説明

電力変換装置

【課題】電力変換部のスイッチング素子の動作電圧をスイッチ回路のスイッチング素子の動作電源から得ることができる電力変換装置を提供する。
【解決手段】電源供給部Edは電源線LL側でスイッチング素子Ty2と接続される低電位側の一端を有し、スイッチング素子Ty2へとスイッチ信号を出力するための動作電源となる。スイッチング素子Tx2は第1及び第2の電極を有し第2の電極から第1の電極へと向かう方向のみ電流を導通させる。ダイオードDx22はカソードを電源線LHに向けてスイッチング素子Tx2と並列に接続される。コンデンサCbx2は、スイッチング素子Tx2の第1電極に接続された一端と、電源供給部の他端に接続される他端とを有し、スイッチング素子Tx2へとスイッチ信号を出力するための動作電源となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力変換装置に関し、特にスイッチング素子へとスイッチ信号を出力するための動作電源に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にはインバータが記載されている。インバータは2つの直流電源線の間で相互に直列接続される上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子を有する。上側スイッチング素子にはスイッチ信号を与えるための第1内部制御回路が接続され、下側スイッチング素子にはスイッチ信号を与えるための第2内部制御回路が接続される。
【0003】
第2内部制御回路には直流電源が動作電源として供給される。第1内部制御回路にはコンデンサの両端電圧が動作電源として供給される。コンデンサの高電位側の一端と、直流電源の高電位側の一端との間にはダイオードが接続されている。ダイオードはそのアノードを直流電源に向けて配置される。
【0004】
かかる構成において、コンデンサは下側スイッチング素子の導通により直流電源を電源として充電される。
【0005】
また本発明に関連する技術として、特許文献2,3が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−250485号公報
【特許文献2】特許第4158715号
【特許文献3】特開2007−295686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1ではインバータのスイッチング素子以外のスイッチング素子の動作電源についての考察がない。
【0008】
また特許文献1に記載のように電圧形インバータはエミッタ電極を低電位側の直流電源線に向けて設けられる。よって、下側スイッチング素子のエミッタ電極は低電位側の直流電源線に接続される。かかる直流電源線が下側スイッチング素子の共通電位として機能するので複数の下側スイッチング素子の動作電源として共通の直流電源を採用することができる。
【0009】
一方、電流形コンバータはインバータと同様に上側および下側のスイッチング素子を有する。そこで、従来の技術思想を以って、インバータの下側スイッチング素子の動作電源たる直流電源を、電流形コンバータの下側スイッチング素子に接続することを試みる。
【0010】
しかしながら、電圧形インバータで採用されるスイッチング素子はそのエミッタ電極を低電位側に向けて設けられるのに対し、電流形コンバータで採用されるスイッチング素子はそのエミッタ電極を高電位側の直流電源線に向けて設けられる。よって、上記の試みによっては、電流形コンバータの下側スイッチング素子へと適切に動作電圧を供給することができない。
【0011】
そこで本発明は、コンバータたる電力変換装置のスイッチング素子の動作電圧をスイッチ回路のスイッチング素子の動作電源から得ることができる電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかる電力変換装置の第1の態様は、第1の電源線(LH)と、前記第1の電源線よりも低い電位が印加される第2の電源線(LL)と、前記第1及び前記第2の電源線の間に設けられたスイッチング素子(Ty2,S4)と、相互間で直流電圧が支持される両端を有し、前記両端のうち低電位側の一端が前記第2の電源線側で前記スイッチング素子に接続され、前記スイッチング素子へとスイッチ信号を出力するための動作電源となる電源供給部(Ed)とを有するスイッチ回路(2)と、第1電極と第2電極とを有し、前記第2電極から前記第1電極へと流れる電流のみを導通し、前記第1および前記第2の電源線の間で前記第1電極を前記第1の電源線側に向けて配置される片方向導通スイッチング素子(Tx2,Tx21)と、アノードを前記第1の電源線側に向けて前記片方向導通スイッチング素子と並列に接続されるダイオード(Dx22)と、前記第1電極に接続された一端と、前記電源供給部の他端と電気的に接続される他端とを有し、充電されて前記片方向導通スイッチング素子へとスイッチ信号を出力するための動作電源となるコンデンサ(Cbx2)とを有する電力変換部(1)とを備える。
【0013】
本発明にかかる電力変換装置の第2の態様は、第1の態様にかかる電力変換装置であって、前記コンデンサと前記電源供給部(Ed)の他端との間で、アノードを前記電源供給部に向けて配置される第2ダイオード(Dbx2)を更に備える。
【0014】
本発明にかかる電力変換装置の第3の態様は、第1又は第2の態様にかかる電力変換装置であって、カソードを前記第1の電源線に向け、アノードが前記片方向導通スイッチング素子の前記第1電極と接続される第3ダイオード(Dx21)を備える。
【0015】
本発明にかかる電力変換装置の第4の態様は、第3の態様にかかる電力変換装置であって、前記電力変換部(1)は、前記片方向導通スイッチング素子(Tx21)と直列に接続され、前記第3ダイオードと並列に接続される第2スイッチング素子(Tx22)を更に備え、前記コンデンサは前記第2スイッチング素子へとスイッチ信号を出力するための動作電源として機能する。
【0016】
本発明にかかる電力変換装置の第5の態様は、第1乃至第4の何れか一つの態様にかかる電力変換装置であって、前記スイッチ回路(2)は、前記電源供給部(Ed)の電圧を降下して前記スイッチング素子(Ty2)の動作電圧を与える電圧調整部(VAy2)を更に備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる電力変換装置の第1の態様によれば、電源供給部からコンデンサへとダイオードを経由して電流が流れる。よって、スイッチ回路のスイッチング素子に対する動作電源を用いて、コンデンサを充電できる。換言すれば、片方向導通スイッチング素子の動作電圧をスイッチ回路のスイッチング素子の動作電源から得ることができる。
【0018】
本発明にかかる電力変換装置の第2の態様によれば、通常運転において片方向導通スイッチング素子の第1電極の電位が第2の電源線の電位より高くなって、第2の電源線とコンデンサの他端(高電位側の一端)との間の電圧が電源供給部の電圧よりも高まったとしても、かかる電圧と電源供給部の高電位側の一端の電圧との差を第2ダイオードが支持する。よって、かかる電圧が電源供給部ひいてはスイッチング素子へと印加されることを防ぐ。
【0019】
本発明にかかる電力変換装置の第3の態様によれば、片方向導通スイッチング素子とダイオードと第2ダイオードとして、低耐圧の素子を採用できる。
【0020】
本発明にかかる電力変換装置の第4の態様によれば、片方向導通スイッチング素子と第2スイッチング素子と第1及び第3のダイオードが双方向スイッチを構成することができる。しかもコンデンサが片方向導通スイッチング素子のみならず第2スイッチング素子の動作電源としても機能するので、各々にコンデンサが設けられる場合に比して製造コストを低減できる。
【0021】
本発明にかかる電力変換装置の第5の態様によれば、電源供給部の電圧とコンデンサの両端電圧との差を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】電力変換装置の概念的な構成の一例を示す図である。
【図2】電力変換装置の概念的な構成の一例を示す図である。
【図3】電力変換装置の概念的な構成の一例を示す図である。
【図4】電力変換装置の概念的な構成の一例を示す図である。
【図5】電力変換装置の概念的な構成の一例を示す図である。
【図6】電力変換装置の概念的な構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
第1の実施の形態.
<電力変換装置の一例>
図1に例示するように本電力変換装置は、その構成要素としての電力変換部であるコンバータ1とその構成要素としてのスイッチ回路であるインバータ2とを備えている。
【0024】
コンバータ1には入力端Pr,Ps,Ptが接続される。入力端Pr,Ps,Ptには例えば三相交流電源が接続されて三相交流電圧が供給される。コンバータ1は入力端Pr,Ps,Ptに印加される三相交流電圧を直流電圧に変換し、これを直流電源線LH,LLに印加する。より具体的な構成について説明すると、コンバータ1は3つのr,s,t相についてのスイッチングレグを有している。r相のスイッチングレグはスイッチング素子Tr1,Tr2とダイオードDr1,Dr21,Dr22とを有している。s相のスイッチングレグはスイッチング素子Ts1,Ts2とダイオードDs1,Ds21,Ds22とを有している。t相のスイッチングレグはスイッチング素子Tt1,Tt2とダイオードDt1,Dt21,Dt22とを有している。この3つのスイッチングレグは直流電源線LH,LLの間で相互に並列接続される。
【0025】
スイッチング素子Tx1(但し、xはr,s,tを代表する。)は第1ないし第3電極を有している。スイッチング素子Tx1は第1電極と第2電極との間を流れる電流を導通/非導通する。第3電極には、スイッチング素子Tx1,Tx2の導通/非導通を制御するためのスイッチ信号(電圧信号や電流信号)が印加される。なお第1電極は上記スイッチ信号の基準(例えば電圧信号であれば基準電位)となる制御基準電極としても機能する。かかるスイッチング素子Tx1の例として絶縁ゲートバイポーラトランジスタおよび電界効果トランジスタおよびバイポーラトランジスタ等が挙げられる。絶縁ゲートバイポーラトランジスタであれば、第1ないし第3電極は例えばそれぞれエミッタ電極、コレクタ電極、ゲート電極に相当する。電界効果トランジスタであれば、第1ないし第3電極は例えばそれぞれソース電極、ドレイン電極、ゲート電極に相当する。バイポーラトランジスタであれば第1ないし第3電極は例えばそれぞれエミッタ電極、コレクタ電極、ベース電極に相当する。この点は後述するスイッチング素子Ty1,Ty2にも適用される。
【0026】
スイッチング素子Tx2(但し、xはr,s,tを代表する。)は第1ないし第3電極を有している。スイッチング素子Tx2は第2電極から第1電極へと流れる電流を導通/非導通する。スイッチング素子Tx2では第2電極から第1電極へと向かう電流は導通しない。かかるスイッチング素子は片方向導通スイッチング素子と把握できる。第3電極には、スイッチング素子Tx1,Tx2の導通/非導通を制御するためのスイッチ信号(電圧信号や電流信号)が印加される。なお第1電極は上記スイッチ信号の基準(例えば電圧信号であれば基準電位)となる制御基準電極としても機能する。かかるスイッチング素子Tx2の例として絶縁ゲートバイポーラトランジスタ等が挙げられる。絶縁ゲートバイポーラトランジスタにおいては、第1ないし第3電極は例えばそれぞれエミッタ電極、コレクタ電極、ゲート電極に相当する。
【0027】
以下においては、スイッチング素子Tx1,Tx2として絶縁ゲートバイポーラトランジスタを採用して説明する。
【0028】
スイッチング素子Tx1とダイオードDx1とは直流電源線LHと入力端Pxとの間で互いに直列接続される。スイッチング素子Tx1はそのエミッタ電極を直流電源線LH側に向けて配置され、ダイオードDx1はそのアノードを入力端Px側に向けて配置される。スイッチング素子Tx2とダイオードDx21とは直流電源線LLと入力端Pxとの間で互いに直列接続される。スイッチング素子Tx2はそのエミッタ電極を入力端Px(直流電源線LH)側に向けて配置され、ダイオードDx21はそのアノードを直流電源線LL側に向けて配置される。ダイオードDx21はスイッチング素子Tx2に対して直流電源線LH側に配置される。ダイオードDx22はそのアノードを直流電源線LH側に向けてスイッチング素子Tx2と並列に接続される。
【0029】
かかるスイッチング素子Tx1,Tx2へとスイッチ信号が与えられて、コンバータ1は三相交流電圧を直流電圧に変換する。これにより、直流電源線LHには直流電源線LLよりも高い電位が印加される。なお、ダイオードDx1,Dx21はコンバータとしての逆阻止能力を発揮する。換言すれば、コンバータ1は電流形コンバータとして機能する。
【0030】
インバータ2は直流電源線LH,LLの間の直流電圧を交流電圧に変換して負荷3(例えばモータ)へと印加する。なお、図1の例示では、負荷3が抵抗とリアクトルの直列体を有する誘導性負荷として描画されている。
【0031】
インバータ3は3つのu,v,w相についてのスイッチングレグを有している。u相のスイッチングレグはスイッチング素子Tu1,Tu2とダイオードDu1,Du2とを有している。v相のスイッチングレグはスイッチング素子Tv1,Tv2とダイオードDv1,Dv2とを有している。w相のスイッチングレグはスイッチング素子Tw1,Tw2とダイオードDw1,Dw2とを有している。この3つのスイッチングレグは直流電源線LH,LLの間で相互に並列接続される。
【0032】
スイッチング素子Ty1,Ty2(但し、yはu,v,wを代表する)は、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタである。スイッチング素子Ty1,Ty2は直流電源線LH,LLの間で相互に直列接続される。スイッチング素子Ty1,Ty2のいずれもが、エミッタ電極を直流電源線LL側に向けて配置される。ダイオードDy1,Dy2はそれぞれスイッチング素子Ty1,Ty2に並列接続される。ダイオードDy1,Dy2のいずれもが、アノードを直流電源線LL側に向けて配置される。
【0033】
スイッチング素子Ty1,Ty2の間に設けられた出力端Pyは負荷3に接続される。
【0034】
かかるスイッチング素子Ty1,Ty2へとスイッチ信号が与えられて、インバータ3は直流電圧を交流電圧に変換する。ダイオードDy1,Dy2はそれぞれスイッチング素子Ty1,Ty2へと逆電流が流れることを防止し、またそれぞれスイッチング素子Ty1,Ty2へと逆電圧が印加されることを防止する。
【0035】
<コンバータ1及びインバータ2のスイッチング素子の動作電源>
次に、図2を参照して、スイッチング素子Tx1,Tx2,Ty1,Ty2へとスイッチ信号を出力するための動作電源について説明する。なお、図2の例示では、代表的に、コンバータ1の一つのスイッチングレグのみとインバータ3の一つのスイッチングレグのみとを図示している。
【0036】
コンバータ1はスイッチング素子Tx1,Tx2をそれぞれ駆動するドライブ回路Drx1,Drx2を有し、インバータ3はスイッチング素子Ty1,Ty2をそれぞれ駆動するドライブ回路Dry1,Dry2を有している。ドライブ回路Drx1,Drx2,Dry1,Dry2はそれぞれスイッチング素子Tx1,Tx2,Ty1,Ty2のゲート電極に接続される。
【0037】
図2の例示では、ドライブ回路Dry2は直流電源Edから動作電源が供給される。直流電源Edの低電位側の一端は、スイッチング素子Ty2のエミッタ電極と、ドライブ回路Dry2とに接続される。直流電源Edの高電位側の一端はドライブ回路Dry2に接続される。
【0038】
ドライブ回路Drx2にはコンデンサCbx2の両端電圧が動作電源として供給される。コンデンサCbx2の一端はスイッチング素子Tx2のエミッタ電極とドライブ回路Drx2に接続される。コンデンサCbx2の他端はドライブ回路Drx2に接続される。なお、この内容は、コンデンサCbx2が当該一端と当該他端との間で直流電圧を支持して、スイッチング素子Tx2へとスイッチ信号を出力するための動作電源として機能する、と把握できる。この内容は他のコンデンサについても適用される。
【0039】
ドライブ回路Drx2にはレベルシフト回路LSx2が接続される。レベルシフト回路LSx2は、例えば図示しない共通の制御回路により作成されたスイッチ信号の電位レベルをドライブ回路Drx2の電位に合わせて適切にシフトさせて、これをドライブ回路Drx2へと与える。他のレベルシフト回路についても同様であるため、以下では詳細な説明は省略する。
【0040】
コンデンサCbx2の他端はダイオードDbx2を介して直流電源Edの高電位側の一端へと接続されている。ダイオードDbx2はそのアノードを直流電源線Edに向けて設けられる。ダイオードDbx2はコンデンサCbx2が直流電源Edへと放電することを防止する。
【0041】
かかるコンデンサCbx2は本電力変換装置の通常運転に先立って充電される。具体的には、直流電源EdからコンデンサCbx2へとダイオードDbx2,Dx22を介す経路に電流が流れる。よってコンデンサCbx2は直流電源Edを電源として充電される。図2では、かかる経路が経路A1として示されている。
【0042】
なお経路A1上にはダイオードDxb2,Dx22の両方が介在している。経路A1においてコンデンサCbx2が直流電源Ed側へと放電することを防止するという観点では、ダイオードDx22が設けられていれば足りる。よって本願にかかる最上位の概念ではダイオードDbx2は必須要件ではない。ダイオードDbx2の更なる作用、効果については第2の実施の形態で述べる。
【0043】
さて、図2の電力変換装置において、通常運転を行なう前には、コンバータ1がダイオードDx22を有していなくても、スイッチング素子Tx1,Ty1,Ty2を導通させればコンデンサCbx2を充電することができる。これらの導通によって、直流電源EdからコンデンサCbx2へと、ダイオードDbx2,Dx21,Dx1とスイッチング素子Tx1,Ty1,Ty2を介す経路に電流が流れるからである。なお、図2の例示ではスイッチング素子Tx1,Ty1はブートコンデンサCbx1,Cby1の両端電圧が動作電源として与えられる。よって、スイッチング素子Tx1,Ty1を導通させるためには、ブートコンデンサCbx1,Cby1は既に充電されている必要がある。これらの充電については後述する。なお、ブートコンデンサCbx1,Cby1の替わりに直流電源が設けられてこの直流電源がスイッチング素子Tr1の動作電源として機能してもよい。
【0044】
スイッチング素子Tx1,Ty1,Ty2を導通させてコンデンサCbx2を充電する場合には次の問題が生じる。即ち、コンデンサCbx2を充電する経路には3つのダイオードDbx2,Dx21,Dx1と3つのスイッチング素子Tx1,Ty1,Ty2が介在する。これらのダイオードとスイッチング素子では電圧降下が生じるので、直流電源Edの電圧よりも比較的小さな電圧しかコンデンサCbx2に充電できない。
【0045】
一方、本電力変換装置によれば、経路A1には2つのダイオードDbx2,Dx22が介在しているだけなので、電圧降下を抑制してコンデンサCbx2を充電できる。よって、コンデンサCbx2へと比較的大きな電圧を充電できる。
【0046】
またコンバータ1の通常運転においても以下に説明するようにコンデンサCbx2が充電されるので、コンデンサCbx2が必要とする静電容量を低減できる。
【0047】
通常運転においてスイッチング素子Tx2が導通するときには、負荷3側からスイッチング素子Ty2と直流電源線LLとスイッチングTx2とを通って入力端Pxへと電流が流れる。かかる電流によって、スイッチング素子Tx2には順方向の電圧が印加される。換言すればダイオードDx22には逆電圧が印加される。したがって経路A1には電流が流れない。
【0048】
しかしながらこのとき、直流電源EdからコンデンサCbx2へとダイオードDbx2とスイッチング素子Tx2とを経由して電流が流れる。なお、スイッチング素子Tx2を流れる電流、即ち負荷3から流れる電流と、直流電源EdからコンデンサCbx2を経由して流れる電流との合計は、コレクタ電極からエミッタ電極へと順方向に流れる。以上のように直流電源Edからスイッチング素子Tx2を介してコンデンサCbx2へと電流が流れるので、コンデンサCbx2は充電される。
【0049】
なおスイッチング素子Tx2が導通から非導通へと切り替わるときの過渡期などでは経路A1を経由してコンデンサCbx2に電流が流れる可能性もある。
【0050】
以上のように通常運転においてもコンデンサCbx2は充電される。したがってコンデンサCbx2が必要とする静電容量を低減することができる。
【0051】
なお、ダイオードDx22が設けられていない場合、通常運転時においてスイッチング素子Tx2が非導通のときにはブートコンデンサCbx2は充電されない。また、通常運転前にブートコンデンサCbx2は充電されることがないため、スイッチング素子Tx2を導通させることもできない。一方、上述したように、本実施の形態では、通常運転にも充電し得るし、また、通常運転でもダイオードDx22を介しても充電され得るので、ブートコンデンサCbx2が充電される機会が増え得る。よって、本電力変換装置に依れば、ダイオードDx22が設けられていない態様と比較して、ブートコンデンサCbx2が必要とする静電容量を低減できる。
【0052】
次に、スイッチング素子Ty1の動作電源の一例について説明する。ドライブ回路Dry1はブートコンデンサCby1の両端電圧が動作電源として供給される。ブートコンデンサCby1の一端はスイッチング素子Ty1のエミッタ電極とドライブ回路Dry1に接続される。ブートコンデンサCby1の他端はドライブ回路Dry1に接続される。
【0053】
ドライブ回路Dry1にはレベルシフト回路LSy1が接続される。レベルシフト回路LSy1はスイッチ信号が入力され、かかるスイッチ信号を適切にレベルシフトしてドライブ回路Dry1へと出力する。
【0054】
ブートコンデンサCby1の他端はダイオードDby1を介して直流電源Edの高電位側の一端へと接続されている。ダイオードDby1はそのアノードを直流電源線Edに向けて設けられる。ダイオードDby1はブートコンデンサCby1が直流電源Edへと放電することを防止する。
【0055】
かかる構成によれば、スイッチング素子Ty2を導通させることで、直流電源Edを用いてブートコンデンサCby1を充電できる。直流電源EdからブートコンデンサCby1へとダイオードDby1とスイッチング素子Ty1とを介す経路A2に電流が流れるからである。
【0056】
次に、スイッチング素子Tx1の動作電源の一例について説明する。ドライブ回路Drx1はブートコンデンサCbx1の両端電圧が動作電源として供給される。ブートコンデンサCbx1の一端はスイッチング素子Tx1のエミッタ電極とドライブ回路Drx1に接続される。ブートコンデンサCbx1の他端はドライブ回路Drx1に接続される。
【0057】
ドライブ回路Drx1にはレベルシフト回路LSx1が接続される。レベルシフト回路LSx1はスイッチ信号が入力され、かかるスイッチ信号を適切にレベルシフトしてドライブ回路Drx1へと出力する。
【0058】
ブートコンデンサCbx1の他端はダイオードDbx1を介してブートコンデンサCby1の高電位側の一端へと接続されている。ダイオードDbx1はそのアノードをブートコンデンサCby1に向けて設けられる。ダイオードDbx1はブートコンデンサCbx1がブートコンデンサCbx1へと放電することを防止する。
【0059】
かかる構成によれば、スイッチング素子Tx1,Ty2を導通させることで、ブートコンデンサCby1に蓄えられた電荷を用いてブートコンデンサCbx1を充電できる。ブートコンデンサCby1からブートコンデンサCbx1へとダイオードDbx1,Dx11とスイッチング素子Tx1,Ty1とを介す経路A3に電流が流れるからである。
【0060】
変形例.
ブートコンデンサCbx2の両端電圧は、必ずしもインバータ2のスイッチング素子Ty2の動作電源として機能する直流電源Edから得る必要はない。要するに、直流電源線LLに接続されるスイッチング素子の動作電源から得ればよい。例えば図3の電力変換装置であってもよい。図3では、コンバータ1においては1つのスイッチングレグのみが示され、インバータ2と負荷3とが省略されている。図3の電力変換装置は、図1の電力変換装置と比較して、コンバータ1とインバータ3との間にブレーキ回路4を備えている。なお、以下ではスイッチング素子Tx1の動作電源については上述した説明と同一であるので詳細な説明を省略する。
【0061】
ブレーキ回路4は抵抗R4とスイッチング素子S4とを備えている。抵抗R4とスイッチング素子S4は直流電源線LH,LLの間で相互に直列に接続されている。スイッチング素子S4はスイッチング素子Ty1,Ty2と同じスイッチング素子である。図3ではスイッチング素子S4は絶縁ゲートバイポーラトランジスタとして示されている。スイッチング素子S4はそのエミッタ電極を直流電源線LLに向けて設けられる。
【0062】
かかるブレーキ回路4において、例えば誘導性負荷たる負荷3へと電流の供給を停止したときに、スイッチング素子S4を導通させる。これにより、負荷3からの回生電流が抵抗R4を流れる。よって負荷3からの回生エネルギーを早期に消費させることができる。
【0063】
スイッチング素子S4のエミッタ電極にはドライブ回路Drs4が接続される。ドライブ回路Drs4はスイッチング素子S4を駆動する。ドライブ回路Drs4は直流電源Edから動作電源が供給される。直流電源Edの低電位側の一端は、スイッチング素子Ty2のエミッタ電極と、ドライブ回路Drs4とに接続される。直流電源Edの高電位側の一端はドライブ回路Drs4に接続される。
【0064】
ダイオードDbx2のアノードは直流電源Edの高電位側の一端に接続されている。
【0065】
かかる電力変換装置においても、直流電源Edを電源としてブートコンデンサCbx2が充電される。よって、経路A1を経由した充電に比べて大きな電圧をブートコンデンサCbx2に充電できる。また通常運転においても、図2を参照した説明と同様に、スイッチング素子Tx2或いはダイオードDx22を経由してブートコンデンサCbx2が充電される。よって、ブートコンデンサCbx2が必要とする静電容量を低減できる。
【0066】
なおかかる変形例は後述する他の実施の形態にも適用される。
【0067】
第2の実施の形態.
第2の実施の形態においてはダイオードDbx2,Dx22の作用、効果について詳述する。まずダイオードDbx2が設けられていない場合について考慮する。本電力変換装置の通常運転においては、コンバータ1およびインバータ2がスイッチングされる。例えばかかるスイッチングに起因にしてサージ電圧が生じ、スイッチング素子Tx2のエミッタ電極の電位が想定以上に増大することが考えられる。即ち、直流電源線LLとコンデンサCbx2の高電位側の一端との間の電圧が想定以上に増大する。かかる電圧は直流電源Edおよびドライブ回路Dry2に印加される。かかる電圧の印加によってスイッチング素子Ty2の動作の不安定を招く恐れがある。
【0068】
ダイオードDbx2はかかる電位差(直流電源Edの高電位側の電位とコンデンサCbx2の高電位側の電位との差)を支持することができる。したがって、このような問題を防止することができる。
【0069】
次にダイオードDx21の作用、効果について述べる。ダイオードDx21は入力端Pxに印加される電位が変動した際の入力端Pxと直流電源線LLとの間の電圧を支持することができる。これにより、スイッチング素子Tx2とダイオードDx22とダイオードDbx2として安価な低耐圧の素子を採用できる。低耐圧なスイッチング素子であればそのコレクタ−エミッタの間の電圧が小さい傾向があり、また低耐圧なダイオードであればその順方向電圧が小さい傾向がある。よって特性のよい素子を採用できる。
【0070】
第3の実施の形態.
第1の実施の形態では、各スイッチング素子の動作電源の電圧についてばらつきが生じ得る。例えば図2を参照して各経路A1〜A3の各構成要素で生じる電圧降下を考慮する。またここでは説明の簡単のため、各ダイオードの順方向電圧は相互に等しく電圧Vfであって、各スイッチング素子のエミッタ−コレクタ間の電圧は相互に等しく電圧Vceであると仮定する。
【0071】
ブートコンデンサCby1は直流電源Edを電源としてダイオードDby1とスイッチング素子Ty2とを経由して充電される。なお、通常運転においてもブートコンデンサCby1は上記経路で充電される。よって、ブートコンデンサCby1の両端電圧Vcy1は次式で表される。
【0072】
Vcby1=Ed−Vf−Vce ・・・(1)
ブートコンデンサCbx1はブートコンデンサCby1を電源としてダイオードDbx1,Dx11とスイッチング素子Ty1を経由して充電される。なお、通常運転においてもブートコンデンサCbx1は上記経路で充電される。
【0073】
またダイオードDx1がスイッチング素子Tx1に対して入力端Px側に位置している構成であれば、経路A3上にダイオードDx1が介在しない。よって、かかる構成であればダイオードDx1の順方向電圧Vfの電圧降下は無視すればよい。以下では、経路A3上にダイオードDx1が介在する場合について述べる。
【0074】
ブートコンデンサCbx1の両端電圧Vcbx1は次式で表される。
【0075】
Vcbx1=Vcby1−2Vf−Vce=Ed−3Vf−2Vce ・・・(2)
通常運転に先立つ充電動作におけるコンデンサCbx2の充電経路は上述した経路A1である。経路A1においては、コンデンサCbx2は直流電源Edを電源としてダイオードDbx2,Dx22を経由して充電される。よって、このときのコンデンサCbx2の両端電圧Vbcx2_dは次式で表される。
【0076】
Vbcx2_d=Ed−2Vf ・・・(3)
一方、通常運転におけるコンデンサCbx2の充電経路は第1の実施の形態で述べたように2つある。ただし、経路A1による充電はスイッチング素子Tx2の非導通時で、かつTx2の第1端子電位がダイオードDx22を導通させる電位となった場合のみに生じ得るものであって、主にはスイッチング素子Tx2を経由した充電が行われる。スイッチング素子Tx2を経由した経路では、コンデンサCbx2はスイッチング素子Tx2とダイオードDx22を経由して充電される。よって、このときのコンデンサCbx2の両端電圧Vcbx2_tは次式で表される。
【0077】
Vcbx2_t=Ed−Vf+Vce ・・・(4)
かかる動作電源の電圧についてのばらつきを低減できれば例えば同じスイッチング素子を採用することができ、各スイッチング素子のスイッチング特性などのばらつきも小さくできる。そこで、第3の実施の形態では各スイッチング素子の動作電源の電圧のばらつきを低減する。
【0078】
なおここでは、説明の簡単のために、電圧Vfが電圧Vceよりも大きいと仮定する。この仮定の下ではブートコンデンサCbx1の両端電圧Vcbx1がコンデンサCby1,Cbx2および直流電源Edの中で最も小さい。
【0079】
上記の仮定の下で、本電力変換装置は図4に例示するように電圧調整回路VAy1,VAy2,VAx2をさらに有している。なお、図4の例示では、代表的に、コンバータ1の一つのスイッチングレグとインバータ3の一つのスイッチングレグについてのみ図示している。
【0080】
電圧調整回路VAy2は直流電源Edの例えば高電位側の一端とドライブ回路Dry2との間に接続される。電圧調整回路VAy2は例えば抵抗であって、直流電源Edの電圧を降圧して動作電圧としてドライブ回路Dry2に供給する。より具体的な一例として、直流電圧Edの電圧を、電圧Vfの3倍と電圧Vceの2倍との和の分だけ、降圧して動作電圧として供給する。これによりドライブ回路Drx1,Dry2へ供給される動作電圧を互いに等しくできる(式(2)参照)。
【0081】
電圧調整回路VAy1はブートコンデンサCby1の例えば高電位側の一端とドライブ回路Dry1との間に接続される。電圧調整回路VAy1は例えば抵抗であって、ブートコンデンサCby1の両端電圧を降圧して動作電源としてドライブ回路Dry1に供給する。より具体的には、ブートコンデンサCby1の両端電圧を、電圧Vfの2倍と電圧Vceとの和の分だけ、降圧して動作電圧として供給する。これによりドライブ回路Drx1,Dry1へ供給される動作電圧を互いに等しくできる(式(1)と式(2)とを参照)。
【0082】
電圧調整回路VAx2はコンデンサCbx2の例えば高電位側の一端とドライブ回路Dry2との間に接続される。電圧調整回路VAx2は例えば抵抗であって、ブートコンデンサCbx2の両端電圧を降圧して動作電源としてドライブ回路Drx2に供給する。さて、コンデンサCbx2の両端電圧はその充電経路の区別により2つの両端電圧Vcbx2_d,Vcbx2_tを採りえる。
【0083】
ここでは一例として、両端電圧Vcbx2_d,Vcbx2_tのうちより小さい両端電圧Vcbx2_dを採用する。電圧調整回路VAx2はコンデンサCbx2の両端電圧Vcxb2を、電圧Vceの2倍と電圧Vfとの和の分だけ、降圧して動作電源として供給する。これにより、コンデンサCbx2の両端電圧が電圧Vcbx2_dであるときにドライブ回路Drx1,Drx2に供給される動作電圧を互いに等しくできる。またたとえコンデンサCbx2の電圧が両端電圧Vcbx2_tであったとしても、電圧調整部VAx2はこれを降圧させるのでドライブ回路Drx1,Drx2に供給される動作電圧の差を低減することができる。
【0084】
なお、通常運転においては主としてスイッチング素子Tx2を経由した経路でコンデンサCbx2が充電されることから、両端電圧Vbcx2_tを採用してもよい。
【0085】
また両端電圧Vcbx2_t,Vcbx2_dに重み付け係数を乗じて、これを加算した値をコンデンサCbx2の両端電圧として把握してもよい。重み付け係数は例えば正の値であって、これらの和は1である。そして、電圧調整回路VAx2は、かかる両端電圧と両端電圧Vcbx1との差の分だけ、コンデンサCbx2の両端電圧を降圧させてもよい。
【0086】
また、コンデンサCbx2に並列に電圧クランプ回路を接続し、両端電圧Vcbx2_t、Vcbx2_dがいずれもクランプ電圧よりも高い値となるようにすれば、当該電圧クランプ回路は安定した電圧をドライブ回路Drx2に与えることができる。
【0087】
なお、この電圧調整回路はここで提示した形態に限るものではない。例えばコンデンサの電圧を分圧する形態や、ツェナーダイオードにより一定電圧を得る形態であっても構わない。また、コンデンサの両端にレギュレータの入力を接続し、レギュレータの出力をドライブ回路に接続するような形態であっても構わない。
【0088】
第4の実施の形態.
第1乃至第3の実施の形態においてはスイッチング素子Tx1,Tx2は直流電源線LLから直流電源線LHへと向かう方向(順方向)の電流の導通/非導通を選択する。スイッチング素子Tx1,Tx2は、直流電源線LHから直流電源線LLへと向かう方向(逆方向)の電流の導通/非導通は選択できない。なお例えばスイッチング素子Tx1,Tx2が絶縁ゲートバイポーラトランジスタであれば、逆方向の電流は流れない。また例えばスイッチング素子Tx1,Tx2がMOS電界効果トランジスタであれば、その寄生ダイオードによって逆方向の電流が流れる。いずれにせよ、コンバータ1においては、ダイオードDx1,Dx21によって、かかる逆方向の電流は阻止される。第4の実施の形態では、コンバータ1において双方向のスイッチングを実現する。以下具体的に説明する。
【0089】
図5に例示される電力変換装置は、コンバータ1の構成という点で、図1に例示される電力変換装置と相違している。
【0090】
r相のスイッチングレグはスイッチング素子Tr11,Tr12,Tr21,Tr22とダイオードDr11,Dr12,Dr21,Dr22とを有している。s相のスイッチングレグはスイッチング素子Ts11,Ts12,Ts21,Ts22とダイオードDs11,Ds12,Ds21,Ds22とを有している。t相のスイッチングレグはスイッチング素子Tt11,Tt12,Tt21,Tt22とダイオードDt11,Dt12,Dt21,Dt22とを有している。
【0091】
スイッチング素子Tx11,Tx12(但し、xはr,s,tを代表する。)はスイッチング素子Tx1と同じスイッチング素子であって例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ等である。以下では、絶縁ゲートバイポーラトランジスタを例に挙げて説明する。スイッチング素子Tx11,Tx12は直流電源線LHと入力端Pxとの間で互いに直列接続され、エミッタ電極同士は互いに接続されている。ダイオードDx11のアノードはスイッチング素子Tx11のエミッタ電極に接続され、そのカソードはスイッチング素子Tx12のコレクタ電極と接続される。ダイオードDx21のアノードはスイッチング素子Tx21のエミッタ電極に接続され、そのカソードはスイッチング素子Tx11のコレクタ電極に接続される。
【0092】
スイッチング素子Tx21,Tx22はスイッチング素子Tx2と同じスイッチング素子であって例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ等である。以下では、絶縁ゲートバイポーラトランジスタを例に挙げて説明する。スイッチング素子Tx21,Tx22は直流電源線LLと入力端Pxとの間で互いに直列接続され、エミッタ電極同士は互いに接続されている。ダイオードDx21のアノードはスイッチング素子Tx21のエミッタ電極に接続され、そのカソードはスイッチング素子Tx22のコレクタ電極と接続される。ダイオードDx22のアノードはスイッチング素子Tx22のエミッタ電極に接続され、そのカソードはスイッチング素子Tx21のコレクタ電極に接続される。
【0093】
かかるコンバータ1によれば、スイッチング素子Tx11,Tx12とダイオードDx11,Dx12とが双方向スイッチを構成する。同じくスイッチング素子Tx21,Tx22とダイオードDx21,Dx22とが双方向スイッチを構成する。したがって負荷3が誘導性負荷であれば、かかる誘導性に起因して生じる回生電流を、コンバータ1を経由して電源側に流すことができる。
【0094】
またこのコンバータ1によれば、スイッチング素子Tx11,Tx12のエミッタ電極同士が互いに接続され、スイッチング素子Tx21,Tx22のエミッタ電極同士が互いに接続されている。したがって、図6に例示するように、スイッチング素子Tx11,Tx12の動作電源を共通化でき、またスイッチング素子Tx21,Tx22の動作電源を共通化できる。よって、各々に動作電源を設ける場合に比べて製造コストを低減できる。以下、より詳細に説明する。
【0095】
まずスイッチング素子Tx21,Tx22の動作電源について説明する。スイッチング素子Tx21,Tx22はドライブ回路Drx2によって駆動される。ドライブ回路Drx2はスイッチング素子Tx21,Tx22のゲート電極に共通して接続される。ドライブ回路Drx2にはレベルシフト回路LSx2が接続される。
【0096】
ドライブ回路Drx2はコンデンサCbx2の両端電圧が動作電源として供給される。コンデンサCbx2の一端はスイッチング素子Tx21,Tx22のエミッタ電極とドライブ回路Drx2とに接続される。コンデンサCbx2の他端はドライブ回路Drx2に接続される。
【0097】
またコンデンサCbx2の他端はダイオードDbx2を介して直流電源Edの高電位側の一端に接続される。ダイオードDbx2はそのカソードをコンデンサCbx2へと向けて設けられる。ダイオードDbx2はコンデンサCbx2が直流電源Ed側へと放電することを防止する。
【0098】
かかるコンデンサCbx2は電力変換装置の通常運転に先立って充電される。具体的には、直流電源EdからコンデンサCbx2へとダイオードDbx2,Dx22を介す経路A4に電流が流れてコンデンサCbx2が充電される。
【0099】
以上のように、スイッチング素子Tx21,Tx22の動作電源を共通化でき、しかもかかる動作電源としてコンデンサCbx2を採用しているので直流電源の個数を低減できる。
【0100】
また本電力変換装置の通常運転においてもコンデンサCbx2は充電される。以下、力行運転と回生運転に分けて説明する。力行運転とは電源から負荷3へと電流を流して負荷3を駆動する運転である。力行運転では、直流電源線LHからインバータ2および負荷3を経由して直流電源線LLへと電流を流す。回生運転とは、負荷3が誘導性負荷である場合に、かかる誘導性に起因して生じる回生電流を電源側へと回生する運転や、負荷3が慣性の大きなモータ負荷などである場合に、負荷の状態に起因して生じる回生電流を電源側へと回生する運転のことである。回生運転では、直流電源線LHからコンバータ1と電源とを経由して直流電源線LLへと電流を流す。
【0101】
力行運転では、スイッチング素子Tx21の導通により、自身とダイオードDx21とを経由して直流電源線LLから入力端Pxへと電流が流れる。このとき第1の実施の形態と同様に直流電源EdからコンデンサCbx2へとダイオードDbx2とスイッチング素子Tx21とを経由して電流が流れる。これによって、コンデンサCbx2が充電される。
【0102】
回生運転では、スイッチング素子Tx22の導通により、自身とダイオードDx22とを介して入力端Pxから直流電源LLへと電流が流れる。ダイオードDx22が導通するので経路A4を電流が流れてコンデンサCbx2が充電される。
【0103】
以上のように、通常運転においてもコンデンサCbx2が充電されるので、コンデンサCbx2が必要とする静電容量を低減することができる。
【0104】
次にスイッチング素子Tx11,Tx12の動作電源について説明する。スイッチング素子Tx11,Tx12はドライブ回路Drx1によって駆動される。ドライブ回路Drx1はスイッチング素子Tx11,Tx12のゲート電極に共通して接続される。ドライブ回路Drx1にはレベルシフト回路LSx1が接続される。
【0105】
ドライブ回路Drx1はブートコンデンサCbx1の両端電圧が動作電源として供給される。ブートコンデンサCbx1の一端はスイッチング素子Tx11,Tx12のエミッタ電極とドライブ回路Drx1とに接続される。ブートコンデンサCbx1の他端はドライブ回路Drx1に接続される。
【0106】
またブートコンデンサCbx1の他端はダイオードDbx1を介してブートコンデンサCby1の高電位側の一端に接続される。ダイオードDbx1はそのカソードをブートコンデンサCbx1へと向けて設けられる。ダイオードDbx1はブートコンデンサCbx1がブートコンデンサCby1側へと放電することを防止する。
【0107】
このような構成であれば、スイッチング素子Ty1を導通させることで、ブートコンデンサCby1に蓄えられた電荷を用いてブートコンデンサCbx1を充電できる。かかる導通によって、ブートコンデンサCby1とダイオードDbx1とブートコンデンサCbx1とダイオードDx11とスイッチング素子Ty1とからなる経路A5に電流が流れるからである。
【0108】
以上のように、スイッチング素子Tx11,Tx12の動作電源を共通化でき、しかもかかる動作電源としてブートコンデンサCbx1を採用しているので直流電源の個数を低減できる。
【0109】
なお、本電力変換装置に第3の実施の形態を適用してもよい。この場合、コンデンサCbx2の両端電圧として両端電圧Vcbx2_t,Vcbx2_d(式3,4を参照)のいずれを採用するのかという観点が生じる。結論としては、いずれを採用しても構わない。いずれにせよスイッチング素子の動作電圧のばらつきを低減できるからである。また両端電圧Vcbx2_t,Vcbx2_dのそれぞれに重み付け係数を乗じて、これらを加算した値を採用してもよい。この場合、負荷4の運転状況に鑑みて、回生時の期間が比較的大きければ両端電圧Vcbx2_tについての重み付け係数として高い値を採用してもよい。
【0110】
また、コンデンサCbx2に並列に電圧クランプ回路を接続し、両端電圧Vcbx2_t、Vcbx2_dがいずれもクランプ電圧よりも高い値となるようにすれば、当該電圧クランプ回路は安定した電圧をドライブ回路Drx2に与えることができる。
【0111】
なお、コンデンサ(Cbx2)は、スイッチング素子の動作電源として電荷を蓄えられるものであれば良いので、コンデンサの形態に限るものではない。またスイッチング素子とダイオードとの並列回路は、寄生ダイオードのあるMOSFETや逆導通IGBT等の逆導通素子で構成してもよい。
【0112】
なお、コンデンサCbx1,Cbx2,Cby1の充電経路に抵抗等を挿入し、充電時電流を制限してもよい。
【符号の説明】
【0113】
Cbx1,Cby1 ブートコンデンサ
Cbx2 コンデンサ
Dx21,Dbx2 ダイオード
Ed 直流電源
LH,LL 直流電源線
Pr,Ps,Pt 入力端
Pu,Pv,Pw 出力端
VAx1,VAx2,VAy1 電圧調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電源線(LH)と、
前記第1の電源線よりも低い電位が印加される第2の電源線(LL)と、
前記第1及び前記第2の電源線の間に設けられたスイッチング素子(Ty2,S4)と、相互間で直流電圧が支持される両端を有し、前記両端のうち低電位側の一端が前記第2の電源線側で前記スイッチング素子に接続され、前記スイッチング素子へとスイッチ信号を出力するための動作電源となる電源供給部(Ed)とを有するスイッチ回路(2)と、
第1電極と第2電極とを有し、前記第2電極から前記第1電極へと流れる電流のみを導通し、前記第1および前記第2の電源線の間で前記第1電極を前記第1の電源線側に向けて配置される片方向導通スイッチング素子(Tx2,Tx21)と、アノードを前記第1の電源線側に向けて前記片方向導通スイッチング素子と並列に接続されるダイオード(Dx22)と、前記第1電極に接続された一端と、前記電源供給部の他端と電気的に接続される他端とを有し、充電されて前記片方向導通スイッチング素子へとスイッチ信号を出力するための動作電源となるコンデンサ(Cbx2)とを有する電力変換部(1)と
を備える、電力変換装置。
【請求項2】
前記コンデンサと前記電源供給部(Ed)の他端との間で、アノードを前記電源供給部に向けて配置される第2ダイオード(Dbx2)を更に備える、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
カソードを前記第1の電源線に向け、アノードが前記片方向導通スイッチング素子の前記第1電極と接続される第3ダイオード(Dx21)を備える、請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記電力変換部(1)は、
前記片方向導通スイッチング素子(Tx21)と直列に接続され、前記第3ダイオード(Dx21)と並列に接続される第2スイッチング素子(Tx22)
を更に備え、
前記コンデンサは前記第2スイッチング素子へとスイッチ信号を出力するための動作電源として機能する、請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記スイッチ回路(2)は、前記電源供給部(Ed)の電圧を降下して前記スイッチング素子(Ty2)の動作電圧を与える電圧調整部(VAy2)を更に備える、請求項1乃至4の何れか一つに記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−151872(P2011−151872A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8739(P2010−8739)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【特許番号】特許第4720942号(P4720942)
【特許公報発行日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】