集塵バッグ、集塵バッグを備えた集塵アダプターおよび動力工具
【課題】集塵バッグを小型化しつつ集塵効率を向上する。
【解決手段】研削機等の動力工具には、集塵カバーとこれに装着される集塵バッグ40とを有する集塵アダプターが装着される。集塵バッグ40は、スリット48を有する外側袋体41とその内部の集塵室46内に折り込まれる内側濾過部42とを有しており、内側濾過部42内には、内側濾過部42内に流入した空気をスリット48に排出させる排気室51が形成されている。この排気室51が潰されるのを防止するために、排気室51内にはスペーサ52が配置されている。集塵室46内に流入した粉塵空気流は、外側袋体41により濾過されるとともに、内側濾過部42により濾過されて外部に排出される。
【解決手段】研削機等の動力工具には、集塵カバーとこれに装着される集塵バッグ40とを有する集塵アダプターが装着される。集塵バッグ40は、スリット48を有する外側袋体41とその内部の集塵室46内に折り込まれる内側濾過部42とを有しており、内側濾過部42内には、内側濾過部42内に流入した空気をスリット48に排出させる排気室51が形成されている。この排気室51が潰されるのを防止するために、排気室51内にはスペーサ52が配置されている。集塵室46内に流入した粉塵空気流は、外側袋体41により濾過されるとともに、内側濾過部42により濾過されて外部に排出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削機や切断機等の動力工具に用いられる集塵バッグ、集塵バッグを備えた集塵アダプターおよび動力工具に関する。
【背景技術】
【0002】
先端工具を動力源により回転駆動して被加工物を加工する動力工具には、研削機や切断機がある。研削機は、砥石を先端工具として被加工物を研削加工する動力工具であり、ディスクグラインダーやディスクサンダーとも言われる。切断機は、円板形の鋸刃を先端工具として被加工物を切断加工する動力工具であり、丸鋸とも言われる。
【0003】
例えば、コンクリート材や硬質系窯業材を切断または研削するためのディスクグラインダーにおいては、ダイヤモンドカッタやダイヤモンドカップホイール等の刃具を先端工具として被加工物の切断や研削加工が行われている。切断作業や研削作業には多くの粉塵が発生するので、粉塵の飛散を防止するために粉塵拡散防止用の集塵カバーをディスクグラインダーに装着することがある。集塵カバーは刃具を覆うようにしてディスクグラインダーに装着することが可能なので、特許文献1に記載されるように、集塵カバーの内部に溜まった粉塵を外部に案内するためにファンケーシングや集塵カバーにはホースやダクトが設けられている。ホースやダクトを介して粉塵を集塵機に案内すると、集塵機により粉塵を収集することができる。
【0004】
ホース等により動力工具を集塵機に接続することなく、動力工具に設けられた集塵カバーの排出口に布製の集塵バッグを装着すれば、長いホースを集塵カバーに装着する必要がなく、動力工具を用いた研磨加工等の作業性を高めることができる。
【0005】
例えば、特許文献2に記載された動力工具においては、円板形の鋸刃を先端工具として被加工物を切断加工したときに発生する粉塵を粉塵袋に収集するようにしている。また、特許文献3は、切断の際に発生する切り屑を収納するためにダストバッグが装着された卓上切断機を開示している。このような粉塵袋やダストバッグは布製であり、繰り返し使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−138203号公報
【特許文献2】特許第3633370号公報
【特許文献3】実開昭62−134618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2,3に記載されるように、研削機や切断機等の動力工具に集塵バッグを装着するようにすると、動力工具から離れた位置の集塵機に粉塵を供給するために長いホースを用いる必要がなく、研削作業等の作業性を高めることができることになる。しかしながら、集塵バッグは集塵カバーの吐出口に装着した状態で研削や切断作業を行うため、集塵バッグの大きさは自ずと制約されてしまう。
【0008】
さらに、動力工具の砥石や切刃を回転駆動するための回転軸にファンを設けて砥石等の先端工具の回転による慣性力とファンの吸引力を利用して粉塵を集塵バッグに収集するようにした形態の動力工具においては、集塵効率を向上させてより多くの粉塵を収集できるようにするには、集塵カバーの吐出口から集塵バッグへ向かう流路での圧力損失を小さくし、粉塵がスムーズに集塵バッグに収集されるようにすることが必要である。集塵バッグは通気性を有する布製の生地で製造されており、フィルタ機能を果たすため、圧力損失を小さくするには、集塵バッグの表面積を増やして、できるだけ多くの風量が集塵バッグを通過するようにすることが有効である。
【0009】
しかしながら、前述のように集塵バッグは集塵カバーの吐出口に装着された状態で使用されるので、集塵バッグのサイズを過度に大きくすると、研削や切断作業の操作性を損なってしまうという問題点がある。
【0010】
本発明の目的は、集塵バッグを小型化しつつ集塵効率を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の集塵バッグは、吐出口に装着され、被加工物を加工する際に生じる粉塵を収集する集塵バッグであって、前記吐出口に装着される接続口が設けられ、内部に前記接続口に連通する集塵室を形成する布製の外側袋体と、前記外側袋体の内側で対向する2つの面を備える内側濾過部と、前記内側濾過部の間隔を保持するスペーサとを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の集塵バッグは、前記スペーサは、前記内側濾過部よりも高い通気性を有することを特徴とする。本発明の集塵バッグは、前記内側濾過部の端部は留め具により閉じられる閉塞部を複数個形成することを特徴とする。本発明の集塵バッグは、前記外側袋体には相互に隣り合う複数の内側濾過部を有することを特徴とする。本発明の集塵バッグは、前記外側袋体に相互に反対側に位置する複数の内側濾過部を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の集塵アダプターは、先端工具を回転させて被加工物を加工する動力工具に装着され、被加工物を加工する際に生じる粉塵を吸引して収集する集塵アダプターであって、前記先端工具を覆うように前記動力工具に着脱自在に装着され、粉塵を吸引する集塵カバーと、上記集塵バッグとを有することを特徴とする。本発明の集塵アダプターは、動力工具を回転駆動する回転軸により駆動される集塵ファンを有することを特徴とする。
【0014】
本発明の動力工具は、上記集塵バッグ若しくは集塵アダプターを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、集塵バッグは外側袋体とこの内部に設けられる内側濾過部とを有しており、粉塵空気流が接続口から流入すると、外側袋体により濾過して外側袋体から清浄化された空気を排出する一方、内側濾過部により濾過して内側濾過部内から清浄化された空気を外部に排出することになる。これにより、集塵バッグのサイズを大型化することなく、集塵バッグの濾過面積を大きくすることができるので、研削機や切断機等の動力工具の操作性を損なうことなく、集塵効率を高めることができる。
【0016】
集塵バッグとこれが装着された集塵カバーとを有する集塵アダプターを動力工具に装着することにより、動力工具を集塵タイプにすることができるとともに、その動力工具の操作性を損なうことなく、集塵効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】動力工具の一例である研削機を示す断面図である。
【図2】図1に示された集塵バッグの斜視図である。
【図3】図2の正面図である。
【図4】図3の平面図である。
【図5】図3におけるA−A線に沿う横断面図である。
【図6】(A)は図2に示された集塵バッグの展開図であり、(B)は(A)におけるB−B線に沿う断面図である。
【図7】粉塵が収集された状態における集塵バッグの横断面図である。
【図8】粉塵が収集された状態における集塵バッグの平面図である。
【図9】他の実施の形態である集塵バッグを示す横断面図である。
【図10】さらに他の実施の形態である集塵バッグを示す横断面図である。
【図11】比較例である集塵バッグの正面図である。
【図12】図11の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示す動力工具は、携帯型つまり手持ち式の研削機10であり、この研削機10は、例えば、コンクリートや石材等を被加工物としてその表面を研削加工するために使用され、ディスクグラインダーやディスクサンダーとも言われる。
【0019】
この研削機10は円筒形状のモータケース11aと、その先端部に取り付けられるギヤケース11bとを有し、モータケース11aの内部には電動モータ12が動力源として収容される。電動モータ12はモータケース11aの後端部から引き出される図示しない電源コードを介して商用電源に接続され、商用電源から供給される電力により駆動される。電動モータ12の回転軸13にはベベルギヤ14が取り付けられ、このベベルギヤ14と噛み合うベベルギヤ15が回転軸13に直角に配置されたスピンドルつまり出力軸16に取り付けられており、出力軸16は電動モータ12により回転駆動される。この出力軸16はギヤケース11bに取り付けられる軸受17により回転自在に支持されている。軸受17はギヤケース11bに固定される環状のホルダー18によりギヤケース11bに取り付けられており、ホルダー18は出力軸16と同軸となって出力軸16の径方向外方に設けられている。
【0020】
研削機10は、モータケース11aとギヤケース11bとこれらの内部に組み込まれる上述した部材により動力工具本体10aが構成される。動力工具本体10aの出力軸16には延長スピンドル16aがねじ結合されており、この延長スピンドル16aには、図1に示すように、先端工具としてのカップ型の砥石ホイール21が取り付けられる。
【0021】
この砥石ホイール21はカップ形状に形成された台盤22を有し、この台盤22の前面外周部には複数のダイヤモンド砥石23が接着等の手段により固定されている。砥石ホイール21は、延長スピンドル16aの先端に設けられた雄ねじ部25にねじ結合する締結部材としてのロックナット26により延長スピンドル16aに取り付けられ、ロックナット26には雄ねじ部25にねじ結合される雌ねじが設けられている。
【0022】
動力工具本体10aには集塵アダプター27が着脱自在に装着される。集塵アダプター27は、電動モータ12により砥石ホイール21とともに回転駆動される集塵ファン28と、この集塵ファン28を収容するとともに砥石ホイール21の径方向外方を覆う集塵カバー30とを有している。集塵ファン28はディスク部28aとこれの前面側に設けられた複数のブレード部28bとを有しており、集塵ファン28の径方向中心のボス部28cが延長スピンドル16aに嵌合して固定されている。延長スピンドル16aには円周方向に180度の位相をずらして平坦面が設けられた二面幅構造となっており、出力軸16の回転は延長スピンドル16aを介して集塵ファン28に伝達される。
【0023】
集塵カバー30は、端壁部31とこれの正面側の円筒形状の周壁部32と集塵ファン28の外周部を介して端壁部31に対向する仕切り壁部33とを有しており、仕切り壁部33の正面側には工具カバー34が設けられている。工具カバー34は砥石ホイール21の外径よりも大きな内径となっており、砥石ホイール21の径方向外方を覆うことになる。端壁部31の径方向中心部には動力工具本体10aのホルダー18に嵌合されるボス部31aが設けられており、集塵カバー30はボス部31aの部分でホルダー18に着脱自在に装着される。
【0024】
端壁部31と仕切り壁部33との間はファン収容室35となっており、このファン収容室35内に集塵ファン28が組み込まれる。仕切り壁部33には吸い込み口33aが形成されており、集塵ファン28を回転させると、吸い込み口33aを介して外部から空気がファン収容室35内に流入する。周壁部32と集塵ファン28の外周との間に形成されるボリュート流路36は、円周方向の下流側に向かうに従って断面積が徐々に大きくなっている。ボリュート流路36の最下流に連通させて集塵カバー30には吐出ダクトつまり吐出口37が設けられている。したがって、集塵ファン28が回転すると、砥石ホイール21により研磨処理されて発生した粉塵が集塵カバー30内に入り込む空気流が形成され、この空気流は吐出口37に向かう。このように、集塵ファン28により吐出口37に向かう粉塵空気流が形成される。
【0025】
集塵カバー30は、それぞれナイロンなどの樹脂材料により成形された第1と第2のケース半体30a,30bを組み合わせることにより構成される。第1のケース半体30aは端壁部31と周壁部32の一部と吐出口37の一部とが一体となっている。第2のケース半体30bは周壁部32の残りの一部と吐出口37の残りの一部と仕切り壁部33とが一体となっており、第2のケース半体30bには工具カバー34とが取り付けられている。
【0026】
工具カバー34の内部には防塵リング38が出力軸16の軸方向に移動自在に装着されている。防塵リング38には板ばね39により工具カバー34の先端面より突出する方向にばね力が加えられており、砥石ホイール21を用いてコンクリートの表面等を研削加工するときには、防塵リング38が砥石ホイール21の径方向外方を確実に覆うことになり、粉塵が外部に吹き飛ばされるのを確実に防止することができる。
【0027】
集塵アダプター27は動力工具本体10aに着脱自在つまり取り外し自在に装着されており、図1に示す研削機10は集塵アダプター27が装着されたタイプと、集塵アダプター27を有しないタイプとに切り換えることができる。図1に示すように集塵アダプター27が装着されたタイプからこれを有しないタイプに切り換えるには、砥石ホイール21を延長スピンドル16aから取り外すとともに集塵ファン28と集塵カバー30とを取り外す。さらに、延長スピンドル16aを出力軸16から取り外して出力軸16に直接砥石ホイール21を取り付けることになる。
【0028】
図1に示されるように、集塵カバー30の円筒形状の吐出口37には集塵バッグ40が着脱自在に装着されている。集塵バッグ40は、図2および図5に示されるように、全体的にほぼ長方形となっており、それぞれ布製の外側袋体41とその内側の内側濾過部42との内外二重構造となっている。外側袋体41は、図5に示されるように、布製シート材を折り曲げることにより形成される第1の袋片部43aと第2の袋片部43bとを有している。ほぼ長方形の外側袋体41の長手方向の一端部には、幅方向一方側に変位させて接続口45が形成されており、この接続口45は吐出口37に装着される。
【0029】
外側袋体41の内部には接続口45に連通する集塵室46が形成されており、集塵カバー30の吐出口37から吐出された粉塵空気流は集塵室46内に供給される。外側袋体41の幅方向の1つの辺、つまり図2において上側の長辺47にはスリット48が形成されており、他の3辺は閉じられている。内側濾過部42は外側袋体41よりも小型であって全体的に長方形となっており、図5に示されるように、第1の濾過部44aと第2の濾過部44bとを有している。内側濾過部42の1辺にはスリット48に連通する開口部49が形成され、他の3辺は閉じられており、内側濾過部42の内部は排気室51となっている。
【0030】
集塵室46内に流入した粉塵空気流を濾過して外側袋体41から外部に清浄化して排気する一方、内側濾過部42により清浄化して排気室51に排気してから外部に排出することになる。集塵室46内に流入した粉塵空気流により内側濾過部42を構成する両方の濾過部44a,44bが密着して排気室51が潰されるのを防止するために、内側濾過部42の内部にはスペーサ52が配置されている。このスペーサ52は布製シート材よりも高い通気性を有する長方形のスポンジにより形成されており、スペーサ52は排気室51のスペースを確保する厚み寸法を有している。スペーサ52としては、濾過部44a,44bが密着することを防止できれば、スポンジを使用することなく、多孔質の焼結金属製の板材を用いても良く、針金を折り曲げて形成した枠体を用いるようにしても良い。
【0031】
内側濾過部42を構成する濾過部44a,44bには、開口部側に位置させて留め具としてのホック53が所定の間隔を隔てて複数個設けられている。図6に示されるように、一方の濾過部44aにはホック53の雌部53aが取り付けられ、他方の濾過部44bにはホック53の雄部53bが取り付けられている。内側濾過部42を外側袋体41の内部に折り込んだ状態のもとで、それぞれのホック53を噛み合わせると、図4に示されるように、スリット48には複数箇所に閉塞部が形成され、スリット48の幅が過度に広げられることを防止できる。
【0032】
外側袋体41を図3に示すように長方形に保持するために、外側袋体41の内部には針金からなる保形用の線材54が組み込まれている。この線材54は、外側袋体41に設けられた接続口45を円筒形状に保持するとともに、接続口45を吐出口37に締結させるための環状部54aを有し、環状部54aに連なって接続口45の外方には径方向に突出する操作つまみ部54bが設けられている。2つの操作つまみ部54bを接近させるように弾性変形させると、環状部54aの内径が広がり、容易に接続口45を吐出口37に取り付けることができる。操作つまみ部54bから手を離すと、環状部54aが弾性力により小径となって接続口45は吐出口37に締結される。線材54はそれぞれの操作つまみ部54bに連なって外側袋体41の図3における左片と上側の長辺47とに伸びている。長辺47の後端部にまで線材54が伸びているので、外側袋体41はほぼ長方形となった状態に展開されることになる。
【0033】
図6は内側濾過部42を外側袋体41から引き出した状態を示す集塵バッグ40の展開図である。外側袋体41は図6(A)に示すように、接続口45が設けられて全体的にほぼ長方形となった袋片部43a,43bを重ね合わせるように折り畳んでスリット48以外の部分を閉塞する。外側袋体41の図6における右端部は縫い代が設けられておらず、開口されているが、この部分を閉塞するためにレール状の係合部材55が取り付けられている。
【0034】
袋片部43aに連なって濾過部44aが設けられており、袋片部43bに連なって濾過部44bが設けられている。濾過部44aには複数のホック53の雌部53aが縫い付けられており、濾過部44bには雌部53aに噛み合う雄部53bが縫い付けられている。2枚の濾過部44a,44bのうち外側袋体41のスリット48に連なる辺以外の3辺は、縫い目や接着により閉じられており、内部には排気室51が形成されている。図6に示されるように、内側濾過部42が外側袋体41に対して展開された状態のもとで、内側濾過部42をスリット48から外側袋体41の内部に折り込むと、図5に示されるように、外側袋体41と内側濾過部42の内外二重構造の集塵バッグ40が製造される。
【0035】
研削機10により例えばコンクリート材を研削加工する場合には、図1に示すように、研削機10の動力工具本体10aに集塵アダプター27が装着される。研削作業により生じた粉塵は、砥石ホイール21の回転による慣性力と集塵ファン28の吸引力により、集塵カバー30の内壁面に沿って吐出口37に導かれ、集塵バッグ40の集塵室46内に流入する。これにより、外側袋体41は、図7および図8に示されるように膨らんだ状態となる。布製の集塵バッグ40はフィルタの機能を果たし、図7において矢印で示すように、集塵室46内からは空気のみが外側袋体41を透過して外部に排出され、粉塵は内部に捕捉される。一方、集塵室46内からは内側濾過部42を透過して排気室51内に空気のみが流入し、流入した空気はスペーサ52である通気性のスポンジを透過してスリット48から外部に排出され、粉塵は内部に捕捉される。図7には清浄化された空気が外部に排出されて粉塵56が集塵室46に収集された状態が示されている。
【0036】
このように、集塵バッグ40内に流入した粉塵空気流は、外側袋体41の袋片部43a,43bと内側濾過部42の濾過部44a,44bとを空気が透過して濾過されることになり、外側袋体41のみからなる集塵バッグに比して濾過面積が大きくなる。これにより、集塵バッグ40のサイズを大きくすることなく、集塵カバー30の吐出口か37ら集塵バッグ40へ向かう流路の圧力損失を小さくすることができ、集塵効率を向上させることができる。しかも、集塵バッグ40のサイズを大型化する必要がなくなるので、動力工具の操作性を高めことができる。
【0037】
集塵バッグ40とこれが装着された集塵カバー30とを有する集塵アダプター27を動力工具としての研削機10に装着すると、研削加工により発生した粉塵を集塵バッグ40に収集して外部に粉塵を飛散させることを防止できる。集塵アダプター27の集塵ファン28により空気流を形成すると、粉塵を吸引して集塵バッグ40に粉塵を供給することができる。
【0038】
外側袋体41の内部に複数の内側濾過部42を配置するようにすると、集塵バッグ40のサイズを大きくすることなく、濾過面積を大きくすることができる。
【0039】
図9および図10には、外側袋体41の内部に2つの内側濾過部42a,42bを折り込むようにした集塵バッグ40が示されている。
【0040】
図9に示される集塵バッグ40は、外側袋体41の一方の長辺47側に相互に隣り合って2つのスリット48a,48bが形成されている。スリット48aから外側袋体41の内部に内側濾過部42aが折り込まれており、スリット48bから外側袋体41の内部に内側濾過部42bが折り込まれている。それぞれの内側濾過部42a,42bは開口部49a,49bが隣り合うように同じ向きとなっている。これに対し、図10に示される集塵バッグ40は、外側袋体41の一方の長辺47側に形成されたスリット48aから外側袋体41の内部に内側濾過部42aが折り込まれている。一方、外側袋体41の他方の長辺側に形成されたスリット48bから外側袋体41の内部に内側濾過部42bが折り込まれている。
【0041】
このように、外側袋体41の内部に2つの内側濾過部42a,42bを折り込むようにすると、1つの内側濾過部42の集塵バッグ40よりも濾過面積を大きくすることができる。なお、図9および図10は、それぞれ2つの内側濾過部42a,42bを外側袋体41内に配置するようにしているが、3つあるいはそれ以上の内側濾過部を外側袋体41の内部に配置するようにしても良い。
【0042】
図11および図12は、比較例である集塵バッグ60を示している。集塵バッグ60を一重構造とすると、濾過面積を大きくするには、集塵バッグ60のサイズを大きくする必要があるが、サイズを大きくすると、研削機10の操作性が低下することになる。これに対し、本発明のように集塵バッグ40を外側袋体41とその内部に折り込まれる少なくとも1つの内側濾過部42とにより形成すると、集塵バッグ40のサイズを大きくすることなく、粉塵を除去するためのフィルタとしての濾過面積を広くすることができる。これにより、集塵効率を高めることができる。外側袋体41と内側濾過部42の形状は、図示する長方形に限られず、正方形等の任意の形状とすることができる。
【0043】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、図1には集塵バッグ40が研削機10に装着された場合を示すが、集塵バッグ40を切断機に装着し、切断時に発生する粉塵を集塵バッグ40により収集するようにしても良い。動力工具としての研削機10は電動モータ12により回転軸13を駆動するようにしているが、エアモータにより回転軸を駆動するようにしたタイプの研削機等の動力工具にも集塵アダプターや集塵バッグを使用することができる。
【符号の説明】
【0044】
10…研削機、10a… 動力工具本体、11a…モータケース、11b…ギヤケース、12…電動モータ、13…回転軸、14,15…ベベルギヤ、16…出力軸、16a…延長スピンドル、17…軸受、18…ホルダー、21…砥石ホイール、22…台盤、23…ダイヤモンド砥石、25…雄ねじ部、26…ロックナット、27…集塵アダプター、28…集塵ファン、30…集塵カバー、30a…第1のケース半体、30b…第2のケース半体、31…端壁部、32…周壁部、33…仕切り壁部、33a…吸い込み口、34…工具カバー、35…ファン収容室、36…ボリュート流路、37…吐出口、38…防塵リング、39…板ばね、41…外側袋体、42…内側濾過部、43a,43b…袋片部、44a,44b…濾過部、45…接続口、46…集塵室、48…スリット、49…開口部、51…排気室、52…スペーサ、53…ホック、54…線材、54a…環状部、54b…操作つまみ部、55…係合部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削機や切断機等の動力工具に用いられる集塵バッグ、集塵バッグを備えた集塵アダプターおよび動力工具に関する。
【背景技術】
【0002】
先端工具を動力源により回転駆動して被加工物を加工する動力工具には、研削機や切断機がある。研削機は、砥石を先端工具として被加工物を研削加工する動力工具であり、ディスクグラインダーやディスクサンダーとも言われる。切断機は、円板形の鋸刃を先端工具として被加工物を切断加工する動力工具であり、丸鋸とも言われる。
【0003】
例えば、コンクリート材や硬質系窯業材を切断または研削するためのディスクグラインダーにおいては、ダイヤモンドカッタやダイヤモンドカップホイール等の刃具を先端工具として被加工物の切断や研削加工が行われている。切断作業や研削作業には多くの粉塵が発生するので、粉塵の飛散を防止するために粉塵拡散防止用の集塵カバーをディスクグラインダーに装着することがある。集塵カバーは刃具を覆うようにしてディスクグラインダーに装着することが可能なので、特許文献1に記載されるように、集塵カバーの内部に溜まった粉塵を外部に案内するためにファンケーシングや集塵カバーにはホースやダクトが設けられている。ホースやダクトを介して粉塵を集塵機に案内すると、集塵機により粉塵を収集することができる。
【0004】
ホース等により動力工具を集塵機に接続することなく、動力工具に設けられた集塵カバーの排出口に布製の集塵バッグを装着すれば、長いホースを集塵カバーに装着する必要がなく、動力工具を用いた研磨加工等の作業性を高めることができる。
【0005】
例えば、特許文献2に記載された動力工具においては、円板形の鋸刃を先端工具として被加工物を切断加工したときに発生する粉塵を粉塵袋に収集するようにしている。また、特許文献3は、切断の際に発生する切り屑を収納するためにダストバッグが装着された卓上切断機を開示している。このような粉塵袋やダストバッグは布製であり、繰り返し使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−138203号公報
【特許文献2】特許第3633370号公報
【特許文献3】実開昭62−134618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2,3に記載されるように、研削機や切断機等の動力工具に集塵バッグを装着するようにすると、動力工具から離れた位置の集塵機に粉塵を供給するために長いホースを用いる必要がなく、研削作業等の作業性を高めることができることになる。しかしながら、集塵バッグは集塵カバーの吐出口に装着した状態で研削や切断作業を行うため、集塵バッグの大きさは自ずと制約されてしまう。
【0008】
さらに、動力工具の砥石や切刃を回転駆動するための回転軸にファンを設けて砥石等の先端工具の回転による慣性力とファンの吸引力を利用して粉塵を集塵バッグに収集するようにした形態の動力工具においては、集塵効率を向上させてより多くの粉塵を収集できるようにするには、集塵カバーの吐出口から集塵バッグへ向かう流路での圧力損失を小さくし、粉塵がスムーズに集塵バッグに収集されるようにすることが必要である。集塵バッグは通気性を有する布製の生地で製造されており、フィルタ機能を果たすため、圧力損失を小さくするには、集塵バッグの表面積を増やして、できるだけ多くの風量が集塵バッグを通過するようにすることが有効である。
【0009】
しかしながら、前述のように集塵バッグは集塵カバーの吐出口に装着された状態で使用されるので、集塵バッグのサイズを過度に大きくすると、研削や切断作業の操作性を損なってしまうという問題点がある。
【0010】
本発明の目的は、集塵バッグを小型化しつつ集塵効率を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の集塵バッグは、吐出口に装着され、被加工物を加工する際に生じる粉塵を収集する集塵バッグであって、前記吐出口に装着される接続口が設けられ、内部に前記接続口に連通する集塵室を形成する布製の外側袋体と、前記外側袋体の内側で対向する2つの面を備える内側濾過部と、前記内側濾過部の間隔を保持するスペーサとを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の集塵バッグは、前記スペーサは、前記内側濾過部よりも高い通気性を有することを特徴とする。本発明の集塵バッグは、前記内側濾過部の端部は留め具により閉じられる閉塞部を複数個形成することを特徴とする。本発明の集塵バッグは、前記外側袋体には相互に隣り合う複数の内側濾過部を有することを特徴とする。本発明の集塵バッグは、前記外側袋体に相互に反対側に位置する複数の内側濾過部を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の集塵アダプターは、先端工具を回転させて被加工物を加工する動力工具に装着され、被加工物を加工する際に生じる粉塵を吸引して収集する集塵アダプターであって、前記先端工具を覆うように前記動力工具に着脱自在に装着され、粉塵を吸引する集塵カバーと、上記集塵バッグとを有することを特徴とする。本発明の集塵アダプターは、動力工具を回転駆動する回転軸により駆動される集塵ファンを有することを特徴とする。
【0014】
本発明の動力工具は、上記集塵バッグ若しくは集塵アダプターを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、集塵バッグは外側袋体とこの内部に設けられる内側濾過部とを有しており、粉塵空気流が接続口から流入すると、外側袋体により濾過して外側袋体から清浄化された空気を排出する一方、内側濾過部により濾過して内側濾過部内から清浄化された空気を外部に排出することになる。これにより、集塵バッグのサイズを大型化することなく、集塵バッグの濾過面積を大きくすることができるので、研削機や切断機等の動力工具の操作性を損なうことなく、集塵効率を高めることができる。
【0016】
集塵バッグとこれが装着された集塵カバーとを有する集塵アダプターを動力工具に装着することにより、動力工具を集塵タイプにすることができるとともに、その動力工具の操作性を損なうことなく、集塵効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】動力工具の一例である研削機を示す断面図である。
【図2】図1に示された集塵バッグの斜視図である。
【図3】図2の正面図である。
【図4】図3の平面図である。
【図5】図3におけるA−A線に沿う横断面図である。
【図6】(A)は図2に示された集塵バッグの展開図であり、(B)は(A)におけるB−B線に沿う断面図である。
【図7】粉塵が収集された状態における集塵バッグの横断面図である。
【図8】粉塵が収集された状態における集塵バッグの平面図である。
【図9】他の実施の形態である集塵バッグを示す横断面図である。
【図10】さらに他の実施の形態である集塵バッグを示す横断面図である。
【図11】比較例である集塵バッグの正面図である。
【図12】図11の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示す動力工具は、携帯型つまり手持ち式の研削機10であり、この研削機10は、例えば、コンクリートや石材等を被加工物としてその表面を研削加工するために使用され、ディスクグラインダーやディスクサンダーとも言われる。
【0019】
この研削機10は円筒形状のモータケース11aと、その先端部に取り付けられるギヤケース11bとを有し、モータケース11aの内部には電動モータ12が動力源として収容される。電動モータ12はモータケース11aの後端部から引き出される図示しない電源コードを介して商用電源に接続され、商用電源から供給される電力により駆動される。電動モータ12の回転軸13にはベベルギヤ14が取り付けられ、このベベルギヤ14と噛み合うベベルギヤ15が回転軸13に直角に配置されたスピンドルつまり出力軸16に取り付けられており、出力軸16は電動モータ12により回転駆動される。この出力軸16はギヤケース11bに取り付けられる軸受17により回転自在に支持されている。軸受17はギヤケース11bに固定される環状のホルダー18によりギヤケース11bに取り付けられており、ホルダー18は出力軸16と同軸となって出力軸16の径方向外方に設けられている。
【0020】
研削機10は、モータケース11aとギヤケース11bとこれらの内部に組み込まれる上述した部材により動力工具本体10aが構成される。動力工具本体10aの出力軸16には延長スピンドル16aがねじ結合されており、この延長スピンドル16aには、図1に示すように、先端工具としてのカップ型の砥石ホイール21が取り付けられる。
【0021】
この砥石ホイール21はカップ形状に形成された台盤22を有し、この台盤22の前面外周部には複数のダイヤモンド砥石23が接着等の手段により固定されている。砥石ホイール21は、延長スピンドル16aの先端に設けられた雄ねじ部25にねじ結合する締結部材としてのロックナット26により延長スピンドル16aに取り付けられ、ロックナット26には雄ねじ部25にねじ結合される雌ねじが設けられている。
【0022】
動力工具本体10aには集塵アダプター27が着脱自在に装着される。集塵アダプター27は、電動モータ12により砥石ホイール21とともに回転駆動される集塵ファン28と、この集塵ファン28を収容するとともに砥石ホイール21の径方向外方を覆う集塵カバー30とを有している。集塵ファン28はディスク部28aとこれの前面側に設けられた複数のブレード部28bとを有しており、集塵ファン28の径方向中心のボス部28cが延長スピンドル16aに嵌合して固定されている。延長スピンドル16aには円周方向に180度の位相をずらして平坦面が設けられた二面幅構造となっており、出力軸16の回転は延長スピンドル16aを介して集塵ファン28に伝達される。
【0023】
集塵カバー30は、端壁部31とこれの正面側の円筒形状の周壁部32と集塵ファン28の外周部を介して端壁部31に対向する仕切り壁部33とを有しており、仕切り壁部33の正面側には工具カバー34が設けられている。工具カバー34は砥石ホイール21の外径よりも大きな内径となっており、砥石ホイール21の径方向外方を覆うことになる。端壁部31の径方向中心部には動力工具本体10aのホルダー18に嵌合されるボス部31aが設けられており、集塵カバー30はボス部31aの部分でホルダー18に着脱自在に装着される。
【0024】
端壁部31と仕切り壁部33との間はファン収容室35となっており、このファン収容室35内に集塵ファン28が組み込まれる。仕切り壁部33には吸い込み口33aが形成されており、集塵ファン28を回転させると、吸い込み口33aを介して外部から空気がファン収容室35内に流入する。周壁部32と集塵ファン28の外周との間に形成されるボリュート流路36は、円周方向の下流側に向かうに従って断面積が徐々に大きくなっている。ボリュート流路36の最下流に連通させて集塵カバー30には吐出ダクトつまり吐出口37が設けられている。したがって、集塵ファン28が回転すると、砥石ホイール21により研磨処理されて発生した粉塵が集塵カバー30内に入り込む空気流が形成され、この空気流は吐出口37に向かう。このように、集塵ファン28により吐出口37に向かう粉塵空気流が形成される。
【0025】
集塵カバー30は、それぞれナイロンなどの樹脂材料により成形された第1と第2のケース半体30a,30bを組み合わせることにより構成される。第1のケース半体30aは端壁部31と周壁部32の一部と吐出口37の一部とが一体となっている。第2のケース半体30bは周壁部32の残りの一部と吐出口37の残りの一部と仕切り壁部33とが一体となっており、第2のケース半体30bには工具カバー34とが取り付けられている。
【0026】
工具カバー34の内部には防塵リング38が出力軸16の軸方向に移動自在に装着されている。防塵リング38には板ばね39により工具カバー34の先端面より突出する方向にばね力が加えられており、砥石ホイール21を用いてコンクリートの表面等を研削加工するときには、防塵リング38が砥石ホイール21の径方向外方を確実に覆うことになり、粉塵が外部に吹き飛ばされるのを確実に防止することができる。
【0027】
集塵アダプター27は動力工具本体10aに着脱自在つまり取り外し自在に装着されており、図1に示す研削機10は集塵アダプター27が装着されたタイプと、集塵アダプター27を有しないタイプとに切り換えることができる。図1に示すように集塵アダプター27が装着されたタイプからこれを有しないタイプに切り換えるには、砥石ホイール21を延長スピンドル16aから取り外すとともに集塵ファン28と集塵カバー30とを取り外す。さらに、延長スピンドル16aを出力軸16から取り外して出力軸16に直接砥石ホイール21を取り付けることになる。
【0028】
図1に示されるように、集塵カバー30の円筒形状の吐出口37には集塵バッグ40が着脱自在に装着されている。集塵バッグ40は、図2および図5に示されるように、全体的にほぼ長方形となっており、それぞれ布製の外側袋体41とその内側の内側濾過部42との内外二重構造となっている。外側袋体41は、図5に示されるように、布製シート材を折り曲げることにより形成される第1の袋片部43aと第2の袋片部43bとを有している。ほぼ長方形の外側袋体41の長手方向の一端部には、幅方向一方側に変位させて接続口45が形成されており、この接続口45は吐出口37に装着される。
【0029】
外側袋体41の内部には接続口45に連通する集塵室46が形成されており、集塵カバー30の吐出口37から吐出された粉塵空気流は集塵室46内に供給される。外側袋体41の幅方向の1つの辺、つまり図2において上側の長辺47にはスリット48が形成されており、他の3辺は閉じられている。内側濾過部42は外側袋体41よりも小型であって全体的に長方形となっており、図5に示されるように、第1の濾過部44aと第2の濾過部44bとを有している。内側濾過部42の1辺にはスリット48に連通する開口部49が形成され、他の3辺は閉じられており、内側濾過部42の内部は排気室51となっている。
【0030】
集塵室46内に流入した粉塵空気流を濾過して外側袋体41から外部に清浄化して排気する一方、内側濾過部42により清浄化して排気室51に排気してから外部に排出することになる。集塵室46内に流入した粉塵空気流により内側濾過部42を構成する両方の濾過部44a,44bが密着して排気室51が潰されるのを防止するために、内側濾過部42の内部にはスペーサ52が配置されている。このスペーサ52は布製シート材よりも高い通気性を有する長方形のスポンジにより形成されており、スペーサ52は排気室51のスペースを確保する厚み寸法を有している。スペーサ52としては、濾過部44a,44bが密着することを防止できれば、スポンジを使用することなく、多孔質の焼結金属製の板材を用いても良く、針金を折り曲げて形成した枠体を用いるようにしても良い。
【0031】
内側濾過部42を構成する濾過部44a,44bには、開口部側に位置させて留め具としてのホック53が所定の間隔を隔てて複数個設けられている。図6に示されるように、一方の濾過部44aにはホック53の雌部53aが取り付けられ、他方の濾過部44bにはホック53の雄部53bが取り付けられている。内側濾過部42を外側袋体41の内部に折り込んだ状態のもとで、それぞれのホック53を噛み合わせると、図4に示されるように、スリット48には複数箇所に閉塞部が形成され、スリット48の幅が過度に広げられることを防止できる。
【0032】
外側袋体41を図3に示すように長方形に保持するために、外側袋体41の内部には針金からなる保形用の線材54が組み込まれている。この線材54は、外側袋体41に設けられた接続口45を円筒形状に保持するとともに、接続口45を吐出口37に締結させるための環状部54aを有し、環状部54aに連なって接続口45の外方には径方向に突出する操作つまみ部54bが設けられている。2つの操作つまみ部54bを接近させるように弾性変形させると、環状部54aの内径が広がり、容易に接続口45を吐出口37に取り付けることができる。操作つまみ部54bから手を離すと、環状部54aが弾性力により小径となって接続口45は吐出口37に締結される。線材54はそれぞれの操作つまみ部54bに連なって外側袋体41の図3における左片と上側の長辺47とに伸びている。長辺47の後端部にまで線材54が伸びているので、外側袋体41はほぼ長方形となった状態に展開されることになる。
【0033】
図6は内側濾過部42を外側袋体41から引き出した状態を示す集塵バッグ40の展開図である。外側袋体41は図6(A)に示すように、接続口45が設けられて全体的にほぼ長方形となった袋片部43a,43bを重ね合わせるように折り畳んでスリット48以外の部分を閉塞する。外側袋体41の図6における右端部は縫い代が設けられておらず、開口されているが、この部分を閉塞するためにレール状の係合部材55が取り付けられている。
【0034】
袋片部43aに連なって濾過部44aが設けられており、袋片部43bに連なって濾過部44bが設けられている。濾過部44aには複数のホック53の雌部53aが縫い付けられており、濾過部44bには雌部53aに噛み合う雄部53bが縫い付けられている。2枚の濾過部44a,44bのうち外側袋体41のスリット48に連なる辺以外の3辺は、縫い目や接着により閉じられており、内部には排気室51が形成されている。図6に示されるように、内側濾過部42が外側袋体41に対して展開された状態のもとで、内側濾過部42をスリット48から外側袋体41の内部に折り込むと、図5に示されるように、外側袋体41と内側濾過部42の内外二重構造の集塵バッグ40が製造される。
【0035】
研削機10により例えばコンクリート材を研削加工する場合には、図1に示すように、研削機10の動力工具本体10aに集塵アダプター27が装着される。研削作業により生じた粉塵は、砥石ホイール21の回転による慣性力と集塵ファン28の吸引力により、集塵カバー30の内壁面に沿って吐出口37に導かれ、集塵バッグ40の集塵室46内に流入する。これにより、外側袋体41は、図7および図8に示されるように膨らんだ状態となる。布製の集塵バッグ40はフィルタの機能を果たし、図7において矢印で示すように、集塵室46内からは空気のみが外側袋体41を透過して外部に排出され、粉塵は内部に捕捉される。一方、集塵室46内からは内側濾過部42を透過して排気室51内に空気のみが流入し、流入した空気はスペーサ52である通気性のスポンジを透過してスリット48から外部に排出され、粉塵は内部に捕捉される。図7には清浄化された空気が外部に排出されて粉塵56が集塵室46に収集された状態が示されている。
【0036】
このように、集塵バッグ40内に流入した粉塵空気流は、外側袋体41の袋片部43a,43bと内側濾過部42の濾過部44a,44bとを空気が透過して濾過されることになり、外側袋体41のみからなる集塵バッグに比して濾過面積が大きくなる。これにより、集塵バッグ40のサイズを大きくすることなく、集塵カバー30の吐出口か37ら集塵バッグ40へ向かう流路の圧力損失を小さくすることができ、集塵効率を向上させることができる。しかも、集塵バッグ40のサイズを大型化する必要がなくなるので、動力工具の操作性を高めことができる。
【0037】
集塵バッグ40とこれが装着された集塵カバー30とを有する集塵アダプター27を動力工具としての研削機10に装着すると、研削加工により発生した粉塵を集塵バッグ40に収集して外部に粉塵を飛散させることを防止できる。集塵アダプター27の集塵ファン28により空気流を形成すると、粉塵を吸引して集塵バッグ40に粉塵を供給することができる。
【0038】
外側袋体41の内部に複数の内側濾過部42を配置するようにすると、集塵バッグ40のサイズを大きくすることなく、濾過面積を大きくすることができる。
【0039】
図9および図10には、外側袋体41の内部に2つの内側濾過部42a,42bを折り込むようにした集塵バッグ40が示されている。
【0040】
図9に示される集塵バッグ40は、外側袋体41の一方の長辺47側に相互に隣り合って2つのスリット48a,48bが形成されている。スリット48aから外側袋体41の内部に内側濾過部42aが折り込まれており、スリット48bから外側袋体41の内部に内側濾過部42bが折り込まれている。それぞれの内側濾過部42a,42bは開口部49a,49bが隣り合うように同じ向きとなっている。これに対し、図10に示される集塵バッグ40は、外側袋体41の一方の長辺47側に形成されたスリット48aから外側袋体41の内部に内側濾過部42aが折り込まれている。一方、外側袋体41の他方の長辺側に形成されたスリット48bから外側袋体41の内部に内側濾過部42bが折り込まれている。
【0041】
このように、外側袋体41の内部に2つの内側濾過部42a,42bを折り込むようにすると、1つの内側濾過部42の集塵バッグ40よりも濾過面積を大きくすることができる。なお、図9および図10は、それぞれ2つの内側濾過部42a,42bを外側袋体41内に配置するようにしているが、3つあるいはそれ以上の内側濾過部を外側袋体41の内部に配置するようにしても良い。
【0042】
図11および図12は、比較例である集塵バッグ60を示している。集塵バッグ60を一重構造とすると、濾過面積を大きくするには、集塵バッグ60のサイズを大きくする必要があるが、サイズを大きくすると、研削機10の操作性が低下することになる。これに対し、本発明のように集塵バッグ40を外側袋体41とその内部に折り込まれる少なくとも1つの内側濾過部42とにより形成すると、集塵バッグ40のサイズを大きくすることなく、粉塵を除去するためのフィルタとしての濾過面積を広くすることができる。これにより、集塵効率を高めることができる。外側袋体41と内側濾過部42の形状は、図示する長方形に限られず、正方形等の任意の形状とすることができる。
【0043】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、図1には集塵バッグ40が研削機10に装着された場合を示すが、集塵バッグ40を切断機に装着し、切断時に発生する粉塵を集塵バッグ40により収集するようにしても良い。動力工具としての研削機10は電動モータ12により回転軸13を駆動するようにしているが、エアモータにより回転軸を駆動するようにしたタイプの研削機等の動力工具にも集塵アダプターや集塵バッグを使用することができる。
【符号の説明】
【0044】
10…研削機、10a… 動力工具本体、11a…モータケース、11b…ギヤケース、12…電動モータ、13…回転軸、14,15…ベベルギヤ、16…出力軸、16a…延長スピンドル、17…軸受、18…ホルダー、21…砥石ホイール、22…台盤、23…ダイヤモンド砥石、25…雄ねじ部、26…ロックナット、27…集塵アダプター、28…集塵ファン、30…集塵カバー、30a…第1のケース半体、30b…第2のケース半体、31…端壁部、32…周壁部、33…仕切り壁部、33a…吸い込み口、34…工具カバー、35…ファン収容室、36…ボリュート流路、37…吐出口、38…防塵リング、39…板ばね、41…外側袋体、42…内側濾過部、43a,43b…袋片部、44a,44b…濾過部、45…接続口、46…集塵室、48…スリット、49…開口部、51…排気室、52…スペーサ、53…ホック、54…線材、54a…環状部、54b…操作つまみ部、55…係合部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出口に装着され、被加工物を加工する際に生じる粉塵を収集する集塵バッグであって、
前記吐出口に装着される接続口が設けられ、内部に前記接続口に連通する集塵室を形成する布製の外側袋体と、
前記外側袋体の内側で対向する2つの面を備える内側濾過部と、
前記内側濾過部の間隔を保持するスペーサとを有することを特徴とする集塵バッグ。
【請求項2】
前記スペーサは、前記内側濾過部よりも高い通気性を有することを特徴とする請求項1記載の集塵バッグ。
【請求項3】
前記内側濾過部の端部は留め具により閉じられる閉塞部を複数個形成することを特徴とする請求項1または2記載の集塵バッグ。
【請求項4】
前記外側袋体には相互に隣り合う複数の内側濾過部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の集塵バッグ。
【請求項5】
前記外側袋体に相互に反対側に位置する複数の内側濾過部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の集塵バッグ。
【請求項6】
先端工具を回転させて被加工物を加工する動力工具に装着され、被加工物を加工する際に生じる粉塵を吸引して収集する集塵アダプターであって、
前記先端工具を覆うように前記動力工具に着脱自在に装着され、粉塵を吸引する集塵カバーと、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の集塵バッグとを有することを特徴とする集塵アダプター。
【請求項7】
動力工具を回転駆動する回転軸により駆動される集塵ファンを有することを特徴とする請求項6記載の集塵アダプター。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の集塵バッグ若しくは集塵アダプターを備えた動力工具。
【請求項1】
吐出口に装着され、被加工物を加工する際に生じる粉塵を収集する集塵バッグであって、
前記吐出口に装着される接続口が設けられ、内部に前記接続口に連通する集塵室を形成する布製の外側袋体と、
前記外側袋体の内側で対向する2つの面を備える内側濾過部と、
前記内側濾過部の間隔を保持するスペーサとを有することを特徴とする集塵バッグ。
【請求項2】
前記スペーサは、前記内側濾過部よりも高い通気性を有することを特徴とする請求項1記載の集塵バッグ。
【請求項3】
前記内側濾過部の端部は留め具により閉じられる閉塞部を複数個形成することを特徴とする請求項1または2記載の集塵バッグ。
【請求項4】
前記外側袋体には相互に隣り合う複数の内側濾過部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の集塵バッグ。
【請求項5】
前記外側袋体に相互に反対側に位置する複数の内側濾過部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の集塵バッグ。
【請求項6】
先端工具を回転させて被加工物を加工する動力工具に装着され、被加工物を加工する際に生じる粉塵を吸引して収集する集塵アダプターであって、
前記先端工具を覆うように前記動力工具に着脱自在に装着され、粉塵を吸引する集塵カバーと、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の集塵バッグとを有することを特徴とする集塵アダプター。
【請求項7】
動力工具を回転駆動する回転軸により駆動される集塵ファンを有することを特徴とする請求項6記載の集塵アダプター。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の集塵バッグ若しくは集塵アダプターを備えた動力工具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−59843(P2013−59843A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201323(P2011−201323)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】
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