説明

電子機器

【課題】部材にねじれ等が生じた場合であっても、枠体と蓋体との接触位置を安定化させ、ノイズの発生を抑える。
【解決手段】チューナユニット10は、回路基板60をシールドする金属製の枠体20及び蓋体30を備えている。蓋体30には爪30cが形成されており、これに対して枠体20には、爪30cと対応する位置に接触用凸部50及び係合用凸部52が設けられている。接触用凸部50の長手方向は爪30cの幅方向と交差しているため、蓋体30を枠体20に取り付けた状態で、爪30cと接触用凸部50とが点接触し、ねじれによる接触位置の変動を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を搭載した絶縁基板を金属製の枠体や蓋体でシールドした構造の電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電子機器に関する先行技術として、例えば高周波発振回路が搭載された回路基板を金属製の枠体で取り囲み、その上下の開口部(開放部)にそれぞれ金属製の蓋体(カバー)を取り付けてシールドした構造のチューナユニットが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記の先行技術では、枠体の側壁に凸状の係止部が設けられており、この係止部に蓋体の掛け止め部を掛け止めすることで蓋体が枠体に取り付けられている。掛け止め部は蓋体の平板状部と一体の金属板から形成されており、その根元(基端)が蓋体の平板状部から折り曲げられることで、根元から先の全体が弾性を有している。また掛け止め部の先端付近には、断面く字形状(キンク形状)の接触部が形成されている。加えて先行技術では、蓋体の平板状部と側壁の端面とが対向する位置において、平板状部には複数の凸部が設けられており、掛け止め部が係止部に掛け止めされた際、凸部の先端部を側壁の端面に接触させている。
【0004】
このため、枠体に蓋体を取り付けた状態では、掛け止め部の先端付近(接触部)が枠体の側壁面に対して弾性力で押し付けられることで、枠体と蓋体との電気的な接続(グランド)性を得ることができる。また、掛け止めを係止部に掛け止めした状態で蓋体の脱落を防止しつつ、凸部と側壁の端面との接触状態を維持することで、振動によるノイズやラジエーションの発生を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−174270(段落0020−0023、図3、図4、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した先行技術は、枠体に対して蓋体を確実に掛け止めする構造によって蓋体の脱落を防止しつつ、蓋体の平板状部に凸部を設けることで側壁の端面との接触性をも向上し、振動によるノイズの発生を防止している点で優位である。
【0007】
一方、近年の研究開発の進展に伴い、従来の掛け止め部や係止部を用いて蓋体を枠体に掛け止めする構造において、枠体(フレーム)と蓋体(カバー)との間にねじれが発生すると、枠体の外側面において枠体と蓋体との接触位置(電気的な接点となる位置)が変動し、蓋体の電位が不安定になることが明らかになっている。この場合、先行技術の着眼点とは全く別の原因で振動によるノイズが発生し、同様の問題を引き起こすおそれがある。
【0008】
そこで本発明は、部材にねじれ等が生じた場合であっても、枠体と蓋体との接触位置を安定化させ、ノイズの発生を抑えることができる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。
すなわち本発明の電子機器は、電子部品が搭載される絶縁基板と、少なくとも絶縁基板の周縁を取り囲む金属製の枠体と、この枠体に対して、開口部を覆う状態で取り付けられる金属製の蓋体とを備えている。
【0010】
上記の蓋体は、蓋板及び爪を有するものであり、このうち蓋板は枠体の開口部に沿って拡がっている。また爪は蓋体と一体に形成されており、この爪は、蓋体が枠体に取り付けられた状態で枠体に対して外側から押し付けられる。これに対して枠体は、接触用凸部を有している。この接触用凸部は、蓋体が取り付けられた状態で爪が押し付けられる位置の外側面から突出して形成されており、爪の幅方向と交差する方向に延びている。
【0011】
本発明の電子機器によれば、枠体に蓋体が取り付けられた状態で、爪が枠体に押し付けられると、爪がその幅方向の1箇所(互いに交差する位置)で接触用凸部と点接触する。このため、枠体と蓋体とが相対的にねじれたとしても、爪と枠体との接触位置(接点)が変動しないことから、蓋体の電位を確実に安定化させることができる。これにより、振動によるノイズの発生を確実に防止し、電子機器の品質を向上することができる。
【0012】
上記の爪は、その基端部が蓋板の周縁から屈曲されて枠体の外側面に沿って延びている。また爪には、その先端近傍に幅方向に延びる接触部が形成されており、この接触部は、蓋体が枠体に取り付けられた状態で接触用凸部と交差した状態で接触することが好ましい。
【0013】
上記の態様であれば、蓋体の取り付け時に接触部と接触用凸部とが良好に点接触することで、蓋体の電位を安定化させ、接触位置の変動によるノイズの発生をより確実に防止することができる。
【0014】
また枠体は、係合用凸部を有してもよい。この係合用凸部は、接触用凸部とは別に枠体の外側面から突出して形成されて開口部に沿う方向を長手方向として延び、かつ、蓋体が取り付けられた状態で爪と係合する。そして、この係合用凸部の長手方向が爪の幅方向に沿っていることが好ましい。
【0015】
上記の態様であれば、蓋体の取り付け時に係合用凸部によって爪を幅方向で広く掛け止めし(係合させ)、蓋体の脱落を強固に防止することができる。これにより、上述した爪と接触用凸部との接触状態を確実に維持し、蓋体の電位を安定化させてノイズの発生をより確実に防止することができる。
【0016】
また1つの接触用凸部について、一対をなす係合用凸部が接触用凸部を挟んで互いに対向し、かつ、長手方向に少なくとも接触用凸部の幅に相当する間隔を置いて配列されている態様が好ましい。
【0017】
この場合、枠体に対して蓋体が取り付けられる過程において、爪が係合用凸部を乗り越える際、爪の表面に設けられためっきが削られて表面に微細な凹凸が生じるが、爪と枠体とが接触する部分(点接触する位置)ではめっきが削られず、表面に凹凸が生じない。これにより、枠体と蓋体との接触を良好に維持し、蓋体の電位をより確実に安定化させることができる。
【0018】
より好ましくは、1つの接触用凸部は、一対をなす係合用凸部同士の間隔を基点として枠体に対する蓋体の取り付け方向に延びており、この取り付け方向と爪の幅方向とが直交する関係にあるものとする。
【0019】
この場合、爪が係合用凸部を乗り越える前に接触用凸部と接触することを防止し、かつ、爪が係合用凸部を乗り越えた後で確実に接触用凸部に接触させることができる。これにより、上述した爪と枠体との良好な接触を維持し、蓋体の電位を安定化させることに大きく寄与することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電子機器によれば、従来と異なる新たな観点から振動によるノイズの発生を防止し、その品質をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】一実施形態のチューナユニットを示した分解斜視図である。
【図2】図1とは別の方向からチューナユニットを示した分解斜視図である。
【図3】チューナユニットを組み立て状態で示した斜視図である。
【図4】接触用凸部と係合用凸部との位置関係を詳細に示す拡大斜視図である。
【図5】チューナユニットを組み立て状態で示した平面図である。
【図6】本実施形態の構造と比較例とを対比して示した縦断面図(図5中のVI−VI断面)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、一実施形態のチューナユニット10を示した分解斜視図である。また図2は、図1とは別の方向からチューナユニット10を示した分解斜視図である。チューナユニット10は、例えばUHF放送帯及びVHF放送帯の地上デジタル放送信号を受信したり、衛星放送信号を受信したりすることができる電子機器である。このチューナユニット10は主に、回路基板60とこれをシールドする筐体として枠体20及び蓋体30を有する他、外部接続用のコネクタ40を有している。
【0023】
〔回路基板(絶縁基板)〕
上記の回路基板60は、例えば図示しない電子部品を搭載した絶縁基板から構成されており、これら電子部品や図示しない配線パターン等によって回路基板60に放送受信用のチューナ回路が形成されている。このチューナ回路には、例えば図示しないフィルタ回路やRF入力回路、同調回路、ミキサ回路、発信回路、IF回路等が含まれる。例えば図1,図2に示される回路基板60の上面には、チューナ回路を構成する各種の電子部品(図示されていない)が実装されており、これら電子部品が図示しない配線パターンやスルーホール等を通じて回路基板60の上面や下面、内層等で相互に接続されている。また回路基板60の下面にも図示しない配線パターンや巻線部品(インダクタンスコイル)等が設けられている。
【0024】
その他にも、回路基板60には複数の端子(RF信号端子、電源用端子、グランド用端子等)12が設けられており、これら端子12は、例えば回路基板60の下面から下方に突出している。チューナユニット10は、これら端子12を用いて例えばマザー基板(図示されていない)に実装される。なお、端子12はチューナユニット10の上面又は側面に突出している態様であってもよい。
【0025】
〔枠体〕
回路基板60の周縁(周囲)は、例えば金属製の枠体20で取り囲まれている。この枠体20は、例えば下面が全体的に開放された半箱形状をなしており、このような枠体20は、例えば金属板のブランクをプレス加工して組み立てられている。半箱形状をなす枠体20は、例えば1つの天板部20a及び4つの側壁部20bから構成されている。このうち天板部20aは、回路基板60の上面に相対しており、また4つの側壁部20bは、回路基板60の四辺にそれぞれ相対している。4つの側壁部20bは、枠体20の四隅の位置で隣接するもの同士が連結(かしめ結合)されている。
【0026】
その他に枠体20には、例えば天板部20aや側壁部20bの一部を切り起こした腕部(図示していない)が形成されており、これら腕部は枠体20の内部で回路基板60のグランド電極に半田付けされている。これにより、回路基板60が枠体20に対して位置決めされるとともに、枠体20の内部にて支持されている。
【0027】
また枠体20には、例えば側壁部20bの下端縁から下方に突出した複数の脚部20cが形成されている。これら脚部20cは、チューナユニット10を図示しないマザー基板に実装する際、マザー基板のスルーホール内にて半田付けされるものである。
【0028】
〔蓋体〕
上記の蓋体30は、枠体20に対してその下面の開口部を覆うようにして取り付けられる。蓋体30は主に蓋板30a及び側壁30bから構成されており、このうち蓋板30aは、枠体20の開口部に沿った平板形状をなしている。また側壁30bは、蓋板30aの周縁から折り曲げられて上方に立ち上がっている。
【0029】
〔爪〕
また蓋板30aには複数の爪30cが形成されており、これら爪30cは、側壁30bよりもさらに上方に延びている。爪30cは、その根元である基端部が蓋板30aの周縁から屈曲されており、蓋体30の取り付け時には、爪30cが全体的に枠体20の側壁部20b(外側面)に沿って上方に延びた格好になる。
【0030】
〔接触部〕
爪30cの先端部分は、枠体20の側壁部20bに向けて凸となる断面く字形状(キンク形状)に成形されており、その側壁部20bに対向する側に接触部30dが形成されている。なお接触部30dは、爪30cの幅方向に延びる長細い形状をなしている。
【0031】
その他に蓋体30には、例えば蓋板30aの一側縁部に沿って複数の挿通孔14(一部のみ参照符号を付す)が形成されている。これら挿通孔14には、蓋板30aが枠体20に取り付けられた状態で、上記の端子12がそれぞれ挿通されるものとなっている。
【0032】
〔接触用凸部,係合用凸部〕
枠体20の側壁部20bには、蓋体30の各爪30cに対応する位置にそれぞれ1つの接触用凸部50及び一対の係合用凸部52が形成されている。これら接触用凸部50及び係合用凸部52は、いずれも側壁部20bの外側面から側方に突出した突条として形成されている。本実施形態では、2つの係合用凸部52が1つの接触用凸部50を挟んで互いに対向する位置関係にある。なお、接触用凸部50と係合用凸部52との位置関係については、別の拡大図を用いてさらに後述する。
【0033】
接触用凸部50は、側壁部20bの外側面上を枠体20の厚み方向(高さ方向)に延びており、このため、蓋体30が枠体20に取り付けられた状態では、接触用凸部50は爪30cの幅方向に対して直交(交差)する。これに対し、一対の係合用凸部52はいずれも側壁部20bの外側面上を枠体20の幅方向(下側の開口部に沿う方向)に延びている。このため蓋体30が枠体20に取り付けられた状態で、係合用凸部52の長手方向は爪30cの幅方向に沿うことになる。
【0034】
上記のコネクタ40は、例えば枠体20の一側面に取り付けられている。コネクタ40は、例えば1つの側壁部20bから前方に突出し、チューナユニット10の使用時には、このコネクタ40に例えば、図示しないアンテナケーブル(同軸ケーブル)が接続される。なおコネクタ40は、枠体20に対して半田付けされるとともに、枠体20の内部で図示しない中心導体が回路基板60上の図示しないチューナ回路に接続されている。
【0035】
図3は、チューナユニット10を組み立て状態で示した斜視図である。なお、図3(A)と図3(B)とは、それぞれ別々の方向からチューナユニット10を示したものである。また図3では容易化のため、端子12については図示を省略している。
【0036】
これら図3(A),(B)に示されているように、枠体20に蓋体30を取り付けた状態で、各爪30cはその弾性によって枠体20の側壁部20bに押し付けられている。このとき各爪30cは、上述した接触部30d(図3には示されていない)を接触用凸部50に対して圧着させた状態にある。
【0037】
ここで上記のように、接触部30dは爪30cの幅方向に延びているのに対し、接触用凸部50は爪30cの幅方向と直交する方向に延びている。このため図3(A),(B)に示される取り付け状態では、各接触部30dと各接触用凸部50とが互いに直交(交差)するようにして互いに圧着され、これらの交点が蓋体30と枠体20との電気的な接点を構成している。
【0038】
なお、図3(B)に示される枠体20の後側の側壁部20bでは、幅方向に連続した1つの爪30cに2つの接触用凸部50が接触しているが、2つの接触用凸部50に対応して爪30cが2つに分割されていてもよい。
【0039】
〔位置関係の詳細〕
図4は、接触用凸部50と係合用凸部52との位置関係を詳細に示す拡大斜視図である。
上記のように本実施形態では、1つの接触用凸部50に対して2つの係合用凸部52が一対をなして配置されている。このとき接触用凸部50と係合用凸部52とは、さらに以下のような位置関係を有している。
【0040】
(1)接触用凸部50と係合用凸部52とは、それぞれの長手方向が互いに直交する位置関係にある。
(2)上記(1)において、接触用凸部50の長手方向が蓋体30の取り付け方向に沿っており、この取り付け方向は、枠体20の開口部(図示しない下面開口)と直交する関係にある。
【0041】
(3)また上記(1)において、係合用凸部52の長手方向は蓋体30の取り付け方向と直交している。また係合用凸部52の長手方向は、蓋体30の取り付け状態でみて、爪30cの幅方向に沿う(互いの方向が合致する)関係にある。
【0042】
(4)一対をなす2つの係合用凸部52は、1つの係合用凸部52を挟んで互いに対向している。このとき一対の係合用凸部52は、それぞれ長手方向に同程度の長さ(W1)を有しており、その中間に接触用凸部50の幅(W2)に相当する間隔を置いて長手方向に配列されている。言い換えれば、係合用凸部52は長手方向でみて、その中間位置に1つの接触用凸部50を挟んで2つに分割されていることになる。
【0043】
(5)また接触用凸部50は、一対をなす係合用凸部52同士の間隔を基点として、枠体20に対する蓋体30の取り付け方向(図4中上方向)に延びている。そして、この取り付け方向と爪30cの幅方向とが直交する関係にある。
【0044】
なお、一対をなす2つの係合用凸部52については、長手方向でみた全体の長さ(W0)の範囲で爪30cと係合し、その脱落を確実に防止することができる。
【0045】
以上のような位置関係から、本実施形態のチューナユニット10には以下の特徴が発揮されている。
〔1〕枠体20に蓋体30を取り付けた状態で、各爪30cの接触部30dが接触用凸部50と点接触する。このため、枠体20と蓋体30とが多少ねじれた(初期の設計状態から変形した)としても、各爪30cと接触用凸部50とが点接触を維持するため、その接触位置が変動しない。これにより、振動によるノイズの発生を確実に防止することができる。
【0046】
〔2〕蓋体30の取り付け作業時において、各爪30cは外側へ弾性変形しながら係合用凸部52を乗り越えていき、最終的に接触部30dが接触用凸部50と点接触する。このとき、爪30cの接触部30dが係合用凸部52と擦れ合うが、その範囲は各係合用凸部52の長さ(W1)分であり、これらの間隔(W2)の範囲内では接触部30dと係合用凸部52とが擦れ合わない。したがって、例えば蓋体30全体にめっき処理が施されていたとしても、接触部30dが接触用凸部50と点接触する箇所のめっきが削られることなく、その良好なめっき状態を維持したまま電気的な接続関係を構成することができる。
【0047】
〔3〕また蓋体30の取り付け状態では、接触部30dと接触用凸部50とを点接触させつつ、係合用凸部52によって蓋体30の脱落を強固に防止することができる。これにより、蓋体30の電位を確実に安定化させてノイズの発生を抑えることができる。
【0048】
図5は、チューナユニット10を組み立て状態で示した平面図である。ここでは上記〔1〕のねじれに対する利点について補足的に説明する。
【0049】
例えば、枠体20と蓋体30との間にねじれが生じると、図5中に示されるX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に何らかの取り付け寸法誤差が生じ、当初に設計された組み立て状態を変化させることになる。このような変化が生じた場合であっても、本実施形態の構造であれば、例えばX軸方向やY軸方向の変化については、接触用凸部50と相対的に接触部30dが幅方向にずれることで、その変化を吸収することができる。
【0050】
また、枠体20の各側面におけるY軸方向への変形や、枠体20の前後面におけるX軸方向への変形については、いずれも爪30cの弾性変形によってその変化を吸収することができる。さらにZ軸方向の変化については、接触部30dと相対的に接触用凸部50が長手方向にずれることで、その変化を吸収することができる。
【0051】
その結果、枠体20と蓋体30との間に立体的なねじれが生じたとしても、各爪30cの接触部30dと接触用凸部50とが点接触を良好に維持することができ、蓋体30の電位を安定化させることができる。
また図5に示されているように、本実施形態の構造であれば、各爪30cの接触部30dと接触用凸部50との接触状態を上方から容易に目視によって確認することができる。これにより、チューナユニット10の品質管理を容易化し、その作業効率を向上することに寄与する。
【0052】
次に、上述した本実施形態の優位性について、比較例との対比をもって検証する。
図6は、本実施形態の構造と比較例とを対比して示した縦断面図(図5中のVI−VI断面)である。図6中(A)が本実施形態の構造を示し、図6中(B)が比較例を示す。
【0053】
〔本実施形態〕
図6中(A):本実施形態の構造では、枠体20に蓋体30が取り付けられた状態で、上記のように各爪30cの接触部30dと接触用凸部50とが点接触する。接触用凸部50は側壁部20bの外側面から突出しているため、上記のねじれによって爪30cが全体的に変形したとしても、その弾性によって接触状態を維持することができる。
【0054】
〔比較例〕
図6中(B):ここには、比較例としてチューナユニット100を示す。比較例のチューナユニット100は、本実施形態と近似した形態の回路基板600や枠体200、蓋体300等を有している。ただし比較例のチューナユニット100には、枠体200の側壁部200bに係合用凸部520のみが形成されており、本実施形態の接触用凸部50に相当する部分が設けられていない。
【0055】
このため比較例のチューナユニット100では、理想的には爪300cがその幅方向で側壁部200bと線接触することになる。しかし、枠体200と蓋体300との間にねじれが生じた場合、爪300cが全体的に側壁部200bから離れたり(二点鎖線の状態)、あるいは、線接触の状態から点接触の状態に変化したりする可能性がある。この場合、蓋体300の電位が不安定となり、チューナユニット100の振動によってノイズを発生する原因となり得る。
【0056】
これに対し本実施形態の構造であれば、枠体20と蓋体30との間にねじれが生じた場合であっても、上記のように接触状態を維持して蓋体30の電位を安定化させることができるため、ノイズの発生を確実に抑えることができる。
【0057】
本発明は、上述した一実施形態に制約されることなく、各種の変形や置換を伴って実施することができる。また、一実施形態で挙げたチューナユニットの構成はいずれも好ましい例示であり、これらを適宜変形して実施可能であることはいうまでもない。
【0058】
一実施形態では、爪30cの幅方向と接触用凸部50の長手方向とが互いに直交する構造であるが、これらは直角以外の角度で交差する関係にあってもよい。この場合であっても、接触部20dと接触用凸部50との交点に接触位置が形成されるため、一実施形態と同様に点接触を維持することができる。
【0059】
また一実施形態で挙げた爪30cや接触用凸部50、係合用凸部52の配置は一例であり、これらの配置は適宜に変更することができる。
【0060】
その他に一実施形態では、電子機器としてチューナユニットを例に挙げて説明したが、本発明はチューナユニット以外の電子機器に適用することもできる。
【符号の説明】
【0061】
10 チューナユニット(電子機器)
20 枠体
20b 側壁部
30 蓋体
30a 蓋板
30c 爪
30d 接触部
40 コネクタ
50 接触用凸部
52 係合用凸部
60 回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が搭載される絶縁基板と、
少なくとも前記絶縁基板の周縁を取り囲む金属製の枠体と、
前記枠体に対し、前記開口部を覆う状態で取り付けられる金属製の蓋体とを備え、
前記蓋体は、
前記開口部に沿って拡がる蓋板と、
前記蓋体と一体に形成され、前記蓋体が前記枠体に取り付けられた状態で前記枠体に対して外側から押し付けられる爪とを有し、
前記枠体は、
前記蓋体が取り付けられた状態で前記爪が押し付けられる位置の外側面から突出して形成され、前記爪の幅方向と交差する方向に延びる接触用凸部を有することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記爪は、
基端部が前記蓋板の周縁から屈曲されて前記枠体の外側面に沿って延び、かつ、先端近傍に幅方向に延びる接触部が形成されており、前記蓋体が前記枠体に取り付けられた状態で前記接触部を前記接触用凸部と交差した状態で接触させていることを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子機器において、
前記枠体は、
前記接触用凸部とは別に外側面から突出して形成されて前記開口部に沿う方向を長手方向として延び、かつ、前記蓋体が取り付けられた状態で前記爪と係合する係合用凸部を有しており、この係合用凸部の長手方向が前記爪の幅方向に沿っていることを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器において、
1つの前記接触用凸部について、一対をなす前記係合用凸部が前記接触用凸部を挟んで互いに対向し、かつ、長手方向に少なくとも前記接触用凸部の幅に相当する間隔を置いて配列されていることを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項4に記載の電子機器において、
1つの前記接触用凸部は、一対をなす前記係合用凸部同士の間隔を基点として前記枠体に対する前記蓋体の取り付け方向に延びており、この取り付け方向と前記爪の幅方向とが直交する関係にあることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−94568(P2012−94568A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238181(P2010−238181)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】