説明

電力管理システム

【課題】蓄電池パックの充電状態を高精度に検出して充放電制御を行う電力管理システムを提供する。
【解決手段】複数の蓄電池ユニットから構成される蓄電池システム22の充放電を制御するシステム。総合蓄電池ユニット管理部16は、蓄電池システム22内の全ての蓄電池パックのSOCを算出し、算出したSOCに基づいて充放電制御する。システム起動時には開放端電圧とSOCとの間の相関関係を用いてSOCを検出し、以降の充電中あるいは放電中には充放電電流の積算値を用いてSOCを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力管理システム、特に蓄電池の充放電を制御するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力管理においては、負荷の電力消費量に応じて発電や給電を行うことが好適である。下記の特許文献1には、ネットワークシステムの電源システムとして、通信回線に接続された複数の太陽光発電電源システムと、日射量等の気象情報を測定し、太陽光発電電源システムに送信する情報源装置とを含む構成が開示されている。
【0003】
一方、太陽光発電で生じた電力を蓄電するとともに、変動する負荷の電力消費量に対応するために、リチウムイオン電池等からなる蓄電装置が用いられる。下記の特許文献2には、リチウムイオン電池の管理装置として、リチウムイオン電池の充放電電流の測定値、温度の測定値、商用電源の給電の情報に基づいて、リチウムイオン電池の充放電の状態を判断し、リチウムイオン電池の残存容量を算出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−136259号公報
【特許文献2】特開2006−140094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蓄電装置を構成するリチウムイオン電池その他の二次電池は、一般に単位セルと称される単位蓄電池の端子間電圧が1V〜4V程度であり、その容量も比較的小さい。そこで、単位セルを複数個用いて蓄電池パックを構成し、さらに蓄電池パックを複数個用いて蓄電装置を構成することが必要となる。
【0006】
このように、複数の蓄電池パックを用いる場合、たとえ使用環境が同一であっても、充放電サイクルを繰り返すうちに蓄電池パックの個体差が顕在化して複数の蓄電池パックの特性にばらつきが生じ得る。従って、電力管理システムにおいて蓄電池を効率的に利用するためには、複数の蓄電池パックの特性ばらつきが生じることを前提とし、これを考慮して充放電を制御することが必要となる。
【0007】
この際、蓄電池の特性の一つに充電状態があり、この充電状態が所望の範囲内にあるように充放電制御することが考えられるが、その前提として、蓄電池の充電状態を正確に検出することが必要である。
【0008】
本発明の目的は、蓄電池パックの充電状態を正確に検出し、これにより蓄電池の適切な充放電制御を行うことができるシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電力源からの電力により充電し、かつ蓄積した電力を負荷に放電する蓄電部の充放電を制御する電力管理システムであって、前記蓄電部に含まれる複数の蓄電池パック毎に充電状態を検出する検出手段と、検出された充電状態に応じ、前記蓄電部の充放電を制御する制御手段を備え、前記検出手段は、システム起動時に、開放端電圧と前記充電状態との間の相関関係を用いて前記充電状態を検出することを特徴とする。
【0010】
本発明の1つの実施形態では、前記検出手段は、前記システム起動後の前記蓄電部の充電中あるいは放電中に、充放電電流の積算値を用いて充電状態を検出する。
【0011】
また、本発明の他の実施形態では、前記検出手段は、前記蓄電部が充電中でなく放電中でもない待機状態において、一定時間継続するまでは充放電電流の積算値を用いて充電状態を検出し、一定時間継続した場合に開放端電圧と前記充電状態との間の相関関係を用いて前記充電状態を検出する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蓄電池パックの充電状態を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】電力管理システムの基本構成図である。
【図2】蓄電池パックの内部構成図である。
【図3】蓄電部の内部構成図である。
【図4A】充放電制御の全体処理フローチャート(その1)である。
【図4B】充放電制御の全体処理フローチャート(その2)である。
【図5】充電時の時系列説明図である。
【図6】放電時の時系列説明図である。
【図7】SOCの算出処理フローチャートである。
【図8】SOCの算出方法を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0015】
1.システムの基本構成
まず、本実施形態における電力管理システムの基本構成について説明する。
【0016】
図1に、本実施形態における電力管理システムの全体構成図を示す。電力管理システムは、外部商用電源10からの電力が供給されるPCS統括盤12と、パワーコンディショナー(PCS)14と、総合蓄電池ユニット管理部16と、システム管理部18と、総合電力監視装置20と、蓄電池システム22を含む。この電力管理システムは、一般照明や一般空調、厨房器具、サーバやパーソナルコンピュータ等の事務機器の負荷に必要な電力を供給するために工場施設等に設けられる。これらの負荷への電力の供給は、すべての電力をこの電力管理システムから行ってもよいし、この電力管理システムと外部商用電源とを併用して行ってもよい。
【0017】
外部商用電源10は、単相または三相の交流電力源であり、電力需給の変動に合わせて、火力発電、水力発電、原子力発電等の様々な発電方式で発電された電力を組み合わせて外部の電力会社から供給される。
【0018】
PCS統括盤12は、外部商用電源10と蓄電池システム22との間の接続を切り替える。すなわち、充放電時には、PCS統括盤12は、外部商用電源10の交流系統と蓄電池システム22とを接続すべくスイッチを切り替え、充放電禁止時には外部商用電源10の交流系統と蓄電池システム22との接続を遮断すべくスイッチを切り替える。PCS統括盤12のスイッチが外部商用電源10の交流系統と蓄電池システム22と接続する場合、蓄電池システム22の電位が外部商用電源12の電位より高ければ蓄電池システム22に蓄えられた電力が放電し、蓄電池システム22の電位が外部商用電源12の電位より低ければ外部商用電源12から蓄電池システム22に充電される。PCS統括盤12は、総合蓄電池ユニット管理部16からの制御指令によりスイッチ制御されるとともに、総合蓄電池管理ユニット管理部16からの制御指令に基づいてパワーコンディショナー14に充放電の指令を出力する。
【0019】
パワーコンディショナー14は、双方向AC/DCコンバータを備え、充電時には外部商用電源10からの交流電力を直流電力に変換して蓄電池システム22に供給し、また、放電時には蓄電池システム22からの直流電力を交流電力に変換して交流負荷に供給する。なお、パワーコンディショナー14のDC系統側に図示しないDC/DCコンバータを設け、放電時に蓄電池システム22からの直流電力を相対的に低圧の直流電圧に変換して直流負荷に供給してもよい。パワーコンディショナー14は、複数の蓄電池システム22に対して共通に設けられ、これら複数の蓄電池システム22の電力変換を一括して行う。パワーコンディショナー14は、単一であっても複数であってもよく、複数のパワーコンディショナーのそれぞれは複数の蓄電池システム22を一括制御する。単一あるいは複数のパワーコンディショナー14は、PCS統括盤12からの制御指令により制御される。
【0020】
総合蓄電池ユニット管理部16は、システム管理部18からの充放電制御指令と、蓄電池システム22の各蓄電ユニット22−1,22−2,・・・からのデータに基づいて、システム管理部18からの充放電制御指令をそのまま実行できるか否かを判定し、判定結果に基づいて充電指令あるいは放電指令をパワーコンディショナー14に出力するとともに、各蓄電ユニット22−1,22−2,・・・の蓄電池ユニット管理部28に対して充電指令あるいは放電指令を出力する。総合蓄電池ユニット管理部16における充放電を実行するか否かの判定は、各蓄電ユニット22−1,22−2,・・・における充電状態や電圧に応じて決定される。この処理についてはさらに後述する。
【0021】
システム管理部18は、総合電力監視装置20からの管理情報に基づいて、充放電制御指令を総合蓄電池ユニット管理部16に出力する。すなわち、総合電力監視装置20は、負荷側に必要な電力及び蓄電池側の電力に関するデータを取得し、管理情報を出力し、システム管理部18は、この管理情報に基づき、蓄電池システム22を充電すべきか、あるいは放電すべきかを決定して、充放電制御指令を出力する。充放電制御指令は、例えば、「**kWで**秒間充電すること」、「**kWで**秒間放電すること」等のように、充放電条件が電力値と時間で示されるものであってもよいし、「**kWで電圧が**Vになるまで充電(放電)すること」、「**kWでSOCが**%になるまで充電(放電)すること」等のように、充放電条件を電力値と終止する電圧またはSOCで示されるものであってもよい。システム管理部18は、例えば、負荷の消費電力の変動に起因して外部商用電源10のピーク電力が過大となることを抑制するために、予めピーク電力となることが予想されるタイミングに先立って、外部商用電源10からの交流電力を直流電力に変換して蓄電池システム22に充電し、ピーク電力となるタイミングにおいて蓄電装置22から負荷に放電して外部商用電源10の電力を平滑化するように充放電をスケジューリングする。システム管理部18からの充放電制御指令は、必要なタイミングで不定期に総合蓄電池ユニット管理部16に出力される。従って、本電力管理システムは、あるタイミングでは充電状態、別のタイミングでは放電状態、また別のタイミングでは充電も放電も実行されない待機状態の3つの状態を遷移する。
【0022】
蓄電池システム22は、複数の蓄電ユニット22−1,22−2,・・・から構成され、例えば5個の蓄電ユニット22−1,22−2,・・・,22−5から構成される。各蓄電ユニット22−1,22−2,・・・は同一の構成である。蓄電ユニット22−1を例にとると、蓄電ユニット22−1は、蓄電部24と、電力系統切替回路26と、蓄電池ユニット管理部28とを含む。
【0023】
蓄電部24は、複数個の蓄電池パックから構成され、各蓄電池パックは複数個の単位セルから構成される。単位セルは、リチウムイオン二次電池から構成される。蓄電部24の構成についてはさらに後述する。
【0024】
電力系統切替回路26は、放電と充電を切り替える回路である。蓄電池システム22の充電時には、充電スイッチをオンにし、放電スイッチをオフにする。蓄電池システム22の放電時には、充電スイッチをオフにし、放電スイッチをオンにする。充電スイッチ及び放電スイッチのオン/オフは、蓄電池ユニット管理部28からの指令により制御される。
【0025】
蓄電池ユニット管理部28は、蓄電部24を構成する複数個の蓄電池パックの各蓄電池パックから充電状態として充電率SOC等のデータを受信し、このSOC等のデータを総合蓄電池ユニット管理部16に出力する。ここで、SOCは、満充電容量に対する放電可能容量(残存容量)の比を百分率で表したパラメータである。総合蓄電池ユニット管理部16は、各蓄電ユニット22−1,22−2,・・・,22−5のそれぞれの蓄電池ユニット管理部28から供給されたSOC等のデータに基づいて充放電の実行の可否を判定し、判定結果に基づいて各蓄電ユニット22−1,22−2,・・・,22−5の蓄電池ユニット管理部28に対して充放電を指令する。蓄電池ユニット管理部28は、この充放電指令に応じ、充電指令の場合には充電スイッチをオン制御し、放電指令の場合には放電スイッチをオン制御する。
【0026】
図2に、蓄電部24を構成する蓄電池パック25の内部構成を示す。蓄電池パック25は、複数のリチウムイオン単位セル25aを直列及び並列に接続して構成される。例えば、複数の単位セル25aを24個並列に接続し、これらを13段直列に接続して構成される。蓄電池パック25は、これら複数個の単位セル25aに加え、パラメータ算出部25bを含むパック情報制御部25cから構成される。
【0027】
パラメータ算出部25bは、単位セルが並列接続されている各段の電流値及び電圧値を測定すると共に、蓄電池パック+−電極間の電流値及び電圧値、蓄電池パックのSOC、蓄電池パック毎の温度を測定してパック情報制御部25cに出力する。SOCは、充放電電流の積算値から求める他、予め決定された開放端電圧とSOCとの関係を示す計算式あるいはテーブルを参照することにより求めることができる。SOCの算出方法についてはさらに後述する。蓄電池パックには内部抵抗及び内部容量が存在するため、開放端電圧を正確に求めることが困難な場合がある。放電可能容量を求めることができない場合がある。上記のSOC算出手法を状況により使い分けたり組み合わせることでより正確に放電可能容量を示すSOCを求めることができる。
【0028】
図3に、蓄電部24の内部構成を示す。蓄電池部24は、図2に示す蓄電池パック25を複数個直列及び並列に接続して構成される。すなわち、例えば、複数の蓄電池パック25を5個直列に接続し、これらを互いに4列並列に接続して構成される。各蓄電池パック25のパック情報制御部25cからのデータ、すなわち、単位セル毎の電流値及び電圧値、蓄電池パック毎の電流値及び電圧値、蓄電池パック毎のSOC、蓄電池パック毎の温度は通信ラインを介して蓄電池ユニット管理部28に出力する。
【0029】
2.システムの基本充放電制御
次に、以上のような構成において、システムの基本的な充放電制御について説明する。図4A,図4Bに、本実施形態の処理フローチャートを示す。図4AはSOCの平均値を用いた充放電制御の処理フローチャートを示し、図4Bはセル電圧、パック電圧、5直列電圧を用いた充放電制御の処理フローチャートを示す。本実施形態の電力管理システムでは、これら2つのフローチャートによる充放電制御が並行して行われ、いずれか一方のフローチャートにおいて充電禁止、あるいは放電禁止の状態となったとき、電力管理システムは充電あるいは放電を禁止するように構成されている。
【0030】
まず、図4Aに示されるSOCの平均値を用いた充放電制御の処理フローチャートについて説明する。
【0031】
システム管理部18は、充電を行うか放電を行うかを決定して充放電制御指令を総合蓄電池ユニット管理部16に出力する(S101)。次に、総合蓄電池ユニット管理部16は、充放電制御指令に基づき、充電あるいは放電のいずれであるかを判定する(S102)。以下、充電指令と放電指令とに分けて説明する。
【0032】
<充電指令の場合>
充電指令である場合、総合蓄電池ユニット管理部16は各蓄電ユニット22−1,22−2,・・・,22−5の蓄電池ユニット管理部28に第1しきい値を設定する(S103)。このとき、充電前に算出された平均SOCより高い値を第1しきい値として設定する。第1しきい値は、充電の目標値であって、以降の処理によって平均SOCが第1しきい値まで充電が行われる。
【0033】
総合蓄電池ユニット管理部16は、各蓄電ユニット22−1,22−2,・・・,22−5の蓄電池ユニット管理部28から蓄電池バック毎のSOCを取得する(S104)。そして、蓄電池システム22の平均SOCを算出する(S105)。蓄電池システム22は5個の蓄電ユニット22−1,22−2,・・・,22−5から構成され、各蓄電ユニット22−1,22−2,・・・,22−5がそれぞれ5直列4並列の蓄電池パック25から構成される場合、合計5×5×4=100個のSOCのデータが全ての蓄電池ユニット管理部28から総合蓄電池ユニット管理部16に出力されるから、総合蓄電池ユニット管理部16は、これら100個のSOCのデータの平均値(平均SOC)を算出する。つまり、蓄電システム22内の全ての蓄電池パック25の平均SOCである。
【0034】
平均SOCを算出した後、総合蓄電池ユニット管理部16は、算出した平均SOCが第1しきい値を超えているか否かを判定する(S106)。S106でYES、すなわち第1しきい値を超えている場合には、充電の目標値に達したので充電を禁止する(S114)。
【0035】
一方、平均SOCが所定の第1しきい値以下である場合には、総合蓄電池ユニット管理部16は、充電を実行する(S107)。
【0036】
なお、平均SOCを例えば30%〜70%の範囲に制御して充放電する場合、第1しきい値は70%に設定することができる。
【0037】
<放電指令の場合>
放電指令である場合、総合蓄電池ユニット管理部16は各蓄電ユニット22−1,22−2,・・・,22−5の蓄電池ユニット管理部28に第2しきい値を設定する(S109)。このとき、放電前に算出された平均SOCより低い値を第2しきい値として設定する。第2しきい値は、放電の目標値であって、以降の処理によって平均SOCが第2しきい値に達するまで放電が行われる。
【0038】
総合蓄電池ユニット管理部16は、各蓄電ユニット22−1,22−2,・・・,22−5の蓄電池ユニット管理部28から蓄電池バック毎のSOCを取得する(S110)。そして、蓄電池システム22の全ての蓄電池パック25の平均SOCを算出する(S111)。
【0039】
平均SOCを算出した後、総合蓄電池ユニット管理部16は、算出した平均SOCが第2しきい値未満であるか否かを判定する(S112)。第2しきい値は、第1しきい値よりも小さい値である。S112でYES、すなわち第2しきい値未満である場合には、放電を行うのに適当でないとして放電指令を実行しない(S114)。
【0040】
一方、平均SOCが所定の第2しきい値以上である場合には、総合蓄電池ユニット管理部16は、放電を実行する(S113)。
【0041】
なお、平均SOCを例えば30%〜70%の範囲に制御して充放電する場合、第2しきい値は30%に設定し、下限値は10%等と設定することができる。電圧下限値は、過放電を防止するために必要な電圧値に設定すればよい。
【0042】
次に、図4Bに示されるセル電圧、パック電圧、5直列電圧を用いた充放電制御の処理フローチャートについて説明する。セル電圧とは、図2に示す蓄電池パック25を構成する各単位セル25aの電圧であり、パック電圧とは蓄電池パック25の電圧であり、5直列電圧とは図3に示す蓄電池パック25が5個直列に接続された場合の全体の電圧である。単位セル25aが13個直列に接続されている場合、セル電圧=パック電圧/13=5直列電圧/(13×5)が成り立つ。
【0043】
総合蓄電池ユニット管理部16は、各蓄電ユニット22−1,22−2,・・・,22−5の蓄電池ユニット管理部28からセル電圧、パック電圧、5直列電圧を取得する(S151)。そして、セル電圧、パック電圧、5直列電圧それぞれの最大値、最小値を算出する(S152)。蓄電池システム22は5個の蓄電ユニット22−1,22−2,・・・,22−5から構成され、各蓄電ユニット22−1,2−2,・・・,22−5がそれぞれ5直列4並列の蓄電池パック25から構成される場合、合計5×5×4=100個のパック電圧のデータが全ての蓄電池ユニット管理部28から総合蓄電池ユニット管理部16に出力されるから、総合蓄電池ユニット管理部16は、これら100個のSOCのデータの最大値と最小値を算出する。同様に、セル電圧、5直列電圧についても、複数の電圧値から最大値と最小値をそれぞれ算出する。
【0044】
セル電圧、パック電圧、5直列電圧それぞれの最大値、最小値を算出した後、総合蓄電池ユニット管理部16は、算出した電圧の最大値が上限値を超えているか否かを判定する(S153)。S153でYES、すなわち上限値を超えている場合には、充電を行うのに適当でないとして充電を禁止する(S156)。S156の充電の禁止は、例えば、充電禁止のフラグを設定することによって実現することができる。このとき、充電禁止のフラグは、図4Aに記載の処理フローチャートで使用される充電禁止のフラグと同じものを使用してもよいし、別のフラグとして設けてもよい。なお、上限値は90%と設定することができる。電圧上限値は、過充電を防止するために必要な電圧値に設定すればよい。
【0045】
次に、総合蓄電池ユニット管理部16は、算出した電圧の最小値が下限値未満であるか否かを判定する(S154)。S154でYES、すなわち下限値未満である場合には、放電を行うのに適当でないとして放電を禁止する(S157)。S157の放電の禁止は、例えば、放電禁止のフラグを設定することによって実現することができる。このとき、放電禁止のフラグは、図4Aに記載の処理フローチャートで使用される放電禁止のフラグと同じものを使用してもよいし、別のフラグとして設けてもよい。なお、下限値は10%と設定することができる。電圧下限値は、過放電を防止するために必要な電圧値に設定すればよい。
【0046】
総合蓄電池ユニット管理部16が算出したセル電圧、パック電圧、5直列電圧それぞれの最大値がS153の条件を満たさない場合、充電禁止のフラグや放電禁止のフラグを設定せず、充放電状態が継続される(S155)。図4Bに記載の処理フローチャートを、例えば1秒に一回など、一定間隔で実行することによって、充放電の制御が行われる。
【0047】
図4Aに記載の平均SOCを用いた充放電制御のみでは、単位セル間の直列接続に異常が生じる場合や、蓄電池パック間の直列接続に異常が生じる場合を検出できない場合もあり得る。そこで、図4Bに記載の充放電制御を並行して実行することで、セル電圧、パック電圧、5直列電圧を互いに独立に上限値と大小比較し、これらのいずれかが電圧上限値を超える場合には何らかの異常が生じたと判定する。具体的には、図4Bに記載の処理フローチャートに示すように、共通の電圧上限値を用い、最大セル電圧と電圧上限値、最大パック電圧/13と電圧上限値、最大5直列電圧/(13×5)と電圧上限値をそれぞれ大小比較し、いずれかが電圧上限値を超えている場合には、過充電のおそれがあるとして充電を実行しない。なお、例えばセル電圧、パック電圧及び5直列電圧の上限値は個別に設けてもよく、例えば、セル電圧の上限値を4.2Vとする場合、パック電圧の上限値を53V、5直列電圧の上限値を250Vに設定する。
【0048】
図5及び図6に、充放電処理を時系列的に示す。図5は充電状態、図6は放電状態である。例としてパック電圧の最大値と最小値を用いる場合とし、両図において、man、minはそれぞれパック電圧の最大値,パック電圧の最小値を示し、丸印は平均SOCを示す。便宜上、パック電圧の電圧値を百分率で示している。まず、図5について説明する。図5(a)に示すように、平均SOCが第1しきい値である70%以下であり、パック電圧の最大値が上限値である90%以下である場合には充電指令が実行され、充電状態となる。
【0049】
充電が進行し、SOCが増大してやがて図5(b)に示すように平均SOCが第1しきい値の70%に達すると、充電が禁止される。また、図5(c)に示すように、平均SOCが第1しきい値の70%に達していなくても、蓄電池パック25間のばらつきが増大してパック電圧の最大値が上限値の95%に達すると、過充電防止のために充電が禁止される。また、図示していないが、たとえ平均SOCが第1しきい値の70%に達しておらず、かつ、パック電圧の最大値が上限値の95%に達していなくても、最大セル電圧、最大5直列電圧のいずれかが電圧上限値に達した場合には、その時点で充電が禁止される。
【0050】
次に、図6について説明する。図6(a)に示すように、平均SOCが第2しきい値である30%以上であり、パック電圧の最小値が下限値である5%以上である場合には放電指令が実行され、放電状態となる。
【0051】
放電が進行し、SOCが減少してやがて図6(b)に示すように平均SOCが第2しきい値の30%に達すると、放電が禁止される。また、図6(c)に示すように、平均SOCが第2しきい値の30%に達していなくても、蓄電池パック25間のばらつきが増大してパック電圧の最小値が下限値の5%に達すると、過放電防止のために放電が禁止される。また、図示していないが、たとえ平均SOCが第2しきい値の30%に達しておらず、かつ、パック電圧の最小値が下限値の5%に達していなくても、最小セル電圧、最小5直列電圧のいずれかが電圧下限値に達した場合には、その時点で放電が禁止される。
【0052】
これらの処理により、平均SOCが30%〜70%の範囲内にあるように充放電制御されるとともに、蓄電池パック25間の特性のばらつきや、蓄電池パック25内の不具合あるいは蓄電池25間の直列接続の不具合等による過充電あるいは過放電が確実に防止される。また、過充電に至らない場合であっても、蓄電池パック25を過充電に近い高い電圧まで充電された状態で放置すると、電池寿命が著しく短くなる。これらの処理により、蓄電池パック25を高い電圧の状態で放置することを防ぐことで、電池の劣化を防ぎ、また電池の寿命を長くすることができる。
【0053】
3.SOC算出処理
以上のように、総合蓄電池ユニット管理部16は充放電制御指令を実行するか否かを判定して充電あるいは放電を実行するが、充電あるいは放電を実行するに際して、蓄電池システム22のSOCを算出する(図4AにおけるS104、S110)。以下では、このSOC算出処理について詳細に説明する。
【0054】
一般に、蓄電池のSOCを算出する方法として、以下の2つの方法が知られている。
【0055】
(1)A方法
蓄電池に出入りした電流量に基づいて算出する方法である。一定以上の電流が流れる場合に、SOCの増減量を比較的正確に算出することができる。具体的には、ある時点におけるSOCに対し、その時点以後の充電電流を時間積分して加算し、かつ、放電電流を時間積分して減算することで任意の時点におけるSOCを算出する。但し、この方法では、一定量以下の微小な電流は検知できない場合があり、このため定電圧モードで充電される場合等において電流を検知できず、計算値と実際のSOCとの間の誤差が蓄積されるおそれがある。蓄電池内部での自己放電等によっても同様の影響が生じ得る。
【0056】
(2)B方法
蓄電池の開放端電圧及び温度をパラメータとした関数により算出する方法である。具体的には、開放端電圧及び温度とSOCとの間には一定の相関があり、予め開放端電圧と温度及びSOCとの関係を関数あるいはテーブルとしてメモリに格納しておき、ある時点における開放端電圧と温度を検出し、これに対応するSOCを算出する。SOCが一定以上で、温度が室温程度の場合、温度のSOCに与える影響は開放端電圧に比べ小さいので、温度を無視して開放端電圧のみをパラメータとしてもよい。なお、この関係は蓄電池の劣化あるいはメモリ効果により変化し得るため、定期的に更新することも提案されている。この方法では、どんな電圧、電流でもSOCを算出することができる。但し、充放電運転時において開放端電圧を推定するのは困難であり、また、充放電開始直後や充放電状態から待機状態に遷移した直後においてヒステリシス(電流が変化しても電圧はすぐには追随せず、ゆっくり変化する状態)の影響により正確に開放端電圧を推定することが困難である。
【0057】
このように、A方法及びB方法には一長一短があるため、いずれかの方法のみでSOCを算出するのでは、蓄電池システム22の充放電を繰り返すに従って正確なSOCを算出することが困難となり、ひいては充放電制御を正確に実行することも困難となる。
【0058】
そこで、本実施形態では、両方法を組み合わせてSOCを算出する。具体的には、本実施形態の管理システムは、既述したようにシステム管理部18から不定期で充放電制御指令が出力され、充電状態、放電状態、待機状態の3つの状態間を遷移することに鑑み、充電状態や放電状態においてはA方法でSOCを算出し、充放電時の充放電電流の積算値を現在のSOCに加算・減算してSOCを算出する。また、一定時間以上待機状態が継続するような場合には、ヒステリシスの影響がなくなり正確にSOCを算出して誤差補正し得ることを考慮してB方法でSOCを算出する。
【0059】
なお、充放電時にB方法でSOCを算出する場合、蓄電池システム22が充放電中に開放端電圧を計測すると正確な開放端電圧が測定できず、正確なSOCを算出することができないおそれがある。従って、蓄電池システム22の充放電中にSOCを算出する場合には、一旦、充放電処理を中断し、SOCを算出した後に、充放電処理を再開することが好適である。充電中に充電処理を中断する場合にはともかく、放電中に放電処理を中断すると負荷に対して供給すべき電力が不足するおそれがあるため、この場合には外部商用電源10の電力を負荷に供給して補うことが好適である。外部商用電源10を中断時のバックアップ電源として用いるということもできる。
【0060】
因みに、A方法は、各蓄電池パック25のパラメータ算出部25bで実行してSOCを算出することができる。算出された各蓄電池パック25毎のSOCは、既述したように総合蓄電池ユニット管理部16に供給される。B方法は、総合蓄電池ユニット管理部16のメモリに予め開放端電圧と温度及びSOCとの関数あるいはテーブルを格納しておき、総合蓄電池ユニット管理部16で実行してSOCを算出することができる。総合蓄電池ユニット管理部16は、A方法及びB方法を切り替えてSOCを算出する。
【0061】
図7に、本実施形態におけるSOC算出処理のフローチャートを示す。まず、総合蓄電池ユニット管理部16は、本電力管理システムの起動時であるか否かを判定する(S201)。システム起動時である場合には、総合蓄電池ユニット管理部16はB方法でSOCを算出する(S205)。システム起動時に算出されたSOCは、SOC初期値として以後のSOC算出の基準値となる。
【0062】
システム起動時でない場合、次に、蓄電池システム22が充電状態あるいは放電状態にあるか否かを判定する(S202)。充電指令あるいは放電指令を実行中である場合にはYESと判定され、総合蓄電池ユニット管理部16はA方法でSOCを算出する(S203)。すなわち、中断直前までの充放電電流値を積算し、B方法で算出されたSOCに加算・減算することでSOCを算出する。
【0063】
一方、S202で充電状態あるいは放電状態のいずれでもない場合、すなわち待機状態である場合には、総合蓄電池ユニット管理部16は次にこの待機状態が一定時間継続しているか否かを判定する(S204)。待機状態が一定時間継続していない場合には、未だヒステリシスの影響があるとして、A方法でSOCを算出する(S203)。また、待機状態が一定時間継続していると判定された場合には、ヒステリシスの影響がなく電流の変化に電圧の変化が追随しており開放端電圧を比較的正確に検出できると判定し、B方法でSOCを算出する(S205)。開放端電圧の算出方法は公知であり、内部抵抗Rと出力電圧V,開放端電圧Vo、放電電流Iとの間には、V=Vo+IRの関係にあるから、(I,V)のペアデータを検出してプロットすることで開放端電圧Voを算出することができる。なお、開放端電圧Voを用いたSOCの算出については、例えば本願出願人に係る特開2006−194789号公報にも開示されている。
【0064】
図8に、本実施形態におけるSOC算出処理が時系列的に示されている。図において、符号100は実際のSOCの時間変化を示し、符号200は本実施形態で算出されたSOCの時間変化を示し、符号300は比較のためA方法のみで算出されたSOCの時間変化を示す。充電処理あるいは放電処理においては、充電処理あるいは放電処理を中断してA方法でSOCを算出する。この場合、比較的高精度にSOCを算出することができ、実際のSOCとほとんど誤差はない。
【0065】
ところが、待機状態に遷移すると、実際のSOCは自己放電等により徐々にSOCは低下するところ、A方法のみでは待機状態ではSOCの変化はないとみなすから実際のSOCとの誤差が蓄積してしまう。一方、本実施形態では、待機状態が一定時間継続すると、A方法ではなくB方法に切り替えてSOCを算出するため、実際のSOCとの誤差を補正することができる。待機状態がさらに継続する場合には、B方法で繰り返しSOCが算出される。
【0066】
待機状態が終了して充電処理あるいは放電処理が実行されると、再びA方法でSOCが算出される。
【0067】
図8から分かるように、本実施形態では、充電処理あるいは放電処理においては充電処理あるいは放電処理を中断してSOCを算出し、待機状態においては一定時間継続して待機状態である場合にB方法に切り替えてSOCを算出して補正するので、実際のSOCにほぼ等しいSOCを得ることができる。
【0068】
4.変形例
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0069】
例えば、本実施形態において、電力源として外部商用電源10に加え、太陽電池(太陽光発電システム)等を併用してもよい。太陽電池で発電した電力を蓄電池システム22に供給して蓄電池システム22を充電する。この場合においても、A方法でSOCを算出する際には充放電処理を中断してSOCを算出するのが好適である。放電処理を中断する場合、太陽電池をバックアップ電源として用いてもよい。
【0070】
また、本実施形態において、蓄電池システム22内の全ての蓄電池パック25の平均SOCを算出し、この平均SOCを第1しきい値あるいは第2しきい値と大小比較しているが、蓄電池システム22内の全ての蓄電池パック25の平均電圧を算出し、平均SOCに代えて平均電圧を第1電圧しきい値あるいは第2電圧しきい値と大小比較してもよい。
【0071】
また、蓄電池システム22内の全ての蓄電池パック25の平均SOCを算出するとともに平均電圧を算出し、平均SOCあるいは平均電圧の少なくともいずれかが第1しきい値あるいは第1電圧しきい値を超える場合に充電処理を禁止し、平均SOCあるいは平均電圧の少なくともいずれかが第2しきい値あるいは第2電圧しきい値未満の場合に放電処理を禁止してもよい。
【0072】
また、本実施形態において、最大SOCが上限値を超える場合に充電を禁止し、最小SOCが下限値未満の場合に放電を禁止しているが、最大SOCの代わりに全ての蓄電池パック25の最大電圧を用いてもよく、最小SOCの代わりに全ての蓄電池パック25の最小電圧を用いてもよい。
【0073】
また、本実施形態では、最大セル電圧、最大パック電圧、最大5直列電圧の少なくともいずれかが電圧上限値を超えた場合に充電を禁止し、最小セル電圧、最小パック電圧、最小5直列電圧の少なくともいずれかが電圧下限値未満の場合に放電を禁止したが、セル電圧、パック電圧、5直列電圧のうちの任意の2つを組み合わせて過充電保護あるいは過放電保護を図ってもよい。例えば、セル電圧と5直列電圧、セル電圧とパック電圧、パック電圧と5直列電圧等である。セル電圧と5直列電圧を用いる場合、図4BのS153の処理において、最大セル電圧あるいは最大5直列電圧のいずれかが電圧上限値を超えるか否かを判定し、超える場合に充電処理を禁止することになる。また、図4BのS154の処理では、最小セル電圧あるいは最小5直列電圧のいずれかが電圧下限値未満であるか否かを判定し、未満である場合に放電処理を禁止することになる。
【0074】
さらに、本実施形態では、蓄電池パック25の充電状態として満充電状態を100とした相対的な充電率SOC(%)を用いているが、充電率SOC(%)に代えて残存容量値(A・h)を用いてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 外部商用電源、12 PCS統括盤、14 パワーコンディショナー、16 総合蓄電池ユニット管理部、18 システム管理部、20 総合電力監視装置、22 蓄電池システム、24 蓄電部、25 蓄電池パック、26 電力系統切替回路、28 蓄電池ユニット管理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力源からの電力により充電し、かつ蓄積した電力を負荷に放電する蓄電部の充放電を制御する電力管理システムであって、
前記蓄電部に含まれる複数の蓄電池パック毎に充電状態を検出する検出手段と、
検出された充電状態に応じ、前記蓄電部の充放電を制御する制御手段と、
を備え、
前記検出手段は、システム起動時に、開放端電圧と前記充電状態との間の相関関係を用いて前記充電状態を検出する
ことを特徴とする電力管理システム。
【請求項2】
請求項1記載の電力管理システムにおいて、
前記検出手段は、前記システム起動後の前記蓄電部の充電中あるいは放電中に、充放電電流の積算値を用いて充電状態を検出する
ことを特徴とする電力管理システム。
【請求項3】
請求項2記載の電力管理システムにおいて、
前記検出手段は、前記蓄電部が充電中でなく放電中でもない待機状態において、一定時間継続するまでは充放電電流の積算値を用いて充電状態を検出し、一定時間継続した場合に開放端電圧と前記充電状態との間の相関関係を用いて前記充電状態を検出する
ことを特徴とする電力管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−88086(P2012−88086A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232983(P2010−232983)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】