説明

開閉部材制御装置及び開閉部材の制御方法

【課題】本発明の目的は、車両システムに搭載される安価な挟み込み防止機能付きスマートモータを利用することにより、開閉部材の異常を検出して報知することができる開閉部材制御装置及び開閉部材の制御方法を提供することにある。
【解決手段】開閉部材11と、モータとを備えた開閉部材制御装置1に関する。
開閉部材制御装置1には、複数の異なる異常を検知し、検知信号を送信する異常検知手段と、スイッチ操作信号を受信してモータ20を駆動制御する駆動信号を送信するとともに、検知信号を受信して異常の種類に応じて異なる異常報知信号を発生させる報知信号発生手段が備えられ、異常報知信号を送信するモータ制御手段と、モータ制御手段より駆動信号若しくは異常報知信号を受信して、モータ20を駆動させるモータ駆動回路と、が備えられ、モータ駆動回路は、異常報知信号の種類に応じてモータ20の駆動のための出力パターンを切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は開閉部材制御装置に係り、特に開閉部材の異常を検出して報知することが可能な開閉部材制御装置及び開閉部材の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の開閉部材制御装置において、開閉部材制御システムにスイッチ異常、センサ異常等のフェールが発生した場合には、様々な措置がとられている。
例えば、このような異常が検出された場合に、開閉部材制御装置は、システム未初期化状態(マニュアル作動のみ許可)に移行するように構成されている。
また、このように、システム未初期化状態に移行しても、作動中は、速度及び音は通常通りであるため、ユーザに認識されづらいという問題点があった。
このため、フェールを検知した際に、異常発生を何らかの方法でユーザに報知するための技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−336422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術には、パワーウインドウ用スイッチ装置が開示されている。
このパワーウインドウ用スイッチ装置は、パワーウインドウの開閉異常を検知して異常信号を出力する検知部と、この検知部から出力される異常信号を検出してアクチュエータの駆動信号を出力する制御部と、この制御部から出力される駆動信号によって駆動される振動装置とを有して構成されている。
ウインドウが故障すると、振動装置によりパワーウインドウ用スイッチを振動させ、ユーザの操作中の指先に当該振動を伝達することによって故障を報知する。
また、故障したウインドウに応じて、振動装置の振動レベル及び振動モードを変更することにより、故障したウインドウ及びその故障の程度が特定できるように構成されている。
【0005】
また、パワーウインドウモータECUがフェールを検出した場合、パワーウインドウスイッチに搭載しているLEDの点灯パターンを切り換えることでフェール状態を通知している。
しかし、特許文献1の技術及びLEDの点灯パターンを変更する技術では、振動を起こすためのシステム及びLEDを点灯させるためのシステム等の専用のシステムが必要となるため、車両システムのコストが高騰するという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、上記各問題点を解決することにあり、車両システムに搭載される安価な挟み込み防止機能付きスマートモータを利用することにより、開閉部材の異常を検出して報知することができる開閉部材制御装置及び開閉部材の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、本発明に係る開閉部材制御装置によれば、車両に配設される開閉部材と、該開閉部材を開閉駆動するとともに前記開閉部材を駆動するためのスイッチ操作信号に基づいて作動するモータとを備えた開閉部材制御装置であって、前記開閉部材制御装置には、複数の異なる異常を検知し、検知信号を送信する異常検知手段と、前記スイッチ操作信号を受信して前記モータを駆動制御する駆動信号を送信するとともに、前記検知信号を受信して前記異常の種類に応じて異なる異常報知信号を発生させる報知信号発生手段が備えられ、前記異常報知信号を送信するモータ制御手段と、該モータ制御手段より前記駆動信号若しくは前記異常報知信号を受信して、前記モータを駆動させるモータ駆動回路と、が備えられ、前記モータ駆動回路は、前記異常報知信号の種類に応じて前記モータの駆動のための出力パターンを切り換えることにより解決される。
【0008】
また、上記課題は、本発明に係る開閉部材の制御方法によれば、車両に配設される開閉部材と、該開閉部材を開閉駆動するとともに前記開閉部材を駆動するためのスイッチ操作信号に基づいて作動するモータとを備えた開閉部材の制御方法であって、前記スイッチ操作信号に基づき前記モータを制御するモータ制御手段が、各々異なる異常を検知する複数の異常検知手段が異常を検知した際発信する検知信号を受信するとともに、前記異常の種類に応じて異なる異常報知信号を発生させる報知信号発信手段により前記異常報知信号を発生させて、前記モータ制御手段より各種信号を受信して前記モータを駆動させるモータ駆動回路に、前記異常報知信号を送信し、前記モータ駆動回路が、前記異常報知信号に基づいて出力パターンを切り換えて前記モータを駆動することにより解決される。
【0009】
このように、本発明においては、各々異なる異常を検知する複数の異常検知手段が異常を検知した際発信する検知信号を受信することにより、異常の種類に応じて異なる異常報知信号を発生させてモータ駆動回路に送信する。
モータ駆動回路は、この異常報知信号に基づいて出力パターンを切り換えてモータを駆動する。
よって、異常の種類に応じた(異常報知信号の種類に応じた)パターンでモータを駆動することができるため、ユーザに開閉部材制御装置に異常が発生したことを認知させることが可能となるとともに、その発生した異常の種類をもまた同時に認知させることができる。
また、本発明によれば、どのような異常が発生したのかということは、モータの駆動状態により報知することができる。
このモータ駆動回路は、操作スイッチによりモータを駆動させるために、開閉部材制御装置に元々備えられているものである。
よって、振動装置やLED点灯装置等の特別な装置を追加することなく、従来より備えられる機構を利用して発生した異常の報知を実行することができるため、コスト面においても非常に有利である。
【0010】
また、請求項1に記載の発明において、前記モータ駆動回路は、PWM制御にて前記モータを駆動し、駆動時には異なる前記異常報知信号に基づき、通常時駆動周波数と異常時駆動周波数の時間的割合を切り替えることで前記モータが発する異なる音のパターンを発生させるよう構成されていると好適である。
【0011】
更に、請求項1に記載の発明において、前記モータ駆動回路は、PWM制御にて前記モータを駆動し、駆動時には異なる前記異常報知信号に基づいて複数のデューティ比で前記モータを駆動するとともに、前記デューティ比の時間的割合を切り替えることで前記開閉部材の異常の種類に応じた移動パターンで前記モータを駆動するよう構成されていると好適である。
【0012】
また、請求項3に記載の発明において、前記モータ駆動回路は、PWM制御にて前記モータを駆動し、前記出力パターンは、前記モータの駆動周波数若しくは前記モータのデューティ比の時間的割合のパターンを変化させることにより作成されると好適である。
【0013】
つまり、駆動周波数を変更するパターンであれば、例えば、PWMの周波数を通常周波数(例:20kHz)から、通常周波数(例:20kHz)と異常対応周波数(例:5kHz)の時間的長さを組み合わせることにより作成されたパターンを作成して、異常が生じた場合には、このパターンに切り換える。
この時間的長さとその組み合わせを変更することによって、必要な数だけ(報知したい異常の種類数だけ)パターンを作成することができる。
つまり、通常周波数(例:20kHz)が短く、異常対応周波数(例:5kHz)が長いパターン、通常周波数(例:20kHz)が長く、異常対応周波数(例:5kHz)が短いパターンというように、パターンを振り分けるとよい。
このように、時間の長短比率を変更して各種異常に対応した周波数タイプを設定すると好適に本発明に適用できる。
なお、周波数5kHzのときには、可聴の磁気音が発生する。
つまり、上記の通りパターンを変更すると、磁気音の発生パターンが異なることとなる。
その結果、発生した異常の種類によって、モータの作動音のパターンが変わることとなるので、発生した異常の種類(状態)を聴覚により明確に判別することができる。
【0014】
また、デューティを変更するパターンであれば、PWMのデューティ比率の組み合わせを変更する。
例えば、デューティ100%の時間が短く、デューティ50%の時間が長いパターンを組み合わせて振り分ける。
具体的には、デューティ100%の時間:デューティ50%の時間=1:5、デューティ100%の時間:デューティ50%の時間=5:1、・・・というように、パターンを作成する。
このように、時間の長短比率を変更して異常に対応したデューティタイプを設定すると好適に本発明に適用できる。
以上のように、デューティを変更すると、モータの駆動速度が変わるため、パターンによって、モータの駆動リズムが変わる。
つまり、異常の種類(状態)により、開閉部材の移動状態が変わる(換言すれば、異なった所定のリズムをもって開閉部材が移動することとなる。
よって、異常の種類を視覚により判別することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、各々異なる異常を検知する複数の異常検知手段が異常を検知した際発信する検知信号を受信することにより、異常の種類に応じて異なる異常報知信号を発生させてモータ駆動回路に送信し、このモータ駆動回路は、この異常報知信号に基づいて出力パターンを切り換えてモータを駆動する。
よって、異常の種類に応じたパターンでモータを駆動することができるため、ユーザに開閉部材制御装置に異常が発生したことを認知させることが可能となるとともに、その発生した異常の種類をもまた同時に認知させることができる。
また、本発明によれば、どのような異常が発生したのかということは、モータの駆動状態により報知することができる。
よって、振動装置やLED点灯装置等の特別な装置を追加することなく、従来より備えられる機構を利用して発生した異常の報知を実行することができるため、安価かつ容易にシステムを構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する構成は本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
本実施形態は、車両システムに搭載される安価な挟み込み防止機能付きスマートモータを利用することにより、開閉部材の異常を検出して報知することができる開閉部材制御装置に関するものである。
【0017】
図1乃至図6は、本発明の一実施形態を示すものであり、図1はパワーウインドウ装置の説明図、図2は図1のパワーウインドウ装置の電気構成図、図3はフェール報知処理(周波数変更タイプ)を示すフローチャート、図4は周波数パターンを示すタイミングチャート、図5はフェール報知処理(デューティ変更タイプ)を示すフローチャート、図6はデューティパターンを示すタイミングチャートである。
【0018】
以下に本発明を車両Sのパワーウインドウ装置に適用した一実施形態について説明する。
図1に本実施形態に係るパワーウインドウ装置1の説明図、図2にその電気構成図を示す。
本実施形態に係るパワーウインドウ装置1は、車両Sのドア10に配設される開閉部材としてのウインドウガラス11をモータ20の回転駆動により昇降(開閉)作動させるものである。
パワーウインドウ装置1は、ウインドウガラス11を開閉駆動する昇降機構2と、昇降機構2の作動を制御するための制御部3と、乗員が作動を指令するための操作スイッチ4を主要構成要素としている。
【0019】
本実施形態においては、ウインドウガラス11は不図示のレールに沿って上方の全閉位置と下方の全開位置との間を昇降動作する。
本実施形態に係る昇降機構2は、ドア10に固定された減速機構を有するモータ20と、モータ20に駆動される扇形状のギヤ21aを備えた昇降アーム21と、昇降アーム21とクロスして枢支される従動アーム22と、ドア10に固定された固定チャンネル23およびウインドウガラス11と一体のガラス側チャンネル24とを主要構成要素としている。
【0020】
本実施形態に係るモータ20は、制御部3から電力供給を受けることにより、回転子の巻線に通電され、これにより回転子とマグネットを有する固定子との間で磁気吸引作用が生じて回転子が正逆回転するように構成されている。本例の昇降機構2では、モータ20の回動に応じて昇降アーム21および従動アーム22が揺動すると、これらの各端部が各チャンネル23,24により摺動規制を受け、Xリンクとして駆動し、ウインドウガラス11を昇降作動させる。昇降機構2は、本発明の駆動部に相当する。
【0021】
本実施形態に係るモータ20には、回転を検出するための回転検出装置としてのホールIC25が備えられている。ホールIC25は、モータ20の回転と同期したパルス信号(速度検出信号,回転速度信号等)をコントローラ31へ出力するものである。
本実施形態に係る回転検出装置25は、モータ20の出力軸と共に回動するマグネットの磁気変化を検出するように構成されている。
このような構成により、ホールIC25は、モータ20の回転に同期したパルス信号を出力する。
【0022】
すなわち、パルス信号は、ウインドウガラス11の所定移動量毎もしくはモータ20の所定回転角毎に出力される。
これにより、ホールIC25は、モータ20の回転速度に略比例するウインドウガラス11の移動に応じた信号を出力可能である。
コントローラ31は、このパルス信号によって、ウインドウガラス11の昇降位置を算出する。
また、このコントローラ31は、パルス信号の間隔によってモータ20の回転速度、またはこれに対応するウインドウガラス11の昇降速度を算出することができる。
【0023】
なお、本実施形態においては、回転検出のためにホールIC25を用いたものを採用しているが、これに限らず、モータ20の回転速度を検出することができれば、エンコーダ等の公知の検出装置を採用してもよいし、モータ20の回転時のトルクリップルを検出して回転速度を検出するようにしてもよい。
【0024】
本実施形態に係る制御部3は、コントローラ31と、モータ駆動回路32と、ホールIC25と、EEPROM33と、電源回路34と、入力回路35と、通信インターフェース36とを有して構成されている。
コントローラ31及びモータ駆動回路32には、車両に搭載される不図示のバッテリから作動に必要な電力が電源回路34を経て供給される。
【0025】
本実施形態に係るコントローラ31は、CPU,ROM,RAM等の不図示のメモリ等を備えるマイクロコンピュータで構成されている。
このコントローラ31が、報知信号発生手段として機能する。
EEPROM33は、制御に必要なデータが格納されており、コントローラ31は、このEEPROM33から必要なデータを読み出して各種制御用の演算を実行する。
入力回路35及び通信インターフェース36は、バスを介してコントローラ31に接続されており、外部からの信号の授受を媒介する。
なお、これに限らず、コントローラ31をDSPやゲートアレイで構成してもよい。
【0026】
コントローラ31は、通常時、操作スイッチ4からの操作信号に基づいてモータ駆動回路32を介してモータ20を正逆回転させて、ウインドウガラス11を開閉動作させる。
また、異常の検知信号を受信すると、報知信号発生手段により、異常報知信号を発生させて、モータ20を駆動させるための信号をモータ駆動回路32へ送信する。
モータ駆動回路32側では、その異常報知信号の種類に応じたモータ駆動パターン(周波数パターン又はデューティ比率パターン)にパターンを切り換えて、通常時とは異なるモータ20の駆動を行う。
【0027】
なお、コントローラ31は、ホールIC25からパルス信号を受け取り、このパルス信号に基づいてウインドウガラス11の上端部と窓枠との間における異物の挟み込みの検出が可能となっている。異物の挟み込みが検出された場合には、コントローラ31は、モータ駆動回路32を介してモータ20を開方向へ回転させて、ウインドウガラス11を開駆動する。
【0028】
また、コントローラ31には、入力回路35を介して操作スイッチ4が接続されており、この入力回路35を介して操作スイッチ4からの駆動信号がコントローラ31に入力される。
この操作スイッチ4からのウインドウ操作信号により、コントローラ31は、操作スイッチ4の操作状態を感知することができる。
更に、コントローラ31には、通信インターフェース36及びメインボディECU5を介してカーテシスイッチ6及びキー連動スイッチ7が接続されている。
このカーテシスイッチ6からは、ドア開閉信号が発信され、このドア開閉信号に基づいて、コントローラ31は、ドア10の開閉状態を判断することができる。
【0029】
本実施形態に係るモータ駆動回路32は、FET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)を備えるICによって構成されており、このFETにより、モータ20をPWM(Pulse Width Modulation)駆動させる。
このモータ駆動回路32は、操作スイッチ4より送信される駆動信号を受けてコントローラ31が発信する信号が入力されると、モータ20への電力供給の極性を切換えている。
【0030】
すなわち、モータ駆動回路32は、コントローラ31から正回転指令信号を受けたときは、モータ20を正回転方向に回転させるようにモータ20へ電力を供給し、コントローラ31から逆回転指令信号を受けたときは、モータ20を逆回転方向に回転させるようにモータ20へ電力を供給する。
【0031】
また、異常が発生した場合には、異常報知信号を受けて、モータ20を駆動制御する。
つまり、異常が発生した場合には、コントローラ31は、異常の検知信号を受信し、異常報知信号を発生させてモータ駆動回路32へ送信する。
そして、モータ駆動回路32は、この異常報知信号に応じたモータ駆動パターン(周波数パターン又はデューティ比率パターン)にパターンを切り換えて、モータ20を駆動させる。
【0032】
つまり、コントローラ31は、異常報知信号に従って、入力信号のDCレベルを切り換えてモータ制御回路32に送信し、モータ駆動回路32は、その入力信号の大きさに応じてモータ駆動周波数又はデューティ比率のパターン(サイクル)を変更してモータ20を駆動制御する。
なお、モータ駆動回路32がコントローラ31内に組み込まれた構成であってもよい。
【0033】
また、コントローラ31は、入力されるパルス信号からパルス信号の立上がり部または立下り部(パルスエッジ)を検出し、このパルスエッジの間隔(周期、パルス幅)に基づいてモータ20の回転速度(回転周期)を算出すると共に、各パルス信号の位相差に基づいてモータ20の回転方向を検出する。
【0034】
つまり、コントローラ31は、モータ20の回転速度(回転周期)に基づいてウインドウガラス11の移動速度を間接的に算出し、モータ20の回転方向に基づいてウインドウガラス11の移動方向を特定している。
また、コントローラ31は、パルスエッジをカウントしている。このパルスカウント値は、ウインドウガラス11の開閉動作に伴って加減算される。コントローラ31は、このパルスカウント値の大きさによってウインドウガラス11の開閉位置を特定する。
【0035】
本実施形態に係る操作スイッチ4は、2段階操作可能な揺動型スイッチ等で構成され、開スイッチ,閉スイッチ及びオートスイッチを有している。この操作スイッチ4を乗員が操作することにより、コントローラ31へウインドウガラス11を開閉動作させるための指令信号が出力される。
【0036】
具体的には、操作スイッチ4は、一端側へ1段階操作されると開スイッチがオンされ、ウインドウガラス11を通常開動作(すなわち操作している間だけ開動作)させるための通常開指令信号をコントローラ31へ出力する。また、操作スイッチ4は、他端側へ1段階操作されると閉スイッチがオンされ、ウインドウガラス11を通常閉動作(すなわち操作している間だけ閉動作)させるための通常閉指令信号をコントローラ31へ出力する。
【0037】
また、操作スイッチ4は、一端側へ2段階操作されると開スイッチ及びオートスイッチが共にオンされ、ウインドウガラス11をオート開動作(すなわち操作を止めても全開位置まで開動作)させるためのオート開指令信号をコントローラ31へ出力する。また、操作スイッチ4は、他端側へ2段階操作されると閉スイッチ及びオートスイッチが共にオンされ、ウインドウガラス11をオート閉動作(すなわち操作を止めても全閉位置まで閉動作)させるためのオート閉指令信号をコントローラ31へ出力する。
【0038】
コントローラ31は、操作スイッチ4から通常開指令信号を受けている間中(操作スイッチ4が操作されている間中)、モータ駆動回路32を介してモータ20を駆動し、ウインドウガラス11を通常開動作させる。一方、コントローラ31は、操作スイッチ4から通常閉指令信号を受けている間中(操作スイッチ4が操作されている間中)、モータ駆動回路32を介してモータ20を駆動し、ウインドウガラス11を通常閉動作させる。
【0039】
また、コントローラ31は、操作スイッチ4からオート開指令信号を受けると、モータ駆動回路32を介してモータ20を駆動し、ウインドウガラス11を全開位置までオート開動作させる。一方、コントローラ31は、操作スイッチ4からオート閉指令信号を受けると、モータ駆動回路32を介してモータ20を駆動し、ウインドウガラス11を全閉位置までオート閉動作させる。
【0040】
更に、本実施形態においては、コントローラ31は、各種異常(以下「フェール」と記す)の有無を監視し、各種フェールを認識すると、そのフェールの種類(状態)に応じて、FETによってPWM駆動(Pulse Width Modulation:以下、単に「PWM」と記す)する際に、PWMの周波数を通常周波数から様々に変化させる。
この結果、フェールの種類によりモータ20の駆動音パターンが変化し、ユーザは異常が生じたことを認知することができるとともに、その駆動音パターンにより、発生した異常の種類を特定することができる。
【0041】
本実施形態においては、監視するフェールの種類として、スイッチ異常(操作スイッチ4の故障)、ホールセンサ異常(モータ20の回転を検出するホールIC25が正常に作動していない)、電圧異常(規定よりも低電圧か高電圧がモータ20やモータ駆動回路32に印加される)、イニシャルフェール(EEPROM33から正常に値が読み出せない)、通信異常(車両S本体のメインボディECU5との通信が正常に行われない)などの項目を例示した。
【0042】
また、本実施形態においては、フェールが発生した場合には、例えば、PWMの周波数を通常周波数(20kHz)から、通常(20kHz)と異常対応周波数(1〜5kHz)の時間的長さを組み合わせることにより、各種フェールの種類に対応したパターンを作成する。
その結果、異常の種類によって、モータ20の作動音のパターンが変わるので、フェールの種類(状態)を判別することができる。
【0043】
これによって、特別な報知機器(振動装置やLEDなど)を追加することなく、フェールの発生のみならず、フェールの種類をもまたユーザに認知させることが可能となる。
なお、FETのPWM周波数を長くすると人に聞こえる音が発生する。
その際、デューティ比を変えなければモータの駆動速度は変化せず、モータの作動音のみが変化することとなる。
【0044】
また、上記の方法とは異なり、PWMの異なるデューティ比(例えば、100%と50%)の出力時間(例えば、1:1、1:4、4:1、1:10等)の長さのパターンを設け、フェールの種類に応じて対応するパターンでモータ20を駆動すると、ユーザは動きのパターンによってフェールの種類を特定することができる。
【0045】
次いで、本実施形態に係るパワーウインドウ装置1におけるフェール報知処理について説明する。
本実施形態に係るパワーウインドウ装置1では、各種フェールの有無を監視し、各種フェールを認識すると、そのフェールの種類(状態)に応じて、FETによってPWM駆動(Pulse Width Modulation)する際に、PWMの周波数又はデューティ比を通常周波数から様々に変化させることによりフェールの発生及び発生したフェールの種類をユーザに報知する。
この処理は、コントローラ31に搭載されたCPUにより実行される。
【0046】
図3により、周波数変更タイプの例を説明する。
本実施形態による処理においては、3ms毎にフェール検知処理をNo.1から順次実行できるように構成されている。
まず、ステップS1でフェール検知処理No.1が終了しているか否かを判定する。
本実施形態においてフェール検知処理No.1は、操作スイッチ異常の検知処理である。
これは、操作スイッチ4の故障の有無の検知である。
ステップS1で、フェール検知処理No.1が終了していないと判定した場合(ステップS1:No)、ステップS2でスイッチ異常検出処理を行う。
【0047】
次いで、ステップS3でフェールが検出されたか否かを判定する。
ステップS3でフェールが有ると判定した場合(ステップS3:Yes)には、ステップS4で周波数をAタイプに変更する。
つまり、ステップS4で、周波数がAタイプとなるように設定された異常報知信号を発生させる。
【0048】
周波数のタイプとは、例えば、図4に示すように、PWMの周波数を通常周波数(20kHz)から、通常(20kHz)と異常対応周波数(5kHz)の時間的長さを組み合わせることにより作成されたパターンであり、各種フェールの種類に対応したパターンが作成される。
【0049】
つまり、図4(a)に示すように、通常周波数(20kHz)が短く、異常対応周波数(5kHz)が長いパターン、図4(b)に示すように、通常周波数(20kHz)が長く、異常対応周波数(5kHz)が短いパターンというように、パターンを振り分ける。
本例では、図4(a)においては、通常周波数(20kHz):異常対応周波数(5kHz)=1:5、図4(b)においては、通常周波数(20kHz):異常対応周波数(5kHz)=5:1にて、パターンを作成した2例を示した。
このように、時間の長短比率を変更してフェールに対応した周波数タイプを設定するとよい。
【0050】
なお、周波数5kHzのときには、可聴の磁気音が発生する。
つまり、図4(a)と図4(b)とでは、磁気音の発生パターンが異なることとなる。
その結果、フェールの種類によって、モータ20の作動音のパターンが変わることとなるので、フェールの種類(状態)を聴覚により判別することができる。
【0051】
次いで、図3にもどり、ステップS5にて、フェール検知処理No.1の終了フラグをセットして、ステップS6で、PWM出力処理を行う。
つまり、周波数Aタイプに設定された異常報知信号をモータ駆動回路32へと送信する。
また、ステップS3でフェールが無いと判定した場合(ステップS3:No)、処理はステップS5に進み、フェール検知処理No.1の終了フラグをセットして、ステップS6で、PWM出力処理を行う。
【0052】
なお、ステップS3でフェール有りと判定されている場合には、ステップS4で周波数をAタイプに変更しているため、ステップS6で出力されるのは、変更されたAタイプの周波数パターンである。
しかし、ステップS3でフェール無しと判定されている場合には、処理はステップS5に進むため(つまり、ステップS4での周波数パターンの変更処理が行われないため)、ステップS6で出力されるのは、ノーマルの周波数パターンである。
【0053】
次いで、ステップS1で、フェール検知処理No.1が終了していると判定した場合(ステップS1:Yes)、ステップS7で、フェール検知処理No.2が終了しているか否かを判定する。
ステップS1でフェール検知処理No.1が終了している場合には、フェール検知処理No.1終了フラグがセットされているため、このフラグがセットされているか否かでフェール検知処理No.1が終了しているか否かを判定することができる。
同様に、各種終了フラグの有無を確認することにより、各検知処理が終了しているか否かを判定することができる。
【0054】
本実施形態においてフェール検知処理No.2は、ホールセンサ異常の検知処理である。
これは、モータ20の回転を検出するホールIC25が正常に作動しているか否かの検知である。
ステップS7で、フェール検知処理No.2が終了していないと判定した場合(ステップS7:No)、ステップS8でホールセンサ異常検出処理を行う。
【0055】
次いで、ステップS9でフェールが検出されたか否かを判定する。
ステップS9でフェールが有ると判定した場合(ステップS9:Yes)、ステップS10で周波数をBタイプに変更する。
つまり、ステップS10で、周波数がBタイプとなるように設定された異常報知信号を発生させる。
これは、前述の通り、PWMの周波数を通常周波数(20kHz)から、通常(20kHz)と異常対応周波数(5kHz)の時間的長さを組み合わせることにより、各種フェールの種類に対応するように作成されたパターンである。
【0056】
次いで、ステップS11にて、フェール検知処理No.2の終了フラグをセットして、ステップS6で、PWM出力処理を行う。
つまり、周波数Bタイプに設定された異常報知信号をモータ駆動回路32へと送信する。
また、ステップS9でフェールが無いと判定した場合(ステップS9:No)、処理はステップS11に進み、フェール検知処理No.2の終了フラグをセットして、ステップS6で、PWM出力処理を行う。
【0057】
なお、ステップS9でフェール有りと判定されている場合には、ステップS10で周波数をBタイプに変更しているため、ステップS6で出力されるのは、変更されたBタイプの周波数パターンである。
しかし、ステップS9でフェール無しと判定されている場合には、処理はステップS11に進むため(つまり、ステップS10での周波数パターンの変更処理が行われないため)、ステップS6で出力されるのは、ノーマル若しくは前に設定された(この場合はAタイプの)周波数パターンである。
【0058】
次いで、ステップS7で、フェール検知処理No.2が終了していると判定した場合(ステップS7:Yes)、次のフェール検知処理へと進んで行く。
これらの処理は、フェール検知処理No.1及びフェール検知処理No.2と同様であるため、説明は省略する。
これは、監視したいフェールの数だけ処理される。
【0059】
例えば、電圧異常(規定よりも低電圧か高電圧がモータ20やモータ駆動回路32に印加される)、イニシャルフェール(EEPROM33から正常に値が読み出せない)、通信異常(車両S本体のメインボディECU5との通信が正常に行われない)等のフェールを監視するとよい。
【0060】
本実施形態においては、最後のフェール検知処理を通信異常の検知処理として例を示した。
これは、車両S本体のメインボディECU5との通信が正常に行われない異常である。
各種検知処理が終了したことを確認すると、ステップS12で、通信異常検出処理を行う。
【0061】
次いで、ステップS13でフェールが検出されたか否かを判定する。
ステップS13でフェールが有ると判定した場合(ステップS13:Yes)、ステップS14で周波数をnタイプ(n番目のアルファベットに対応する周波数タイプであり、監視するフェールの数により変化する。つまり、監視するフェールが5種類の場合には、n=5となり、周波数Eタイプとなる)に変更する。
つまり、ステップS14で、周波数がnタイプとなるように設定された異常報知信号を発生させる。
【0062】
これは、前述の通り、PWMの周波数を通常周波数(20kHz)から、通常(20kHz)と異常対応周波数(5kHz)の時間的長さを組み合わせることにより、各種フェールの種類に対応するように作成されたパターンである。
【0063】
次いで、ステップS15にて、フェール検知処理を初期化して、ステップS6で、PWM出力処理を行う。
つまり、周波数nタイプに設定された異常報知信号をモータ駆動回路32へと送信する。
また、ステップS13でフェールが無いと判定した場合(ステップS13:No)、処理はステップS15に進み、フェール検知処理を初期化して、ステップS6で、PWM出力処理を行う。
【0064】
なお、ステップS13でフェール有りと判定されている場合には、ステップS14で周波数をnタイプに変更しているため、ステップS6で出力されるのは、変更されたnタイプの周波数パターンである。
しかし、ステップS13でフェール無しと判定されている場合には、処理はステップS15に進むため(つまり、ステップS14での周波数パターンの変更処理が行われないため)、ステップS6で出力されるのは、ノーマルの周波数若しくは直近に設定された周波数パターンである。
【0065】
また、初期化とは、フェール検知処理No.1〜フェール検知処理No.(n−1)までの終了フラグを全てリセットし、周波数パターンをノーマルにリセットする処理である。
つまり、ステップS15で初期化された後は、処理はステップS1に戻って、フェール検知処理No.1から順に再度処理が繰り返される。
なお、本実施形態においては、各フェール検知処理は、3msで実行されるよう構成されている。
つまり、本実施形態においては、3ms毎に順次、フェール検知処理をNo.1から順次実行できるように構成されている。
【0066】
次いで、図5により、PWMデューティ変更タイプの例を説明する。
本実施形態による処理においては、3ms毎に順次、フェール検知処理をNo.1から順次実行できるように構成されている。
まず、ステップS1でフェール検知処理No.1が終了しているか否かを判定する。
本実施形態においてフェール検知処理No.1は、操作スイッチ異常の検知処理である。
これは、操作スイッチ4の故障の有無の検知である。
ステップS1で、フェール検知処理No.1が終了していないと判定した場合(ステップS1:No)、ステップS2でスイッチ異常検出処理を行う。
【0067】
次いで、ステップS3でフェールが検出されたか否かを判定する。
ステップS3でフェールが有ると判定した場合(ステップS3:Yes)、ステップS4でPWMデューティをAタイプに変更する。
つまり、ステップS4で、PWMデューティがAタイプとなるように設定された異常報知信号を発生させる。
【0068】
PWMデューティのタイプとは、例えば、図6に示すように、PWMのデューティ比率を組み合わせることにより作成されたパターンであり、各種フェールの種類に対応したパターンが作成される。
つまり、図6(a)に示すように、デューティ100%の時間が短く、デューティ50%の時間が長いパターンを組み合わせて振り分ける。
【0069】
本例では、図6(a)においては、デューティ100%の時間:デューティ50%の時間=1:5、図6(b)においては、デューティ100%の時間:デューティ50%の時間=5:1にて、パターンを作成した2例を示した。
このように、時間の長短比率を変更してフェールに対応したデューティタイプを設定するとよい。
【0070】
このように、デューティを変更すると、モータ20の駆動速度が変わるため、パターンによって、モータ20の駆動リズムが変わる。
つまり、フェールの種類(状態)により、ウインドウガラス11の移動状態が変わる(換言すれば、異なった所定のリズムをもってウインドウガラスが移動することとなる)。
よって、フェールの種類を視覚により判別することができる。
【0071】
次いで、図5にもどり、ステップS5にて、フェール検知処理No.1の終了フラグをセットして、ステップS6で、PWM出力処理を行う。
つまり、PWMデューティAタイプに設定された異常報知信号をモータ駆動回路32へと送信する。
また、ステップS3でフェールが無いと判定した場合(ステップS3:No)、処理はステップS5に進み、フェール検知処理No.1の終了フラグをセットして、ステップS6で、PWM出力処理を行う。
【0072】
なお、ステップS3でフェール有りと判定されている場合には、ステップS4でデューティをAタイプに変更しているため、ステップS6で出力されるのは、変更されたAタイプのデューティパターンである。
しかし、ステップS3でフェール無しと判定されている場合には、処理はステップS5に進むため(つまり、ステップS4での周波数パターンの変更処理が行われないため)、ステップS6で出力されるのは、ノーマルのデューティパターンである。
【0073】
次いで、ステップS1で、フェール検知処理No.1が終了していると判定した場合(ステップS1:Yes)、ステップS7で、フェール検知処理No.2が終了しているか否かを判定する。
ステップS1でフェール検知処理No.1が終了している場合には、フェール検知処理No.1終了フラグがセットされているため、このフラグがセットされているか否かでフェール検知処理No.1が終了しているか否かを判定することができる。
同様に、各種終了フラグの有無を確認することにより、各検知処理が終了しているか否かを判定することができる。
【0074】
本実施形態においてフェール検知処理No.2は、ホールセンサ異常の検知処理である。
これは、モータ20の回転を検出するホールIC25が正常に作動しているか否かの検知である。
ステップS7で、フェール検知処理No.2が終了していないと判定した場合(ステップS7:No)、ステップS8でホールセンサ異常検出処理を行う。
【0075】
次いで、ステップS9でフェールが検出されたか否かを判定する。
ステップS9でフェールが有ると判定した場合(ステップS9:Yes)、ステップS10でPWMデューティをBタイプに変更する。
つまり、ステップS10で、PWMデューティがBタイプとなるように設定された異常報知信号を発生させる。
これは、前述の通り、PWMのデューティ100%の時間及びデューティ50%の時間の長短を変えて組み合わせることにより各種フェールの種類に対応するように作成されたパターンである。
【0076】
次いで、ステップS11にて、フェール検知処理No.2の終了フラグをセットして、ステップS6で、PWM出力処理を行う。
つまり、PWMデューティBタイプに設定された異常報知信号をモータ駆動回路32へと送信する。
また、ステップS9でフェールが無いと判定した場合(ステップS9:No)、処理はステップS11に進み、フェール検知処理No.2の終了フラグをセットして、ステップS6で、PWM出力処理を行う。
【0077】
なお、ステップS9でフェール有りと判定されている場合には、ステップS10でPWMのデューティをBタイプに変更しているため、ステップS6で出力されるのは、変更されたBタイプのデューティパターンである。
しかし、ステップS9でフェール無しと判定されている場合には、処理はステップS11に進むため(つまり、ステップS10でのデューティパターンの変更処理が行われないため)、ステップS6で出力されるのは、ノーマル若しくは前に設定された(この場合はAタイプの)デューティパターンである。
【0078】
次いで、ステップS7で、フェール検知処理No.2が終了していると判定した場合(ステップS7:Yes)、次のフェール検知処理へと進んで行く。
これらの処理は、フェール検知処理No.1及びフェール検知処理No.2と同様であるため、説明は省略する。
これは、監視したいフェールの数だけ処理される。
【0079】
例えば、電圧異常(規定よりも低電圧か高電圧がモータ20やモータ駆動回路32に印加される)、イニシャルフェール(EEPROM33から正常に値が読み出せない)、通信異常(車両S本体のメインボディECU5との通信が正常に行われない)等のフェールを監視するとよい。
【0080】
本実施形態においては、最後のフェール検知処理を通信異常の検知処理として例を示した。
これは、車両S本体のメインボディECU5との通信が正常に行われない異常である。
各種検知処理が終了したことを確認すると、ステップS12で、通信異常検出処理を行う。
【0081】
次いで、ステップS13でフェールが検出されたか否かを判定する。
ステップS13でフェールが有ると判定した場合(ステップS13:Yes)、ステップS14でPWMデューティをnタイプ(n番目のアルファベットに対応するデューティタイプであり、監視するフェールの数により変化する。つまり、監視するフェールが5種類の場合には、n=5となり、デューティEタイプとなる)に変更する。
【0082】
つまり、ステップS14で、PWMデューティがnタイプとなるように設定された異常報知信号を発生させる。
これは、前述の通り、PWMのデューティ100%の時間及びデューティ50%の時間の長短を変えて組み合わせることにより各種フェールの種類に対応するように作成されたパターンである。
【0083】
次いで、ステップS15にて、フェール検知処理を初期化して、ステップS6で、PWM出力処理を行う。
つまり、PWMデューティnタイプに設定された異常報知信号をモータ駆動回路32へと送信する。
また、ステップS13でフェールが無いと判定した場合(ステップS13:No)、処理はステップS15に進み、フェール検知処理を初期化して、ステップS6で、PWM出力処理を行う。
【0084】
なお、ステップS13でフェール有りと判定されている場合には、ステップS14でPWMのデューティをnタイプに変更しているため、ステップS6で出力されるのは、変更されたnタイプのデューティパターンである。
しかし、ステップS13でフェール無しと判定されている場合には、処理はステップS15に進むため(つまり、ステップS14でのデューティパターンの変更処理が行われないため)、ステップS6で出力されるのは、ノーマル若しくは直近に設定されたデューティパターンである。
【0085】
また、初期化とは、フェール検知処理No.1〜フェール検知処理No.(n-1)までの終了フラグを全てリセットし、デューティをノーマルにリセットする処理である。
つまり、ステップS15で初期化された後は、処理はステップS1に戻って、フェール検知処理No.1から順に処理が実行される。
なお、本実施形態においては、各フェール検知処理は、3msで実行されるよう構成されている。
つまり、本実施形態においては、3ms毎に順次、フェール検知処理をNo.1から順次実行できるように構成されている。
【0086】
以上のように、本実施形態においては、フェールの発生が発生すると、PWMの周波数変更又はデューティ変更を行う。
よって、これらの変更に伴い、モータ20の駆動音若しくは駆動リズムが変わる。
このため、ユーザは、フェールの発生を認知することができるとともに、その駆動音及び駆動リズムのパターン(移動状態のリズムの変化)によりフェールの種類をもまた認知することができる。
以上により、本実施形態によると、LED等の特別な装置を用いることなく、発生したフェールの種類をユーザに報知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一実施形態に係るパワーウインドウ装置の説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るパワーウインドウ装置の電気構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るフェール報知処理(周波数変更タイプ)を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係る周波数パターンを示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係るフェール報知処理(デューティ変更タイプ)を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態に係るデューティパターンを示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0088】
1‥パワーウインドウ装置、2‥昇降機構、3‥制御部、4‥操作スイッチ、
5‥メインボディECU、6‥カーテシスイッチ、7‥キー連動スイッチ、
10‥ドア、11‥ウインドウガラス、20‥モータ、
21‥昇降アーム、21a‥ギヤ、22‥従動アーム、23‥固定チャンネル、
24‥ガラス側チャンネル、25‥ホールIC、31‥コントローラ、
32‥モータ駆動回路、33‥EEPROM、34‥電源回路、35‥入力回路、
36‥通信インターフェース、
S‥車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に配設される開閉部材と、該開閉部材を開閉駆動するとともに前記開閉部材を駆動するためのスイッチ操作信号に基づいて作動するモータとを備えた開閉部材制御装置であって、
前記開閉部材制御装置には、
複数の異なる異常を検知し、検知信号を送信する異常検知手段と、
前記スイッチ操作信号を受信して前記モータを駆動制御する駆動信号を送信するとともに、前記検知信号を受信して前記異常の種類に応じて異なる異常報知信号を発生させる報知信号発生手段が備えられ、前記異常報知信号を送信するモータ制御手段と、
該モータ制御手段より前記駆動信号若しくは前記異常報知信号を受信して、前記モータを駆動させるモータ駆動回路と、が備えられ、
前記モータ駆動回路は、前記異常報知信号の種類に応じて前記モータの駆動のための出力パターンを切り換えることを特徴とする開閉部材制御装置。
【請求項2】
前記モータ駆動回路は、PWM制御にて前記モータを駆動し、駆動時には異なる前記異常報知信号に基づき、通常時駆動周波数と異常時駆動周波数の時間的割合を切り替えることで前記モータが発する異なる音のパターンを発生させることを特徴とする請求項1に記載の開閉部材制御装置。
【請求項3】
前記モータ駆動回路は、PWM制御にて前記モータを駆動し、駆動時には異なる前記異常報知信号に基づいて複数のデューティ比で前記モータを駆動するとともに、前記デューティ比の時間的割合を切り替えることで前記開閉部材の異常の種類に応じた移動パターンで前記モータを駆動することを特徴とする請求項1に記載の開閉部材制御装置。
【請求項4】
車両に配設される開閉部材と、該開閉部材を開閉駆動するとともに前記開閉部材を駆動するためのスイッチ操作信号に基づいて作動するモータとを備えた開閉部材の制御方法であって、
前記スイッチ操作信号に基づき前記モータを制御するモータ制御手段が、
各々異なる異常を検知する複数の異常検知手段が異常を検知した際発信する検知信号を受信するとともに、前記異常の種類に応じて異なる異常報知信号を発生させる報知信号発信手段により前記異常報知信号を発生させて、
前記モータ制御手段より各種信号を受信して前記モータを駆動させるモータ駆動回路に、前記異常報知信号を送信し、
前記モータ駆動回路が、前記異常報知信号に基づいて出力パターンを切り換えて前記モータを駆動することを特徴とする開閉部材の制御方法。
【請求項5】
前記モータ駆動回路は、PWM制御にて前記モータを駆動し、
前記出力パターンは、前記モータの駆動周波数若しくは前記モータのデューティ比の時間的割合のパターンを変化させることにより作成されることを特徴とする請求項4に記載の開閉部材の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−138666(P2010−138666A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318351(P2008−318351)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】