雨水排水配管構造
【課題】宅地内に降った雨水を配管内に一時貯溜したのち、徐々に道路の側溝や雨水排水本管に流出させて都市型洪水を緩和することができる雨水排水配管構造を提供する。
【解決手段】雨水桝1と雨水桝1を排水管2で接続した雨水排水配管構造であって、下流側に位置する雨水桝1の流入口1a、又は、下流側に位置する雨水桝1の流入口1aに接続された排水管2端部に、配管内に流入した雨水を一時貯溜するための堰3を設けると共に、その堰3に一時貯溜した雨水を徐々に排出するための孔3aを穿孔した構成とする。下流側に位置する雨水桝1の流入口1a、又は、下流側に位置する雨水桝1の流入口1aに接続された排水管2端部に設けられた堰3によって雨水は堰止められて雨水は一時貯溜されるたのち、一時貯溜された雨水は、堰3に設けられた孔3aより徐々に雨水桝1を介して雨水排水本管9へ排出される。
【解決手段】雨水桝1と雨水桝1を排水管2で接続した雨水排水配管構造であって、下流側に位置する雨水桝1の流入口1a、又は、下流側に位置する雨水桝1の流入口1aに接続された排水管2端部に、配管内に流入した雨水を一時貯溜するための堰3を設けると共に、その堰3に一時貯溜した雨水を徐々に排出するための孔3aを穿孔した構成とする。下流側に位置する雨水桝1の流入口1a、又は、下流側に位置する雨水桝1の流入口1aに接続された排水管2端部に設けられた堰3によって雨水は堰止められて雨水は一時貯溜されるたのち、一時貯溜された雨水は、堰3に設けられた孔3aより徐々に雨水桝1を介して雨水排水本管9へ排出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集中豪雨時の河川や下水道施設への負荷を低減させる雨水排水配管構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、道路や空き地(駐車場等)の舗装化が急速に進み、未舗装部分が殆どない都市化の進んだ地域が増えてきている。このような地域では、雨水が殆ど地中に浸透することなく、道路の側溝や下水道排水管などを通じて河川へ流れ込むため、短時間で河川の容量を超えて所謂、都市型洪水を引き起こし、社会問題となってきている。この問題は、地球温暖化が要因とも言われる昨今の異常気象に伴い、これから益々深刻化していくものと思われる。
【0003】
このような問題を緩和するため、宅地内の最終雨水桝と公共用雨水桝との間にオーバーフロー部材を、その下縁を宅内集水経路よりも上方に位置させて配設することにより、宅地内の最終雨水桝内と宅内集水経路内に、雨水を一定量貯溜可能とした住宅用雨水貯溜システムが提案された(特許文献1)。
【0004】
この住宅用雨水貯溜システムは、宅内集水経路の高さに合わせて、オーバーフロー部材にオリフィスを形成し、宅地内の最終雨水桝と宅内集水経路内に貯溜した雨水を上記オリフィスから徐々に排出するようになっている。これにより、家屋に降った雨水が、宅内集水経路を経て道路の側溝や下水道排水管に一気に流出するのを抑制し、集中豪雨時の河川や下水道施設への負荷を低減させることができる。
【特許文献1】特開2006−169774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記住宅用雨水貯溜システムは、宅地内の最終雨水桝と公共用雨水桝との間に配設されるオーバーフロー部材が、上流側継手部材、下流側継手部材、塩ビ直管、塩ビ細管から構成されたものであり、部品点数が多いためコストがかかるという問題があった。また、このオーバーフロー部材を宅地内の既設の最終雨水桝と公共用雨水桝との間に配設するには、地面の掘削や配管の変更等の大がかりな土木工事が必要となるため、コストがかかると共に工期が非常に長くなるという問題もあった。更に、貯溜した雨水を排出するためのオリフィスが詰まってしまうと、オーバーフロー部材を配設するのと同様に土木工事が必要となるため、メンテナンスが非常に困難であるという問題もあった。特に、この住宅用雨水貯溜システムは、上流側継手部材からオーバーフローした雨水を下流側継手部材へと排出する塩ビ直管が、宅内集水経路よりも上方に位置するという構造上(図1参照)、オーバーフロー部材に雨水が流入するのは台風などの稀なケースに限られ、通常の降雨ではオリフィスからのみの排出となって負担がかかるため、オリフィスが詰まり易く、メンテナンスが困難であるというのは到底無視できない問題である。
【0006】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、その解決しようとする課題は、宅地内に降った雨水を配管内に一時貯溜したのち、徐々に道路の側溝や雨水排水本管に流出させて都市型洪水を緩和することができる、安価で施工やメンテナンスが容易な雨水排水配管構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る雨水排水配管構造は、雨水桝と雨水桝を排水管で接続した雨水排水配管構造であって、下流側に位置する雨水桝の流入口、又は、下流側に位置する雨水桝の流入口に接続された排水管端部に、配管内に流入した雨水を一時貯溜するための堰を設けると共に、その堰に一時貯溜した雨水を徐々に排出するための孔を穿孔したことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の雨水排水配管構造においては、孔の底部が、下流側に位置する雨水桝の流入口の管底、又は、下流側に位置する雨水桝の流入口に接続された排水管端部の管底と同じ高さであることが好ましい。また、堰が着脱可能に設けられていることが好ましく、堰が、下流側に位置する雨水桝の流入口、又は、下流側に位置する雨水桝の流入口に接続された排水管端部に取付けられた取付け部材を介して着脱可能に設けられていることがより好ましい。更に、堰が水密的に設けられている雨水排水配管構造が好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の雨水排水配管構造は、下流側に位置する雨水桝の流入口、又は、下流側に位置する雨水桝の流入口に接続された排水管端部に設けられた堰によって雨水は堰止められ、その堰から上流側の雨水は一時貯溜される。このように、堰の上流側の配管内に一時的に一定量の雨水が貯溜されることで、一気に大量の雨水が河川へ流入するのを防止することができる。また、雨がやむと、配管内に一時貯溜された雨水は、堰に設けられた孔より徐々に雨水桝を介して雨水排水本管へ排出されて、次の雨に備えることができる。この雨水排水配管構造は、堰より上側は開口しているので、台風などの集中豪雨の際は、その開口部分から雨水が排出され、雨水の流れを無理に遮ることなく、配管内が満水になって上流側に位置する雨水桝から雨水が溢れてしまう心配もない。
一方、施工に際しては、下流側に位置する雨水桝の流入口、又は、下流側に位置する雨水桝の流入口に接続された排水管端部に堰を設けるだけなので、面倒な土木工事をしなくても既設の雨水排水配管にも簡単に後付けすることができて、短期間の簡易な施工で実施することが可能となり、コストを抑えることができる。
【0010】
また、孔の底部が、下流側に位置する雨水桝の流入口の管底、又は、下流側に位置する雨水桝の流入口に接続された排水管端部の管底と同じ高さである雨水排水配管構造は、この位置に一時貯溜した雨水を徐々に排出するための孔を穿孔することで、配管内に一時貯溜した雨水が滞溜することなく全て流出されるようになり、配管内が空水状態で次の雨に備えることができる。
【0011】
更に、堰が着脱可能に設けられている雨水排水配管構造は、堰を着脱可能にすることで、雨水を排出する孔や、雨水桝と雨水桝を接続する排水管など雨水排水配管内のメンテナンスがより容易となる。
【0012】
特に、堰が、下流側に位置する雨水桝の流入口、又は、下流側に位置する雨水桝の流入口に接続された排水管端部に取付けられた取付け部材を介して着脱可能に設けられている雨水排水配管構造は、例えば、取付け部材に堰を取付けるための溝を形成したりすると、その溝に堰を挿入するだけで、堰が雨水に流されてしまうのを防止することができるようになる。
【0013】
また、堰が水密的に設けられている雨水排水配管構造のように、堰と下流側に位置する雨水桝の流入口、又は、堰と下流側に位置する雨水桝の流入口に接続された排水管端部との境目部分からの雨水の流出を防ぐことで、より確実に雨水を一時貯溜して雨水の流出を抑制し、河川や下水道施設への負荷を低減させることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係る雨水排水配管構造を示す概略斜視図、図2は同配管構造の要部を示す概略断面図、図3は図2の部分拡大図、図4は同配管構造に用いる堰を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図、図5は同配管構造に用いる取付け部材を雨水桝に接続された排水管に取付けた状態を示す部分断面図、図6は同取付け部材に堰を取付けた状態を示す正面図である。
【0016】
本発明の雨水排水配管構造(以下、単に配管構造という。)は、図1に示すように、2つ以上の雨水桝1が排水管2によって接続され、それらの排水配管が継手8を介して公共の雨水排水本管9や側溝(不図示)へ接続されている宅地内において、宅地内の最も下流側に位置する雨水桝1に接続された排水管2の端部に堰3を設けたものである。
【0017】
この配管構造において、宅地内の家屋7に降った雨水は、家屋7の屋根7aを流下して屋根7aの周囲に設けられた軒樋5に流入し、堅樋6を経由して宅地内の排水管2から雨水桝1に集水されて、公共の雨水排水本管9を通じて河川や下水道施設に排出される。また、図3に示すように、雨水桝1の蓋体1Bには、多数の浸透孔1cが穿孔されているので、宅地内(庭等)に降った雨水もその浸透孔1cを通して雨水桝1に流入し、河川や下水道施設に流出するようになっている。
【0018】
上記配管構造に用いられる雨水桝1は、雨水桝1の桝本体1Aにホールソーなどで孔を穿孔することにより流入口1a及び流出口1bが設けられており、図3に示すように、その流入口1a、流出口1bには、水密性を向上させるための環状のシールパッキン1dがそれぞれ取付けられている。そして、図2に示すように、上流側に位置する雨水桝1の流出口1bと、下流側に位置する雨水桝1の流入口1aに、上流側から下流側にかけて1/100〜3/100程度の流れ勾配をつけながら排水管2を挿入することで、雨水桝1と雨水桝1は水密的に接続されている。
尚、予め流入口1aや流出口1bが穿孔された雨水桝を用いてもよいが、本実施形態のように、施工現場で流入口1a、流出口1bを穿孔することで、配管の自由度が向上するので好ましい。
また、雨水桝1の材質については特に限定されるものではないが、耐久性や施工性を考慮すると、ポリプロピレン樹脂製のものが好適に用いられる。
【0019】
本発明の配管構造は、上記のような配管設備を備えた宅地内において、台風などの集中豪雨時に、雨水が河川や下水道施設へ一気に流出するのを防ぐため、宅地内の最も下流側に位置する雨水桝1の流入口1aに接続された排水管2の端部に、次に説明する雨水を配管内に一時貯溜するための堰3を設けたものである。
【0020】
即ち、最も下流側に位置する雨水桝1の流入口1aに接続された排水管2の端部に設けられる堰3は、図4の(a),(b)、図6に示すように、排水管2の開口の下側半分を塞ぐ半円形の板体で、その外周面には、後述する取付け部材4の凹溝4aと嵌合する凸条3bが突設されている。また、この堰3の下部には、堰3で一時貯溜した雨水を徐々に排出するための小径の孔3aが1つ穿孔されている。堰3に穿孔された孔3aは、図3に示すように、その孔3aの底部が、下流側に位置する雨水桝1の流入口1aに接続された排水管2の管底と同じ高さとなるように形成されており、この位置に孔3aを穿孔することで、配管内に一時貯溜した雨水は滞溜することなく全て排出されて、次の雨までに再び堰3より上流側の配管内に雨水を一時貯溜することができるようなる。
【0021】
上記構成の堰3は、後述する取付け部材4を介して排水管2の端部に着脱可能に設けられて、宅地内に降った雨水を堰3より上流側の配管内に一時的に貯溜することにより、河川や下水道施設へ雨水が一気に流出するのを抑制するものである。従って、堰3に穿孔した孔3aの直径が大きすぎると、堰3より上流側の配管内に一時貯溜した雨水が孔3aから勢いよく排出されて、雨水の流出を抑制する効果が少なくなってしまうので好ましくない。反対に孔3aの直径が小さすぎると、雨水の流出量が少なくなりすぎて雨水が充分に排出されず、堰3より上流側に一時貯溜された雨水が行き場を失って堰3から溢れ、開口部分12から排出されてしまうことになるので、雨水の流出を抑制する効果が少なくなってしまう。更に、孔3aの直径が小さすぎると、孔3aがゴミ等で詰まり易くなるという不具合も生じるので、これらを考慮して、孔3aの直径は3〜20mm程度に形成されている。
尚、本実施形態の堰3には、孔3aが一つだけ穿孔されているが、孔3aの直径を小さくして複数穿孔してもよい。また、孔3aの底部が排水管2の管底と同じ高さであれば形状も円形に限定されるものではなく、例えば三日月のような形状に穿孔してもよい。
【0022】
また、上記堰3の形状を半円形よりも円形に近づけて開口部分12を小さくすると、堰3より上流側の貯溜量が増えて雨水の流出をより抑制することができるようになるし、開口部分12の大きい堰3を形成すると、雨水の一時貯溜量を少なくすることもできるようになる。更に、堰3に穿孔した孔3aの形状や大きさを変えることによっても、雨水の流出量を調整することができるので、施工する地域(雨量が多い地域や少ない地域)に合致した配管構造を簡単に提供することができる。
【0023】
以上のような構成の堰3を排水管2端部に設けるための取付け部材4は、図5、図6に示すように、蹄状をしたもので、その内周面には、前述した堰3の外周面に突設された凸条3bと嵌合する凹溝4aが形成されている。この凹溝4aには、半環状のパッキン4bが嵌着されており、このように凹溝4aに半環状のパッキン4bを嵌着することで水密性が向上し、堰3を取付け部材4に取付けたとき、隙間から雨水が漏れるのを防止することができるようになるので、堰3より上流側の配管内に雨水を確実に一時貯溜することができるようになる。
【0024】
上記取付け部材4は、図5に示すように、最も下流側に位置する雨水桝1の流入口1aに接続された排水管2の端部に接着剤等を塗布するなどして水密的に取付けられる。そして、前述した堰3の凸条3bを、上方から取付け部材4の凹溝4aに挿入すると、凸条3bと凹溝4aとが嵌合し、簡単に堰3を取付け部材4に取付けることができる。しかも、凸条3bと凹溝4aが確実に嵌合するので、堰3が雨水の流れに押されて取付け部材4から外れてしまう心配もない。一方、堰3は、上方へ引き上げるだけで簡単に取付け部材4から取り外すことができるので、雨水を排出する孔3a、雨水桝1と雨水桝1を接続する排水管2、堰3に溜まったゴミ掃除など、配管内のメンテナンスを簡単に行うことができる。
【0025】
上記のように、本発明の配管構造の要部である堰3は、取付け部材4を介して、最も下流側に位置する雨水桝1に接続された排水管2の端部に着脱可能に設けられている。排水管2の端部に堰3を設けると、図2、図6に示すように、排水管2の開口の下側半分を堰3が塞いで雨水を堰止めするので、雨水は堰3から上流側の配管内に一時貯溜される。このように、堰3の上流側の配管内に一時的に雨水を貯溜すると、台風などの集中豪雨時に、大量の雨水が雨水排水本管9を介して一気に河川や下水道施設へ流出するのが抑制されるので、都市型洪水を緩和することができるようになる。この堰3を設けたとしても、上記のように堰3より上側部分は開口しているので、台風などの集中豪雨時は、その開口部分12から雨水は排出されて、配管内が満水になって上流側に位置する雨水桝1が溢れてしまったり雨水が逆流したりする心配もない。一方、雨がやむと、配管内に一時貯溜された雨水は、堰3に設けられた孔3aより徐々に雨水桝1を介して雨水排水本管9へ排出されて配管内は空水となるので、次の雨に備えることができる。
尚、孔のない堰を排水管2の端部に設けた場合には、配管内に一時貯溜された雨水は徐々に流出することがないため、雨水桝1から容易に取水することができ、貯溜された雨水を庭の水遣りなど有効に利用することが可能となるのは言うまでもない。
【0026】
また、上記の堰3は、図7に示すような取付け部材40を介して排水管2の端部に設けることもできる。この取付け部材40は、前述した取付け部材4を排水管2の端面から下流側に延設して、堰3の凸条3bと嵌合する凹溝4aや水密性を向上させる半環状のパッキン4bを、排水管2の端面から下流側にシフトさせて形成したものである。この取付け部材40は、排水管2の端部に取付けたときに、雨水が滞溜するスペースが生じないように段差を設けながら延設されている。これによって、取付け部材40に堰3を取付けたとき、孔3aの底部が排水管2の管底と同じ高さになっている。
この取付け部材40のその他の構成は前述した取付け部材4と同様であるので、同一部材に同一符号を附して説明を省略する。
【0027】
前述した取付け部材4を用いて堰3を設けると、排水管2の開口断面積を半分塞いでしまうことになるが、上記の取付け部材40を用いて排水管2の端部に堰3を設けると、堰3が排水管2の端面から下流側へシフトするので、排水管2の開口断面積の半分に加えて、上から見たときのシフトした分だけの面積が開口して開口部分12が増大するため、排水管2の開口断面積を縮小させなくてすむ。即ち、雨水を一時貯溜しながらも、開口部分12からオーバーフローする雨水の流れを阻害しにくいという効果が得られる。更にその効果を増すために、堰3の上部を下流側に倒して堰3を傾斜させて設けてもよい(不図示)。
【0028】
上記2つの実施形態の配管構造に用いる堰3は、排水管2の端部に設けられるものであるが、図8に示すような公共の雨水桝10に接続された排水管2の端部には設けることができない。図8に示す公共の雨水桝10は、流入口10a及び流出口10bが桝本体10Aより突設されたものであって、この公共の雨水桝10に排水管2を接続すると、排水管2の端部は、流入口10aの先端に形成された挿入口11aに当接してしまうので、このようなタイプの公共の雨水桝10には、図9、図10、図11に示す堰30と取付け部材41を用いればよい。
【0029】
図9の(a),(b)に示す堰30は、後述する取付け部材41に取付けたときに、取付け部材41の係合突片4dと干渉しないように平面視が略逆凸型に形成されたもので、前述した堰3と同様に半円形の板体であって、その外周面には凸条3bが突設されている。また、その下部には孔3aが穿孔されている。
尚、この実施形態のように、堰30を公共の雨水桝10の流入口10aに設ける場合は、堰30の孔3aの底部と公共の雨水桝10の流入口10aの管底とが同じ高さに穿孔する必要がある。
この堰30のその他の構成は前述した堰3と同様であるので、同一部材に同一符号を附して説明を省略する。
【0030】
上記堰30を雨水桝10に設けるための取付け部材41は、図10、図11に示すように、前述した取付け部材4の外周面に、雨水桝10内面の流入口10aの周囲面に当接する鍔部4cと、前述した取付け部材4の内周に、流入口10aに挿入して係合する係合突片4dが形成されたものである。この係合突片4dは、取付け部材41を雨水桝10の流入口10aに取付けたときに、雨水の流れを阻害しないよう、取付け部材41の内周面の全域ではなく、2ヶ所に分断されて設けられている。
この取付け部材41のその他の構成は前述した取付け部材4と同様であるので、同一部材に同一符号を附して説明を省略する。
【0031】
上記堰30と取付け部材41は、まず、取付け部材41の鍔部4cに接着剤を塗布し、係合突片4dを公共の雨水桝10の流入口10aに挿入して係合させると共に、公共の雨水桝10の流入口10aの周囲面に鍔部4cを当接させることにより、取付け部材41を流入口10aの根元部分(桝本体10A側)に取付ける。そして、堰30の凸条3bを取付け部材41の凹溝4aに上方から挿入して、凸条3bと凹溝4aを嵌合させることによって、取付け部材41に堰30を取付ける。このようにすると、上記公共の雨水桝10のように、流入口10aが突設された雨水桝にも堰30を着脱可能に設けることができる。
尚、図示はしないが取付け部材41も前述した取付け部材40と同様に、堰30を流入口10aの根元部分(桝本体10A側)から下流側へシフトさせて設けることができるように形成してもよいのは言うまでもない。
【0032】
上記2つの実施形態の配管構造は、配管内に一時貯溜するための堰3を、取付け部材4を介して排水管2の端部に設けたものであるが、例えば、図12に示すような堰31を用いると、排水管2の端部に直接設けることができる。
【0033】
図12に示す堰31は、排水管2を内嵌合する円筒体で、その一端には、円筒体の開口の下側半分を塞ぐ半円形状の堰本体31aが形成されており、その堰本体31aによって配管内の雨水を一時貯溜するようになっている。堰本体31aの下部には前述した堰3と同じ孔3aが穿孔されており、堰31によって一時貯溜された雨水を徐々に雨水桝1に排出するようになっている。
尚、この実施形態に用いる堰31は、雨水の流れに押されて排水管2から外れてしまう恐れがあるので、堰31と排水管2の上部に孔を穿孔して、図13に示すように、ボルト13aとナット13bによって外れないように取付けられている。また、前述した取付け部材40と同様に、堰31の堰本体31aを下流側へシフトさせて設けてもよい。(不図示)
【0034】
上記のような堰31を用いると、前述した堰3よりも排水管2から取り外すのに手間がかかるので、メンテナンス性は多少劣るが、排水管2に取付けるのが簡単であるため、施工性には優れるといった利点がある。
尚、堰31は、メンテナンスの際に取り外しができるように、接着剤を用いずに、上記のようにボルト13aとナット13bによって設けることが好ましい。また、その他にも、堰31と排水管2の端部に、それぞれ係止部と被係止部を設けて固定する方法も考えられる。
【0035】
前述した他にも、雨水を堰止めて配管内に雨水を一時貯溜するための堰を、雨水桝1の流入口1a、又は、雨水桝1の流入口1aに接続された排水管2の端部に設ける種々の実施形態が考えられる。例えば、雨水桝1の流入口1aに堰3が一体成形された雨水桝や、排水管2の端部に堰3が一体成形された排水管を用いて堰3を設けるなどの方法も考えられるが、前述した実施形態のように、雨水桝1又は排水管2とは別体に堰3を形成し、あとから堰3を設けるほうが、施工性に優れ、コストを抑えることもできるので好ましい。
【0036】
更に本発明の配管構造においては、上記のように排水管2の端部に堰3を設けると共に、雨水桝1の桝本体1Aの側面にも複数の浸透孔を穿孔して雨水桝1を浸透桝とし、排水管2にも複数の浸透孔を穿孔して排水管2を浸透管とすると、雨水は堰3に穿孔された孔3a以外からも徐々に排出されるので、堰3(堰31の場合は堰本体31a)の高さを高くするなどして配管内の貯溜量を増やすことが可能となり、より雨水の流出を抑制する効果を大きくすることもできる。また、このようにすると地表に降った雨水は、地表面から地中へ浸透し、浸透桝や浸透管に穿孔された孔から浸透桝や浸透管へ浸透するため、効率よく配管内に一時貯溜することができる。排水管2を浸透管とした場合は流れ勾配を無しにしてもよいし、施工高さも徐々に下げる必要はなく同じ高さでよい。
尚、堰3(堰31の場合は堰本体31a)の高さを高くする場合は、前述した取付け部材40に取付けられた堰3のように、堰3を下流側へシフトさせて開口部分12を増大させ、排水管2の開口断面積を縮小しないようにすることが好ましい。
また、本実施形態では、宅地内の最も下流側に位置する雨水桝1を選択しているが、貯溜したい量やメンテナンスの容易性などを考慮して堰3を設ける雨水桝1は任意に選択すればよい。
【0037】
以上の説明から明らかなように、本発明の雨水排水配管構造は、最も下流側に位置する雨水桝1に接続された排水管2の端部に堰3を設けることで、宅地内に降った雨水を配管内(堰3より上流側に位置する雨水桝1や排水管2)に一時貯溜することができるようになる。このように、配管内に雨水を一時貯溜したのち、堰3に穿孔された孔3aより徐々に雨水排水本管9や道路の側溝(不図示)に流出させることで、昨今深刻な問題となっている都市型洪水を緩和することができるようになる。
一方、施工に際しては、雨水桝1に接続された排水管2の端部に取付けられた取付け部材4を介して堰3を設けるだけなので、地面を掘削するなどの面倒な土木工事なしに雨水桝1の蓋体1Bを取り外すだけで簡単に施工でき、既設の雨水排水配管にも簡単に後付けすることができるので、コストを抑え工期を短縮することができる、といった顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る雨水排水配管構造を示す概略斜視図、図2は同配管構造の要部を示す概略断面図である。
【図2】同配管構造の要部を示す概略断面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】同配管構造に用いる堰を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図5】同配管構造に用いる取付け部材を雨水桝に接続された排水管に取付けた状態を示す部分断面図である。
【図6】同取付け部材に堰を取付けた状態を示す正面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る雨水排水配管構造に用いる取付け部材を排水管に取付けた状態を示す部分断面図である。
【図8】本発明の更に他の実施形態に係る雨水排水配管構造に用いる公共の雨水桝に取付け部材を取付けた状態を示す一部破断図である。
【図9】同配管構造に用いる堰を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図10】同配管構造に用いる取付け部材を排水管が接続された雨水桝に取付けた状態を示す部分断面図である。
【図11】同取付け部材に堰を取付けた状態を示す正面図である。
【図12】本発明の更に他の実施形態に係る雨水排水配管構造に用いる堰を示す斜視図である。
【図13】同配管構造に用いる堰を排水管に取付けた状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 雨水桝
10 公共の雨水桝
1A,10A 桝本体
1B 蓋体
1a,10a 流入口
11a 挿入口
1b,10b 流出口
1c 浸透孔
1d シールパッキン
2 排水管
3,30,31 堰
31a 堰本体
3a 孔
3b 凸条
4,40,41 取付け部材
4a 凹溝
4b 半環状のパッキン
4c 鍔部
4d 係合突片
5 軒樋
6 堅樋
7 家屋
7a 屋根
8 継手
9 雨水排水本管
12 開口部分
13a ボルト
13b ナット
【技術分野】
【0001】
本発明は、集中豪雨時の河川や下水道施設への負荷を低減させる雨水排水配管構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、道路や空き地(駐車場等)の舗装化が急速に進み、未舗装部分が殆どない都市化の進んだ地域が増えてきている。このような地域では、雨水が殆ど地中に浸透することなく、道路の側溝や下水道排水管などを通じて河川へ流れ込むため、短時間で河川の容量を超えて所謂、都市型洪水を引き起こし、社会問題となってきている。この問題は、地球温暖化が要因とも言われる昨今の異常気象に伴い、これから益々深刻化していくものと思われる。
【0003】
このような問題を緩和するため、宅地内の最終雨水桝と公共用雨水桝との間にオーバーフロー部材を、その下縁を宅内集水経路よりも上方に位置させて配設することにより、宅地内の最終雨水桝内と宅内集水経路内に、雨水を一定量貯溜可能とした住宅用雨水貯溜システムが提案された(特許文献1)。
【0004】
この住宅用雨水貯溜システムは、宅内集水経路の高さに合わせて、オーバーフロー部材にオリフィスを形成し、宅地内の最終雨水桝と宅内集水経路内に貯溜した雨水を上記オリフィスから徐々に排出するようになっている。これにより、家屋に降った雨水が、宅内集水経路を経て道路の側溝や下水道排水管に一気に流出するのを抑制し、集中豪雨時の河川や下水道施設への負荷を低減させることができる。
【特許文献1】特開2006−169774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記住宅用雨水貯溜システムは、宅地内の最終雨水桝と公共用雨水桝との間に配設されるオーバーフロー部材が、上流側継手部材、下流側継手部材、塩ビ直管、塩ビ細管から構成されたものであり、部品点数が多いためコストがかかるという問題があった。また、このオーバーフロー部材を宅地内の既設の最終雨水桝と公共用雨水桝との間に配設するには、地面の掘削や配管の変更等の大がかりな土木工事が必要となるため、コストがかかると共に工期が非常に長くなるという問題もあった。更に、貯溜した雨水を排出するためのオリフィスが詰まってしまうと、オーバーフロー部材を配設するのと同様に土木工事が必要となるため、メンテナンスが非常に困難であるという問題もあった。特に、この住宅用雨水貯溜システムは、上流側継手部材からオーバーフローした雨水を下流側継手部材へと排出する塩ビ直管が、宅内集水経路よりも上方に位置するという構造上(図1参照)、オーバーフロー部材に雨水が流入するのは台風などの稀なケースに限られ、通常の降雨ではオリフィスからのみの排出となって負担がかかるため、オリフィスが詰まり易く、メンテナンスが困難であるというのは到底無視できない問題である。
【0006】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、その解決しようとする課題は、宅地内に降った雨水を配管内に一時貯溜したのち、徐々に道路の側溝や雨水排水本管に流出させて都市型洪水を緩和することができる、安価で施工やメンテナンスが容易な雨水排水配管構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る雨水排水配管構造は、雨水桝と雨水桝を排水管で接続した雨水排水配管構造であって、下流側に位置する雨水桝の流入口、又は、下流側に位置する雨水桝の流入口に接続された排水管端部に、配管内に流入した雨水を一時貯溜するための堰を設けると共に、その堰に一時貯溜した雨水を徐々に排出するための孔を穿孔したことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の雨水排水配管構造においては、孔の底部が、下流側に位置する雨水桝の流入口の管底、又は、下流側に位置する雨水桝の流入口に接続された排水管端部の管底と同じ高さであることが好ましい。また、堰が着脱可能に設けられていることが好ましく、堰が、下流側に位置する雨水桝の流入口、又は、下流側に位置する雨水桝の流入口に接続された排水管端部に取付けられた取付け部材を介して着脱可能に設けられていることがより好ましい。更に、堰が水密的に設けられている雨水排水配管構造が好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の雨水排水配管構造は、下流側に位置する雨水桝の流入口、又は、下流側に位置する雨水桝の流入口に接続された排水管端部に設けられた堰によって雨水は堰止められ、その堰から上流側の雨水は一時貯溜される。このように、堰の上流側の配管内に一時的に一定量の雨水が貯溜されることで、一気に大量の雨水が河川へ流入するのを防止することができる。また、雨がやむと、配管内に一時貯溜された雨水は、堰に設けられた孔より徐々に雨水桝を介して雨水排水本管へ排出されて、次の雨に備えることができる。この雨水排水配管構造は、堰より上側は開口しているので、台風などの集中豪雨の際は、その開口部分から雨水が排出され、雨水の流れを無理に遮ることなく、配管内が満水になって上流側に位置する雨水桝から雨水が溢れてしまう心配もない。
一方、施工に際しては、下流側に位置する雨水桝の流入口、又は、下流側に位置する雨水桝の流入口に接続された排水管端部に堰を設けるだけなので、面倒な土木工事をしなくても既設の雨水排水配管にも簡単に後付けすることができて、短期間の簡易な施工で実施することが可能となり、コストを抑えることができる。
【0010】
また、孔の底部が、下流側に位置する雨水桝の流入口の管底、又は、下流側に位置する雨水桝の流入口に接続された排水管端部の管底と同じ高さである雨水排水配管構造は、この位置に一時貯溜した雨水を徐々に排出するための孔を穿孔することで、配管内に一時貯溜した雨水が滞溜することなく全て流出されるようになり、配管内が空水状態で次の雨に備えることができる。
【0011】
更に、堰が着脱可能に設けられている雨水排水配管構造は、堰を着脱可能にすることで、雨水を排出する孔や、雨水桝と雨水桝を接続する排水管など雨水排水配管内のメンテナンスがより容易となる。
【0012】
特に、堰が、下流側に位置する雨水桝の流入口、又は、下流側に位置する雨水桝の流入口に接続された排水管端部に取付けられた取付け部材を介して着脱可能に設けられている雨水排水配管構造は、例えば、取付け部材に堰を取付けるための溝を形成したりすると、その溝に堰を挿入するだけで、堰が雨水に流されてしまうのを防止することができるようになる。
【0013】
また、堰が水密的に設けられている雨水排水配管構造のように、堰と下流側に位置する雨水桝の流入口、又は、堰と下流側に位置する雨水桝の流入口に接続された排水管端部との境目部分からの雨水の流出を防ぐことで、より確実に雨水を一時貯溜して雨水の流出を抑制し、河川や下水道施設への負荷を低減させることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係る雨水排水配管構造を示す概略斜視図、図2は同配管構造の要部を示す概略断面図、図3は図2の部分拡大図、図4は同配管構造に用いる堰を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図、図5は同配管構造に用いる取付け部材を雨水桝に接続された排水管に取付けた状態を示す部分断面図、図6は同取付け部材に堰を取付けた状態を示す正面図である。
【0016】
本発明の雨水排水配管構造(以下、単に配管構造という。)は、図1に示すように、2つ以上の雨水桝1が排水管2によって接続され、それらの排水配管が継手8を介して公共の雨水排水本管9や側溝(不図示)へ接続されている宅地内において、宅地内の最も下流側に位置する雨水桝1に接続された排水管2の端部に堰3を設けたものである。
【0017】
この配管構造において、宅地内の家屋7に降った雨水は、家屋7の屋根7aを流下して屋根7aの周囲に設けられた軒樋5に流入し、堅樋6を経由して宅地内の排水管2から雨水桝1に集水されて、公共の雨水排水本管9を通じて河川や下水道施設に排出される。また、図3に示すように、雨水桝1の蓋体1Bには、多数の浸透孔1cが穿孔されているので、宅地内(庭等)に降った雨水もその浸透孔1cを通して雨水桝1に流入し、河川や下水道施設に流出するようになっている。
【0018】
上記配管構造に用いられる雨水桝1は、雨水桝1の桝本体1Aにホールソーなどで孔を穿孔することにより流入口1a及び流出口1bが設けられており、図3に示すように、その流入口1a、流出口1bには、水密性を向上させるための環状のシールパッキン1dがそれぞれ取付けられている。そして、図2に示すように、上流側に位置する雨水桝1の流出口1bと、下流側に位置する雨水桝1の流入口1aに、上流側から下流側にかけて1/100〜3/100程度の流れ勾配をつけながら排水管2を挿入することで、雨水桝1と雨水桝1は水密的に接続されている。
尚、予め流入口1aや流出口1bが穿孔された雨水桝を用いてもよいが、本実施形態のように、施工現場で流入口1a、流出口1bを穿孔することで、配管の自由度が向上するので好ましい。
また、雨水桝1の材質については特に限定されるものではないが、耐久性や施工性を考慮すると、ポリプロピレン樹脂製のものが好適に用いられる。
【0019】
本発明の配管構造は、上記のような配管設備を備えた宅地内において、台風などの集中豪雨時に、雨水が河川や下水道施設へ一気に流出するのを防ぐため、宅地内の最も下流側に位置する雨水桝1の流入口1aに接続された排水管2の端部に、次に説明する雨水を配管内に一時貯溜するための堰3を設けたものである。
【0020】
即ち、最も下流側に位置する雨水桝1の流入口1aに接続された排水管2の端部に設けられる堰3は、図4の(a),(b)、図6に示すように、排水管2の開口の下側半分を塞ぐ半円形の板体で、その外周面には、後述する取付け部材4の凹溝4aと嵌合する凸条3bが突設されている。また、この堰3の下部には、堰3で一時貯溜した雨水を徐々に排出するための小径の孔3aが1つ穿孔されている。堰3に穿孔された孔3aは、図3に示すように、その孔3aの底部が、下流側に位置する雨水桝1の流入口1aに接続された排水管2の管底と同じ高さとなるように形成されており、この位置に孔3aを穿孔することで、配管内に一時貯溜した雨水は滞溜することなく全て排出されて、次の雨までに再び堰3より上流側の配管内に雨水を一時貯溜することができるようなる。
【0021】
上記構成の堰3は、後述する取付け部材4を介して排水管2の端部に着脱可能に設けられて、宅地内に降った雨水を堰3より上流側の配管内に一時的に貯溜することにより、河川や下水道施設へ雨水が一気に流出するのを抑制するものである。従って、堰3に穿孔した孔3aの直径が大きすぎると、堰3より上流側の配管内に一時貯溜した雨水が孔3aから勢いよく排出されて、雨水の流出を抑制する効果が少なくなってしまうので好ましくない。反対に孔3aの直径が小さすぎると、雨水の流出量が少なくなりすぎて雨水が充分に排出されず、堰3より上流側に一時貯溜された雨水が行き場を失って堰3から溢れ、開口部分12から排出されてしまうことになるので、雨水の流出を抑制する効果が少なくなってしまう。更に、孔3aの直径が小さすぎると、孔3aがゴミ等で詰まり易くなるという不具合も生じるので、これらを考慮して、孔3aの直径は3〜20mm程度に形成されている。
尚、本実施形態の堰3には、孔3aが一つだけ穿孔されているが、孔3aの直径を小さくして複数穿孔してもよい。また、孔3aの底部が排水管2の管底と同じ高さであれば形状も円形に限定されるものではなく、例えば三日月のような形状に穿孔してもよい。
【0022】
また、上記堰3の形状を半円形よりも円形に近づけて開口部分12を小さくすると、堰3より上流側の貯溜量が増えて雨水の流出をより抑制することができるようになるし、開口部分12の大きい堰3を形成すると、雨水の一時貯溜量を少なくすることもできるようになる。更に、堰3に穿孔した孔3aの形状や大きさを変えることによっても、雨水の流出量を調整することができるので、施工する地域(雨量が多い地域や少ない地域)に合致した配管構造を簡単に提供することができる。
【0023】
以上のような構成の堰3を排水管2端部に設けるための取付け部材4は、図5、図6に示すように、蹄状をしたもので、その内周面には、前述した堰3の外周面に突設された凸条3bと嵌合する凹溝4aが形成されている。この凹溝4aには、半環状のパッキン4bが嵌着されており、このように凹溝4aに半環状のパッキン4bを嵌着することで水密性が向上し、堰3を取付け部材4に取付けたとき、隙間から雨水が漏れるのを防止することができるようになるので、堰3より上流側の配管内に雨水を確実に一時貯溜することができるようになる。
【0024】
上記取付け部材4は、図5に示すように、最も下流側に位置する雨水桝1の流入口1aに接続された排水管2の端部に接着剤等を塗布するなどして水密的に取付けられる。そして、前述した堰3の凸条3bを、上方から取付け部材4の凹溝4aに挿入すると、凸条3bと凹溝4aとが嵌合し、簡単に堰3を取付け部材4に取付けることができる。しかも、凸条3bと凹溝4aが確実に嵌合するので、堰3が雨水の流れに押されて取付け部材4から外れてしまう心配もない。一方、堰3は、上方へ引き上げるだけで簡単に取付け部材4から取り外すことができるので、雨水を排出する孔3a、雨水桝1と雨水桝1を接続する排水管2、堰3に溜まったゴミ掃除など、配管内のメンテナンスを簡単に行うことができる。
【0025】
上記のように、本発明の配管構造の要部である堰3は、取付け部材4を介して、最も下流側に位置する雨水桝1に接続された排水管2の端部に着脱可能に設けられている。排水管2の端部に堰3を設けると、図2、図6に示すように、排水管2の開口の下側半分を堰3が塞いで雨水を堰止めするので、雨水は堰3から上流側の配管内に一時貯溜される。このように、堰3の上流側の配管内に一時的に雨水を貯溜すると、台風などの集中豪雨時に、大量の雨水が雨水排水本管9を介して一気に河川や下水道施設へ流出するのが抑制されるので、都市型洪水を緩和することができるようになる。この堰3を設けたとしても、上記のように堰3より上側部分は開口しているので、台風などの集中豪雨時は、その開口部分12から雨水は排出されて、配管内が満水になって上流側に位置する雨水桝1が溢れてしまったり雨水が逆流したりする心配もない。一方、雨がやむと、配管内に一時貯溜された雨水は、堰3に設けられた孔3aより徐々に雨水桝1を介して雨水排水本管9へ排出されて配管内は空水となるので、次の雨に備えることができる。
尚、孔のない堰を排水管2の端部に設けた場合には、配管内に一時貯溜された雨水は徐々に流出することがないため、雨水桝1から容易に取水することができ、貯溜された雨水を庭の水遣りなど有効に利用することが可能となるのは言うまでもない。
【0026】
また、上記の堰3は、図7に示すような取付け部材40を介して排水管2の端部に設けることもできる。この取付け部材40は、前述した取付け部材4を排水管2の端面から下流側に延設して、堰3の凸条3bと嵌合する凹溝4aや水密性を向上させる半環状のパッキン4bを、排水管2の端面から下流側にシフトさせて形成したものである。この取付け部材40は、排水管2の端部に取付けたときに、雨水が滞溜するスペースが生じないように段差を設けながら延設されている。これによって、取付け部材40に堰3を取付けたとき、孔3aの底部が排水管2の管底と同じ高さになっている。
この取付け部材40のその他の構成は前述した取付け部材4と同様であるので、同一部材に同一符号を附して説明を省略する。
【0027】
前述した取付け部材4を用いて堰3を設けると、排水管2の開口断面積を半分塞いでしまうことになるが、上記の取付け部材40を用いて排水管2の端部に堰3を設けると、堰3が排水管2の端面から下流側へシフトするので、排水管2の開口断面積の半分に加えて、上から見たときのシフトした分だけの面積が開口して開口部分12が増大するため、排水管2の開口断面積を縮小させなくてすむ。即ち、雨水を一時貯溜しながらも、開口部分12からオーバーフローする雨水の流れを阻害しにくいという効果が得られる。更にその効果を増すために、堰3の上部を下流側に倒して堰3を傾斜させて設けてもよい(不図示)。
【0028】
上記2つの実施形態の配管構造に用いる堰3は、排水管2の端部に設けられるものであるが、図8に示すような公共の雨水桝10に接続された排水管2の端部には設けることができない。図8に示す公共の雨水桝10は、流入口10a及び流出口10bが桝本体10Aより突設されたものであって、この公共の雨水桝10に排水管2を接続すると、排水管2の端部は、流入口10aの先端に形成された挿入口11aに当接してしまうので、このようなタイプの公共の雨水桝10には、図9、図10、図11に示す堰30と取付け部材41を用いればよい。
【0029】
図9の(a),(b)に示す堰30は、後述する取付け部材41に取付けたときに、取付け部材41の係合突片4dと干渉しないように平面視が略逆凸型に形成されたもので、前述した堰3と同様に半円形の板体であって、その外周面には凸条3bが突設されている。また、その下部には孔3aが穿孔されている。
尚、この実施形態のように、堰30を公共の雨水桝10の流入口10aに設ける場合は、堰30の孔3aの底部と公共の雨水桝10の流入口10aの管底とが同じ高さに穿孔する必要がある。
この堰30のその他の構成は前述した堰3と同様であるので、同一部材に同一符号を附して説明を省略する。
【0030】
上記堰30を雨水桝10に設けるための取付け部材41は、図10、図11に示すように、前述した取付け部材4の外周面に、雨水桝10内面の流入口10aの周囲面に当接する鍔部4cと、前述した取付け部材4の内周に、流入口10aに挿入して係合する係合突片4dが形成されたものである。この係合突片4dは、取付け部材41を雨水桝10の流入口10aに取付けたときに、雨水の流れを阻害しないよう、取付け部材41の内周面の全域ではなく、2ヶ所に分断されて設けられている。
この取付け部材41のその他の構成は前述した取付け部材4と同様であるので、同一部材に同一符号を附して説明を省略する。
【0031】
上記堰30と取付け部材41は、まず、取付け部材41の鍔部4cに接着剤を塗布し、係合突片4dを公共の雨水桝10の流入口10aに挿入して係合させると共に、公共の雨水桝10の流入口10aの周囲面に鍔部4cを当接させることにより、取付け部材41を流入口10aの根元部分(桝本体10A側)に取付ける。そして、堰30の凸条3bを取付け部材41の凹溝4aに上方から挿入して、凸条3bと凹溝4aを嵌合させることによって、取付け部材41に堰30を取付ける。このようにすると、上記公共の雨水桝10のように、流入口10aが突設された雨水桝にも堰30を着脱可能に設けることができる。
尚、図示はしないが取付け部材41も前述した取付け部材40と同様に、堰30を流入口10aの根元部分(桝本体10A側)から下流側へシフトさせて設けることができるように形成してもよいのは言うまでもない。
【0032】
上記2つの実施形態の配管構造は、配管内に一時貯溜するための堰3を、取付け部材4を介して排水管2の端部に設けたものであるが、例えば、図12に示すような堰31を用いると、排水管2の端部に直接設けることができる。
【0033】
図12に示す堰31は、排水管2を内嵌合する円筒体で、その一端には、円筒体の開口の下側半分を塞ぐ半円形状の堰本体31aが形成されており、その堰本体31aによって配管内の雨水を一時貯溜するようになっている。堰本体31aの下部には前述した堰3と同じ孔3aが穿孔されており、堰31によって一時貯溜された雨水を徐々に雨水桝1に排出するようになっている。
尚、この実施形態に用いる堰31は、雨水の流れに押されて排水管2から外れてしまう恐れがあるので、堰31と排水管2の上部に孔を穿孔して、図13に示すように、ボルト13aとナット13bによって外れないように取付けられている。また、前述した取付け部材40と同様に、堰31の堰本体31aを下流側へシフトさせて設けてもよい。(不図示)
【0034】
上記のような堰31を用いると、前述した堰3よりも排水管2から取り外すのに手間がかかるので、メンテナンス性は多少劣るが、排水管2に取付けるのが簡単であるため、施工性には優れるといった利点がある。
尚、堰31は、メンテナンスの際に取り外しができるように、接着剤を用いずに、上記のようにボルト13aとナット13bによって設けることが好ましい。また、その他にも、堰31と排水管2の端部に、それぞれ係止部と被係止部を設けて固定する方法も考えられる。
【0035】
前述した他にも、雨水を堰止めて配管内に雨水を一時貯溜するための堰を、雨水桝1の流入口1a、又は、雨水桝1の流入口1aに接続された排水管2の端部に設ける種々の実施形態が考えられる。例えば、雨水桝1の流入口1aに堰3が一体成形された雨水桝や、排水管2の端部に堰3が一体成形された排水管を用いて堰3を設けるなどの方法も考えられるが、前述した実施形態のように、雨水桝1又は排水管2とは別体に堰3を形成し、あとから堰3を設けるほうが、施工性に優れ、コストを抑えることもできるので好ましい。
【0036】
更に本発明の配管構造においては、上記のように排水管2の端部に堰3を設けると共に、雨水桝1の桝本体1Aの側面にも複数の浸透孔を穿孔して雨水桝1を浸透桝とし、排水管2にも複数の浸透孔を穿孔して排水管2を浸透管とすると、雨水は堰3に穿孔された孔3a以外からも徐々に排出されるので、堰3(堰31の場合は堰本体31a)の高さを高くするなどして配管内の貯溜量を増やすことが可能となり、より雨水の流出を抑制する効果を大きくすることもできる。また、このようにすると地表に降った雨水は、地表面から地中へ浸透し、浸透桝や浸透管に穿孔された孔から浸透桝や浸透管へ浸透するため、効率よく配管内に一時貯溜することができる。排水管2を浸透管とした場合は流れ勾配を無しにしてもよいし、施工高さも徐々に下げる必要はなく同じ高さでよい。
尚、堰3(堰31の場合は堰本体31a)の高さを高くする場合は、前述した取付け部材40に取付けられた堰3のように、堰3を下流側へシフトさせて開口部分12を増大させ、排水管2の開口断面積を縮小しないようにすることが好ましい。
また、本実施形態では、宅地内の最も下流側に位置する雨水桝1を選択しているが、貯溜したい量やメンテナンスの容易性などを考慮して堰3を設ける雨水桝1は任意に選択すればよい。
【0037】
以上の説明から明らかなように、本発明の雨水排水配管構造は、最も下流側に位置する雨水桝1に接続された排水管2の端部に堰3を設けることで、宅地内に降った雨水を配管内(堰3より上流側に位置する雨水桝1や排水管2)に一時貯溜することができるようになる。このように、配管内に雨水を一時貯溜したのち、堰3に穿孔された孔3aより徐々に雨水排水本管9や道路の側溝(不図示)に流出させることで、昨今深刻な問題となっている都市型洪水を緩和することができるようになる。
一方、施工に際しては、雨水桝1に接続された排水管2の端部に取付けられた取付け部材4を介して堰3を設けるだけなので、地面を掘削するなどの面倒な土木工事なしに雨水桝1の蓋体1Bを取り外すだけで簡単に施工でき、既設の雨水排水配管にも簡単に後付けすることができるので、コストを抑え工期を短縮することができる、といった顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る雨水排水配管構造を示す概略斜視図、図2は同配管構造の要部を示す概略断面図である。
【図2】同配管構造の要部を示す概略断面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】同配管構造に用いる堰を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図5】同配管構造に用いる取付け部材を雨水桝に接続された排水管に取付けた状態を示す部分断面図である。
【図6】同取付け部材に堰を取付けた状態を示す正面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る雨水排水配管構造に用いる取付け部材を排水管に取付けた状態を示す部分断面図である。
【図8】本発明の更に他の実施形態に係る雨水排水配管構造に用いる公共の雨水桝に取付け部材を取付けた状態を示す一部破断図である。
【図9】同配管構造に用いる堰を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図10】同配管構造に用いる取付け部材を排水管が接続された雨水桝に取付けた状態を示す部分断面図である。
【図11】同取付け部材に堰を取付けた状態を示す正面図である。
【図12】本発明の更に他の実施形態に係る雨水排水配管構造に用いる堰を示す斜視図である。
【図13】同配管構造に用いる堰を排水管に取付けた状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 雨水桝
10 公共の雨水桝
1A,10A 桝本体
1B 蓋体
1a,10a 流入口
11a 挿入口
1b,10b 流出口
1c 浸透孔
1d シールパッキン
2 排水管
3,30,31 堰
31a 堰本体
3a 孔
3b 凸条
4,40,41 取付け部材
4a 凹溝
4b 半環状のパッキン
4c 鍔部
4d 係合突片
5 軒樋
6 堅樋
7 家屋
7a 屋根
8 継手
9 雨水排水本管
12 開口部分
13a ボルト
13b ナット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水桝と雨水桝を排水管で接続した雨水排水配管構造であって、下流側に位置する雨水桝の流入口、又は、下流側に位置する雨水桝の流入口に接続された排水管端部に、配管内に流入した雨水を一時貯溜するための堰を設けると共に、その堰に一時貯溜した雨水を徐々に排出するための孔を穿孔したことを特徴とする雨水排水配管構造。
【請求項2】
孔の底部が、下流側に位置する雨水桝の流入口の管底、又は、下流側に位置する雨水桝の流入口に接続された排水管端部の管底と同じ高さであることを特徴とする請求項1に記載の雨水排水配管構造。
【請求項3】
堰が着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の雨水排水配管構造。
【請求項4】
堰が、下流側に位置する雨水桝の流入口、又は、下流側に位置する雨水桝の流入口に接続された排水管端部に取付けられた取付け部材を介して着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の雨水排水配管構造。
【請求項5】
堰が水密的に設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の雨水排水配管構造。
【請求項1】
雨水桝と雨水桝を排水管で接続した雨水排水配管構造であって、下流側に位置する雨水桝の流入口、又は、下流側に位置する雨水桝の流入口に接続された排水管端部に、配管内に流入した雨水を一時貯溜するための堰を設けると共に、その堰に一時貯溜した雨水を徐々に排出するための孔を穿孔したことを特徴とする雨水排水配管構造。
【請求項2】
孔の底部が、下流側に位置する雨水桝の流入口の管底、又は、下流側に位置する雨水桝の流入口に接続された排水管端部の管底と同じ高さであることを特徴とする請求項1に記載の雨水排水配管構造。
【請求項3】
堰が着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の雨水排水配管構造。
【請求項4】
堰が、下流側に位置する雨水桝の流入口、又は、下流側に位置する雨水桝の流入口に接続された排水管端部に取付けられた取付け部材を介して着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の雨水排水配管構造。
【請求項5】
堰が水密的に設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の雨水排水配管構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−127020(P2010−127020A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303742(P2008−303742)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】
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