開閉蓋用の軸および軸受け構造
【課題】筐体に設けられた開口部と、これに嵌設された開閉蓋との気密性を高め、かつ製品の製造工程の複雑化を伴わない、開閉蓋用の軸および軸受け構造を提供する。
【解決手段】開閉蓋20の端部両側面に突出された回動軸30と、回動を保持する回動保持部90と、該回動軸を枢支すべく筐体側に設けられた軸受け機構と、を含む開閉蓋用の軸および軸受け構造において、軸受け機構は、筐体開口部11の側壁12に穿かれ、かつ回動軸30の周囲に十分に広い間隙が設けられた軸受け用の貫通孔もしくは壁龕で構成される軸受け部50と、軸受け部50に張り出して設けられた突出部60とを含み、開閉蓋20が開かれる際に、回動軸30は軸受け部50内を回動するとともに回動軸30周囲を自在に移動し、開閉蓋20の開度が増加するに伴い、回動保持部90は突出部60の水平面によって係止される。
【解決手段】開閉蓋20の端部両側面に突出された回動軸30と、回動を保持する回動保持部90と、該回動軸を枢支すべく筐体側に設けられた軸受け機構と、を含む開閉蓋用の軸および軸受け構造において、軸受け機構は、筐体開口部11の側壁12に穿かれ、かつ回動軸30の周囲に十分に広い間隙が設けられた軸受け用の貫通孔もしくは壁龕で構成される軸受け部50と、軸受け部50に張り出して設けられた突出部60とを含み、開閉蓋20が開かれる際に、回動軸30は軸受け部50内を回動するとともに回動軸30周囲を自在に移動し、開閉蓋20の開度が増加するに伴い、回動保持部90は突出部60の水平面によって係止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体に設けた開口部に嵌設された開閉蓋の開閉構造に関するものであり、より詳細には、開閉蓋に設けられた回動軸と、該回動軸を枢支すべく筐体側に設けられた軸受け機構の双方の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子機器等の筐体には、各種の点検や調整のために多数の開口部が設けられている。これらの開口部には、防塵或いは保安上の対策から開閉蓋が設けられており、係る開閉蓋の開閉動作の構造に関しては、従来から、例えば、特許文献1ないし3に示すような数多くの先行技術文献が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−200983号公報
【特許文献2】特開2003−155859号公報
【特許文献3】特開2003−318564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、このような従来技術においては、開閉蓋側に回動軸を設け、係る回動軸を筐体側に設けた軸受け機構に回動自在に嵌合させ、筐体開口部における開閉蓋の開閉を行なう構造のものが多い。係る従来構造において、開口部に対し開閉蓋の大きさ・面積を同一に設定してしまうと開閉蓋と開口部の縁が互いに干渉し開閉動作の円滑性が損なわれ、開閉蓋の開閉に困難を生じる場合が多く、最悪の場合は開閉蓋の破壊や回動軸の折損等の事故を招くおそれがあった。
【0005】
このため、従来技術においては、例えば、開閉蓋の回動軸が設けられた端部と、同端部が当接される開口部壁面との間に若干の間隙を設け、開閉蓋の開閉動作に伴う筐体と開閉蓋との干渉を防止したり、或いは、開閉蓋の背面が当接される開口部壁面の上端にR(アール)を付ける(いわゆるC面形状加工)などの工夫を行う必要があった。
【0006】
しかしながら、このような加工を行なうことは、筐体と開閉蓋との間に不要な間隙を設けることになり、製品の美観やそのデザイン性を著しく損なうことになる。また、係る間隙から筐体内へゴミや塵埃等の混入を招くおそれもあった。さらに、このような加工によって、製品の金型や製品自体の製造工程が複雑化し、製品の製造コストの増加を招くという問題もあった。
【0007】
また、従来技術においては、通常、開閉蓋の回動軸を筐体側に設けた軸受け孔にぴったりと嵌合させるため、筐体の金型製造時に、いわゆるスライド構造を設ける必要があり、製品に関する金型の構造が複雑化する等の問題があった。
【0008】
本発明は、従来技術におけるこのような課題の解決を目的とするものであって、より具体的には、筐体に設けられた開口部とこれに嵌設された開閉蓋との気密性を高め、かつ、製品の製造工程の複雑化を伴わない、開閉蓋用の軸および軸受け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点による開閉蓋用の軸および軸受け構造は、上記の課題を解決するために、
筐体の開口部に嵌設された開閉蓋において、開閉蓋の端部両側面に突設された回動軸と、回動軸を枢支すべく筐体側に設けられた軸受け機構と、回動を保持する回動保持部とを含む開閉蓋用の軸および軸受け構造であって、
前記軸受け機構は、筐体開口部の側壁に穿かれ、かつ前記回動軸の周囲に十分に広い間隙が設けられた軸受け用の貫通孔もしくは壁龕で構成される軸受け部と、軸受け部に対して張り出して設けられた突出部とを含み、
前記開閉蓋が開かれる際に、前記回動軸は、前記軸受け部内を回動するにあたっては回転運動の中心軸が移動、すなわち所謂「ぶれ」を伴う回転動作を行い、
前記開閉蓋の開度が増加するに伴い、前記回動保持部は、前記突出部の水平面によって係止されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の第2の観点による開閉蓋用の軸および軸受け構造は、上記の課題を解決するために、
筐体の開口部に嵌設された開閉蓋において、開閉蓋の端部両側面に突設された回動軸と、回動軸を枢支すべく筐体側に設けられた軸受け機構と、を含む開閉蓋用の軸および軸受け構造であって、
前記回動軸は、その根元に軸径が先端部よりも太い回動軸基部を有し、
前記軸受け機構は、筐体開口部の側壁に穿かれ、かつ前記回動軸の周囲に十分に広い間隙が設けられた軸受け用の貫通孔もしくは壁龕で構成される軸受け部と、軸受け部に対して張り出して設けられた突出部とを含み、
前記開閉蓋が開かれる際に、前記回動軸は、前記軸受け部内を回動するにあたっては回転運動の中心軸が移動、すなわち所謂「ぶれ」を伴う回転動作を行い、
前記開閉蓋の開度が増加するに伴い、前記回動軸基部は、前記突出部の水平面によって係止されることを特徴とする。
【0011】
したがって、以上のような構成によれば、筐体開口部の開閉蓋が開閉される際に、開閉蓋の回動軸が開口部の側壁に設けられた軸受け部内を自在に遊動するので、開口部縁と開閉蓋との相互干渉を防止し、開閉蓋の開閉動作を極めて円滑に行なうことができる。なお、『回転運動の中心軸が移動、すなわち所謂「ぶれ」を伴う回転動作を行い』という記載は、開閉蓋の回動軸を含む回転運動の中心軸が開口部の側壁に設けられた軸受け部内を自在に遊動することを表しており、正確には、回転運動の中心軸が当該軸の垂直断面内において、その軸半径方向の全周に亘って軸受け部内を移動可能な状態であることを意味している。
【0012】
また、本発明の第3の観点による開閉蓋用の軸および軸受け構造は、上記第1または第2の観点において、
前記軸受け部に対して張り出して設けられた突出部は、
軸受け部を一部塞ぐような形態で、その上面が筐体開口部の側壁と直交した略水平な面となるよう、かつその一方の側面は、該側面と筐体開口部の端面とで、その間に空間を生ずるように配置されていることを特徴とする。
【0013】
なお、第3の観点による発明の構成を添付の図2a、図7a、および図11を用いて、より具体的に説明すれば次のとおりである。すなわち、軸受け部50に対して張り出して設けられた突出部60は、軸受け部50を一部塞ぐような形態で、突出部60の上面61が筐体開口部11の側壁12と直交した略水平な面となるように、かつ、突出部60の一方の側面62が筐体開口部11の端面13との間に空間14を生ずるように配置されている。
【0014】
したがって、このような構成にすることで、筐体開口部11の開閉蓋20が開かれる際、回動保持部90或いは回動軸基部40は、突出部60の上面61に当接されつつ突出部上を略90度分回転移動し(図11a参照)、上面61が尽きたところで、開閉蓋20は、突出部60の一方の側面62と筐体開口部11の端面13との間に形成された空間14に、その端部が挿入された状態(図11b参照)に至り一連の動作が完了される。
【0015】
なお、以上に説明した、回動保持部90或いは回動軸基部40が略90度分回転した状態で開閉蓋20の開き動作が完了する事例は、開閉蓋20の回動軸30がその端部に極めて接近した位置に配置された場合を示すものであり、本発明の実施が係る事例に限定されるものでないことは言うまでもない。例えば、回動軸30を開閉蓋20の端部より離して配置することによって、上記に説明した開閉蓋20の開き動作の終了時における開き角度は略90度よりも減少することになる。
【0016】
その理由は、開閉蓋20の端部が、突出部60の側面62と筐体開口部11の端面13との間に形成された空間14の底に当接してしまうことで、開閉蓋20の回転角度が90度の手前で制限されてしまうからである。なお、この問題については、係る空間14をさらに深く掘り下げることによって、すなわち、開口部11内における係る空間14の底部をさらに深くすることによって、開閉蓋20の開度を略90度まで行なうことが可能となる。
【0017】
一方、上記のように回動軸30を開閉蓋20の端部より離して配置することによって、後述する開閉蓋20が開き始める際の開閉蓋端部の押下動作(後述の段落番号「0040」、「0064」を参照)が容易となる、すなわち、開閉蓋20が開き易くなるという利点が生ずる。
【0018】
また、本発明の第4の観点による開閉蓋用の軸および軸受け構造は、上記第1または第2の観点において、
筐体に設けられた開口部と該開口部に嵌設された開閉蓋の双方について、その大きさおよび形状が近似し、前記開口部と開閉蓋との間隙が極めて微小であることを特徴とする。
【0019】
したがって、このような構成によれば、筐体に設けられた開口部と該開口部に嵌設された開閉蓋の大きさを略等しくし、筐体開口部と開閉蓋との間隙を極めて狭くできるため、筐体の開口部における気密性を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、製品のデザイン性に優れ、気密性が高く、かつ開閉時における開閉動作の円滑な開閉蓋用の軸および軸受け構造を、簡単な構造と低コストで実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下の記載において、本発明を実施するための最良の形態である複数の実施例についてそれぞれの添付図面を参照しつつ説明を行なう。
【実施例1】
【0022】
本発明の一つの実施形態である、開閉蓋用の軸および軸受け構造の実施例1について、図1ないし5の添付図面を用いて説明を行なう。
【0023】
先ず、実施例1による、筐体および該筐体に設けられた開口部、ならびに該開口部に嵌設された開閉蓋の概略を図1の説明図に示す。図(1a)において、筐体10は、例えば、ホームセキュリティ・システムや、通常の機械警備システムなどに使用される警備端末装置等が内蔵されたケースである。一般に、このようなケースは、ABS樹脂などの高分子素材によって成形されていることが多い。
【0024】
通常、筐体10の樹脂ケースには、点検や保守、或いは運用のために種々の開口部が設けられている。図(1a)に示す事例では、樹脂ケースを筐体10のベース部分(図示せず)に固定した特殊ネジにアクセスするための開口部11が示されている。そして、係るネジの頭部を外部から遮蔽すべく、開口部11には開閉蓋20が嵌設されているものとする。
【0025】
次に、図(1a)において破線で囲んだA部、すなわち、開口部11および開閉蓋20の部分に関する拡大図を図(1b)に示す。なお、図(1b)は、開口部11に開閉蓋20が嵌設された状態を透視的に表現したものである。また、図(1a)(1b)共に、開閉蓋20の端部の両側面に突出して設けられた回動軸に関しては、その形状および特徴を明確に表現するため実線或いはハッチングで表している。
【0026】
図(1b)に示すように、開口部11に嵌合された開閉蓋20を開くと、開口部11の略中央部に示された円形状の穴の内部に、前述したケース取付け用の特殊ネジの頭部が現れる構造となっている。開閉蓋20は、筐体10と同様の樹脂部材で作られており、その端部の両側面には回動軸30が突出して設けられている。
【0027】
回動軸30は、筐体側に設けられた軸受け機構(詳細構造については後述)によって枢支されており、開閉蓋20は、係る回動軸および軸受け機構の双方によって開閉自在な構造となっている。なお、本実施例1における、筐体10、開口部11、および開閉蓋20の、形状や大きさ或いはその設定位置等に関しては、図1に示された事例に限定されるものでないことは言うまでもない。
【0028】
また、図1では、開閉蓋20の端部側面の両側に突設された回動軸の長さがそれぞれ異なっているが、これは、開閉蓋20を筐体10に嵌め込む際の利便性を考慮して設定されたものであり(すなわち、先に長軸側を筐体の軸受け機構に嵌合させ、その後、短軸側を軸受け機構に嵌合させる)、係る回動軸の長さの相違は本発明の実施における本質的な構成要素ではない。
【0029】
因みに、本実施例1において、開閉蓋20は開口部11の開口面に対して隙間なく嵌合されている。したがって、開閉蓋20を開くには、先ず、開閉蓋20の回動軸が設けられた側の端部を指などで押下することにより開閉蓋20の端部を沈降させる。これによって、開口部11の内部に突設された支点70を利用することにより、開閉蓋20の他の端部(図(1b)に示す開閉蓋20の右側端部)が上昇されて開閉蓋20が開くことになる。なお、開閉蓋20の開閉動作の詳細については後述する。
【0030】
続いて、開口部11における軸受け機構、および開閉蓋20の構造の詳細について、図2に基づいて説明を行なう。図(2a)は、開口部11の内部を表した概略斜視図である。同図に示されるように、開口部11の内部において、開閉蓋20の回動軸30が当接される近辺の側壁には軸受け部50が設けられている。
【0031】
軸受け部50は、開口部11の側壁面の一定領域を一定の深さで抉り取って凹部とした壁龕状の構造であっても良いし、或いは、側壁面の一定領域をくり貫いた貫通孔状の構造としても良い。本実施例においては、開閉蓋20の端部側面の両側に突設された回動軸30が係る凹部内もしくは貫通孔内に嵌合される。
【0032】
軸受け部50は、回動軸30の周囲について十分に広い間隙を設けているので、回動軸30は、軸受け部50の領域内において自在に移動可能な構造となっている。なお、同図では、開口部11の片側の側壁に設けられた軸受け部のみが示されているが、図示されていない反対側の側壁にも同様の軸受け部が設けられていることは言うまでもない。
【0033】
また、開口部11の内部には、前述の支点70の他に突出部60が設けられている。図(2a)からも明らかなように、突出部60は、開口部11の側壁に設けられた軸受け部50に対して、例えば、テラスや露台のように張り出した形で設けられている。
【0034】
次に、開閉蓋20の詳細構造に付いて説明を行なう。図(2b)は、開閉蓋20を背面から示した斜視図である。また、図(2c)は、開閉蓋20の裏面を示した斜視図である。これらの図に示されるように、開閉蓋20の一方の端部近傍の側面には、その両側に突出された回動軸30が設けられている。また、開閉蓋20の裏面には回動軸30とほぼ同軸的に配置され、回動軸30よりも太い半径を有する半円状の回動保持部90が突出して設けられている。
【0035】
さらに、開閉蓋20には、回動軸30が設けられた端部とは反対側の端部に係止爪80が設けられている。係止爪80は、開閉蓋20を閉じた際に、開閉蓋20を筐体の開口部11に固定・係止させるためのロック機構であり、その構造等については通常の開閉蓋のロック機構と同様であるためその説明を省略する。
【0036】
次に、本実施例1による開閉蓋用の軸および軸受け構造の動作例について説明を行なう。先ず、開閉蓋20が閉ざされている状態を図3の説明図に示す。因みに、図(3a)は、前述の図(1b)に示された開口部11、開閉蓋20の拡大図におけるA−A’断面を示す図であり、図(3b)は、同じく図(1b)におけるB−B’断面を示す図である。
【0037】
図(3a)に示されるように、回動軸30は、開口部11の側壁に設けられた軸受け部50に収まっており、軸受け部50の領域内においては、前述のように回動軸周囲に十分な広さの遊動間隙が設けられている。したがって、回動軸30は、従来技術のように筐体側に設けられた回動軸用の軸受け孔内に固定的に嵌合されているのではなく、係る遊動間隙の範囲内おいて自在に移動可能な構造となっている。また、図(3b)に示されるように、回動保持部90もその周囲に遊動間隙を有しており、開口部11の内部において移動可能な構造となっている。
【0038】
なお、本実施例1では、開閉蓋20が開口部11にぴったりと嵌合されており、かつ係止爪80によって開閉蓋20が開口部11の壁面にロックされているため、上述のように回動軸30と軸受け部50との嵌合が緩やかであっても、開閉蓋20がガタツクことはなく、また、開閉蓋20が開口部11から外れ落ちるおそれもない。
【0039】
次に、開閉蓋20を開く際の動作について、図4および図5を参照しつつ説明を行なう。なお、図4および図5は、前述の断面図(3b)を基にした、あくまでも便宜上の動作説明図であり、製図法的には正確な断面図ではないことを予め記述しておく。
【0040】
先ず、開閉蓋20を開く際には、その回動軸30が設けられている側の端部を指などで押下する。前述のように、回動軸30は、筐体側の軸受け機構に対して遊動自在な構造となっているので、開閉蓋20の回動軸側の端部は、開口部11内部の支点70を梃子動作の支点として、押下された方向に移動する。そして、回動軸30は、軸受け部50の遊動間隙内部において自在に移動し、係る移動の後、図(4a)に示されるように、回動軸30の軸先端部が、軸受け部50の側面に当接されてその移動が係止される。
【0041】
一方、回動保持部90も開閉蓋20の動きに合わせて同様に移動し、その半径が回動軸30の軸径よりも太いため、図(4b)に示されるように、軸受け部50に対し張り出して設けられたテラス状の突出部60の水平面(上面)によって、その下方向への移動が係止される。
【0042】
前述のように、開閉蓋20は、開口部11内の支点70を動作支点として一種の梃子の動作を示すため、力が加えられた回動軸側端部と反対側の端部、すなわち係止爪80が設けられている側の端部には、回動軸側端部と反対方向のモーメントが加わることになる。これによって、開閉蓋20に設けられた係止爪80と筐体10とのロック機構(図示せず)が解除され、図4の各図に示されるように、開閉蓋20の回動軸側端部とは反対側の端部がせりあがる。
【0043】
回動軸30は軸受け部50の遊動間隙内において遊動自在な構造であるので、開閉蓋20の開度がさらに増加すると、図(5a)に示すように、今度は後方(図(5a)の向かって左側)に移動することができる。また、回動保持部90は、図(5b)に示すように、突出部60の水平面上を回転するように動き開閉蓋20の円滑な開放動作を助長する。この結果、開閉蓋20は完全に開かれることになる。
【0044】
以上に説明したように、本実施例1においては、開閉蓋20の回動軸30が筐体側の軸受け孔等に固定されることなく、筐体側の軸受け部50に設けられた所定領域内を自在に遊動する。これによって、開閉蓋20の回動軸側端部が開口部11の後部壁と干渉することなく、開閉蓋20の開放動作を円滑に進めることができる。なお、図4或いは5に示すように、開閉蓋20の開いた状態においても、回動軸30の動きは軸受け部50の所定領域内に制限されており、これを逸脱することができないため、開いた状態の開閉蓋20が筐体10から外れて落ちるおそれはない。
【0045】
一方、開閉蓋20を閉める際の動作は、以上に説明した動作と逆の行程を踏むものであって、先ず、開閉蓋20で開口部11を塞ぎ、その後、開閉蓋20の係止爪80が設けられている側の端部を押下することによって、係止爪80と開口部11に設けられたロック機構(図示せず)がロックされ、開閉蓋20が筐体の開口部11に嵌合されることになる。
【0046】
以上に説明したように、本実施例1によれば、主に、開閉蓋の軸に対する軸受け構造の遊動スペースを広く設けることによって、開閉蓋とそれが組み込まれる筐体開口部との隙間を極端に狭くすることが可能となり、筐体のデザイン性が向上すると共に、開閉蓋と筐体との干渉逃げ形状の加工等の処理を省略することができる。
【0047】
また、本実施例1においては、開閉蓋の回動軸と筐体に設けられた軸受け機構との結合構造が、回動軸を筐体側の軸受け孔に挿入する従来の結合構造に較べて柔軟であり、かつ回動軸が回動保持部によって保持されている。それ故、例えば、開閉蓋を開いた状態で開閉蓋に不測の力が加わった場合でも、回動軸の遊動や回動保持部の動きにより加わった応力を分散させることが可能であり、開閉蓋や回動軸の折損・損傷を回避できる可能性を高めることができる。
【実施例2】
【0048】
次に、本発明の他の実施形態である実施例2について、図6ないし図10の添付図面を用いて説明を行なう。なお、本実施例2による開閉蓋用の軸および軸受け構造は、実施例1で説明を行なった軸および軸受け構造を基本とするものであるため、同一もしくは類似の構成要素に関する説明等は省略する。
【0049】
先ず、本実施例2による筐体および該筐体に設けられた開口部、ならびに該開口部に嵌設された開閉蓋の概略を図6の説明図に示す。図(6a)に示す事例では、筐体10の樹脂ケースをそのベース部分(図示せず)に固定した特殊ネジにアクセスするための開口部11が示されている。そして、係るネジの頭部を遮蔽すべく開口部11には開閉蓋20が嵌設されている。
【0050】
次に、図(6a)において破線で囲んだA部、すなわち、開口部11および開閉蓋20の部分に関する拡大図を図(6b)に示す。図(6b)は、開口部11に開閉蓋20が嵌設された状態を透視的に表現したものである。また、図(6a)、(6b)共に、開閉蓋20の端部の両側面に突出して設けられた回動軸30に関しては、その形状および特徴を明確に表現するため実線或いはハッチングで表している。
【0051】
図(6b)に示すように、開口部11に嵌合された開閉蓋20を開くと、開口部11の略中央部に示された円形状の穴の内部に、前述したケース取付け用の特殊ネジの頭部が現れる構造となっている。開閉蓋20は、筐体10と同様の樹脂部材で作られており、図(7b)、(7c)に示すように、その一方の端部近傍の両側面には、その基部(回動軸基部40)が先端部よりも太い軸径を持つように設定された回動軸30が突出して設けられている。
【0052】
回動軸30は、筐体側に設けられた軸受け機構(詳細構造については後述)によって枢支されており、開閉蓋20は、係る回動軸および軸受け機構の双方によって開閉自在な構造となっている。なお、本実施例2における、筐体10、開口部11、および開閉蓋20の、形状や大きさ或いはその設定位置等に関しては、図6に示された事例に限定されるものでないことは言うまでもない。また、図6では、開閉蓋20の端部側面の両側に突設された回動軸の長さがそれぞれ異なっているが、これは、開閉蓋20を筐体10に嵌め込む際の利便性を考慮して設定されたものであり、本発明の実施における本質的な構成要素ではない。
【0053】
因みに、本実施例2において、開閉蓋20は、開口部11の開口面に対して隙間なく嵌合されている。したがって、開閉蓋20を開くには、先ず、開閉蓋20の回動軸30が設けられた側の端部を、指などで押下することにより開閉蓋20の端部を沈降させる。これによって、開口部11の内部に突設された支点70を利用することにより、開閉蓋20の他の端部(図(6b)に示す開閉蓋20の右側端部)が上昇されて開閉蓋20が開くことになる。なお、開閉蓋20の開閉動作の詳細については後述する。
【0054】
続いて、開口部11における軸受け機構、および開閉蓋20の構造の詳細について、図7に基づいて説明を行なう。図(7a)は、開口部11の内部を表した概略斜視図である。同図に示されるように、開口部11の内部において、開閉蓋20の回動軸30が当接される近辺の側壁には軸受け部50が設けられている。
【0055】
軸受け部50は、開口部11の側壁面の一定領域を一定の深さで抉り取って凹部とした壁龕状の構造であっても良いし、或いは、側壁面の一定領域をくり貫いた貫通孔状の構造としても良い。本実施例2においては、開閉蓋20の端部側面の両側に突設された回動軸30が係る凹部内もしくは貫通孔内に嵌合される。
【0056】
軸受け部50は、回動軸30の周囲について十分に広い間隙を設けているので、回動軸30は、軸受け部50の領域内において自在に移動可能な構造となっている。なお、同図では、開口部11の片側の側壁に設けられた軸受け部のみが示されているが、図示されていない反対側の側壁にも同様の軸受け部が設けられていることは言うまでもない。
【0057】
また、開口部11の内部には、前述の支点70の他に突出部60が設けられている。図(2a)からも明らかなように、突出部60は、開口部11の側壁に設けられた軸受け部50に対して、例えば、テラスや露台のように張り出した形で設けられている。
【0058】
次に、開閉蓋20の詳細構造に付いて説明を行なう。図(7b)は、開閉蓋20を背面から示した斜視図である。また、図(7c)は、開閉蓋20の裏面を示した斜視図である。これらの図に示されるように、開閉蓋20の一方の端部近傍の側面には、その両側に突出された回動軸30が設けられている。回動軸30は、基部(回動軸基部40)において、その径が軸先端部よりも太くなっており、回動軸30の軸先端部が前述した軸受け部50内に嵌合されることになる。
【0059】
また、開閉蓋20において、回動軸30が設けられた端部とは反対側の端部に係止爪80が設けられている。係止爪80は、開閉蓋20を閉じた際に、開閉蓋20を筐体の開口部11に固定・係止させるためのロック機構であり、その構造等については通常の開閉蓋のロック機構と同様であるためその説明を省略する。
【0060】
次に、本実施例2による開閉蓋用の軸および軸受け構造の動作例について説明を行なう。先ず、開閉蓋20が閉ざされている状態を図8の説明図に示す。因みに、図(8a)は、前述の図(6b)に示された拡大図におけるA−A’断面を示す図であり、図(8b)は、同じく図(6b)におけるB−B’断面を示す図である。
【0061】
図(8a)に示されるように、回動軸30の軸先端部は、開口部11の側壁に設けられた軸受け部50に収まっており、軸先端部の周囲には十分な広さの遊動間隙が設けられている。したがって、回動軸30は、係る遊動間隙の範囲内おいて自在に移動可能な構造となっている。また、図(8b)に示されるように、回動軸基部40も、開口部11の内部において移動可能な構造となっている。すなわち、本実施例2では、回動軸30が、従来技術のように、筐体側に設けられた回動軸用の軸受け孔内に固定的に嵌合されているのではなく、ある程度の遊動間隙が設けられた軸受け機構に嵌合されている。
【0062】
なお、本実施例2では、開閉蓋20が開口部11にぴったりと嵌合されており、かつ係止爪80によって開閉蓋20が開口部11の壁面にロックされているため、上述のように回動軸30と軸受け部50との嵌合が緩やかであっても、開閉蓋20の閉じられた状態において開閉蓋20がガタツクことはなく、また、開閉蓋20が開口部11から外れ落ちるおそれもない。
【0063】
次に、開閉蓋20を開く際の動作について、図9および図10を参照しつつ説明を行なう。なお、図9および図10は、前述の断面図(8b)を基にした、あくまでも便宜上の動作説明図であり、製図法的には正確な断面図ではないことを予め記述しておく。
【0064】
先ず、開閉蓋20を開く際には、その回動軸側の端部を指などで押下する。前述のように、開閉蓋20の回動軸30は、筐体側に設けられた軸受け機構に対して遊動自在な構造となっているので、開閉蓋20の回動軸側の端部は、開口部11の内部で支点70を梃子動作の支点として、押下された方向に移動する。そして、回動軸30は、軸受け部50の遊動間隙内部において自在に移動し、係る移動の後、図(9a)に示されるように回動軸30の軸先端部が、軸受け部50の側面に当接されてその移動が係止される。
【0065】
一方、回動軸基部40も回動軸30の動作に合わせて移動し、回動軸基部40の軸径が軸先端部の軸径よりも太いため、図(9b)に示されるようにその下方への移動は、軸受け部50に対し張り出して設けられたテラス状の突出部60の水平面(上面)によって係止される。
【0066】
前述のように、開閉蓋20は、開口部11内の支点70を動作支点として一種の梃子の動作を示すため、力が加えられた回動軸側端部と反対側の端部、すなわち係止爪80が設けられている側の端部に、回動軸側端部とは反対方向のモーメントが加わることになる。これによって、開閉蓋20に設けられた係止爪80と、回動筐体10とのロック機構(図示せず)が解除され、図9に示されるように開閉蓋20の回動軸側端部とは反対側の端部がせりあがる。
【0067】
開閉蓋20の開度がさらに増加すると、回動軸30の軸先端部は軸受け部50の遊動間隙内において、その軸半径方向に遊動自在な構造であるので、図(10a)に示すように、今度はその後方(図(10a)の向かって左側)に移動することができる。また、回動軸基部40は、図(10b)に示すように、突出部60の水平面上を回転するように動き開閉蓋20の円滑な開放動作を助長する。この結果、開閉蓋20は完全に開かれることになる。
【0068】
以上に説明したように、本実施例2においては、開閉蓋20に設けられた回動軸30が軸受け孔等に固定されることがなく、筐体側の軸受け部50に設けられた所定領域内を自在に遊動する。このため、図9や図10に示されるように、開閉蓋20の回動軸側端部が開口部11の後部壁と干渉するおそれはなく、開閉蓋20の開放動作を円滑に進めることができる。
【0069】
なお、図9或いは図10に示すように、開閉蓋20の開いた状態においても、回動軸30の軸先端部の動きは、開口部11の側壁に設けられた軸受け部50の内部に制限されており、これを逸脱することができないため、開いた状態の開閉蓋20が筐体10から外れて落ちるおそれはない。
【0070】
一方、開閉蓋20を閉める際の動作は、以上に説明した動作と逆の行程を踏むものであって、先ず、開閉蓋20で開口部11を塞ぎ、その後、開閉蓋20の係止爪80が設けられている側の端部を押下することによって、係止爪80と開口部11に設けられたロック機構(図示せず)がロックされ、開閉蓋20が筐体の開口部11に嵌合される。
【0071】
以上に説明したように、本実施例2によれば、主に、開閉蓋の軸に対する軸受け構造の遊動スペースを大きく設けることによって、開閉蓋とそれが組み込まれる筐体開口部との隙間を極端に狭くすることが可能となり、筐体のデザイン性が向上すると共に、開閉蓋と筐体との干渉逃げ形状加工等を省略することができる。
【0072】
また、本実施例2においては、開閉蓋の回動軸と筐体に設けられた軸受け機構との結合構造が、回動軸を筐体側の軸受け孔に挿入する従来の結合構造に較べて柔軟であるため、例えば、開閉蓋を開いた状態で開閉蓋に不測の力が加わった場合でも、回動軸の軸基部および軸先端部の遊動により加わった応力を分散することで、開閉蓋や回動軸の折損・損傷を回避できる可能性が高まる。
【0073】
なお、本発明は以上に説明した各実施形態に限定されるものではなく、例えば、本発明を構成する各部位の形状や配置、或いはその素材等は、本発明の趣旨を逸脱することなく、現実の実施対応に即して適宜変更ができるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上に説明した本発明の構成は、各種の筐体の開口部に設けられた開閉蓋の回動軸と、同筐体側に設けられた軸受け機構において広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施例1による筐体等の概略を示す説明図である。
【図2】図1に示された開口部11および開閉蓋20の構造を示す斜視図である。
【図3】図(1b)において、開閉蓋20が閉ざされた状態を示す断面図である。
【図4】本実施例において開閉蓋20が開かれる際の動作を説明した図である。
【図5】本実施例において開閉蓋20の開度が増加した際の動作を説明した図である。
【図6】本発明の実施例2による筐体等の概略を示す説明図である。
【図7】図6に示された開口部11および開閉蓋20の構造を示す斜視図である。
【図8】図(6b)において、開閉蓋20が閉ざされた状態を示す断面図である。
【図9】本実施例において開閉蓋20が開かれる際の動作を説明した図である。
【図10】本実施例において開閉蓋20の開度が増加した際の動作を説明した図である。
【図11】本発明において、筐体開口部11の端面13と筐体開口部11内の突出部60の側面62との間に形成される空間14を用いて、開閉蓋20の開閉動作が実現される様子を説明した図である。
【符号の説明】
【0076】
10 … 筐体
11 … 筐体開口部
12 … 筐体開口部側壁
13 … 筐体開口部端面
14 … 空間
20 … 開閉蓋
30 … 回動軸
40 … 回動軸基部
50 … 軸受け部
60 … 突出部
61 … 突出部上面
62 … 突出部側面
70 … 支点
80 … 係止爪
90 … 回動保持部
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体に設けた開口部に嵌設された開閉蓋の開閉構造に関するものであり、より詳細には、開閉蓋に設けられた回動軸と、該回動軸を枢支すべく筐体側に設けられた軸受け機構の双方の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子機器等の筐体には、各種の点検や調整のために多数の開口部が設けられている。これらの開口部には、防塵或いは保安上の対策から開閉蓋が設けられており、係る開閉蓋の開閉動作の構造に関しては、従来から、例えば、特許文献1ないし3に示すような数多くの先行技術文献が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−200983号公報
【特許文献2】特開2003−155859号公報
【特許文献3】特開2003−318564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、このような従来技術においては、開閉蓋側に回動軸を設け、係る回動軸を筐体側に設けた軸受け機構に回動自在に嵌合させ、筐体開口部における開閉蓋の開閉を行なう構造のものが多い。係る従来構造において、開口部に対し開閉蓋の大きさ・面積を同一に設定してしまうと開閉蓋と開口部の縁が互いに干渉し開閉動作の円滑性が損なわれ、開閉蓋の開閉に困難を生じる場合が多く、最悪の場合は開閉蓋の破壊や回動軸の折損等の事故を招くおそれがあった。
【0005】
このため、従来技術においては、例えば、開閉蓋の回動軸が設けられた端部と、同端部が当接される開口部壁面との間に若干の間隙を設け、開閉蓋の開閉動作に伴う筐体と開閉蓋との干渉を防止したり、或いは、開閉蓋の背面が当接される開口部壁面の上端にR(アール)を付ける(いわゆるC面形状加工)などの工夫を行う必要があった。
【0006】
しかしながら、このような加工を行なうことは、筐体と開閉蓋との間に不要な間隙を設けることになり、製品の美観やそのデザイン性を著しく損なうことになる。また、係る間隙から筐体内へゴミや塵埃等の混入を招くおそれもあった。さらに、このような加工によって、製品の金型や製品自体の製造工程が複雑化し、製品の製造コストの増加を招くという問題もあった。
【0007】
また、従来技術においては、通常、開閉蓋の回動軸を筐体側に設けた軸受け孔にぴったりと嵌合させるため、筐体の金型製造時に、いわゆるスライド構造を設ける必要があり、製品に関する金型の構造が複雑化する等の問題があった。
【0008】
本発明は、従来技術におけるこのような課題の解決を目的とするものであって、より具体的には、筐体に設けられた開口部とこれに嵌設された開閉蓋との気密性を高め、かつ、製品の製造工程の複雑化を伴わない、開閉蓋用の軸および軸受け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点による開閉蓋用の軸および軸受け構造は、上記の課題を解決するために、
筐体の開口部に嵌設された開閉蓋において、開閉蓋の端部両側面に突設された回動軸と、回動軸を枢支すべく筐体側に設けられた軸受け機構と、回動を保持する回動保持部とを含む開閉蓋用の軸および軸受け構造であって、
前記軸受け機構は、筐体開口部の側壁に穿かれ、かつ前記回動軸の周囲に十分に広い間隙が設けられた軸受け用の貫通孔もしくは壁龕で構成される軸受け部と、軸受け部に対して張り出して設けられた突出部とを含み、
前記開閉蓋が開かれる際に、前記回動軸は、前記軸受け部内を回動するにあたっては回転運動の中心軸が移動、すなわち所謂「ぶれ」を伴う回転動作を行い、
前記開閉蓋の開度が増加するに伴い、前記回動保持部は、前記突出部の水平面によって係止されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の第2の観点による開閉蓋用の軸および軸受け構造は、上記の課題を解決するために、
筐体の開口部に嵌設された開閉蓋において、開閉蓋の端部両側面に突設された回動軸と、回動軸を枢支すべく筐体側に設けられた軸受け機構と、を含む開閉蓋用の軸および軸受け構造であって、
前記回動軸は、その根元に軸径が先端部よりも太い回動軸基部を有し、
前記軸受け機構は、筐体開口部の側壁に穿かれ、かつ前記回動軸の周囲に十分に広い間隙が設けられた軸受け用の貫通孔もしくは壁龕で構成される軸受け部と、軸受け部に対して張り出して設けられた突出部とを含み、
前記開閉蓋が開かれる際に、前記回動軸は、前記軸受け部内を回動するにあたっては回転運動の中心軸が移動、すなわち所謂「ぶれ」を伴う回転動作を行い、
前記開閉蓋の開度が増加するに伴い、前記回動軸基部は、前記突出部の水平面によって係止されることを特徴とする。
【0011】
したがって、以上のような構成によれば、筐体開口部の開閉蓋が開閉される際に、開閉蓋の回動軸が開口部の側壁に設けられた軸受け部内を自在に遊動するので、開口部縁と開閉蓋との相互干渉を防止し、開閉蓋の開閉動作を極めて円滑に行なうことができる。なお、『回転運動の中心軸が移動、すなわち所謂「ぶれ」を伴う回転動作を行い』という記載は、開閉蓋の回動軸を含む回転運動の中心軸が開口部の側壁に設けられた軸受け部内を自在に遊動することを表しており、正確には、回転運動の中心軸が当該軸の垂直断面内において、その軸半径方向の全周に亘って軸受け部内を移動可能な状態であることを意味している。
【0012】
また、本発明の第3の観点による開閉蓋用の軸および軸受け構造は、上記第1または第2の観点において、
前記軸受け部に対して張り出して設けられた突出部は、
軸受け部を一部塞ぐような形態で、その上面が筐体開口部の側壁と直交した略水平な面となるよう、かつその一方の側面は、該側面と筐体開口部の端面とで、その間に空間を生ずるように配置されていることを特徴とする。
【0013】
なお、第3の観点による発明の構成を添付の図2a、図7a、および図11を用いて、より具体的に説明すれば次のとおりである。すなわち、軸受け部50に対して張り出して設けられた突出部60は、軸受け部50を一部塞ぐような形態で、突出部60の上面61が筐体開口部11の側壁12と直交した略水平な面となるように、かつ、突出部60の一方の側面62が筐体開口部11の端面13との間に空間14を生ずるように配置されている。
【0014】
したがって、このような構成にすることで、筐体開口部11の開閉蓋20が開かれる際、回動保持部90或いは回動軸基部40は、突出部60の上面61に当接されつつ突出部上を略90度分回転移動し(図11a参照)、上面61が尽きたところで、開閉蓋20は、突出部60の一方の側面62と筐体開口部11の端面13との間に形成された空間14に、その端部が挿入された状態(図11b参照)に至り一連の動作が完了される。
【0015】
なお、以上に説明した、回動保持部90或いは回動軸基部40が略90度分回転した状態で開閉蓋20の開き動作が完了する事例は、開閉蓋20の回動軸30がその端部に極めて接近した位置に配置された場合を示すものであり、本発明の実施が係る事例に限定されるものでないことは言うまでもない。例えば、回動軸30を開閉蓋20の端部より離して配置することによって、上記に説明した開閉蓋20の開き動作の終了時における開き角度は略90度よりも減少することになる。
【0016】
その理由は、開閉蓋20の端部が、突出部60の側面62と筐体開口部11の端面13との間に形成された空間14の底に当接してしまうことで、開閉蓋20の回転角度が90度の手前で制限されてしまうからである。なお、この問題については、係る空間14をさらに深く掘り下げることによって、すなわち、開口部11内における係る空間14の底部をさらに深くすることによって、開閉蓋20の開度を略90度まで行なうことが可能となる。
【0017】
一方、上記のように回動軸30を開閉蓋20の端部より離して配置することによって、後述する開閉蓋20が開き始める際の開閉蓋端部の押下動作(後述の段落番号「0040」、「0064」を参照)が容易となる、すなわち、開閉蓋20が開き易くなるという利点が生ずる。
【0018】
また、本発明の第4の観点による開閉蓋用の軸および軸受け構造は、上記第1または第2の観点において、
筐体に設けられた開口部と該開口部に嵌設された開閉蓋の双方について、その大きさおよび形状が近似し、前記開口部と開閉蓋との間隙が極めて微小であることを特徴とする。
【0019】
したがって、このような構成によれば、筐体に設けられた開口部と該開口部に嵌設された開閉蓋の大きさを略等しくし、筐体開口部と開閉蓋との間隙を極めて狭くできるため、筐体の開口部における気密性を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、製品のデザイン性に優れ、気密性が高く、かつ開閉時における開閉動作の円滑な開閉蓋用の軸および軸受け構造を、簡単な構造と低コストで実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下の記載において、本発明を実施するための最良の形態である複数の実施例についてそれぞれの添付図面を参照しつつ説明を行なう。
【実施例1】
【0022】
本発明の一つの実施形態である、開閉蓋用の軸および軸受け構造の実施例1について、図1ないし5の添付図面を用いて説明を行なう。
【0023】
先ず、実施例1による、筐体および該筐体に設けられた開口部、ならびに該開口部に嵌設された開閉蓋の概略を図1の説明図に示す。図(1a)において、筐体10は、例えば、ホームセキュリティ・システムや、通常の機械警備システムなどに使用される警備端末装置等が内蔵されたケースである。一般に、このようなケースは、ABS樹脂などの高分子素材によって成形されていることが多い。
【0024】
通常、筐体10の樹脂ケースには、点検や保守、或いは運用のために種々の開口部が設けられている。図(1a)に示す事例では、樹脂ケースを筐体10のベース部分(図示せず)に固定した特殊ネジにアクセスするための開口部11が示されている。そして、係るネジの頭部を外部から遮蔽すべく、開口部11には開閉蓋20が嵌設されているものとする。
【0025】
次に、図(1a)において破線で囲んだA部、すなわち、開口部11および開閉蓋20の部分に関する拡大図を図(1b)に示す。なお、図(1b)は、開口部11に開閉蓋20が嵌設された状態を透視的に表現したものである。また、図(1a)(1b)共に、開閉蓋20の端部の両側面に突出して設けられた回動軸に関しては、その形状および特徴を明確に表現するため実線或いはハッチングで表している。
【0026】
図(1b)に示すように、開口部11に嵌合された開閉蓋20を開くと、開口部11の略中央部に示された円形状の穴の内部に、前述したケース取付け用の特殊ネジの頭部が現れる構造となっている。開閉蓋20は、筐体10と同様の樹脂部材で作られており、その端部の両側面には回動軸30が突出して設けられている。
【0027】
回動軸30は、筐体側に設けられた軸受け機構(詳細構造については後述)によって枢支されており、開閉蓋20は、係る回動軸および軸受け機構の双方によって開閉自在な構造となっている。なお、本実施例1における、筐体10、開口部11、および開閉蓋20の、形状や大きさ或いはその設定位置等に関しては、図1に示された事例に限定されるものでないことは言うまでもない。
【0028】
また、図1では、開閉蓋20の端部側面の両側に突設された回動軸の長さがそれぞれ異なっているが、これは、開閉蓋20を筐体10に嵌め込む際の利便性を考慮して設定されたものであり(すなわち、先に長軸側を筐体の軸受け機構に嵌合させ、その後、短軸側を軸受け機構に嵌合させる)、係る回動軸の長さの相違は本発明の実施における本質的な構成要素ではない。
【0029】
因みに、本実施例1において、開閉蓋20は開口部11の開口面に対して隙間なく嵌合されている。したがって、開閉蓋20を開くには、先ず、開閉蓋20の回動軸が設けられた側の端部を指などで押下することにより開閉蓋20の端部を沈降させる。これによって、開口部11の内部に突設された支点70を利用することにより、開閉蓋20の他の端部(図(1b)に示す開閉蓋20の右側端部)が上昇されて開閉蓋20が開くことになる。なお、開閉蓋20の開閉動作の詳細については後述する。
【0030】
続いて、開口部11における軸受け機構、および開閉蓋20の構造の詳細について、図2に基づいて説明を行なう。図(2a)は、開口部11の内部を表した概略斜視図である。同図に示されるように、開口部11の内部において、開閉蓋20の回動軸30が当接される近辺の側壁には軸受け部50が設けられている。
【0031】
軸受け部50は、開口部11の側壁面の一定領域を一定の深さで抉り取って凹部とした壁龕状の構造であっても良いし、或いは、側壁面の一定領域をくり貫いた貫通孔状の構造としても良い。本実施例においては、開閉蓋20の端部側面の両側に突設された回動軸30が係る凹部内もしくは貫通孔内に嵌合される。
【0032】
軸受け部50は、回動軸30の周囲について十分に広い間隙を設けているので、回動軸30は、軸受け部50の領域内において自在に移動可能な構造となっている。なお、同図では、開口部11の片側の側壁に設けられた軸受け部のみが示されているが、図示されていない反対側の側壁にも同様の軸受け部が設けられていることは言うまでもない。
【0033】
また、開口部11の内部には、前述の支点70の他に突出部60が設けられている。図(2a)からも明らかなように、突出部60は、開口部11の側壁に設けられた軸受け部50に対して、例えば、テラスや露台のように張り出した形で設けられている。
【0034】
次に、開閉蓋20の詳細構造に付いて説明を行なう。図(2b)は、開閉蓋20を背面から示した斜視図である。また、図(2c)は、開閉蓋20の裏面を示した斜視図である。これらの図に示されるように、開閉蓋20の一方の端部近傍の側面には、その両側に突出された回動軸30が設けられている。また、開閉蓋20の裏面には回動軸30とほぼ同軸的に配置され、回動軸30よりも太い半径を有する半円状の回動保持部90が突出して設けられている。
【0035】
さらに、開閉蓋20には、回動軸30が設けられた端部とは反対側の端部に係止爪80が設けられている。係止爪80は、開閉蓋20を閉じた際に、開閉蓋20を筐体の開口部11に固定・係止させるためのロック機構であり、その構造等については通常の開閉蓋のロック機構と同様であるためその説明を省略する。
【0036】
次に、本実施例1による開閉蓋用の軸および軸受け構造の動作例について説明を行なう。先ず、開閉蓋20が閉ざされている状態を図3の説明図に示す。因みに、図(3a)は、前述の図(1b)に示された開口部11、開閉蓋20の拡大図におけるA−A’断面を示す図であり、図(3b)は、同じく図(1b)におけるB−B’断面を示す図である。
【0037】
図(3a)に示されるように、回動軸30は、開口部11の側壁に設けられた軸受け部50に収まっており、軸受け部50の領域内においては、前述のように回動軸周囲に十分な広さの遊動間隙が設けられている。したがって、回動軸30は、従来技術のように筐体側に設けられた回動軸用の軸受け孔内に固定的に嵌合されているのではなく、係る遊動間隙の範囲内おいて自在に移動可能な構造となっている。また、図(3b)に示されるように、回動保持部90もその周囲に遊動間隙を有しており、開口部11の内部において移動可能な構造となっている。
【0038】
なお、本実施例1では、開閉蓋20が開口部11にぴったりと嵌合されており、かつ係止爪80によって開閉蓋20が開口部11の壁面にロックされているため、上述のように回動軸30と軸受け部50との嵌合が緩やかであっても、開閉蓋20がガタツクことはなく、また、開閉蓋20が開口部11から外れ落ちるおそれもない。
【0039】
次に、開閉蓋20を開く際の動作について、図4および図5を参照しつつ説明を行なう。なお、図4および図5は、前述の断面図(3b)を基にした、あくまでも便宜上の動作説明図であり、製図法的には正確な断面図ではないことを予め記述しておく。
【0040】
先ず、開閉蓋20を開く際には、その回動軸30が設けられている側の端部を指などで押下する。前述のように、回動軸30は、筐体側の軸受け機構に対して遊動自在な構造となっているので、開閉蓋20の回動軸側の端部は、開口部11内部の支点70を梃子動作の支点として、押下された方向に移動する。そして、回動軸30は、軸受け部50の遊動間隙内部において自在に移動し、係る移動の後、図(4a)に示されるように、回動軸30の軸先端部が、軸受け部50の側面に当接されてその移動が係止される。
【0041】
一方、回動保持部90も開閉蓋20の動きに合わせて同様に移動し、その半径が回動軸30の軸径よりも太いため、図(4b)に示されるように、軸受け部50に対し張り出して設けられたテラス状の突出部60の水平面(上面)によって、その下方向への移動が係止される。
【0042】
前述のように、開閉蓋20は、開口部11内の支点70を動作支点として一種の梃子の動作を示すため、力が加えられた回動軸側端部と反対側の端部、すなわち係止爪80が設けられている側の端部には、回動軸側端部と反対方向のモーメントが加わることになる。これによって、開閉蓋20に設けられた係止爪80と筐体10とのロック機構(図示せず)が解除され、図4の各図に示されるように、開閉蓋20の回動軸側端部とは反対側の端部がせりあがる。
【0043】
回動軸30は軸受け部50の遊動間隙内において遊動自在な構造であるので、開閉蓋20の開度がさらに増加すると、図(5a)に示すように、今度は後方(図(5a)の向かって左側)に移動することができる。また、回動保持部90は、図(5b)に示すように、突出部60の水平面上を回転するように動き開閉蓋20の円滑な開放動作を助長する。この結果、開閉蓋20は完全に開かれることになる。
【0044】
以上に説明したように、本実施例1においては、開閉蓋20の回動軸30が筐体側の軸受け孔等に固定されることなく、筐体側の軸受け部50に設けられた所定領域内を自在に遊動する。これによって、開閉蓋20の回動軸側端部が開口部11の後部壁と干渉することなく、開閉蓋20の開放動作を円滑に進めることができる。なお、図4或いは5に示すように、開閉蓋20の開いた状態においても、回動軸30の動きは軸受け部50の所定領域内に制限されており、これを逸脱することができないため、開いた状態の開閉蓋20が筐体10から外れて落ちるおそれはない。
【0045】
一方、開閉蓋20を閉める際の動作は、以上に説明した動作と逆の行程を踏むものであって、先ず、開閉蓋20で開口部11を塞ぎ、その後、開閉蓋20の係止爪80が設けられている側の端部を押下することによって、係止爪80と開口部11に設けられたロック機構(図示せず)がロックされ、開閉蓋20が筐体の開口部11に嵌合されることになる。
【0046】
以上に説明したように、本実施例1によれば、主に、開閉蓋の軸に対する軸受け構造の遊動スペースを広く設けることによって、開閉蓋とそれが組み込まれる筐体開口部との隙間を極端に狭くすることが可能となり、筐体のデザイン性が向上すると共に、開閉蓋と筐体との干渉逃げ形状の加工等の処理を省略することができる。
【0047】
また、本実施例1においては、開閉蓋の回動軸と筐体に設けられた軸受け機構との結合構造が、回動軸を筐体側の軸受け孔に挿入する従来の結合構造に較べて柔軟であり、かつ回動軸が回動保持部によって保持されている。それ故、例えば、開閉蓋を開いた状態で開閉蓋に不測の力が加わった場合でも、回動軸の遊動や回動保持部の動きにより加わった応力を分散させることが可能であり、開閉蓋や回動軸の折損・損傷を回避できる可能性を高めることができる。
【実施例2】
【0048】
次に、本発明の他の実施形態である実施例2について、図6ないし図10の添付図面を用いて説明を行なう。なお、本実施例2による開閉蓋用の軸および軸受け構造は、実施例1で説明を行なった軸および軸受け構造を基本とするものであるため、同一もしくは類似の構成要素に関する説明等は省略する。
【0049】
先ず、本実施例2による筐体および該筐体に設けられた開口部、ならびに該開口部に嵌設された開閉蓋の概略を図6の説明図に示す。図(6a)に示す事例では、筐体10の樹脂ケースをそのベース部分(図示せず)に固定した特殊ネジにアクセスするための開口部11が示されている。そして、係るネジの頭部を遮蔽すべく開口部11には開閉蓋20が嵌設されている。
【0050】
次に、図(6a)において破線で囲んだA部、すなわち、開口部11および開閉蓋20の部分に関する拡大図を図(6b)に示す。図(6b)は、開口部11に開閉蓋20が嵌設された状態を透視的に表現したものである。また、図(6a)、(6b)共に、開閉蓋20の端部の両側面に突出して設けられた回動軸30に関しては、その形状および特徴を明確に表現するため実線或いはハッチングで表している。
【0051】
図(6b)に示すように、開口部11に嵌合された開閉蓋20を開くと、開口部11の略中央部に示された円形状の穴の内部に、前述したケース取付け用の特殊ネジの頭部が現れる構造となっている。開閉蓋20は、筐体10と同様の樹脂部材で作られており、図(7b)、(7c)に示すように、その一方の端部近傍の両側面には、その基部(回動軸基部40)が先端部よりも太い軸径を持つように設定された回動軸30が突出して設けられている。
【0052】
回動軸30は、筐体側に設けられた軸受け機構(詳細構造については後述)によって枢支されており、開閉蓋20は、係る回動軸および軸受け機構の双方によって開閉自在な構造となっている。なお、本実施例2における、筐体10、開口部11、および開閉蓋20の、形状や大きさ或いはその設定位置等に関しては、図6に示された事例に限定されるものでないことは言うまでもない。また、図6では、開閉蓋20の端部側面の両側に突設された回動軸の長さがそれぞれ異なっているが、これは、開閉蓋20を筐体10に嵌め込む際の利便性を考慮して設定されたものであり、本発明の実施における本質的な構成要素ではない。
【0053】
因みに、本実施例2において、開閉蓋20は、開口部11の開口面に対して隙間なく嵌合されている。したがって、開閉蓋20を開くには、先ず、開閉蓋20の回動軸30が設けられた側の端部を、指などで押下することにより開閉蓋20の端部を沈降させる。これによって、開口部11の内部に突設された支点70を利用することにより、開閉蓋20の他の端部(図(6b)に示す開閉蓋20の右側端部)が上昇されて開閉蓋20が開くことになる。なお、開閉蓋20の開閉動作の詳細については後述する。
【0054】
続いて、開口部11における軸受け機構、および開閉蓋20の構造の詳細について、図7に基づいて説明を行なう。図(7a)は、開口部11の内部を表した概略斜視図である。同図に示されるように、開口部11の内部において、開閉蓋20の回動軸30が当接される近辺の側壁には軸受け部50が設けられている。
【0055】
軸受け部50は、開口部11の側壁面の一定領域を一定の深さで抉り取って凹部とした壁龕状の構造であっても良いし、或いは、側壁面の一定領域をくり貫いた貫通孔状の構造としても良い。本実施例2においては、開閉蓋20の端部側面の両側に突設された回動軸30が係る凹部内もしくは貫通孔内に嵌合される。
【0056】
軸受け部50は、回動軸30の周囲について十分に広い間隙を設けているので、回動軸30は、軸受け部50の領域内において自在に移動可能な構造となっている。なお、同図では、開口部11の片側の側壁に設けられた軸受け部のみが示されているが、図示されていない反対側の側壁にも同様の軸受け部が設けられていることは言うまでもない。
【0057】
また、開口部11の内部には、前述の支点70の他に突出部60が設けられている。図(2a)からも明らかなように、突出部60は、開口部11の側壁に設けられた軸受け部50に対して、例えば、テラスや露台のように張り出した形で設けられている。
【0058】
次に、開閉蓋20の詳細構造に付いて説明を行なう。図(7b)は、開閉蓋20を背面から示した斜視図である。また、図(7c)は、開閉蓋20の裏面を示した斜視図である。これらの図に示されるように、開閉蓋20の一方の端部近傍の側面には、その両側に突出された回動軸30が設けられている。回動軸30は、基部(回動軸基部40)において、その径が軸先端部よりも太くなっており、回動軸30の軸先端部が前述した軸受け部50内に嵌合されることになる。
【0059】
また、開閉蓋20において、回動軸30が設けられた端部とは反対側の端部に係止爪80が設けられている。係止爪80は、開閉蓋20を閉じた際に、開閉蓋20を筐体の開口部11に固定・係止させるためのロック機構であり、その構造等については通常の開閉蓋のロック機構と同様であるためその説明を省略する。
【0060】
次に、本実施例2による開閉蓋用の軸および軸受け構造の動作例について説明を行なう。先ず、開閉蓋20が閉ざされている状態を図8の説明図に示す。因みに、図(8a)は、前述の図(6b)に示された拡大図におけるA−A’断面を示す図であり、図(8b)は、同じく図(6b)におけるB−B’断面を示す図である。
【0061】
図(8a)に示されるように、回動軸30の軸先端部は、開口部11の側壁に設けられた軸受け部50に収まっており、軸先端部の周囲には十分な広さの遊動間隙が設けられている。したがって、回動軸30は、係る遊動間隙の範囲内おいて自在に移動可能な構造となっている。また、図(8b)に示されるように、回動軸基部40も、開口部11の内部において移動可能な構造となっている。すなわち、本実施例2では、回動軸30が、従来技術のように、筐体側に設けられた回動軸用の軸受け孔内に固定的に嵌合されているのではなく、ある程度の遊動間隙が設けられた軸受け機構に嵌合されている。
【0062】
なお、本実施例2では、開閉蓋20が開口部11にぴったりと嵌合されており、かつ係止爪80によって開閉蓋20が開口部11の壁面にロックされているため、上述のように回動軸30と軸受け部50との嵌合が緩やかであっても、開閉蓋20の閉じられた状態において開閉蓋20がガタツクことはなく、また、開閉蓋20が開口部11から外れ落ちるおそれもない。
【0063】
次に、開閉蓋20を開く際の動作について、図9および図10を参照しつつ説明を行なう。なお、図9および図10は、前述の断面図(8b)を基にした、あくまでも便宜上の動作説明図であり、製図法的には正確な断面図ではないことを予め記述しておく。
【0064】
先ず、開閉蓋20を開く際には、その回動軸側の端部を指などで押下する。前述のように、開閉蓋20の回動軸30は、筐体側に設けられた軸受け機構に対して遊動自在な構造となっているので、開閉蓋20の回動軸側の端部は、開口部11の内部で支点70を梃子動作の支点として、押下された方向に移動する。そして、回動軸30は、軸受け部50の遊動間隙内部において自在に移動し、係る移動の後、図(9a)に示されるように回動軸30の軸先端部が、軸受け部50の側面に当接されてその移動が係止される。
【0065】
一方、回動軸基部40も回動軸30の動作に合わせて移動し、回動軸基部40の軸径が軸先端部の軸径よりも太いため、図(9b)に示されるようにその下方への移動は、軸受け部50に対し張り出して設けられたテラス状の突出部60の水平面(上面)によって係止される。
【0066】
前述のように、開閉蓋20は、開口部11内の支点70を動作支点として一種の梃子の動作を示すため、力が加えられた回動軸側端部と反対側の端部、すなわち係止爪80が設けられている側の端部に、回動軸側端部とは反対方向のモーメントが加わることになる。これによって、開閉蓋20に設けられた係止爪80と、回動筐体10とのロック機構(図示せず)が解除され、図9に示されるように開閉蓋20の回動軸側端部とは反対側の端部がせりあがる。
【0067】
開閉蓋20の開度がさらに増加すると、回動軸30の軸先端部は軸受け部50の遊動間隙内において、その軸半径方向に遊動自在な構造であるので、図(10a)に示すように、今度はその後方(図(10a)の向かって左側)に移動することができる。また、回動軸基部40は、図(10b)に示すように、突出部60の水平面上を回転するように動き開閉蓋20の円滑な開放動作を助長する。この結果、開閉蓋20は完全に開かれることになる。
【0068】
以上に説明したように、本実施例2においては、開閉蓋20に設けられた回動軸30が軸受け孔等に固定されることがなく、筐体側の軸受け部50に設けられた所定領域内を自在に遊動する。このため、図9や図10に示されるように、開閉蓋20の回動軸側端部が開口部11の後部壁と干渉するおそれはなく、開閉蓋20の開放動作を円滑に進めることができる。
【0069】
なお、図9或いは図10に示すように、開閉蓋20の開いた状態においても、回動軸30の軸先端部の動きは、開口部11の側壁に設けられた軸受け部50の内部に制限されており、これを逸脱することができないため、開いた状態の開閉蓋20が筐体10から外れて落ちるおそれはない。
【0070】
一方、開閉蓋20を閉める際の動作は、以上に説明した動作と逆の行程を踏むものであって、先ず、開閉蓋20で開口部11を塞ぎ、その後、開閉蓋20の係止爪80が設けられている側の端部を押下することによって、係止爪80と開口部11に設けられたロック機構(図示せず)がロックされ、開閉蓋20が筐体の開口部11に嵌合される。
【0071】
以上に説明したように、本実施例2によれば、主に、開閉蓋の軸に対する軸受け構造の遊動スペースを大きく設けることによって、開閉蓋とそれが組み込まれる筐体開口部との隙間を極端に狭くすることが可能となり、筐体のデザイン性が向上すると共に、開閉蓋と筐体との干渉逃げ形状加工等を省略することができる。
【0072】
また、本実施例2においては、開閉蓋の回動軸と筐体に設けられた軸受け機構との結合構造が、回動軸を筐体側の軸受け孔に挿入する従来の結合構造に較べて柔軟であるため、例えば、開閉蓋を開いた状態で開閉蓋に不測の力が加わった場合でも、回動軸の軸基部および軸先端部の遊動により加わった応力を分散することで、開閉蓋や回動軸の折損・損傷を回避できる可能性が高まる。
【0073】
なお、本発明は以上に説明した各実施形態に限定されるものではなく、例えば、本発明を構成する各部位の形状や配置、或いはその素材等は、本発明の趣旨を逸脱することなく、現実の実施対応に即して適宜変更ができるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上に説明した本発明の構成は、各種の筐体の開口部に設けられた開閉蓋の回動軸と、同筐体側に設けられた軸受け機構において広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施例1による筐体等の概略を示す説明図である。
【図2】図1に示された開口部11および開閉蓋20の構造を示す斜視図である。
【図3】図(1b)において、開閉蓋20が閉ざされた状態を示す断面図である。
【図4】本実施例において開閉蓋20が開かれる際の動作を説明した図である。
【図5】本実施例において開閉蓋20の開度が増加した際の動作を説明した図である。
【図6】本発明の実施例2による筐体等の概略を示す説明図である。
【図7】図6に示された開口部11および開閉蓋20の構造を示す斜視図である。
【図8】図(6b)において、開閉蓋20が閉ざされた状態を示す断面図である。
【図9】本実施例において開閉蓋20が開かれる際の動作を説明した図である。
【図10】本実施例において開閉蓋20の開度が増加した際の動作を説明した図である。
【図11】本発明において、筐体開口部11の端面13と筐体開口部11内の突出部60の側面62との間に形成される空間14を用いて、開閉蓋20の開閉動作が実現される様子を説明した図である。
【符号の説明】
【0076】
10 … 筐体
11 … 筐体開口部
12 … 筐体開口部側壁
13 … 筐体開口部端面
14 … 空間
20 … 開閉蓋
30 … 回動軸
40 … 回動軸基部
50 … 軸受け部
60 … 突出部
61 … 突出部上面
62 … 突出部側面
70 … 支点
80 … 係止爪
90 … 回動保持部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の開口部に嵌設された開閉蓋において、開閉蓋の端部両側面に突設された回動軸と、回動軸を枢支すべく筐体側に設けられた軸受け機構と、回動を保持する回動保持部とを含む開閉蓋用の軸および軸受け構造であって、
前記軸受け機構は、筐体開口部の側壁に穿かれ、かつ前記回動軸の周囲に十分に広い間隙が設けられた軸受け用の貫通孔もしくは壁龕で構成される軸受け部と、軸受け部に対して張り出して設けられた突出部とを含み、
前記開閉蓋が開かれる際に、前記回動軸は、前記軸受け部内を回動するにあたっては回転運動の中心軸が移動、すなわち所謂「ぶれ」を伴う回転動作を行い、
前記開閉蓋の開度が増加するに伴い、前記回動保持部は、前記突出部の水平面によって係止されることを特徴とする開閉蓋用の軸および軸受け構造。
【請求項2】
筐体の開口部に嵌設された開閉蓋において、開閉蓋の端部両側面に突設された回動軸と、回動軸を枢支すべく筐体側に設けられた軸受け機構と、を含む開閉蓋用の軸および軸受け構造であって、
前記回動軸は、その根元に軸径が先端部よりも太い回動軸基部を有し、
前記軸受け機構は、筐体開口部の側壁に穿かれ、かつ前記回動軸の周囲に十分に広い間隙が設けられた軸受け用の貫通孔もしくは壁龕で構成される軸受け部と、軸受け部に対して張り出して設けられた突出部とを含み、
前記開閉蓋が開かれる際に、前記回動軸は、前記軸受け部内を回動するにあたっては回転運動の中心軸が移動、すなわち所謂「ぶれ」を伴う回転動作を行い、
前記開閉蓋の開度が増加するに伴い、前記回動軸基部は、前記突出部の水平面によって係止されることを特徴とする開閉蓋用の軸および軸受け構造。
【請求項3】
前記軸受け部に対して張り出して設けられた突出部は、
軸受け部を一部塞ぐような形態で、その上面が筐体開口部の側壁と直交した略水平な面となるよう、かつその一方の側面は、該側面と筐体開口部の端面とで、その間に空間を生ずるように配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の開閉蓋用の軸および軸受け構造。
【請求項4】
筐体に設けられた開口部と該開口部に嵌設された開閉蓋の双方について、その大きさおよび形状が近似し、前記開口部と開閉蓋との間隙が極めて微小であることを特徴とする請求項1または2に記載の開閉蓋用の軸および軸受け構造。
【請求項1】
筐体の開口部に嵌設された開閉蓋において、開閉蓋の端部両側面に突設された回動軸と、回動軸を枢支すべく筐体側に設けられた軸受け機構と、回動を保持する回動保持部とを含む開閉蓋用の軸および軸受け構造であって、
前記軸受け機構は、筐体開口部の側壁に穿かれ、かつ前記回動軸の周囲に十分に広い間隙が設けられた軸受け用の貫通孔もしくは壁龕で構成される軸受け部と、軸受け部に対して張り出して設けられた突出部とを含み、
前記開閉蓋が開かれる際に、前記回動軸は、前記軸受け部内を回動するにあたっては回転運動の中心軸が移動、すなわち所謂「ぶれ」を伴う回転動作を行い、
前記開閉蓋の開度が増加するに伴い、前記回動保持部は、前記突出部の水平面によって係止されることを特徴とする開閉蓋用の軸および軸受け構造。
【請求項2】
筐体の開口部に嵌設された開閉蓋において、開閉蓋の端部両側面に突設された回動軸と、回動軸を枢支すべく筐体側に設けられた軸受け機構と、を含む開閉蓋用の軸および軸受け構造であって、
前記回動軸は、その根元に軸径が先端部よりも太い回動軸基部を有し、
前記軸受け機構は、筐体開口部の側壁に穿かれ、かつ前記回動軸の周囲に十分に広い間隙が設けられた軸受け用の貫通孔もしくは壁龕で構成される軸受け部と、軸受け部に対して張り出して設けられた突出部とを含み、
前記開閉蓋が開かれる際に、前記回動軸は、前記軸受け部内を回動するにあたっては回転運動の中心軸が移動、すなわち所謂「ぶれ」を伴う回転動作を行い、
前記開閉蓋の開度が増加するに伴い、前記回動軸基部は、前記突出部の水平面によって係止されることを特徴とする開閉蓋用の軸および軸受け構造。
【請求項3】
前記軸受け部に対して張り出して設けられた突出部は、
軸受け部を一部塞ぐような形態で、その上面が筐体開口部の側壁と直交した略水平な面となるよう、かつその一方の側面は、該側面と筐体開口部の端面とで、その間に空間を生ずるように配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の開閉蓋用の軸および軸受け構造。
【請求項4】
筐体に設けられた開口部と該開口部に嵌設された開閉蓋の双方について、その大きさおよび形状が近似し、前記開口部と開閉蓋との間隙が極めて微小であることを特徴とする請求項1または2に記載の開閉蓋用の軸および軸受け構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−238675(P2012−238675A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105662(P2011−105662)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(591165252)キング通信工業株式会社 (22)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(591165252)キング通信工業株式会社 (22)
【Fターム(参考)】
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