、レジスト膜を軟化及び冷却させる。加圧部では、レジスト膜を有する基体に凹凸パターンのモールドを押し付ける。レジスト膜が軟化した基体に、モールドの微細な凹凸構造を加圧することにより、凹凸パターンを転写する。減圧部では、基体に対してモールドを押し付ける際に、減圧状態とする。これにより、モールドの凹凸パターンにレジスト膜を効率よく追従させることができる。
【0062】
次いで、紫外線を照射したレジスト膜付き基体(図3B)を、熱ナノインプリント装置の加熱冷却ステージに設置する。そして、レジスト膜を形成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも20〜100℃高い温度で加熱する(加熱工程)。熱可塑性樹脂のガラス転移温度から20℃以上高い温度で加熱することで、熱可塑性樹脂がゴム状態となり十分に軟化するため、転写されたパターンのエッジ部分が丸くなることを防止できる。次いで、熱可塑性樹脂のガラス転移温度より100℃以下の温度で加熱することで、レジスト膜パターン転写後の冷却時に樹脂が大幅に収縮することを防止できる。このため、形成されたレジスト膜パターンの線幅が痩せることを防止できる。
【0063】
次いで、凹凸パターンを有するモールド50をレジスト膜40に押し付け(加圧工程)、一定時間保持することで(保持工程)、モールド50の凹凸パターンをレジスト膜40に転写する。モールド50の押し付け圧力は特に限定されないが、一般に1〜100MPaであり、好ましくは5〜20MPaである。モールド50の押し付け時間は、一般に1秒〜10分間であり、好ましくは15〜120秒間である。押し付けの際にモールド50とサンプルの間を減圧状態に保つことが好ましい。これにより、モールド50の微細な凹凸パターンに、レジスト膜40を効率良く追従させることができ、より高精度のパターニングが可能となる。その後、レジスト膜40を形成する疎水性高分子である熱可塑性樹脂のガラス転移温度以下に温度を下げる(冷却工程)。次いで、モールド50をレジスト膜パターン41から離型する(離型工程)。これにより、モールド50の凹凸パターンが転写されたレジスト膜パターン41を得る。
【0064】
ステップ4において、レジスト膜パターン41の凹部に残存している残渣を除去する。除去する方法は特に限定されないが、酸素リアクティブイオンエッチング処理、又はUV−O処理等によるエッチングや容易に除去することができる。なお、この凹部のレジスト膜パターン41を除去する際に、同時に凹部の光反応性接着層30を除去してもよいし、光反応性接着層30が残存していてもよい。
【0065】
ステップ5において、レジスト膜パターン41をレジストマスクとしてウェットエッチング工程で金属膜20にパターンを形成する。露出した金属膜20の部分をウェットエッチングにより除去することで、金属膜パターン21が形成される。ウェットエッチング方法は特に限定されず、従来のサブトラクティブ法で使用されるウェットエッチング液を用いて行うことができる。ウェットエッチング液の種類は、金属の種類に応じて選択でき、例えば、金属が金や銀の場合、ヨウ素/ヨウ化カリウムを含む水溶液が好ましく用いられる。金属が銅の場合、塩化第二鉄(FeCl)、塩化第二銅(CuCl)、Cu(NHClを含む水溶液が好ましく用いられ、金属がクロムの場合は、硝酸を主に含むエッチング液が好ましく用いられる。
【0066】
ウェットエッチング方法は、例えば、室温〜50℃の温度下、レジスト膜パターン41でマスクされていない露出した金属膜20にウェットエッチング液をスプレー噴霧する、または基体ごとウェットエッチング液に浸漬して金属膜20をエッチングするにより行ってもよい。
【0067】
本発明においては、前述したとおり、レジスト膜パターン41の凸部のパターンよりもその下層に配設された金属膜20のパターンサイズが小さくなるように等倍−金属膜パターン21をサイドエッチングする。レジスト膜パターン41をライン&スペースが1μm(1:1)で作製した場合、例えば、縮小率80%以下に金属膜パターン形成するとは、線幅1μmのラインの場合、ラインが800nm以下のサイズに形成することをいう。また、面積1μmのサイズの場合、縮小率80%以下に金属膜パターン形成するとは、800nm以下のサイズに形成することをいう。
【0068】
金属膜パターン21のモールド50の凹部パターンの凹部サイズに対する縮小サイズは、微細加工する観点からは、縮小率90%以下に縮小することが好ましく、縮小率70%以下に縮小することが好ましく、縮小率55%以下に縮小することがより好ましい。縮小率の下限は、レジスト膜パターン41の倒れや、金属膜パターン21の形状不良が生じない範囲において特に限定されない。レジスト膜パターン41の倒れは、パターン形状によるところが大きいので一概には言えないが、縮小率は10%以上であることが好ましい。
【0069】
金属膜パターン21形成後、必要に応じて、光反応性化合物層30及びレジスト膜パターン41を剥離する工程を施す。溶媒洗浄に用いる溶媒は特に限定されず、光反応性化合物層及びレジスト膜パターン41を溶解させることが可能な溶媒であればよい。具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、が挙げられる。ドライエッチング処理の具体例としては、UV/オゾンや酸素リアクティブエッチングが挙げられる。溶媒洗浄後にドライエッチング処理を行うことで、レジスト膜パターン41と光反応性接着層30を短時間で除去でき、金属膜パターン21の導電膜を形成できる。
【0070】
第1実施形態によれば、等倍−金属膜パターン22の縮小率を高めるにつれて、得られる金属膜パターン21のアスペクト比(配線厚/配線幅)が高くなる。また、用いるモールドに対して微細度を高めることが可能となる。第1実施形態によれば、所望の金属膜パターンのサイズよりも大きいサイズのモールドを用意すればよいので、モールドの製造選択肢を増やすことができる。例えば、等倍の金属膜パターン形成時には適用できなかった数100nmオーダーのパターン形成においてレーザ描画法を適用することにより、高生産性と低コスト化を同時に実現できる。
【0071】
金属膜パターン21を形成するためのウェットエッチング処理の用いる薬液(エッチャント)は、公知の材料を制限なく利用できる。従来のサブトラクティブ法で使用されるウェットエッチング液を用いて行うことができる。ウェットエッチング液の種類は、金属の種類に応じて選択でき、例えば、金属が金や銀の場合、ヨウ素/ヨウ化カリウムを含む水溶液が好ましく用いられる。金属が銅の場合、塩化第二鉄(FeCl)、塩化第二銅(CuCl)、Cu(NHClを含む水溶液が好ましく用いられ、金属がクロムの場合は、硝酸を主に含むエッチング液が好ましく用いられる。
【0072】
なお、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記ステップ以外の他の工程が含まれていてもよい。例えば、上記ステップ5の後、必要に応じて金属膜パターン21の上層に保護膜、絶縁膜、層間絶縁膜、半導体層などを積層してもよい。保護膜は、SiNや、ポリイミド膜等の公知の材料を制限なく利用できる。また、第1実施形態に係る金属膜パターン付き基体1は、同種、若しくは異種の金属膜パターン付き基体1や光学フィルム等をラミネートなどにより積層してもよい。また、金属膜パターン21は、基体10の両面に形成してもよい。
【0073】
従来、金属膜パターンを製造する際、モールド50の凹凸パターンと実質的に同じサイズのパターンを転写していた。その主たる理由は、ウェットエッチングのプロセスにおいて、サイドエッチングを行うとレジスト膜が膨潤して良好なパターンが得られないためである。また、金属膜パターンとレジスト膜の界面にウェットエッチングの薬液が侵入して、レジスト膜の剥離が生じ、パターン形状不良や断線が生じるためである。
【0074】
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、光反応性接着層を金属膜とレジスト膜の間に介在させ、かつ、レジスト膜として疎水性高分子を用いることによって、驚くべきことに、レジスト膜のパターンサイズよりも縮小するようにサイドエッチングを行っても、高品質な金属膜パターンが得られることがわかった。これは、光反応性化合物層30が金属膜20とレジスト膜40とを強固に結合させ、断線やパターン不良が生じるのを防止することができるためである。また、レジスト膜40の主成分として疎水性高分子を用いることにより、レジスト膜に薬液が侵入するのを防止できるためである。これらの結果、ステップ5におけるサイドエッチング中にレジスト膜40が剥がれて断線が生じたり、パターン不良が生じたりするのを著しく改善することができる。すなわち、第1実施形態によれば、パターン形状を良好に保ちつつ、モールドの凹凸パターンよりも微細加工が可能な金属膜パターン付き基体の製造方法を提供することができる。しかも、ウェットエッチングプロセス(ウェットエッチング時間、薬液の種類、プロセス条件等)を制御するのみで、1つのモールドから、パターン幅、アスペクト比(配線厚/配線幅)を容易に調整して所望のパターンサイズの金属膜パターン付き基体が得られる。このため、生産性・コスト性においても優れている。また、1つのモールドにより、金属膜パターンの抵抗値を容易に調整することができる。さらに、基体として透明素材を用いる場合、金属膜パターンの幅を調整することにより、透過性を容易に調整することができる。
【0075】
電子線描画によるモールド製造においては、前述したように、例えば、2インチサイズの円形モールドを作製するには約1週間の時間を要するため、特に、大型のモールドを製造するには不向きであるという問題があった。一方、第1実施形態に係る方法によれば、100nmオーダーの微細な金属膜パターンを、生産性の高いレーザ描画法によって作製したモールドにより実現できるので、大面積でのモールド作製が容易になるという優れた効果がある。なお、レーザ描画法の優位点を説明したが、モールドの製造方法は、特に限定されるものではなく、電子線描画法などの他の方法によってモールドを作製したものに対しても本発明を好適に適用できる。また、第1実施形態は、モールドのマイクロメートルサイズの凹凸パターンの凹部サイズよりも微細なサブミクロンサイズまでの金属膜パターンを形成することができる点において優れているが、金属膜パターンのスケールは特に限定されるものではなく、幅広いサイズのものに対して適用できる。
【0076】
また、従来のスクリーン印刷やインクジェット印刷で金属ペーストを塗布し金属配線を作製する方法では、金属線幅の下限は10μm程度であるのに対し、第1実施形態に係る熱ナノインプリントリソグラフィ法によれば、レーザ描画法によっても数100nmオーダーの金属膜のパターンを得ることができるという優れた効果を有する。
【0077】
第1実施形態に係る製造方法によれば、高い精度で基体上に微細な金属配線を形成できるため、例えば、0.01μm〜10μmの線幅の微細な金属膜パターンを多数配列させることが可能である。これら金属膜パターンを有する基体は、デバイス等の回路構成等に用いることでデバイスのコンパクト化にも寄与できる。さらに、ライン&スペースの間隔や形状に応じて、配線、フォトマスク、および偏光板等の部品として応用できる。
【0078】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係るモールドの製造方法の一例について説明する。図4に、第2実施形態に係るモールドの製造方法により製造したモールドの模式的断面図を示す。モールド60は、第1実施形態に係る金属膜パターン付き基体1の金属膜パターン21をハードマスクとして基体10を掘削処理することにより得たものである。図5に、第2実施形態に係るモールドの製造方法のフローチャート図を、図6A,図6Bに、第2実施形態に係るモールドの製造工程断面図を示す。
【0079】
第2実施形態に係るモールドの製造方法は、図5に示すように、少なくともステップ1〜ステップ8を有する。このうちのステップ1〜ステップ5は、第1実施形態と共通のプロセスとなる。従って、以下、ステップ6〜ステップ8について詳細に説明する。
【0080】
ステップ6において、まず、レジスト膜パターン41を除去する(図6A)。除去する方法は、第1実施形態で説明した方法をはじめ、公知の方法を制限なく利用できる。次いで、ステップ7において、金属膜パターン21をハードマスクとして掘削処理を行う。掘削処理は、特に限定されないが、ドライエッチングが好ましく、中でも、反応性イオンエッチング (Reactive Ion Etching; RIE)や、イオンミリングなどが好ましい。
【0081】
基体10の凹部の深さは、掘削処理時間を制御することにより統制可能である。すなわち、金属膜パターン21の厚み程度としたり、金属膜パターン21厚みよりも深い、又は浅い凹部を形成することができる。また、基体10に貫通孔等の貫通パターンを形成してもよい。
【0082】
ステップ8において、金属膜パターン21を除去する。金属膜パターン21の除去は、基体10に耐性があり、金属膜パターン21を除去可能なものであれば特に限定されずに用いることができるが、ウェットエッチングにより金属を溶解して除去する方法が好ましい。ウェットエッチング液としては、例えば、硝酸を含む酸性水溶液等を用いることができる。これにより、基体10の表面に凹凸構造、あるいは基体10に貫通構造を形成する。得られるモールドをナノインプリント用のモールドとする場合、基体10の好ましい素材は、酸化シリコン、石英、ガラス、シリコン、炭化ケイ素、グラッシーカーボンなどが挙げられる。
【0083】
これらの工程を経て、図4に示すようなモールドを得ることができる。第2実施形態によれば、モールド50を用いて(図3C,図3D参照)、モールド50の表面の凹凸パターンの凹部サイズよりも小さい凸部パターンを有するモールド60を得ることができる。モールド60は、例えば、マイクロチャネルアレイやDNAチップ、MEMSなどの流路や凹部パターンを形成したい場合などの鋳型として好適に利用できる。また、ナノインプリント用のモールドとして好適に適用できる。
【0084】
第2実施形態に係るモールドの製造方法によれば、1つのモールドから、ステップ5におけるウェットエッチング処理条件(ウェットエッチング時間、薬液の種類、プロセス条件等)を制御することにより、複数のパターンサイズの異なるモールドを容易に作製することができる。また、第2実施形態に係るモールドの製造方法によれば、モールド50の凹部サイズよりも微細な凸パターンを有するモールドを容易に得ることができるという優れた効果がある。得られたモールドは、例えば、ナノインプリント技術のモールドとして好適に適用できる。また、微細化された凸パターンを容易に得ることができるので、マイクロチャネルアレイやDNAチップなどの流路や凹部パターンを形成したい用途のモールドなどに好適に適用できる。例えば、1つのモールドから流路幅の異なるマイクロチャネルアレイを複数作製することができる。
【0085】
また、第2実施形態の製造方法によれば、大面積のモールドの作製が困難であった電子線描画法に代えて、生産性が高く大面積化に有利なレーザ描画法により作製したモールドから、このモールドよりも微細サイズのモールドを容易に製造することができるという優れたメリットを有する。
【0086】
[第3実施形態]
次に、第2実施形態に係るモールドの製造方法とは異なるモールドの製造方法の一例について説明する。図8に、第3実施形態に係るモールドの製造方法により製造したモールドの模式的断面図を示す。モールド70は、第2実施形態に係るモールドの製造方法により得られたモールド60を鋳型として用いて作製したものである。すなわち、モールド70は、第2実施形態のステップ1〜ステップ8を経て製造されたモールド60を鋳型として作製したものである。モールド70は、例えば、PMMAやシクロオレフィンなどの樹脂材料により作製することができる。モールド70は、例えば、熱処理工程が不要、若しくは熱処理工程の低温化が可能な光ナノインプリントリソグラフィ法によるモールドとして好適に利用できる。
【0087】
モールド70は、例えば、基体上にPMMAなどの熱可塑性樹脂や、光硬化性樹脂などを塗膜し、これにモールド60の凹凸パターンを転写することにより得ることができる。また、第1実施形態のように、基体上に金属膜を形成し、その上に、第1実施形態に係るレジスト膜パターンをモールド60から形成して等倍−金属膜パターン付き基体を得、若しくは第1実施形態の縮小した金属膜パターン付き基体を得、これをモールド70としてもよい。さらに、これらの金属膜パターン付き基体から、第2実施形態のように掘削工程を経てモールド70としてもよい。
【0088】
第3実施形態に係るモールドの製造方法によれば、1つのモールドから、ステップ5におけるウェットエッチング処理条件(ウェットエッチング時間、薬液の種類、プロセス条件等)を制御することにより、複数のパターンサイズの異なるモールド70を作製することができる。また、第3実施形態に係るモールドの製造方法によれば、モールド50の表面に形成された凹凸パターンの凹部サイズよりも微細な凹部パターンを有するモールド70を容易に得ることができるという優れた効果がある。従って、例えば、大面積のモールドの作製に有利なレーザ描画法を用いて作製した大型のモールドを用いて、第2実施形態の製造方法により新たなモールドを製造することにより、従来、電子線描画法によらなければ作製ができなかった微細パターンのモールドを生産性高く、容易に製造することが可能となる。
【0089】
なお、第3実施形態においては、予め用意したモールドから、1つの中間モールドの製造工程を経て最終モールドを製造する方法について述べたが、中間モールドの個数は任意である。第1実施形態の金属膜パターン付き基板の製造方法、第2実施形態のモールドの製造方法を組み合わせることにより微細化したモールドを容易に製造することができる。
【0090】
[実施例] 以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0091】
モールドとして、以下の3つサンプルを作製した。具体的には、ポジ型電子線レジストZEP520A(日本ゼオン社製)を用いた電子線リソグラフィ法により、外形寸法20mm角のシリコンにおいて、ライン&スペースが1μm(1:1)、深さが250nmのモールドを作製した。得られたモールドは、オプツールDSX(ダイキン工業社製、HD−1101Z)に1分間浸漬し、窒素フローで乾燥して1日室温で放置し、さらにHD−ZV(ダイキン工業社製)でリンス洗浄した後に、窒素フローで乾燥することにより、表面に離型層を形成した。このモールドをモールドAと称する。
【0092】
モールドAに対し、ライン&スペースが0.5μm(1:1)である以外は同一の構造・方法によりモールドBを作製した。さらに、ポジ型フォトレジストOFPR 800 LD(東京応化工業社製)を用いてレーザ描画法と反応性ドライエッチング法により、外形寸法20mm角の石英板の中央部の面5mm角の領域に、線幅2μm/周期10μmの格子状のモールドを作製した。得られたモールドは、モールドAと同様にして離型層を形成した。このモールドをモールドCと称する。
【0093】
<実施例1>
厚さ0.5mmのシリコン基体上に、膜厚20nmのクロム、膜厚25nmの金をこの順でスパッタリング法により成膜した。そして、後述する光反応性接着層を形成する直前に、上述の基体に15分間UV/オゾン処理(セン特殊光源社製、PL16−116)を施した。これにより、金属膜の表面に付着した有機物が酸化的に分解された水の静的接触角5°未満の清浄な金表面を形成した。これを金属膜付き基体と称する。なお、実施例1においては、シリコンとクロムが基体として機能する。
【0094】
続いて、金属膜付き基体上に光反応性接着層を形成した。具体的には、10.0mgの4−(10−メルカプトデシルオキシ)ベンゾフェノンを100mLのトルエンに溶解させて接着層形成溶液を調製した。続いて、この接着層形成溶液に上述の金属膜付き基体を室温で1時間浸漬した。その後、金属膜付き基体を取り出し、清浄なトルエンで洗浄することにより、光反応性接着層付き基体を得た。光反応性接着層の形成は、水の静的接触角が82°であることにより確認した。
【0095】
続いて、5質量%のポリスチレン(Sigma−Aldrich製、重量平均分子量=35,000g/mol、ガラス転位温度=93℃)のトルエン溶液を作製し、基体上に3000回転で30秒間の条件でスピン塗布し、膜厚250nmの熱可塑性樹脂層であるレジスト膜を形成した。
【0096】
その後、レジスト膜側から紫外線照射を施した。紫外線照射にはSupercure 202S(三永電機製作所社製)を用い、検出波長254nmでの照射強度を13mW/cmの紫外線を150秒間照射し、照射エネルギー(露光量)を2J/cmとした。露光後、基体に対して180℃で1分間アニール処理を行った。以上の工程により、レジスト膜付き基体を得た。
【0097】
次いで、レジスト膜付き基体に対し、モールドAを用いて熱ナノインプリント成型を行い、レジスト膜に凹凸パターンを転写した。熱ナノインプリント装置には、NM−400(明昌機工社製)を使用した。モールドによる加熱工程(押付け力、モールドの温度、時間)は、表1に示す5段階の条件で行った。
【表1】

【0098】
その後、UV/オゾンクリーナー(セン特殊光源PL16−116)を用いて、UV/オゾン処理による残膜除去を60分間行うことにより、レジスト膜の凹部の下層にある金属膜が露出するようにした。得られた凹凸パターンを電子顕微鏡により観察し、ライン&スペースが1μm(1:1)のポリスチレンからなるレジスト膜に凹凸パターンが形成されていることを確認した。図8Aに、得られたレジスト膜パターンのSEM像を示す。
【0099】
次いで、金用ウェットエッチング薬液としてAURAM302(関東化学社製)を用いてウェットエッチング処理を行った。そして、凹凸パターンの幅である1μmと実質的に一致する金属膜パターンが、凡そウェットエッチング時間30sで得られることを確認した。このときのSEM像を図8Bに示す。次に、新たなサンプルを作製し、等倍−金属膜パターンが得られるウェットエッチング時間30sの2倍に相当する60sのウェットエッチング処理を行うことにより、実施例1に係る金属膜パターン付き基体を得た。このときのSEM像を図8Cに示す。
【0100】
<実施例2> ウェットエッチング時間を、等倍−金属膜パターンが得られるウェットエッチング時間の4倍の120sとした以外は、上記実施例1と同様の条件とし、実施例2に係る金属膜パターン付き基体を得た。このときのSEM像を図8Dに示す。
【0101】
<実施例3> ウェットエッチング時間を、等倍−金属膜パターンが得られるウェットエッチング時間の6倍の180sとした以外は、上記実施例1と同様の条件とし、実施例3に係る金属膜パターン付き基体を得た。このときのSEM像を図8Eに示す。
【0102】
<実施例4> モールドBを用いた以外は、実施例1と同様の方法により金属膜パターン付き基体を得た。図9Aに、ポリスチレンからなるレジスト膜のSEM像を示す。また、このレジスト膜を用いて形成した等倍−金属膜パターンのSEM像を図9Bに示す。そして、新たなサンプルにおいて、等倍−金属膜パターンが得られるウェットエッチング時間の2倍の60sでウェットエッチング処理を行うことにより実施例4に係る金属膜パターン付き基体を得た。このときのSEM像を図9Cに示す。
【0103】
<実施例5> ウェットエッチング時間を、等倍−金属膜パターンが得られるウェットエッチング時間の4倍の120sとした以外は、上記実施例4と同様の条件とし、実施例5に係る金属膜パターン付き基体を得た。このときのSEM像を図9Dに示す。
【0104】
<実施例6> ウェットエッチング時間を、等倍−金属膜パターンが得られるウェットエッチング時間の6倍の180sとした以外は、上記実施例4と同様の条件とし、実施例6に係る金属膜パターン付き基体を得た。このときのSEM像を図9Eに示す。
【0105】
実施例1〜6に係る各金属膜パターン付き基体、レジスト膜パターン、及び等倍−金属膜パターンについて、SEM像からライン幅を側長した値、この値から算出したライン幅粗さを表2に示す。なお、ライン幅は、0.4mm間隔で20箇所測定したときの平均値を示す。また、ライン幅粗さは、ライン幅の標準偏差である。
【表2】

【0106】
<実施例7> 疎水性高分子としてポリスチレンの代わりにポリメチルメタクリレート(PMMA)を用いた以外は、実施例1と同様にして金属膜パターン付き基体を得た。具体的には、5質量%のポリメチルメタクリレート(Sigma−Aldrich製、重量平均分子量=20,000、Tg=110℃)のトルエン溶液を用いて実施例1と同様の操作を行い、膜厚250nmのPMMA層を有するレジスト膜付き基体を得た。そして、実施例1と同様にして加熱成型によりレジスト膜パターンを形成し、残膜除去を行った。得られた凹凸パターンを電子顕微鏡により観察し、ライン&スペースが1μm(1:1)の凹凸パターンがレジスト膜に形成されていることを確認した。図10Aに、得られたレジスト膜パターンのSEM像を示す。
【0107】
次いで、実施例1と同様にして金薄膜のウェットエッチング処理を行った。そして、凹凸パターンの幅である1μmと実質的に一致する金属膜パターンが、凡そウェットエッチング時間30sで得られることを確認した。このときのSEM像を図10Bに示す。次に、新たなサンプルを作製し、等倍−金属膜パターンが得られるウェットエッチング時間の30sの2倍に相当する60sでウェットエッチング処理を行うことにより、実施例7に係る金属膜パターン付き基体を得た。このときのSEM像を図10Cに示す。
【0108】
<実施例8> ウェットエッチング時間を、等倍−金属膜パターンが得られるウェットエッチング時間の4倍の120sとした以外は、上記実施例7と同様の条件とし、実施例8に係る金属膜パターン付き基体を得た。このときのSEM像を図10Dに示す。
【0109】
<実施例9> モールドBを用いた以外は、実施例7と同様の方法により金属膜パターン付き基体を得た。図11Aに、ポリスチレンからなるレジスト膜のSEM像を示す。また、ウェットエッチング時間30sの等倍−金属膜パターンのSEM像を図11Bに示す。そして、さらに、新たなサンプルにおいて、等倍−金属膜パターンが得られるウェットエッチング時間の2倍の60sでウェットエッチング処理を行行い、実施例9に係る金属膜パターン付き基体を得た。このときのSEM像を図11Cに示す。
【0110】
<実施例10> ウェットエッチング時間を等倍−金属膜パターンが得られるウェットエッチング時間の4倍の120sとした以外は、上記実施例9と同様の条件とし、実施10例に係る金属膜パターン付き基体を得た。このときのSEM像を図11Dに示す。
【0111】
実施例7〜10に係る各金属膜パターン付き基体、レジスト膜パターン、及び等倍−金属膜パターンについて、SEM像からライン幅を側長した値、この値から算出したライン幅粗さを表2に示す。なお、ライン幅は、0.4mm間隔で20箇所測定したときの平均値を示す。また、ライン幅粗さは、ライン幅の標準偏差である。
【表3】

【0112】
<実施例11> 以下に記載する以外は、金属膜付き基体を作製した。基体として、厚さ1.0mmのガラスを用いた点、金属膜パターンとして、クロムと金の積層膜を用いた。光反応性接着層付き基体は、実施例1と同様の方法で作製した。光反応性接着層の形成は、水の静的接触角測定を行い、接触角が82°であることにより確認した。
【0113】
続いて、5質量%のポリスチレン(Polymer Source, Inc.社製、重量平均分子量=11,000g/mol、ガラス転位温度=93℃)のトルエン溶液を作製し、基体上に3000回転で30秒間の条件でスピンコートし、膜厚150nmのレジスト膜を形成した。
【0114】
その後、レジスト膜の上方から紫外線照射を実施例1と同様の条件で実施することにより、レジスト膜付き基体を得た。次いで、レジスト膜付き基体に対し、モールドCを用いて熱ナノインプリント成型を行い、レジスト膜に凹凸パターンを転写した。熱ナノインプリント装置には、NM−400(明昌機工社製)を使用した。モールドによる加熱工程(押付け力、モールドの温度、時間)は、表4に示す5段階の条件で行った。
【表4】

【0115】
その後、UV/オゾンクリーナー(セン特殊光源PL16−116)を用いて、UV/オゾン処理による残膜除去を60分間行うことにより、レジスト膜の凹部の下層にある金属膜が露出するようにした。得られた凹凸パターンを電子顕微鏡により観察し、150nmのポリスチレンからなるレジスト膜に凹凸パターンが形成されていることを確認した。
【0116】
次いで、実施例1と同様の方法で金に対するウェットエッチング処理を行った後に、クロム用エッチング薬液(硝酸タイプ)(林純薬工業社製)を用いてクロムに対するウェットエッチング処理を行った。そして、モールドCの凹部パターン幅である2μmと実質的に一致する金属膜パターンが凡そ金に対するウェットエッチング時間15sで得られることを確認した。このときの光学顕微鏡像を図12Aに示す。次に、新たなサンプルを作製し、金属膜パターンの凸部のパターン幅がモールドCの凹部パターン幅の1/2となる時間を求めた。その結果、凡そ等倍−金属膜パターンが得られるウェットエッチング時間15sの8倍に相当する120sのウェットエッチング処理が必要であることがわかった。上記工程を経て、金に対するウェットエッチング処理を120s、クロムに対するウェットエッチング処理を5s行ったものを実施例11に係る金属膜パターン付き基体とした。このときの反射型の光学顕微鏡像を図12Bに示す。
【0117】
<実施例12> 金に対するウェットエッチング時間を、等倍−金属膜パターンが得られるウェットエッチング時間の16倍の240sとした以外は、上記実施例11と同様の条件にして、実施例12に係る金属膜パターン付き基体を得た。このときの反射型の光学顕微鏡像を図12Cに示す。
【0118】
<実施例13> 金属膜として無電解めっきで成膜した銀を用いた以外は、実施例11と同様の方法によって、実施例13に係る金属膜パターン付き基体を得た。具体的には、厚さ1.0mmのガラスを用い、膜厚120nmの銀を無電解めっきにより成膜し、大気下に曝すことで金属酸化物表面を有する金属膜を得た。そして、モールドCの凹部パターン幅である2μmと実質的に一致する金属膜パターンが得られる現像時間を求めた。その結果、2秒でパターンが得られることを確認した。このときの反射型の光学顕微鏡像を図13Aに示す。次に、新たなサンプルを作製し、金属膜パターンの凸部のパターン幅がモールドCの凹部パターン幅の1/2となる時間を求めた。その結果、凡そ等倍−金属膜パターンが得られるウェットエッチング時間2sの2倍に相当する4sのウェットエッチング処理が必要であることがわかった。上記工程を経て、ウェットエッチング処理を4s行ったものを実施例13に係る金属膜パターン付き基体とした。このときの反射型の光学顕微鏡像を図13Bに示す。
【0119】
得られた試料の透過率と表面抵抗率を測定し、透明金属膜としての特性を評価した。表面抵抗率は三菱化学社製Loresta−EPとプローブPSPを用いて測定した。得られた結果を図13A,図13Bに示す。
【0120】
図14Aに、実施例13に係る金属膜パターン付き基体、及び実施例13で作製した等倍−金属膜パターンを有する基体の光透過スペクトルを示す。等倍−金属膜パターン付き基体(凸パターン幅2μm)の波長400〜800nmにおける平均透過率を求めたところ、42%となり、基体に対する平均透過率(基体の透過率を100%として規格化した場合における平均透過率(以下、同様である))は46%となった。また、実施例13に係る金属膜パターン付き基体(凸パターン幅1μm)の波長400〜800nmにおける平均透過率を求めたところ、59%となり、基体に対する平均透過率は64%となった。
【0121】
図14Bに、実施例11に係る金属膜パターン付き基体、実施例11で作製した等倍−金属膜パターンを有する基体、及び実施例12に係る金属膜パターン付き基体の光透過スペクトルを示す。等倍−金属膜パターン付き基体(凸パターン幅2μm)の波長400〜800nmにおける平均透過率は44%、基体に対する平均透過率は47%となった。また、実施例11に係る金属膜パターン付き基体(凸パターン幅1μm)の波長400〜800nmにおける平均透過率は61%、基体に対する平均透過率は65%となった。また、実施例12に係る金属膜パターン付き基体(凸パターン幅0.8μm)の波長400〜800nmにおける平均透過率は66%、基体に対する平均透過率は69%となった。
【0122】
一方、実施例11及び13で作製した等倍−金属膜パターンを有する基体に対し、格子パターンの開口率から算出される理論的な透過率を求めると、基体に対する平均透過率が64%となるのに対し、測定値がそれぞれ47%、46%となった。また、実施例11及び13に係る金属膜パターン付き基体に対し、格子パターンの開口率から算出される理論的な透過率を求めると、基体に対して81%となるのに対し、測定値がそれぞれ65%、64%となった。また、実施例12に係る金属膜パターン付き基体に対し、格子パターンの開口率から算出される理論的な透過率を求めると、85%となるのに対し、測定値が69%となった。金属膜パターンの開口率に対する透過率が理論値と一致しないことは、表面プラズモン共鳴などの影響によって計算値より小さくなることが報告されている。実施例11、12、及び13においても、理論値よりも測定値が低くなった理由は、金属構造体に由来する共鳴などの影響を受けているものと推測される。
【0123】
なお、実施例11において、ガラス上に金を成膜したパターン形成前の表面低効率は2Ω/□であった。一方、実施例11で作製した等倍−金属膜パターンを有する基体の表面抵抗率は13Ω/□、実施例11に係る金属膜パターン付き基体の表面低効率は22Ω/□、実施例12に係る金属膜パターン付き基体の表面低効率は45Ω/□であった。これより、パターン化しても高い導電性を維持していることがわかる。同様にして、実施例13において、ガラス上に銀膜を成膜した状態(パターン形成前)の表面低効率は0.5Ω/□であった。一方、実施例13に記載した等倍−金属膜パターン付き基体(線幅2μm)の表面低効率は4Ω/□であり、実施例13に係る金属膜パターン付き基体(線幅1μm)の表面低効率は23Ω/□であった。これより、パターン化しても高い導電性を維持していることがわかる。
【0124】
実施例13により、1つのモールドを用いてウェットエッチング処理時間を制御することにより、可視光透過性を制御できることがわかる。また、実施例11、実施例12、実施例13により、1つのモールドを用いてウェットエッチング処理時間を制御することにより、導電性を調整できることがわかる。構造の最適化による透過率の向上や導電性の調整によって、透明導電膜としての展開が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
第1実施形態に係る金属膜パターン付き基体の製造方法は、ナノメートルオーダーのパターンを大量複写することができるので,いわゆるリソグラフィに限定されず、MEMS,マイクロ光学素子およびパターン化磁気記憶素子等,様々な製造工程の応用に広がっていくことが期待できる。また、電磁波シールド性に優れ、高精度の金属配線が形成可能であり、かつ製造容易であるため、幅広い分野で用いることができる。例えば、LCD等のフラットパネルディスプレイ、太陽電池、各種タッチパネル等に用いうる電磁波シールド材、帯電防止膜、ワイヤーグリッド、各種アンテナ等に用いることができる。また、基体として透明素材を用いることにより、透明導電膜基体としての応用展開が期待できる。
【符号の説明】
【0126】
10 基体
20 金属膜
21 金属膜パターン
22 等倍−金属膜パターン
30 光反応性接着層
40 レジスト膜
41 レジスト膜パターン
50、60、70 モールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属膜を基体上に形成する工程と、
前記金属膜上に光反応性接着層、熱可塑性樹脂からなる疎水性高分子を主成分とするレジスト膜をこの順に成膜し、かつ前記光反応性接着層の活性光線照射により、当該光反応性接着層と前記レジスト膜とを接着させる工程と、
前記レジスト膜に対して、モールドの表面に形成された凹凸パターンを転写することによりレジスト膜パターンを形成する工程と、
前記レジスト膜パターンに形成された凹凸パターンの凹部において、前記レジスト膜が除去されるように残渣処理を行う工程と、
前記レジスト膜パターンを用いて、露出した前記金属膜をウェットエッチングして金属膜パターンを形成する工程と、を備え、
前記金属膜パターンを形成する工程は、前記モールドの表面に形成された凹凸パターンの凹部サイズよりも平面視上、前記金属膜パターンが縮小サイズとなるように、前記モールドの凹凸パターンの凹部サイズと実質的に等倍の金属膜パターンを得るよりもウェットエッチング処理時間を長くし、当該金属膜パターンのサイドエッチングを行う工程が含まれている熱ナノインプリントリソグラフィ法による金属膜パターン付き基体の製造方法。
【請求項2】
前記金属膜パターンの縮小率は、前記モールドの表面に形成された凹凸パターンの凹部サイズの90%以下であることを特徴とする請求項1に記載の金属膜パターン付き基体の製造方法。
【請求項3】
前記金属膜パターンの縮小率は、前記モールドの凹凸パターンの凹部サイズの70%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属膜パターン付き基体の製造方法。
【請求項4】
前記レジスト膜は、ポリスチレン系、ポリビニルトルエン系、環状ポリオレフィン系のポリマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属膜パターン付き基体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属膜パターン付き基体の製造方法によって金属膜パターン付き基体を得る工程と、
前記金属膜パターン付き基体に形成された金属膜パターンをマスクにして、前記金属膜パターン付き基体を構成する基体に凹部、若しくは貫通穴を形成するように掘削処理する工程とを備えるモールドの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のモールドの製造方法において、
さらに、前記掘削処理する工程により得られたモールドを鋳型として、凹凸パターンの逆のモールドを作製する工程を備えるモールドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図14A】
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【図14B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13A】
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【図13B】
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【公開番号】特開2013−67084(P2013−67084A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207444(P2011−207444)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】