説明

釣り用履き物

【課題】フィット性及び履き心地に優れた釣り用履き物2の提供。
【解決手段】釣り用履き物2は、アッパー4と、ヒールガード6と、紐14とを備えている。アッパー4は布製であり、ヒールガードは合成樹脂製である。ヒールガード6は、本体22と、左右一対のアーム24とを備えてる。本体22はアッパー4と積層されており、アッパー4の踵近傍を覆っている。アーム24は本体22から延在しており、その先端は足首の爪先側にまで至っている。アーム24は、その先端に貫通孔28を備えている。この貫通孔28には、紐14が通されている。紐14が締められて示されることにより、アッパー4が着用者の足首及び踵を押圧する。ヒールガードの硬度Hsは、40以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り人に着用される履き物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な釣り用の靴は、紐を備えている。紐が締められて縛られることにより、アッパーの左側部分と右側部分とが中央に引き寄せられる。この引き寄せによって足が締め付けられる。紐は、靴のフィット性に寄与する。紐を備えた釣り用の靴が、株式会社シマノ発行の「2004総合カタログ」第186頁に掲載されている。
【非特許文献1】株式会社シマノ発行「2004総合カタログ」第186頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
紐の引き寄せにより、アッパーは主として甲を下方に締め付ける。紐の引き寄せでは、足首はほとんど締め付けられない。この靴では、フィット性は十分ではない。釣り場において釣り人は、岩に上ったり、跳躍したり、好ポイントを求めて歩き回ったりする。釣り人の動作は、激しい。釣り人は、フィット性がさらに優れた靴を望んでいる。
【0004】
岩場、テトラポッド等で釣りが行われるとき、釣り人の足場が前下がりの傾斜面であることがある。釣り人がこの傾斜面に立つと、足は靴の中を前方へと移動する。釣り人の体重は爪先にかかり、爪先はアッパーの内面に強く押圧される。この姿勢が長時間維持されると、釣り人は足に苦痛を覚える。この靴は、履き心地に劣る。
【0005】
本発明の目的は、フィット性及び履き心地に優れた釣り用履き物の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る釣り用履き物は、アッパーと、ヒールガードと、紐とを備える。このヒールガードは、アッパーの踵近傍を覆う本体と、この本体から延在し足首の爪先側にまで至る左右一対のアームを備える。このアームは、紐が通されるための貫通孔を有する。
【0007】
好ましくは、アッパーは布製であり、ヒールガードは合成樹脂製である。好ましくは、ヒールガードの硬度Hsは40以上である。
【0008】
好ましくは、履き物は、アッパーのアウトサイドを覆うアウトサイドガードと、このアッパーのインサイドを覆うインサイドガードとをさらに備える。このアウトサイドガード及びインサイドガードは、合成樹脂からなる。
【発明の効果】
【0009】
この釣り用履き物では、紐が締められることにより、ヒールガードが足首を締め付ける。このヒールガードにより、着用者はフィット感を得ることができる。この履き物では、着用者が前下がりの傾斜面に立ったときでも、ヒールガードが前方への足の移動を阻止するので、着用者は爪先の苦痛を覚えない。この履き物は、着用感にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0011】
図1は本発明の一実施形態に係る釣り用履き物2が示された正面図であり、図2はその平面図である。図3は、図1の履き物2の一部が示された分解図である。図1には、履き物2のアウトサイドが示されている。この履き物2は、アッパー4、ヒールガード6、アウトサイドガード8、インサイドガード10、トウガード12、紐14及びアウトソール16を備えている。図2及び図3では、紐14の図示が省略されている。図3では、アウトソール16の図示が省略されている。図示されていないが、この履き物2はインソールも備えている。履き物2がミッドソールを備えてもよい。
【0012】
アッパー4は、布製である。典型的には、アッパー4にメッシュ状の布地が用いられる。アッパー4は、ハトメ18を備えている。このハトメ18には、紐14が通されている。アッパー4はまた、フラップ20も備えている。
【0013】
ヒールガード6は、硬質の合成樹脂からなる。ヒールガード6は、本体22と左右一対のアーム24を備えている。本体22とアーム24とは、一体的に成形されている。本体22はアッパー4と積層されており、アッパー4の踵近傍を覆っている。図1に示されるように、本体22は開口26を備えている。この開口26は、履き物2の通気性及び通水性を高める。図2に示されるように、アーム24は本体22から延在しており、その先端は足首の爪先側にまで至っている。アーム24は、その先端に貫通孔28を備えている。この貫通孔28にも、紐14が通されている。
【0014】
アウトサイドガード8はアッパー4と積層されており、アッパー4のアウトサイドを覆っている。図1に示されるように、アウトサイドガード8は、開口30を備えている。この開口30は、履き物2の通気性及び通水性を高める。インサイドガード10はアッパー4と積層されており、アッパー4のインサイドを覆っている。図示されていないが、インサイドガード10もアウトサイドガード8と同様の開口を備えている。トウガード12はアッパー4と積層されており、アッパー4の爪先近傍を覆っている。
【0015】
ヒールガード6、アウトサイドガード8、インサイドガード10及びトウガード12は、硬質の合成樹脂からなる。合成樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル及びポリアミドが挙げられる。
【0016】
アウトソール16は、架橋ゴムからなる。アウトソール16には、耐摩耗性及び強度に優れたゴムが用いられる。典型的には、アウトソール16に天然ゴム、ポリブタジエン又はスチレン−ブタジエン共重合体が用いられる。図示されていないが、アウトソール16は、その底面に凹凸を備えている。この凹凸により、履き物2のスリップが防止される。アウトソール16が、その底面にスパークピンを備えてもよい。
【0017】
アウトソール16は、その側壁32に多数の瘤状突起34を備えている。この瘤状突起34は、外向きに突出している。この履き物2が岩場で着用されたときは、まず瘤状突起34が岩と接触する。この瘤状突起34により、アッパー4と岩との激しい衝突が防止され、アッパー4が岩と激しく擦れ合うことが防止される。換言すれば、この瘤状突起34はアッパー4を保護する。
【0018】
この履き物2が着用されるときは、まず着用者が足を履き物2に入れる。次に、ハトメ18及びアーム24の貫通孔28を通された紐14が締められて、縛られる。前述のようにアーム24は足首の爪先側にまで至っているので、紐14が締められることでアーム24がアッパー4を着用者の足首に強く押圧する。このとき、アーム24に働く張力はヒールガード6の本体22にも及ぶ。この張力により、本体22の直下のアッパー4は着用者の踵を強く押圧する。足首及び踵の押圧により、履き物2が足にフィットする。足にフィットした履き物2は、釣り場での激しい動作を妨げない。
【0019】
着用者が前下がりの傾斜面に立ったときでも、本体22と一体となったアーム24が、足の前方へのズレを防止する。この履き物2では、爪先に過度の力がかからない。この履き物2が前下がりの傾斜面で長時間使用されても、着用者は爪先に苦痛を覚えない。この履き物2は、履き心地に優れる。
【0020】
フィット性及び履き心地の観点から、JIS−A硬度計で測定されたヒールガード6の硬度Hsは40以上が好ましく、60以上がより好ましい。アッパー4に対する追従性の観点から、硬度Hsは95以下が好ましく、80以下が好ましい。
【0021】
フィット性及び履き心地の観点から、ヒールガード6の厚みは0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましい。アッパー4に対する追従性の観点から、厚みは3.0mm以下が好ましい。
【0022】
図4は、図1の履き物2の一部が示された拡大図である。この図4には、アーム24が示されている。図4において両矢印Wで示されているのは、アーム24の幅である。幅は、3mm以上30mm以下が好ましい。幅が3mm以上に設定されることにより、優れたフィット性及び履き心地が達成される。この観点から、幅Wは5mm以上がより好ましい。
【0023】
ヒールガード6、アウトサイドガード8及びインサイドガード10は、着用者の足を包み込む。ヒールガード6、アウトサイドガード8及びインサイドガード10は、履き物2のホールド性を高める。この履き物2は、安定性にも優れる。安定性の観点から、アウトサイドガード8及びインサイドガード10の硬度Hsは、ヒールガード6の硬度Hsと同等であることが好ましい。安定性の観点から、アウトサイドガード8及びインサイドガード10の厚みは、ヒールガード6の厚みと同等であることが好ましい。
【0024】
この履き物2では、ヒールガード6、アウトサイドガード8、インサイドガード10及びトウガード12が、アッパー4と岩との直接の擦動を防止する。ヒールガード6、アウトサイドガード8、インサイドガード10及びトウガード12は、アッパー4を保護する。アッパー4の保護の観点から、トウガード12の硬度Hsは、ヒールガード6の硬度Hsと同等であることが好ましい。アッパー4の保護の観点から、トウガード12の厚みは、ヒールガード6の厚みと同等であることが好ましい。
【0025】
この履き物2の製造では、まず金型に未架橋ゴム組成物が充填される。ゴム組成物は加熱によって架橋反応を起こし、アウトソール16が得られる。一方、アッパー4にヒールガード6、アウトサイドガード8、インサイドガード10及びトウガード12が接合される。接合は、縫合によって達成される。接合が、接着剤によってなされてもよい。次に、このアッパー4にアウトソール16が接合される。接合は、接着剤によって達成される。次に、アウトソール16にインソールが積層されて、履き物2が完成する。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明に係る履き物は、磯、防波堤、砂浜、船等の種々の釣り場において利用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る釣り用履き物が示された正面図である。
【図2】図2は、図1の釣り用履き物が示された平面図である。
【図3】図3は、図1の釣り用履き物の一部が示された分解図である。
【図4】図4は、図1の釣り用履き物の一部が示された拡大図である。
【符号の説明】
【0028】
2・・・釣り用履き物
4・・・アッパー
6・・・ヒールガード
8・・・アウトサイドガード
10・・・インサイドガード
12・・・トウガード
14・・・紐
16・・・アウトソール
22・・・本体
24・・・アーム
28・・・貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパーと、ヒールガードと、紐とを備えており、
このヒールガードが、アッパーの踵近傍を覆う本体と、この本体から延在し足首の爪先側にまで至る左右一対のアームを備えており、
このアームが、紐が通されるための貫通孔を有する釣り用履き物。
【請求項2】
上記アッパーが布製であり、ヒールガードが合成樹脂製である請求項1に記載の釣り用履き物。
【請求項3】
上記ヒールガードの硬度Hsが40以上である請求項1又は2に記載の釣り用履き物。
【請求項4】
上記アッパーのアウトサイドを覆うアウトサイドガードと、このアッパーのインサイドを覆うインサイドガードとをさらに備えており、このアウトサイドガード及びインサイドガードが合成樹脂からなる請求項1から3のいずれかに記載の釣り用履き物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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