説明

集塵アダプターおよび集塵アダプターを備えた研削機

【課題】集塵効率を低下させるとなく集塵カバーの小型化し得るようにする。
【解決手段】研削機本体11には集塵アダプター20が装着される。集塵アダプター20は、カバー本体部22aとこの開口面に設けられる円筒状カバー部26とを備える集塵カバー22と、防塵リング31とを有しており、防塵リング31は出力軸12の軸方向に往復動自在に集塵カバー22の外側に装着される。集塵カバー22の外側には、防塵リング31に対して砥石ホイール13よりも前方に向けて突出するようにばね力を付勢するばね部材が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削加工により生じる粉塵を吸引する集塵アダプターおよび集塵アダプターを備えた研削機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転砥石つまり砥石ホイールを用いて被加工物を研削加工する手持ち式の研削機は、ディスクグラインダーやディスクサンダーとも言われている。例えば、コンクリート材や硬質系窯業材を研削するためのディスクグラインダーにおいては、ダイヤモンドカップホイール等の研削ホイールにより被加工物の研削加工が行われている。
【0003】
研削作業には多くの粉塵が発生するので、粉塵の飛散を防止するためには粉塵拡散防止用の集塵アダプターが研削機に装着される。集塵アダプターは研削機本体に砥石ホイールを研削機本体側から覆うように装着される集塵カバーを有しており、集塵カバー内に粉塵を吸引するようにしている。集塵カバーには研削加工時に粉塵が外部に飛散するのを防止するために防塵リングが装着される。
【0004】
特許文献1には、金属製のブラシが防塵リングとして集塵カバーに装着され、集塵カバーにその内部に外部空気を粉塵とともに吸引するために吸塵管が取り付けられたグラインダが記載されている。この集塵カバー内に流入した粉塵は吸塵管に接続された集塵装置に供給されて粉塵が収集される。特許文献2には、防塵リングとしてのブラシが軸方向に移動自在に集塵カバーに設けられ、集塵カバー内に排塵装置が設けられたサンダーが記載されている。この排塵装置は研削刃を駆動する電動モータにより駆動されるファンを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭55−103143号公報
【特許文献2】特開2006−7403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
研削加工時に発生する粉塵の飛散を防止するとともに粉塵を吸引して収集するために、上述のように、集塵カバーとこれに装着される防塵リングとを備えた集塵アダプターが研削機本体に装着される。集塵カバー内に吸引された粉塵を収集する形態としては、集塵カバー内に吸引された粉塵を集塵カバーに取り付けられたダクトやチューブにより集塵装置に送り、集塵装置により粉塵空気流を濾過して粉塵を収集するようにした形態と、集塵カバーに装着された集塵バッグにより粉塵空気流を濾過して集塵バッグ内に粉塵を収集するようにした形態とがある。防塵リングの形態としては、集塵カバーに固定される形態と、集塵カバーに軸方向に移動自在に装着される形態とがあるが、移動式の防塵リングとする方が研削作業性と粉塵飛散防止効果を高めることができる。
【0007】
防塵リングを移動式とした集塵アダプターにおいては、防塵リングに対して被加工物に向かうばね力を付勢するためのばね部材を設ける必要があり、従来の防塵リングは集塵カバーの前面側に設けられた円筒状カバー部の内側に装着され、ばね部材も円筒状カバー部の内側に配置されている。
【0008】
集塵アダプターを研削機に装着することにより、研削により発生した切り屑である粉塵は、砥石ホイールの回転遠心力を受けて防塵リングの内周面に当たった後に集塵カバー内に吸引され、集塵カバーに設けられた吐出口から外部に排出されて集塵バッグや集塵フィルタにより粉塵が回収される。このように、防塵リングは粉塵を集塵カバー内に案内することにより、粉塵が遠心力で集塵カバーの外部に飛散するのを防止しており、防塵リングの内面と研削ホイールの外面との間に、粉塵を吸引するための吸引流を形成されるために最適な吸引隙間を設定する必要がある。研削機の吸引隙間は10〜15mm程度が最適値である。
【0009】
従来のように、防塵リングを集塵カバーの円筒状部の内側に配置するようにした集塵アダプターにおいては、砥石ホイールの外径が大きくなると、吸引隙間を介して砥石ホイールの径方向外方に配置される集塵カバーの外径を大きくしなければならず、集塵カバーの大型化が避けられなかった。しかも、ばね部材が集塵カバーの円筒形状部の内側に配置されるので、吸引された粉塵空気流の流れを乱すことになり、集塵効率を低下させることになる。
【0010】
一方、同種の研削機本体には、例えば、大型の砥石ホイールとこれよりも小型の砥石ホイールとの複数のサイズの研削ホイールが装着される形態がある。それぞれのサイズに対応させて、上述した吸引隙間を最適値に設定する必要があるので、同種の研削機本体に複数種類の研削ホイールが装着される研削機を製造するには、研削ホイールのサイズに対応させて複数種類の防塵リングを用意するとともに、集塵カバーも研削ホイールのサイズに対応させて複数種類用意する必要がある。このため、研削機を製造するには、それぞれの研削砥石のサイズに対応させて集塵カバーと防塵リングとを製造する必要があり、部品点数が増加するとともにそれぞれの部品について部品管理を行う必要がある。
【0011】
本発明の目的は、集塵効率を低下させることなく集塵カバーの小型化を達成し得るようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の集塵アダプターは、研削工具を回転駆動する出力軸が設けられた研削機本体に装着され、前記研削工具により被加工物を加工する際に生じる粉塵を吸引する集塵アダプターであって、内部に吸引室が形成されたカバー本体部および当該カバー本体部の開口面に設けられる円筒状カバー部を備える集塵カバーと、前記出力軸の軸方向に往復動自在に前記集塵カバーの外側に装着されるシール部と、前記集塵カバーの外側に装着され、前記被加工物に前記シール部を押し付けた際に前記シール部に対して前記出力軸の先端側に向けてばね力を発生するばね部材とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の集塵アダプターは、前記カバー本体部内に配置され前記出力軸に装着される集塵ファンを有し、当該集塵ファンにより粉塵をカバー本体部内に吸引することを特徴とする。本発明の集塵アダプターは、前記集塵カバーの外側を覆うガイド部と前記円筒状カバー壁の外側に摺動自在に嵌合する摺動部とを備えたリング状ホルダーに前記シール部を設け、前記ガイド部に設けられたばね取付部と前記集塵カバーに設けられたばね取付部との間に前記ばね部材を装着することを特徴とする。本発明の集塵アダプターは、前記円筒状カバー壁の内径との外径差が大きい小径の砥石ホイールが前記出力軸に装着されるときには、前記シール部を取り外して前記円筒状カバー部の内側に軸方向に往復動自在に小径の前記シール部を装着可能であることを特徴とする。
【0014】
本発明の研削機は、研削工具により被加工物を研削加工する研削機であって、前記研削工具が装着される出力軸を有し、当該出力軸を回転駆動する研削機本体と、上述した集塵アダプターとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
集塵アダプターは、内部に吸引室が形成され、開口部に円筒状カバー部を有する集塵カバーと、この集塵カバーの外側に装着されるシール部とを有しており、シール部を砥石ホイールよりも前方に向けてばね力を付勢するばね部材が集塵カバーの外側に装着されている。このように、集塵カバーがシール部よりも径方向内側となるので、集塵カバーを小型化することができる。ばね部材が集塵カバーの内側ではなく、外側に装着されているので、吸引室内に流入する粉塵流は、ばね部材に衝突して乱れることなく、スムーズに流れることになり、吸引効率を高めることができる。シール部とばね部材とを集塵カバーの外側に配置すると、シール部の軸方向の移動ストロークに制約を受けることなく、移動ストロークを大きく確保することができる。これにより、被加工物の表面に凹凸があっても確実に被加工物の表面に砥石ホイールを追従させることができる。さらに、シール部を集塵カバーの外側に配置すると、これらの間の隙間が集塵カバーの外側となるので、隙間に切り屑の粉塵が詰まりにくく、シール部を円滑に軸方向に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態である集塵アダプターが装着された研削機を示す斜視図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の一部切欠き正面図である。
【図4】防塵リングが図3に示した状態よりも前進移動した状態を示す研削機の一部切欠き正面図である。
【図5】図3の一部切欠き底面図である。
【図6】図1の研削機本体に小型の砥石ホイールを装着した形態の研削機を示す斜視図である。
【図7】図6の平面図である。
【図8】図6の一部切欠き正面図である。
【図9】図8の底面図である。
【図10】出力軸に集塵ファンを設けないタイプの研削機を示す一部切欠き正面図である。
【図11】円筒状カバー部をベローズとして小型の砥石ホイールが装着された形態の研削機を示す一部切欠き正面図である。
【図12】図11に示した研削機に大型の砥石ホイールを装着した状態を示す一部切欠き正面図である。
【図13】小型の砥石ホイールが装着された参考例としての研削機を示す一部切欠き正面図である。
【図14】大型の砥石ホイールが装着された参考例としての研削機を示す一部切欠き正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1〜図5に示す研削機10は、携帯型つまり手持ち式であり、例えば、コンクリートや石材等を被加工物としてその表面を研削加工するために使用され、ディスクグラインダーやディスクサンダーとも言われる動力工具である。
【0018】
研削機10は研削機本体11を有し、この研削機本体11の内部には電動モータとこの電動モータの主軸の回転を出力軸12に伝達するためのベベルギヤ対とが組み込まれている。この出力軸12には、図3に示されるように、カップ型の砥石ホイール13が着脱自在に取り付けられる。この砥石ホイール13はカップ形状に形成された台盤14を有し、この台盤14の前面外周部には複数のダイヤモンド砥石15が接着等の手段により固定されている。出力軸12の先端部には雄ねじ部16が設けられており、この雄ねじ部16にねじ結合するロックナット17により砥石ホイール13は出力軸12に取り付けられる。
【0019】
研削機本体11には出力軸12と同軸となってホルダー18が設けられており、このホルダー18には集塵アダプター20が着脱自在に装着される。集塵アダプター20は、電動モータにより砥石ホイール13とともに回転駆動される集塵ファン21と、この集塵ファン21を収容するとともに砥石ホイール13の径方向外方を覆う集塵カバー22とを有している。集塵ファン21はディスク部21aとこれの前面側に設けられた複数のブレード部21bとを有しており、集塵ファン21の径方向中心のボス部21cが出力軸12に嵌合して固定されている。
【0020】
集塵カバー22は、端壁部23とこれの正面側の円筒形状の周壁部24と集塵ファン21の外周部を介して端壁部23に対向する仕切り壁部25とからなるカバー本体部22aを有しており、仕切り壁部25の正面側つまり開口部側には円筒状カバー部26が設けられている。この円筒状カバー部26は砥石ホイール13の外径よりも大きな内径となっており、砥石ホイール13の径方向外方を覆うことになる。集塵カバー22の端壁部23の径方向中心部には研削機本体11のホルダー18に嵌合されるボス部23aが設けられており、集塵カバー22はボス部23aの部分でホルダー18に着脱自在に装着される。
【0021】
端壁部23と仕切り壁部25との間の空間は吸引室27となっており、カバー本体部22a内の吸引室27内に集塵ファン21が組み込まれる。仕切り壁部25には吸い込み口25aが形成されており、集塵ファン21を回転させると、吸い込み口25aを介して外部から空気が吸引室27内に流入する。周壁部24と集塵ファン21の外周との間に形成される流路は、円周方向の下流側に向かうに従って断面積が徐々に大きくなっている。集塵カバー22には流路の最下流に連通させた吐出ダクトつまり吐出口28が設けられている。したがって、集塵ファン21が回転すると、砥石ホイール13により研削加工されて発生した粉塵が集塵カバー22内の吸引室27に入り込む空気流が形成され、この空気流は吐出口28に向かう。このように、集塵ファン21により吐出口28に向かう粉塵空気流が形成される。
【0022】
集塵カバー22のカバー本体部22aは、それぞれナイロンなどの樹脂材料により成形された第1と第2のケース半体29a,29bを組み合わせることにより構成される。第1のケース半体29aは端壁部23と周壁部24の一部と吐出口28の一部とが一体となっている。第2のケース半体29bは周壁部24の残りの一部と吐出口28の残りの一部と仕切り壁部25とが一体となっている。第2のケース半体29bには円筒状カバー部26が設けられており、集塵カバー22はケース半体29a,29bからなるカバー本体部22aと円筒状カバー部26とにより構成されている。
【0023】
集塵カバー22の径方向外側には、砥石ホイール13により被加工物を研削加工する際に発生する粉塵が外部に飛散するのを防止するために、防塵リング31(シール部)が出力軸12に沿う軸方向に往復動自在に装着されている。シール部としての防塵リング31はリングホルダー32に設けられており、リングホルダー32は集塵カバー22の外径よりも大きな内径を有し集塵カバー22を覆うガイド部32aと、集塵カバー22の円筒状カバー部26の外側に摺動自在に嵌合される摺動部32bとを有しており、ガイド部32aと摺動部32bは一体となっている。防塵リング31の直径は、砥石ホイール13の外周面と防塵リング31の内周面との間の隙間つまり吸引隙間30が10〜15mm程度の最適値となるように設定されている。
【0024】
図5に示されるように、集塵カバー22の外周には円周方向にほぼ90度置きに4つの引っ掛け孔33a〜33dがばね取付部として設けられている。それぞれの引っ掛け孔33a〜33dに対応させてリングホルダー32のガイド部32aには、4つの引っ掛け孔34a〜34bがばね取付部として設けられている。対をなす2つの引っ掛け孔の間には引っ張りコイルばね35a〜35dがばね部材としてそれぞれ装着されている。円周方向に180度位相がずれて対をなす2つの引っ張りコイルばね35a,35cは、図5において防塵リング31を時計方向に回転させるようにばね力を付勢し、他の2つの引っ張りコイルばね35b,35dは逆方向に回転させるようにばね力を付勢する。これにより、防塵リング31には回転方向のばね力がバランスするとともに、軸方向には所定の位置に保持されるようにばね力が付勢されることになる。
【0025】
図3は砥石ホイール13が被加工物Wに接触した状態を示しており、この状態のもとでは防塵リング31も被加工物Wの表面に接触した状態となる。砥石ホイール13が回転駆動されると、被加工物Wは研削加工される。一方、図4に示すように、砥石ホイール13が被加工物から離されると、引っ張りコイルばね35a〜35dのばね力により防塵リング31の先端面は砥石ホイール13よりも前方、即ち出力軸12の反研削機10側に迫り出した状態となる。この状態のもとでは、引っ張りコイルばね35a〜35dはほぼ円周方向を向いた状態となる。これに対し、図3に示すように、防塵リング31が後退する方向に押し付けられると、それぞれの引っ張りコイルばね35a〜35dは、図3に示されるように、リングホルダー32に設けられた引っ掛け孔34a〜34dの方が集塵カバー22に形成された引っ掛け孔33a〜33dよりも軸方向に後退するので、防塵リング31には砥石ホイール13よりも前方に突出するように前進方向のばね力が付勢されることになる。
【0026】
このように、4つの引っ張りコイルばね35a〜35dがばね部材として用いられているが、防塵リング31に対して砥石ホイール13よりも前方に突出する方向にばね力を付勢するのであれば、コイルばねに代えて板ばねを用いるようにしても良い。
【0027】
図1〜図5に示す研削機10を用いて被加工物の表面を研削加工するには、砥石ホイール13を回転させた状態のもとで砥石ホイール13を被加工物に接触させる。図3に示されるように、砥石ホイール13を被加工物Wに接触させると、防塵リング31も被加工物Wの表面に接触し集塵カバー22の内部と外部とが遮断される。研削によって発生した粉塵Pは、砥石ホイール13の遠心力を受けて、一旦、防塵リング31の内周面に衝突した後に、矢印で示すように、集塵ファンの回転によって生成される吸引流により集塵カバー22の内部の吸引室27内に吸引され、粉塵の流れに沿って吐出口28に送られる。吐出口28の下流側にはダストバッグや集塵フィルタが設けられており、粉塵を含む空気はダストバッグ等により清浄化されて粉塵が収集され回収される。
【0028】
この研削機10は、集塵カバー22が防塵リング31よりも径方向内側となるので、集塵カバー22を小型化することができる。小型化された研削機10は軽量であり、被加工物の端面に壁が設けられている場合であっても壁の近くまで研削機10を操作して研削作業を行うことができる。ばね部材としての引っ張りコイルばね35a〜35dは、集塵カバー22の内側ではなく、外側に装着されているので、吸引室27内に流入する粉塵流は、ばね部材に衝突して乱れることなく、スムーズに流れることになる。これにより、吸引効率を高めることができる。また、防塵リング31とばね部材とを集塵カバー22の外側に配置すると、防塵リング31の軸方向の移動ストロークに制約を受けることなく、移動ストロークを大きく確保することができる。これにより、被加工物の表面に凹凸があっても確実に被加工物の表面に砥石ホイールを追従させることができる。さらに、防塵リング31を集塵カバー22の外側に配置すると、これらの間の隙間が集塵カバー22の外側となるので、隙間に切り屑の粉塵が詰まりにくく、防塵リングを円滑に軸方向に移動させることができる。
【0029】
防塵リング31を集塵カバー22の外側に配置すると、集塵カバー22をそのまま利用して、上述した砥石ホイール13よりも小径の小型の砥石ホイール13aを研削機本体11の出力軸12に装着して研削作業を行うことができる。
【0030】
図6〜図9は上述した研削機本体11の出力軸12に、集塵カバー22を交換することなく、小型の砥石ホイールを装着した形態の研削機10を示す。図6〜図9においては、図1〜図5に示した研削機10と同一の部材には同一の符号が付されている。
【0031】
図8は、図3に示した砥石ホイール13を取り外して小型の砥石ホイール13aを出力軸12に装着した状態を示す。小型の砥石ホイール13aを出力軸12に装着すると、集塵カバー22の外側に配置された防塵リング31を使用することはできなくなる。その理由は、防塵リング31を使用すると、砥石ホイール13の外周面と防塵リング31の内周面との間の吸引隙間30の寸法を上述した最適値とすることができなくなるからである。図3に示したサイズの防塵リング31を使用すると、吸引隙間30が大きくなり過ぎて、粉塵を吸引室27内に吸引するに十分な粉塵空気流を形成することができなくなる。
【0032】
そこで、研削機本体11の出力軸12に集塵カバー22をそのまま利用して小型の砥石ホイールを装着するには、集塵カバー22に小径の防塵リング31aを装着することになる。シール部としての防塵リング31aは環状基部36に取り付けられており、環状基部36に設けられた突起37が円筒状カバー部26aに形成された係合溝38に係合している。図8に示す集塵カバー22には、図3に示した円筒状カバー部26とは相違した形状の円筒状カバー部26aが装着されており、この円筒状カバー部26aには係合溝38が形成されている。しかし、図3に示した円筒状カバー部26の内面に係合溝38を形成しておけば、小型の砥石ホイール13aを使用する場合にも円筒状カバー部26をそのまま使用することができる。
【0033】
防塵リング31aが集塵カバー22に装着される場合には、図8に示されるように、防塵リング31aに対して防塵リング31aが砥石ホイール13aよりも前方に向かうばね力を付勢するために、集塵カバー22の仕切り壁部25と防塵リング31aとの間に複数の板ばね41が装着される。その板ばね41を仕切り壁部25に引っ掛けるために、仕切り壁部25にはフック部42が設けられている。このフック部42は、図3に示されるように、防塵リング31が集塵カバー22の外側に配置されるときには使用されない。なお、図9に示されるように、小型の砥石ホイール13aが使用されるときには、集塵カバー22に設けられた引っ掛け孔33a〜33dは使用されない。
【0034】
このように、同種の研削機本体11に大型の砥石ホイール13を装着した形態の研削機と、小型の砥石ホイール13aを装着した形態の研削機とを製造する場合には、引っ張りコイルばね用の引っ掛け孔33a〜33dと、板ばね用のフック部42が設けられた集塵カバー22を製造すると、1種類の集塵カバー22によって図1〜図5に示す大型砥石用の研削機と、図6〜図9に示す小型砥石用の研削機とを組み立てることができる。これにより、少ない部品点数により2種類の研削機を製造することができ、製造時の部品管理も容易に行うことができ、生産性を向上させることができる。
【0035】
図10は出力軸12に集塵ファン21を設けないタイプの研削機10を示す一部切欠き正面図である。この場合には集塵カバー22は上述したケース半体29aとほぼ同様のサイズとなっており、吐出口28には図示しない集塵機がホースを介して接続され、集塵機の吸引により集塵カバー22内には粉塵空気流が流入することになる。図10は出力軸12に小型の砥石ホイール13aが取り付けられた状態を示すが、円筒状カバー部26を図3に示した形状のものに代えることにより、同じ種類の集塵カバー22を使用して、大型の砥石ホイール13が設けられた研削機を組み立てることができる。
【0036】
図11および図12は、上述した円筒状カバー部26をベローズ43とした研削機10である。図11は出力軸12の小径の砥石ホイール13aが装着され、ベローズ43の内側に小径の防塵リング31aが装着された状態を示す。一方、図12は出力軸12に大径の砥石ホイール13が装着され、ベローズ43の外側に大径の防塵リング31が装着された状態を示す。ベローズ43をゴム等の弾性材料により形成すると、ベローズ43自体は弾性力を有しているが、防塵リング31、31aが確実に被加工物の表面に接触するように、それぞれにばね部材を装着する。つまり、図11に示すように、小径の砥石ホイール13aが装着されるときには、ベローズ43の内側にばね部材が装着され、図12に示すように、大径の砥石ホイール13が装着されるときには、ベローズ43の外側にばね部材が装着される。
【0037】
図13および図14は参考例としての研削機を示す一部切欠き正面図である。図13は小型の砥石ホイール13aが装着された場合を示し、図14は大型の砥石ホイール13が装着され場合を示す。それぞれの研削機における防塵リング31bは、弾性変形する材料により形成されており、シール材としての防塵リング31b自体がばね部材としての機能を有している。
【0038】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0039】
10…研削機、11…研削機本体、12…出力軸、13,13a…砥石ホイール、14…台盤、15…ダイヤモンド砥石、16…雄ねじ部、17…ロックナット、18…ホルダー、20…集塵アダプター、21…集塵ファン、21a…ディスク部、21b…ブレード部、21c…ボス部、22…集塵カバー、22a…カバー本体部、23…端壁部、23a…ボス部、24…周壁部、25…仕切り壁部、25a…吸い込み口、26,26a…円筒状カバー部、27…吸引室、28…吐出口、29a,29b…ケース半体、30…吸引隙間、31,31a…防塵リング(シール部)、32…リングホルダー、32a…ガイド部、32b…摺動部、33a〜33d…引っ掛け孔、34a〜34d…引っ掛け孔、35a〜35d…張りコイルばね、36…環状基部、37…突起、38…係合溝、41…板ばね、42…フック部、43…ベローズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削工具を回転駆動する出力軸が設けられた研削機本体に装着され、前記研削工具により被加工物を加工する際に生じる粉塵を吸引する集塵アダプターであって、
内部に吸引室が形成されたカバー本体部および当該カバー本体部の開口面に設けられる円筒状カバー部を備える集塵カバーと、
前記出力軸の軸方向に往復動自在に前記集塵カバーの外側に装着されるシール部と、
前記集塵カバーの外側に装着され、前記被加工物に前記シール部を押し付けた際に前記シール部に対して前記出力軸の先端側に向けてばね力を発生するばね部材とを有することを特徴とする集塵アダプター。
【請求項2】
前記カバー本体部内に配置され前記出力軸に装着される集塵ファンを有し、当該集塵ファンにより粉塵をカバー本体部内に吸引することを特徴とする請求項1記載の集塵アダプター。
【請求項3】
前記集塵カバーの外側を覆うガイド部と前記円筒状カバー壁の外側に摺動自在に嵌合する摺動部とを備えたリング状ホルダーに前記シール部を設け、前記ガイド部に設けられたばね取付部と前記集塵カバーに設けられたばね取付部との間に前記ばね部材を装着することを特徴とする請求項1または2記載の集塵アダプター。
【請求項4】
前記円筒状カバー壁の内径との外径差が大きい小径の砥石ホイールが前記出力軸に装着されるときには、前記シール部を取り外して前記円筒状カバー部の内側に軸方向に往復動自在に小径の前記シール部を装着可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の集塵アダプター。
【請求項5】
研削工具により被加工物を研削加工する研削機であって、
前記研削工具が装着される出力軸を有し、当該出力軸を回転駆動する研削機本体と、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の集塵アダプターとを有することを特徴とする研削機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−63495(P2013−63495A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204466(P2011−204466)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】