説明

電圧制御装置、電圧制御方法、及び太陽光発電充電器

【課題】太陽光発電における利用効率を高く維持することが可能な電圧制御装置、電圧制御方法、及び太陽光発電充電器を提供する。
【解決手段】太陽電池充電器1によれば、PWM制御が停止されたときの出力電圧を所定のサンプリング間隔でサンプリングし、そのサンプリングされた出力電圧に基づいて出力電力を算出する。そして、出力電力を最大にする出力電圧の目標電圧を設定して、その目標電圧になるように調整する。これにより、開放電圧を測定しなくとも出力電力が最大になる目標電圧を算出することができるので、太陽電池の稼動を停止させなくてもよい。また、PWM制御の停止時の出力電圧の過渡特性に基づいて目標電圧を算出することで、PWM制御を行っているときよりも外乱(誤差)が少なく正確に算出することができる。その結果、太陽光発電における利用効率を高く維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧制御装置、電圧制御方法、及び太陽光発電充電器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保全の観点から、クリーンなエネルギー源として太陽光発電への注目が高まっている。そして、この太陽光発電は、携帯電話機等といったモバイル機器の充電器等への応用も進んでいる。この太陽光発電を利用した充電器は、多くのユーザへの普及を考慮すると、安価且つ小型である必要がある。また、他の充電器と同等の電力を供給するために、高い発電効率が必要とされている。
【0003】
そこで、太陽電池から電力を効率よく取り出すために、最大電力動作点追従(Maximum Power Point Tracking:MPPT)制御を行うことがある。最大電力動作点は、図9に示すように、電圧と電流との積が最大になる点であり、日照量や温度によって変化するので、常に最大電力動作点で太陽電池を稼動させるためには、日照量や温度の変化に応じて太陽光発電に最適な出力電圧(以下、最適電圧)に制御する必要がある。このようなMPPT制御の方法としては、いわゆる山登り法と呼ばれる方法がある。この方法は、太陽光発電における電圧及び電流を検出し、電圧を小刻みに変動させながら変動前後の電力を比較して、動作点を最大電力動作点まで追従させるものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、上述の従来の方法を実現する制御装置では、電力を変動前後で比較するため制御動作が遅くならざるを得ず、可搬性のある太陽電池では日照量が変化しやすいため、最大電力動作点追従の制御としては安定性が不十分となるおそれがある。また、例えば電流を検出するセンサ等が必要となることで構成が複雑になり、安価且つ小型の充電器への適用が困難である。この点を考慮すると、例えば非特許文献1に記載の方法では、最大電力動作点での出力電圧が開放電圧に比例することを利用して最適電圧を算出しているので、最大電力動作点追従の失敗の可能性が低いと共に、電流を検出するセンサ等が不要なので比較的簡易な構成とすることができる。
【特許文献1】特開2001−325031号公報。
【非特許文献1】Johan H.R, et al. “Integrated Photovoltaic Maximum Power PointTracking Converter”, IEEE Transactions on Industrial Electronics, Vol44, No.6.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記非特許文献1に記載の方法では、開放電圧値を測定する必要があり、この開放電圧値を測定するために太陽電池の出力電流の供給を停止することが必須となる。また、日照量の変動に追従するために、定期的に開放電圧を測定することも必要となる。このとき、太陽光発電は負荷に対して稼動していないことになる。そのため、太陽光発電における利用効率が低下してしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、太陽光発電における利用効率を高く維持することが可能な電圧制御装置、電圧制御方法、及び太陽光発電充電器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の電圧制御装置は、パルス幅変調制御によってスイッチングコンバータから出力される太陽電池の出力電圧を制御する電圧制御装置であって、パルス幅変調制御を停止させる制御停止手段と、制御停止手段によってパルス幅変調制御が停止させられたときに、出力電圧を所定の周期で測定する測定手段と、測定手段によって測定された出力電圧に基づいて、出力電力を算出する出力電力算出手段と、出力電力算出手段によって算出された出力電力において、出力電力が最大となる出力電圧を目標電圧として設定する目標電圧設定手段と、目標電圧設定手段によって設定された目標電圧に出力電圧が近づくように、パルス幅変調制御を調整する調整手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
或いは、本発明の電圧制御方法は、パルス幅変調制御によってスイッチングコンバータから出力される太陽電池の出力電圧を制御する電圧制御方法であって、パルス幅変調制御を停止させる制御停止ステップと、制御停止ステップにおいてパルス幅変調制御が停止させられたときに、出力電圧を所定の周期で測定する測定ステップと、測定ステップにおいて測定された出力電圧に基づいて、出力電力を算出する出力電力算出ステップと、出力電力算出ステップにおいて算出された出力電力において、出力電力が最大となる出力電圧を目標電圧として設定する目標電圧設定ステップと、目標電圧設定ステップにおいて設定された目標電圧に出力電圧が近づくように、パルス幅変調制御を調整する調整ステップと、を含むことを特徴とする。
【0009】
このような電圧制御装置及び電圧制御方法によれば、パルス幅変調制御が停止されたときの出力電圧を所定の周期で測定(サンプリング)し、その測定された出力電圧に基づいて出力電力を算出する。そして、出力電力を最大にする出力電圧の目標電圧を設定して、その目標電圧になるように調整する。これにより、開放電圧を測定しなくとも出力電力が最大になる目標電圧(最適電圧)を算出することができるので、太陽電池の稼動を停止させなくてもよい。また、パルス幅変調制御の停止時の出力電圧の過渡特性に基づいて目標電圧を算出することで、パルス幅変調制御を行っているときよりも外乱(誤差)が少なく正確に算出することができる。その結果、太陽光発電における利用効率を高く維持することができる。
【0010】
また、出力電力算出手段は、測定手段によって所定の周期で測定された出力電圧を時間微分して出力電流を算出し、出力電圧と出力電流との積により出力電力を算出することが好ましい。この場合、出力電流を所定の周期で測定された出力電圧を時間微分することで算出するので、電流を検出するセンサ等を必要としない。そのため、電圧制御装置を安価且つ小型な構成にすることができる。
【0011】
また、目標電圧設定手段は、周期毎の出力電力を比較することによって出力電力が最大となる出力電圧を検出し、出力電圧に基づいて目標電圧を設定することが好ましい。パルス幅変調信号の停止時における出力電圧は、出力電力が最大になる点(最大電力動作点)、つまり最適電圧までは単調増加し、最適電圧を超えると単調減少となる。そのため、出力電力が最大となる出力電圧を検出し、その出力電圧を目標電圧と設定することで、単調減少が始まった時点で検出を中止することができ、開放電圧に達する前に目標電圧(最適電圧)を検出することができる。その結果、太陽光発電における利用効率を高く維持することができる。
【0012】
また、調整手段は、現在の出力電圧と目標電圧とを比較し、その比較結果に応じてパルス幅変調信号のデューティ比を変化させることが好ましい。この場合、出力電圧を目標電圧に好適に調整することができる。
【0013】
また、調整手段は、デューティ比を変化させたときに、デューティ比と予め定められた値との比較結果に応じてパルス幅変調信号の周期を調整することが好ましい。パルス幅変調制御においては、パルス幅変調信号の周期が短いほうが精密な制御ができる一方、例えば日照量が少ない場合には、デューティ比の変動を抑制しようとすると電圧が大きく変動する等といった問題がある。そこで、デューティ比を変化させた場合に、パルス幅変調信号の周期を適宜調整することで、安定した制御を行うことができる。
【0014】
また、現在の出力電圧と目標電圧とを比較し、出力電圧と目標電圧との差が予め定められた所定値以上であるか否かを判定する判定手段を更に備え、信号停止手段は、判定手段によって出力電圧と目標電圧の差が所定値以上であると判定された場合に、パルス幅変調信制御を停止し、再度目標電圧を設定することが好ましい。この場合、太陽電池の日照量や温度等に起因する状態の変化を出力電圧と目標電圧との差が所定値以上である否かによって検出し、所定値以上である場合にパルス幅変調制御を停止し、再度目標電圧が設定される。これにより、太陽電池の状態が変化した場合にのみ目標電圧が再設定されるので、定期的に太陽電池の稼動を停止させて開放電圧を測定する場合と比べて、太陽光発電における利用効率を高く維持することができる。
【0015】
或いは、本発明の太陽光発電充電器は、太陽電池と、上述した電圧制御装置とを備える。このような太陽光発電充電器によれば、安価且つ小型であると共に、太陽光発電における利用効率を高く維持することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電圧制御装置、電圧制御方法、及び太陽光発電充電器によれば、太陽光発電における利用効率を高く維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の電圧制御装置、電圧制御方法、及び太陽光発電充電器の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明の好適な一実施形態に係る太陽光発電充電器を模式的に示す図である。同図に示す太陽光発電充電器1は、太陽光エネルギーを電力に変換することによって移動通信端末2のバッテリを充電することができるものであり、太陽電池アレイ(太陽電池)3と、制御装置4とによって構成されている。
【0019】
太陽電池アレイ3は、複数の太陽電池セルがアレイ状に配置されている。太陽電池アレイ3は、十分な直流電圧を確保するために、例えば複数の太陽電池セルが直列に接続されている。なお、太陽電池アレイ3は、太陽電池セルの直列回路が並列に複数接続されていてもよい。太陽電池アレイ3は、制御装置4に接続されている。
【0020】
図2は、制御装置4の回路構成を示す図である。同図に示すように、制御装置4は、DC−DCコンバータ(スイッチングコンバータ)5と、バッテリ6とを備えている。
【0021】
DC−DCコンバータ5は、太陽電池アレイ3からの電気エネルギーをバッテリ6に回収すると同時に移動通信端末2に供給する際、太陽電池アレイ3の出力電圧(発電電圧)を降圧するものである。DC―DCコンバータ5は、太陽電池アレイ3からの出力電圧を充電するコンデンサC1と、太陽電池アレイ3からの出力電圧を分圧する抵抗R1,R2と、出力電圧をパルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)制御によって制御する制御IC(Integrated Circuit)(出力電圧制御装置)7と、制御IC7の出力端子に接続されるスイッチング素子であるFET(FieldEffect Transistor)8と、ベース電流に応じて出力電流を制御するトランジスタ9と、インダクタLと、コンデンサC2とを有している。FET8は、制御IC7から出力されるPWM信号(詳細は、後述する)がハイレベル(オン期間)であるときにオンになる。トランジスタ9は、FET8がオン状態の場合に、ベース電流が供給されることによりエミッタ−コレクタ間がオンになる。このとき、移動通信端末2のバッテリ及びバッテリ6が充電されることになる。インダクタL及びコンデンサC1は、LCフィルタ回路を構成しており、これは平滑回路として機能する。
【0022】
制御IC7は、PWM回路10を有して構成されている。PWM回路10は、制御ICの出力端子に接続されており、FET8のオン/オフを制御するPWM信号を生成する。図3は、PWM回路10から出力されるPWM信号の一例を示す図である。図3に示すように、PWM信号は、一定の周期Tでオン/オフを繰り返し、PWM信号の1周期におけるオン期間の割合は、デューティ比Dで示される。PWM信号がハイレベルである期間(オン期間)においては、FET8がオンされ、PWM信号がローレベルである期間(オフ期間)においては、FET8がオフされることになる。PWM回路10は、オン/オフ期間、デューティ比D、及び周期Tを自動調整可能に構成されている。
【0023】
また、制御IC7は、演算を行うCPU(Central Processing Unite)と、CPUに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM(Read OnlyMemory)とを有している。このような構成により、制御IC7は、図4に示すように、制御停止部701、測定部702、出力電力算出部703、目標電圧設定部704、調整部705、及び判定部706として機能する。
【0024】
制御停止部701は、PWM制御を停止させる機能を有する。制御停止部701は、PWM回路10にPWM信号の出力停止を指示する停止指示信号を出力し、FET8へのPWM信号の出力を停止、すなわちPWM信号のデューティ比Dを0%にさせる。このとき、PWM制御の停止時には、デューティ比Dを予め高くし、太陽電池アレイ3の出力電圧を上げておくことが好適である。制御停止部701は、制御を停止したことを示す停止信号を測定部702に出力する。なお、制御停止部701は、例えば制御装置4の電源がオンされた場合や、判定部706から動作開始を指示する信号を受け取った場合に、動作を開始する。
【0025】
測定部702は、制御停止部701によってPWM制御が停止させられたときに、出力電圧を所定のサンプリング間隔でサンプリング(測定)する。PWM制御を停止(例えばデューティ比Dを100%から0%)すると、FET8がオフとなることでトランジスタ9のベース電流がオフになる。これにより、コンデンサC1に蓄えられる容量が大きくなることで充電電圧が上昇し、合わせて太陽電池アレイ3の出力電圧も開放電圧に向かって上昇する。図5に、PWM制御を停止した際の出力電圧の変化を示す。同図において、縦軸は電圧(V)、横軸は時間(t)である。図5に示すように、出力電圧は、PWM信号の停止時から、時間の経過と共に開放電圧Vに向かって最適電圧付近までは略線形に上昇するが、最適電圧を過ぎると上昇率は減少していく過渡現象となる。
【0026】
測定部702は、制御停止部701から停止信号を受け取ると、制御IC7の入力端子において、図5に示した状態における太陽電池アレイ3の出力電圧V(t)を例えば1ms程度のサンプリング間隔でサンプリングする。測定部702は、サンプリングしたサンプリング間隔毎の出力電圧V(t)を、出力電力算出部703に出力する。
【0027】
出力電力算出部703は、測定部702によって測定されたサンプリング間隔毎の出力電圧V(t)に基づいて、出力電力を算出する。出力電力算出部703は、測定部702からサンプリング間隔毎の出力電圧V(t)を受け取ると、1サンプリング前の出力電圧V(t−1)との差分をとることで、出力電圧V(t)の時間微分に相当する出力電流dV/dt(t)を算出する。dVは1サンプリング前の電圧値からの変化分であり、dtはサンプリング間隔(1ms程度)である。出力電力算出部703は、出力電圧V(t)と算出された出力電流dV/dt(t)との積から出力電力V(t)・dV/dt(t)を算出する。出力電力算出部703は、算出した出力電力V(t)・dV/dt(t)を目標電圧設定部704に出力する。
【0028】
目標電圧設定部704は、出力電力算出部703によって算出された出力電力V(t)・dV/dt(t)において、出力電力V(t)・dV/dt(t)が最大(最大電力動作点)となる出力電圧V(t)を目標電圧(最適電圧)Vmppとして設定する。目標電圧設定部704は、出力電力算出部703からサンプリング間隔毎の出力電力V(t)・dV/dt(t)を受け取ると、サンプリング間隔毎に出力電力V(t)・dV/dt(t)を比較し、該出力電力V(t)・dV/dt(t)が単調増加から単調減少に変わる点(変曲点)を時系列に検出して目標電圧Vmppを設定する。具体的に、目標電圧設定部704は、比較する出力電力V(t)・dV/dt(t)が1サンプリング前の値よりも小さくなった時点で、1サンプリング前の出力電圧V(t−1)を目標電圧Vmppとして検出して設定する。これにより、開放電圧Vに達する前に、目標電圧Vmppとなる出力電圧V(t)を検出することができる。目標電圧設定部704は、目標電圧Vmppを調整部705に出力する。
【0029】
調整部705は、目標電圧設定部704によって設定された目標電圧Vmppに出力電圧V(t)が近づくように、PWM制御を調整する。調整部705は、目標電圧設定部704から目標電圧Vmppを受け取ると、PWM回路10にPWM信号の出力再開を示す信号を出力してPWM制御を再開させると共に、PWM信号のデューティ比Dを調整して目標電圧Vmppに出力電圧V(t)が近づくように調整する。具体的に、調整部705は、制御IC7の入力端子において太陽電池アレイ3の出力電圧V(t)を測定し、出力電圧V(t)が目標電圧Vmppよりも大きい場合には、PWM信号のデューティ比Dを増加させるようにPWM回路10に増加信号を出力する。このとき、デューティ比Dが予め定められた上限値Dmax以上(D>Dmax)の場合には、PWM信号の周期Tを短縮させるようにPWM回路10に短縮信号を出力する。一方、出力電圧V(t)が目標電圧Vmppよりも小さい場合には、PWM信号のデューティ比Dを減少させるようにPWM回路10に減少信号を出力する。このとき、デューティ比Dが予め定められた下限値Dmin以下(D<Dmin)の場合には、PWM信号の周期Tを伸張させるようにPWM回路10に伸張信号を出力する。
【0030】
調整部705は、上記の処理を所定回数繰り返し、定常状態(出力電圧V(t)≒目標電圧Vmpp)に移行させる。具体的に、調整部705は、例えばPWM信号のデューティ比Dを10ビット(0〜1023)で調整できる場合には、初期値を512に設定し、上記処理を512回繰り返すことで、出力電圧V(t)が目標電圧Vmppに最も近づくPWM信号のデューティ比Dに調整する。調整部705による上記処理は、出力電圧V(t)と目標電圧Vmmpとを比較する時点で差がほとんどなくなった場合には、その時点で定常状態に移行させてもよい。調整部705は、定常状態に移行させると、タイマーを始動させる。タイマーは、所定の間隔で判定部706に判定処理を指示する信号を出力する。
【0031】
判定部706は、現在の出力電圧V(t)と目標電圧Vmppとを比較し、出力電圧V(t)と目標電圧Vmppとの差が予め定められた所定値以上であるか否かを判定する。判定部706は、例えば10〜100ms程度の間隔でタイマーから信号が出力された場合に、現在の出力電圧V(t)と目標電圧Vmppとの差(絶対値)が所定値V以上であるか否かを判定し、所定値Vよりも大きい場合には、制御停止部701に動作開始を指示する指示信号を出力する。
【0032】
次に、図6〜図8を参照して、制御IC7の動作、すなわち本実施形態に係る電圧制御方法について詳しく説明する。図6は、制御IC7の処理手順を示すフローチャート図である。図7は、目標電圧Vmppの設定処理を示すフローチャートである。図8は、出力電圧V(t)の調整処理を示すフローチャートである。各図において、ステップをSと略記している。
【0033】
図6に示すように、最初に、目標電圧Vmppの設定が行われる(ステップS01)。目標電圧Vmppの設定は、以下のように行われる。
【0034】
図7に示すように、例えば制御装置4の電源がオンになった場合に、制御停止部701によって、PWM回路10によるPWM制御が停止される(ステップS101)。次に、測定部702によって、所定のサンプリング間隔で出力電圧V(t)が測定される(ステップS102)。そして、測定されたサンプリング間隔毎の出力電圧V(t)に基づいて出力電流dV/dt(t)が算出され、その出力電流dV/dt(t)と出力電圧V(t)との積から出力電力V(t)・dV/dt(t)が算出される(ステップS103)。
【0035】
出力電力V(t)・dV/dt(t)が算出されると、目標電圧設定部704によってサンプリング間隔毎の出力電力(t)・dV/dt(t)が比較され、1サンプリング前の値よりも出力電力V(t)・dV/dt(t)が小さく(V(t)・dV/dt(t)<V(t−1)・dV/dt(t−1))なったか否かが判定される(ステップS104)。1サンプリング前の値よりも出力電力V(t)・dV/dt(t)が小さくなった場合には、1サンプリング前の出力電圧V(t−1)を目標電圧Vmppとして設定する(ステップS105)。一方、1サンプリング前の値よりも出力電力V(t)・dV/dt(t)が小さくならない場合には、ステップS104の処理を繰り返す。
【0036】
図6に戻って、以上のように設定された目標電圧Vmppに出力電圧V(t)が近づくように、出力電圧V(t)の調整、すなわちPWM信号のデューティ比Dの調整が行われる。出力電圧V(t)の調整は、以下のように行われる。
【0037】
図8に示すように、まず出力電圧V(t)が測定される(ステップS201)。次に、調整部705によって、測定された出力電圧V(t)が目標電圧Vmppより大きいか否かが判定される(ステップS202)。出力電圧V(t)が目標電圧Vmppより大きい場合には、ステップS203に進む。一方、出力電圧V(t)が目標電圧Vmppより大きくない場合には、ステップS206に進む。
【0038】
ステップS203では、調整部705によって、PWM信号のデューティ比Dが増加される。そして、デューティ比Dが増加された場合に、デューティ比Dが予め定められた上限値Dmaxよりも大きいか否かが判定される(ステップS204)。デューティ比Dが予め定められた上限値Dmaxよりも大きい場合には、PWM信号の周期が短縮される(ステップS205)。一方、デューティ比Dが予め定められた上限値Dmaxよりも大きくない場合には、処理が終了する。
【0039】
ステップS206では、調整部705によって、PWM信号のデューティ比Dが減少される。そして、デューティ比Dが減少された場合に、デューティ比Dが予め定められた下限値Dminよりも小さいか否かが判定される(ステップS207)。デューティ比Dが予め定められた下限値Dminよりも小さい場合には、PWM信号の周期が伸張される(ステップS208)。一方、デューティ比Dが予め定められた下限値Dminよりも小さくない場合には、処理が終了する。
【0040】
図6に戻って、以上のように目標電圧Vmppに近づくように出力電圧V(t)が調整されると、タイマーから信号が出力されたか否かが判定される(ステップS03)。タイマーから信号が出力された場合には、ステップS04に進む。一方、タイマーから信号が出力されていない場合には、処理が終了し、定常状態に移行する。
【0041】
ステップS04では、判定部706によって出力電圧V(t)が測定される。そして、測定された出力電圧V(t)と目標電圧Vmppとの差(V(t)−Vmpp)が所定値Vよりも小さいか否かが判定される(ステップS05)。出力電圧V(t)と目標電圧Vmppとの差が所定値Vよりも小さい場合には、定常状態に移行する。一方、出力電圧V(t)と目標電圧Vmppとの差が所定値Vよりも小さくない場合には、ステップS01に戻って以下の処理を繰り返す。
【0042】
以上説明した本実施形態に係る太陽電池充電器1によれば、PWM制御が停止されたときの出力電圧V(t)を所定のサンプリング間隔でサンプリングし、そのサンプリングされた出力電圧V(t)に基づいて出力電力V(t)・dV/dt(t)を算出する。そして、出力電力V(t)・dV/dt(t)を最大にする出力電圧V(t)の目標電圧Vmppを設定して、その目標電圧Vmppになるように調整する。これにより、開放電圧Vを測定しなくとも出力電力V(t)・dV/dt(t)が最大になる目標電圧Vmppを算出することができるので、太陽電池の稼動を停止させなくてもよい。また、PWM制御の停止時の出力電圧V(t)の過渡特性に基づいて目標電圧Vmppを算出することで、PWM制御を行っているときよりも外乱(誤差)が少なく正確に算出することができる。その結果、太陽光発電における利用効率を高く維持することができる。
【0043】
以上、本発明をその実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、太陽電池充電器1が移動通信端末2のバッテリを充電する構成となっているが、他のモバイル機器等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の好適な一実施形態に係る太陽光発電充電器を模式的に示す図である。
【図2】制御装置の回路構成を示す図である。
【図3】PWM回路から出力されるPWM信号の一例を示す図である。
【図4】制御ICの構成を示す機能ブロック図である。
【図5】PWM制御を停止した際の出力電圧の変化を示す図である。
【図6】制御ICの処理手順を示すフローチャート図である。
【図7】目標電圧Vmppの設定処理を示すフローチャートである。
【図8】出力電圧V(t)の調整処理を示すフローチャートである。
【図9】太陽光発電における最大電力動作点を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1…太陽光発電充電器、3…太陽電池アレイ(太陽電池)、4…制御装置(電圧制御装置)、5…DC−DCコンバータ(スイッチングコンバータ)、7…制御IC(電圧制御装置)701…制御停止部(制御停止手段)、702…測定部(測定手段)、703…出力電力算出部(出力電力算出手段)、704…目標電圧設定部(目標電圧設定手段)、705…調整部(調整手段)、706…判定部(判定手段)、D…デューティ比、T…周期。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス幅変調制御によってスイッチングコンバータから出力される太陽電池の出力電圧を制御する電圧制御装置であって、
前記パルス幅変調制御を停止させる制御停止手段と、
前記制御停止手段によって前記パルス幅変調制御が停止させられたときに、前記出力電圧を所定の周期で測定する測定手段と、
前記測定手段によって測定された前記出力電圧に基づいて、出力電力を算出する出力電力算出手段と、
前記出力電力算出手段によって算出された前記出力電力において、当該出力電力が最大となる前記出力電圧を目標電圧として設定する目標電圧設定手段と、
前記目標電圧設定手段によって設定された前記目標電圧に前記出力電圧が近づくように、前記パルス幅変調制御を調整する調整手段と、
を備えることを特徴とする電圧制御装置。
【請求項2】
前記出力電力算出手段は、前記測定手段によって所定の周期で測定された前記出力電圧を時間微分して出力電流を算出し、前記出力電圧と前記出力電流との積により前記出力電力を算出することを特徴とする請求項1記載の電圧制御装置。
【請求項3】
前記目標電圧設定手段は、前記周期毎の前記出力電力を比較することによって前記出力電力が最大となる前記出力電圧を検出し、当該出力電圧に基づいて前記目標電圧を設定することを特徴とする請求項1又は2記載の電圧制御装置。
【請求項4】
前記調整手段は、現在の前記出力電圧と前記目標電圧とを比較し、その比較結果に応じて前記パルス幅変調信号のデューティ比を変化させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の電圧制御装置。
【請求項5】
前記調整手段は、前記デューティ比を変化させたときに、当該デューティ比と予め定められた値との比較結果に応じて前記パルス幅変調信号の周期を調整することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の電圧制御装置。
【請求項6】
現在の前記出力電圧と前記目標電圧とを比較し、前記出力電圧と前記目標電圧との差が予め定められた所定値以上であるか否かを判定する判定手段を更に備え、
前記制御停止手段は、前記判定手段によって前記出力電圧と前記目標電圧の差が前記所定値以上であると判定された場合に、前記パルス幅変調制御を停止し、再度前記目標電圧を設定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の電圧制御装置。
【請求項7】
パルス幅変調制御によってスイッチングコンバータから出力される太陽電池の出力電圧を制御する電圧制御方法であって、
前記パルス幅変調制御を停止させる制御停止ステップと、
前記制御停止ステップにおいて前記パルス幅変調制御が停止させられたときに、前記出力電圧を所定の周期で測定する測定ステップと、
前記測定ステップにおいて測定された前記出力電圧に基づいて、出力電力を算出する出力電力算出ステップと、
前記出力電力算出ステップにおいて算出された前記出力電力において、当該出力電力が最大となる前記出力電圧を目標電圧として設定する目標電圧設定ステップと、
前記目標電圧設定ステップにおいて設定された前記目標電圧に前記出力電圧が近づくように、前記パルス幅変調制御を調整する調整ステップと、
を含むことを特徴とする電圧制御方法。
【請求項8】
太陽電池と、
請求項1〜6記載の電圧制御装置と、
を備えることを特徴とする太陽光発電充電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−15317(P2010−15317A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173815(P2008−173815)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】