電動乗用作業車両
【課題】コンパクトな構成の駆動輪用サスペンションを備える電動乗用作業車両を提供する。
【解決手段】回転して草を刈るモアブレードと、モアブレードを上方および側方から覆うモアデッキと、走行のための左右一対の後輪12,12と、後輪12,12のそれぞれに別々に連結され、後輪12を駆動する2つの走行用モータ31,31と、走行用モータ31を取り付けるためのモータフレーム72Lと、モータフレーム72Lの前側を回動自在に支持する後部メインフレーム18Aと、モータフレーム72Lの後側と後部メインフレーム18Aとを弾性をもって連結するバネ装置76とを備える。
【解決手段】回転して草を刈るモアブレードと、モアブレードを上方および側方から覆うモアデッキと、走行のための左右一対の後輪12,12と、後輪12,12のそれぞれに別々に連結され、後輪12を駆動する2つの走行用モータ31,31と、走行用モータ31を取り付けるためのモータフレーム72Lと、モータフレーム72Lの前側を回動自在に支持する後部メインフレーム18Aと、モータフレーム72Lの後側と後部メインフレーム18Aとを弾性をもって連結するバネ装置76とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車体であるシャーシと、走行のための左右一対の駆動輪と、駆動輪のそれぞれに別々に連結され、駆動輪を駆動する2つの走行用モータとを備える電動乗用作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止の観点から、温室効果ガスを含む排気ガスを規制する動きが社会的潮流となってきた。この動きに対する対応は自動車産業において顕著であり、ハイブリッドカー、電気自動車など、いわゆるエコカーの開発が進められている。特に、近年、バッテリーを電源とした電気自動車の実用化に対する技術開発が活発化している。
【0003】
しかし、このような技術開発は、乗用作業車両の分野においてはさほど活発ではない。特に、乗用の芝刈機の分野においては実施可能レベルの技術開発がなされていないのが現状である。したがって、電動による乗用草刈機を開発することは重要な意義を持っている。
【0004】
一方、従来のローンモア(乗用草刈機)では、走行しながらエンジンなどの動力にてモアブレードを回転させて芝を刈る。このようなローンモアは、シャーシを備え、シャーシの前後の下方には、前輪、後輪をそれぞれ備える。後輪は、前輪よりも大きい直径を有し、後輪の上方で、かつ、シャーシの上方には運転席を取り付ける。そして、後輪から運転席への振動を緩和させるために後輪の上方で、かつ、シャーシと運転席との間にはサスペンションを取り付けていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−113029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような従来のローンモアのサスペンションでは装置が大型化してしまうという問題があった。そこでこの発明は、コンパクトな構成の駆動輪用サスペンションを備える電動乗用作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため請求項1に記載の発明は、走行車体であるシャーシと、
走行のための左右一対の駆動輪と、
該駆動輪のそれぞれに別々に連結され、該駆動輪を駆動する2つの走行用モータと、
該それぞれの走行用モータと前記シャーシとを弾性をもって連結する一対のサスペンションとを備え、
前記走行用モータは前記シャーシに対して上下方向に回動自在であることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用作業車両において、回転して草を刈るモアブレードと、
該モアブレードを上方および側方から覆うモアデッキと、
前記モアブレードを回転させる草刈用モータとを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用作業車両において、前記走行用モータを取り付けるためのモータフレームと、
該モータフレームを上下方向に回動自在に、かつ、上方より支持する前記シャーシと、
前記モータフレームと前記シャーシとを弾性をもって連結する前記サスペンションとを備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用作業車両において、前記シャーシに前記走行用モータを上下方向に回動自在に取り付け、
前記サスペンションの一端を前記走行用モータに取り付けるとともに、前記サスペンションの他端を前記シャーシに取り付けることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の電動乗用作業車両において、前記走行用モータの上下方向の回動角度を規制する規制部材を、前記走行用モータと前記シャーシとの間に備えることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の電動乗用作業車両において、側面視にて、
前記走行用モータの上下方向の回動中心と前記走行用モータの重心とを結ぶ線と、
前記サスペンションの伸縮方向を示す線と、
前記規制部材の長手方向の線とが一点で交わることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用作業車両において、前記左右一対の駆動輪のそれぞれの近傍に前記シャーシが配置され、
該左右のシャーシに渡し掛けるように横フレームを備え、
該横フレームに前記一対のサスペンションの上端をそれぞれ取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、走行車体であるシャーシと、走行のための左右一対の駆動輪と、駆動輪のそれぞれに別々に連結され、駆動輪を駆動する2つの走行用モータと、それぞれの走行用モータとシャーシとを弾性をもって連結する一対のサスペンションとを備え、走行用モータはシャーシに対して上下方向に回動自在である。
【0015】
したがって、シャーシと走行用モータとの間にサスペンションを配置し、コンパクトな構成の駆動輪用サスペンションを備える電動乗用作業車両を提供することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、回転して草を刈るモアブレードと、モアブレードを上方および側方から覆うモアデッキと、モアブレードを回転させる草刈用モータとを備えるので、簡単な構成で走行用モータへの振動を低減した電動乗用作業車両を提供することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、走行用モータを取り付けるためのモータフレームと、モータフレームを上下方向に回動自在に、かつ、上方より支持するシャーシと、モータフレームとシャーシとを弾性をもって連結するサスペンションとを備えるので、モータフレームに走行用モータを確実に固定し、かつ、走行用モータをシャーシに対して回動自在にすることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、シャーシに走行用モータを上下方向に回動自在に取り付け、サスペンションの一端を走行用モータに取り付けるとともに、サスペンションの他端をシャーシに取り付けるので、走行用モータを支持するフレームを必要とせず、部品点数を低減した電動乗用作業車両を提供することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、走行用モータの上下方向の回動角度を規制する規制部材を、走行用モータとシャーシとの間に備える。したがって、大きな起伏に出くわしたとき、走行用モータが大きく上昇してシャーシに備える他の部材と衝突し、走行用モータを損傷することを回避できる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、側面視にて、走行用モータの上下方向の回動中心と走行用モータの重心とを結ぶ線と、サスペンションの伸縮方向を示す線と、規制部材の長手方向の線とが一点で交わるので、最適なレイアウトで走行用モータ、サスペンション、規制部材を配置することができる。したがって、複数の異なる支持点を走行用モータに備えながらも、歪がなく、最適に走行用モータを回動させることができる。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、左右一対の駆動輪のそれぞれの近傍にシャーシが配置され、左右のシャーシに渡し掛けるように横フレームを備え、横フレームに一対のサスペンションの上端をそれぞれ取り付けた。したがって、左右のサスペンションの上端を1つの横フレームで固定することができ、部品点数を低減させた電動乗用作業車両を提供することができる。加えて、左右のシャーシを横フレームよって補強することができ、補強部材とサスペンションの固定部材とを兼ねることができ、いっそう、部品点数を低減させた電動乗用作業車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の電動乗用作業車両の一例としての、電動ローンモアの平面図である。
【図2】この発明の要部である、電動ローンモアの後部の左側から見た概略側面図である。
【図3】その平面図である。
【図4】その背面図である。
【図5】モータフレームの詳細な構造を説明するための図であり、(a)は背面図、(b)は平面図、(c)は左側から見た側面図、(d)は(b)のA矢視断面図、(e)は(b)のB矢視断面図である。
【図6】モータブラケットの詳細な構造を説明するための図であり、(a)は斜視図、(b)はモータブラケットと後部メインフレームの取付を示す背面図、(c)は左側から見た側面図である。
【図7】バネブラケット75の詳細な構造を説明するための図であり、(a)は斜視図、(b)は、モータブラケットとの取り付けを示すための図である。
【図8】バネブラケット77の詳細な構造を説明するための図であり、(a)は斜視図、(b)は、後部メインフレームとの取り付けを示すための図である。
【図9】バネ装置の詳細な構造を説明するための図であり、(a)は斜視図、(b)は分解斜視図、(c)はバネ装置を後部メインフレームとモータフレームとの間に取り付けた状態を示す背面図である。
【図10】後輪の動作を説明するための図であり、(a)は左側の後輪が隆起に乗り上げたときの状態を示す左側からの側面図、(b)は左側の後輪が隆起に乗り上げたときの状態を示す背面図、(c)は左側の後輪が窪みを通過するときの状態を示す左側からの側面図、(d)は左側の後輪が窪みを通過するときの状態を示す背面図である。
【図11】この発明の電動乗用作業車両の別の例の平面図である。
【図12】その要部概略平面図である。
【図13】この例の要部である、電動ローンモアの後部の左側から見た概略側面図である。
【図14】(a)はその平面図、(b)は(a)のA矢視断面図である。
【図15】(a)はバネブラケット177の斜視図、(b)はバネブラケット177とバネ支持フレームとの取り付けを説明するための図である。
【図16】後輪の動作を説明するための図であり、(a)は左側の後輪が隆起に乗り上げたときの状態を示す左側からの側面図、(b)は左側の後輪が隆起に乗り上げたときの状態を示す背面図、(c)は左側の後輪が窪みを通過するときの状態を示す左側からの側面図、(d)は左側の後輪が窪みを通過するときの状態を示す背面図である。
【図17】この発明のさらに別の例の電動ローンモアの、(a)は後部の左側から見た概略側面図、(b)は(a)の平面図、(c)は(a)の背面図である。
【図18】その左側に備える走行用モータの、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は平面図、(d)は左側から見た側面図である。
【図19】(a)は走行用モータと後部メインフレームおよび両者を連結するバネ装置の取り付けを説明するための図、(b)は走行用モータとモータフレームとの取り付けを説明するための図である。
【図20】後輪の動作を説明するための図であり、(a)は左側の後輪が隆起に乗り上げたときの状態を示す左側からの側面図、(b)は左側の後輪が隆起に乗り上げたときの状態を示す背面図、(c)は左側の後輪が窪みを通過するときの状態を示す左側からの側面図、(d)は左側の後輪が窪みを通過するときの状態を示す背面図である。
【図21】(a)はこの発明のさらに別の例を示す左側から見た側面図、(b)は、コネクティングロッドの取り付けを説明するための図である。
【図22】この発明のさらに別の例の電動ローンモアの、(a)は後部の左側から見た概略側面図、(b)は(a)の平面図、(c)は(a)の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。なお、この明細書において、「前」とは電動乗用作業車両の前進方向を、「後」とは後進方向を、「左右」とはそれぞれ、前進方向に向かって「左右」を、「上下」とはそれぞれ、車両の「上下」方向を意味するものとする。図1には、この発明の電動乗用作業車両の一例としての、電動ローンモア10の平面図を示す。電動ローンモア10は、前輪11、後輪12,12、運転席13、走行操作レバー14,14、モアブレード(不図示)、モアデッキ15,15などを備えてなる。前輪11は1つであり、電動ローンモア10の前端部中央に備える。前輪11はその中心に金属製のホイールを備え、ホイールの外側にはゴム製のタイヤを備える。ホイールの回転中心には車軸を貫通させる。ホイールは、車軸に対して回転自在となっている(すなわち、前輪11は従動回転する)。
【0024】
車軸は、前輪ブラケット16の下端部に取り付けられている。前輪ブラケット16は、金属板を門型状に形成してなる。前輪ブラケット16の天面には円筒部17を載置する。円筒部17の中心には回動軸を備え、回動軸の下端は前輪ブラケット16にボルトなどで固設する。円筒部17の上下端にはそれぞれドーナツ状の金属板の蓋部を固設し、蓋部の中心には回動軸を回動自在に取り付ける。円筒部17の側面には、メインフレーム(シャーシ)18の先端を溶接などで固定する。メインフレーム18は、縦断面視で門型状となる金属製である。メインフレーム18の前端部の両側には、それぞれフットレスト19,19を支持部材19A,19Aを介して固設する。
【0025】
メインフレーム18の下方の両側には、モアデッキ15,15を備える。モアデッキ15は略円形の金属製の深皿状に形成され、モアブレードを上方と側方より覆うように配置される。モアデッキ15の略中央ぶには、モアモータ(草刈用モータ)の出力軸を貫通させるための貫通孔を設ける。モアモータは、モアデッキ15の天部の略中央に載置され、ボルトなどによって固定される(モアモータは、ステップ38の下方に備えられ、この図では見えない)。モアデッキ15内部に突出したモアモータの出力軸にはモアブレードの回転中心を連結する。したがって、電動ローンモア10は、それぞれのモアデッキ15内には、1つのモアブレードを備えている。
【0026】
モアデッキ15,15の前部にはそれぞれ、ブラケット22を介してゲージホイール(補助車輪)23を取り付ける。ゲージホイール23は、その中心に金属製のホイールを備え、ホイールの外側にはゴム製のタイヤを備える。ホイールの回転中心には車軸を貫通させる。ホイールは、車軸に対して回転自在となっている(すなわち、ゲージホイール23は従動回転する)。なお、ゲージホイール23は走行面の起伏に追随し、これに合わせてモアデッキ15が上下回動する(したがって、芝刈りを行うときは、ゲージホイール23は常に接地した状態である)。モアデッキ15が上下回動する回動中心はメインフレーム18に平行である。
【0027】
ゲージホイール23の車軸は、補助前輪ブラケット24の下端部に取り付けられている。補助前輪ブラケット24は円筒部25を介してブラケット22に回動自在に取り付けられている。
【0028】
メインフレーム18の後端には後述する後部メインフレーム(シャーシ)を連結する。後部メインフレーム上にはバッテリー30を3つ並べて平置きにする。バッテリー30は、リチウムイオン電池を用いることが望ましい。詳しくは、二酸化マンガンリチウム電池、フッ化黒鉛リチウム電池、塩化チオニルリチウム電池、酸化銅リチウム電池、二硫化鉄リチウム電池、ヨウ素リチウム電池など、エネルギー密度が高く、寿命が長いものを用いることが望ましい。3つのバッテリー30は直列に接続される(直列の端子電圧は72V)。なお、バッテリー30の上方には不図示の収納ケースを備え、バッテリー30のコントローラ(電圧均等装置)などの電子機器を収納する。バッテリー30のコントローラは、バッテリー30の微小な電圧の変動を補正するものである。
【0029】
そして、バッテリー30を上方から覆うようにカウリング28を設ける。カウリング28の上面には、運転席13を取り付ける。なお、カウリング28の左側面には、給電口を設けて、バッテリー30をプラグインで充電できるようにしてもよい。
【0030】
後部メインフレームの下方には、後述する走行用モータを備える。走行用モータは、左右の後輪(駆動輪)12,12に対して1つずつ備える。
【0031】
走行用モータのモータドライバは、走行操作レバー14の傾動量に応じて走行用モータの回転方向および回転速度を制御する。なお、モアモータの回転は、走行用モータの回転数と連動するように制御される。すなわち、走行スピードを速めると、モアブレードの回転数も速まり、走行スピードを落とすと、モアブレードの回転数も遅くなる。
【0032】
走行操作レバー14は傾動可能に設けられ、運転者が走行操作レバー14を前に倒すと走行用モータが前進方向に回転する。一方、走行操作レバー14が後に倒されると走行用モータは後進方向に回転する。さらに、走行操作レバー14の傾動度合いによって走行用モータの回転速度が変化する。すなわち、走行操作レバー14を大きく前(後)に倒すと、走行用モータが前進(後進)方向により早く回転し、走行操作レバー14を小さく前(後)に倒すと、走行用モータが前進(後進)方向にゆっくりと回転する。運転席13の左右に備える走行操作レバー14,14はそれぞれ左右の走行用モータの操作に対応している。したがって、運転者は、左右の走行操作レバー14,14を前後に適宜操作することで、前後進、左右折、旋回などを行うことができる。
【0033】
メインフレーム18の中央部付近の左右側面にはそれぞれ、ロック解除ペダル(ロック操作ペダル)33とデッキ昇降ペダル(昇降操作ペダル)34を回動自在に備える。デッキ昇降ペダル34は、モアデッキ15を下降させたり(芝刈位置)、上昇させたり(非芝刈位置)するためのものである。ロック解除ペダル33は、デッキ昇降ペダル34の回動をロックしたり解除したりするためのものである。
【0034】
メインフレーム18には、2つのデッキアームの上端を回動自在に懸架する。一方、デッキアームの下端には、サブフレームを取り付ける。サブフレームは、メインフレーム18の真下で、かつ、メインフレーム18に沿って設けられる。サブフレームには、バネ支持ブラケットを直立して設ける。このバネ支持ブラケットの上部には、コイルバネ(圧縮バネ)の上端を取り付ける。コイルバネの下端は、モアデッキ15に支持棒を介して取り付ける。支持棒は、モアデッキ15上に載置されたモアモータの側部に、モアデッキ15の上面に沿って略平行に固設されるものである。
【0035】
コイルバネは、ゲージホイール23が走行面の小さな凹凸に出くわしたときにも、跳ねることなく常に接地するようにモアデッキ15(およびゲージホイール23)を路面に対して押し当てるように機能する。したがって、モアデッキ15のゲージホイール23が平坦面に接地した状態でコイルバネは圧縮された状態にある。なお、コイルバネのバネ定数は同じであることが望ましい。
【0036】
電動ローンモア10の後部は、詳しくは図2〜4に示すようになっている。すなわち、メインフレーム18の後部に連続して後部メインフレーム(シャーシ)18Aが固設される。後部メインフレーム18Aは金属製の角筒で、平面視にて略四角状に形成されている。後部メインフレーム18Aの前部の左右両側にはそれぞれモータブラケット70,70が固設され、モータブラケット70,70には、それぞれモータフレーム72L,72Rの前側部分が回動自在に取り付けられている。そして、モータフレーム72L,72Rの後側部分にはそれぞれバネブラケット75が取り付けられ、バネブラケット75にはバネ装置(サスペンション)76の下端部が回動自在に取り付けられる。また、後部メインフレーム18Aの後側部分にはバネブラケット77が固設されている。バネ装置76の上端部はバネブラケット77に回動自在に取り付けられている。
【0037】
モータフレーム72L,72Rにはそれぞれ走行用モータ31が懸架された状態でボルトなどで固設されている。左右の走行用モータ31の側面にはそれぞれ走行用モータ31の出力軸である車軸が外側に向けて突設されている。車軸の先端にはホイール支持部90が固設されており、ホイール支持部90は後輪(駆動輪)12のホイールにボルト締めされている。
【0038】
図5(a)〜(e)にモータフレーム72L,72Rの詳細を示す。モータフレーム72Lは、L字型に屈曲して形成された金属製の四角筒である第1フレーム72L1と、これと同一規格の金属製の四角筒である第2フレーム72L2と、金属製の円筒である第3フレーム72L3と、これと同一規格の短筒である第4フレーム72L4とで構成される。なお、第1フレーム72L1の一端と第2フレーム72L2の一端とは溶接などによって固定されている。また、第1フレーム72L1の他端は、第3フレーム72L3に溶接などによって固定されている。第1フレーム72L1の他端は、第3フレーム72L3の外周に沿うように、円弧状に切りかかれている。第2フレーム72L2の他端は、第4フレーム72L4に溶接などによって固定されている。第2フレーム72L2の他端は、第4フレーム72L4の外周に沿うように、円弧状に切りかかれている。第1フレーム72L1の後部には、ブラケット75を溶接などで固設する。第3フレーム72L3と第4フレーム72L4の内側には回動軸71を挿入して、回動軸71によってモータフレーム72Lを回動自在に支持する。そして、回動軸71の端部には抜け止め71Aを施す。
【0039】
モータフレーム72Rの構成はモータフレーム72Lの構成と同様である。すなわち、モータフレーム72Rは、第1フレーム72R1、第2フレーム72R2、第3フレーム72R3、第4フレーム72R4で構成される。第1フレーム72R1の後部には、ブラケット75を溶接などで固設する。第3フレーム72R3と第4フレーム72R4の内側には回動軸71を挿入して、回動軸71によってモータフレーム72Rを回動自在に支持する。そして、回動軸71の端部には抜け止め71Aを施す。なお、モータフレーム72Rとモータフレーム72Lとは回動軸71に対して独立に上下方向に回動することができる。
【0040】
図6(a)〜(c)にはモータブラケット70の詳細を示す。モータブラケット70は、一対の側部70A,70Aと、天部70Bとで構成される。側部70Aは上辺の長い台形状に構成され、その下部中央には、貫通孔70Cを設ける。一対の側部70Aは所定の間隔を隔てて平行に配置されている。天部70Bは矩形に形成される。モータブラケット70は金属板を適宜折り曲げて天部70Bと側部70Aを一体に形成する(側部70Aと天部70Bとを別々の部材で形成してもよい)。モータブラケット70は、その天部70Bを後部メインフレーム18Aの下面に溶接などで固設される。なお、貫通孔70Cに回動軸71を貫通させ、モータブラケット70と回動軸71とを溶接などで固定する。このとき、モータブラケット70の左右側には、それぞれ、第4フレーム72L4と、第3フレーム72L3が配置されている。このようにして、モータフレーム72Lがモータブラケット70を介して後部メインフレーム18Aに回動自在に取り付けられる。モータフレーム72Rも同様にして、モータブラケット70を介して後部メインフレーム18Aに回動自在に取り付けられる。
【0041】
図7(a),(b)にはバネブラケット75の詳細を示す。バネブラケット75は、一対の側部75A,75Aと、天部75Bとで構成される。側部75Aは上辺の短い台形状に構成され、貫通孔75Cを設ける。一対の側部75Aは所定の間隔を隔てて平行に配置されている。天部75Bは矩形に形成される。バネブラケット75は、金属板を適宜折り曲げて天部75Bと側部75Aとを形成する(側部75Aと天部75Bとを別々の部材で形成してもよい)。バネブラケット75は、その天部75Bをモータフレーム72L,72Rの第1フレーム72L1,72R1の下面にそれぞれ溶接などで固設される。なお、貫通孔75Cには、後述するピンを取り付ける。なお、図7(b)では、モータフレーム72Lを図示しているが、モータフレーム72Rについても同様である。
【0042】
図8(a),(b)にはバネブラケット77の詳細を示す。バネブラケット77は、一対の側部77A,77Aと、背面部77Bとで構成される。側部77Aは略矩形に構成され、貫通孔77Cを設ける。一対の側部77Aは所定の間隔を隔てて平行に配置されている。背面部77Bは矩形に形成される。バネブラケット77は、金属板を適宜折り曲げて背面部77Bと側部77Aとを形成する(側部77Aと背面部77Bとを別々の部材で形成してもよい)。バネブラケット77は、その背面部77Bを後部メインフレーム18Aの後部の左右両側にそれぞれ溶接などで固設される。なお、貫通孔77Cには、後述するピンを取り付ける。
【0043】
図9(a)〜(c)にはバネ装置(サスペンション)76の詳細を示す。バネ装置76は、上部バネ保持部材76A、下部バネ保持部材76Bと両者の間に備えるコイルバネ76Cとで構成される。上部バネ保持部材76Aは、その下部にバネ保持棒76A1を備え、バネ保持棒76A1の上端部は、バネ受部76A2に固設する。バネ受部76A2は短円柱状に形成される。バネ受部76A2の上面には、台座部76A3の下面を固設する。台座部76A3は、短円柱状に形成され、その上面には、ピン取付部76A4を固設する。ピン取付部76A4は、上部に貫通孔76AHを備える。
【0044】
下部バネ保持部材76Bは、その上部にバネ保持筒76B1を備える。バネ保持筒76B1は、上述のバネ保持棒76A1をスライド自在に収納可能である。バネ保持筒76B1の下端部は、バネ受部76B2に固設する。バネ受部76B2は円柱状に形成される。バネ受部76B2の下面には、台座部76B3の上面を固設する。台座部76B3は、円板状に形成され、台座部76B3の下面にはピン取付部76B4を固設する。ピン取付部76B4は、下部に貫通孔76BHを備える。
【0045】
そして、バネ装置76のピン取付部76A4をバネブラケット77の側面77A,77Aの間に挿入し、ピンP10を貫通孔77Cと貫通孔76AHに挿入して、バネ装置76をバネブラケット77に回動自在に取り付ける。一方、バネ装置76のピン取付部76B4をバネブラケット75の側面75A,75Aの間に挿入し、ピンP11を貫通孔75Cと貫通孔76BHに挿入して、バネ装置76をバネブラケット75に回動自在に取り付ける。
【0046】
次に、電動ローンモア10の後輪12が隆起を越えるときの動作について説明する。図10(a),(b)において、左側の後輪12が隆起を乗り越える際には、バネ装置76の付勢力に抗して左側の後輪12が上方に押し上げられようとする。これによって、モータフレーム72Lが回動軸71を中心として、上向きに回動し、コイルバネ76Cが縮みながら、隆起した走行面Gに追随する。このとき、右側の後輪12は平坦な走行面Gを走行しているので、コイルバネ76Cは伸縮しない。図10(c),(d)において、左側の後輪12が窪みを越える際には、左側の後輪12にかかる車重は、通常よりも少なくなり、左側の後輪12は浮き気味になる。このとき、バネ装置76のコイルバネ76Cが伸びることで(付勢力によって)、モータフレーム72Lが回動軸71を中心として、下向きに回動する。これによって、左側の後輪12は下方に押し下げられて窪んだ走行面Gに接地し、左側の後輪12が走行面Gより浮き上がることを防止できる。なお、右側の後輪12は平坦な走行面Gを走行しているので、コイルバネ76Cは伸縮しない。また、右側の後輪12が起伏を通過するときの動作も同様であるので説明を省略する。
【0047】
このように、左右の後輪12が独立して上下動するので、電動ローンモア10の車体が左右に大きく傾くことを防止することができる。
【0048】
図11にはこの発明の別の例を示す。この例のローンモア(電動乗用作業車両)110は、左右一対のメインフレーム(シャーシ)111と、該メインフレーム111の下方に、一対の前輪112と、一対の後輪(駆動輪)113とを備える4輪のローンモアである。また、前輪112と後輪113との間には、1つのモアデッキ114を備える。モアデッキ114は略楕円状の縁のある皿型で、皿の底面を上にして備える。モアデッキ114の内側には、不図示のモアブレード(草刈刃)を、その長径方向に2つ並べて備える。このモアブレードの回転中心には、それぞれモアモータ(草刈用モータ)115,115を取り付ける。なお、モアデッキ114は、その短径方向を(電動ローンモア110の直進方向より)やや右側に傾けて設けられる。すなわち、右側のモアブレードの回転中心は、左側のそれと比べて、直進方向やや後方となる。
【0049】
メインフレーム111の上には、カウリング120を被せる。後輪113のやや前方でカウリング120上には、運転席121を設ける。運転席121の左右側方には、電動ローンモア110の走行操作をするための走行操作レバー122,122をそれぞれ備える。右の走行操作レバー122のさらに外側には、モアデッキ114の地面からの高さを調節するためのモアデッキ調節レバー124を備える。運転席121の左右それぞれの下方には冷却口126A,126Aを、運転席121の前側の下方には、冷却口126Bを設ける。冷却口126A,126Bは、バッテリー125を冷却する空気を取り入れるためのものであり、カウリング120に形成された開口である。また、運転席121の後方には排気口127を2つ設ける。排気口127,127は、冷却口126A,126Bから取り入れられた空気が車体内を通過して排出されるためのものであり、カウリング120に形成された開口である。一方、運転席121の前方には、足置きのためのステップSTを備える。このステップSTはカウリング120として一体に形成される。
【0050】
なお、電動ローンモア110は、草刈りに加えて、走行も電動モータによってまかなうものであり、一対の後輪113,113の内側にそれぞれ走行用モータ116を備え、この走行用モータ116によって後輪113,113を駆動させる(なお、後輪113,113のホイール内にそれぞれホイールモータを備えてもよい)。
【0051】
前述の2つのモアモータ115および2つの走行用モータ116は、好ましくは、ネオジウムなど希土類の磁石を用いると高性能となる(前述の例のモアモータ、走行用モータも同様である)。これらモアモータ115、走行用モータ116の電力は、同一のバッテリーから供給される。バッテリー125は、カウリング120内で、運転席121の下方で、かつ、メインフレーム111後部に5つ平置きされる(バッテリー125は5つに限定されるものではない)。詳しくは、バッテリー125を、後輪113,113のアクスル間で、かつ、メインフレーム111の上に(電動ローンモア110の直進方向に対して)3つ並べて備え、それら3つのバッテリー125の前後に、これらと直角に1つずつ備える。また、別の1つのバッテリー125をメインフレーム111の後部下方に備える。
【0052】
バッテリー125は3個を直列に接続して1セットとし、この例では、これを2セット備えている。したがって、バッテリー125の数は3個であってもよい。その場合には、メインフレーム111の上に(電動ローンモア110の直進方向に対して)3つ並べるものとする。もちろん、この発明の電動乗用作業車両では、バッテリー125はこのような数の規制を受けるものではなく、あらゆる個数を配置することが可能である。
【0053】
左後輪113のフェンダーには、バッテリー125を充電する際にプラグを差し込むための給電口128を備える。給電口128は、カウリング120に蓋付の開口である。給電口128にはプラグを備え、ローンモア110の非作業時に、家庭用電源に接続した電気コードを差し込んで、バッテリー125を充電する。バッテリー125とプラグとの間にはACアダプタ、インバータ、充電装置などを適宜備える。
【0054】
バッテリー125の上には、不図示の制御部を備える。この制御部は、電動ローンモア110の走行用モータ116を制御する。制御部は、走行操作レバー122の傾動量(後述)に応じて走行用モータ116の回転方向および回転速度を制御する。制御部は、走行用モータ116の制御に加えて、草刈用モータ115の回転制御、さらにバッテリー125の微小な電圧の変動を補正する役割も担っている。なお、草刈用モータ115の回転は、走行用モータ116の回転数と連動するように制御される。すなわち、走行スピードを速めると、モアブレードの回転数も速まり、走行スピードを落とすと、モアブレードの回転数も遅くなる。
【0055】
前輪112,112はそれぞれ、シャフトを介して前タイヤブラケット117に回転自在に取り付けられている。前輪112,112には駆動モータは接続されておらず、それぞれが自由に回転するものとする。また、前タイヤブラケット117は、メインフレーム111に対して回動自在に取り付けられている。2つの前タイヤブラケット117,117は、それぞれが自由に回動するものとする。
【0056】
走行操作レバー122は傾動可能に設けられ、運転者がこれを前に倒すと走行用モータ116が前進方向に回転する。一方、走行操作レバー122が後に倒されると走行用モータ116は後進方向に回転する。さらに、操作レバー122の傾動度合いによって走行用モータ116の回転速度が変化する。すなわち、操作レバー122を大きく前(後)に倒すと、走行用モータ116が前進(後進)方向により早く回転し、操作レバー122を小さく前(後)に倒すと、走行用モータ116が前進(後進)方向にゆっくりと回転する。運転席121の左右両側に備えられた操作レバー122,122は、右側の操作レバー122を操作すると、右側の後輪113のモータが回転し、左側の操作レバー122を操作すると左側の後輪113のモータが回転するようになっている。運転者は、左右の走行操作レバー122,122を前後に適宜操作することで、電動ローンモア110の直後進、左右折、旋回などを行うことができる。
【0057】
そして、右側の走行操作レバー122の端部には、モアデッキ114内の2つのモアブレードの回転をON、OFFする草刈スイッチ(モア作業スイッチ)123を設ける。草刈スイッチ123は、リミット型のスイッチを用い、運転者が指で押下するとONとなり、再度押下するとOFFとなる。
【0058】
左側のメインフレーム111の略中央部には、モアデッキ114を昇降させるためのデッキ支持アーム118の一端を回動自在に取り付ける。デッキ支持アーム118の他端は、ステー119aを介してモアデッキ114に取り付けられている。なお、ステー119aはモアデッキ114の表面に溶接などで固設されている。また、デッキ支持アーム118は、ステー119aに対して回動自在に取り付けられている。なお、デッキ支持アーム118の回動中心は、メインフレーム111との連結部である。このデッキ支持アーム118は、不図示のリンク機構を介して、モア調節レバー124に連結されている。一方、モアデッキ114の前側には、別のステー119bが固設されている。このステー119bには、シャフトSの一端が回動自在に取り付けられている。シャフトSの他端は、不図示のステーを介してメインフレーム111に回動自在に取り付けられている。なお、符号STはステップであり、運転者の足を載せるためのものである。
【0059】
ところで、電動ローンモア110の後部は図12〜14に示すようになっている。すなわち、一対のメインフレーム111,111の後端には、エンドフレーム111Bが掛け渡されている。エンドフレーム111Bよりやや前方には、バネ支持フレーム111Aが一対のメインフレーム111,111に掛け渡されている。バネ支持フレーム111Aは金属製の角筒である(なお、バネ支持フレーム111AはH型鋼もしくはL型鋼で形成されていてもよい)。一対のメインフレーム111,111の下面にはそれぞれモータブラケット70,70が固設され、モータブラケット70,70には、それぞれモータフレーム72L,72Rの前部が回動自在に取り付けられている。そして、モータフレーム72L,72Rの後部にはそれぞれバネブラケット75が取り付けられ、バネブラケット75にはバネ装置76の下端部が回動自在に取り付けられる。また、バネ支持フレーム111Aの下面には左右一対のバネブラケット177,177が固設されている。バネ装置76,76の上端部はそれぞれバネブラケット177,177に回動自在に取り付けられている。
【0060】
モータフレーム72L,72Rにはそれぞれ走行用モータ116が懸架された状態でボルトなどで固設されている。左右の走行用モータ116の側面にはそれぞれ走行用モータ116の出力軸である車軸が外側に向けて突設されている。車軸の先端にはホイール支持部190が固設されており、ホイール支持部190は後輪113のホイールにボルト締めされている。
【0061】
なお、モータフレーム72L,72Rの詳細については、図5(a)〜(e)に示したのと同様である。すなわち、モータフレーム72Lは、第1フレーム72L1、第2フレーム72L2、第3フレーム72L3、第4フレーム72L4で構成される。第1フレーム72L1の後部には、ブラケット75を溶接などで固設する。第3フレーム72L3と第4フレーム72L4の内側には回動軸71を挿入して、回動軸71によってモータフレーム72Lを回動自在に支持する。そして、回動軸71の端部には抜け止め71Aを施す。
【0062】
モータフレーム72Rの構成はモータフレーム72Lの構成と同様である。すなわち、第1フレーム72R1、第2フレーム72R2、第3フレーム72R3、第4フレーム72R4で構成される。第1フレーム72R1の後端部には、ブラケット75を溶接などで固設する。第3フレーム72R3と第4フレーム72R4の内側には回動軸71を挿入して、回動軸71によってモータフレーム72Rを回動自在に支持する。そして、回動軸71の端部には抜け止め71Aを施す。なお、モータフレーム72Rとモータフレーム72Lとは回動軸71に対して独立に回動することができる。
【0063】
モータブラケット70の詳細については、図6(a)〜(c)に示したのと同様である。すなわち、モータブラケット70は、一対の側部70A,70Aと、天部70Bとで構成される。側部70Aの下部中央には、貫通孔70Cを設ける。モータブラケット70は、その天部70Bを後部メインフレーム111の下面に溶接などで固設される。なお、貫通孔70Cに回動軸71を貫通させ、モータブラケット70と回動軸71とを溶接などで固定する。このとき、モータブラケット70の左右側には、それぞれ、第4フレーム72L4と、第3フレーム72L3が配置されている。このようにして、モータフレーム72Lがモータブラケット70を介して後部メインフレーム18Aに回動自在に取り付けられる。モータフレーム72Rも同様にして、モータブラケット70を介して後部メインフレーム18Aに回動自在に取り付けられる。
【0064】
バネブラケット75の詳細については、図7(a),(b)に示したのと同様である。すなわち、バネブラケット75は、一対の側部75A,75Aと、天部75Bとで構成される。側部75Aには貫通孔75Cを設ける。バネブラケット75は、その天部75Bをモータフレーム72L,72Rの第1フレーム72L1,72R1の下面にそれぞれ溶接などで固設される。なお、貫通孔75Cには、後述するピンを取り付ける。なお、図17(b)では、モータフレーム72Lを図示しているが、モータフレーム72Rについても同様である。
【0065】
図15(a),(b)にはバネブラケット177の詳細を示す。バネブラケット177は、一対の側部177A,177Aと、天部177Bとで構成される。これらは1枚の金属板を2度折り曲げて形成される。側部177Aは略六角形に構成され、略中央に貫通孔177Cを設ける。一対の側部177Aは所定の間隔を隔てて平行に配置されている。天部177Bは矩形に形成される。バネブラケット177は、その天部177Bをバネ支持フレーム111Aの左右両側にそれぞれ溶接などで固設される。なお、貫通孔177Cには、後述するようにピンPNによってバネ装置76の上端を取り付ける。
【0066】
次に、電動ローンモア110の後輪113が隆起を越えるときの動作について説明する。図16(a),(b)において、左側の後輪113が隆起を乗り越える際には、バネ装置76の付勢力に抗して左側の後輪113が上方に押し上げられようとする。これによって、モータフレーム72Lが回動軸71を中心として、上向きに回動し、コイルバネ76Cが縮みながら、隆起した走行面Gに追随する。このとき、右側の後輪113は平坦な走行面Gを走行しているので、コイルバネ76Cは伸縮しない。図16(c),(d)において、左側の後輪113が窪みを越える際には、左側の後輪113にかかる車重は、通常よりも少なくなり、左側の後輪113は浮き気味になる。このとき、バネ装置76のコイルバネ76Cが伸びることで(付勢力によって)、モータフレーム72Lが回動軸71を中心として、下向きに回動する。これによって、左側の後輪113は下方に押し下げられて窪んだ走行面Gに接地し、左側の後輪113が走行面Gより浮き上がることを防止できる。なお、右側の後輪113は平坦な走行面Gを走行しているので、コイルバネ76Cは伸縮しない。また、右側の後輪113が起伏を通過するときの動作も同様であるので説明を省略する。
【0067】
このように、左右の後輪113が独立して上下動するので、電動ローンモア110の車体が左右に大きく傾くことを防止することができる。
【0068】
図17(a)〜(c)には、この発明のさらに別の例を示す。この例は、図1に示した電動ローンモア10の変形例である。メインフレーム18の後部に連続して後部メインフレーム(シャーシ)218Aが固設される。後部メインフレーム218Aは金属製の角筒で、平面視にて略四角状に形成されている。後部メインフレーム218Aの前部には、モータ支持フレーム201を車幅方向に設け、その両端は後部メインフレーム218Aに固設する。モータ支持フレーム201は、金属製の角筒(または、H型鋼)などで形成され、その下面で、かつ、車幅方向の左右側には、モータブラケット270,270が固設され、モータブラケット270,270には、それぞれ走行用モータ231,231の前側部分が回動自在に取り付けられている。そして、走行用モータ231,231の後側部分にはバネ装置(サスペンション)176の下端部が回動自在に取り付けられる。また、後部メインフレーム218Aの後側部分にはバネブラケット77が固設されている。バネ装置176の上端部はバネブラケット77に回動自在に取り付けられている。
【0069】
モータブラケット270は、一枚の金属板を略直角に2度折り曲げることによって、一対の側部270A,270Aと、天部とを形成してなる。側部270Aは逆台形状で、天部は矩形状である。側部270Aの下部中央には、貫通孔270Hを設ける。モータブラケット270は、その天部をモータ支持フレーム201の下面に溶接などで固設される。
【0070】
図18(a)〜(d)には、走行用モータ231の詳細を示す。走行用モータ231は、モータケース主要部231Aとモータケース蓋部231Bとで構成される。両者は鋳造などによって形成される。モータケース主要部231Aの前面側には、前部ブラケット231A2を一体に形成する。前部ブラケット231A2は板状に形成され、その略中央には貫通孔231H2を形成する。一方、モータケース主要部231Aの後面側には、一対の後部ブラケット231A1,231A1を一体に形成する。後部ブラケット231A1は板状に形成され、その略中央には貫通孔231H1を形成する。モータケース主要部231A内にはモータが内蔵され、モータの出力軸(車軸)231Xがモータケース主要部231Aに形成された貫通孔から突出する。出力軸231Xの先端には、ホイール支持部290が固設される。ホイール支持部290は後輪(駆動輪)12のホイールにボルト締めされている。なお、モータケース主要部231Aとモータケース蓋部231Bとは、ボルトなどで固定して閉じられる。
【0071】
バネブラケット77は、図8(a),(b)に示すのと同様に、一対の側部77A,77Aと、背面部77Bとで構成される。バネブラケット77は、その背面部77Bを後部メインフレーム218Aの後部の左右両側にそれぞれ溶接などで固設される。なお、貫通孔77Cには、後述するピンを取り付ける。
【0072】
バネ装置176は図9(a)〜(c)に示すのと同様に、上部バネ保持部材(図9では符号76A)、下部バネ保持部材(図9では符号76B)と両者の間に備えるコイルバネ(図9では符号76C)とで構成される。
【0073】
次に、走行用モータ231を後部メインフレーム218Aに懸架する。詳しくは、図19(a)に示すように、バネ装置176のピン取付部176A4をバネブラケット77の側面77A,77Aの間に挿入し、ピンP10を貫通孔77Cと貫通孔76AHに挿入して、バネ装置176をバネブラケット77に回動自在に取り付ける。一方、バネ装置176のピン取付部176B4を走行用モータ231の後部ブラケット231A1の側面75A,75Aの間に挿入し、ピンP12を貫通孔231H1と貫通孔76BHに挿入して、バネ装置176を後部ブラケット231A1に回動自在に取り付ける。
【0074】
また、図19(b)に示すように、走行用モータ231の前部ブラケット231A2をモータブラケット270の一対の側部の間に挿入し、前部ブラケット231A2の貫通孔231H2とモータブラケット270の側部270Aの貫通孔270Hとを合わせて、回動ピン271Aを貫通させて走行用モータ231をモータブラケット270に上下方向に回動自在に取り付ける。
【0075】
次に、電動ローンモア10の後輪12が隆起を越えるときの動作について説明する。図20(a),(b)において、左側の後輪12が隆起を乗り越える際には、バネ装置176の付勢力に抗して左側の後輪12が上方に押し上げられようとする。これによって、左側の走行用モータ231が回動ピン271Aを中心として、上向きに回動し、コイルバネが縮みながら、隆起した走行面Gに追随する。このとき、右側の後輪12は平坦な走行面Gを走行しているので、コイルバネは伸縮しない。図20(c),(d)において、左側の後輪12が窪みを越える際には、左側の後輪12にかかる車重は、通常よりも少なくなり、左側の後輪12は浮き気味になる。このとき、バネ装置176のコイルバネが伸びることで(付勢力によって)、左側の走行用モータ231が回動ピン271Aを中心として下向きに回動する。これによって、左側の走行用モータ231が下方に押し下げられて窪んだ走行面Gに接地し、左側の後輪12が走行面Gより浮き上がることを防止できる。なお、右側の後輪12は平坦な走行面Gを走行しているので、コイルバネは伸縮しない。また、右側の後輪12が起伏を通過するときの動作も同様であるので説明を省略する。
【0076】
このように、左右の後輪12が独立して上下動するので、電動ローンモア10の車体が左右に大きく傾くことを防止することができる。
【0077】
なお、図21(a)に示すように、バネ装置176を配置すると好適である。すなわち、回動ピン271Aの回動中心(走行用モータ231´のピボット点)Hと走行用モータ231´の重心Wとを結ぶ線L1と、ホイール支持部290の回動中心AXを通る鉛直線L2との交わる点を交点Kとする。バネ装置176の伸縮方向の中心線L3が交点Kを通るようにバネブラケット77´と後部ブラケット231A1とを設け、両者の間にバネ装置176を取り付ける。加えて、走行用モータ231´とモータブラケット270´との間にコネクティングロッド(規制部材)CRを取り付けてもよい。このコネクティングロッドCRは、その中心線L4が交点Kを通るように設けることが望ましい。
【0078】
コネクティングロッドCRの取り付けについて、図21(b)に詳しく示す。コネクティングロッドCRは、板状(断面形状はIまたはH型が好適)のロッドCR2の両端に円環部CR1,CR1を備えてなる。そして、円環部CR1の内側には、ゴム製のブッシュGBを嵌めつける。コネクティングロッドCRの一端は、走行用モータ231´に形成されたロッドブラケット231A3に支持ピンPN2を介して回動自在に取り付ける。一方、コネクティングロッドCRの他端は、モータブラケット270´に支持ピンPN1を介して回動自在に取り付ける(支持ピンPN1,PN2の両端には抜け止めが施してあり、コネクティングロッドCRを保持するようになっている)。なお、支持ピンPN1,PN2の軸部分の直径と円環部CR1の内径との間には適当な量の遊びがあり、この遊びを埋めるようにブッシュGBが存在する(ブッシュGBは弾性部材として機能する)。したがって、コネクティングロッドCRは、支持ピンPN1,PN2の回りに回動自在であるのみならず、ブッシュGBの配置された遊び分だけ移動自在である。
【0079】
なお、ロッドCR2の両端には、円環部CR1に代えて、支持ピンPN1,PN2がそれぞれ遊嵌する長孔を有する長孔部を備えるようにしてもよい。また、コネクティングロッドCRに代えて、たとえば、ロッドブラケット231A3とモータブラケット270´との間にコイルバネを掛けとめて規制部材としてもよい。この場合、コイルバネのバネ定数は、バネ装置176のコイルバネのバネ定数と異なるようにすると好適である。
【0080】
図22(a)〜(c)には、この発明のさらに別の例を示す。この例は、図17に示した電動ローンモア10のさらに変形例である(図22中で図17と同一の符号は同一の構成部材を示す)。メインフレーム18の後部に連続して後部メインフレーム(シャーシ)218Aが固設される。後部メインフレーム218Aの前部には、モータ支持フレーム201を車幅方向に設け、その両端は後部メインフレーム218Aに固設する。モータ支持フレーム201の下面で、かつ、車幅方向の左右側には、モータブラケット270,270が固設され、モータブラケット270,270には、それぞれ走行用モータ331,331の前側部分が回動自在に取り付けられている(なお、走行用モータ331の基本構成は、走行用モータ231と同様であり、後部ブラケット231Aに代えて、ブラケット331Bを備える)。そして、走行用モータ331,331の上面に形成されたブラケット331Bには、バネ装置276の下端部がピン332にて回動自在に取り付けられる(なお、バネ装置276の基本的な構成は、バネ装置76と同様である)。
【0081】
また、左右一対の後輪(駆動輪)12,12の内側(近傍)に四角形状の後部メインフレーム(シャーシ)218Aの両側部が配置され、この後部メインフレーム218Aの両側に渡し掛けるように、横フレーム301A,301Bを取り付ける。横フレーム301A,301Bは金属板で形成され、断面視で門型状に折り曲げて形成される。横フレーム301A,301Bの両端はさらに外向きに折り曲げられ、貫通孔が形成される。この貫通孔にボルトを通して、後部メインフレーム218Aに固定する。
【0082】
横フレーム301Bには、その門型の空間を覆うように閉塞板303を溶接などで固定する。閉塞板303には、一対のブラケット302,302を左右両側に固設する。ブラケット302は金属板で形成され、その中央部にはピン333を通すための貫通孔を設ける。このブラケット302には、バネ装置276の上端を回動自在に取り付ける。
【0083】
なお、横フレーム301A,301B上はカウリングで覆い、その上には、運転席13を不図示の取付手段を介して取り付ける。このように構成することで、閉塞板303は、ブラケット302を取り付けるための役割と、横フレーム301Bに固設されることで、後部メインフレーム218Aの強度を高めるための役割を担っている。横フレーム301A,301Bも同様に、後部メインフレーム218Aの強度を高めるための役割を担っている。この横フレーム301A,301Bの形状はこの例に限定されるものではなく、例えば、横フレーム301A,301Bが一続きになったような形状であってもよい。また、横フレーム301A,301Bは、後部メインフレーム218A上面に固定することに限定されるものでもなく、車体に適宜固定することができるものとする。さらに、横フレーム301A,301Bは、この例のような、車体前部に1本のメインフレーム18、車体後部に略四角形状の後部メインフレーム218Aを備える電動乗用作業車両に適用することに限定されるものではなく、例えば、図11,12に示すようなタイプの電動乗用作業車両に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
この発明の電動乗用作業車両は、芝刈りに限定されるものではなく、あらゆる作業に適用しうる。また、駆動源は、モータに限定されるものではなく、エンジンであってもよい。
【符号の説明】
【0085】
10,110 電動ローンモア(電動乗用作業車両)
11,112 前輪
12,113 後輪(駆動輪)
18,111 メインフレーム(シャーシ)
18A,218A 後部メインフレーム(シャーシ)
70,270,270´ モータブラケット
71 回動軸
72L,72R モータフレーム
75,77,77´,177 バネブラケット
76,176,276 バネ装置(サスペンション)
111A バネ支持フレーム
116,231,231´,331 走行用モータ
231A2 前部ブラケット
231A1 後部ブラケット
301A,301B 横フレーム
CR コネクティングロッド(規制部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車体であるシャーシと、走行のための左右一対の駆動輪と、駆動輪のそれぞれに別々に連結され、駆動輪を駆動する2つの走行用モータとを備える電動乗用作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止の観点から、温室効果ガスを含む排気ガスを規制する動きが社会的潮流となってきた。この動きに対する対応は自動車産業において顕著であり、ハイブリッドカー、電気自動車など、いわゆるエコカーの開発が進められている。特に、近年、バッテリーを電源とした電気自動車の実用化に対する技術開発が活発化している。
【0003】
しかし、このような技術開発は、乗用作業車両の分野においてはさほど活発ではない。特に、乗用の芝刈機の分野においては実施可能レベルの技術開発がなされていないのが現状である。したがって、電動による乗用草刈機を開発することは重要な意義を持っている。
【0004】
一方、従来のローンモア(乗用草刈機)では、走行しながらエンジンなどの動力にてモアブレードを回転させて芝を刈る。このようなローンモアは、シャーシを備え、シャーシの前後の下方には、前輪、後輪をそれぞれ備える。後輪は、前輪よりも大きい直径を有し、後輪の上方で、かつ、シャーシの上方には運転席を取り付ける。そして、後輪から運転席への振動を緩和させるために後輪の上方で、かつ、シャーシと運転席との間にはサスペンションを取り付けていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−113029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような従来のローンモアのサスペンションでは装置が大型化してしまうという問題があった。そこでこの発明は、コンパクトな構成の駆動輪用サスペンションを備える電動乗用作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため請求項1に記載の発明は、走行車体であるシャーシと、
走行のための左右一対の駆動輪と、
該駆動輪のそれぞれに別々に連結され、該駆動輪を駆動する2つの走行用モータと、
該それぞれの走行用モータと前記シャーシとを弾性をもって連結する一対のサスペンションとを備え、
前記走行用モータは前記シャーシに対して上下方向に回動自在であることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用作業車両において、回転して草を刈るモアブレードと、
該モアブレードを上方および側方から覆うモアデッキと、
前記モアブレードを回転させる草刈用モータとを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用作業車両において、前記走行用モータを取り付けるためのモータフレームと、
該モータフレームを上下方向に回動自在に、かつ、上方より支持する前記シャーシと、
前記モータフレームと前記シャーシとを弾性をもって連結する前記サスペンションとを備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用作業車両において、前記シャーシに前記走行用モータを上下方向に回動自在に取り付け、
前記サスペンションの一端を前記走行用モータに取り付けるとともに、前記サスペンションの他端を前記シャーシに取り付けることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の電動乗用作業車両において、前記走行用モータの上下方向の回動角度を規制する規制部材を、前記走行用モータと前記シャーシとの間に備えることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の電動乗用作業車両において、側面視にて、
前記走行用モータの上下方向の回動中心と前記走行用モータの重心とを結ぶ線と、
前記サスペンションの伸縮方向を示す線と、
前記規制部材の長手方向の線とが一点で交わることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用作業車両において、前記左右一対の駆動輪のそれぞれの近傍に前記シャーシが配置され、
該左右のシャーシに渡し掛けるように横フレームを備え、
該横フレームに前記一対のサスペンションの上端をそれぞれ取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、走行車体であるシャーシと、走行のための左右一対の駆動輪と、駆動輪のそれぞれに別々に連結され、駆動輪を駆動する2つの走行用モータと、それぞれの走行用モータとシャーシとを弾性をもって連結する一対のサスペンションとを備え、走行用モータはシャーシに対して上下方向に回動自在である。
【0015】
したがって、シャーシと走行用モータとの間にサスペンションを配置し、コンパクトな構成の駆動輪用サスペンションを備える電動乗用作業車両を提供することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、回転して草を刈るモアブレードと、モアブレードを上方および側方から覆うモアデッキと、モアブレードを回転させる草刈用モータとを備えるので、簡単な構成で走行用モータへの振動を低減した電動乗用作業車両を提供することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、走行用モータを取り付けるためのモータフレームと、モータフレームを上下方向に回動自在に、かつ、上方より支持するシャーシと、モータフレームとシャーシとを弾性をもって連結するサスペンションとを備えるので、モータフレームに走行用モータを確実に固定し、かつ、走行用モータをシャーシに対して回動自在にすることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、シャーシに走行用モータを上下方向に回動自在に取り付け、サスペンションの一端を走行用モータに取り付けるとともに、サスペンションの他端をシャーシに取り付けるので、走行用モータを支持するフレームを必要とせず、部品点数を低減した電動乗用作業車両を提供することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、走行用モータの上下方向の回動角度を規制する規制部材を、走行用モータとシャーシとの間に備える。したがって、大きな起伏に出くわしたとき、走行用モータが大きく上昇してシャーシに備える他の部材と衝突し、走行用モータを損傷することを回避できる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、側面視にて、走行用モータの上下方向の回動中心と走行用モータの重心とを結ぶ線と、サスペンションの伸縮方向を示す線と、規制部材の長手方向の線とが一点で交わるので、最適なレイアウトで走行用モータ、サスペンション、規制部材を配置することができる。したがって、複数の異なる支持点を走行用モータに備えながらも、歪がなく、最適に走行用モータを回動させることができる。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、左右一対の駆動輪のそれぞれの近傍にシャーシが配置され、左右のシャーシに渡し掛けるように横フレームを備え、横フレームに一対のサスペンションの上端をそれぞれ取り付けた。したがって、左右のサスペンションの上端を1つの横フレームで固定することができ、部品点数を低減させた電動乗用作業車両を提供することができる。加えて、左右のシャーシを横フレームよって補強することができ、補強部材とサスペンションの固定部材とを兼ねることができ、いっそう、部品点数を低減させた電動乗用作業車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の電動乗用作業車両の一例としての、電動ローンモアの平面図である。
【図2】この発明の要部である、電動ローンモアの後部の左側から見た概略側面図である。
【図3】その平面図である。
【図4】その背面図である。
【図5】モータフレームの詳細な構造を説明するための図であり、(a)は背面図、(b)は平面図、(c)は左側から見た側面図、(d)は(b)のA矢視断面図、(e)は(b)のB矢視断面図である。
【図6】モータブラケットの詳細な構造を説明するための図であり、(a)は斜視図、(b)はモータブラケットと後部メインフレームの取付を示す背面図、(c)は左側から見た側面図である。
【図7】バネブラケット75の詳細な構造を説明するための図であり、(a)は斜視図、(b)は、モータブラケットとの取り付けを示すための図である。
【図8】バネブラケット77の詳細な構造を説明するための図であり、(a)は斜視図、(b)は、後部メインフレームとの取り付けを示すための図である。
【図9】バネ装置の詳細な構造を説明するための図であり、(a)は斜視図、(b)は分解斜視図、(c)はバネ装置を後部メインフレームとモータフレームとの間に取り付けた状態を示す背面図である。
【図10】後輪の動作を説明するための図であり、(a)は左側の後輪が隆起に乗り上げたときの状態を示す左側からの側面図、(b)は左側の後輪が隆起に乗り上げたときの状態を示す背面図、(c)は左側の後輪が窪みを通過するときの状態を示す左側からの側面図、(d)は左側の後輪が窪みを通過するときの状態を示す背面図である。
【図11】この発明の電動乗用作業車両の別の例の平面図である。
【図12】その要部概略平面図である。
【図13】この例の要部である、電動ローンモアの後部の左側から見た概略側面図である。
【図14】(a)はその平面図、(b)は(a)のA矢視断面図である。
【図15】(a)はバネブラケット177の斜視図、(b)はバネブラケット177とバネ支持フレームとの取り付けを説明するための図である。
【図16】後輪の動作を説明するための図であり、(a)は左側の後輪が隆起に乗り上げたときの状態を示す左側からの側面図、(b)は左側の後輪が隆起に乗り上げたときの状態を示す背面図、(c)は左側の後輪が窪みを通過するときの状態を示す左側からの側面図、(d)は左側の後輪が窪みを通過するときの状態を示す背面図である。
【図17】この発明のさらに別の例の電動ローンモアの、(a)は後部の左側から見た概略側面図、(b)は(a)の平面図、(c)は(a)の背面図である。
【図18】その左側に備える走行用モータの、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は平面図、(d)は左側から見た側面図である。
【図19】(a)は走行用モータと後部メインフレームおよび両者を連結するバネ装置の取り付けを説明するための図、(b)は走行用モータとモータフレームとの取り付けを説明するための図である。
【図20】後輪の動作を説明するための図であり、(a)は左側の後輪が隆起に乗り上げたときの状態を示す左側からの側面図、(b)は左側の後輪が隆起に乗り上げたときの状態を示す背面図、(c)は左側の後輪が窪みを通過するときの状態を示す左側からの側面図、(d)は左側の後輪が窪みを通過するときの状態を示す背面図である。
【図21】(a)はこの発明のさらに別の例を示す左側から見た側面図、(b)は、コネクティングロッドの取り付けを説明するための図である。
【図22】この発明のさらに別の例の電動ローンモアの、(a)は後部の左側から見た概略側面図、(b)は(a)の平面図、(c)は(a)の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。なお、この明細書において、「前」とは電動乗用作業車両の前進方向を、「後」とは後進方向を、「左右」とはそれぞれ、前進方向に向かって「左右」を、「上下」とはそれぞれ、車両の「上下」方向を意味するものとする。図1には、この発明の電動乗用作業車両の一例としての、電動ローンモア10の平面図を示す。電動ローンモア10は、前輪11、後輪12,12、運転席13、走行操作レバー14,14、モアブレード(不図示)、モアデッキ15,15などを備えてなる。前輪11は1つであり、電動ローンモア10の前端部中央に備える。前輪11はその中心に金属製のホイールを備え、ホイールの外側にはゴム製のタイヤを備える。ホイールの回転中心には車軸を貫通させる。ホイールは、車軸に対して回転自在となっている(すなわち、前輪11は従動回転する)。
【0024】
車軸は、前輪ブラケット16の下端部に取り付けられている。前輪ブラケット16は、金属板を門型状に形成してなる。前輪ブラケット16の天面には円筒部17を載置する。円筒部17の中心には回動軸を備え、回動軸の下端は前輪ブラケット16にボルトなどで固設する。円筒部17の上下端にはそれぞれドーナツ状の金属板の蓋部を固設し、蓋部の中心には回動軸を回動自在に取り付ける。円筒部17の側面には、メインフレーム(シャーシ)18の先端を溶接などで固定する。メインフレーム18は、縦断面視で門型状となる金属製である。メインフレーム18の前端部の両側には、それぞれフットレスト19,19を支持部材19A,19Aを介して固設する。
【0025】
メインフレーム18の下方の両側には、モアデッキ15,15を備える。モアデッキ15は略円形の金属製の深皿状に形成され、モアブレードを上方と側方より覆うように配置される。モアデッキ15の略中央ぶには、モアモータ(草刈用モータ)の出力軸を貫通させるための貫通孔を設ける。モアモータは、モアデッキ15の天部の略中央に載置され、ボルトなどによって固定される(モアモータは、ステップ38の下方に備えられ、この図では見えない)。モアデッキ15内部に突出したモアモータの出力軸にはモアブレードの回転中心を連結する。したがって、電動ローンモア10は、それぞれのモアデッキ15内には、1つのモアブレードを備えている。
【0026】
モアデッキ15,15の前部にはそれぞれ、ブラケット22を介してゲージホイール(補助車輪)23を取り付ける。ゲージホイール23は、その中心に金属製のホイールを備え、ホイールの外側にはゴム製のタイヤを備える。ホイールの回転中心には車軸を貫通させる。ホイールは、車軸に対して回転自在となっている(すなわち、ゲージホイール23は従動回転する)。なお、ゲージホイール23は走行面の起伏に追随し、これに合わせてモアデッキ15が上下回動する(したがって、芝刈りを行うときは、ゲージホイール23は常に接地した状態である)。モアデッキ15が上下回動する回動中心はメインフレーム18に平行である。
【0027】
ゲージホイール23の車軸は、補助前輪ブラケット24の下端部に取り付けられている。補助前輪ブラケット24は円筒部25を介してブラケット22に回動自在に取り付けられている。
【0028】
メインフレーム18の後端には後述する後部メインフレーム(シャーシ)を連結する。後部メインフレーム上にはバッテリー30を3つ並べて平置きにする。バッテリー30は、リチウムイオン電池を用いることが望ましい。詳しくは、二酸化マンガンリチウム電池、フッ化黒鉛リチウム電池、塩化チオニルリチウム電池、酸化銅リチウム電池、二硫化鉄リチウム電池、ヨウ素リチウム電池など、エネルギー密度が高く、寿命が長いものを用いることが望ましい。3つのバッテリー30は直列に接続される(直列の端子電圧は72V)。なお、バッテリー30の上方には不図示の収納ケースを備え、バッテリー30のコントローラ(電圧均等装置)などの電子機器を収納する。バッテリー30のコントローラは、バッテリー30の微小な電圧の変動を補正するものである。
【0029】
そして、バッテリー30を上方から覆うようにカウリング28を設ける。カウリング28の上面には、運転席13を取り付ける。なお、カウリング28の左側面には、給電口を設けて、バッテリー30をプラグインで充電できるようにしてもよい。
【0030】
後部メインフレームの下方には、後述する走行用モータを備える。走行用モータは、左右の後輪(駆動輪)12,12に対して1つずつ備える。
【0031】
走行用モータのモータドライバは、走行操作レバー14の傾動量に応じて走行用モータの回転方向および回転速度を制御する。なお、モアモータの回転は、走行用モータの回転数と連動するように制御される。すなわち、走行スピードを速めると、モアブレードの回転数も速まり、走行スピードを落とすと、モアブレードの回転数も遅くなる。
【0032】
走行操作レバー14は傾動可能に設けられ、運転者が走行操作レバー14を前に倒すと走行用モータが前進方向に回転する。一方、走行操作レバー14が後に倒されると走行用モータは後進方向に回転する。さらに、走行操作レバー14の傾動度合いによって走行用モータの回転速度が変化する。すなわち、走行操作レバー14を大きく前(後)に倒すと、走行用モータが前進(後進)方向により早く回転し、走行操作レバー14を小さく前(後)に倒すと、走行用モータが前進(後進)方向にゆっくりと回転する。運転席13の左右に備える走行操作レバー14,14はそれぞれ左右の走行用モータの操作に対応している。したがって、運転者は、左右の走行操作レバー14,14を前後に適宜操作することで、前後進、左右折、旋回などを行うことができる。
【0033】
メインフレーム18の中央部付近の左右側面にはそれぞれ、ロック解除ペダル(ロック操作ペダル)33とデッキ昇降ペダル(昇降操作ペダル)34を回動自在に備える。デッキ昇降ペダル34は、モアデッキ15を下降させたり(芝刈位置)、上昇させたり(非芝刈位置)するためのものである。ロック解除ペダル33は、デッキ昇降ペダル34の回動をロックしたり解除したりするためのものである。
【0034】
メインフレーム18には、2つのデッキアームの上端を回動自在に懸架する。一方、デッキアームの下端には、サブフレームを取り付ける。サブフレームは、メインフレーム18の真下で、かつ、メインフレーム18に沿って設けられる。サブフレームには、バネ支持ブラケットを直立して設ける。このバネ支持ブラケットの上部には、コイルバネ(圧縮バネ)の上端を取り付ける。コイルバネの下端は、モアデッキ15に支持棒を介して取り付ける。支持棒は、モアデッキ15上に載置されたモアモータの側部に、モアデッキ15の上面に沿って略平行に固設されるものである。
【0035】
コイルバネは、ゲージホイール23が走行面の小さな凹凸に出くわしたときにも、跳ねることなく常に接地するようにモアデッキ15(およびゲージホイール23)を路面に対して押し当てるように機能する。したがって、モアデッキ15のゲージホイール23が平坦面に接地した状態でコイルバネは圧縮された状態にある。なお、コイルバネのバネ定数は同じであることが望ましい。
【0036】
電動ローンモア10の後部は、詳しくは図2〜4に示すようになっている。すなわち、メインフレーム18の後部に連続して後部メインフレーム(シャーシ)18Aが固設される。後部メインフレーム18Aは金属製の角筒で、平面視にて略四角状に形成されている。後部メインフレーム18Aの前部の左右両側にはそれぞれモータブラケット70,70が固設され、モータブラケット70,70には、それぞれモータフレーム72L,72Rの前側部分が回動自在に取り付けられている。そして、モータフレーム72L,72Rの後側部分にはそれぞれバネブラケット75が取り付けられ、バネブラケット75にはバネ装置(サスペンション)76の下端部が回動自在に取り付けられる。また、後部メインフレーム18Aの後側部分にはバネブラケット77が固設されている。バネ装置76の上端部はバネブラケット77に回動自在に取り付けられている。
【0037】
モータフレーム72L,72Rにはそれぞれ走行用モータ31が懸架された状態でボルトなどで固設されている。左右の走行用モータ31の側面にはそれぞれ走行用モータ31の出力軸である車軸が外側に向けて突設されている。車軸の先端にはホイール支持部90が固設されており、ホイール支持部90は後輪(駆動輪)12のホイールにボルト締めされている。
【0038】
図5(a)〜(e)にモータフレーム72L,72Rの詳細を示す。モータフレーム72Lは、L字型に屈曲して形成された金属製の四角筒である第1フレーム72L1と、これと同一規格の金属製の四角筒である第2フレーム72L2と、金属製の円筒である第3フレーム72L3と、これと同一規格の短筒である第4フレーム72L4とで構成される。なお、第1フレーム72L1の一端と第2フレーム72L2の一端とは溶接などによって固定されている。また、第1フレーム72L1の他端は、第3フレーム72L3に溶接などによって固定されている。第1フレーム72L1の他端は、第3フレーム72L3の外周に沿うように、円弧状に切りかかれている。第2フレーム72L2の他端は、第4フレーム72L4に溶接などによって固定されている。第2フレーム72L2の他端は、第4フレーム72L4の外周に沿うように、円弧状に切りかかれている。第1フレーム72L1の後部には、ブラケット75を溶接などで固設する。第3フレーム72L3と第4フレーム72L4の内側には回動軸71を挿入して、回動軸71によってモータフレーム72Lを回動自在に支持する。そして、回動軸71の端部には抜け止め71Aを施す。
【0039】
モータフレーム72Rの構成はモータフレーム72Lの構成と同様である。すなわち、モータフレーム72Rは、第1フレーム72R1、第2フレーム72R2、第3フレーム72R3、第4フレーム72R4で構成される。第1フレーム72R1の後部には、ブラケット75を溶接などで固設する。第3フレーム72R3と第4フレーム72R4の内側には回動軸71を挿入して、回動軸71によってモータフレーム72Rを回動自在に支持する。そして、回動軸71の端部には抜け止め71Aを施す。なお、モータフレーム72Rとモータフレーム72Lとは回動軸71に対して独立に上下方向に回動することができる。
【0040】
図6(a)〜(c)にはモータブラケット70の詳細を示す。モータブラケット70は、一対の側部70A,70Aと、天部70Bとで構成される。側部70Aは上辺の長い台形状に構成され、その下部中央には、貫通孔70Cを設ける。一対の側部70Aは所定の間隔を隔てて平行に配置されている。天部70Bは矩形に形成される。モータブラケット70は金属板を適宜折り曲げて天部70Bと側部70Aを一体に形成する(側部70Aと天部70Bとを別々の部材で形成してもよい)。モータブラケット70は、その天部70Bを後部メインフレーム18Aの下面に溶接などで固設される。なお、貫通孔70Cに回動軸71を貫通させ、モータブラケット70と回動軸71とを溶接などで固定する。このとき、モータブラケット70の左右側には、それぞれ、第4フレーム72L4と、第3フレーム72L3が配置されている。このようにして、モータフレーム72Lがモータブラケット70を介して後部メインフレーム18Aに回動自在に取り付けられる。モータフレーム72Rも同様にして、モータブラケット70を介して後部メインフレーム18Aに回動自在に取り付けられる。
【0041】
図7(a),(b)にはバネブラケット75の詳細を示す。バネブラケット75は、一対の側部75A,75Aと、天部75Bとで構成される。側部75Aは上辺の短い台形状に構成され、貫通孔75Cを設ける。一対の側部75Aは所定の間隔を隔てて平行に配置されている。天部75Bは矩形に形成される。バネブラケット75は、金属板を適宜折り曲げて天部75Bと側部75Aとを形成する(側部75Aと天部75Bとを別々の部材で形成してもよい)。バネブラケット75は、その天部75Bをモータフレーム72L,72Rの第1フレーム72L1,72R1の下面にそれぞれ溶接などで固設される。なお、貫通孔75Cには、後述するピンを取り付ける。なお、図7(b)では、モータフレーム72Lを図示しているが、モータフレーム72Rについても同様である。
【0042】
図8(a),(b)にはバネブラケット77の詳細を示す。バネブラケット77は、一対の側部77A,77Aと、背面部77Bとで構成される。側部77Aは略矩形に構成され、貫通孔77Cを設ける。一対の側部77Aは所定の間隔を隔てて平行に配置されている。背面部77Bは矩形に形成される。バネブラケット77は、金属板を適宜折り曲げて背面部77Bと側部77Aとを形成する(側部77Aと背面部77Bとを別々の部材で形成してもよい)。バネブラケット77は、その背面部77Bを後部メインフレーム18Aの後部の左右両側にそれぞれ溶接などで固設される。なお、貫通孔77Cには、後述するピンを取り付ける。
【0043】
図9(a)〜(c)にはバネ装置(サスペンション)76の詳細を示す。バネ装置76は、上部バネ保持部材76A、下部バネ保持部材76Bと両者の間に備えるコイルバネ76Cとで構成される。上部バネ保持部材76Aは、その下部にバネ保持棒76A1を備え、バネ保持棒76A1の上端部は、バネ受部76A2に固設する。バネ受部76A2は短円柱状に形成される。バネ受部76A2の上面には、台座部76A3の下面を固設する。台座部76A3は、短円柱状に形成され、その上面には、ピン取付部76A4を固設する。ピン取付部76A4は、上部に貫通孔76AHを備える。
【0044】
下部バネ保持部材76Bは、その上部にバネ保持筒76B1を備える。バネ保持筒76B1は、上述のバネ保持棒76A1をスライド自在に収納可能である。バネ保持筒76B1の下端部は、バネ受部76B2に固設する。バネ受部76B2は円柱状に形成される。バネ受部76B2の下面には、台座部76B3の上面を固設する。台座部76B3は、円板状に形成され、台座部76B3の下面にはピン取付部76B4を固設する。ピン取付部76B4は、下部に貫通孔76BHを備える。
【0045】
そして、バネ装置76のピン取付部76A4をバネブラケット77の側面77A,77Aの間に挿入し、ピンP10を貫通孔77Cと貫通孔76AHに挿入して、バネ装置76をバネブラケット77に回動自在に取り付ける。一方、バネ装置76のピン取付部76B4をバネブラケット75の側面75A,75Aの間に挿入し、ピンP11を貫通孔75Cと貫通孔76BHに挿入して、バネ装置76をバネブラケット75に回動自在に取り付ける。
【0046】
次に、電動ローンモア10の後輪12が隆起を越えるときの動作について説明する。図10(a),(b)において、左側の後輪12が隆起を乗り越える際には、バネ装置76の付勢力に抗して左側の後輪12が上方に押し上げられようとする。これによって、モータフレーム72Lが回動軸71を中心として、上向きに回動し、コイルバネ76Cが縮みながら、隆起した走行面Gに追随する。このとき、右側の後輪12は平坦な走行面Gを走行しているので、コイルバネ76Cは伸縮しない。図10(c),(d)において、左側の後輪12が窪みを越える際には、左側の後輪12にかかる車重は、通常よりも少なくなり、左側の後輪12は浮き気味になる。このとき、バネ装置76のコイルバネ76Cが伸びることで(付勢力によって)、モータフレーム72Lが回動軸71を中心として、下向きに回動する。これによって、左側の後輪12は下方に押し下げられて窪んだ走行面Gに接地し、左側の後輪12が走行面Gより浮き上がることを防止できる。なお、右側の後輪12は平坦な走行面Gを走行しているので、コイルバネ76Cは伸縮しない。また、右側の後輪12が起伏を通過するときの動作も同様であるので説明を省略する。
【0047】
このように、左右の後輪12が独立して上下動するので、電動ローンモア10の車体が左右に大きく傾くことを防止することができる。
【0048】
図11にはこの発明の別の例を示す。この例のローンモア(電動乗用作業車両)110は、左右一対のメインフレーム(シャーシ)111と、該メインフレーム111の下方に、一対の前輪112と、一対の後輪(駆動輪)113とを備える4輪のローンモアである。また、前輪112と後輪113との間には、1つのモアデッキ114を備える。モアデッキ114は略楕円状の縁のある皿型で、皿の底面を上にして備える。モアデッキ114の内側には、不図示のモアブレード(草刈刃)を、その長径方向に2つ並べて備える。このモアブレードの回転中心には、それぞれモアモータ(草刈用モータ)115,115を取り付ける。なお、モアデッキ114は、その短径方向を(電動ローンモア110の直進方向より)やや右側に傾けて設けられる。すなわち、右側のモアブレードの回転中心は、左側のそれと比べて、直進方向やや後方となる。
【0049】
メインフレーム111の上には、カウリング120を被せる。後輪113のやや前方でカウリング120上には、運転席121を設ける。運転席121の左右側方には、電動ローンモア110の走行操作をするための走行操作レバー122,122をそれぞれ備える。右の走行操作レバー122のさらに外側には、モアデッキ114の地面からの高さを調節するためのモアデッキ調節レバー124を備える。運転席121の左右それぞれの下方には冷却口126A,126Aを、運転席121の前側の下方には、冷却口126Bを設ける。冷却口126A,126Bは、バッテリー125を冷却する空気を取り入れるためのものであり、カウリング120に形成された開口である。また、運転席121の後方には排気口127を2つ設ける。排気口127,127は、冷却口126A,126Bから取り入れられた空気が車体内を通過して排出されるためのものであり、カウリング120に形成された開口である。一方、運転席121の前方には、足置きのためのステップSTを備える。このステップSTはカウリング120として一体に形成される。
【0050】
なお、電動ローンモア110は、草刈りに加えて、走行も電動モータによってまかなうものであり、一対の後輪113,113の内側にそれぞれ走行用モータ116を備え、この走行用モータ116によって後輪113,113を駆動させる(なお、後輪113,113のホイール内にそれぞれホイールモータを備えてもよい)。
【0051】
前述の2つのモアモータ115および2つの走行用モータ116は、好ましくは、ネオジウムなど希土類の磁石を用いると高性能となる(前述の例のモアモータ、走行用モータも同様である)。これらモアモータ115、走行用モータ116の電力は、同一のバッテリーから供給される。バッテリー125は、カウリング120内で、運転席121の下方で、かつ、メインフレーム111後部に5つ平置きされる(バッテリー125は5つに限定されるものではない)。詳しくは、バッテリー125を、後輪113,113のアクスル間で、かつ、メインフレーム111の上に(電動ローンモア110の直進方向に対して)3つ並べて備え、それら3つのバッテリー125の前後に、これらと直角に1つずつ備える。また、別の1つのバッテリー125をメインフレーム111の後部下方に備える。
【0052】
バッテリー125は3個を直列に接続して1セットとし、この例では、これを2セット備えている。したがって、バッテリー125の数は3個であってもよい。その場合には、メインフレーム111の上に(電動ローンモア110の直進方向に対して)3つ並べるものとする。もちろん、この発明の電動乗用作業車両では、バッテリー125はこのような数の規制を受けるものではなく、あらゆる個数を配置することが可能である。
【0053】
左後輪113のフェンダーには、バッテリー125を充電する際にプラグを差し込むための給電口128を備える。給電口128は、カウリング120に蓋付の開口である。給電口128にはプラグを備え、ローンモア110の非作業時に、家庭用電源に接続した電気コードを差し込んで、バッテリー125を充電する。バッテリー125とプラグとの間にはACアダプタ、インバータ、充電装置などを適宜備える。
【0054】
バッテリー125の上には、不図示の制御部を備える。この制御部は、電動ローンモア110の走行用モータ116を制御する。制御部は、走行操作レバー122の傾動量(後述)に応じて走行用モータ116の回転方向および回転速度を制御する。制御部は、走行用モータ116の制御に加えて、草刈用モータ115の回転制御、さらにバッテリー125の微小な電圧の変動を補正する役割も担っている。なお、草刈用モータ115の回転は、走行用モータ116の回転数と連動するように制御される。すなわち、走行スピードを速めると、モアブレードの回転数も速まり、走行スピードを落とすと、モアブレードの回転数も遅くなる。
【0055】
前輪112,112はそれぞれ、シャフトを介して前タイヤブラケット117に回転自在に取り付けられている。前輪112,112には駆動モータは接続されておらず、それぞれが自由に回転するものとする。また、前タイヤブラケット117は、メインフレーム111に対して回動自在に取り付けられている。2つの前タイヤブラケット117,117は、それぞれが自由に回動するものとする。
【0056】
走行操作レバー122は傾動可能に設けられ、運転者がこれを前に倒すと走行用モータ116が前進方向に回転する。一方、走行操作レバー122が後に倒されると走行用モータ116は後進方向に回転する。さらに、操作レバー122の傾動度合いによって走行用モータ116の回転速度が変化する。すなわち、操作レバー122を大きく前(後)に倒すと、走行用モータ116が前進(後進)方向により早く回転し、操作レバー122を小さく前(後)に倒すと、走行用モータ116が前進(後進)方向にゆっくりと回転する。運転席121の左右両側に備えられた操作レバー122,122は、右側の操作レバー122を操作すると、右側の後輪113のモータが回転し、左側の操作レバー122を操作すると左側の後輪113のモータが回転するようになっている。運転者は、左右の走行操作レバー122,122を前後に適宜操作することで、電動ローンモア110の直後進、左右折、旋回などを行うことができる。
【0057】
そして、右側の走行操作レバー122の端部には、モアデッキ114内の2つのモアブレードの回転をON、OFFする草刈スイッチ(モア作業スイッチ)123を設ける。草刈スイッチ123は、リミット型のスイッチを用い、運転者が指で押下するとONとなり、再度押下するとOFFとなる。
【0058】
左側のメインフレーム111の略中央部には、モアデッキ114を昇降させるためのデッキ支持アーム118の一端を回動自在に取り付ける。デッキ支持アーム118の他端は、ステー119aを介してモアデッキ114に取り付けられている。なお、ステー119aはモアデッキ114の表面に溶接などで固設されている。また、デッキ支持アーム118は、ステー119aに対して回動自在に取り付けられている。なお、デッキ支持アーム118の回動中心は、メインフレーム111との連結部である。このデッキ支持アーム118は、不図示のリンク機構を介して、モア調節レバー124に連結されている。一方、モアデッキ114の前側には、別のステー119bが固設されている。このステー119bには、シャフトSの一端が回動自在に取り付けられている。シャフトSの他端は、不図示のステーを介してメインフレーム111に回動自在に取り付けられている。なお、符号STはステップであり、運転者の足を載せるためのものである。
【0059】
ところで、電動ローンモア110の後部は図12〜14に示すようになっている。すなわち、一対のメインフレーム111,111の後端には、エンドフレーム111Bが掛け渡されている。エンドフレーム111Bよりやや前方には、バネ支持フレーム111Aが一対のメインフレーム111,111に掛け渡されている。バネ支持フレーム111Aは金属製の角筒である(なお、バネ支持フレーム111AはH型鋼もしくはL型鋼で形成されていてもよい)。一対のメインフレーム111,111の下面にはそれぞれモータブラケット70,70が固設され、モータブラケット70,70には、それぞれモータフレーム72L,72Rの前部が回動自在に取り付けられている。そして、モータフレーム72L,72Rの後部にはそれぞれバネブラケット75が取り付けられ、バネブラケット75にはバネ装置76の下端部が回動自在に取り付けられる。また、バネ支持フレーム111Aの下面には左右一対のバネブラケット177,177が固設されている。バネ装置76,76の上端部はそれぞれバネブラケット177,177に回動自在に取り付けられている。
【0060】
モータフレーム72L,72Rにはそれぞれ走行用モータ116が懸架された状態でボルトなどで固設されている。左右の走行用モータ116の側面にはそれぞれ走行用モータ116の出力軸である車軸が外側に向けて突設されている。車軸の先端にはホイール支持部190が固設されており、ホイール支持部190は後輪113のホイールにボルト締めされている。
【0061】
なお、モータフレーム72L,72Rの詳細については、図5(a)〜(e)に示したのと同様である。すなわち、モータフレーム72Lは、第1フレーム72L1、第2フレーム72L2、第3フレーム72L3、第4フレーム72L4で構成される。第1フレーム72L1の後部には、ブラケット75を溶接などで固設する。第3フレーム72L3と第4フレーム72L4の内側には回動軸71を挿入して、回動軸71によってモータフレーム72Lを回動自在に支持する。そして、回動軸71の端部には抜け止め71Aを施す。
【0062】
モータフレーム72Rの構成はモータフレーム72Lの構成と同様である。すなわち、第1フレーム72R1、第2フレーム72R2、第3フレーム72R3、第4フレーム72R4で構成される。第1フレーム72R1の後端部には、ブラケット75を溶接などで固設する。第3フレーム72R3と第4フレーム72R4の内側には回動軸71を挿入して、回動軸71によってモータフレーム72Rを回動自在に支持する。そして、回動軸71の端部には抜け止め71Aを施す。なお、モータフレーム72Rとモータフレーム72Lとは回動軸71に対して独立に回動することができる。
【0063】
モータブラケット70の詳細については、図6(a)〜(c)に示したのと同様である。すなわち、モータブラケット70は、一対の側部70A,70Aと、天部70Bとで構成される。側部70Aの下部中央には、貫通孔70Cを設ける。モータブラケット70は、その天部70Bを後部メインフレーム111の下面に溶接などで固設される。なお、貫通孔70Cに回動軸71を貫通させ、モータブラケット70と回動軸71とを溶接などで固定する。このとき、モータブラケット70の左右側には、それぞれ、第4フレーム72L4と、第3フレーム72L3が配置されている。このようにして、モータフレーム72Lがモータブラケット70を介して後部メインフレーム18Aに回動自在に取り付けられる。モータフレーム72Rも同様にして、モータブラケット70を介して後部メインフレーム18Aに回動自在に取り付けられる。
【0064】
バネブラケット75の詳細については、図7(a),(b)に示したのと同様である。すなわち、バネブラケット75は、一対の側部75A,75Aと、天部75Bとで構成される。側部75Aには貫通孔75Cを設ける。バネブラケット75は、その天部75Bをモータフレーム72L,72Rの第1フレーム72L1,72R1の下面にそれぞれ溶接などで固設される。なお、貫通孔75Cには、後述するピンを取り付ける。なお、図17(b)では、モータフレーム72Lを図示しているが、モータフレーム72Rについても同様である。
【0065】
図15(a),(b)にはバネブラケット177の詳細を示す。バネブラケット177は、一対の側部177A,177Aと、天部177Bとで構成される。これらは1枚の金属板を2度折り曲げて形成される。側部177Aは略六角形に構成され、略中央に貫通孔177Cを設ける。一対の側部177Aは所定の間隔を隔てて平行に配置されている。天部177Bは矩形に形成される。バネブラケット177は、その天部177Bをバネ支持フレーム111Aの左右両側にそれぞれ溶接などで固設される。なお、貫通孔177Cには、後述するようにピンPNによってバネ装置76の上端を取り付ける。
【0066】
次に、電動ローンモア110の後輪113が隆起を越えるときの動作について説明する。図16(a),(b)において、左側の後輪113が隆起を乗り越える際には、バネ装置76の付勢力に抗して左側の後輪113が上方に押し上げられようとする。これによって、モータフレーム72Lが回動軸71を中心として、上向きに回動し、コイルバネ76Cが縮みながら、隆起した走行面Gに追随する。このとき、右側の後輪113は平坦な走行面Gを走行しているので、コイルバネ76Cは伸縮しない。図16(c),(d)において、左側の後輪113が窪みを越える際には、左側の後輪113にかかる車重は、通常よりも少なくなり、左側の後輪113は浮き気味になる。このとき、バネ装置76のコイルバネ76Cが伸びることで(付勢力によって)、モータフレーム72Lが回動軸71を中心として、下向きに回動する。これによって、左側の後輪113は下方に押し下げられて窪んだ走行面Gに接地し、左側の後輪113が走行面Gより浮き上がることを防止できる。なお、右側の後輪113は平坦な走行面Gを走行しているので、コイルバネ76Cは伸縮しない。また、右側の後輪113が起伏を通過するときの動作も同様であるので説明を省略する。
【0067】
このように、左右の後輪113が独立して上下動するので、電動ローンモア110の車体が左右に大きく傾くことを防止することができる。
【0068】
図17(a)〜(c)には、この発明のさらに別の例を示す。この例は、図1に示した電動ローンモア10の変形例である。メインフレーム18の後部に連続して後部メインフレーム(シャーシ)218Aが固設される。後部メインフレーム218Aは金属製の角筒で、平面視にて略四角状に形成されている。後部メインフレーム218Aの前部には、モータ支持フレーム201を車幅方向に設け、その両端は後部メインフレーム218Aに固設する。モータ支持フレーム201は、金属製の角筒(または、H型鋼)などで形成され、その下面で、かつ、車幅方向の左右側には、モータブラケット270,270が固設され、モータブラケット270,270には、それぞれ走行用モータ231,231の前側部分が回動自在に取り付けられている。そして、走行用モータ231,231の後側部分にはバネ装置(サスペンション)176の下端部が回動自在に取り付けられる。また、後部メインフレーム218Aの後側部分にはバネブラケット77が固設されている。バネ装置176の上端部はバネブラケット77に回動自在に取り付けられている。
【0069】
モータブラケット270は、一枚の金属板を略直角に2度折り曲げることによって、一対の側部270A,270Aと、天部とを形成してなる。側部270Aは逆台形状で、天部は矩形状である。側部270Aの下部中央には、貫通孔270Hを設ける。モータブラケット270は、その天部をモータ支持フレーム201の下面に溶接などで固設される。
【0070】
図18(a)〜(d)には、走行用モータ231の詳細を示す。走行用モータ231は、モータケース主要部231Aとモータケース蓋部231Bとで構成される。両者は鋳造などによって形成される。モータケース主要部231Aの前面側には、前部ブラケット231A2を一体に形成する。前部ブラケット231A2は板状に形成され、その略中央には貫通孔231H2を形成する。一方、モータケース主要部231Aの後面側には、一対の後部ブラケット231A1,231A1を一体に形成する。後部ブラケット231A1は板状に形成され、その略中央には貫通孔231H1を形成する。モータケース主要部231A内にはモータが内蔵され、モータの出力軸(車軸)231Xがモータケース主要部231Aに形成された貫通孔から突出する。出力軸231Xの先端には、ホイール支持部290が固設される。ホイール支持部290は後輪(駆動輪)12のホイールにボルト締めされている。なお、モータケース主要部231Aとモータケース蓋部231Bとは、ボルトなどで固定して閉じられる。
【0071】
バネブラケット77は、図8(a),(b)に示すのと同様に、一対の側部77A,77Aと、背面部77Bとで構成される。バネブラケット77は、その背面部77Bを後部メインフレーム218Aの後部の左右両側にそれぞれ溶接などで固設される。なお、貫通孔77Cには、後述するピンを取り付ける。
【0072】
バネ装置176は図9(a)〜(c)に示すのと同様に、上部バネ保持部材(図9では符号76A)、下部バネ保持部材(図9では符号76B)と両者の間に備えるコイルバネ(図9では符号76C)とで構成される。
【0073】
次に、走行用モータ231を後部メインフレーム218Aに懸架する。詳しくは、図19(a)に示すように、バネ装置176のピン取付部176A4をバネブラケット77の側面77A,77Aの間に挿入し、ピンP10を貫通孔77Cと貫通孔76AHに挿入して、バネ装置176をバネブラケット77に回動自在に取り付ける。一方、バネ装置176のピン取付部176B4を走行用モータ231の後部ブラケット231A1の側面75A,75Aの間に挿入し、ピンP12を貫通孔231H1と貫通孔76BHに挿入して、バネ装置176を後部ブラケット231A1に回動自在に取り付ける。
【0074】
また、図19(b)に示すように、走行用モータ231の前部ブラケット231A2をモータブラケット270の一対の側部の間に挿入し、前部ブラケット231A2の貫通孔231H2とモータブラケット270の側部270Aの貫通孔270Hとを合わせて、回動ピン271Aを貫通させて走行用モータ231をモータブラケット270に上下方向に回動自在に取り付ける。
【0075】
次に、電動ローンモア10の後輪12が隆起を越えるときの動作について説明する。図20(a),(b)において、左側の後輪12が隆起を乗り越える際には、バネ装置176の付勢力に抗して左側の後輪12が上方に押し上げられようとする。これによって、左側の走行用モータ231が回動ピン271Aを中心として、上向きに回動し、コイルバネが縮みながら、隆起した走行面Gに追随する。このとき、右側の後輪12は平坦な走行面Gを走行しているので、コイルバネは伸縮しない。図20(c),(d)において、左側の後輪12が窪みを越える際には、左側の後輪12にかかる車重は、通常よりも少なくなり、左側の後輪12は浮き気味になる。このとき、バネ装置176のコイルバネが伸びることで(付勢力によって)、左側の走行用モータ231が回動ピン271Aを中心として下向きに回動する。これによって、左側の走行用モータ231が下方に押し下げられて窪んだ走行面Gに接地し、左側の後輪12が走行面Gより浮き上がることを防止できる。なお、右側の後輪12は平坦な走行面Gを走行しているので、コイルバネは伸縮しない。また、右側の後輪12が起伏を通過するときの動作も同様であるので説明を省略する。
【0076】
このように、左右の後輪12が独立して上下動するので、電動ローンモア10の車体が左右に大きく傾くことを防止することができる。
【0077】
なお、図21(a)に示すように、バネ装置176を配置すると好適である。すなわち、回動ピン271Aの回動中心(走行用モータ231´のピボット点)Hと走行用モータ231´の重心Wとを結ぶ線L1と、ホイール支持部290の回動中心AXを通る鉛直線L2との交わる点を交点Kとする。バネ装置176の伸縮方向の中心線L3が交点Kを通るようにバネブラケット77´と後部ブラケット231A1とを設け、両者の間にバネ装置176を取り付ける。加えて、走行用モータ231´とモータブラケット270´との間にコネクティングロッド(規制部材)CRを取り付けてもよい。このコネクティングロッドCRは、その中心線L4が交点Kを通るように設けることが望ましい。
【0078】
コネクティングロッドCRの取り付けについて、図21(b)に詳しく示す。コネクティングロッドCRは、板状(断面形状はIまたはH型が好適)のロッドCR2の両端に円環部CR1,CR1を備えてなる。そして、円環部CR1の内側には、ゴム製のブッシュGBを嵌めつける。コネクティングロッドCRの一端は、走行用モータ231´に形成されたロッドブラケット231A3に支持ピンPN2を介して回動自在に取り付ける。一方、コネクティングロッドCRの他端は、モータブラケット270´に支持ピンPN1を介して回動自在に取り付ける(支持ピンPN1,PN2の両端には抜け止めが施してあり、コネクティングロッドCRを保持するようになっている)。なお、支持ピンPN1,PN2の軸部分の直径と円環部CR1の内径との間には適当な量の遊びがあり、この遊びを埋めるようにブッシュGBが存在する(ブッシュGBは弾性部材として機能する)。したがって、コネクティングロッドCRは、支持ピンPN1,PN2の回りに回動自在であるのみならず、ブッシュGBの配置された遊び分だけ移動自在である。
【0079】
なお、ロッドCR2の両端には、円環部CR1に代えて、支持ピンPN1,PN2がそれぞれ遊嵌する長孔を有する長孔部を備えるようにしてもよい。また、コネクティングロッドCRに代えて、たとえば、ロッドブラケット231A3とモータブラケット270´との間にコイルバネを掛けとめて規制部材としてもよい。この場合、コイルバネのバネ定数は、バネ装置176のコイルバネのバネ定数と異なるようにすると好適である。
【0080】
図22(a)〜(c)には、この発明のさらに別の例を示す。この例は、図17に示した電動ローンモア10のさらに変形例である(図22中で図17と同一の符号は同一の構成部材を示す)。メインフレーム18の後部に連続して後部メインフレーム(シャーシ)218Aが固設される。後部メインフレーム218Aの前部には、モータ支持フレーム201を車幅方向に設け、その両端は後部メインフレーム218Aに固設する。モータ支持フレーム201の下面で、かつ、車幅方向の左右側には、モータブラケット270,270が固設され、モータブラケット270,270には、それぞれ走行用モータ331,331の前側部分が回動自在に取り付けられている(なお、走行用モータ331の基本構成は、走行用モータ231と同様であり、後部ブラケット231Aに代えて、ブラケット331Bを備える)。そして、走行用モータ331,331の上面に形成されたブラケット331Bには、バネ装置276の下端部がピン332にて回動自在に取り付けられる(なお、バネ装置276の基本的な構成は、バネ装置76と同様である)。
【0081】
また、左右一対の後輪(駆動輪)12,12の内側(近傍)に四角形状の後部メインフレーム(シャーシ)218Aの両側部が配置され、この後部メインフレーム218Aの両側に渡し掛けるように、横フレーム301A,301Bを取り付ける。横フレーム301A,301Bは金属板で形成され、断面視で門型状に折り曲げて形成される。横フレーム301A,301Bの両端はさらに外向きに折り曲げられ、貫通孔が形成される。この貫通孔にボルトを通して、後部メインフレーム218Aに固定する。
【0082】
横フレーム301Bには、その門型の空間を覆うように閉塞板303を溶接などで固定する。閉塞板303には、一対のブラケット302,302を左右両側に固設する。ブラケット302は金属板で形成され、その中央部にはピン333を通すための貫通孔を設ける。このブラケット302には、バネ装置276の上端を回動自在に取り付ける。
【0083】
なお、横フレーム301A,301B上はカウリングで覆い、その上には、運転席13を不図示の取付手段を介して取り付ける。このように構成することで、閉塞板303は、ブラケット302を取り付けるための役割と、横フレーム301Bに固設されることで、後部メインフレーム218Aの強度を高めるための役割を担っている。横フレーム301A,301Bも同様に、後部メインフレーム218Aの強度を高めるための役割を担っている。この横フレーム301A,301Bの形状はこの例に限定されるものではなく、例えば、横フレーム301A,301Bが一続きになったような形状であってもよい。また、横フレーム301A,301Bは、後部メインフレーム218A上面に固定することに限定されるものでもなく、車体に適宜固定することができるものとする。さらに、横フレーム301A,301Bは、この例のような、車体前部に1本のメインフレーム18、車体後部に略四角形状の後部メインフレーム218Aを備える電動乗用作業車両に適用することに限定されるものではなく、例えば、図11,12に示すようなタイプの電動乗用作業車両に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
この発明の電動乗用作業車両は、芝刈りに限定されるものではなく、あらゆる作業に適用しうる。また、駆動源は、モータに限定されるものではなく、エンジンであってもよい。
【符号の説明】
【0085】
10,110 電動ローンモア(電動乗用作業車両)
11,112 前輪
12,113 後輪(駆動輪)
18,111 メインフレーム(シャーシ)
18A,218A 後部メインフレーム(シャーシ)
70,270,270´ モータブラケット
71 回動軸
72L,72R モータフレーム
75,77,77´,177 バネブラケット
76,176,276 バネ装置(サスペンション)
111A バネ支持フレーム
116,231,231´,331 走行用モータ
231A2 前部ブラケット
231A1 後部ブラケット
301A,301B 横フレーム
CR コネクティングロッド(規制部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体であるシャーシと、
走行のための左右一対の駆動輪と、
該駆動輪のそれぞれに別々に連結され、該駆動輪を駆動する2つの走行用モータと、
該それぞれの走行用モータと前記シャーシとを弾性をもって連結する一対のサスペンションとを備え、
前記走行用モータは前記シャーシに対して上下方向に回動自在であることを特徴とする、電動乗用作業車両。
【請求項2】
回転して草を刈るモアブレードと、
該モアブレードを上方および側方から覆うモアデッキと、
前記モアブレードを回転させる草刈用モータとを備えることを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用作業車両。
【請求項3】
前記走行用モータを取り付けるためのモータフレームと、
該モータフレームを上下方向に回動自在に、かつ、上方より支持する前記シャーシと、
前記モータフレームと前記シャーシとを弾性をもって連結する前記サスペンションとを備えることを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用作業車両。
【請求項4】
前記シャーシに前記走行用モータを上下方向に回動自在に取り付け、
前記サスペンションの一端を前記走行用モータに取り付けるとともに、前記サスペンションの他端を前記シャーシに取り付けることを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用作業車両。
【請求項5】
前記走行用モータの上下方向の回動角度を規制する規制部材を、前記走行用モータと前記シャーシとの間に備えることを特徴とする、請求項4に記載の電動乗用作業車両。
【請求項6】
側面視にて、
前記走行用モータの上下方向の回動中心と前記走行用モータの重心とを結ぶ線と、
前記サスペンションの伸縮方向を示す線と、
前記規制部材の長手方向の線とが一点で交わることを特徴とする、請求項5に記載の電動乗用作業車両。
【請求項7】
前記左右一対の駆動輪のそれぞれの近傍に前記シャーシが配置され、
該左右のシャーシに渡し掛けるように横フレームを備え、
該横フレームに前記一対のサスペンションの上端をそれぞれ取り付けたことを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用作業車両。
【請求項1】
走行車体であるシャーシと、
走行のための左右一対の駆動輪と、
該駆動輪のそれぞれに別々に連結され、該駆動輪を駆動する2つの走行用モータと、
該それぞれの走行用モータと前記シャーシとを弾性をもって連結する一対のサスペンションとを備え、
前記走行用モータは前記シャーシに対して上下方向に回動自在であることを特徴とする、電動乗用作業車両。
【請求項2】
回転して草を刈るモアブレードと、
該モアブレードを上方および側方から覆うモアデッキと、
前記モアブレードを回転させる草刈用モータとを備えることを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用作業車両。
【請求項3】
前記走行用モータを取り付けるためのモータフレームと、
該モータフレームを上下方向に回動自在に、かつ、上方より支持する前記シャーシと、
前記モータフレームと前記シャーシとを弾性をもって連結する前記サスペンションとを備えることを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用作業車両。
【請求項4】
前記シャーシに前記走行用モータを上下方向に回動自在に取り付け、
前記サスペンションの一端を前記走行用モータに取り付けるとともに、前記サスペンションの他端を前記シャーシに取り付けることを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用作業車両。
【請求項5】
前記走行用モータの上下方向の回動角度を規制する規制部材を、前記走行用モータと前記シャーシとの間に備えることを特徴とする、請求項4に記載の電動乗用作業車両。
【請求項6】
側面視にて、
前記走行用モータの上下方向の回動中心と前記走行用モータの重心とを結ぶ線と、
前記サスペンションの伸縮方向を示す線と、
前記規制部材の長手方向の線とが一点で交わることを特徴とする、請求項5に記載の電動乗用作業車両。
【請求項7】
前記左右一対の駆動輪のそれぞれの近傍に前記シャーシが配置され、
該左右のシャーシに渡し掛けるように横フレームを備え、
該横フレームに前記一対のサスペンションの上端をそれぞれ取り付けたことを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用作業車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図15】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−120448(P2012−120448A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271389(P2010−271389)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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