説明

金属調光沢柄を含む加飾シートの製造方法、および成形同時加飾成形品の製造方法。

【課題】金属薄膜層をパターン形成する際の残留水分による金属薄膜層の腐食や錆の発生および廃液処理の問題も全く発生しない金属調光沢柄を含む加飾シートの製造方法、および成形同時加飾成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】第1基体シート20上に絵柄層24が形成された加飾シート40と、離型性を有する第2基体シート10上に金属薄膜層16が形成された金属薄膜形成シート6とを積層させ、該金属薄膜形成シート6から前記金属薄膜層16を前記第1基体シート10の絵柄層24が形成された面上に転写形成させた金属調光沢柄を含む加飾シートの製造方法であって、該金属薄膜層の転写形成をオンデマンドによるプリント方式。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車部品、電気製品、通信機器、音響機器の加飾部品などに使用する金属調光沢柄を含む加飾シートの製造方法、および成形同時加飾成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記用途の加飾シートは、通常の顔料インキ層によるカラー色だけでなく、金属薄膜層などによる金属調光沢の意匠もパターン形成として求められている。そして、このような加飾シートに金属薄膜層をパターン形成する方法としては、例えば下記の特許文献1のように、水溶性の樹脂層をパターン形成し、真空蒸着などの手段により金属薄膜層を全面に形成後、不要の金属薄膜層を水洗処理により除去してパターン形成する方法があった。
【0003】
【特許文献1】特開平8−337097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のような方法によって得られた加飾シートは、上記水洗処理での残留水分の悪影響により、金属薄膜層に腐食や錆が発生しやすくなる問題があった。また、水洗処理により除去すると、除去された廃液を処理しなければならない厄介な問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは以下の発明により上記問題点を解決した。すなわち、本発明は、第1基体シート上に絵柄層が形成された加飾シートと、離型性を有する第2基体シート上に金属薄膜層が形成された金属薄膜形成シートとを積層させ、該金属薄膜形成シートから前記金属薄膜層を前記第1基体シートの絵柄層が形成された面上に転写形成させた金属調光沢柄を含む加飾シートの製造方法であって、該金属薄膜層の転写形成をオンデマンドによるプリント方式でしたことを特徴とする。
【0006】
また、上記構成において、前記オンデマンドによるプリント方式が、前記金属薄膜形成シートの背面から熱を加える熱転写プリンタ方式であることを特徴とする。
【0007】
また、上記各構成において、前記金属薄膜形成シートから前記金属薄膜層を前記第1基体シートの絵柄層が形成された面上の所定の位置にパターン転写形成するための位置検知パターンが、当該転写形成前に前記第1基体シート上にあらかじめ形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、上記各構成において、前記金属薄膜層の転写形成の後、最上層として接着層を形成したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記のいずれかに記載の製造方法によって得られた金属調光沢柄を含む加飾シートを、A金型およびB金型からなる成形金型に挿入し、A金型表面と前記第1基体シートの絵柄層形成側とは反対側の表面とが接するよう固定し、B金型から成形樹脂を射出することにより成形と同時に表面に絵柄層、金属薄膜層が形成された成形同時加飾成形品を得、冷却後、該成形金型から加飾成形品を取り出すことを特徴とする成形同時加飾成形品の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明で得られる金属調光沢柄を含む加飾シートは、金属薄膜層をパターン形成する際に水洗処理が含まれていないため残留水分がなく、残留水分による金属薄膜層の腐食や錆の発生は全くない。そして、水洗処理が含まれていないため、廃液処理の問題も全く発生しないという効果がある。また、本発明で形成される金属薄膜層はオンデマンドでパターン形成されるから、版の作製も必要なく、効率的に形成できるという効果がある。
【0011】
さらに、本発明の成形同時加飾成形品の製造方法は、前記記載の金属調光沢柄を含む加飾シートを、A金型およびB金型からなる成形金型に挿入し、A金型表面と前記第1基体シートの絵柄層形成側とは反対側の表面とが接するよう固定し、B金型から成形樹脂を射出することにより成形と同時に表面に絵柄層、金属薄膜層が形成された成形同時加飾成形品を得、冷却後、該成形金型から加飾成形品を取り出すことを特徴とする。したがって、金属薄膜層がパターン形成された成形同時加飾成形品を容易に得ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明によれば、第1基体シート上に絵柄層が形成された加飾シートと、離型性を有する第2基体シート上に金属薄膜層が形成された金属薄膜形成シートとを積層させ、該金属薄膜形成シートから前記金属薄膜層を前記第1基体シートの絵柄層が形成された面上に転写形成させた金属調光沢柄を含む加飾シートの製造方法であって、該金属薄膜層の転写形成をオンデマンドによるプリント方式でした金属調光沢柄を含む加飾シートの製造方法を提供する。
【0013】
前記加飾シートの前記第1基体シートの材質としては、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニルなどの樹脂フィルムが主である。当該樹脂フィルムの厚みは4〜800μmの範囲で適宜設定可能である。4μm未満では、層としての強度が不足して剥離する際に破れたりするので取り扱いが困難となり、800μmを越える厚みでは、基体シート層に剛性がありすぎて加工が困難となる。なお、金属調光沢柄を含む加飾シートを転写シートとする場合には、上記樹脂フィルム上にシリコン、メラミン、アクリルなどの樹脂をグラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷などの印刷法やリバースコートなどのコート法で塗布して離型性のある基体シート層としておくのが好ましい。
【0014】
本発明でいう前記絵柄層とは、所望のカラー意匠パターンからなる具体的模様や木目や石目などの抽象的模様などのうち金属薄膜層を除いた層のことであり、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷等の汎用の各種印刷手法により設けることができる。絵柄層の材質は、例えば、アクリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルなどのバインダー樹脂と、各種顔料・染料・金属粉などの着色剤や添加剤等とからなる。
【0015】
絵柄層の厚みは0.1〜300μmの範囲で適宜設定可能である。0.1μm未満では層としての強度や色彩が不足等し、300μmを越える厚みでは層としての柔軟性がなくなり加工が困難となる。
【0016】
なお、絵柄層と第1基体シートとの間に、剥離層やアンカー層等を設けてもよいし、絵柄層上にアンカー層や接着層等を設けてもよい。剥離層としては、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ゴム系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂などのほか、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂などのコポリマーを用いるとよい。アンカー層としては、2液性硬化ウレタン樹脂、熱硬化ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、塩素含有ゴム系樹脂、塩素含有ビニル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系共重合体樹脂などを使用するとよい。接着層としては、ポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂などを使用するとよい。これらの層の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、リップコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0017】
前記金属薄膜形成シートの前記第2基体シートの材質としては、前記第1基体シートと同様に、アクリル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニルなどの樹脂フィルムを用いることができる。当該樹脂フィルム厚みは5〜800μmの範囲で適宜設定可能である。5μm未満では、基体シートとしての強度が不足して剥離する際に破れたりするので取り扱いが困難となり、800μmを越える厚みでは、剛性がありすぎて加工が困難となる。なお、前記樹脂フィルムに離型性を付与するためには、前記樹脂フィルム上にシリコン、メラミン、アクリルなどの樹脂を塗布しておく。
【0018】
前記金属薄膜形成シートの前記金属薄膜層とは、樹脂バインダーを含まない金属を主成分とする層のことであり、真空蒸着法やスパッタリング法のほか無電解メッキ法や電解メッキ法等により前記第2基体シートのほぼ全面に形成する。当該金属薄膜層の材質としては、アルミニウム、クロム、スズ、ニッケル、インジウム、珪素、銅、銀、金、チタン、ステンレス、真鍮、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ケイ素、硫化亜鉛等がある。前記金属薄膜層の厚みは50〜1200Åの範囲で適宜設定可能である。50Å未満では、金属光沢がほとんど発現せず、1200Åを越える厚みではクラックが発生しやすくなる。
【0019】
そして、前記金属薄膜層の転写形成をオンデマンドによるプリント方式でしたことを特徴とする。「オンデマンド」とは「要求にしたがって」という意味であり、オンデマンドによるプリント方式は、必要な時、必要な部数だけを印刷するシステムである。一般には、改訂の多い印刷物や一部分だけ変えたものを出力したい場合など、小部数のみの印刷時に便利であり、大量に印刷する必要の無いものなどを出力する時によく使われるが、本発明では、金属薄膜層を各種パターンに形成する方法として採用した。金属薄膜層をパターン形成する際に水洗処理が含まれていないため残留水分による金属薄膜層の腐食や錆、廃液処理の問題も全く発生しない。また、版の作製も必要なく、効率的に形成できる。
【0020】
なお、前記金属薄膜形成シートの前記第2基体シート層と前記金属薄膜層との間に、剥離層を設けてもよい。また、前記剥離層と前記金属薄膜層との間にアンカー層を設けてもよい。剥離層及びアンカー層の材質及び形成方法は、前出の第1基体シート上に形成したのと同様のものを用いることができる。
【0021】
上記オンデマンドによるプリント方式の具体例としては、金属薄膜形成シートの背面すなわち金属薄膜層形成面と反対の面から熱を加える熱転写プリンタ方式があげられる。
【0022】
図8は、一般的な熱転写プリンタの熱転写部の概略を示し、図中、91はサーマルヘッド、92はプラテンローラ、93はインクシート駆動ローラ、94はインクシート、95は記録紙で、周知のように、プラテンローラ92とサーマルヘッド91の発熱抵抗素子との間にインクシート94と記録紙5とが挟持され、プラテンローラ92が回転して、インクシート94と記録紙95とが搬送されるとともに、サーマルヘッド91の発熱抵抗素子が記録情報に応じて選択的に加熱され、インクシート94のインクが記録紙95に熱転写される。1ライン分の記録が終了する毎に、インクシート94はインクシート駆動ローラ93により記録紙95の進行方向と異なる方向に搬送され、記録紙95からはインクシート94が剥離されて順次記録を行うものである。本発明においては、インクシート94として前記金属薄膜形成シート、記録紙95として前記加飾シートを用いる
【0023】
前記サーマルヘッド91は、通常、基板面に厚膜の抵抗体(発熱体)をスクリーン印刷等の手法で形成し、そして当該抵抗体に接続している電極に、更に接続しているリード線を通じて通電することによりその抵抗体が発熱する構成となっているが、本発明に適するサーマルヘッド9の基板は、市販されている数10mmから200mm巾のものよりも巾の大きい200mmから1000mm巾のアルミナに代表されるセラミック製のものが好ましい。巾が大きい方が前述した用途として好ましいが1000mm巾以上になると抵抗体のドットの間隔が不均一になるなどの問題が発生するからである。解像度はインチ当たり300〜800dpi程度のものが好ましい。インチ当たり300dpi未満であると金属薄膜層の金属光沢が低下し、800dpi以上であると転写形成に時間がかかり、生産性が低下するからである。
【0024】
なお、前記第1基体シート上には、例えば3〜10mm角くらいのサイズの位置検知パターンを形成するのが好ましい。この位置検知パターンを光学的方法により読み取れば、前記第2基体シート上の金属薄膜層を当該第1基体シートの絵柄層上の所定の位置にパターン転写形成できるからである。
【0025】
また、本発明の金属調光沢柄を含む加飾シートの製造方法においては、前記絵柄層上に前記金属薄膜層を転写形成した後に、最上層として接着層を部分的または全面に塗布してもよい。当該接着層としては、被接着物の素材に適した感熱性および感圧性の樹脂を適宜使用する。たとえば、被接着物の材質がポリアクリル系樹脂の場合はポリアクリル系樹脂を用いるとよい。また、被接着物の材質がポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂、ポリスチレン系ブレンド樹脂の場合は、これらの樹脂と親和性のあるポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを使用すればよい。さらに、被接着物の材質がポリプロピレン樹脂の場合は、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂が使用可能である。接着層の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、リップコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0026】
以上の方法によって得られた金属調光沢柄を含む加飾シートをA金型およびB金型からなる成形金型に挿入し、A金型表面と前記第1基体シートの絵柄層形成側とは反対側の表面とが接するよう固定し、B金型から成形樹脂を射出し、冷却後、該成形金型から加飾成形品を取り出せば、成形と同時に表面に絵柄層、金属薄膜層が形成された成形同時加飾成形品を得ることができる。
【0027】
使用する成形樹脂としては アクリル、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアリレート、ポリスチレン、ポリエチレンなどがある。
【0028】
[実施例1] まず、下記の手順により金属薄膜形成シートを作製した。第2基体シート10として厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製 F−55.以下PETフィルムとする)の片面に、シリコン樹脂を塗布し熱硬化させて離型層11を形成し、その上にインクテック(株)製アクリル樹脂で剥離層13を形成した。
【0029】
次に、剥離層13上にサカタインクス(株)ラミオールマーク3をグラビア印刷で塗布し、熱風乾燥して厚さ2μmの樹脂層を形成後、指触乾燥の状態で170℃、20秒および200℃、20秒間の2種類の条件で焼き付けを行って前アンカー層15を形成した。次に、前アンカー層15の全面に、真空蒸着法により厚み800Åのアルミニウムによる金属薄膜層16を形成した。次に、大日精化工業(株)ラミックF−220を用いてグラビア印刷法により後アンカー層19を形成し、金属薄膜形成シート6を得た(図1参照)。
【0030】
次に、下記の手順により加飾シート40を作成した。第1基体シート20として厚さ50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製 F−55)を用い、その片面にシリコン樹脂を塗布し熱硬化させて離型層21を形成し、その上にインクテック(株)製アクリル樹脂で剥離層23を形成した。
【0031】
次に、東洋インキ(株)レアルカラーの各色および東洋インキ(株)ファインスターを用いて、多色グラビア印刷機により絵柄層24と5mm角の位置検知パターン25を形成した(図2参照)。
【0032】
その後、前記金属薄膜形成シート6を絵柄層24と後アンカー層19が接するよう積層し、金属薄膜形成シート6の背面から熱転写プリンタのサーマルヘッド91により熱を加えた(図3参照)。使用したサーマルヘッド91は、500mm巾のセラミック製で解像度はインチ当たり600dpiのものを使用した。位置検知パターン25を光学的方法により読み取って所望の位置にサーマルヘッド91を配置し、必要な部分のみ熱を加えて、金属薄膜形成シート6上の金属薄膜層16の一部を第1基体シート20の絵柄層24上の所定の位置にパターン転写した。
【0033】
次に、上記積層シートを紙管から巻き出ししながら金属薄膜形成シート6を剥離することにより、絵柄層24上に後アンカー層19、金属薄膜層16、前アンカー層15、剥離層13が形成された金属調光沢柄を含む加飾シート4を得た(図4参照)。さらに剥離層13および絵柄層24上に、大日本インキ化学(株)ユニビアAを用いて接着層29を形成し、金属調光沢柄を含む加飾シート5を得た(図5参照)。
【0034】
得られた金属調光沢柄を含む加飾シート5を、A金型31およびB金型32からなる成形金型に挿入し、A金型31表面と第1基体シート20の絵柄層24形成面と反対側の表面とが接するようクランプ34で固定した。成形金型を閉じた後、B金型32の射出口36から成形樹脂38を射出した(図6参照)。冷却後、成形金型を開き、成形同時加飾成形品1を取り出成形同時加飾成形品2を取り出し、第1基体シート20を離型層21とともに剥離除去することにより成形と同時に表面に絵柄層24および金属薄膜層16を含む加飾柄8が形成された成形同時加飾成形品1を得ることができた(図7参照)。
【0035】
[実施例2] 金属薄膜形成シートの作製において、厚み100Åの銅による金属薄膜層を無電解メッキ法により形成し、その他は実施例1と同様にして金属薄膜形成シートを得た。引き続き、実施例1と同様にして加飾シートを得た。そして、実施例1と同様にして金属調光沢柄を含む加飾シートを使用して成形同時加飾成形品を得ることができた。
【0036】
[実施例3] 金属薄膜形成シートの作製において、厚み300Åのスズによる金属薄膜層を真空蒸着法により形成した他は、実施例1と同様にして金属薄膜形成シートを得た。そして、実施例1と同様にして金属調光沢柄を含む加飾シートを使用して成形同時加飾成形品を得ることができた。
【0037】
上記の工程で得られた各成形同時加飾成形品をそれぞれ実施例1〜3とし、金属薄膜層を形成する際に従来の水洗工程を経た以外は実施例1〜3と同じ構成である金属調光沢柄を含む加飾シートによって得られた成形同時加飾成形品をそれぞれ比較例1〜3として、60℃95RH%の耐湿試験機の中に入れ、各一定期間放置後、下記の試験方法で評価した。
【0038】
目視による観察で金属薄膜層部分の腐食・錆の有無を○、△、×で評価した。○は腐食・錆全く無し、△は僅かに腐食・錆あり、×は腐食・錆が著しく目立つ、ものとした。また、金属薄膜層部分について、成形品樹脂にまで達するように、間隔1mmの切り込み線をカッターナイフで碁盤目状に縦、横各11本引き、その上からニチバンセロテープ(登録商標)の工業用を貼着し、直ちに剥離し、その碁盤目の剥離状態を○、△、×で評価した。○は剥離なし、△は剥離が碁盤目の50/100未満、×は剥離が碁盤目の50/100以上とした。
【0039】
試験結果は表1に示すとおりで、実施例1〜3で作製したいずれの成形同時加飾成形品についても、金属薄膜層を形成する際に従来の水洗工程を経た金属調光沢柄を含む加飾シートによって得られた各々の比較例1〜3の成形同時加飾成形品に比べて優れていることが分かった。
【0040】
【表1】

【0041】
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明の金属調光沢柄を含む加飾シートの製造に用いる金属薄膜形成シートの一実施例を示す断面図である。
【図2】この発明の金属調光沢柄を含む加飾シートの製造に用いる絵柄層と位置検知パターンを形成した段階の加飾シートの一実施例を示す断面図である。
【図3】この発明の金属調光沢柄を含む加飾シートの製造方法のうち、金属薄膜形成シートの背面から熱転写プリンタにより熱を加えた段階の一実施例を示す断面図である。
【図4】この発明の金属調光沢柄を含む加飾シートの絵柄層上に金属薄膜層等が形成された段階の加飾シートの一実施例を示す断面図である。
【図5】この発明の金属調光沢柄を含む加飾シートの金属薄膜層等に接着層が形成された段階の加飾シートの一実施例を示す断面図である。
【図6】この発明の成形同時加飾成形品の製造方法の一実施例を示す断面図である。
【図7】この発明の成形同時加飾成形品の一実施例を示す断面図である。
【図8】一般的な熱転写プリンタの熱転写部の概略を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1 成形同時加飾成形品
4 金属調光沢柄を含む加飾シート
5 金属調光沢柄を含む加飾シート
6 金属薄形成シート
8 加飾柄
9 熱転写プリンタ
10 第2基体シート
11、離型層
13、剥離層
15 前アンカー層
16 金属薄膜層
19 後アンカー層
20 第1基体シート
21 離型
23 剥離層
24 絵柄層
25 位置検知パターン
29 接着層
31 A金型
32 B金型
34 クランプ
36 射出口
38 成形樹脂
40 加飾シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基体シート上に絵柄層が形成された加飾シートと、離型性を有する第2基体シート上に金属薄膜層が形成された金属薄膜形成シートとを積層させ、該金属薄膜形成シートから前記金属薄膜層を前記第1基体シートの絵柄層が形成された面上に転写形成させた金属調光沢柄を含む加飾シートの製造方法であって、該金属薄膜層の転写形成をオンデマンドによるプリント方式でしたことを特徴とする金属調光沢柄を含む加飾シートの製造方法。
【請求項2】
前記オンデマンドによるプリント方式が、前記金属薄膜形成シートの背面から熱を加える熱転写プリンタ方式である請求項1に記載の金属調光沢柄を含む加飾シートの製造方法。
【請求項3】
前記金属薄膜形成シートから前記金属薄膜層を前記第1基体シートの絵柄層が形成された面上の所定の位置にパターン転写形成するための位置検知パターンが、当該転写形成前に前記第1基体シート上にあらかじめ形成されている請求項1又は請求項2に記載の金属調光沢柄を含む加飾シートの製造方法。
【請求項4】
前記金属薄膜層の転写形成の後、最上層として接着層を形成した請求項1〜3のいずれかに記載の金属調光沢柄を含む加飾シートの製造方法。
【請求項5】
前記請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法によって得られた金属調光沢柄を含む加飾シートを、A金型およびB金型からなる成形金型に挿入し、A金型表面と前記第1基体シートの絵柄層形成側とは反対側の表面とが接するよう固定し、B金型から成形樹脂を射出することにより成形と同時に表面に絵柄層、金属薄膜層が形成された成形同時加飾成形品を得、冷却後、該成形金型から加飾成形品を取り出すことを特徴とする成形同時加飾成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−125800(P2010−125800A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305702(P2008−305702)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】