説明

閾値回路

【課題】閾値回路を低消費電力化する。
【解決手段】閾値回路は、ゲート端子が入力端子INに接続され、ソース端子が電源電位VDDに接続された第1のPMOSトランジスタQ1と、ゲート端子が入力端子INに接続され、ソース端子がトランジスタQ1のドレイン端子に接続され、ドレイン端子が出力端子OUTに接続された第2のPMOSトランジスタQ2と、ゲート端子が出力端子OUTに接続され、ソース端子がトランジスタQ1のドレイン端子とトランジスタQ2のソース端子との接続点に接続され、ドレイン端子が接地電位に接続された第3のPMOSトランジスタQ3と、第1の端子が出力端子OUTに接続され、第2の端子が接地電位に接続された電流制限部I1とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサノード等に用いる閾値回路に関するものであり、特に閾値回路の低電力化技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
閾値回路が使用される従来のセンサノードシステムの構成を図9に示す(例えば、特許文献1参照)。センサノードシステムは、センサノードチップ50と、受信装置60とから構成される。センサノードチップ50は、計測の対象となる物理量を検知するセンサ素子51と、センサ素子51が検知した信号を例えば増幅して出力するセンサ回路52と、センサ回路52の出力信号を閾値処理して検知データとして出力する閾値回路53と、例えば検知データを圧縮する処理や検知データにチップの識別情報を付加する処理等を行うCPU54と、CPU54のプログラムを記憶するメモリ55と、CPU54から出力される検知データを受信装置60に無線送信する無線部56と、センサノードチップ50の各構成に電力を供給する電源57とを備えている。
【0003】
従来の閾値回路の回路図を図10に示す(例えば、非特許文献1参照)。この閾値回路では、第1、第2のPMOSトランジスタQ100,Q101と第1のNMOSトランジスタQ102とが第1の共通電位VDD(電源電位)と第2の共通電位(接地電位)との間に直列に接続され、各トランジスタQ100,Q101,Q102のゲート端子が共通化されて入力端子INに接続され、第2のPMOSトランジスタQ101のドレイン端子と第1のNMOSトランジスタQ102のドレイン端子との接続点が出力端子OUTに接続されている。そして、第1のPMOSトランジスタQ100のドレイン端子と第2のPMOSトランジスタQ101のソース端子との接続点に第3のPMOSトランジスタQ103のソース端子が接続され、第3のPMOSトランジスタQ103のゲート端子が出力端子OUTに接続され、第3のPMOSトランジスタQ103のドレイン端子が接地電位に接続されている。
【0004】
図10に示した従来の閾値回路の動作を図11に示す入出力特性を用いて説明する。図11では、横軸は入力端子INの電圧V(IN)を示し、縦軸は出力端子OUTの電圧V(OUT)を示している。
まず、入力端子INの電圧V(IN)がLowからHighに遷移した場合について述べる。入力端子INの電圧V(IN)がLowの時、第1のNMOSトランジスタQ102はオフ状態、第1、第2のPMOSトランジスタQ100,Q101はオン状態であり、出力端子OUTの電圧V(OUT)はHighとなる。このとき、第3のPMOSトランジスタQ103はオフ状態である。
【0005】
入力端子INの電圧V(IN)が増加すると、第1のNMOSトランジスタQ102がオン状態となり、入力端子INの電圧V(IN)が第1の閾値電圧Vthhに達すると、出力端子OUTの電圧V(OUT)はLowとなる。第1の閾値電圧Vthhは、第1、第2のPMOSトランジスタQ100,Q101を合わせた駆動力と第1のNMOSトランジスタQ102の駆動力との比率で決まる。
【0006】
次に、入力端子INの電圧V(IN)がHighからLowに遷移した場合について述べる。入力端子INの電圧V(IN)がHighのとき、第1、第2のPMOSトランジスタQ100,Q101はオフ状態、第1のNMOSトランジスタQ102はオン状態であり、第3のPMOSトランジスタQ103はオン状態である。したがって、第1のPMOSトランジスタQ100のドレイン端子と第2のPMOSトランジスタQ101のソース端子との接続点は、接地電位となる。
【0007】
入力端子INの電圧V(IN)が減少して第1、第2のPMOSトランジスタQ100,Q101がオン状態、第1のNMOSトランジスタQ102がオフ状態となることにより、出力端子OUTの電圧V(OUT)が上昇し、第3のPMOSトランジスタQ103がオフ状態に近づく。入力端子INの電圧V(IN)が第2の閾値電圧Vthlに達すると、出力端子OUTの電圧V(OUT)がHighとなる。出力端子OUTの電圧V(OUT)がLowの際に第3のPMOSトランジスタQ103がオン状態であり、第1、第2のPMOSトランジスタQ100,Q101が出力端子OUTの電圧V(OUT)を上昇させるのを妨げることから、第1の閾値電圧Vthhよりも第2の閾値電圧Vthlは小さくなる。
【0008】
このように、図10に示した閾値回路では、入力端子INの電圧V(IN)がLowからHighに遷移する際の閾値電圧Vthhと、入力端子INの電圧V(IN)がHighからLowに遷移する際の閾値電圧Vthlとが異なることにより、入力端子INの電圧V(IN)が閾値電圧付近で変動しても、出力信号にグリッジと呼ばれるノイズが発生しないという特徴を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−024551号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Sung-Mo Kang,Yusuf Leblebici,「Cmos Digital Integrated Circuits: Analysis and Design」,第2版,William C Brown Pub,1998年9月,p.341−345
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図9に示したセンサノードチップに図10に示した閾値回路を適用すると、センサ回路の出力がLowからHighに徐々に遷移する場合に、閾値回路のトランジスタQ100〜Q102に大きな貫通電流が流れ、特に、センサ回路の出力がLowとHighの中間電位を保持した場合にその期間中に大きな電流が流れ続ける。センサノードチップの電源としては一般に電池が使用されているので、閾値回路に大きな貫通電流が流れ続けると、限られたエネルギー源で動作するセンサノードチップの動作時間が短くなってしまうという問題があった。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、閾値回路を低消費電力化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の閾値回路(第1の実施の形態)は、ゲート端子が入力端子に接続され、ソース端子が第1の共通電位に接続された第1の第1極性トランジスタと、ゲート端子が前記入力端子に接続され、ソース端子が前記第1の第1極性トランジスタのドレイン端子に接続され、ドレイン端子が出力端子に接続された第2の第1極性トランジスタと、ゲート端子が前記出力端子に接続され、ソース端子が前記第1の第1極性トランジスタのドレイン端子と前記第2の第1極性トランジスタのソース端子との接続点に接続され、ドレイン端子が第2の共通電位に接続された第3の第1極性トランジスタと、第1の端子が前記出力端子に接続され、第2の端子が前記第2の共通電位に接続され、前記第1の端子から前記第2の端子に流れる電流を制限する電流制限部とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の閾値回路の1構成例(第2、第3の実施の形態)において、前記電流制限部は、ゲート端子が前記第2の共通電位または前記第2の共通電位から第2極性トランジスタの閾値電圧までの範囲で設定された固定電位に接続され、ドレイン端子が前記出力端子に接続され、ソース端子が前記第2の共通電位に接続された第1の第2極性トランジスタで構成されることを特徴とするものである。
また、本発明の閾値回路の1構成例(第4の実施の形態)において、前記電流制限部は、前記入力端子の電圧に基づいて制御され、前記入力端子の電圧変化に応じて電流値をピコアンペアレベルからマイクロアンペアレベルに増加させることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の閾値回路の1構成例(第5の実施の形態)において、前記電流制限部は、ドレイン端子が前記出力端子に接続され、ソース端子が前記第2の共通電位に接続された第1の第2極性トランジスタと、ゲート端子およびドレイン端子が前記入力端子に接続され、ソース端子が前記第1の第2極性トランジスタのゲート端子に接続された1以上の第2の第2極性トランジスタとから構成されることを特徴とするものである。
また、本発明の閾値回路の1構成例(第6の実施の形態)において、前記電流制限部は、ドレイン端子が前記出力端子に接続され、ソース端子が前記第2の共通電位に接続された第1の第2極性トランジスタと、ゲート端子が前記入力端子に接続され、ドレイン端子が前記第1の共通電位に接続され、ソース端子が前記第1の第2極性トランジスタのゲート端子に接続された第2の第2極性トランジスタとから構成されることを特徴とするものである。
また、本発明の閾値回路の1構成例(第7の実施の形態)において、前記電流制限部は、さらに、前記第2の第2極性トランジスタのソース端子と前記第1の第2極性トランジスタのゲート端子との間に挿入され、ゲート端子およびドレイン端子が前記第2の第2極性トランジスタのソース端子に接続され、ソース端子が前記第1の第2極性トランジスタのゲート端子に接続された1以上の第3の第2極性トランジスタを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の閾値回路の1構成例(第8の実施の形態)は、さらに、初期化時に前記第1の第2極性トランジスタのゲート端子の電圧を前記第2の共通電位にする初期化スイッチを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ゲート端子が入力端子に接続され、ソース端子が第1の共通電位に接続された第1の第1極性トランジスタと、ゲート端子が入力端子に接続され、ソース端子が第1の第1極性トランジスタのドレイン端子に接続され、ドレイン端子が出力端子に接続された第2の第1極性トランジスタと、ゲート端子が出力端子に接続され、ソース端子が第1の第1極性トランジスタのドレイン端子と第2の第1極性トランジスタのソース端子との接続点に接続され、ドレイン端子が第2の共通電位に接続された第3の第1極性トランジスタと、第1の端子が出力端子に接続され、第2の端子が第2の共通電位に接続され、第1の端子から第2の端子に流れる電流を制限する電流制限部とを設けることにより、入力端子の電圧が第1の共通電位と第2の共通電位との中間電位に保持されたとしても、第1、第2の第1極性トランジスタと電流制限部とを流れる貫通電流を、電流制限部で設定した電流に低減することができ、閾値回路を低消費電力化することができる。その結果、本発明の閾値回路を用いれば、センサノードチップの消費電力をナノワットレベルの極限まで低減することができる。したがって、センサノードチップの電源部の発電量を大きくする必要がなく、発電機構の体積を小さくすることができる。そのため、センサノードチップの小型化が達成され、いままでサイズの制約で埋め込むことができなかった物や人の部分にもセンサノードチップを埋め込むことができる。さらには、センサノードシステムを用いたユビキタスネットワークサービスの範囲を広げることができ、ユーザの利便性を高めたサービスを提供することができ、効果大である。
【0016】
また、本発明では、電流制限部を、ゲート端子が第2の共通電位または第2の共通電位から第2極性トランジスタの閾値電圧までの範囲で設定された固定電位に接続され、ドレイン端子が出力端子に接続され、ソース端子が第2の共通電位に接続された第1の第2極性トランジスタで構成することにより、第1の第2極性トランジスタのゲート端子を第2の共通電位に接続した場合には閾値回路の貫通電流をピコアンペア程度に低減することができ、第1の第2極性トランジスタのゲート端子の電位を第2極性トランジスタの閾値電圧までの範囲で第2の共通電位より大きくした場合には閾値処理を高速化することができる。
【0017】
また、本発明では、電流制限部が、入力端子の電圧に基づいて制御され、入力端子の電圧変化に応じて電流値を増加させることにより、閾値回路の貫通電流を低減する効果を維持したまま、閾値処理を高速化することができる。
【0018】
また、本発明では、電流制限部を、ドレイン端子が出力端子に接続され、ソース端子が第2の共通電位に接続された第1の第2極性トランジスタと、ゲート端子が入力端子に接続され、ドレイン端子が第1の共通電位に接続され、ソース端子が第1の第2極性トランジスタのゲート端子に接続された第2の第2極性トランジスタとから構成することにより、閾値回路の入力容量を小さくすることができる。
【0019】
また、本発明では、電流制限部が、さらに、第2の第2極性トランジスタのソース端子と第1の第2極性トランジスタのゲート端子との間に挿入され、ゲート端子およびドレイン端子が第2の第2極性トランジスタのソース端子に接続され、ソース端子が第1の第2極性トランジスタのゲート端子に接続された1以上の第3の第2極性トランジスタを備えることにより、第1の第2極性トランジスタに流れる電流を小さくすることができ、閾値回路の消費電力を低減することができる。
【0020】
また、本発明では、初期化時に第1の第2極性トランジスタのゲート端子の電圧を第2の共通電位にする初期化スイッチを設けることにより、第1の第2極性トランジスタに流れる電流が増加することを防ぐことができ、閾値回路の消費電力が増加することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る閾値回路の構成を示す回路図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る閾値回路の構成を示す回路図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る閾値回路の構成を示す回路図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係る閾値回路の構成を示す回路図である。
【図5】本発明の第5の実施の形態に係る閾値回路の構成を示す回路図である。
【図6】本発明の第6の実施の形態に係る閾値回路の構成を示す回路図である。
【図7】本発明の第7の実施の形態に係る閾値回路の構成を示す回路図である。
【図8】本発明の第8の実施の形態に係る閾値回路の構成を示す回路図である。
【図9】従来のセンサノードシステムの構成を示すブロック図である。
【図10】従来の閾値回路の構成を示す回路図である。
【図11】図10の閾値回路の入出力特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る閾値回路の構成を示す回路図である。
本実施の形態の閾値回路は、ゲート端子が入力端子INに接続され、ソース端子が電源電位VDDに接続された第1のPMOSトランジスタQ1と、ゲート端子が入力端子INに接続され、ソース端子が第1のPMOSトランジスタQ1のドレイン端子に接続され、ドレイン端子が出力端子OUTに接続された第2のPMOSトランジスタQ2と、ゲート端子が出力端子OUTに接続され、ソース端子が第1のPMOSトランジスタQ1のドレイン端子と第2のPMOSトランジスタQ2のソース端子との接続点に接続され、ドレイン端子が接地電位に接続された第3のPMOSトランジスタQ3と、第1の端子が第2のPMOSトランジスタQ2のドレイン端子および出力端子OUTに接続され、第2の端子が接地電位に接続された電流制限部I1とから構成される。
【0023】
本実施の形態は、図10に示したNMOSトランジスタQ102に代えて、電流制限部I1を備えることが従来の閾値回路と異なる。
本実施の形態の閾値回路の動作を説明する。まず、入力端子INの電圧がLowからHighに遷移する場合について述べる。図9に示したセンサノードチップ50に本実施の形態の閾値回路を適用する場合、センサノードチップ50の初期化時に入力端子INの電圧はLowとなる。入力端子INの電圧がLowのとき、第1、第2のPMOSトランジスタQ1,Q2がオン状態となり、出力端子OUTの電圧はHighとなる。このとき、電流制限部I1に電流が流れているが、この電流は第1、第2のPMOSトランジスタQ1,Q2を合わせた駆動力で流すことができる電流に対して極めて小さいため、出力端子OUTの電圧がLowになることはない。
【0024】
センサノードチップ50のセンサ回路52の出力電圧がLowから増加して入力端子INの電圧が上昇すると、第1、第2のPMOSトランジスタQ1,Q2がオフ状態となり、第1、第2のPMOSトランジスタQ1,Q2に流れる電流が電流制限部I1の電流よりも小さくなると、出力端子OUTの電圧が降下を開始し、出力端子OUTの電圧はLowとなる。
【0025】
次に、入力端子INの電圧がHighからLowに遷移する場合について述べる。入力端子INの電圧がHighのとき、第1、第2のPMOSトランジスタQ1,Q2はオフ状態、第3のPMOSトランジスタQ3はオン状態である。したがって、第1のPMOSトランジスタQ1のドレイン端子と第2のPMOSトランジスタQ2のソース端子との接続点は、接地電位となる。
【0026】
入力端子INの電圧が減少して第1、第2のPMOSトランジスタQ1,Q2がオン状態となることにより、出力端子OUTの電圧が上昇し、第3のPMOSトランジスタQ3がオフ状態に近づく。入力端子INの電圧が第2の閾値電圧Vthlに達すると、出力端子OUTの電圧がHighとなる。出力端子OUTの電圧がLowの際に第3のPMOSトランジスタQ3がオン状態であり、第1、第2のPMOSトランジスタQ1,Q2が出力端子OUTの電圧を上昇させるのを妨げることから、入力端子INの電圧VがLowからHighに遷移するときの第1の閾値電圧Vthhよりも第2の閾値電圧Vthlは小さくなる。
【0027】
以上のように、本実施の形態では、電流制限部I1を設けることにより、第1、第2のPMOSトランジスタQ1,Q2に流れる貫通電流を制限することができる。図10に示した従来の閾値回路では、入力端子INの電圧が電源電位VDDと接地電位との中間電位に保持された場合に、トランジスタQ100〜Q102に数十マイクロアンペアの大きな貫通電流が流れてしまう。
【0028】
これに対して、本実施の形態では、入力端子INの電圧が電源電位VDDと接地電位との中間電位のときに第1、第2のPMOSトランジスタQ1,Q2と電流制限部I1とを流れる貫通電流を、電流制限部I1で設定した電流に低減することができる。例えば電流制限部I1としてサブマイクロアンペア(100nA)以下の電流を流す電流源を使用すれば、貫通電流をサブマイクロアンペア以下に低減することができる。したがって、本実施の形態の閾値回路を用いれば、閾値回路を搭載するセンサノードチップの電力をナノワットレベルの極限まで低減することができる。
【0029】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図2は本発明の第2の実施の形態に係る閾値回路の構成を示す回路図である。
本実施の形態の閾値回路は、第1のPMOSトランジスタQ1と、第2のPMOSトランジスタQ2と、第3のPMOSトランジスタQ3と、ゲート端子およびソース端子が接地電位に接続され、ドレイン端子が第2のPMOSトランジスタQ2のドレイン端子および出力端子OUTに接続された第1のNMOSトランジスタQ4とから構成される。
【0030】
本実施の形態は、第1の実施の形態の電流制限部I1の具体例として第1のNMOSトランジスタQ4を用いたものである。本実施の形態では、入力端子INの電圧が電源電位VDDと接地電位との中間電位のときに第1、第2のPMOSトランジスタQ1,Q2と第1のNMOSトランジスタQ4とを流れる貫通電流を、第1のNMOSトランジスタQ4のリーク電流の大きさに設定することができ、従来の閾値回路の数十マイクロアンペアの貫通電流に比べて、貫通電流をピコアンペア程度に低減することができる。
【0031】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図3は本発明の第3の実施の形態に係る閾値回路の構成を示す回路図である。
本実施の形態の閾値回路は、第1のPMOSトランジスタQ1と、第2のPMOSトランジスタQ2と、第3のPMOSトランジスタQ3と、ゲート端子が固定電位端子REFに接続され、ソース端子が接地電位に接続され、ドレイン端子が第2のPMOSトランジスタQ2のドレイン端子および出力端子OUTに接続された第1のNMOSトランジスタQ5とから構成される。
【0032】
本実施の形態は、第2の実施の形態と同様、第1の実施の形態の具体例であり、電流制限部I1として第1のNMOSトランジスタQ5を用い、この第1のNMOSトランジスタQ5のゲート端子に固定電位を入力した構成を用いている。
本実施の形態では、固定電位端子REFの電圧、すなわち電流制限部を構成する第1のNMOSトランジスタQ5のゲート電圧を、接地電位からNMOSトランジスタの閾値電圧までの範囲で任意に調整することにより、電流制限部の電流を、ピコアンペアからサブマイクロアンペアの範囲で任意に調整することができる。本実施の形態では、電流制限部の電流をサブマイクロアンペア程度に設定することにより、第2の実施の形態に比べて電流制限部に流れる電流を大きくすることができるため、出力端子OUTの電圧の遷移を高速化することができ、閾値処理を高速に行うことができる。
【0033】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。図4は本発明の第4の実施の形態に係る閾値回路の構成を示す回路図である。
本実施の形態の閾値回路は、第1のPMOSトランジスタQ1と、第2のPMOSトランジスタQ2と、第3のPMOSトランジスタQ3と、第1の端子が第2のPMOSトランジスタQ2のドレイン端子および出力端子OUTに接続され、第2の端子が接地電位に接続され、電流制御端子が入力端子INに接続された電流制限部I2とから構成される。
【0034】
本実施の形態は、電流制限部I2の電流を入力端子INの電圧により制御し、入力端子INの電圧の上昇に従って電流制限部I2の電流が大きくなるようにする点が第1の実施の形態と異なる。
本実施の形態では、入力端子INの電圧が上昇して第1、第2のPMOSトランジスタQ1,Q2がオフ状態に近づくまでは電流制限部I2の電流を第1の実施の形態と同等の例えばサブマイクロアンペア程度の小さな電流で行い、入力端子INの電圧が十分に高くなって第1、第2のPMOSトランジスタQ1,Q2がオフ状態となった時点の電流制限部I2の電流をサブマイクロアンペアよりも大きくすることで、第1の実施の形態の貫通電流を低減する効果を維持したまま、出力端子OUTの電圧の遷移を高速化することができ、閾値処理を高速に行うことができる。
【0035】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。図5は本発明の第5の実施の形態に係る閾値回路の構成を示す回路図である。
本実施の形態の閾値回路は、第1のPMOSトランジスタQ1と、第2のPMOSトランジスタQ2と、第3のPMOSトランジスタQ3と、ドレイン端子が第2のPMOSトランジスタQ2のドレイン端子および出力端子OUTに接続され、ソース端子が接地電位に接続された第1のNMOSトランジスタQ6と、ゲート端子およびドレイン端子が入力端子INに接続され、ソース端子が第1のNMOSトランジスタQ6のゲート端子に接続された第2のNMOSトランジスタQ7とから構成される。
【0036】
本実施の形態は、第4の実施の形態の具体例であり、電流制限部I2を第1のNMOSトランジスタQ6と第2のNMOSトランジスタQ7とから構成し、ダイオード接続した第2のNMOSトランジスタQ7を介して入力端子INの電圧を第1のNMOSトランジスタQ6のゲート端子に与えるものである。本実施の形態では、入力端子INの電圧からNMOSトランジスタの閾値電圧分降下した電圧により第1のNMOSトランジスタQ6の電流が制御される。
【0037】
本実施の形態の動作について説明する。第1の実施の形態で説明したとおり、入力端子INの電圧がLowのとき、第1、第2のPMOSトランジスタQ1,Q2はオン状態となるが、第1のNMOSトランジスタQ6はオフ状態となる。このとき、電流制限部の電流は第1のNMOSトランジスタQ6のリーク電流に設定されることになる。
そして、入力端子INの電圧がLowからHighへ上昇すると、第1、第2のPMOSトランジスタQ1,Q2はオフ状態に近付き、出力端子OUTの電圧がHighからLowへ下降する。入力端子INの電圧が上昇するにつれて第1のNMOSトランジスタQ6のゲート電圧が上昇し、第1のNMOSトランジスタQ6の電流が増加する。本実施の形態の効果は第4の実施の形態と同様である。
【0038】
なお、ダイオード接続した第2のNMOSトランジスタQ7を直列に複数個接続して第2のNMOSトランジスタQ7の数を増やすと、第1のNMOSトランジスタQ6のゲート電圧を下げることができるので、第1のNMOSトランジスタQ6に流れる電流を小さくすることができ、閾値回路の消費電力を低減することができる。
【0039】
[第6の実施の形態]
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。図6は本発明の第6の実施の形態に係る閾値回路の構成を示す回路図である。
本実施の形態の閾値回路は、第1のPMOSトランジスタQ1と、第2のPMOSトランジスタQ2と、第3のPMOSトランジスタQ3と、第1のNMOSトランジスタQ6と、ゲート端子が入力端子INに接続され、ドレイン端子が電源電位VDDに接続され、ソース端子が第1のNMOSトランジスタQ6のゲート端子に接続された第2のNMOSトランジスタQ8とから構成される。
【0040】
本実施の形態は、第2のNMOSトランジスタQ8のドレイン端子を電源電位VDDに接続した点が第5の実施の形態と異なる。閾値回路としての動作は第5の実施の形態と同様である。このように第2のNMOSトランジスタQ8のドレイン端子を電源電位VDDに接続したことにより、第2のNMOSトランジスタQ8のドレイン端子の寄生容量を入力端子INから切り離すことができるため、第5の実施の形態に比べて閾値回路の入力容量を小さくすることができる。
【0041】
[第7の実施の形態]
次に、本発明の第7の実施の形態について説明する。図7は本発明の第7の実施の形態に係る閾値回路の構成を示す回路図である。
本実施の形態の閾値回路は、第1のPMOSトランジスタQ1と、第2のPMOSトランジスタQ2と、第3のPMOSトランジスタQ3と、第1のNMOSトランジスタQ6と、ゲート端子が入力端子INに接続され、ドレイン端子が電源電位VDDに接続された第2のNMOSトランジスタQ8と、ゲート端子およびドレイン端子が第2のNMOSトランジスタQ8のソース端子に接続され、ソース端子が第1のNMOSトランジスタQ6のゲート端子に接続された第3のNMOSトランジスタQ9とから構成される。
【0042】
本実施の形態は、第2のNMOSトランジスタQ8のソース端子と第1のNMOSトランジスタQ6のゲート端子との間に、ダイオード接続した第3のNMOSトランジスタQ9を挿入した点が第6の実施の形態と異なる。
本実施の形態では、入力端子INの電圧からNMOSトランジスタの閾値電圧の2段分降下した電圧により第1のNMOSトランジスタQ6の電流が制御される。このような構成により、本実施の形態では、第6の実施の形態に比べて、第1のNMOSトランジスタQ6に流れる電流を小さくすることができ、閾値回路の消費電力を低減することができる。
【0043】
なお、ダイオード接続した第3のNMOSトランジスタQ9を直列に複数個接続して第3のNMOSトランジスタQ9の数を増やすと、第1のNMOSトランジスタQ6のゲート電圧を下げることができるので、第1のNMOSトランジスタQ6に流れる電流をさらに小さくすることができる。
【0044】
[第8の実施の形態]
次に、本発明の第8の実施の形態について説明する。図8は本発明の第8の実施の形態に係る閾値回路の構成を示す回路図である。
本実施の形態の閾値回路は、第1のPMOSトランジスタQ1と、第2のPMOSトランジスタQ2と、第3のPMOSトランジスタQ3と、第1のNMOSトランジスタQ6と、第2のNMOSトランジスタQ8と、第3のNMOSトランジスタQ9と、第1の端子が第1のNMOSトランジスタQ6のゲート端子と第3のNMOSトランジスタQ9のソース端子との接続点に接続され、第2の端子が接地電位に接続され、制御端子が初期化端子RSTに接続されたスイッチSW1とから構成される。
【0045】
本実施の形態は、第1のNMOSトランジスタQ6のゲート端子の電圧を初期化するスイッチSW1を備える点が第7の実施の形態と異なる。
本実施の形態の動作について説明する。センサノードの初期化時に図示しない制御回路から初期化端子RSTに与えられる初期化信号によりスイッチSW1がオン状態となり、第1のNMOSトランジスタQ6のゲート端子が接地電位となって、第1のNMOSトランジスタQ6がオフ状態となる。その後、制御回路はスイッチSW1をオフ状態にし、閾値回路は入力信号待ちの状態となる。以後の動作は、第5〜第7の実施の形態と同様である。
【0046】
本実施の形態では、第1のNMOSトランジスタQ6のゲート端子の電圧が雑音等により高くなってしまった場合でも、センサノードが初期化される際に第1のNMOSトランジスタQ6のゲート端子を初期化することで、第1のNMOSトランジスタQ6に流れる電流が増加することを防ぐことができる。
【0047】
なお、第1〜第8の実施の形態では、閾値回路をセンサノードに適用する例について説明しているが、これに限るものではなく、本発明をセンサノード以外に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、センサノード等に用いる閾値回路に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
Q1,Q2,Q3…PMOSトランジスタ、Q4,Q5,Q6,Q7,Q8,Q9…NMOSトランジスタ、I1,I2…電流制限部、SW1…スイッチ、IN…入力端子、OUT…出力端子、RST…初期化端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート端子が入力端子に接続され、ソース端子が第1の共通電位に接続された第1の第1極性トランジスタと、
ゲート端子が前記入力端子に接続され、ソース端子が前記第1の第1極性トランジスタのドレイン端子に接続され、ドレイン端子が出力端子に接続された第2の第1極性トランジスタと、
ゲート端子が前記出力端子に接続され、ソース端子が前記第1の第1極性トランジスタのドレイン端子と前記第2の第1極性トランジスタのソース端子との接続点に接続され、ドレイン端子が第2の共通電位に接続された第3の第1極性トランジスタと、
第1の端子が前記出力端子に接続され、第2の端子が前記第2の共通電位に接続され、前記第1の端子から前記第2の端子に流れる電流を制限する電流制限部とを備えることを特徴とする閾値回路。
【請求項2】
請求項1記載の閾値回路において、
前記電流制限部は、ゲート端子が前記第2の共通電位または前記第2の共通電位から第2極性トランジスタの閾値電圧までの範囲で設定された固定電位に接続され、ドレイン端子が前記出力端子に接続され、ソース端子が前記第2の共通電位に接続された第1の第2極性トランジスタで構成されることを特徴とする閾値回路。
【請求項3】
請求項1記載の閾値回路において、
前記電流制限部は、前記入力端子の電圧に基づいて制御され、前記入力端子の電圧変化に応じて電流値をピコアンペアレベルからマイクロアンペアレベルに増加させることを特徴とする閾値回路。
【請求項4】
請求項3記載の閾値回路において、
前記電流制限部は、
ドレイン端子が前記出力端子に接続され、ソース端子が前記第2の共通電位に接続された第1の第2極性トランジスタと、
ゲート端子およびドレイン端子が前記入力端子に接続され、ソース端子が前記第1の第2極性トランジスタのゲート端子に接続された1以上の第2の第2極性トランジスタとから構成されることを特徴とする閾値回路。
【請求項5】
請求項3記載の閾値回路において、
前記電流制限部は、
ドレイン端子が前記出力端子に接続され、ソース端子が前記第2の共通電位に接続された第1の第2極性トランジスタと、
ゲート端子が前記入力端子に接続され、ドレイン端子が前記第1の共通電位に接続され、ソース端子が前記第1の第2極性トランジスタのゲート端子に接続された第2の第2極性トランジスタとから構成されることを特徴とする閾値回路。
【請求項6】
請求項5記載の閾値回路において、
前記電流制限部は、さらに、前記第2の第2極性トランジスタのソース端子と前記第1の第2極性トランジスタのゲート端子との間に挿入され、ゲート端子およびドレイン端子が前記第2の第2極性トランジスタのソース端子に接続され、ソース端子が前記第1の第2極性トランジスタのゲート端子に接続された1以上の第3の第2極性トランジスタを備えることを特徴とする閾値回路。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか1項に記載の閾値回路において、
さらに、初期化時に前記第1の第2極性トランジスタのゲート端子の電圧を前記第2の共通電位にする初期化スイッチを備えることを特徴とする閾値回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−258717(P2010−258717A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105689(P2009−105689)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人科学技術振興機構、「フルワイヤレス端末および極低ビットイベント表現の研究開発」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】